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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161192
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】車両の外装材の連結構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
B60R13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071393
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永仮 健康
(72)【発明者】
【氏名】内村 元気
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AA03
3D023AC04
3D023AC06
3D023AD22
3D023AD25
(57)【要約】
【課題】より多くの外装材を、衝撃緩和性を確保しつつ連結部材で連結しておくことにある。
【解決手段】連結部材20には、第一の外装材(上側のフェンダパネル71)と第二の外装材(下側のフェンダパネル72)とを隣接させて連結する第一の連結部21と、第一の外装材と第二の外装材に隣接させるように第三の外装材(ランプユニット13)を連結する第二の連結部22とが設けられており、第一の連結部21と第二の連結部22とは、そのいずれか一方に衝撃荷重が加えられることで相対移動可能に一体化されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外面を構成するように隣接して配設される複数の外装材を、連結部材を用いて連結する車両の外装材の連結構造において、
前記連結部材には、第一の外装材と第二の外装材とを隣接させて連結する第一の連結部と、前記第一の外装材と前記第二の外装材に隣接させるように第三の外装材を連結する第二の連結部とが設けられており、
前記第一の連結部と前記第二の連結部とは、そのいずれか一方に衝撃荷重が加えられることで相対移動可能に一体化されている車両の外装材の連結構造。
【請求項2】
前記連結部材には、前記第一の連結部と前記第二の連結部間に、衝撃荷重の加えられた連結部を相対移動させるように変形する変形部が設けられている請求項1に記載の車両の外装材の連結構造。
【請求項3】
前記連結部材には、衝撃荷重が加えられて第一の連結部側に向かう前記第三の外装材を受ける荷重受け部が設けられている請求項2に記載の車両の外装材の連結構造。
【請求項4】
衝撃荷重が加えられた前記第三の外装材が第一の連結部側に向かう方向を一方向とした場合に、前記変形部は、前記一方向とは異なる方向から前記荷重受け部に隣接して設けられている請求項3に記載の車両の外装材の連結構造。
【請求項5】
衝撃荷重が加えられた前記第三の外装材が第一の連結部側に向かう方向を一方向とした場合に、前記荷重受け部に受けられた前記第三の外装材を前記一方向とは異なる方向に導く案内部が設けられている請求項3又は4に記載の車両の外装材の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外装材の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両の外装材の連結構造に関する技術が特許文献1及び2に記載されている。特許文献1には、外装材としてのフェンダーとフェンダープロテクタとを連結するクリップが記載されている。このクリップは、平板状の基板の下面から突出する脚部を有しており、この脚部が、フェンダープロテクタの孔部に挿設されている。また基板の上面には、その上側に外板が平行に配設されている。この上板は断面L字形に形成されており、その上板の外縁が略直角に曲げられて基板の上面に固定されている。そしてフェンダーの曲げられた端部が上板と基板間に差し込まれて取付けられることで、このフェンダーがクリップを介してフェンダープロテクタに連結されるようになる。
【0003】
