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  • 特開-加工異常検出装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161231
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】加工異常検出装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20231030BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B23Q17/09 F
G05B19/18 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071462
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】598075756
【氏名又は名称】株式会社浪速工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】谷本 和考
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029DD14
3C269AB01
3C269BB12
3C269MN24
3C269PP02
3C269QE17
(57)【要約】
【課題】 加工異常を容易に精度よく検出することができる加工異常検出装置を提供する。
【解決手段】 加工により生じる振動を検出して得られる振動レベルの時系列データに基づき加工異常を検出する装置1であって、時系列データの波形を設定枠と共に設定画面に表示する表示制御部12と、設定枠の時間幅およびレベル幅を作業者が設定する入力部13と、設定された設定枠内における振動レベルの時間平均値を加工中にリアルタイムに算出する演算部14と、時間平均値を閾値と比較して加工異常の有無を判定する判定部16とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工により生じる振動を検出して得られる振動レベルの時系列データに基づき加工異常を検出する装置であって、
前記時系列データの波形を設定枠と共に設定画面に表示する表示制御部と、
前記設定枠の時間幅およびレベル幅を作業者が設定する入力部と、
設定された前記設定枠内における前記振動レベルの時間平均値を加工中にリアルタイムに算出する演算部と、
前記時間平均値を閾値と比較して加工異常の有無を判定する判定部とを備える加工異常検出装置。
【請求項2】
前記時系列データの波形の一部に対して作業者が前記設定枠を仮設定することにより算出された前記時間平均値を初期値として記憶する記憶部を更に備え、
前記表示制御部は、前記設定枠の設定中に、前記時間平均値と前記初期値とを対比可能に表示する請求項1に記載の加工異常検出装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記設定枠の設定中に、前記時間平均値および前記閾値を前記設定枠内にライン表示する請求項1または2に記載の加工異常検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記時間平均値を平均値比較用閾値と比較すると共に、前記時系列データのピーク値をピーク値比較用閾値と比較して、加工異常の有無を判定する請求項1に記載の加工異常検出装置。
【請求項5】
加工により生じる振動を検出して得られる振動レベルの時系列データに基づき加工異常を検出する方法であって、
前記時系列データの波形を設定枠と共に設定画面に表示する表示ステップと、
前記設定枠の時間幅およびレベル幅を作業者が設定する入力ステップと、
設定された前記設定枠内における前記振動レベルの時間平均値を加工中にリアルタイムに算出する算出ステップと、
前記時間平均値を閾値と比較して加工異常の有無を判定する判定ステップとを備える加工異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工異常検出装置および方法に関し、より詳しくは、工作機械を用いた切削加工や放電加工等で生じる加工異常を検出する加工異常検出装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルやエンドミル等の切削工具を用いて被加工物を切削加工する切削加工装置において、工具や装置本体に発生する振動をセンサにより検出し、この振動データから加工異常を検出することが従来から行われている。例えば、特許文献1には、切削加工時に生じる振動データを取得し、この振動データから得られる短期平均振幅値を閾値と比較することにより切削加工時の異常を検出する異常検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-132558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の異常検出方法は、切削加工時のデータのばらつきによる影響を少なくするために、振動データから得られる長期平均振幅値に基づき閾値を随時算出して更新する。ところが、このような閾値の設定方法は、工具の摩耗等により振動が大きくなると算出される閾値も大きくなるため、振動データが徐々に変化する場合や、加工プログラムの変更により加工条件が異なる場合には、加工異常を的確に検出できないおそれがあった。
