(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161221
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】パネルソー用ワーク仮保持装置 並びにこれを具えたパネルソー
(51)【国際特許分類】
B27B 5/29 20060101AFI20231030BHJP
B27B 5/07 20060101ALI20231030BHJP
B27G 19/02 20060101ALI20231030BHJP
B27B 27/10 20060101ALI20231030BHJP
B27B 27/02 20060101ALI20231030BHJP
B26D 7/01 20060101ALN20231030BHJP
【FI】
B27B5/29 B
B27B5/07
B27G19/02 Z
B27B27/10
B27B27/02
B26D7/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071445
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000190725
【氏名又は名称】シンクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】秋山 守
(72)【発明者】
【氏名】神尾 重光
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 勝
【テーマコード(参考)】
3C021
【Fターム(参考)】
3C021BB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薄板等のワークをパネルソーによって縦切りする場合に、ワークテーブル上に立設状態に仮置きしたワークの倒れ込みを防止する新規なワーク仮保持装置、並びにこれを具えたパネルソーを提供する。
【解決手段】ワーク仮保持装置10は、ワークテーブル3の支承面3Sより後方側に位置する退去状態と、支承面3Sより正面側に張り出す突出状態とに選択される回転定規11の構成部材に設けられ、更にワーク仮保持装置10は、丸鋸盤ユニット5の設置側に向かって張り出す押さえ片20を具えた保持作用部21が設けられ、ワークWを切断する際には、突出状態に設定した回転定規11の定規杆15に、ワークWの非切断側端縁を当接させることによりワークWの切断幅寸法を規制し、且つ保持作用部21をワークWの正面側に位置させて、ワークテーブル3に立て掛け状に支持したワークWの正面側への倒れ込みを防止することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークテーブルに立て掛け状に支持させたワークを、昇降動する丸鋸盤ユニットによって縦切りするパネルソーに設けられ、ワークの切込加工に先立ってワークを仮保持する装置であって、
この装置は、ワークテーブル至近に設けられ、ワークテーブルの支承面より後方側に位置する退去状態と、当該支承面より正面側に張り出す突出状態とに選択される回転定規の構成部材に設けられるものであり、
更に前記装置は、丸鋸盤ユニットの設置側に向かって張り出す押さえ片を具えた保持作用部が設けられ、
ワークを切断する際には、突出状態に設定した当該回転定規の定規杆に、ワークの非切断側端縁部を当接させることによりワークの切断幅寸法を規制し、
且つ前記押さえ片を含む保持作用部をワークの正面側に位置させて、ワークテーブルに立て掛け状に支持したワークの正面側への倒れ込みを防止する構成であることを特徴とするパネルソー用ワーク仮保持装置。
【請求項2】
前記保持作用部は、回転定規における定規杆の回動先端部に押さえ片を取り付けて成る構成であることを特徴とする請求項1記載のパネルソー用ワーク仮保持装置。
【請求項3】
前記押さえ片は、定規杆とは別体部材で構成され、この別体部材を定規杆に対して嵌め込み組付け自在に構成して成ることを特徴とする請求項2記載のパネルソー用ワーク仮保持装置。
【請求項4】
前記押さえ片は、円柱形のブロック状に形成され、且つ嵌め込み組付け自在のため一部に定規杆の回動先端部周りを内嵌めする嵌合凹部を具え、なお且つ当該嵌合凹部には、嵌め込み組付け状態を維持するスナップ作用部を具えることを特徴とする請求項3記載のパネルソー用ワーク仮保持装置。
【請求項5】
ワークテーブルに立て掛け状に支持させたワークを、昇降動する丸鋸盤ユニットによって縦切りするパネルソーであって、
このパネルソーは、前記請求項1から4のいずれか1項記載のパネルソー用ワーク仮保持装置を具えていることを特徴とするパネルソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質ボードや樹脂ボード等を切断する際に用いられるパネルソーに関するものであって、特に切断対象となるワークの仮保持装置並びにこれを具えたパネルソーに係るものである。
【背景技術】
【0002】
