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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161199
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】熱融着性積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231030BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231030BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 M
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071406
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 和樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA11
4F100AK07A
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100AK65
4F100AK65A
4F100BA03
4F100BA07
4F100GB16
4F100JA06
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JK06
4F100JL12
4F100JL12A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】樹脂コート紙容器の蓋材において好適に用いられ、特に樹脂コート紙容器との間で適切なヒートシール性能を実現できるとともに、成膜性にも優れる、熱融着性の積層フィルムを提供する。
【解決手段】(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層がポリプロピレン及びエチレン-1-ブテン共重合体を含有し、
(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれ直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
(A)シール層の上記エチレン-1-ブテン共重合体の含有量が、35から70質量%である、上記積層フィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層がポリプロピレン及びエチレン-1-ブテン共重合体を含有し、
(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれ直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
(A)シール層の上記エチレン-1-ブテン共重合体の含有量が、35から70質量%である、上記積層フィルム。
【請求項2】
前記エチレン-1-ブテン共重合体の密度が、850から910kg/mである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリプロピレンが、ホモポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
ポリエチレン樹脂コート紙容器の封止に使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱融着性の積層フィルムに関し、より具体的には樹脂コート紙容器の蓋材において好適に用いられ、特に樹脂コート紙容器との間で適切なヒートシール性能を実現できるとともに、製膜性にも優れる、熱融着性の積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヨ-グルトなどの乳製品、納豆、即席麺等の各種食品の容器として、デザインの多様化に伴う印刷の鮮明性への要求や廃棄時の環境問題に対応して紙容器の使用が一般化している。該紙容器は耐水性等の目的で通常その内面がポリエチレン等の各種樹脂でコートされており、この樹脂コート紙容器の樹脂コート層とヒートシールを行うため、シール層を有する積層フィルムを蓋材として使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
近年、樹脂コート紙容器の性能に対する要求はさらに高まり、樹脂コート紙容器との間で適切なヒートシール性能、より具体的には比較的低温で十分なヒートシール強度が実現できるとともに、開封時には紙容器からの紙剥け等を生じずに蓋材の剥離が可能となる様なヒートシール性能を有する蓋材が求められている。また、生産効率や保管の便宜等の観点から、フィルムのべたつきによる製膜時のロールへの張り付きが抑制されるとともに、フィルムのブロッキングが適切に防止されることも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-058642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術背景に鑑み、本発明は、樹脂コート紙容器の蓋材において好適に用いられ、特に樹脂コート紙容器との間で適切なヒートシール性能を実現できるとともに、製膜性にも優れる、熱融着性の積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、(A)シール層がポリプロピレン及びエチレン-1-ブテン共重合体を含有し、(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれ直鎖状低密度ポリエチレンを含有する上記積層フィルムにおいて、(A)シール層の上記エチレン-1-ブテン共重合体の含有量を特定範囲に設定することで、樹脂コート紙容器との間で適切なヒートシール性能を実現できるとともに、優れた製膜性も実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層がポリプロピレン及びエチレン-1-ブテン共重合体を含有し、
