(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016121
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】アスファルト舗装構造物およびアスファルト補強材
(51)【国際特許分類】
E01C 11/16 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
E01C11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120203
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】松本 七保子
(72)【発明者】
【氏名】清水 幹雄
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AC02
2D051AG01
2D051AG11
2D051DA13
2D051DA14
2D051DB02
2D051EA02
2D051EA03
(57)【要約】
【課題】砕石層からのアスファルト層の剥離抵抗性を高めると共に、アスファルト層の下面にひび割れが発生するのを防止し、かつ、湿潤化による砕石層の変形を抑制することができるアスファルト舗装構造物およびアスファルト補強材を提供する。
【解決手段】アスファルト舗装構造物2は、路床4の上方に構築された砕石層6と、砕石層6の上方に構築されたアスファルト層8と、砕石層6とアスファルト層8との間に埋設されたアスファルト補強材10とを備える。アスファルト補強材10は、砕石層6とアスファルト層8との間に散布されるアスファルト乳剤Eを吸収して保持し、砕石層6の上面の凹凸に追従する厚みを有するシート20と、シート20に重ねられたジオグリッド22とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路床の上方に構築された砕石層と、前記砕石層の上方に構築されたアスファルト層と、前記砕石層と前記アスファルト層との間に埋設されたアスファルト補強材とを備え、
前記アスファルト補強材は、前記砕石層と前記アスファルト層との間に散布されたアスファルト乳剤を吸収して保持し、前記砕石層の上面の凹凸に追従する厚みを有するシートと、前記シートに重ねられたジオグリッドとを含むアスファルト舗装構造物。
【請求項2】
前記ジオグリッドは複数の開口を有する網状であり、
前記シートは前記砕石層側に配置され、前記ジオグリッドは前記アスファルト層側に配置されている、請求項1に記載のアスファルト舗装構造物。
【請求項3】
前記シートまたは前記ジオグリッドは、前記アスファルト層を構築する際における前記アスファルト層の材料温度で、軟化または溶融する材質から形成されている、請求項1または2に記載のアスファルト舗装構造物。
【請求項4】
前記シートは不織布から形成されている、請求項1から3までのいずれかに記載のアスファルト舗装構造物。
【請求項5】
路床の上方に構築される砕石層と、前記砕石層の上方に構築されるアスファルト層とを備えるアスファルト舗装構造物を補強するアスファルト補強材であって、
前記砕石層と前記アスファルト層との間に散布されるアスファルト乳剤を吸収して保持し、前記砕石層の上面の凹凸に追従する厚みを有するシートと、前記シートに重ねられたジオグリッドとを含み、
前記シートおよび前記ジオグリッドは、前記砕石層と前記アスファルト層との間に埋設されるアスファルト補強材。
【請求項6】
前記ジオグリッドは複数の開口を有する網状であり、
前記シートは前記砕石層側に配置され、前記ジオグリッドは前記アスファルト層側に配置される、請求項4に記載のアスファルト補強材。
【請求項7】
前記シートまたは前記ジオグリッドは、前記アスファルト層を構築する際における前記アスファルト層の材料温度で、軟化または溶融する材質から形成されている、請求項4または5に記載のアスファルト補強材。
【請求項8】
前記シートは不織布から形成されている、請求項1から3までのいずれかに記載のアスファルト補強材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装構造物と、アスファルト舗装構造物を補強するためのアスファルト補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アスファルト舗装構造物は、路床の上方に構築された砕石層と、砕石層の上方に構築されたアスファルト層とを備えている。