【0005】
このように、従来の異常検出方法においては、自動設定された閾値の信頼性が十分とは言い難いため、閾値の設定は作業者の経験に頼らざるを得ないのが現状である。ところが、振動データは、切削工具の回転数や送り速度、被加工物の種類等の切削条件によって波形が大きく変化することから、種々の波形に応じて閾値を正しく設定することは、経験豊富な作業者であっても困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、加工異常を容易に精度よく検出することができる加工異常検出装置および方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、加工により生じる振動を検出して得られる振動レベルの時系列データに基づき加工異常を検出する装置であって、前記時系列データの波形を設定枠と共に設定画面に表示する表示制御部と、前記設定枠の時間幅およびレベル幅を作業者が設定する入力部と、設定された前記設定枠内における前記振動レベルの時間平均値を加工中にリアルタイムに算出する演算部と、前記時間平均値を閾値と比較して加工異常の有無を判定する判定部とを備える加工異常検出装置により達成される。
【0008】
この加工異常検出装置は、前記時系列データの波形の一部に対して作業者が前記設定枠を仮設定することにより算出された前記時間平均値を初期値として記憶する記憶部を更に備えることが好ましく、前記表示制御部は、前記設定枠の設定中に、前記時間平均値と前記初期値とを対比可能に表示することが好ましい。
【0009】
前記表示制御部は、前記設定枠の設定中に、前記時間平均値および前記閾値を前記設定枠内にライン表示することが好ましい。
【0010】
前記判定部は、前記時間平均値を平均値比較用閾値と比較すると共に、前記時系列データのピーク値をピーク値比較用閾値と比較して、加工異常の有無を判定することが好ましい。
【0011】
また、本発明の前記目的は、加工により生じる振動を検出して得られる振動レベルの時系列データに基づき加工異常を検出する方法であって、前記時系列データの波形を設定枠と共に設定画面に表示する表示ステップと、前記設定枠の時間幅およびレベル幅を作業者が設定する入力ステップと、設定された前記設定枠内における前記振動レベルの時間平均値を加工中にリアルタイムに算出する算出ステップと、前記時間平均値を閾値と比較して加工異常の有無を判定する判定ステップとを備える加工異常検出方法により達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加工異常検出装置および方法によれば、加工異常を容易に精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る加工異常検出装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】表示部の表示例を示す図である。
図3】入力画面の一例を示す図である。
図4】初期値画面の一例を示す図である。
図5】設定画面の一例を示す図である。
図6】測定画面の一例を示す図である。
図7】本発明の実施例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る加工異常検出装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の加工異常検出装置1は、マシニングセンタ、フライス盤、旋盤、放電機、研磨機等の加工装置50により行われる切削加工、放電加工、研磨加工等により生じる振動に基づき、加工異常を検出する。加工時の振動は、加工装置のハウジングや、工具・ワーク等に取り付けられた加速度センサ等の振動センサにより検出することが可能であり、所定時間毎の検出信号を変換して得られる振動レベル(大きさ)の時系列データが、加工装置50から加工異常検出装置1に送信される。振動レベルは、例えば実効値やオーバオール値である。
【0015】
図1に示すように、加工異常検出装置1は、表示部11と、表示制御部12と、入力部13と、演算部14と、記憶部15と、判定部16と、出力部17とを備えており、例えば、汎用のコンピュータにより構成される。表示部11は、例えばディスプレイである。加工装置50のディスプレイなど外部のディスプレイを使用できる場合には、加工異常検出装置1が表示部11を備えない構成であってもよい。
【0016】
表示制御部12は、加工装置50の振動レベルの時系列データの波形を、設定枠と共に表示部11に表示する。表示制御部12は、表示部11の画面を複数に分割して、複数の加工装置50の振動データを同時に表示してもよい。入力部13は、キーボート、マウス、タッチパネル等であり、作業者の操作によって設定枠の設定等を行うことができる。
【0017】
図2は、表示部11に表示される振動レベルの時系列データの波形および設定枠の一例を示す図である。図2に示すように、設定枠20は、矩形状であり、振動レベルの時系列データ21を部分的に囲むように表示される。時系列データ21は、横軸が時間であり、縦軸が振動レベルである。設定枠20の表示位置は、マウスやカーソルキー等の入力部13の操作により時系列データ21に対して相対移動させることが可能であり、作業者が、時系列データ21の波形の特徴的な部分等に位置合わせすることができる。時系列データ21の横軸および縦軸の目盛りは、波形に合わせて自動または手動で調整可能に構成してもよい。表示制御部12は、後述する演算部14により算出される時間平均値を、図2に破線で示すように設定枠20内に時間平均値ラインLAとして表示することができる。