(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれ直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
(A)シール層の上記エチレン-1-ブテン共重合体の含有量が、35から70質量%である、上記積層フィルム、に関する。
【0007】
以下、[2]から[4]は、いずれも本発明の好ましい一態様又は一実施形態である。
[2]
前記エチレン-1-ブテン共重合体の密度が、850から910kg/mである、[1]に記載の積層フィルム。
[3]
前記ポリプロピレンが、ホモポリプロピレンである、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]
ポリエチレン樹脂コート紙容器の封止に使用される、[1]から[3]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、樹脂コート紙容器との間で適切なヒートシール性能を実現できるとともに、優れた製膜性も実現できるなど、実用上高い価値を有する性質を、従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えたものであり、食品包装をはじめとする各種用途において、好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層がポリプロピレン及びエチレン-1-ブテン共重合体を含有し、
(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれ直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
(A)シール層の上記エチレン-1-ブテン共重合体の含有量が、35から70質量%である、上記積層フィルムである。
すなわち、本発明の積層フィルムは、その(B)コア層、及び(C)ラミネート層に直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、その(A)シール層に、ポリプロピレン及び特定量のエチレン-1-ブテン共重合体を含有する。以下、これら各成分の詳細について説明する。
【0010】
ポリプロピレン
本発明の積層フィルムの少なくとも(A)シール層において使用されるポリプロピレンは、一般にポリプロピレン、プロピレン重合体、プロピレン系重合体の名称で製造・販売されている樹脂で、通常、密度が890~930kg/m程度のプロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)又は、プロピレン共重合体、すなわち、プロピレンと共に、他の少量のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のコモノマーから導かれる共重合体である。本発明においてはホモポリプロピレン、及びプロピレン共重合体のいずれを用いてもよいが、ホモポリプロピレンを用いることが好ましい。

共重合体である場合には、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、ブロック共重合体が特に好ましい。プロピレンの共重合体である場合における他のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、エチレンと炭素原子数が4~20程度のα-オレフィンを例示することができる。このような他のα-オレフィンは、1種単独で又は2種以上のα-オレフィンを組み合わせて共重合させてもよい。
【0011】
これらポリプロピレンの中でも、得られる積層フィルムの耐熱性や(A)熱融着層との装用性等のバランスから、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が110~170℃、とくに115~165℃の範囲にあるプロピレン重合体が好ましく用いられる。
【0012】
本発明において用いられるポリプロピレンが単独で、又はエチレン系重合体、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体、粘着付与樹脂等の他の樹脂とのブレンドで、フィルム形成能を有する限りにおいて、そのメルトフローレート(MFR)は特に限定はされないが、押出加工性等の点からメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2160g荷重)は通常、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~70g/10分の範囲にある。
【0013】
本発明において用いられるポリプロピレンとしては、2種以上のポリプロピレンを組合せて使用することもできる。
【0014】
本発明において用いられるポリプロピレンは、種々公知の製造方法、具体的には、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やシングルサイト触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。特にはシングルサイト触媒を用いて製造することができる。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。メタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物及び上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
【0015】
ポリプロピレンには、本発明の目的に反しない限りにおいて、シリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等の各種添加剤を配合することができる。
【0016】
エチレン-1-ブテン共重合体
【0017】
