(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161217
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】情報共有支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/32 20120101AFI20231030BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20231030BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20231030BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20231030BHJP
G06F 3/14 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G06Q50/32
H04W24/08
H04W16/26
H04W4/38
G06F3/14 320A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071439
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】安波 真悟
(72)【発明者】
【氏名】柴田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鯉沼 敦
【テーマコード(参考)】
5B069
5K067
5L049
【Fターム(参考)】
5B069AA01
5B069AA12
5B069BA04
5B069DD01
5B069HA13
5B069KA06
5B069LA03
5K067BB27
5K067DD44
5K067EE44
5K067KK03
5K067LL05
5L049CC46
(57)【要約】
【課題】 ネットワークの管理に係わる当事者間での情報の相互共有を支援すること。
【解決手段】 実施形態によれば、情報共有支援システムは、移動通信システムのサービスエリアに沿って配置される複数の無線端末と、無線端末に接続されてインフラの管理に係わるモニタリング情報を取得するセンサと、移動通信システム管理サーバ、施設管理サーバ、および、統合管理サーバを具備する。移動通信システム管理サーバは、無線端末からのアップリンク信号に含まれる電波受信強度情報に基づいて、移動通信システムの稼働状況を管理する。施設管理サーバは、アップリンク信号に含まれるモニタリング情報を集約して施設管理情報を生成する。統合管理サーバは、移動通信システムの稼働状況と、施設管理情報とを統合して管理する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信システムのサービスエリアに沿って配置される複数の無線端末と、
前記無線端末に接続されてインフラの管理に係わるモニタリング情報を取得するセンサと、
前記無線端末からのアップリンク信号に含まれる電波受信強度情報に基づいて、前記移動通信システムの稼働状況を管理する移動通信システム管理サーバと、
前記アップリンク信号に含まれる前記モニタリング情報を集約して施設管理情報を生成する施設管理サーバと、
前記移動通信システムの稼働状況と、前記施設管理情報とを統合して管理する統合管理サーバとを具備する、情報共有支援システム。
【請求項2】
前記統合管理サーバは、前記移動通信システムの稼働状況と、前記施設管理情報とを統一的な情報共有フレームワークに集約する、請求項1に記載の情報共有支援システム。
【請求項3】
前記統合管理サーバは、前記移動通信システムの稼働状況と、前記施設管理情報とを視覚的に表示するダッシュボードを表示する表示装置を備える、請求項2に記載の情報共有支援システム。
【請求項4】
前記表示装置は、前記施設管理情報を統計的に処理して生成されたグラフを前記ダッシュボードに表示する、請求項3に記載の情報共有支援システム。
【請求項5】
前記表示装置は、前記ダッシュボードにおいて前記移動通信システムの稼働状況をカラーマップ形式で表示する、請求項3に記載の情報共有支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報共有支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各通信会社(キャリア)による5Gサービスが本格的に普及しつつある。5Gは3G/4G等よりも周波数帯が高いので基地局のカバーエリアが狭く、既存のアクセス網に比べて普及に時間がかかることが予想される。また、通信需要の大きな都心部の整備が先行するため、地方での普及にはなお時間が掛かることが懸念されている。このような事情から、地域や産業のニーズに応じて柔軟に5Gシステムを構築できるローカル5Gの枠組みもスタートしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6826150号公報