また特許文献2には、外装材としてのランプユニットと、このランプユニットの車両後側に配置されるフェンダパネルとを連結するクリップが記載されている。そしてランプユニットの上縁部は、車両後側に略直角に曲げられており、この曲げられた上縁部にクリップが固定されている。このクリップは、車幅方向に延びる板状に形成されていると共に、その車幅方向中央が車両上側に略コ字形に曲げられることで、車両前後方向に開口する挿入部が形成されている。そしてフェンダパネルの裏側に固定されたスペーサーの被挿入部が挿入部に差し込まれることで、このスペーサーの固定されたフェンダパネルとランプユニットとがクリップを介して連結されるようになる。また特許文献2では、車両前側からランプユニットに衝撃荷重が加えられることで、このランプユニットに固定されたクリップを破断させられるように構成されている。これにより、車両衝突時等において、衝撃荷重の加えられたランプユニットをフェンダパネルから離脱させることができ、衝撃を緩和させられるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-173614号公報
【特許文献2】特開2012-71652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこの種の車両では、その外面を構成する外装材が3つ以上隣接している場合、これら外装材同士を連結しておきたいとの要請がある。しかし上記したクリップ(連結部材)は、いずれも隣り合う二つの外装材を連結している。このため3つ以上の外装材を連結する場合には複数のクリップを用いなければならず、コストアップになる。また外装材のいずれかに衝撃荷重が加えられた際、この衝撃荷重の加えられた外装材をその他の外装材から移動(例えば連結部材から脱離)させて、衝撃の緩和を図ることが望ましい。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、より多くの外装材を、衝撃緩和性を確保しつつ連結部材で連結しておくことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両の外装材の連結構造は、車両の外面を構成するように隣接して配設される複数の外装材を、連結部材を用いて連結するための構造である。この種の構造では、より多くの外装材を、衝撃緩和性を確保しつつ連結部材で連結しておくことが望まれる。そこで本発明の連結部材には、第一の外装材と第二の外装材とを隣接させて連結する第一の連結部と、第一の外装材と第二の外装材に隣接させるように第三の外装材を連結する第二の連結部とが設けられている。そして第一の連結部と第二の連結部とは、そのいずれか一方に衝撃荷重が加えられることで相対移動可能に一体化されている。本発明の連結部材では、第一の連結部と第二の連結部とによって、三つの外装材を隣接させて連結しておけるようになる。そして第一の連結部と第二の連結部とを相対移動可能に一体化したことで、衝撃荷重の加えられた外装材を、連結部同士の相対移動によって他の外装材に対して移動させられるようになる。
【0007】
第2発明の車両の外装材の連結構造は、第1発明の車両の外装材の連結構造において、連結部材には、第一の連結部と第二の連結部間に、衝撃荷重の加えられた連結部を相対移動させるように変形する変形部が設けられている。本発明では、第一の連結部と第二の連結部とを、連結部間に設けられた変形部の変形によって、より確実に相対移動させられるようになる。
【0008】
第3発明の車両の外装材の連結構造は、第2発明の車両の外装材の連結構造において、連結部材には、衝撃荷重が加えられて第一の連結部側に向かう第三の外装材を受ける荷重受け部が設けられている。本発明では、衝撃荷重の加えられた第三の外装材を荷重受け部で受けられるため、この第三の外装材が他の外装材に当たり難くなる。
【0009】
第4発明の車両の外装材の連結構造は、第3発明の車両の外装材の連結構造において、衝撃荷重が加えられた第三の外装材が第一の連結部側に向かう方向を一方向とした場合に、変形部は、一方向とは異なる方向から荷重受け部に隣接して設けられている。本発明では、衝撃荷重の加えられた第三の外装材が、荷重受け部で受けられたのちに、適所に設けられた変形部の変形によって他の外装材から逸れる方向に導かれるようになる。
【0010】
