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特開2023-161234フロア用配線モジュール、フロア用積層体及びフロア用配線モジュールの製造方法
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  • 特開-フロア用配線モジュール、フロア用積層体及びフロア用配線モジュールの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161234
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】フロア用配線モジュール、フロア用積層体及びフロア用配線モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20231030BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20231030BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B60R16/02 620A
H02G3/04
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071467
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】當銘 祐太
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】小出 剛史
【テーマコード(参考)】
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD14
5G363AA16
5G363BA02
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】サイレンサ及びカーペットをフロアパネルに簡易に配置できる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】フロア用配線モジュール10は、サイレンサ20と、前記サイレンサ20の一方主面に積層されたカーペット30と、前記サイレンサ20と前記カーペット30との間に挟まれて保持されている配線部材50と、を備える。前記サイレンサ20と前記カーペット30との積層領域は、前記サイレンサ20と前記カーペット30とが加熱プレスされて固定された第1領域12と、前記一方主面上において前記第1領域12の隣に位置し、かつ、前記サイレンサ20と前記カーペット30との間に前記配線部材50が位置する第2領域14とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイレンサと、
前記サイレンサの一方主面に積層されたカーペットと、
前記サイレンサと前記カーペットとの間に挟まれて保持されている配線部材と、
を備え、
前記サイレンサと前記カーペットとの積層領域は、前記サイレンサと前記カーペットとが加熱プレスされて固定された第1領域と、前記一方主面上において前記第1領域の隣に位置し、かつ、前記サイレンサと前記カーペットとの間に前記配線部材が位置する第2領域とを含む、フロア用配線モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のフロア用配線モジュールであって、
前記積層領域は、前記一方主面上において前記第2領域の隣に位置し、かつ、前記サイレンサと前記カーペットとが機械的接合部材を介して固定されている第3領域を含む、フロア用配線モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のフロア用配線モジュールであって、
前記一方主面において前記第1領域が占める面積は、前記第3領域が占める面積よりも大きい、フロア用配線モジュール。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のフロア用配線モジュールであって、
前記第1領域は、車両のフロアにおいて、前記第2領域及び前記第3領域よりも乗員によって踏まれやすい領域に配置される、フロア用配線モジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロア用配線モジュールであって、
前記第2領域には、前記配線部材を前記サイレンサと前記カーペットとの少なくとも一方に固定する配線保持部が設けられている、フロア用配線モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のフロア用配線モジュールであって、