【特許文献2】特開2021-40276号公報
【特許文献3】特開2019-161481号公報
【特許文献4】特開2011-71610号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“鉄道業界におけるローカル5Gを活用した実証実験について(住友商事株式会社、東急電鉄株式会社、富士通株式会社)(2021年8月31日 プレスリリース)”,[online],[令和3年11月22日検索],インターネット,<URL:https://www.tokyu.co.jp/company/news/list/Pid=5g.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ローカル5Gにおいては、事業者が通信システムのオーナーとなって通信設備そのものの維持管理を行っていく必要がある。しかし、事業者は、通信会社(キャリア)のように通信品質そのものを管理することは困難である。
【0006】
従来、通信会社(キャリア)等の専門的機関によって管理されていた通信ネットワークでは、機器の障害情報はサービスレベルの監視等、様々な手段によって検出することができた。しかし、ローカル5Gが目指す「通信の民主化」の世界では、通信設備の管理を本業としない一般の事業者が、ローカル5Gシステムのオーナーシップを持って運営していく必要がある。特に、ネットワークサービスレベルの維持・監視業務は、ローカル5Gの主眼とする業務効率化とは異なるため、これまで以上に分かり易い可視化ツールが必要であると考えられる。
【0007】
そこで、目的は、ネットワークの維持管理のみならず事業者が運営する施設管理に係わる当事者を含めた関係者間での情報の相互共有を支援する情報共有支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、情報共有支援システムは、移動通信システムのサービスエリアに沿って配置される複数の無線端末と、無線端末に接続されてインフラの管理に係わるモニタリング情報を取得するセンサと、移動通信システム管理サーバ、施設管理サーバ、および、統合管理サーバを具備する。移動通信システム管理サーバは、無線端末からのアップリンク信号に含まれる電波受信強度情報に基づいて、移動通信システムの稼働状況を管理する。施設管理サーバは、アップリンク信号に含まれるモニタリング情報を集約して施設管理情報を生成する。統合管理サーバは、移動通信システムの稼働状況と、施設管理情報とを統合して管理する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係わる無線中継システムの一例を示すシステム図である。
【
図2】
図2は、
図1のシステムにおけるネットワークスライシングの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係わる情報共有支援システムの一例を示すシステム図である。
【
図4】
図4は、表示装置21に表示されるダッシュボードの内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係わる無線中継システムの一例を示すシステム図である。ローカル5Gの枠組みにおいて、いわゆるDAS(Distributed Antenna System)と称して知られるこのシステムは、移動通信サービスの基地局の無線ゾーンを光ファイバ通信を利用して拡張するシステムである。
図1において、基地局200に接続された親機100は、光ファイバを介して複数の子機81~8l~8mを収容する。子機81~8l~8mは、基地局200のエアインタフェース区間の帯域の信号を、アップリンクおよびダウンリンクの双方向に送受信する。これにより、例えばトンネル内、地下鉄・地下街等のようなエリアにおいても、モバイル通信サービスを展開することができる。さらに、高層ビルなどの干渉エリアにおける無線品質の改善なども期待できる。
【0011】
例えば高速道路会社や鉄道事業者の用地のように、細長いエリアが長く続くようなケースにおいては、DASによりエリアを効率的にカバーすることができる。このような場合、子機をデイジーチェーン接続することが多い。しかし、シリアルに接続された子機のいずれかが故障すると、その子機の下位側に接続された子機が正常であっても通信ができなくなってしまう。そこで、故障した子機の通信をバイパスして、下位側の子機と親機との接続を維持する技術が知られている。
【0012】
この技術では、子機の自己診断機能が正しく動作することが前提となる。また、バイパス処理されたことを親機側に通知する手段がない。このため障害が発生しても、ネットワーク管理者がそのことを即座に知り得るとは限らず、障害の発生に気付くことが遅れるとサービスレベルの低下は免れない。
【0013】