第5発明の車両の外装材の連結構造は、第3発明又は第4発明の車両の外装材の連結構造において、衝撃荷重が加えられた第三の外装材が第一の連結部側に向かう方向を一方向とした場合に、荷重受け部に受けられた第三の外装材を一方向とは異なる方向に導く案内部が設けられている。本発明では、衝撃荷重の加えられた第三の外装材が、荷重受け部で受けられたのちに、案内部によって他の外装材から逸れる方向に導かれるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る第1発明によれば、より多くの外装材を、衝撃緩和性を確保しつつ連結部材で連結しておくことができる。また第2発明によれば、衝撃緩和性をより確実に確保することができる。また第3発明によれば、衝撃荷重の加えられた第三の外装材の移動方向を考慮しつつ、より多くの外装材を連結部材で適切に連結しておくことができる。また第4発明によれば、第三の外装材に衝撃荷重が加えられた際の衝撃緩和性を更に確実に確保することができる。そして第5発明によれば、第三の外装材に衝撃荷重が加えられた際の衝撃緩和性を一層確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両の概略斜視図である。
図2】車両の概略拡大斜視図である。
図3図2のIII-III線断面に相当する車両の概略断面図である。
図4】連結部材周辺を車両裏側から見た概略斜視図である。
図5】連結部材周辺を車両裏側から見た概略側面図である。
図6図4のVI-VI線断面に相当する車両の概略断面図である。
図7】連結部材の斜視図である。
図8】車両上側から衝撃荷重が加えられた外装材と連結部材の概略断面図である。
図9】車両前側から衝撃荷重が加えられた外装材と連結部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図9を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。また図1に示す車両では、便宜上、左側の各部材にのみ対応する符号を付す。なお図6は、第二の連結部の軸心を通る切断平面であり、連結部材を斜めに横断している。
【0014】
[車両の前部構造の概要]
車両の外装材の連結構造について説明する前に、先ず、車両2の前部構造の概要について説明する。図1に示す車両2では、その車両ボディの左右両側に、フロントドア3によって開閉可能に構成されたドア開口部4が設けられている。このドア開口部4の前端縁にはフロントピラー5が立設されており、左右のフロントピラー5によってルーフパネル6の前部が支持されている。そしてフロントピラー5は、フロントドア3のベルトラインBRよりも下側のピラー支柱部5aがフェンダパネル7(詳細後述)によって覆われている。また左右のフロントピラー5等とルーフパネル6とによって囲まれた位置にフロントガラス8が設けられている。
【0015】
また図1に示すピラー支柱部5aの車両後側には、窓枠ピラー5bが車両上下方向に延びるように設けられており、この窓枠ピラー5bの上端部がフロントピラー5に接続されている。また、窓枠ピラー5bとフロントピラー5とに囲まれた部分には固定ガラス9が固定されている。そして固定ガラス9は、図2に示すように、その頂部をフェンダパネル7側に向けた三角形状に形成されている。
【0016】
また図1に示す車両2には、その車室Rの前側にエンジンルームERが設けられている。このエンジンルームERの左右側面には、ホイールハウス10を構成する部材(図示しないエプロンパネルとサスタワー等)が設けられている。そしてホイールハウス10を構成する部材の車幅方向外側がフェンダパネル7(詳細後述)によって覆われている。また左右のフェンダパネル7間には、エンジンルームERの上部開口(図示省略)が形成されており、その上部開口がエンジンフード11によって開閉可能に構成されている。また車両2の前面部には、車幅方向に延びるフロントバンパ12が設けられていると共に、このフロントバンパ12の車幅方向外側に、左右のランプユニット13(詳細後述)が設けられている。この左右のランプユニット13は、車両2の前面から側面に延びるように形成されており、そのランプユニット13の後端部にフェンダパネル7が隣接するように配設されている。そしてランプユニット13の後端部は、図2に示すように、その頂部をフェンダパネル7側に向けた三角形状に形成されている。
【0017】
ここで図2に示すフェンダパネル7は、車両前後方向において、上記したランプユニット13と固定ガラス9とに挟まれるように配置されている。そしてランプユニット13と固定ガラス9とは、頂点をフェンダパネル側に向けた鋭角的なデザインを有していると共に、両部材間の車両前後方向の距離が比較的短くなっている。このためフェンダパネル7には、その車両上部側がランプユニット13と固定ガラス9とに挟まれることで、車両前後方向の寸法が小さくなるように引き締められた箇所が存在する。そしてフェンダパネル7は、その強度性確保の観点から、引き締められた箇所で上下に分割されており、上側のフェンダパネル71と下側のフェンダパネル72とから構成されるようになっている。