前記配線保持部は、機械的接合部材を有する保持部、又は、前記第1領域における前記サイレンサと前記カーペットとの固着力よりも弱い固着力を有する接着保持部である、フロア用配線モジュール。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロア用配線モジュールであって、
前記カーペットは、前記サイレンサの前記一方主面における外縁よりも内側領域に位置する窓部を有し、
前記配線部材は、前記窓部を通じて前記カーペット上に延び出る端部を有する、フロア用配線モジュール。
【請求項8】
サイレンサと、
前記サイレンサの一方主面に積層されたカーペットと、
を備え、
前記サイレンサと前記カーペットとの積層領域は、前記サイレンサと前記カーペットとが加熱プレスされて固定された固定領域と、前記一方主面上において前記固定領域の隣に位置し、かつ、前記サイレンサと前記カーペットとが分離している分離領域とを含む、フロア用積層体。
【請求項9】
サイレンサとカーペットとの積層領域の一部を加熱プレスして固定する工程と、
前記積層領域の他の一部であって前記サイレンサと前記カーペットとが固定されていない部分において、前記サイレンサと前記カーペットとの間に配線部材を配置する工程と、
を備える、フロア用配線モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フロア用配線モジュール、フロア用積層体及びフロア用配線モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両のフロアパネルにおける電線配索構造を開示している。特許文献1の電線配索構造は、フロアパネルの車室内面に設けられた収容凹部と、前記収容凹部に収容される電線と、前記電線を前記収容凹部に収容保持する保持部材と、備えることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-089398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロアパネルには、電線のほか、サイレンサ及びカーペットなどが配置されることがある。サイレンサ及びカーペットをフロアパネルに簡易に配置できることが望まれている。
【0005】
そこで、サイレンサ及びカーペットをフロアパネルに簡易に配置できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のフロア用配線モジュールは、サイレンサと、前記サイレンサの一方主面に積層されたカーペットと、前記サイレンサと前記カーペットとの間に挟まれて保持されている配線部材と、を備え、前記サイレンサと前記カーペットとの積層領域は、前記サイレンサと前記カーペットとが加熱プレスされて固定された第1領域と、前記一方主面上において前記第1領域の隣に位置し、かつ、前記サイレンサと前記カーペットとの間に前記配線部材が位置する第2領域とを含む、フロア用配線モジュールである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、サイレンサ及びカーペットをフロアパネルに簡易に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかるフロア用配線モジュールを示す平面図である。
図2図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3はフロア用配線モジュールの製造方法を示す斜視図である。
図4図4はフロア用配線モジュールの製造方法を示す斜視図である。
図5図5はフロア用配線モジュールの製造方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のフロア用配線モジュールは、次の通りである。
【0011】
(1)サイレンサと、前記サイレンサの一方主面に積層されたカーペットと、前記サイレンサと前記カーペットとの間に挟まれて保持されている配線部材と、を備え、前記サイレンサと前記カーペットとの積層領域は、前記サイレンサと前記カーペットとが加熱プレスされて固定された第1領域と、前記一方主面上において前記第1領域の隣に位置し、かつ、前記サイレンサと前記カーペットとの間に前記配線部材が位置する第2領域とを含む、フロア用配線モジュールである。
【0012】
このようなフロア用配線モジュールによると、サイレンサとカーペットとが第1領域において加熱プレスされて固定されているため、比較的高い固着力によって固着されることができる。これにより、フロア用配線モジュールにおいて、サイレンサ及びカーペットが一体化された状態に保たれやすいため、サイレンサ及びカーペットをフロアパネルに簡易に配置できる。また、第1領域の隣の第2領域が配線部材の配置領域であるため、サイレンサ及びカーペットの積層体に配線部材を簡易に配置できると共に、第1領域における加熱プレスの影響が配線部材に及びにくい。