そこで、実施形態では、子機と無線通信可能な端末61~6nをローカル5Gのサービスエリアに沿って設置する。端末61~6nは、それぞれセンサ71~7nに接続され、センサで取得されたセンシングデータをアップリンク信号に載せて子機宛てに送信する。アップリンク信号は、子機81~8l~8mのいずれかから親機100を介して基地局200へ中継され、さらに上位システム(センターなど)に送信される。
【0014】
センサ71~7nは、ネットワークインフラの管理に係わる情報を取得するモニタリング装置であり、例えばAEセンサやひずみ計などに代表される、環境センサである。取得されたセンシングデータがセンターに送信されることで、現場のモニタリング情報がセンターに集約される。
【0015】
また、端末61~6nは、子機から到達する電波の受信電波強度(RSSI)を計測し、その計測値をアップリンク信号に載せて子機宛てに送信する。これにより、センシングデータと同様にして、それぞれの端末61~6nにおける受信電波強度がセンターに集約される。
【0016】
さらに、点検車両300は、映像配信可能な車両端末400を搭載し、道路やトンネルなどのインフラを撮影した画像データを5G回線を経由して配信する。この画像データも、点検車両300の走行中に子機81~8l~8mを経由してセンターに集約される。特に、DASにおいては基地局のハンドオーバが無いことから安定した画像配信を行うことができる。
【0017】
図2は、
図1のシステムにおけるネットワークスライシングの一例を示す図である。
図2において、エリアの無線受信状況や伝搬特性を計測する端末には多接続のネットワークリソースが割り当てられる。施設の劣化状況を計測する歪み計や振動センサのような、施設の維持管理情報を収集する多数のセンサ群から定期的に少量のデータを送信するテレメトリ端末には、多接続および少量低遅延のネットワークリソースが割り当てられる。施設内を走行しながら映像データや音声データ、あるいは点群データ等を収集・送信する車両端末400には、高速・大容量のネットワークリソースが割り当てられる。
【0018】
それぞれのリソースは、各サービスの通信が必要とする帯域や許容遅延に応じて割り当てられる。ここで、システムの管理者と無線回線のオーナーとが同じ主体であることにより、通信サービスレベルとアプリケーションの機能レベルとを一体的に管理すること(通信の民主化)が可能となる。そして、それぞれのネットワーク階層において得られた情報を統合的に管理・分析することで、業務改善への活用(フィードバック)を図ることができる。
【0019】
図3は、実施形態に係わる情報共有支援システムの一例を示すシステム図である。情報共有支援システムは、管理者側のオンプレミスシステムと、ベンダ側のセンタシステムとを備える。オンプレミスシステムにおいて、端末61~6nおよびセンサ71~7nは、管理サーバ50が属するコアネットワーク500に接続される。コアネットワーク500は、センタシステムに通信回線を介して接続される。
【0020】
センタシステムは、統合管理サーバ10、入出力装置20、施設管理サーバ30、およびローカル5G管理サーバ40を備える。入出力装置20は表示装置21を備える。施設管理サーバ30は、施設モニタリング情報31aを保持するデータベース31を備える。ローカル5G管理サーバ40は、通信設備管理情報41aを保持するデータベース41を備える。
【0021】
施設モニタリング情報31aは、センサ71~7nから収集されたセンシングデータ(振動データ、ひずみデータなど)の時系列データ、点検情報/劣化診断情報、あるいは修繕部材備蓄状況などの情報を含む。このように、施設管理サーバ30は、施設のモニタリング情報や点検情報などを収集し、管理する。
【0022】
通信設備管理情報41aは、
図1に示されるローカル5Gサービスを運営するためのユーザ・端末管理情報、サービスレベル管理情報、ベンダからのセキュリティー情報、あるいは、端末61~6nから通知された地点受信強度等の時系列データを含む。このように、ローカル5G管理サーバ40は、ローカル5Gシステムの稼働状況等を収集し、管理する。
【0023】
統合管理サーバ10は、施設管理サーバ30により収集された情報と、ローカル5G管理サーバ40により収集された情報を統合し、管理する。すなわち統合管理サーバ10は、ローカル5Gシステムの稼働状況と、インフラ施設管理情報との双方を、統一的な情報共有フレームワークに集約する。
【0024】
図4は、表示装置21に表示されるダッシュボードの内容の一例を示す図である。
図4において、表示装置21は、統一的な情報共有フレームワークの一例としてのダッシュボードを表示する。ダッシュボードには、例えば施設の維持管理のための指標が表示される。例えば、構造物のひずみ計の値を一定期間の統計情報として表示し、許容限界と併せて表示することにより、修繕の必要性を管理者に通知することができる。
図4に示されるように、施設各所から集められたモニタリング情報(時系列)の統計情報は、箱ひげ図などで表すことができる。管理指標(許容値)は、箱ひげ図の上下を囲う点線で示され、この点線を逸脱した場合に、異常の発生が認識される。