【0003】
アスファルト舗装構造物の施工直後においては、砕石層の上面とアスファルト層の下面とが密着しているが、砕石層からアスファルト層が剥離してしまう場合がある。このような場合には、アスファルト舗装構造物において荷重を受けるのが主としてアスファルト層のみとなるため、アスファルト舗装構造物としての層厚が減少し、アスファルト舗装構造物の強度が低下する。また、砕石層からのアスファルト層の剥離は、アスファルト層の土砂化をも招く。したがって、砕石層からのアスファルト層の剥離は、アスファルト舗装構造物の短寿命化の要因のひとつとして考えられている。
【0004】
砕石層からアスファルト層が剥離して、アスファルト舗装構造物の強度が低下していると、アスファルト層の上面に作用する荷重(たとえば車両通行時の輪荷重)によって、アスファルト層の下面にひび割れが生じやすい。
【0005】
そして、アスファルト層の下面にひび割れが発生すると、砕石層に存在する地下水がアスファルト層のひび割れに浸入することにより、アスファルト層の細粒分が流出してしまう。そうすると、アスファルト層のひび割れがアスファルト層の上部に向かって一層伸長することになる。このようなアスファルト層のひび割れも、アスファルト舗装構造物の寿命を短くする要因として挙げられる。
【0006】
このほか、アスファルト層の目地から浸入した雨水等が砕石層に到達することにより、砕石層が湿潤化して変形することも、アスファルト舗装構造物の短寿命化につながる。
【0007】
そこで、アスファルト舗装構造物の長寿命化を図るため、様々な技術が実用されている。たとえば、下記特許文献1には、アスファルト舗装構造物を補強する技術として、アスファルト層の中にシート状の補強材を敷設することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の補強技術では、アスファルト舗装構造物の長寿命化を図るには十分ではなく、さらなるアスファルト舗装構造物の長寿命化が求められている。
【0010】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、砕石層からのアスファルト層の剥離抵抗性を高めると共に、アスファルト層の下面にひび割れが発生するのを防止し、かつ、湿潤化による砕石層の変形を抑制することができるアスファルト舗装構造物およびアスファルト補強材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、上記課題を解決する以下のアスファルト舗装構造物が提供される。すなわち、路床の上方に構築された砕石層と、前記砕石層の上方に構築されたアスファルト層と、前記砕石層と前記アスファルト層との間に埋設されたアスファルト補強材とを備え、前記アスファルト補強材は、前記砕石層と前記アスファルト層との間に散布されたアスファルト乳剤を吸収して保持し、前記砕石層の上面の凹凸に追従する厚みを有するシートと、前記シートに重ねられたジオグリッドとを含むアスファルト舗装構造物が提供される。
【0012】
本発明のアスファルト舗装構造物においては、前記ジオグリッドは複数の開口を有する網状であり、前記シートは前記砕石層側に配置され、前記ジオグリッドは前記アスファルト層側に配置されているのが好ましい。前記シートまたは前記ジオグリッドは、前記アスファルト層を構築する際における前記アスファルト層の材料温度で、軟化または溶融する材質から形成されているのが望ましい。前記シートは不織布から形成されているのが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、上記課題を解決する以下のアスファルト補強材が提供される。すなわち、路床の上方に構築される砕石層と、前記砕石層の上方に構築されるアスファルト層とを備えるアスファルト舗装構造物を補強するアスファルト補強材であって、前記砕石層と前記アスファルト層との間に散布されるアスファルト乳剤を吸収して保持し、前記砕石層の上面の凹凸に追従する厚みを有するシートと、前記シートに重ねられたジオグリッドとを含み、前記シートおよび前記ジオグリッドは、前記砕石層と前記アスファルト層との間に埋設されるアスファルト補強材が提供される。