【0018】
[車両の外装材の連結構造]
そして車両の外装材の連結構造では、図2に示すフェンダパネル7(上側のフェンダパネル71と下側のフェンダパネル72)とランプユニット13とを、後述する連結部材20によって連結するようにしている。即ち、上下のフェンダパネル71,72が、第一の外装材及び第二の外装材に相当し、ランプユニット13が第三の外装材に相当する。そしてこの種の構成では、ランプユニット13とフェンダパネル7のいずれか一方に衝撃荷重が加えられた際、衝撃緩和性の確保の観点からフェンダパネル7とランプユニット13とを相対移動させられることが望ましい。そこで本実施例では、後述する連結部材20によって、より多くの外装材を、衝撃緩和性を確保しつつ連結しておくこととした。以下、車両の外装材の連結構造の構成を、フェンダパネル7、ランプユニット13、連結部材20の順に詳述する。
【0019】
[上下のフェンダパネル(第一の外装材、第二の外装材)]
先ず、図2に示すフェンダパネル7は、上記したように上側のフェンダパネル71と下側のフェンダパネル72とから構成されている。ここで上下のフェンダパネル71,72は、意匠的な観点から、図3に示すように所定の見切り隙X1をあけた状態で、車両上下方向から隣接している。またフェンダパネル7のデザイン性の観点から、上側のフェンダパネル71が下側のフェンダパネル72よりも車幅方向外側に張出すように配置されており、両部材間に段差が生じるようになっている(両部材の車幅方向の突出量の差X2)。
【0020】
そして上側のフェンダパネル71は、図2に示すように、側面視で略菱形に形成されており、固定ガラス9とランプユニット13間に配置されるようになっている。この上側のフェンダパネル71は、図3に示すように、その下縁部710が車幅方向内側に略直角に曲げられている。そして下縁部710には、後述する連結部材20用の第一連結孔71Hが車両上下方向に貫通するように形成されている。
【0021】
また図2に示す下側のフェンダパネル72は、側面視で略矩形に形成されており、上側のフェンダパネル71の車両下側に配設されている。この下側のフェンダパネル72は、ホイールハウス10側から固定ガラス9及びランプユニット13側に延びるように形成されている。そして下側のフェンダパネル72は、固定ガラス9とランプユニット13間に配置する上縁部720が、上側のフェンダパネル71に対して車両下側から隣接している。この下側のフェンダパネル72の上縁部720は、図3に示すように車両内側に向けて段差状に曲げられており、その下段をなす上縁部720が、略直角に車幅方向内側に曲げられている。そして、略直角に曲げられた上縁部720に、後述する連結部材20用の第二連結孔72Hが車両上下方向に貫通するように形成されている。
【0022】
[ランプユニット(第三の外装材)]
次に図2に示すランプユニット13は、上記したようにフェンダパネル7の車両前側に配置されている。このランプユニット13は、図4及び図5に示すように、ランプ本体130と、このランプ本体130の車両後側に固定されたランプリテーナ131とを有している。そして、ランプリテーナ131の後面には、後述する連結部材20用のランプ側連結孔13Hが車両前後方向に延びるように設けられている。なおランプユニット13は、後述するように連結部材20に連結された状態とされて、ブラケット70等を介して車両ボディ側に固定されている。そして図6を参照して、ランプリテーナ131は、そのランプ側連結孔13Hの車両上側に位置する後面部分が、後述する連結部材20を臨むように配置されている。このランプリテーナ131の後面部分は、車両上側に向かうにつれて車両前側に湾曲する凸曲面状に形成されている。そして、ランプリテーナ131の凸曲面状の部分によって案内部60が構成され、この案内部60によって、後述するようにランプユニット13を車両下側に導けるようになっている(図9参照)。
【0023】
[連結部材]
そして図4及び図5に示す連結部材20は、第一の連結部21と第二の連結部22とを有し、上記した上下のフェンダパネル71,72とランプユニット13とを連結できるように構成されている。また図7を参照して、第一の連結部21と第二の連結部22間には中間部23が設けられており、この中間部23によって両連結部21,22が一体に形成されている。そして、連結部材20の中間部23には荷重受け部61と変形部62とが設けられていると共に、後述する変形部62の変形によって両連結部21,22を相対移動させられるようになっている。