【0013】
(2)(1)のフロア用配線モジュールにおいて、前記積層領域は、前記一方主面上において前記第2領域の隣に位置し、かつ、前記サイレンサと前記カーペットとが機械的接合部材を介して固定されている第3領域を含んでもよい。これにより、第3領域を簡易に設けることができる。また、第1領域、第2領域、及び、第3領域がこの順番で設けられることができ、第1領域における加熱プレスの影響が配線部材に及びにくい。
【0014】
(3)(2)のフロア用配線モジュールにおいて、前記一方主面において前記第1領域が占める面積は、前記第3領域が占める面積よりも大きくてもよい。これにより、サイレンサとカーペットとが一体になった状態が保たれやすい。
【0015】
(4)(2)又は(3)のフロア用配線モジュールにおいて、前記第1領域は、車両のフロアにおいて、前記第2領域及び前記第3領域よりも乗員によって踏まれやすい領域に配置されてもよい。これにより、第2領域の配線部材及び第3領域の機械的接合部材が乗員によって踏まれにくい。また、第1領域において加熱プレスによってサイレンサとカーペットとが固定されているため、乗員による踏まれに対する強度を得やすい。
【0016】
(5)(1)から(4)のいずれか1つのフロア用配線モジュールにおいて、前記第2領域には、前記配線部材を前記サイレンサと前記カーペットとの少なくとも一方に固定する配線保持部が設けられていてもよい。これにより、配線部材と、サイレンサ及びカーペットの積層体との位置ずれが抑制される。
【0017】
(6)(5)のフロア用配線モジュールにおいて、前記配線保持部は、機械的接合部材を有する保持部、又は、前記第1領域における前記サイレンサと前記カーペットとの固着力よりも弱い固着力を有する接着保持部であってもよい。これにより、フロア用配線モジュールのリペア時等に配線部材をサイレンサ及びカーペットの積層体から取り外す必要がある場合でも、配線部材の取り外しが容易となる。
【0018】
(7)(1)から(6)のいずれか1つのフロア用配線モジュールにおいて、前記カーペットは、前記サイレンサの前記一方主面における外縁よりも内側領域に位置する窓部を有し、前記配線部材は、前記窓部を通じて前記カーペット上に延び出る端部を有してもよい。これにより、配線部材は、サイレンサの一方主面における外縁よりも内側領域に位置する機器に容易に接続されることができる。
【0019】
(8)また、本開示のフロア用積層体は、サイレンサと、前記サイレンサの一方主面に積層されたカーペットと、を備え、前記サイレンサと前記カーペットとの積層領域は、前記サイレンサと前記カーペットとが加熱プレスされて固定された固定領域と、前記一方主面上において前記固定領域の隣に位置し、かつ、前記サイレンサと前記カーペットとが分離している分離領域とを含む、フロア用積層体である。
【0020】
このようなフロア用積層体によると、サイレンサとカーペットとが固定領域において加熱プレスされて固定されているため、比較的高い固着力によって固着されることができる。これにより、フロア用配線モジュールにおいて、サイレンサ及びカーペットが一体化された状態に保たれやすいため、サイレンサ及びカーペットをフロアパネルに簡易に配置できる。また、固定領域とは別の分離領域においてサイレンサとカーペットとが分離しているため、配線部材をサイレンサとカーペットとの間に配置しやすい。
【0021】
(9)また、本開示のフロア用配線モジュールの製造方法は、サイレンサとカーペットとの積層領域の一部を加熱プレスして固定する工程と、前記積層領域の他の一部であって前記サイレンサと前記カーペットとが固定されていない部分において、前記サイレンサと前記カーペットとの間に配線部材を配置する工程と、を備える、フロア用配線モジュールの製造方法である。
【0022】