木質ボード、樹脂ボード、断熱用無機質ボード等のワークを、ほぼ縦置きして切断する装置として、パネルソーが広く用いられている。このものはフレーム正面下方において幅方向に水平定規を水平配置するものであり、この水平定規にワークを載せるとともに、上方をやや後傾させたワークテーブルにもたれ掛けるようにワークを設置し、昇降移動する丸鋸刃によって、ワークを所定の位置で切断するものである。
ところで、このような刃物を用いた切断作業を行う木工機械にあっては、その作業時における安全確保が強く求められている。パネルソーについては安全確保の対策の一つとして、起動のためにスイッチパネルの操作を行うには、必ず両手操作によらねばならない構成とし、手が刃物等の可動部材や、その移動軌跡上に臨むことによる危険を回避する対策が採られている。
【0003】
このような構成を採ることにより、作業時の安全は確保できる一方、ワークの種類によっては、これを設置する際の作業性の低下が指摘されてきた。すなわち特に薄板厚のベニヤ板や軽量の樹脂板等をワークテーブルに立て掛け状態(立設状態)に仮置きした際、ワークが幾分か不安定な設置状態となり、ワークが正面側(作業者がいる手前側)に倒れ込んでしまうことも起こっていた。
このような場合、従来、片手操作での起動操作が許容されていたときには、作業者が一方の手で起動ボタン等を操作しながら、もう一方の手でワークを押さえることによりワークの仮保持を図り、このものの倒れ込みを防止するような仮保持操作が行われていた。
【0004】
しかしながら、前述のように現在では、パネルソーの起動操作を必ず両手で行うことが義務化されいることから、従来のような作業者の手によって直接、ワークを押さえることはできなくなった。もちろん、ワークの倒れ込みは頻繁に生ずるとは言えないものの、倒れ込みが生じた場合の作業の煩わしさが生ずることは否めない。もっとも、このような煩わしさは、薄板を扱うことのあるユーザーにおいてのみ実感され、また薄板であっても常に倒れ込みが生ずるわけではないため、結果的に薄板ワークの倒れ込みに対して積極的に対策を採ることはなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景を考慮してなされたものであって、例えば薄板材等のワークをパネルソーによって縦切り切断する場合において、立設状態のワークテーブル上に仮置きしたワークの倒れ込みを防止することができる新規なパネルソー用ワーク仮保持装置、並びにこれを具えたパネルソーを開発することを技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず請求項1記載のパネルソー用ワーク仮保持装置は、
ワークテーブルに立て掛け状に支持させたワークを、昇降動する丸鋸盤ユニットによって縦切りするパネルソーに設けられ、ワークの切込加工に先立ってワークを仮保持する装置であって、
この装置は、ワークテーブル至近に設けられ、ワークテーブルの支承面より後方側に位置する退去状態と、当該支承面より正面側に張り出す突出状態とに選択される回転定規の構成部材に設けられるものであり、
更に前記装置は、丸鋸盤ユニットの設置側に向かって張り出す押さえ片を具えた保持作用部が設けられ、
ワークを切断する際には、突出状態に設定した当該回転定規の定規杆に、ワークの非切断側端縁部を当接させることによりワークの切断幅寸法を規制し、
且つ前記押さえ片を含む保持作用部をワークの正面側に位置させて、ワークテーブルに立て掛け状に支持したワークの正面側への倒れ込みを防止する構成であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載のパネルソー用ワーク仮保持装置は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記保持作用部は、回転定規における定規杆の回動先端部に押さえ片を取り付けて成る構成であることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載のパネルソー用ワーク仮保持装置は、前記請求項2記載の要件に加え、
前記押さえ片は、定規杆とは別体部材で構成され、この別体部材を定規杆に対して嵌め込み組付け自在に構成して成ることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載の旋回丸鋸ユニットは、前記請求項3記載の要件に加え、
前記押さえ片は、円柱形のブロック状に形成され、且つ嵌め込み組付け自在のため一部に定規杆の回動先端部周りを内嵌めする嵌合凹部を具え、なお且つ当該嵌合凹部には、嵌め込み組付け状態を維持するスナップ作用部を具えることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載のパネルソーは、
ワークテーブルに立て掛け状に支持させたワークを、昇降動する丸鋸盤ユニットによって縦切りするパネルソーであって、
このパネルソーは、前記請求項1から4のいずれか1項記載のパネルソー用ワーク仮保持装置を具えていることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0012】