【0014】
本発明のアスファルト補強材においては、前記ジオグリッドは複数の開口を有する網状であり、前記シートは前記砕石層側に配置され、前記ジオグリッドは前記アスファルト層側に配置されるのが好適である。前記シートまたは前記ジオグリッドは、前記アスファルト層を構築する際における前記アスファルト層の材料温度で、軟化または溶融する材質から形成されているのが好都合である。前記シートは不織布から形成されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シートがアスファルト乳剤を吸収して保持するため、アスファルト乳剤を保持したシートによって砕石層とアスファルト層とを強く接着し、砕石層からのアスファルト層の剥離抵抗性を高めることができる。さらに、シートは、砕石層の上面の凹凸に追従する厚みを有するので、シートが砕石層の上面に敷設された際に、シートの下面が砕石層の上面の凹凸に沿って変形する。このため、アスファルト乳剤を吸収して保持したシートの下面と、砕石層の上面との接触面積が大きくなる。よって、本発明によれば、砕石層とアスファルト層との接着性を高めて、砕石層からのアスファルト層の剥離抵抗性を一層高めることができる。
【0016】
本発明においては、砕石層からのアスファルト層の剥離抵抗性を高めることができるので、アスファルト舗装構造物の層厚減少(強度低下)を抑制すると共に、ジオグリッドによってアスファルト舗装構造物に作用する荷重(たとえば車両通行時の輪荷重)を分散する。したがって、本発明によれば、アスファルト層の下面にひび割れが発生するのを防止することができる。
【0017】
本発明においては、シートがアスファルト乳剤を吸収して保持することから、アスファルト乳剤を保持したシートが防水機能を発揮し、砕石層とアスファルト層との間の水の流れを抑制する。したがって、アスファルト層の目地から浸入した雨水等が砕石層に到達することが妨げられ、湿潤化による砕石層の変形が抑制される。さらに、アスファルト乳剤を保持した不織布によって、砕石層に存在する地下水がアスファルト層に浸入すること(毛管水上昇)も妨げられるので、アスファルト層の細粒分の流出が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に従って構成されたアスファルト舗装構造物の断面図(上層路盤がアスファルト層に含まれる場合)。
【
図2】本発明に従って構成された他のアスファルト舗装構造物の断面図(上層路盤が砕石層に含まれる場合)。
【
図4】開口が三角形状である場合のジオグリッドの平面図。
【
図5】本発明に従って構成された他のアスファルト舗装構造物の断面図(アスファルト層1層、砕石層2層:上層路盤、下層路盤)。
【
図6】本発明に従って構成された他のアスファルト舗装構造物の断面図(アスファルト層1層、砕石層1層:下層路盤)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のアスファルト舗装構造物およびアスファルト補強材の好適実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1を参照して説明すると、アスファルト舗装構造物2は、路床4の上方に構築された砕石層6と、砕石層6の上方に構築されたアスファルト層8と、砕石層6とアスファルト層8との間に埋設されたアスファルト補強材10とを備える。
【0021】
図1に示す砕石層6は、主として下層路盤12から構成されている。下層路盤12は、クラッシャラン、クラッシャラン鉄鋼スラグ、再生クラッシャラン、切込砂利、山砂利、砂等から形成されている。
【0022】
図1に示すアスファルト層8は、下層路盤12の上方に構築された上層路盤14と、上層路盤14の上方に構築された基層16と、基層16の上方に構築された表層18とを含む。
【0023】
図1に示す上層路盤14は、安定処理路盤材から形成されている。上層路盤14が安定処理路盤材から形成されている場合には、上層路盤14はアスファルト層8に含まれる。一方、上層路盤14が安定処理路盤材から形成されていない場合には、上層路盤14は砕石層6に含まれ、アスファルト層8は、主に基層16および表層18から構成されることになる(
図2参照)。
【0024】