このようなフロア用配線モジュールの製造方法によると、サイレンサとカーペットとが積層領域の一部において加熱プレスされて固定されているため、比較的高い固着力によって固着されることができる。これにより、フロア用配線モジュールにおいて、サイレンサ及びカーペットが一体化された状態に保たれやすいため、サイレンサ及びカーペットをフロアパネルに簡易に配置できる。また、サイレンサ及びカーペットが加熱プレスされて固定される領域とは別の領域に配線部材が配置されているため、サイレンサ及びカーペットを固定するための加熱プレスの影響が配線部材に及びにくい。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のフロア用配線モジュール、フロア用積層体及びフロア用配線モジュールの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかるフロア用配線モジュール10、フロア用積層体100及びフロア用配線モジュール10の製造方法について説明する。図1は実施形態1にかかるフロア用配線モジュール10を示す平面図である。図2図1のII-II線に沿った断面図である。図1及び図2に示される前後方向(FRONT,REAR)、左右方向(LEFT,RIGHT)、及び上下方向(UP,LOW)は、車両における前後方向、左右方向、及び上下方向に対応する。
【0025】
フロア用配線モジュール10は、車両のフロアパネル80上に配置される。フロアパネル80は車室下部に配置される。フロアパネル80は、例えば金属製床板である。フロア用配線モジュール10は、サイレンサ20とカーペット30と配線部材50とを備える。
【0026】
サイレンサ20は、フロアパネル80上に配置される防音部材である。サイレンサ20は、フロアパネル80などの凹凸を平坦化する部材であってもよい。サイレンサ20は、例えば、繊維又は発泡樹脂などを材料とする成形体である。サイレンサ20は、カーペット30よりも厚手であってよい。サイレンサ20は、カーペット30と比較して剛性が高く、その形態を維持可能となっていてもよい。
【0027】
カーペット30は、サイレンサ20上に配置される。カーペット30は、通常、車室内に意匠面として露出する。カーペット30は、サイレンサ20と比較して剛性が低く、曲げ容易であってもよい。カーペット30は、サイレンサ20の一方主面に積層されている。配線部材50は、サイレンサ20とカーペット30との間に挟まれて保持されている。ここではカーペット30は、車両の前後方向に分割されている。
【0028】
配線部材50は、車両において機器同士を接続する。配線部材50は複数の線状伝送部材51を含む。線状伝送部材51は、電気を伝送する電線であってもよいし、光を伝送する光ファイバケーブルであってもよい。複数の線状伝送部材51は、車両における各自の経路に応じてまとめられていてもよい。複数の線状伝送部材51は、粘着テープ又は結束バンドなどの結束部材によって束ねられていてもよい。
【0029】
ここでは線状伝送部材51の端部には、コネクタ52が設けられている。線状伝送部材51はコネクタ52を介して、機器又は別の配線部材50と接続される。コネクタ52は、例えばコネクタ52端子とコネクタ52ハウジングとを有する。線状伝送部材51の端部がコネクタ52端子に接続される。コネクタ52端子はコネクタ52ハウジングに位置決め保持される。線状伝送部材51の端部は、コネクタ52を介さず機器などに直接接続されてもよい。
【0030】
ここでは配線部材50は、第1延在部分53と第2延在部分54と第3延在部分55とを有する。
【0031】
第1延在部分53は車両の前後方向に沿って延びる。ここでは、一対の第1延在部分53が設けられる。一対の第1延在部分53は車両の幅方向に互いに離れている。一対の第1延在部分53の一方はサイレンサ20の左側方縁部に沿って延び、一対の第1延在部分53の他方はサイレンサ20の右側方縁部に沿って延びる。第1延在部分53の前端部は、サイレンサ20の前端からサイレンサ20よりも車両前方に延出する。第1延在部分53の後端部は、サイレンサ20の後端からサイレンサ20よりも車両後方に延出する。
【0032】
第2延在部分54は、車両の幅方向に沿って延びる。第2延在部分54は、第1延在部分53の延在方向に沿ったサイレンサ20の中間部に配置される。第1延在部分53と第2延在部分54との合流部分は分岐部56とされる。第2延在部分54の左端部は、サイレンサ20の左端からサイレンサ20よりも車両左方に延出する。第2延在部分54の右端部は、サイレンサ20の右端からサイレンサ20よりも車両右方に延出する。
【0033】
第3延在部分55は、第2延在部分54の延在方向に沿った中間部から分岐する。第2延在部分54と第3延在部分55との分岐部56は、一対の第1延在部分53の間に設けられる。
【0034】
サイレンサ20とカーペット30との積層領域は、第1領域12と第2領域14と第3領域16とを含む。
【0035】
第1領域12は、サイレンサ20とカーペット30とが加熱プレスされて固定された領域である。ここでは、サイレンサ20とカーペット30との間に熱粘着剤40が設けられている。当該熱粘着剤40を介してサイレンサ20とカーペット30とが強固に固定されている。
【0036】