【0018】
また、設定枠20は、左右方向の時間幅Tおよび上下方向のレベル幅Lを、入力部13の操作によりそれぞれ所望の大きさに設定することができる。設定枠20の時間幅Tおよびレベル幅Lの設定は、例えば、設定枠20の縁部や角部をマウスでドラッグして設定枠20を変形表示させながら行うことができる。あるいは、設定枠20の時間幅およびレベル幅をテンキーやキーボード等から入力してもよく、設定後の時間幅Tおよびレベル幅Lの設定枠20を表示制御部12が表示することもできる。
【0019】
演算部14は、設定された設定枠20内における振動レベルの時間平均値を算出する。すなわち、演算部14は、設定枠20内に存在する所定時間毎の振動レベルの平均値を算出するが、この際に、設定された上限値よりも大きい振動レベルのデータ、および、設定された下限値よりも小さい振動レベルのデータを除外し、設定されたレベル幅に収まる振動レベルのデータのみから時間平均値を算出する。設定枠20内の振動レベルの時間平均値の算出は、必ずしも上記の方法に限定されるものではなく、例えば、設定されたレベル幅の上限に相当する上限値よりも大きい振動レベルは上限値に置き換える一方、設定されたレベル幅の下限に相当する下限値よりも小さい振動レベルは下限値に置き換えて、時間平均値を算出してもよい。切削等の加工が行われている間は、時系列データ21がリアルタイムに取得されて波形が変化するため、演算部14は、振動データの各サンプリング時刻において、時間平均値を算出する。
【0020】
記憶部15は、メモリ等からなり、設定枠20の時間幅およびレベル幅の設定値が記憶される。また、記憶部15には、時系列データ21の波形の一部に対して作業者が設定枠20を仮設定することにより算出された時間平均値が、初期値として記憶される。
【0021】
判定部16は、切削等の加工中に、演算部14が時間平均値を算出する毎に閾値と比較して、加工異常の有無を判定する。閾値は複数設定することも可能である。例えば、閾値として限界値および危険値を設定し、時間平均値が危険値を超えた場合に危険状態と判定し、時間平均値が更に限界値を超えた場合に限界状態と判定することができる。
【0022】
出力部17は、判定部16の判定結果を光や音等で出力する装置であり、例えば、警告灯やスピーカ等からなる。判定部16の判定結果は、表示部11に表示させることも可能であるため、出力部17を備えない構成であってもよい。
【0023】
次に、上記の構成を備える加工異常検出装置1の作動を説明する。加工異常検出装置1を起動すると、まず図3に示す作業内容の入力画面が表示部11に表示される。作業者が、この入力画面において、プロジェクト名、担当者名、機械名、加工材質等の作業内容を特定するための情報を入力し、「NEXT」ボタンをクリックすると、加工装置50の作動および振動計測開始の確認を促す画面を経て、図4に示す初期値画面が表示部11に表示される。
【0024】
図4に示すように、初期値画面においては、加工装置50から送信された所定の時間帯(例えば、加工開始直後)における振動レベルの時系列データ21の波形が、設定枠20と共に表示される。作業者は、時系列データ21の波形を見て、波形の一部が抽出されるように設定枠20の時間幅Tおよびレベル幅Lを仮設定する。設定枠20の時間幅Tの設定は、加工内容や加工条件等によって大きく異なる時系列データ21の波形を作業者が把握した上で、波形の中で同様の形状が繰り返される特徴的な部分が抽出されるように行うことが好ましい。また、設定枠20のレベル幅Lの設定は、波形の特徴的な部分について、振動レベルが極端に高い部分や極端に低い部分がカットされるように行うことが好ましい。
【0025】
設定枠20の仮設定が行われる間、演算部14は、設定枠20内における振動レベルの時間平均値を算出する。この時間平均値は、初期値画面に数値として表示されると共に、設定枠20内にライン表示される。作業者は、表示される時間平均値の変化を見ながら、設定枠20の時間幅Tおよびレベル幅Lを調整することができる。設定枠20の仮設定は、初期値画面の「NEXT」ボタンをクリックすることにより完了する。
【0026】
仮設定が行われた設定枠20に基づく時間平均値は、初期値として記憶部15に記憶される。記憶部15には、仮設定された設定枠20の情報や、設定枠20により抽出された時系列データ21の波形等も、初期値に対応付けられて記憶される。
【0027】
設定枠20の仮設定が完了すると、図5に示す設定画面が表示される。図5に示すように、設定画面においては、初期画面に表示された時系列データ21の波形と同様の実際の加工中の波形が、設定枠20と共に「Manual Safe」として表示される(表示ステップ)。作業者は、この設定画面上で、初期画面と同様に設定枠20の時間幅Tおよびレベル幅Lを設定(本設定)することができる(入力ステップ)。
【0028】
設定枠20の設定中は、初期値画面で設定された初期値が、仮設定された設定枠20’および抽出された時系列データ21’と共に、「First」として表示される。作業者は、設定枠20の時間平均値を、初期値と対比させながら適宜調整を行い、設定枠20の設定を行うことができる。
【0029】