本発明の積層フィルムの少なくとも(A)シール層において使用されるエチレン-1-ブテン共重合体は、エチレンから導かれる構成単位と1-ブテンから導かれる構成単位とを有する共重合体である。
エチレン-1-ブテン共重合体は、エチレンから導かれる構成単位と1-ブテンから導かれる構成単位とを有していればよく、それ以外の構成単位を有していてもよく、それ以外の構成単位を有さずエチレンから導かれる構成単位と1-ブテンから導かれる構成単位のみで構成されていてもよい。
【0018】
エチレン-1-ブテン共重合体がエチレンから導かれる構成単位及び1-ブテンから導かれる構成単位以外の他の構成単位を有している場合の、当該他の構成単位にも特に制限はなく、エチレン及び1-ブテンと共重合可能な単量体から導かれる構成単位を適宜使用することができる。
上記他の構成単位として、プロピレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等のプロピレン以外のα-オレフィンから導かれる構成単位、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエンにから導かれる構成単位を使用することができる。
【0019】
エチレン-1-ブテン共重合体の密度にも特に制限はないが、通常850から910kg/mであり、好ましくは855から908kg/mであり、特に好ましくは860から906kg/mである。本発明の効果を適切に実現する等の観点からは、密度906kg/m以下の、いわゆる改質剤やゴムに分類される密度のものを使用することが好ましい。
【0020】
エチレン-1-ブテン共重合体の融点にも特に制限はないが、通常100℃以下であり、好ましくは98℃以下であり、特に好ましくは96℃以下である。
【0021】
エチレン-1-ブテン共重合体のMFRにも特に制限はないが、230℃、2.16kg荷重で測定したMFRは通常0.1から80g/分であり、好ましくは0.2から70g/分であり、特に好ましくは0.3から60g/分である。
【0022】
エチレン-1-ブテン共重合体は、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法により製造することができる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いたスラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等があげられる。
また、下記直鎖状低密度ポリエチレンの製造方法において説明、例示した各種触媒や製造方法も、エチレン-1-ブテン共重合体の製造において適宜使用することができる。
【0023】
直鎖状低密度ポリエチレン
本発明において少なくとも(B)コア層及び(C)ラミネート層において使用される直鎖状低密度ポリエチレンとしては、当該技術分野において一般に直鎖状低密度ポリエチレンとして知られているものを適宜用いることができる。その様な直鎖状低密度ポリエチレンとして、エチレンと、αーオレフィンとの共重合体を用いることができ、チーグラー触媒、メタロセン触媒等の公知の触媒を用いた製造方法により合成したものを用いることができる。
【0024】
α-オレフィンとしては、炭素数が3~20の化合物を用いることができ、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。α-オレフィンは、好ましくは、炭素数4、6又は8の化合物若しくはこれらの混合物であり、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン若しくはこれらの混合物である。
尤も、重合の工程でエチレンを多量化してα-オレフィンを生成させることもでき、この場合は実質的にエチレンのみを原料として製造することもできる。
【0025】
直鎖状低密度ポリエチレンは、市販品であってもよく、例えば、宇部丸善ポリエチレン株式会社製2040F(C-LLDPE、MFR:4.0、密度:918kg/m)、株式会社プライムポリマー製エボリュー(登録商標)等を用いることができる。
【0026】
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは、890~940kg/mであり、より好ましくは、900~930kg/mである。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、コモノマー含量を調整することで適宜調整することができ、また触媒や重合温度等の重合条件を選択、調製することでも適宜調整することができる。
【0027】
直鎖状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2160g荷重)は、0.1~15g/10分であることが好ましく、0.5~12g/10minであることがより好ましく、0.7~11g/10minであることが特に好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2160g荷重)は、従来公知の方法により適宜調整することが可能であり、重合温度等の重合条件を調整したり、分子量調整剤を導入すること等で調整することが可能である。
【0028】
直鎖状低密度ポリエチレンは、チーグラー触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒をはじめとする従来公知の触媒を用いた従来公知の製造法により製造することができる。分子量分布が狭く、高強度のフィルムを形成し得る直鎖状低密度ポリエチレンを得る観点からは、シングルサイト触媒を用いることが好ましい。
【0029】
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができるため好ましい。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む触媒である。