第2領域14は、サイレンサ20の一方主面上において第1領域12の隣に位置する。図1における二点鎖線は第1領域12と第2領域14との境界を示している。第2領域14は、サイレンサ20とカーペット30との間に配線部材50が位置する領域である。第2領域14において、サイレンサ20とカーペット30との間に配線部材50が位置するため、サイレンサ20とカーペット30との少なくとも一方が配線部材50の厚み分、撓んだり、曲がったりしてもよい。図2に示す例では、サイレンサ20が撓み、カーペット30が曲っている。サイレンサ20に溝が設けられるなどして、カーペット30が曲らないようにされてもよい。
【0037】
第2領域14には、配線部材50をサイレンサ20とカーペット30との少なくとも一方に固定する配線保持部15が設けられている。配線保持部15は、機械的接合部材を有する保持部、又は、第1領域12におけるサイレンサ20とカーペット30との固着力よりも弱い固着力を有する接着保持部である。
【0038】
配線保持部15が機械的接合部材を有する保持部である場合、かかる機械的接合部材は、スポンジなどの弾性部材であってもよい。弾性部材が配線部材50とサイレンサ20又はカーペット30とに挟まれて圧縮することによって摩擦力が生じ、当該摩擦力によって配線部材50が保持される。
【0039】
配線保持部15が第1領域12におけるサイレンサ20とカーペット30との固着力よりも弱い固着力を有する接着保持部である場合、接着保持部は、片面粘着テープ、両面粘着テープ、接着剤などの接着部材を用いて接着された部分であってもよい。接着保持部は、融着などのように、他の部材を介さずに、配線部材50とサイレンサ20又はカーペット30との少なくとも一方の樹脂が溶けて相手側部材に接着された部分であってもよい。図2では、配線保持部15として、両面粘着テープ又は接着剤などの接着部材60を有する接着保持部の例が示されている。
【0040】
配線保持部15は、サイレンサ20上に置ける配線部材50の延在方向に沿って間隔をあけた複数箇所に設けられてもよい。この場合、配線保持部15は、配線部材50がサイレンサ20から延び出る部分、配線部材50の分岐部56などに設けられると良い。配線保持部15は、サイレンサ20上に置ける配線部材50の延在方向に沿った全体に設けられてもよい。
【0041】
第3領域16は、サイレンサ20の一方主面上において第2領域14の隣に位置する。第3領域16はサイレンサ20とカーペット30とが機械的接合部材42を介して固定されている領域である。機械的接合部材42は、特に限定されるものではなく、例えば、タグピン状部材、ステープラ、又は、縫付の糸等であってもよい。第3領域16は、カーペット30の外縁を含む。第3領域16は、第2領域14を介して第1領域12とつながる。第2領域14は、第1領域12と第3領域16との間に介在する。第2領域14及び第3領域16は、第3領域16の固定前は、自由端となっている。
【0042】
図2では、機械的接合部材42としてタグピン状部材42の例が示されている。タグピン状部材42は、例えば、一対の支持片43と、一対の支持片43を連結する連結片44とを有する。一対の支持片43の一方は、サイレンサ20の下面の下方に位置してサイレンサ20の下面に引っ掛かっている。一対の支持片43の他方はカーペット30の上面の上方に位置して、カーペット30の上面に引っ掛かっている。連結片44は、サイレンサ20及びカーペット30を貫通している。
【0043】
サイレンサ20の一方主面において第1領域12が占める面積は、第3領域16が占める面積よりも大きい。第1領域12が占める面積は、第2領域14の占める面積よりも大きくてもよい。第1領域12が占める面積は、第2領域14の占める面積と第3領域16の占める面積との和よりも大きくてもよい。サイレンサ20の一方主面の面積のうち半分以上が第1領域12であってもよい。
【0044】
第1領域12は、車両のフロアにおいて、第2領域14及び第3領域16よりも乗員によって踏まれやすい領域に配置される。乗員に踏まれやすい領域は、例えば、乗員の足元である。乗員に踏まれにくい領域は、例えば、座席の下、ロッカ82の側方などである。
【0045】
カーペット30において第1領域12をなす部分を第1固着部分31とし、第2領域14をなす部分を配線覆い部分32とし、第3領域16をなす部分を第2固着部分33とする。車両の前方に位置するカーペット30の第1固着部分31に対して、左方、右方及び後方に配線覆い部分32がつながっている。左方の配線覆い部分32と後方の配線覆い部分32とはスリット34Aを介して分離している。右方の配線覆い部分32と後方の配線覆い部分32とはスリット34Bを介して分離している。また、後方の配線覆い部分32は、スリット34Cを介して左右に分離している。後方の配線覆い部分32のうち第1延在部分53と第2延在部分54との分岐部56を覆う部分において、分岐部56の周りの4か所にタグピン状部材42が設けられている。車両の後方に位置するカーペット30の第1固着部分31に対して、左方及び右方に配線覆い部分32がつながっている。