安定処理路盤材としては、たとえば、ストレートアスファルト等の瀝青材料を適宜の骨材に添加して加熱混合方式により製造したものを用いることができる。上記骨材は、単粒度砕石、砂等を配合したもの、または、クラッシャランもしくは地域産材料に必要に応じて砕石、砂利、鉄鋼スラグ、砂等の補足材を加えたものでよい。また、安定処理路盤材としては、セメント、石灰、またはセメントおよび瀝青材料を骨材に添加したものを用いることもできる。
【0025】
砕石層6に含まれる場合の上層路盤14(
図2参照)は、粒度調整砕石、粒度調整鉄鋼スラグ、再生粒度調整砕石、水硬性粒度調整鉄鋼スラグ等から形成され得る。
【0026】
基層16および表層18は、いずれもアスファルト混合物から構成され得る。ただし、基層16の骨材の粒度と、表層18の骨材の粒度とは異なるものが用いられ得る。基層16および表層18を構成するアスファルト混合物としては、常温アスファルト混合物でもよいが、常温アスファルト混合物よりも耐久性が優れる加熱アスファルト混合物であるのが好ましい。
【0027】
図1を参照して説明を続けると、アスファルト補強材10は、砕石層6とアスファルト層8との間に散布されたアスファルト乳剤Eを吸収して保持し、砕石層6の上面の凹凸に追従する厚みを有するシート20と、シート20に重ねられたジオグリッド22とを含む。
【0028】
シート20およびジオグリッド22は、砕石層6とアスファルト層8との間に埋設されている。具体的には、上層路盤14が安定処理路盤材から形成されている場合、上層路盤14はアスファルト層8に含まれるため、シート20およびジオグリッド22は、
図1に示すとおり、下層路盤12の上面と、上層路盤14の下面との間に埋設される。一方、上層路盤14が安定処理路盤材から形成されていない場合、上層路盤14は砕石層6に含まれるので、シート20およびジオグリッド22は、
図2に示すとおり、上層路盤14の上面と、基層16の下面との間に埋設される。
【0029】
図1に示す形態では、シート20が砕石層6側(下側)に配置され、ジオグリッド22がアスファルト層8側(上側)に配置されているが、これとは反対に、ジオグリッド22が砕石層6側(下側)に配置され、シート20がアスファルト層8側(上側)に配置されていてもよい。また、シート20およびジオグリッド22は、それぞれ一層でもよいが、
図2に示すように、ジオグリッド22の上下にシート20が配置されていてもよい。
【0030】
シート20は、不織布から形成されているのが好ましい。シート20は、短繊維または長繊維のいずれから形成されていてもよいが、長繊維と比較して、より多くのアスファルト乳剤Eを吸収して保持することができる短繊維から形成されているのが好適である。シート20においては、より多くのアスファルト乳剤Eを吸収して保持するものの方が、砕石層6とアスファルト層8との接着性を高めると共に、より優れた防水機能を発揮することになる。
【0031】
シート20は、砕石層6の上面の凹凸に追従する厚みを有するので、シート20が砕石層6の上面に敷設された際に、シート20の下面が砕石層6の上面の凹凸に沿って変形する。このため、アスファルト乳剤Eを吸収して保持したシート20の下面と砕石層6の上面との接触面積が大きくなる。
【0032】
シート20は、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル等の適宜の合成樹脂から形成され得る。合成樹脂のうち、アスファルト層8を構築する際におけるアスファルト層8の材料温度で、軟化または溶融する熱可塑性合成樹脂からシート20が形成されているのが望ましい。
【0033】
アスファルト層8を構築する際、加熱混合方式により製造された安定処理路盤材(上層路盤14の材料)の温度や、加熱アスファルト混合物(基層16、表層18の材料)の温度は、たとえば110~170℃程度の高温である。より具体的な例を挙げると、現場到着時のアスファルト層8の材料温度は160~170℃程度、敷きならし時のアスファルト層8の材料温度は120~150℃程度、一次転圧時のアスファルト層8の材料温度は110~140℃程度である。
【0034】