【0030】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0031】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基等が挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。
【0032】
周期律表第IV族の遷移金属化合物において、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、炭素数1~20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基等が挙げられる。
【0033】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種または二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0034】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタン等のランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
【0035】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性
層状珪酸塩、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0037】
分子量分布が広く柔軟性や成形性に優れた直鎖状低密度ポリエチレンを得る観点からは、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒を用いることが好ましい。
好ましいチーグラー触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるチーグラー触媒として一般的に知られているものでよく、例えばチタン化合物および有機アルミニウム化合物を含む触媒であり、ハロゲン化チタン化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒、チタニウム、マグネシム、塩素等からなる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒等を例示することができる。このような触媒としては、より具体的には、無水マグネシウムジハロゲン化物のアルコール予備処理物と有機金属化合物との反応生成物にチタン化合物を反応させて得られる触媒成分(ai)と有機金属化合物(bi)からなる触媒、マグネシウム金属と水酸化有機化合物またはマグネシウムなどの酸素含有有機化合物、遷移金属の酸素含有有機化合物、およびアルミニウムハロゲン化物を反応させて得られる触媒成分(aii)と有機金属化合物の触媒成分(bii)とからなる触媒、(i)金属マグネシウムと水酸化有機化合物、マグネシウムの酸素含有有機化合物、およびハロゲン含有化合物から選んだ少なくとも一員、(ii)遷移金属の酸素含有有機化合物およびハロゲン含有化合物から選ばれた少なくとも一員、(iii)ケイ素化合物を反応させて得られる反応物と、(iv)ハロゲン化アルミニウム化合物を反応させて得られる固体触媒成分(aiii)と有機金属化合物の触媒成分(biii)とからなる触媒等を例示することができる。
【0038】
また、フィリップス触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるフィリップス触媒として一般的に知られているものでよく、たとえば酸化クロム等のクロム化合物を含む触媒系であり、具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア等の固体酸化物に、三酸化クロム、クロム酸エステル等のクロム化合物を担持した触媒を例示することができる。
【0039】
(A)シール層
本発明の積層フィルムを構成する(A)シール層は、本発明の積層フィルムを用いて包装フィルム、包装袋等を形成する際に、樹脂コート紙容器等の他の部材と融着されるケースが多い。このため、高いシール強度が得られるように、低融点の樹脂を用いることが好ましい。低融点の樹脂の好ましい例としては、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体等のエチレン系重合体;脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂等の粘着性付与樹脂、等を挙げることができるが、特に(A)シール層を構成するポリプロピレン及びエチレン-1-ブテン共重合体、中でもエチレン-1-ブテン共重合体に低融点のものを使用することで、高いシール強度を実現することができる。
【0040】
上述の様に(A)シール層は、ポリプロピレン及びエチレン-1-ブテン共重合体を含有する。
(A)シール層におけるエチレン-1-ブテン共重合体の含有量は、35から70質量%である。(A)シール層におけるエチレン-1-ブテン共重合体の含有量は、35から60質量%であることが好ましく、35から50質量%であることが特に好ましい。
(A)シール層におけるエチレン-1-ブテン共重合体の含有量が35質量%以上であることで、本発明の積層フィルムは樹脂コート紙容器等の他の部材との間で高いヒートシール強度を実現することができる。また、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する(B)コア層との間でも高い積層強度を実現することができる。
(A)シール層におけるエチレン-1-ブテン共重合体の含有量が70質量%以下であることで、本発明の積層フィルムは、フィルムのべたつきによる製膜時のロールへの張り付きが抑制されるとともに、フィルムのブロッキングも適切に防止される。
(A)シール層において使用されるエチレン-1-ブテン共重合体の詳細は、上述のとおりである。
【0041】
(A)シール層におけるポリプロピレンの含有量には特に制限はないが、樹脂コート紙容器等の他の部材とのヒートシール強度またはコア層との積層強度等の観点から、20から60質量%であることが好ましく、30から60質量%であることが特に好ましい。