【0046】
カーペット30は、サイレンサ20の一方主面における外縁よりも内側領域に位置する窓部35を有する。配線部材50は、窓部35を通じてカーペット30上に延び出る端部を有する。ここでは第3延在部分55の端部が窓部35を通じてカーペット30上に延び出る。第3延在部分55の端部は、カーペット30上の機器に接続される。かかる機器は、座席に配置される機器であってもよい。
【0047】
<製造方法>
次に、図3から図5を参照しつつ、フロア用配線モジュール10の製造方法について説明する。図3から図5はフロア用配線モジュール10の製造方法を示す斜視図である。
【0048】
まず、図3に示すように、サイレンサ20とカーペット30との積層領域の一部を加熱プレスして固定する。カーペット30は前後方向に沿って2つに分割されている。また、前方のカーペット30には、スリット34が形成されている。図3において、カーペット30のうち加熱プレスされる領域が、二点鎖線で囲まれる領域である。なお、図3では、前方のカーペット30と後方のカーペット30とが前後方向に離れている。前方のカーペット30と後方のカーペット30とは前後方向に接していてもよい。
【0049】
加熱プレスは、加熱プレス装置90を用いて行われる。加熱プレス装置90は、一対のプレス部材91、92を含む。プレス部材91がカーペット30を押圧し、プレス部材92がサイレンサ20を押圧する。例えば、一対のプレス部材91、92の少なくとも一方が加熱装置によって加熱された状態で加熱プレスが行われる。
【0050】
サイレンサ20とカーペット30とのうち固着したい部分に熱粘着剤40が設けられる。熱粘着剤40が設けられる部分が加熱プレスされることによって、熱粘着剤40を介してサイレンサ20とカーペット30とが固着する。なお、サイレンサ20とカーペット30とのうち熱粘着剤40が設けられていない部分も加熱プレスされてもよい。この場合、サイレンサ20とカーペット30とのうち熱粘着剤40が設けられていない部分は加熱プレスされたときに固着しなくてもよい。
【0051】
次に、サイレンサ20とカーペット30との積層領域の他の一部であってサイレンサ20とカーペット30とが固定されていない部分において、サイレンサ20とカーペット30との間に配線部材50を配置する。
【0052】
ここで、図4に示すように、サイレンサ20とカーペット30との積層領域の一部が加熱プレスによって固定されたものが、フロア用積層体100である。フロア用積層体100は、サイレンサ20と、サイレンサ20の一方主面に積層されたカーペット30とを備える。フロア用積層体100において、サイレンサ20とカーペット30との積層領域は、固定領域102と分離領域104とを含む。固定領域102は、サイレンサ20とカーペット30とが加熱プレスされて固定された領域である。固定領域102は、フロア用配線モジュール10における第1領域12に相当する。分離領域104は、サイレンサ20の一方主面上において固定領域102の隣に位置する。分離領域104は、サイレンサ20とカーペット30とが分離している領域である。分離領域104は、フロア用配線モジュール10における第2領域14及び第3領域16となる部分である。
【0053】
フロア用積層体100をなすカーペット30において、分離領域104をなす部分のうり固定領域102と連結された基端部よりも先端部が基端部の周りに自由に動くことが可能な遊動片36とされる。遊動片36は、固定領域102と連結された基端部を折目とする屈曲が可能である。車両の前方のカーペット30には、スリット34A、34B、34Cが設けられることによって、固定領域102に対して左方、右方、左後方、及び右後方の4つの遊動片36が設けられる。車両の後方のカーペット30には、固定領域102に対して右方及び左方にそれぞれ遊動片36が設けられる。
【0054】
このフロア用積層体100における分離領域104において、サイレンサ20とカーペット30との間に配線部材50を配置する。
【0055】
まず、図4に示すように、遊動片36を屈曲させて、サイレンサ20の上面を露出させる。そして、露出したサイレンサ20の上面に配線部材50を配置する。この際、すべての遊動片36を屈曲させることにより露出するサイレンサ20の上面は、配線部材50の経路に応じた形状となる。このため、露出するサイレンサ20の上面に配線部材50を配置することによって、配線部材50を所定の経路に沿うように容易に配置することができる。なお、図4に示す例では、遊動片36が90度屈曲している。遊動片36を180度屈曲させて、遊動片36を固定領域102に重ねてもよい。カーペット30は、遊動片36が固定領域102に重なるように遊動片36を屈曲可能に形成されていてもよい。
