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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161247
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20231030BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071493
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 秀一
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200GA05
2H200GA10
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200JB06
2H200JB10
2H200JB25
2H200JB49
2H200JB50
2H200MC05
2H200PA02
2H200PA11
2H200PB12
2H200PB35
2H270LA70
2H270LC02
2H270LC11
2H270MB07
2H270MD10
2H270MD12
2H270MD17
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】滑りにくい媒体に印刷を行う場合に、印刷不良の発生を抑制する。
【解決手段】画像形成装置1は、トナー像(現像剤像)を担持する感光体ドラム(像担持体)21と、感光体ドラム21からトナー像が転写される媒体Pを搬送する搬送ベルト(搬送部)31と、媒体Pの滑りにくさに対応する物理量を検出し、検出した物理量に応じて搬送ベルト31の搬送力または搬送速度を切り替える制御部としての印刷制御部(制御部)100とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体から現像剤像が転写される媒体を搬送する搬送部と、
前記媒体の滑りにくさに対応する物理量を検出し、検出した物理量に応じて、前記搬送部の搬送力または搬送速度を切り替える制御部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、より滑りにくい媒体を搬送する場合には、より滑りやすい媒体を搬送する場合よりも、前記搬送部の搬送力を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、より滑りにくい媒体を搬送する場合には、より滑りやすい媒体を搬送する場合よりも、前記搬送部の搬送速度と前記像担持体の速度との速度差を小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送部に前記媒体を給紙する給紙部と、
前記媒体の搬送路に配置され、前記媒体の通過を検知するセンサと
を有し、
前記物理量は、前記給紙部が前記媒体の給紙を開始してから、前記センサが前記媒体を検知するまでの時間である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記給紙部から給紙される前記媒体に接触する接触部材をさらに有する
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送部に前記媒体を給紙する給紙部と、
前記媒体の搬送路に配置され、前記媒体の通過を検知する第1のセンサおよび第2のセンサと
を有し、
前記物理量は、前記第1のセンサが前記媒体を検知してから、前記第2のセンサが前記媒体を検知するまでの時間である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記搬送路において前記第1のセンサと前記第2のセンサとの間に配置され、前記媒体に接触する接触部材をさらに有する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記媒体の搬送方向の長さを計測し、計測した長さに応じて、前記時間に基づいて切り替えた前記搬送力または前記搬送速度を元に戻す
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体の表面速度が、前記搬送部の搬送速度よりも所定の割合だけ速く設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記搬送部はモータによって駆動され、
前記制御部は、前記搬送力を、前記モータのトルクによって制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記モータのトルクは、前記モータに供給する駆動電流によって制御する
ことを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記搬送部はモータによって駆動され、
前記制御部は、前記搬送速度を、前記モータの回転速度によって制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記搬送部は、前記モータの駆動力によって走行して前記媒体を搬送する搬送ベルトを有する