【0024】
先ず、図7に示す第一の連結部21は、車両前後方向に長い略矩形の板状に形成されており、上記した下側のフェンダパネル72の上縁部720に重ねることができる。この第一の連結部21の下面210には、図3に示すように、中空の連結突部30が車両下側に突出するように設けられている。そして連結突部30の周縁には、その半径方向内側に撓み変形可能な係止部31が設けられており、後述するように下側のフェンダパネル72の第二連結孔72Hの周縁に係止できるようになっている。
【0025】
また図7を参照して、第一の連結部21の上面211には、その車幅方向内側の縁部に、車両上側に立ち上がる内立壁部32が車両前後方向に延びるように形成されている。また第一の連結部21の前後の縁部にも、それぞれ車両上側に立ち上がる前立壁部33と後立壁部34とが形成されている。この前後の立壁部33,34は、車幅方向外側に向かうにつれて次第に車両下側に向かうように傾斜している。そして前後の立壁部33,34間には、車両前後方向に延びる上壁部35が、第一の連結部21の上面211と概ね平行となるように渡されて固定されている。この上壁部35は、車幅方向の寸法が第一の連結部21の上面211よりも小さくされており、この第一の連結部21の車幅方向外側に配置されている。そして図3を参照して、第一の連結部21の上面211と上壁部35間に適度な隙を設けることで、この上壁部35と上面211間に上記した上側のフェンダパネル71の下縁部710を挿入できるようになっている。
【0026】
また図7を参照して、第一の連結部21の上面211には、前後一対の係止片36,37が、車両前後方向に適宜の間隔をあけて設けられている。この前後一対の係止片36,37は、内立壁部32から上壁部35側に延びていると共に、上壁部35に設けられた切欠き部350を通じて車両上側に撓み変形できるように構成されている。そして前後一対の係止片36,37が第一の連結部21の上面211に対して車両上側に撓むことで、各係止片36,37と上面211間に上記した上側のフェンダパネル71の下縁部710を差し込めるようになっている。また図3を参照して、各係止片36,37は、その先端部の下部に当て面部38が設けられており、この当て面部38は、車幅方向内側に向かうにつれて次第に車両下側に傾斜している。さらに各一対の係止片36,37の先端部には、車両下側に突出する係止爪39が設けられている。
【0027】
また第一の連結部21の車両前側には、図7に示すように、中間部23が一体に設けられていると共に、この中間部23の車両前側に後述する第二の連結部22が設けられている。ここで中間部23は、第一の連結部21の前端から車両前側に延びる上板部40と、この上板部40の前端から略直角に車両下側に延びる前板部41とを有している。また中間部23の車幅方向内側には、車両上下方向に延びる内板部42が設けられており、この内板部42の上縁と前縁とが上板部40と前板部41とにつながっている。そして、中間部23の上板部40には、第一の連結部21の内立壁部32が延設されており、この延設された内立壁部32によって上板部40の強度性が確保されている。
【0028】
また中間部23には、図6及び図7を参照して、ランプユニット13を受け止め可能な荷重受け部61と、第一の連結部21と第二の連結部22を相対移動させる変形部62とが形成されている。荷重受け部61は、上記した中間部23の上板部40に延設されている内立壁部32で形成されている。この荷重受け部61としての内立壁部32は、上板部40の前端部まで延設されており、後述するように車両前側から衝撃荷重が加えられたランプユニット13を受けられる位置に配置されている(図9参照)。また変形部62は、中間部23の前板部41で形成されている。この変形部62としての前板部41は、上記した上板部40の車両下側に隣接していると共に、内立壁部32で補強された上板部40に比して変形し易くなっている。即ち、変形部62としての前板部41は、後述するように車両上側から荷重が加えられることで、上板部40との境界となる前上角部63を基点に車両後側に傾くように変形(撓み変形又は折れ変形)し易くなっている(図8参照)。
【0029】