(A)シール層において使用されるポリプロピレンの詳細は、上述のとおりである。
【0042】
(A)シール層の厚みには特に制限はないが、易開封性等の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることが特に好ましい。
一方、糸引き防止等の観点からは、20.0μm以下であることが好ましく、15.0μm以下であることが特に好ましい。
【0043】
本発明の積層フィルムを保管等する際のブロッキング防止の観点からは、(A)シール層は、ブロキング防止剤を含んでいてもよい。
ブロッキング防止剤としては、粉末状のシリカ、好ましくは合成シリカ、等を好適に使用することができる。粉末状のシリカを(A)シール層中に均一に分散させる観点からは、粉末状のシリカを、(A)シール層を構成するエチレン-1-ブテン共重合体との混和性に優れた樹脂中、例えば低密度ポリエチレン中に分散してマスターバッチを形成し、次いでマスターバッチをエチレン-1-ブテン共重合体中に添加してもよい。
【0044】
(B)コア層
本発明の積層フィルムを構成する(B)コア層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する。(B)コア層が直鎖状低密度ポリエチレンを含有することで、本発明の積層フィルムに、透明性、柔軟性、軽量性等の優れた特性を付与することができる。また、(B)コア層が直鎖状低密度ポリエチレンを含有することで、同じエチレン系の樹脂であるエチレン-1-ブテン共重合体を含有する(A)シール層、及び同じく直鎖状低密度ポリエチレンを含有する(C)ラミネート層と間で高い積層強度を実現することができる。
(B)コア層における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
【0045】
本発明の積層フィルムを構成する各層のうち、(A)シール層は適切なシール強度が得られるよう設計することが好ましく、(C)ラミネート層は(D)基材層等との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましいのに対して、(B)コア層はその様な制約が比較的少ないので、機械的性質等、本発明の積層フィルム全体に所望の物性、性能を付与することを優先して設計することができる。この場合、(B)コア層の厚みを、(A)シール層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みよりも大きなものとすることが好ましく、(A)シール層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みの和よりも大きなものとすることが特に好ましい。具体的には各層の厚み比でシール層/コア層/ラミネート層=7±4%/75±10%/18±6%であることが好ましい。
なお、(B)コア層の厚みは、10~85μmであることが好ましく、より好ましくは15~80μmの範囲にある。
【0046】
(C)ラミネート層
本発明の積層フィルムを構成する(C)ラミネート層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する。(C)ラミネート層が直鎖状低密度ポリエチレンを含有することで、本発明の積層フィルムに、透明性、柔軟性、軽量性等の優れた特性を付与することができる。また、(C)ラミネート層が直鎖状低密度ポリエチレンを含有することで、同じく直鎖状低密度ポリエチレンを含有する(B)コア層と間で高い積層強度を実現することができる。
(C)ラミネート層における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
【0047】
(C)ラミネート層は、必要又は所望に応じて、後述の(D)基材層をはじめとする他の層と積層することができる。
従って、(C)ラミネート層は、(D)基材層をはじめとする他の層との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましい。
例えば、(D)基材層をはじめとする他の層と同種の材料を使用することが好ましく、したがって(D)基材層に好ましく用いられる、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリエステル系当の材料を使用することが好ましい。
また、他の層との間のラミネート強度を更に向上するため、(C)ラミネート層の表面((B)コア層と積層する面とは反対側の面)に、コロナ処理、粗面化処理等の処理を行ってもよい。
【0048】
本発明の積層フィルムを保管等する際のブロッキング防止の観点からは、(C)ラミネート層は、ブロキング防止剤を含んでいてもよい。
ブロッキング防止剤としては、粉末状のシリカ、好ましくは合成シリカ、等を好適に使用することができる。粉末状のシリカを(C)ラミネート層中に均一に分散させる観点からは、粉末状のシリカを、(C)ラミネート層を構成する直鎖状低密度ポリエチレンとの混和性に優れた樹脂中、例えば低密度ポリエチレン中に分散してマスターバッチを形成し、次いでマスターバッチを石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン中に添加してもよい。
【0049】
(C)ラミネート層の厚みには特に制限はないが、1~20μmであることが好ましく、より好ましくは3~15μmの範囲にある。
【0050】
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層のいずれも、本発明の目的に反しない限りにおいて、各種添加材、充填材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、抗菌剤、防曇剤等を添加することができる。さらにまた、上述の必須の樹脂成分以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類、炭化水素樹脂、石油樹脂等を本発明の目的に反しない範囲で配合してもよい。