ことを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒体上に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を用いた画像形成装置では、像担持体としての感光体ドラムの表面に形成した現像剤像を、搬送される媒体に転写する。印刷品質の向上のため、感光体ドラムの周速と媒体の搬送速度との間には、所定の速度差が設定される。また、高温高湿環境では速度差を大きくし、低温低湿環境では速度差を小さくすることも提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-295729号公報(要約参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、滑りにくい媒体を用いた場合、感光体ドラムの周速と媒体の搬送速度との間に速度差を設けると、印刷動作が進行するにつれて速度差が累積していき、搬送用のモータの脱調が生じて横筋等の印刷不良が生じる可能性がある。
【0005】
本開示は、印刷不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の画像形成装置は、現像剤像を担持する像担持体と、像担持体から現像剤像が転写される媒体を搬送する搬送部と、媒体の滑りにくさに対応する物理量を検出し、検出した物理量に応じて、搬送部の搬送力または搬送速度を切り替える制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、媒体の滑りにくさに対応する物理量に基づいて搬送部の搬送力または搬送速度を切り替えるため、印刷不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の画像形成装置の基本構成を示す図である。
図2】実施の形態1の画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
図3】実施の形態1の横筋の発生状態を示す模式図である。
図4】実施の形態1の画像形成装置の印刷動作を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2の画像形成装置の印刷動作を示すフローチャートである。
図6】印刷モードの選択画面の一例を示す模式図である。
図7】実施の形態3の画像形成装置の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
<画像形成装置の構成>
図1は、実施の形態1の画像形成装置1の基本構成を示す図である。画像形成装置1は、電子写真法を用いて画像を形成するものであり、ここではプリンタである。画像形成装置1は、印刷用紙等の媒体Pを供給する媒体供給部10と、媒体Pにトナー像を形成する画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cと、媒体Pにトナー像を転写する転写ユニット30と、媒体Pにトナー像を定着する定着ユニット40と、媒体Pを排出する媒体排出部50と、これらを収容する筐体70とを有する。
【0010】
媒体供給部10は、媒体収容部としての媒体カセット11と、給紙部としての給紙ローラ12と、接触部材としての分離パッド13と、搬送ローラ14およびピンチローラ15とを有する。
【0011】
媒体カセット11は、媒体Pを収容し、画像形成装置1の筐体70に着脱可能に取り付けられる。媒体カセット11は、媒体Pを載置する載置板と、媒体Pの位置を規定するガイド11aとを有する。給紙ローラ12は、給紙モータ16(図2)によって回転し、媒体カセット11から媒体Pを一枚ずつ搬送路A1に送り出す。
【0012】
分離パッド13は、例えばゴムで形成されたパッドであり、給紙ローラ12により送り出される媒体Pに接触して摩擦力を付与し、媒体Pの重送を防止する。搬送ローラ14は、給紙モータ16(図2)によって回転し、搬送路A1に送り出された媒体Pをさらに搬送する。ピンチローラ15は、搬送ローラ14に押圧された従動ローラである。
【0013】
画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cは、媒体Pの搬送路に沿ってこの順に配列されている。画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cは、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンのトナー(現像剤)を用いてトナー像(現像剤像)を形成する部分である。
【0014】
画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cは、像担持体としての感光体ドラム21K,21Y,21M,21Cと、帯電部材としての帯電ローラ22K,22Y,22M,22Cと、現像剤担持体としての現像ローラ24K,24Y,24M,24Cと、供給部材としての供給ローラ25K,25Y,25M,25Cと、現像剤収容体としてのトナーカートリッジ26K,26Y,26M,26Cとを有する。また、感光体ドラム21K,21Y,21M,21Cに対向するように、露光装置としての露光ヘッド23K,23Y,23M,23Cが配置されている。
【0015】
画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cは、トナーを除いて共通する同一の構成を有するため、特に区別する必要がない場合には、画像形成ユニット20と称する。
【0016】