そして図6及び図7を参照して、中間部23の前板部41には、第二の連結部22が車両前側に突出するように設けられている。この第二の連結部22は、図7に示す上下の突片50,51と、この上下の突片50,51間に渡された中間突片52とから断面略H字状に形成されている。そして第二の連結部22は、上下の突片50,51の車幅方向の寸法が図7に示すように前端に向かうにつれて次第に小さくなっており、図6に示すランプリテーナ131のランプ側連結孔13Hにスムーズに差し込めるようになっている。
【0030】
[外装材の組付け作業]
図2に示す車両2には、上記したように、フェンダパネル7を構成する上側のフェンダパネル71と下側のフェンダパネル72とが車両上下方向から隣接している。また、フェンダパネル7の車両前側にはランプユニット13が隣接している。この種の車両2では、上下のフェンダパネル71,72とランプユニット13(三つの外装材)を一つの連結部材20で連結することが望ましい。さらにこの種の構成では、例えばランプユニット13に衝撃荷重が加えられた際にその衝撃緩和性を確保することが望ましい。
【0031】
そこで図7に示す車両の外装材の連結構造では、その連結部材20に、上下のフェンダパネル71,72を隣接させて連結する第一の連結部21と、フェンダパネル7に隣接させるようにランプユニット13を連結する第二の連結部22とが設けられている。そして第一の連結部21と第二の連結部22とは、そのいずれか一方に衝撃荷重が加えられることで相対移動可能に一体化されている。上記した構成によれば、上下のフェンダパネル71,72とランプユニット13、即ち、三つの外装材を隣接させて連結しておけるようになる。そして第一の連結部21と第二の連結部22とを相対移動可能に一体化したことで、衝撃荷重の加えられた外装材(例えば後述するランプユニット13)を、連結部21,22同士の相対移動によって他の外装材に対して移動させられるようになる。そこで以下に、外装材の連結時及び衝撃荷重入力時の連結部材20の働きを具体的に説明する。
【0032】
[上下のフェンダパネルの連結手順]
上記した構成では、先ず、図3に示すように車両ボディに組付けられた下側のフェンダパネル72の上縁部720に連結部材20を取付けておく。このとき上縁部720の第二連結孔72Hに、第一の連結部21に設けられた連結突部30を挿入する。そして連結突部30の係止部31を第二連結孔72Hの周縁に係止することで、この連結突部30の設けられた第一の連結部21が、下側のフェンダパネル72に取付けられる。次に、上側のフェンダパネル71を、車幅方向外側から車両ボディ側に近づけていく(図3の矢線A1で示す方向を参照)。つづいて上側のフェンダパネル71の下縁部710を、第一の連結部21の上面211と上壁部35間に挿入していく。そして上側のフェンダパネル71の下縁部710が、第一の連結部21に設けられた係止片36,37の当て面部38に当てられる。この状態で上側のフェンダパネル71を差し込んでいくことで、その下縁部710が係止片36,37を車両上側に撓ませながら当て面部38を乗り越えるようになる。そして上側のフェンダパネル71は、その下縁部710の第一連結孔71Hの周縁に各係止片36,37の係止爪39が係止されることで、第一の連結部21を介して上側のフェンダパネル71に連結されるようになる。
【0033】
こうして図3に示す上側のフェンダパネル71と下側のフェンダパネル72とは第一の連結部21を介して連結されるようになり、この第一の連結部21の厚み寸法が、両フェンダパネル71,72の見切り隙X1となる。こうして、両フェンダパネル71,72の見切り隙X1を第一の連結部21の厚み寸法で規定することで、この見切り隙X1の管理が容易になる。また第一の連結部21(係止片36,37)に当て面部38を設けたことで、上側のフェンダパネル71の差し込み量を調整することができ、意匠デザインの再現性の確保に資する構成となる。即ち、下側のフェンダパネル72は、その下縁部710が当て面部38を乗り越えた時点で連結部材20に係止される。こうして上側のフェンダパネル71の差し込み量を、当て面部38を基準に設定することで、両フェンダパネル71、72の車幅方向の突出量の差X2の管理(段差管理)を容易に行うことができる。
【0034】
[ランプユニットの連結手順]
つづいて図6を参照して、ランプユニット13の連結手順について説明する。ここで上下のフェンダパネル71,72が連結部材20で連結された状態では、その連結部材20の第二の連結部22が、中間部23の前板部41から車両前側に突出するように配置されている。そこでランプユニット13を車両前側から後側に移動させて、そのランプリテーナ131のランプ側連結孔13Hに第二の連結部22を差し込んで挿設する(図6の矢線A2で示す方向を参照)。これにより、ランプユニット13は、上下のフェンダパネル71,72の車両前側に隣接するように第二の連結部22にて連結される。こうして上記した構成では、連結部材20(一つの部材)によって、上下のフェンダパネル71,72とランプユニット13とを、位置精度良く隣接させて連結できるようになる。