【0051】
積層フィルム
本発明の積層フィルムは、上述の様に、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する。本発明の積層フィルムにおいては、好ましくは(B)コア層を介して、(C)ラミネート層と(A)シール層とが積層されるが、それ以外の層が存在していてもよい。
【0052】
本発明の積層フィルムの製造にあたっては、種々公知のフィルム成形方法、例えば、予め、(C)ラミネート層、(B)コア層、及び(A)シール層となるフィルムをそれぞれ成形した後、当該フィルムを貼り合せて積層フィルムとする方法、多層ダイを用いて(B)コア層及び(A)シール層からなる複層フィルムを得た後、当該(B)コア層面に、(C)ラミネート層を押出して積層フィルムとする方法、多層ダイを用いて(C)ラミネート層及び(B)コア層からなる複層フィルムを得た後、当該(B)コア層面に、(A)シール層を押出して積層フィルムとする方法、あるいは、多層ダイを用いて(C)ラミネート層、(B)コア層及び(A)シール層からなる積層フィルムを得る方法などを採用することができる。
【0053】
また、本発明の積層フィルムの製造におけるフィルム成形方法としては、種々公知のフィルム成形方法、具体的には、T-ダイキャストフィルム成形方法、インフレーションフィルム成形方法を採用し得る。
本発明の積層フィルム及びそれを構成する各層は、延伸されていないフィルム(無延伸フィルム)であっても、延伸フィルムであってもよい。
【0054】
本発明の積層フィルムの厚さには特に限定はされないが、実用的な強度を確保する等の観点から、5μm以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。一方、例えば(D)基材層と積層された後においても実用的な可撓性を有する等の観点からは、通常100μm以下であり、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0055】
本発明の積層フィルムは延伸フィルムであっても無延伸フィルムであってもよいが、製造コストや柔軟性等の観点からは無延伸フィルムであることが好ましい。
機械的物性の向上の観点からは、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることが特に好ましい。
二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、多段延伸等の方法が適宜採用される。
二軸延伸の条件としては、公知の二軸延伸フィルムの製造条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を100℃~145℃、延伸倍率を4~7倍の範囲、横延伸温度を150~190℃、延伸倍率を8~11倍の範囲とすることが挙げられる。
【0056】
(D)基材層
所望に応じて、本発明の積層フィルムを、その(C)ラミネート層において、(D)基材層と積層することができる。
【0057】
(D)基材層には特に制限はなく、例えば通常プラスチック包装に使用されるフィルムを、好適に使用することができる。
好ましい(D)基材層の材質としては、例えば、各種ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン-エチレン共重合体、結晶性ポリブテン-1、結晶性ポリ4-メチルペンテン-1、低-、中-、或いは高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂から構成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。また、包装する内容物が酸素に敏感なものの場合には、上記フィルムに金属酸化物等を蒸着したフィルム、或いは有機化合物を被覆したフィルムや、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層を設けてもよい。
これらの材料からなるプラスチックフィルムは、未延伸、一軸延伸、或いは二軸延伸して用いられる。
【0058】
(D)基材層として、これらのプラスチックフィルムを単層で、或いは、二種以上を積層したものとして使用することができ、また、これらのプラスチックフィルムの一種、或いは、二種以上と、アルミニウム等の金属箔、紙、セロファン等を貼合わせて構成することもできる。
好ましい(D)基材層として、例えば、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエステルフィルムからなる単層フィルム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとPETを積層した二層構成のフィルム、PET/ナイロン/ポリエチレンを積層した三層構成のフィルム等が挙げられる。これらの積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることもできる。また、デザインを表現するインキ層を設けてもよい。
【0059】
(D)基材層を(C)ラミネート層に積層する方法には特に制限はないが、例えば押出しラミネート等により(C)ラミネート層に(D)基材層を直接積層することができる。また、ドライラミネート等により接着剤を介して(C)ラミネート層に(D)基材層を積層してもよい。接着剤としては、ウレタン系接着剤、酸変性ポリオレフィン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤等、通常のものを使用することができる。
(D)基材層の厚さは任意に設定することができるが、通常は、5~1000μm、好ましくは9~100μmの範囲から選択される。
【0060】
本発明の積層フィルム、及び本発明の積層フィルムの(C)ラミネート層に(D)基材層を積層した積層フィルムは、各種用途において好ましく使用され、特に包材として使用するのに適している。
【0061】