このため、このような温度(たとえば110~170℃)で、軟化または溶融する熱可塑性合成樹脂(たとえばポリプロピレン)からシート20が形成されていると、アスファルト層8を構築する際に、アスファルト層8の材料の温度によってシート20が軟化し、あるいは溶融した後に、シート20が冷却固化することになる。これによって、砕石層6の上面とアスファルト層8の下面とを接着する効果が、シート20に吸収されるアスファルト乳剤Eだけでなく、シート20自体によっても発揮される。
【0035】
図示の実施形態のジオグリッド22は、
図3に示すとおり、複数の開口24を有する網状である。このため、
図1に示す形態のように、ジオグリッド22がアスファルト層8側(上側)に配置されている場合には、ジオグリッド22の開口24にアスファルト層8の骨材が入り込むことにより、ジオグリッド22とアスファルト層8とが強固に連結される。なお、開口24の形状については、図示の実施形態では四角形状であるが、四角形状に限定されず、種々の形状(たとえば、
図4に示すような三角形状、あるいは図示していないが亀甲形状または円形状)が採用され得る。
【0036】
ジオグリッド22は、シート20と同様に、ポリオレフィン(たとえばポリプロピレン、ポリエチレン)等の適宜の合成樹脂から形成され得る。ただし、シート20と同一の材質から形成されている必要はない。
【0037】
ジオグリッド22は、シート20と同様に、アスファルト層8を構築する際におけるアスファルト層8の材料温度で、軟化または溶融する熱可塑性合成樹脂から形成されているのが好都合である。この場合には、砕石層6の上面とアスファルト層8の下面とを接着する効果が、ジオグリッド22によっても発揮されるからである。
【0038】
次に、上述したとおりのアスファルト舗装構造物2の施工方法について説明する。
【0039】
アスファルト舗装構造物2を施工する際は、まず、路床4および砕石層6を構築する。路床4および砕石層6の構築については、公知の方法を採用することができる。たとえば、在来地盤を油圧ショベル等の掘削機械によって所定の深さまで掘削し、次いで、ブルドーザ等の整地車両を用いて路床4の上面を均した後、路床4の表面をタイヤローラ等の転圧車両によって転圧することにより、路床4を構築することができる。
【0040】
路床4を構築したら、ダンプトラックで搬入した路盤材を、モータグレーダ等の整地車両を用いて路床4の上面に敷きならし、転圧車両によって締め固めることで砕石層6の上面を平坦に仕上げる。
【0041】
上記のとおり、
図1に示す砕石層6は、主として下層路盤12から構成されているので、
図1に示す砕石層6を構築する際は、下層路盤12を構築する工程を実施すればよい。一方、
図2に示す砕石層6は、下層路盤12および上層路盤14を含むので、
図2に示す砕石層6を構築する際には、下層路盤12を構築する工程と、上層路盤14を構築する工程を実施する。
【0042】
砕石層6を構築した後、砕石層6の上面に、アスファルト乳剤Eを散布すると共にアスファルト補強材10を敷設する。
図1には、砕石層6の上面にアスファルト乳剤Eを散布した後に、アスファルト補強材10を敷設した例を示しているが、アスファルト補強材10を敷設した後に、アスファルト乳剤Eを散布してもよい。すなわち、砕石層6の上面にアスファルト乳剤Eを直接散布してもよく、または、先に敷設したアスファルト補強材10を介して砕石層6の上面にアスファルト乳剤Eを散布してもよい。
【0043】
あるいは、
図2に示すとおり、所定量の半分のアスファルト乳剤Eを砕石層6の上面に直接散布し、次いで、シート20、ジオグリッド22、シート20の順にアスファルト補強材10を敷設した後、残りのアスファルト乳剤Eをアスファルト補強材10の上から散布してもよい。
【0044】
なお、アスファルト補強材10を敷設する前に、あらかじめ、シート20とジオグリッド22とを相互に接着、溶着等しておくと、施工が容易となるため好適である。
【0045】
アスファルト補強材10を敷設した後、アスファルト層8を構築する。
図1に示すアスファルト層8においては、上層路盤14、基層16、表層18の順に構築する。一方、
図2に示すアスファルト層8においては、基層16、表層18の順に構築する。
【0046】
上層路盤14については、たとえば150~170℃程度に加熱された安定処理路盤材を敷きならし、均一に締固めることにより構築することができる。また、基層16および表層18についても、上層路盤14とほぼ同様であり、たとえば150~170℃程度に加熱された加熱アスファルト混合物を敷きならし、均一に締固めることにより構築することができる。このようにして、アスファルト舗装構造物2を構築する。