【0035】
[衝撃緩和時の連結部材の働き]
次にランプユニット13を一例に、衝撃緩和時の連結部材20の働きを説明する。先ず、車両2においては、図8に示すようにランプユニット13の車両上側から衝撃荷重F1が加えられることがある(図8では、便宜上、衝撃荷重の加えられる方向を示す矢線に符号F1を付す)。このような場合には、衝撃荷重F1の加えられたランプユニット13を車両下側に移動させて、衝撃を緩和することが望ましい(図8の矢線A3で示す方向を参照)。そこで上記した構成では、衝撃荷重F1の加えられたランプユニット13を、連結部21,22同士の相対移動によって、フェンダパネル7に対して車両下側に移動させられるように構成されている。即ち、ランプユニット13と第二の連結部22とに衝撃荷重F1が加えられることで、この第二の連結部22が変形部62(前板部41)を車両後側に傾くように変形させながら、第一の連結部21に対して相対移動するようになる。そして変形部62の変形に伴って第二の連結部22が次第に車両下側を向くことで、この第二の連結部22がランプユニット13のランプ側連結孔13Hから部分的に抜き出されたり、完全に抜け外れて離脱したりするようになる。これにより、車両上側から衝撃荷重F1の加えられたランプユニット13を、フェンダパネル7に対して車両下側に移動させられるようになり、衝撃緩和性の確保に資する構成となる。
【0036】
また車両2においては、図9に示すように、ランプユニット13に対して車両前側から衝撃荷重F2が加えられることがある(図9では、便宜上、衝撃荷重の加えられる方向を示す矢線に符号F2を付す)。このような場合には、衝撃荷重F2の加えられたランプユニット13が第一の連結部21側、即ち、車両後側(一方向)に移動するようになる。そこで連結部材20には、荷重受け部61としての内立壁部32が、車両後側に移動するランプユニット13を受けられる位置に配置されている。このため衝撃荷重F2の加えられたランプユニット13を荷重受け部61で受けられるようになり、このランプユニット13がフェンダパネル7に直に当たり難くなる。
【0037】
さらに荷重受け部61に当てられたランプリテーナ131の後面部は、図9に示すように凸曲面状の案内部60となっている。また、連結部材20では、変形部62としての前板部41が、上記した荷重受け部61の車両下側(一方向とは異なる方向)に隣接している。このため荷重受け部61に受けられたランプユニット13は、先ず、案内部60としての後面部の曲面形状に沿って車両下側に導かれるようになる(図9の矢線A3で示す方向を参照)。そしてランプユニット13を連結する第二の連結部22に車両下側の荷重が加えられる。これにより、第二の連結部22が変形部62(前板部41)を車両後側に傾くように変形させながら、第一の連結部21に対して相対移動するようになる。そして変形部62の変形に伴って第二の連結部22が次第に車両下側を向くことで、この第二の連結部22がランプユニット13のランプ側連結孔13Hから部分的に抜き出されたり、完全に抜け外れて離脱したりするようになる。これにより、車両前側から衝撃荷重F2の加えられたランプユニット13を、フェンダパネル7から逸れるように車両下側に移動させられるようになる。
【0038】
以上説明した通り、本実施例の連結部材20では、第一の連結部21と第二の連結部22とによって、三つの外装材(71,72,13)を隣接させて連結しておけるようになる。そして第一の連結部21と第二の連結部22とを相対移動可能に一体化したことで、衝撃荷重の加えられたランプユニット13を、連結部21,22同士の相対移動によってフェンダパネル7(他の外装材)に対して移動させられるようになる。このため本実施例によれば、より多くの外装材を、衝撃緩和性を確保しつつ連結部材20で連結しておくことができる。
【0039】