その様な包材の好ましい例として、蓋材を挙げることができる。すなわち、本発明の積層フィルム、及び本発明の積層フィルムの(C)ラミネート層に(D)基材層を積層した積層フィルムは、(A)シール層を容器最内層として用いる蓋材として用いることができる。本発明の積層フィルムは、樹脂コート紙容器との間で適切なヒートシール性能を実現できるので、樹脂コート紙容器の蓋材として特に好適に使用することができる。
容器蓋材として用いる場合は、本発明の積層フィルムをそのまま蓋材として用いても良いし、印刷して用いても良い。更に印刷されたあるいはされていない(D)基材層と貼り合せて蓋材にしても良い。又、用途によっては予め容器形状に合わせてカットして蓋材にしても良い。容器蓋材とする場合には、(D)基材層と貼り合せて使用することが好ましい。
【0062】
本発明の積層フィルムは、(A)シール層において各種被着体に熱融着させることにより熱シール層を形成させることができる。このような被着体としては樹脂コート紙容器が特に好ましい。樹脂コート紙容器の樹脂コートに使用する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を例示することができるが、ポリエチレンが特に好ましい。
樹脂コート紙容器は、トレー、カップ、ボトル、フィルム、シート等、種々の形状のものであることができる。本発明の積層フィルム、及び本発明の積層フィルムの(C)ラミネート層に(D)基材層を積層した積層フィルムは優れた開封性を有するので、樹脂コート紙容器の蓋材として用いたとき、紙剥けの発生を有効に抑制することができる。
【0063】
樹脂コート紙容器等の包装容器への収納物には特に制限はないが、食品、医薬品、医療器具、日用品、雑貨等の包装に好ましく用いることができる。本発明の積層フィルムの優れたヒートシール特性を活かし、食品等の液状物の包装容器には特に好適に用いられる。
【実施例0064】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0065】
実施例/比較例における物性、特性の評価は、以下の方法により行った。
(1)ヒートシール強度
各実施例/比較例で製造した積層フィルムをその(C)ラミネート層側の面で厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとハンドラミネートにて貼り合わせ試料フィルム(50mm×60mm)を作製した。
東罐興業株式会社製断熱性エンボス紙容器SMP-900E-2の側面から切り出した試験片(50mm×30mm)に、上記の試料フィルムを合わせ、精密ヒートシーラー(テスター産業製)を用いて温度160℃又は180℃、圧力0.2MPaで幅5mmのシールバーにより、1.0秒間ヒートシールした後、放冷し、次いでヒートシールしたサンプルから15mm幅の試験片を切り取り、23℃、50%RHの恒温室において引張速度500mm/分の条件で、万能型引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)で180度方向に剥離して最大荷重を測定し、ヒートシール強度(N/15mm)とした。
剥離面を観察し、剥離状態を以下の基準で評価した。
〇:凝集剥離で剥離しており、紙容器からの紙剥けは生じなかった。
△:凝集剥離で剥離しており、紙容器から部分的な紙剥けが生じた。
(2)製膜性
各実施例/比較例で製造した積層フィルムを製膜中に、製膜性を確認した。
〇:製膜性に問題なく、積層フィルムを得ることができた。
×:積層フィルムにべたつきがあり、ロールへの張り付きやフィルム間のブロッキングが発生し、サンプル採取が不可であった。
【0066】
実施例/比較例で用いた樹脂等の各構成成分の詳細は、以下のとおりである。
・直鎖状低密度ポリエチレン-1(LLDPE-1)
密度:931kg/m
MFR(2.16kg、190℃):2.1g/10分
融点:123℃
・直鎖状低密度ポリエチレン-2(LLDPE-2)
密度:924kg/m
MFR(2.16kg、190℃):3.8g/10分
融点:120℃
・ホモポリプロピレン(h-PP)
密度:910kg/m
MFR(2.16kg、230℃):7.0g/10分
融点:161℃
・エチレン-1-ブテン共重合体(EBR)
密度:885kg/m
MFR(2.16kg、210℃):2.9g/10分。
・直鎖状低密度ポリエチレン系アンチブロッキング剤(LLDPE系AB剤)
・直鎖状低密度ポリエチレンと合成ゼオライトとの混合物
密度:913kg/m
MFR(2.16kg、190℃):3.8g/10分
融点:113℃
【0067】
(実施例1)
各層を構成する成分を表1に示す配合で、それぞれ別々の押出機に供給し、Tダイ法によって(A)シール層/(B)コア層/(C)ラミネ-ト層からなる構成の、厚み50μmの三層共押出積層フィルムを製造した。各層の厚み比率は(A)シール層:(B)コア層:(C)ラミネート層=11:60:29であった。
得られた積層フィルムを用いて、シール強度、剥離状態、及び製膜性を評価した。積層フィルム製造中に製膜性も評価した。
結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2から6及び比較例1)
(C)シール層の組成を表1に示すものに変更したことを除くほか、実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、評価した。
結果を表1に示す。
比較例1においては、製膜性が×であるため、ヒートシール強度の評価に用いるサンプルを得ることができなかった。
【0069】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の積層フィルムは、樹脂コート紙容器との間で適切なヒートシール性能を実現できるとともに、優れた製膜性も実現できるなど、実用上高い価値を有する性質を高いレベルで兼ね備えたものであり、食品容器をはじめとする各種用途に好適であり、食品、流通、外食、ヘルスケア、看護、介護、宿泊などの産業の各分野において高い利用可能性を有する。