【0047】
なお、アスファルト層8を構成する各層の間には、アスファルト乳剤Eを散布する。具体的には、
図1に示す形態においては、上層路盤14の上面および基層16の上面にアスファルト乳剤Eを散布し、
図2に示す形態においては、基層16の上面にアスファルト乳剤Eを散布している。
【0048】
以上のとおりであり、図示の実施形態においては、シート20がアスファルト乳剤Eを吸収して保持するため、アスファルト乳剤Eを保持したシート20によって、砕石層6と、アスファルト層8とを強く接着し、砕石層6からのアスファルト層8の剥離抵抗性を高めることができる。さらに、シート20は、砕石層6の上面の凹凸に追従する厚みを有するので、シート20が砕石層6の上面に敷設された際に、シート20の下面が砕石層6の上面の凹凸に沿って変形する。このため、アスファルト乳剤Eを吸収して保持したシート20の下面と、砕石層6の上面との接触面積が大きくなる。よって、砕石層6とアスファルト層8との接着性が高まり、砕石層6からのアスファルト層8の剥離抵抗性が一層高まることになる。
【0049】
また、シート20によってアスファルト乳剤が吸収されるので、アスファルト乳剤Eの偏りが低減されると共に、アスファルト乳剤Eに含まれる水分の蒸発が促進されるため、施工時間が短縮される。
【0050】
図1に示す形態では、アスファルト補強材10を敷設する際に、シート20を砕石層6側(下側)に配置し、複数の開口24を有するジオグリッド22をアスファルト層8の上層路盤14側(上側)に配置しているため、上層路盤14を構築した際に、ジオグリッド22の開口24に上層路盤14の骨材が入り込み、ジオグリッド22と上層路盤14とが強固に連結される。
【0051】
また、シート20またはジオグリッド22の少なくとも一方が、アスファルト層8を構築する際におけるアスファルト層8の材料温度で、軟化または溶融する材質から形成されている場合には、シート20自体またはジオグリッド22自体によって、砕石層6の上面とアスファルト層8の下面とを接着する効果が発揮される。
【0052】
このように図示の実施形態においては、砕石層6からのアスファルト層8の剥離抵抗性を高めることができるので、アスファルト舗装構造物2の層厚減少(強度低下)を抑制すると共に、ジオグリッド22によってアスファルト舗装構造物2に作用する荷重(たとえば車両通行時の輪荷重)を分散する。したがって、図示の実施形態によれば、アスファルト層8の下面にひび割れが発生するのを防止することができる。
【0053】
図示の実施形態においては、シート20がアスファルト乳剤Eを吸収して保持することから、アスファルト乳剤Eを保持したシート20が防水機能を発揮し、砕石層6とアスファルト層8との間の水の流れを抑制する。したがって、アスファルト層8の目地から浸入した雨水等が砕石層6に到達することが妨げられ、湿潤化による砕石層6の変形が抑制される。さらに、アスファルト乳剤Eを保持したシート20によって、砕石層6に存在する地下水がアスファルト層8に浸入すること(毛管水上昇)も妨げられるので、アスファルト層8の細粒分の流出が抑制される。
【0054】
なお、上述の説明においては、アスファルト層8が上層路盤14、基層16および表層18の3層を有する例(
図1に示す形態)と、アスファルト層8が基層16および表層18の2層を有する例(
図2に示す形態)とを例に挙げたが、アスファルト層8は、複数層ではなく1層であってもよい。
【0055】
たとえば、交通量の少ない一般道路等においては、
図5に示すように、下層路盤12および上層路盤14を含む砕石層6と、1層からなるアスファルト層8との間に、アスファルト補強材10が埋設されてもよい。また、簡易舗装や農道等においては、
図6に示すように、下層路盤12からなる砕石層6と、1層からなるアスファルト層8との間に、アスファルト補強材10が埋設されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
2:アスファルト舗装構造物
4:路床
6:砕石層
8:アスファルト層
10:アスファルト補強材
12:下層路盤
14:上層路盤
16:基層
18:表層
20:シート
22:ジオグリッド
24:開口
E:アスファルト乳剤