【0056】
図4では、両面粘着テープ又は接着剤などの接着部材60がサイレンサ20の上面に設けられている。サイレンサ20の上面に配線部材50が配置されて、接着部材60がサイレンサ20及び配線部材50に接着することによって、上記配線保持部15が形成される。
【0057】
露出するサイレンサ20上面への配線部材50の配置が終わったら、遊動片36を元に戻す。2つのカーペット30のうち前方のカーペット30において、固定領域102よりも後方に位置する遊動片36は、2つのカーペット30のうち後方のカーペット30に接していてもよいし、接していなくてもよい。この際、ここでは第1延在部分53の端部及び第2延在部分54の端部はサイレンサ20の外方に引き出される。また、第3延在部分55がスリット34Cによって互いに分離する2つの遊動片36の間からカーペット30上に引き出される。2つの遊動片36の間が上記窓部35とされる。これにより、サイレンサ20とカーペット30との間に配線部材50が配置され、図5に示す状態となる。なお、窓部35は、配線部材50の一部を引き出し可能であればよい。例えば、2つの遊動片36のうち配線部材50よりも前方の部分同士及び後方の部分同士が左右方向に接していることによって、窓部35がスリット状となっていてもよい。また例えば、2つの遊動片36同士が左右方向に離れていることによって、窓部35が開口状であってもよい。
【0058】
次に、分離領域104のうち配線部材50の側方において、サイレンサ20とカーペット30とを固定する。図5には、治具94を用いて、タグピン状部材42を打ち込んでサイレンサ20とカーペット30とを固定する例が示されている。遊動片36のうち固定領域102とは反対側の先端にタグピン状部材42が固定される。積層領域における所定の箇所において、タグピン状部材42を介してサイレンサ20とカーペット30とが固定されることによって、上記フロア用配線モジュール10が製造される。
【0059】
フロア用配線モジュール10とされて車両への組付工場に搬送されて、フロア用配線モジュール10がフロアパネル80上に配置されてもよい。フロア用積層体100が車両への組付工場に搬送されて、フロア用積層体100がフロアパネル80上に配置され、フロアパネル80上のフロア用積層体100に対して配線部材50が配置されてフロア用配線モジュール10とされてもよい。
【0060】
<効果等>
以上のように構成されたフロア用配線モジュール10によると、サイレンサ20とカーペット30とが第1領域12において加熱プレスされて固定されているため、比較的高い固着力によって固着されることができる。これにより、フロア用配線モジュール10において、サイレンサ20及びカーペット30が一体化された状態に保たれやすいため、サイレンサ20及びカーペット30をフロアパネル80に簡易に配置できる。また、第1領域12の隣の第2領域14が配線部材50の配置領域であるため、サイレンサ20及びカーペット30の積層体に配線部材50を簡易に配置できると共に、第1領域12における加熱プレスの影響が配線部材50に及びにくい。
【0061】
また、積層領域は、サイレンサ20の一方主面上において第2領域14の隣に位置し、かつ、サイレンサ20とカーペット30とが機械的接合部材42を介して固定されている第3領域16を含む。これにより、第3領域16を簡易に設けることができる。また、第1領域12、第2領域14、及び、第3領域16がこの順番で設けられることができ、第1領域12における加熱プレスの影響が配線部材50に及びにくい。
【0062】
また、サイレンサ20の一方主面において第1領域12が占める面積は、第3領域16が占める面積よりも大きい。これにより、サイレンサ20とカーペット30とが加熱プレスによって固定される第1領域12の面積が大きい分、サイレンサ20とカーペット30とが一体になった状態が保たれやすい。
【0063】
また、第1領域12は、車両のフロアにおいて、第2領域14及び第3領域16よりも乗員によって踏まれやすい領域に配置される。これにより、第2領域14の配線部材50及び第3領域16の機械的接合部材42が乗員によって踏まれにくい。また、第1領域12において加熱プレスによってサイレンサ20とカーペット30とが固定されているため、乗員による踏まれに対する強度を得やすい。
【0064】
また、第2領域14には、配線部材50をサイレンサ20とカーペット30との少なくとも一方に固定する配線保持部15が設けられている。これにより、配線部材50と、サイレンサ20及びカーペット30の積層体との位置ずれが抑制される。