図5に示す設定画面においては、作業者が、設定枠20の設定と共に、時間平均値と比較する閾値の設定を行うことができる。本実施形態においては、加工異常を警告する危険値、および、加工装置50を強制停止させる限界値を、閾値として設定することができるが、閾値は単一であってもよい。設定中の危険値および限界値は、設定枠20内の時間平均値ラインLAと共に、危険値ラインDLおよび限界値ラインLLとしてそれぞれ表示され、作業者が、これらのラインをドラックして移動させるか、あるいは個別に数値を入力することにより、閾値が設定される。閾値の設定は、初期値画面で設定された初期値に対して予め設定された倍率(例えば3倍)を乗じることで自動的に行うことも可能であり、あるいは、閾値を自動的に設定した後に作業者が手動で適宜修正することもできる。
【0030】
図5に示す設定画面においては、上記のように、時間平均値と比較される平均値比較用閾値を設定すると共に、時系列データ21のピーク値と比較されるピーク値比較用閾値を設定可能であってもよい。例えば、コーナーR加工時等や刃物の破損時に生じる振動レベルのピーク値を予め把握しておき、これらの異常振動時のピーク値を検出可能なピーク値比較用閾値を予め設定することで、加工中に生じた異常振動の回数を測定したり、加工装置50を強制停止させたりすることができる。このように、平均値比較用閾値およびピーク値比較用閾値の両方を設定することで、切削加工や放電加工等で経時的に生じる刃物や電極等の工具の摩耗は平均値比較用閾値により検出できる一方、工具の破損や加工プログラムの問題(加工方法や加工条件等)はピーク値比較用閾値により検出できるため、性質が異なる複数種類の加工異常を的確に検出することができる。
【0031】
設定枠20の設定は、設定画面の「NEXT」ボタンをクリックすることにより完了する。一方、初期値を修正したい場合には、設定画面の「BACK」ボタンをクリックすることにより、初期値画面に戻ることができる。
【0032】
設定枠20の設定(本設定)が完了すると、記憶部15には、設定された設定枠20や閾値に関する情報等が記憶される。演算部14は、切削加工中に経時変化する時系列データ21について、設定枠20内における振動レベルの時間平均値をリアルタイムに算出する(算出ステップ)。判定部16は、時間平均値と閾値(例えば、上記の設定画面で設定された平均値比較用閾値の危険値または限界値、あるいは、ピーク値比較用閾値)との比較を随時行い、切削加工の異常の有無を判定する(判定ステップ)。
【0033】
図6は、切削加工中に表示部11に表示される測定画面の一例を示している。図6に示すように、測定画面においては、振動レベルの時系列データ21がスクロール表示されて、「Now」と表示された設定枠20を通過する。演算部14は、この設定枠20内の時間平均値を随時算出し、現在値表示部D1に時間平均値の現在値として表示する。現在値は、閾値表示部D2に表示された設定時の時間平均値や閾値(危険値または限界値)と比較することが可能であり、設定枠や閾値の再調整が必要な場合には、設定画面に戻ることで改めて設定することができる。測定画面には、現在値表示部D1および閾値表示部D2以外に、機械学習等によって自動的に算出された時間平均値等を表示する自動算出値表示部D3や、初期値を表示する初期値表示部D4が設けられており、これらに表示される数値を随時比較することができる。
【0034】
判定部16は、三色警告灯からなる出力部17に判定結果をリアルタイムで出力し、時間平均値が危険値以下の場合には緑色を点灯させ、時間平均値が危険値を超えた場合には黄色を点灯させる。時間平均値が限界値を超えた場合には、赤色を点灯させると共に、加工装置50を強制停止させる。
【0035】
本実施形態の加工異常検出装置は、振動レベルの時系列データの波形が切削加工毎に大きく異なる場合であっても、作業者が個々の波形の特徴部分を見ながら設定枠の時間幅およびレベル幅の双方を設定することができるため、作業者の過去の経験を有効に活用して設定枠を迅速且つ的確に設定することができる。したがって、切削加工の異常を容易に精度よく検出することができるので、一品一様の加工品等であっても適切に管理することができる。
【0036】
例えば、図7(a)に示す振動レベルの時系列データは、主として、エアカット時T1、通常加工時T2およびコーナー加工時T3の3つの時間帯により、波形が構成されている。この場合に、設定枠を時間幅のみで設定して切削加工中の振動レベルの時間平均値を算出すると、設定枠内にエアカット時T1の振動レベルが含まれることで時間平均値が過度に小さくなるおそれがあり、あるいは、設定枠内にコーナー加工時T3の振動レベルが含まれることで時間平均値が過度に大きくなるおそれがある。そこで、エアカット時T1およびコーナー加工時T3の振動レベルを含まないように、図7(b)に示すように設定枠20のレベル幅を設定することで、実加工の時間平均値を正しく算出することができ、平均値比較用閾値との比較により、徐々に進行する切削工具の摩耗等を的確に検出することができる。また、図7(a)に示す切削工具の工具破損時T4は、ピーク値比較用閾値との比較により検出することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 加工異常検出装置
11 表示部
12 表示制御部
13 入力部
14 演算部
15 記憶部
16 判定部
17 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7