まず請求項1または5記載の発明によれば、パネルソーで切断するワークが、特に軽量薄板であり、ワークテーブル上に載置後、正面側に倒れ込み易いものであっても、この倒れ込みを防止することができる。
また、ワーク仮保持装置は、既存の回転定規(当て定規)の構成部材を利用するため、既存のパネルソーに後付けすることもでき、ワーク仮保持装置の導入コストを抑えることができる。
【0013】
また請求項2または5記載の発明によれば、ワーク仮保持装置は、既存の回転定規(当て定規)の定規杆を利用するため、ワーク仮保持装置の構成をより具体的なものとする。
【0014】
また請求項3または5記載の発明によれば、ワークの正面側への倒れ込みを実質的に防止する押さえ片は、定規杆とは別体で構成され、これを定規杆に嵌め込んで実現するものであり、しかも押さえ片の取り付けは着脱自在であるから、ワーク仮保持装置を、より一層、シンプルに構成でき、既存のパネルソーを導入するユーザも極めて導入し易いものである。
【0015】
また請求項4または5記載の発明によれば、押さえ片が、円柱形のブロック状に形成され、且つ嵌合凹部には、嵌め込み組付け状態を維持するスナップ作用部を具えるため、ワーク仮保持装置の構成をより一層、具体的なものとする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のパネルソー用ワーク仮保持装置を具えたパネルソーを示す斜視図でる。
【
図2】同上、正面図(a)、並びに側面図(b)である。
【
図3】パネルソー用ワーク仮保持装置を示す正面図(a)、平面図(b)、左側面図(c)、右側面図(d)、並びに保持作用部を構成する押さえ片を示す説明図(e)である。
【
図4】保持作用部を構成する押さえ片を二種示す斜視図である。
【
図5】押さえ片における更に他の構成例を示す三面図及び斜視図である。
【
図6】定規杆のガイド部にロッド状の摺動杆を設け、その先端に平板状の押さえ片を取り付けるようにした保持作用部の構成例を示す斜視図である。
【
図7】定規杆ではなくスライドベースを利用して形成した保持作用部の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、以下の実施例に示すとおりであるが、これらの実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0018】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
本発明はパネルソー用ワーク仮保持装置10(以下、単にワーク仮保持装置10とする)、並びにこれを具えたパネルソー1に係るものである。
なお説明にあたっては、ワーク仮保持装置10の説明に先立ち、まずパネルソー1について、その概略構成を説明する。
パネルソー1自体は、既に広く用いられている基本構成を具えるものであり、その構成を概説すると、一例として
図1~
図3に示すように、フレーム2に対し縦配置したワークテーブル3を設けるとともに、テーブル下方には水平定規4をパネルソー1のほぼ全幅にわたって水平配置して成るものである。
【0019】
ワークテーブル3は、その準備側3Aの範囲において上下方向に分断され(本実施例では三カ所にわたる分断)、その各部位に回転定規レール8が露出するように設けられている。この回転定規レール8には、回転定規11が摺動自在に設けられており、当該回転定規11は、ワークWを切断する際の幅方向寸法を規制する作用を担うものである。すなわち、回転定規11は、一例として
図3に示すように、上向きから正面向きまでのほぼ90度、回動自在に構成された定規杆15を具え、この定規杆15がワークテーブル3の支承面3Sより後方側に位置する退去状態(上記の上向き姿勢)と、当該支承面3Sより正面側に張り出す突出状態(上記の正面向き姿勢)との間で角度設定させ得る構成となっている。つまりワークWを切断する際には、一例として
図1の部分図に示すように、上記突出状態に設定した定規杆15に、ワークWの非切断側の端縁部を当接させることによって、ワークWの切断幅寸法を規制するものであり、このような構成から回転定規11は、当て定規とも称されることがある。
【0020】
水平定規4自体は、実質的にワークWの下端を支持する載置台作用をも担うものである。そしてワークWの実際の切込加工に寄与する部材として丸鋸盤ユニット5を設けるものであり、この丸鋸盤ユニット5は、これに設けられた丸鋸刃5Aを、回転させながら下降させることによって、ワークWを縦方向(上下方向)に切り込むものである(
図2参照)。もちろん、一回の縦切りが終了したら、丸鋸盤ユニット5は上昇し、初期位置に戻るものである。
また丸鋸刃5Aの通過位置には、ワークWを保持するクランプ装置6が、ワークテーブル3に対し接近離反自在に設けられている。このクランプ装置6には、丸鋸刃5Aが通過する溝が形成されており、丸鋸刃5Aが正面側(作業者側)に露出しないように構成されている。