【0065】
また、配線保持部15は、機械的接合部材を介した保持部、又は、第1領域12におけるサイレンサ20とカーペット30との固着力よりも弱い固着力を有する接着保持部である。これにより、フロア用配線モジュール10のリペア時等に配線部材50をサイレンサ20及びカーペット30の積層体から取り外す必要がある場合でも、配線部材50の取り外しが容易となる。
【0066】
また、カーペット30は、サイレンサ20の一方主面における外縁よりも内側領域に位置する窓部35を有し、配線部材50は、窓部35を通じてカーペット30上に延び出る端部を有する。これにより、配線部材50は、サイレンサ20の一方主面における外縁よりも内側領域に位置する機器に容易に接続されることができる。
【0067】
また、フロア用積層体100によると、サイレンサ20とカーペット30とが固定領域102において加熱プレスされて固定されているため、比較的高い固着力によって固着されることができる。これにより、フロア用配線モジュール10において、サイレンサ20及びカーペット30が一体化された状態に保たれやすいため、サイレンサ20及びカーペット30をフロアパネル80に簡易に配置できる。また、固定領域102とは別の分離領域104においてサイレンサ20とカーペット30とが分離しているため、配線部材50をサイレンサ20とカーペット30との間に配置しやすい。
【0068】
また、フロア用配線モジュール10の製造方法によると、サイレンサ20とカーペット30とが積層領域の一部において加熱プレスされて固定されているため、比較的高い固着力によって固着されることができる。これにより、フロア用配線モジュール10において、サイレンサ20及びカーペット30が一体化された状態に保たれやすいため、サイレンサ20及びカーペット30をフロアパネル80に簡易に配置できる。また、サイレンサ20及びカーペット30が加熱プレスされて固定される領域とは別の領域に配線部材50が配置されているため、サイレンサ20及びカーペット30を固定するための加熱プレスの影響が配線部材50に及びにくい。
【0069】
[付記]
これまで、積層領域が第3領域16を含むものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。積層領域は第3領域16を含んでいなくてもよい。例えば、カーペット30の遊動片36が車両において固定されないままであってもよい。また例えば、カーペット30の遊動片36が車両においてサイレンサ20以外の部材に固定されて、サイレンサ20とカーペット30とが配線部材50を挟んだ状態が保持されてもよい。
【0070】
またこれまで、第2領域14に配線保持部15が設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、第2領域14に配線保持部15が設けられていなくてもよい。
【0071】
またこれまで、配線部材50が窓部35を通じてカーペット30上に延び出る端部を有するものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、配線部材50が第3延在部分55を有していなくてもよい。また窓部35はスリット34である必要は無く、カーペット30を貫通する孔などであってもよい。
【0072】
またこれまで、カーペット30は複数に分割され、サイレンサ20は複数のカーペット30の分割体が合わさった大きさに対応する大きさを有しているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、サイレンサが複数に分割され、カーペットが複数のサイレンサ分割体が合わさった大きさに対応する大きさを有していてもよい。
【0073】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0074】
10 フロア用配線モジュール
12 第1領域
14 第2領域
15 配線保持部
16 第3領域
20 サイレンサ
30 カーペット
31 第1固着部分
32 配線覆い部分
33 第2固着部分
34、34A、34B、34C スリット
35 窓部
36 遊動片
40 熱粘着剤
42 タグピン状部材(機械的接合部材)
43 支持片
44 連結片
50 配線部材
51 線状伝送部材
52 コネクタ
53 第1延在部分
54 第2延在部分
55 第3延在部分
56 分岐部
60 接着部材
80 フロアパネル
82 ロッカ
90 加熱プレス装置
91、92 プレス部材
100 フロア用積層体
102 固定領域
104 分離領域
図1
図2
図3
図4
図5