同様に、帯電ローラ22K,22Y,22M,22Cは帯電ローラ22と称し、露光ヘッド23K,23Y,23M,23Cは露光ヘッド23と称し、現像ローラ24K,24Y,24M,24Cは現像ローラ24と称し、供給ローラ25K,25Y,25M,25Cは供給ローラ25と称し、トナーカートリッジ26K,26Y,26M,26Cはトナーカートリッジ26と称する。
【0017】
感光体ドラム21は、導電性支持体の表面に感光層を形成した円筒状の部材である。感光層は、電荷発生層と電荷輸送層との積層体である。感光体ドラム21は、ドラムモータ27(図2)により、図中時計回りに回転する。
【0018】
帯電ローラ22は、感光体ドラム21の表面に接触するように配置され、感光体ドラム21に追従して回転する。帯電ローラ22は帯電電圧を印加され、感光体ドラム21の表面を一様に帯電させる。
【0019】
露光ヘッド23は、発光素子としてのLED(発光ダイオード)を配列したLEDアレイとレンズアレイとを有する。露光ヘッド23は、感光体ドラム21の表面に光を照射して静電潜像を形成する。露光ヘッド23は、筐体70の上部を覆うトップカバー71に懸架されて支持されている。
【0020】
現像ローラ24は、感光体ドラム21の表面に接触するように配置され、感光体ドラム21とは逆方向(接触部での表面の移動方向が順方向となる方向)に回転する。現像ローラ24は現像電圧を印加され、感光体ドラム21上の静電潜像をトナーにより現像する。
【0021】
供給ローラ25は、現像ローラ24の表面に接触するように配置され、現像ローラ24と同方向(接触部での表面の移動方向が逆方向となる方向)に回転する。供給ローラ25は供給電圧を印加され、現像ローラ24にトナーを供給する。
【0022】
トナーカートリッジ26は、現像剤としてのトナーを収容する着脱可能な容器であり、現像ローラ24および供給ローラ25にトナーを供給する。
【0023】
転写ユニット30は、感光体ドラム21K,21Y,21M,21Cに接する搬送部としての搬送ベルト31と、搬送ベルト31が掛け渡された駆動部としての駆動ローラ32およびテンションローラ33と、搬送ベルト31を介して感光体ドラム21K,21Y,21M,21Cに押し当てられた転写部材としての転写ローラ34とを有する。
【0024】
搬送ベルト31は、媒体Pを吸着保持し、感光体ドラム21K,21Y,21M,21Cに沿って搬送する。駆動ローラ32は、ベルトモータ35(図2)によって回転し、搬送ベルト31を走行させる。テンションローラ33は、搬送ベルト31に一定の張力を付与する。転写ローラ34は転写電圧を印加され、感光体ドラム21の表面のトナー像を搬送ベルト31上の媒体Pに転写する。
【0025】
定着ユニット40は、媒体Pの搬送方向において画像形成ユニット20の下流側に配置されている。定着ユニット40は、定着ローラ41と、加圧ローラ42とを有する。
【0026】
定着ローラ41はハロゲンランプ等のヒータ43(図2)を内蔵し、例えば表面温度が200℃に加熱される。加圧ローラ42は定着ローラ41に圧接され、定着ニップを形成する。定着ローラ41は定着モータ44(図2)によって回転し、媒体Pを搬送する。定着ローラ41および加圧ローラ42は、媒体Pを加熱および加圧することにより、トナー像を媒体Pに定着させる。
【0027】
媒体排出部50は、定着ユニット40から排出口に向かう搬送路A2に、排出ローラ51およびピンチローラ52を有する。排出ローラ51は、定着モータ44(図2)からの回転伝達によって回転し、媒体Pを排出口から排出する。ピンチローラ52は、排出ローラ51に押圧されている。トップカバー71には、排出口から排出された媒体Pを載置するスタッカ部53が形成されている。
【0028】
画像形成装置1における媒体Pの搬送路に沿って、給紙ローラ12の下流側には給紙センサ61が配置されている。また、搬送ローラ14の上流側には入口センサ62が配置され、下流側には書込みセンサ63が配置されている。また、定着ユニット40の上流側には弛みセンサ64が配置され、定着ユニット40の下流側には排出センサ65が配置されている。
【0029】
給紙センサ61、入口センサ62、書込みセンサ63、弛みセンサ64および排出センサ65はいずれも、媒体Pの通過を検知するセンサである。これらのセンサ61~65は、媒体Pの先端が通過するとON信号を出力し、媒体Pの後端が通過するとOFF信号を出力する。センサ61~64は、媒体Pに当接する可倒レバーを有する機械式センサでもよく、媒体Pを光学的に検知する光学式センサでもよい。
【0030】
給紙センサ61の検知信号は、媒体カセット11から媒体Pが搬送路A1に供給されたか否かの判断に用いられる。
【0031】
入口センサ62の検知信号は、搬送ローラ14の回転開始タイミングの決定に用いられる。また、入口センサ62の検知信号は、後述する時間T1の計測にも用いられる。入口センサ62は、CPU101と共に、媒体Pの滑りにくさに応じた物理量(ここでは時間T1)を検出する検出部に相当する。
【0032】
書込みセンサ63の検知信号は、露光ヘッド23の露光開始タイミングの決定に用いられる。また、書込みセンサ63の検知信号は、後述する媒体Pの長さLの計測にも用いられる。書込みセンサ63は、CPU101と共に、媒体Pの長さLを計測する長さ計測部に相当する。
【0033】
弛みセンサ64の検知信号は、定着ローラ41の回転速度の微調整に用いられる。排出センサ65の検知信号は、媒体Pの定着ローラ41への巻き付き等の搬送不良の検知(ジャム検知)に用いられる。
【0034】