更にクランプ装置6の正面側には操作パネル7が設けられている。そして、実際の切り込み操作は、この操作パネル7に設けられたボタンやスイッチを操作することにより、ワークWへの切り込みがなされるように構成されている。なお、この操作パネル7における起動操作は、必ず両手操作となるように、操作ボタン等が二カ所、離れた位置に設けられている。
【0021】
次に、このようなパネルソー1に対して設けられるワーク仮保持装置10について以下説明する。
ワーク仮保持装置10は、ワークテーブル3の至近位置に設けられる従来既設の回転定規11を利用して構成される。回転定規11は、上述した回転定規レール8に対し、これを案内として水平移動できるようなスライドベース12を具えるものであり、一例としてチャンネル形状の回転定規レール8に対し、適宜の幅方向位置で固定できるように構成されている。具体的には、スライドベース12には、例えばロックハンドル13が上方に設けられており、このロックハンドル13の回動操作、例えば正面側への回動操作により、
図3(c)に示すロックピース13Aが、回転定規レール8のフランジ部を強固に保持するようにしてスライドベース12の固定(移動阻止)が図られる。
またスライドベース12は、その前方に一例として、透明樹脂製の表示板12Aを具え、そのほぼ中心位置に回転定規11の固定位置を示すマークライン14を具える。なおこのマークライン14は、前記回転定規レール8に設けたスケール82に合わせるように設定するものであり、マークライン14が指したスケール82の目盛りによってワークWの切断幅寸法が表示される構成となっている。
【0022】
このようなスライドベース12に対して定規杆15が回動自在に取り付けられる。この定規杆15は、一例として
図1・
図3(b)に示すように、このものの側面にワークWを当接させることにより、ワークWの切断幅寸法(切込寸法)を設定するためのものであり、本実施例における回転定規11は、定規杆15とほぼ同じ構造の補助杆16を対設しており、その間を操作握部17として、退去状態(上向き姿勢)の回転定規11を、正面から視て、全体的に門形状を成すように構成されている。これら回転定規11の定規杆15、補助杆16、操作握部17の部材は、回動軸18においてスライドベース12に回動自在に取り付けられるものであり、更に一例として
図3(b)に示すように、スライドベース12からは回動軸18に対して圧接状態に締め込み自在のトルク設定ボルト19が設けられている。
【0023】
このような従来の回転定規11を利用してワーク仮保持装置10が構成されるものであり、以下、このワーク仮保持装置10について説明する。
ワーク仮保持装置10は、押さえ片20を保持作用部21に設けるものであるが、まず第1の実施例としては、一例として
図3(a)・(e)に示すように、別体の押さえ片20を回転定規11における定規杆15の回動自由端周り(先端周り)の部位、すなわち定規杆15の回動自由先端と、ここに接続させている操作握部17の一部とに、嵌め込み取り外し自在に設けることにより、仮保持作用を現出させている。
【0024】
従って第1の実施例では、保持作用部21は、定規杆15の先端部と、その周囲の一部の部材によって構成される。ここで押さえ片20は、一例として樹脂製の部材で形成され、全体としてほぼ短寸の円柱形のブロック状を成し、その一部に嵌合凹部22が形成される。この嵌合凹部22は、定規杆嵌込部22aと操作握部嵌込部22bとが連続して凹陥形成されており、操作握部嵌込部22bは、例えば嵌め込み開口部の寸法が操作握部17の径よりわずかに短い寸法のスナップ作用部24として形成され、操作握部17に対して押さえ片20が嵌め込み状態を維持できるように構成されている。また例えば
図3(b)・(e)や
図4(a)に示すように、押さえ片20を軸方向から視て、嵌合凹部22が設けられていない部位を、押さえ作用部25とするものであり、これは回転定規11を突出状態(正面向き姿勢)とした状態で、定規杆15つまり押さえ片20を、切断対象たるワークWの正面側に位置させることにより、ワークWの非切断側端縁を押さえ、正面側への倒れ込みを防止するものである。
【0025】
本発明は以上のような基本構成を具えるものであり、次のように作用してワークWの仮保持を行う。
まず回転定規11自体は、例えば
図1に示すように、ワークテーブル3の準備側3Aに複数段(一例として三段)にわたって設けられるものであり、回転定規レール8に対し一基または複数基設けられている。ここで目的の切断作業に使用しない回転定規11(不要な回転定規11)については、その定規杆15をワークテーブル3の支承面3Sより後方に回動退去させておく(上記の上向き姿勢)。
【0026】
一方、目的の切断作業に利用する回転定規11については、その定規杆15をワークテーブル3より前方に張り出すように倒伏させる(突出状態の正面向き姿勢)。このときワークWが特に軽量薄板材で、正面側に倒れ込み易い場合には、定規杆15の回動自由端部に前記押さえ片20を取り付けて、ワークWの倒れ込みを防止するものである。すなわち押さえ片20の嵌合凹部22を、定規杆15の回動自由端部周りに強く外嵌めすることにより、定規杆嵌込部22aは定規杆15の自由端部を覆うように取り付けられるとともに、操作握部嵌込部22bも操作握部17を抱え込むように嵌め込まれる。