【0025】
また、ダッシュボードには、それらのモニタリング情報を収集する無線通信の状態(端末の電波受信強度や過去の一定期間のサービスレベル)が、例えばカラーマップ形式で示される。
図4においては、電波受信強度がデシベル単位で例えば5段階で区分され、それぞれ色分け(ハッチング)表示される。電波受信強度は、モニタリング地点周辺の無線システムのサービスレベルに対応付けられる。電波受信強度が5段階レベルの3段階にまで低下すると、平均サービスレベルが95%にまで低下したことが示され、これにより、モニタリング情報の途絶のリスクが可視化される。
【0026】
収集されたモニタリング情報および統計情報をダッシュボードに表示し、別途収集された現場の点検情報とも合わせて、施設の維持管理計画の立案を支援することができる。例えば、設備の維持管理計画を立てる上で、どの地点の現場点検を重点化すべきかを視覚的に判断できる。また、ビッグデータ等の収集データ分析基盤や、外部のクラウドサービスとの連携により設備の劣化診断・予測サービス等を行うようにしても良い。
【0027】
以上説明したようにこの実施形態では、ネットワークの利用者と管理者とが同じ主体であるシステムで、通信レイヤのサービスレベル情報(受信強度等)とアプリケーションレイヤの施設モニタリング情報(振動・ひずみ計等)とをセンタシステムに集約する。そして、これらの情報を一体的に管理することにより、現場作業者、ネットワーク管理者、およびネットワークベンダ間の情報共有を支援することができる。
【0028】
このような構成により、例えば、ローカル5Gシステムのような無線通信システムにおける障害切り分けを容易にすることができる。無線通信システムが自律的・安定的に動作することは、管理上の負荷がなく理想的な状態であるが、永続的な事象ではない。システムが何らかの不調を来したときに、どこに問題が起こっているか、どんな原因が考えられるかを切り分けていく作業が管理者に求められる。そこで、管理下にあるシステム・装置・端末が、それぞれ正常な動作をしているかどうかのデータを収集・分析・可視化するプラットフォームを提供することにより、計画的な維持管理を行うことが可能になる。
【0029】
また、高速道路会社や鉄道事業者等の、事業のネットワーク効果が高いインフラ型ビジネスは固定費の割合が高いことで知られる。コロナ禍の急激な運輸需要の変化により、事業の多角化・リスク分散が益々意識されるようになっており、事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が盛んに検討されている。そこで、ネットワーク管理の新たなニーズが現れてくることが予想される。
【0030】
ローカル5Gに対する期待は、単に高速・大容量な通信網をプライベートに利用できるだけでなく、路線の維持管理業務や運転支援業務の高度化を図れることにある。そのためには、ネットワークの輻輳や機器の故障等、通信品質の低下に対しても機動的に対応できる組織体制が求められることは言うまでもない。実施形態によれば、例えば端末から取得した電波受信強度を指標として、無線中継システムの子機の障害状況を把握することができる。細長い路線エリア内に管理施設が多く点在する、高速道路事業者や鉄道事業者にとって、ネットワークの監視を既存施設の管理と統合していくことは、業務効率改善の観点においても有効である。
【0031】
従来、通信会社(キャリア)等の専門的機関によって管理されていた通信ネットワークでは、機器の障害情報はサービスレベルの監視等、様々な手段によって検出することができた。しかし、特にローカル5Gにおいては機器のベンダよりも、オーナーの側にシステムの維持管理の重点が置かれる。実施形態によれば、無線中継装置(DAS)、および無線通信システムを施設管理と統合した形で提供できるので、オーナ/ベンダ間での、システムの維持に係わる情報の共有を促進することができる。ひいては、現場作業者、ネットワーク管理者、およびネットワークベンダ間の相互の情報共有を支援することができる。
【0032】
これらのことから、実施形態によれば、ネットワークの管理に係わる当事者間での情報の相互共有を支援する情報共有支援システムを提供することが可能となる。
【0033】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、
図2に示されるセンタシステムは、クラウドにより提供されるサービスとして実現することも可能である。
【0034】
実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10…統合管理サーバ、20…入出力装置、21…表示装置、30…施設管理サーバ、31…データベース、31a…施設モニタリング情報、40…ローカル5G管理サーバ、41…データベース、41a…通信設備管理情報、50…管理サーバ、61~6n…端末、71~7n…センサ、81~8l~8m…子機、100…親機、200…基地局、300…点検車両、400…車両端末、500…コアネットワーク。