なお、画像形成装置1は、定着ローラ41の外径の温度変化によって定着ローラ41の周速が変化することに鑑み、搬送ベルト31と定着ローラ41との間で媒体Pが所定量だけ弛むように構成されている。弛み量が少ないと媒体P上の画像の位置ずれが生じ、弛み量が多いと媒体Pが周囲と接触するため、弛みセンサ64の検知信号に基づいて定着ローラ41の回転速度を微調整している。この点についての詳細説明は省略する。
【0035】
また、図1には示していないが、画像形成装置1は、媒体Pの搬送路に沿って最小媒体長さ以下の間隔で配設されたローラ、これらのローラを回転させるためのモータ、動力伝達を切り替えるクラッチ等をさらに備える。
【0036】
ここで説明した画像形成装置1は、画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cを用いてカラー画像を形成するように構成されているが、このような構成には限定されない。例えば、単一の画像形成ユニットを用いてモノクロ画像を形成するように構成してもよい。
【0037】
<画像形成装置の制御系>
図2は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。画像形成装置1は、制御部(制御回路)としての印刷制御部100と、I/F(インタフェース)制御部110と、受信メモリ111と、画像データ編集メモリ112とを有する。I/F制御部110、受信メモリ111および画像データ編集メモリ112は、印刷制御部100とは別に設けてよく、印刷制御部100に組み込んでもよい。
【0038】
I/F制御部110は、上位装置との間での印刷データ等の送受信を制御する。受信メモリ111は、I/F制御部110を介して入力された印刷データを一時的に記憶する。画像データ編集メモリ112は、受信メモリ111に記憶した印刷データを編集処理して形成した画像データを記録する。
【0039】
印刷制御部100は、主制御部としてのCPU101と、露光制御部102と、定着制御部としての温度調節回路103と、給紙制御部としてのモータドライバ104と、搬送制御部としてのモータドライバ105と、記憶部としてのフラッシュROM106およびEEPROM107とを有する。
【0040】
露光制御部102は、画像データ編集メモリ112に記憶された印刷データに基づき、露光ヘッド23の各LEDの発光を制御する。温度調節回路103は、定着ユニット40に設けられた図示しない温度センサの検知信号に基づき、ヒータ43を制御する。
【0041】
モータドライバ104は、媒体供給部10の給紙ローラ12を回転させる給紙モータ16を制御する。給紙モータ16は、例えばステッピングモータである。
【0042】
モータドライバ105は、転写ユニット30の駆動ローラ32を回転させるベルトモータ36を制御する。ベルトモータ36は、例えばステッピングモータである。
【0043】
フラッシュROM106は、画像形成装置1の動作プログラムを格納する。EEPROM107は、印刷枚数、並びに色ずれ補正および濃度補正に必要な各種パラメータを保存し、これらに変更があれば随時書き換えを行う。
【0044】
画像形成装置1は、また、帯電ローラ22、現像ローラ24、供給ローラ25および転写ローラ34に、それぞれ帯電電圧、現像電圧、供給電圧および転写電圧を印加する高圧電源部114を有する。
【0045】
画像形成装置1は、また、ユーザが操作入力を行う操作パネル113を有する。操作パネル113は、表示部と操作部とを有するものであり、例えばタッチパネルである。
【0046】
印刷制御部100のCPU101には、また、図1を参照して説明した給紙センサ61、入口センサ62、書込みセンサ63、弛みセンサ64および排出センサ65からの検知信号、並びに、図示しない濃度センサおよび温湿度センサからの検知信号が入力される。
【0047】
CPU101は、入力された情報に基づき、高圧電源部114、露光制御部102、温度調節回路103、ドラムモータ27、定着モータ44、およびモータドライバ104,105に制御信号を送る。
【0048】
なお、感光体ドラム21を回転させるドラムモータ27は、例えばブラシレスDCモータである。図2ではドラムモータ27を1つのみ示しているが、実際には感光体ドラム21K,21Y,21M,21Cに対応した4つのドラムモータ27が設けられている。
【0049】
定着ローラ41を回転させる定着モータ44は、例えばブラシレスDCモータである。ドラムモータ27および定着モータ44はいずれも、モータドライバが組み込まれた基板と一体に構成されている。但し、ドラムモータ27および定着モータ44のモータドライバを印刷制御部100に組み込んでも良い。
【0050】
<印刷不良対策>
次に、実施の形態1における印刷不良対策について説明する。画像形成装置1では、媒体供給部10から供給された媒体Pを搬送ベルト31で吸着保持し、画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cに沿って搬送する。
【0051】
各画像形成ユニット20では、帯電ローラ22が感光体ドラム21の表面を一様に帯電させる。感光体ドラム21の表面は露光ヘッド23によって露光され、静電潜像が形成される。感光体ドラム21上の静電潜像は、現像ローラ24上のトナーによって現像され、トナー像が形成される。感光体ドラム21上のトナー像は、搬送ベルト31によって搬送される媒体Pに転写される。
【0052】