【0027】
この際、操作握部17より幾分か開口寸法を小さくするように内張り出し状に形成したスナップ作用部24によって、押さえ片20は、定規杆15の自由端部周囲に強固に保持される。このようにして押さえ片20を定規杆15に取り付けることによって、押さえ片20の嵌合凹部22と反対側の部位である押さえ作用部25が、丸鋸盤ユニット5側に向かって張り出すような状態を呈する(
図1・
図3(e)参照)。そして、押さえ作用部25が、幾らか丸鋸盤ユニット5の設置側に向かって張り出すことによって、ワークWがワークテーブル3から離れて、正面側に倒れ込もうとしても、ワークWの非切断側端縁が、上記張り出した押さえ作用部25つまり押さえ片20に引っ掛かるようになり、ワークWの倒れ込みを防止するものである。
【0028】
なお、ワークWは、常に同じ厚み寸法ではないため、その場合には定規杆15の正面側への回動角度(傾倒角度)によって、対応することが可能である。具体的には、例えば
図2(b)の拡大図に示すように、ワークWの非切断端縁側を定規杆15の側面に当てて、切断幅寸法を決定した後、定規杆15の回動角度(傾倒角度)を調整して、押さえ片20をワークWの表面に密着状態にすることにより(当然、この状態でロックハンドル13を操作して定規杆15をロックする)、ワークWの厚み寸法が種々異なる場合であっても、ワークWの正面側への倒れ込みを防止することができる。ここで上記
図2(b)は、ワークWの板厚寸法が異なる場合、具体的には10mm厚と45mm厚において、定規杆15の傾倒角度を異ならせることにより、押さえ片20をワークWの表面に密着させるようにした様子を図示している。
因みに、上記第1の実施例では、ワーク仮保持装置10を形成する保持作用部21は、実質的に回転定規11における定規杆15を利用している。しかしながら、保持作用部21自体は、後述する
図6に示すように、定規杆15を用いないで別途構成することも可能である。
【0029】
〔他の実施例〕
本発明は、以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、
図4(b)に示す構成例は、押さえ片20については、既に述べた第1の実施例、つまり
図4(a)の変形例というべきものであり、押さえ片20を強固に保持するスナップ作用部24についての変形例である。すなわちブロック状の押さえ片20における操作握部嵌込部22bとして舌片状の延長部22cを設けてスナップ作用部24としたものである。
【0030】
また、上述した第1の実施例では、押さえ片20(保持作用部21)は、円柱形のブロック状部材、いわゆる充実体から嵌合凹部22(定規杆嵌込部22a・操作握部嵌込部22b)をくり抜き状に形成して実現する形態を主に想定したが、押さえ片20は、必ずしもこのような形態に限定されるものではない。
すなわち、押さえ片20は、例えば
図5に示すように、ほぼ一定の肉厚を有する中空状部材として形成することも可能であり、このような押さえ片20は、ペレット状の樹脂素材を金型で成形して得ることができるものである。
なお、上記
図5に示す押さえ片20は、押さえ作用部25が偏平状に形成されているが、これは定規杆15を、スライドベース12に対しほぼ90度回動させた突出姿勢で、ワークWを偏平状の面(押さえ作用部25)で押さえ、このものの倒れ込みを確実に防止する意図である。
【0031】
更に
図6に示す構成例は、保持作用部21が、回転定規11における定規杆15を兼用するものであるが、そこに定規杆15の長手方向に沿って、摺動自在とした保持作用部21を形成するものである。すなわち、この構成例における保持作用部21は、定規杆15に形成されたガイド部15Gに対してロッド状の摺動杆20Aを設けるとともに、その正面側先端に平板状の押さえ片20を取り付けたものである。
このように構成した際には、押さえ片20の張り出し寸法を適宜調整することによって、ワークWの厚み寸法が異なる場合に応じた設定ができるようにしたものである。なお図中符号20Bは、押さえ片20の設定状態つまり張り出し状態を維持するためのロックボルトである。
【0032】
以上述べた実施例(構成例)は、いずれも保持作用部21について回転定規11の定規杆15を兼用したものであるが、例えば
図7に示す構成例は、ワーク仮保持装置10の保持作用部21について定規杆15ではなく、スライドベース12を利用して形成したものである。すなわち、本構成例における保持作用部21は、一例として上面視ベルクランク状の杆状部材であって、その杆状部材の一方の先端に押さえ片20を突出形成させ、これを適宜回動させることによりワークWの厚み位置に応じた位置での保持ができるように構成されている。そして、そのロック状態については、例えばスライドベース12のロックハンドル13の操作によりロックさせるような構成が可能である。