更に本実施例では、第一の連結部21と第二の連結部22とを、連結部間に設けられた変形部62の変形によって、より確実に相対移動させられるようになる。また本実施例では、衝撃荷重の加えられたランプユニット13(第三の外装材)を荷重受け部61で受けられるため、このランプユニット13がフェンダパネル7に当たり難くなる。また本実施例では、衝撃荷重の加えられたランプユニット13が、荷重受け部61で受けられたのちに、適所に設けられた変形部62の変形によってフェンダパネル7から逸れる方向に導かれるようになる。そして本実施例では、衝撃荷重の加えられたランプユニット13が、荷重受け部61で受けられたのちに、案内部60によってフェンダパネル7から逸れる方向に導かれるようになる。
【0040】
本実施形態の車両の外装材の連結構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。例えば本実施形態では、衝撃荷重の加えられたランプユニットをフェンダパネルに対して移動させる例を説明した。これとは異なり、衝撃荷重の加えられたフェンダパネルをランプユニットに対して移動させるように構成してもよい。例えば中間部の前板部を補強して、中間部の上板部を相対的に脆弱化して変形し易くする。こうすることで、車幅方向から衝撃荷重がフェンダパネルに加えられた際に、このフェンダパネルを、変形部としての上板部を変形させながらランプユニットに対して車幅方向内側に移動させることができる。また第一の連結部と第二の連結部は、対応する外装材を連結可能な各種の構成(形状、寸法等)を取ることができる。そして第二の連結部は、第一の連結部の両端(例えば図7では前後端)に設けることができ、また第二の連結部にて複数の外装材を連結できるように構成することもできる。
【0041】
また本実施形態では、変形部の構成を例示したが、変形部の構成を限定する趣旨ではない。例えば変形部は、溝部や薄肉部分や切欠き等の形成された脆弱な箇所を基点に変形させることができ、変形部自体を脆弱化して変形し易くすることもできる。また荷重受け部として、内立壁部(リブ)を用いる構成を説明したが、中間部の肉厚な部分で構成してもよく、内立壁部とは別のリブ等の補強構造で構成することもできる。また案内部は、第三の外装材と連結部材の少なくとも一方に設けることができ、例えば荷重受け部の端面を曲面状や傾斜状にして案内部を構成することもできる。また荷重受け部と案内部とは、可能ならば第一の連結部と第二の連結部の少なくとも一方に設けることができ、また荷重受け部と案内部の少なくとも一方を省略することもできる。なお第二の連結部に荷重受け部を設ける場合、この荷重受け部は、衝撃荷重が加えられて第二の連結部側(一方向)に向かう第一又は第二の外装材を受けられるように構成される。そして案内部によって外装材を一方向とは異なる方向に導く場合、この異なる方向とは、車両上下方向のほか、車幅方向等の適宜の向きに設定することができる。また同様に、荷重受け部と変形部の位置も、適宜設定することができる。
【0042】
そして本実施形態では、外装材として上下のフェンダパネルとランプユニットを例示したが、外装材の種類を限定する趣旨ではない。即ち、本実施例の構成は、車両の前面や後面や左右の側面やルーフ部分等の適宜の位置に配設される外装材同士の連結に用いることができる。また各連結部は、上側のフェンダパネルと下側のフェンダパネルのように同種の外装材を連結することができ、別種の外装材を連結することもできる。
【符号の説明】
【0043】
2 車両
3 フロントドア
4 ドア開口部
5 フロントピラー
5a ピラー支柱部
5b 窓枠ピラー
6 ルーフパネル
7 フェンダパネル
71 上側のフェンダパネル(本発明の第一の外装材)
71H 第一連結孔
710 (上側のフェンダパネルの)下縁部
72 下側のフェンダパネル(本発明の第二の外装材)
72H 第二連結孔
720 (下側のフェンダパネルの)上縁部
8 フロントガラス
9 固定ガラス
10 ホイールハウス
11 エンジンフード
12 フロントバンパ
13 ランプユニット(本発明の第三の外装材)
13H ランプ側連結孔
130 ランプ本体
131 ランプリテーナ
20 連結部材
21 第一の連結部
210 (第一の連結部の)下面
211 (第一の連結部の)上面
22 第二の連結部
23 中間部
30 連結突部
31 係止部
32 内立壁部
33 前立壁部
34 後立壁部
35 上壁部
36,37 係止片
38 当て面部
39 係止爪
40 上板部
41 前板部
42 内板部
50,51 突片
52 中間突片
60 案内部
61 荷重受け部
62 変形部
63 前上角部
70 ブラケット
350 切欠き部
BR ベルトライン
ER エンジンルーム
R 車室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9