画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cのトナー像が転写された媒体Pは、定着ユニット40に搬送され、定着ローラ41と加圧ローラ42とによって加熱および加圧され、トナー像が媒体Pに定着される。
【0053】
一般に、画像形成ユニット20および転写ユニット30の各ローラ(感光体ドラム21を含む)は、0.1%程度の公差を持って製造される。搬送ベルト31の弛みが生じて転写部間の搬送ベルト31の長さが長くなると、各色のトナー像の転写位置がずれ、色味の変化や輪郭のぼけが生じる可能性がある。
【0054】
そこで、印刷品質の向上を目的として、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との間には、所定の速度差が設定される。本実施の形態では、搬送ベルト31の走行速度を、感光体ドラム21の周速に対して0~1%(例えば0.5%)速く設定している。
【0055】
搬送ベルト31の走行速度とは、画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cを通過する際の搬送ベルト31の表面の移動速度([mm/秒])を言う。感光体ドラム21の周速とは、感光体ドラム21の表面すなわち外周面の移動速度([mm/秒])を言う。
【0056】
媒体Pは搬送ベルト31に吸着した状態で搬送されるため、媒体Pと搬送ベルト31との間では滑りは生じず、媒体Pと感光体ドラム21の表面との間で滑りが生じる。一方、媒体Pには、その表面の摩擦係数に応じて、滑りやすい媒体(例えば普通紙)と、滑りにくい媒体(例えばマット紙)とがある。滑りにくい媒体Pに印刷を行う場合には、媒体Pの搬送が進むにつれて速度差が蓄積し、ベルトモータ36の負荷が増大して、脱調が生じる可能性がある。
【0057】
図3は、媒体P上の印刷画像の一例を示す図である。ここでは、媒体Pの幅方向の一方の側(図中左側)から他方の側(図中右側)にかけて、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの帯状の画像8K,8Y,8M,8Cを形成している。各画像は、デューティ比が25%のハーフトーン画像である。
【0058】
図3に示すように、ベルトモータ36の脱調が生じると、印刷画像8に搬送方向に直交する方向の横筋9が形成される。例えば、マゼンタの画像8Mの横筋9Mと、シアンの画像8Cの横筋9Cとは同じタイミングで生じたものであり、これら2つの横筋9M,9Cの間隔Dは、感光体ドラム21M,21Cの転写部の間隔と同じである。なお、ブラックの画像8Kの横筋9Kは、横筋9M,9Cよりも前のタイミングで生じたものである。
【0059】
本実施の形態では、滑りにくい媒体Pに印刷を行う場合には、滑りやすい媒体Pに印刷を行う場合よりも、ベルトモータ36の駆動電流を増加させ、負荷に対抗できるようにトルクを増加させる。駆動電流の増加幅は、例えば25%とする。
【0060】
<画像形成装置の印刷動作>
次に、画像形成装置1の印刷動作について、図4を参照して説明する。図4は、画像形成装置1の印刷動作を示すフローチャートである。CPU101は、上位装置からI/F制御部110を介して印刷コマンドと印刷データを受信すると、印刷動作を開始する。
【0061】
CPU101は、まず、ヒータ43の加熱を開始し、ドラムモータ27、ベルトモータ35および定着モータ44の回転を開始する(ステップS101)。これにより定着ローラ41の表面温度が上昇し、感光体ドラム21、定着ローラ41および駆動ローラ32が回転する。感光体ドラム21の回転に伴い、帯電ローラ22、現像ローラ24および供給ローラ25も回転する。
【0062】
また、ステップS101では、高圧電源部114から、各画像形成ユニット20の帯電ローラ22、現像ローラ24および供給ローラ25に、それぞれ帯電電圧、現像電圧および供給電圧が印加される。感光体ドラム21の表面は、帯電ローラ22の帯電電圧によって一様に帯電する。
【0063】
また、CPU101は、上位装置から受信した印刷データを受信メモリ111に一時的に記録し、記録した印刷データを編集処理してイメージデータを生成し、画像データ編集メモリ112に記録する。
【0064】
ヒータ43の温度が安定し、各モータ27,35,44の回転が安定すると、CPU101は給紙モータ16を回転させ、また図示しないクラッチを作動させて給紙ローラ12を回転させる(ステップS102)。給紙ローラ12の回転により、媒体カセット11内の媒体Pが、分離パッド13に接触しながら搬送路A1に送り出される。CPU101は、給紙センサ61が媒体Pの先端を検知することにより、CPU101は給紙が正常に行われたことを検知する。
【0065】
入口センサ62が媒体Pの先端を検知すると(ステップS103)、CPU101は所定のタイミングで図示しないクラッチを作動させ、搬送ローラ14を回転させる。搬送ローラ14およびピンチローラ15は、媒体Pのスキューを矯正し、搬送ベルト31に向けて搬送する。
【0066】
次に、CPU101は、媒体カセット11の装着後の1枚目の給紙か否かを判断する(ステップS104)。CPU101は媒体カセット11の交換履歴等の情報を記憶してるため、この記憶情報に基づいて媒体カセット11の装着後の1枚目の給紙か否かを判断することができる。
【0067】
次に、CPU101は、給紙ローラ12の回転開始から、入口センサ62が媒体Pの先端を検知するまでの時間(時間T1とする)を算出し、当該時間T1が規定値Thよりも長いか否かを判断する(ステップS105)。
【0068】
滑りにくい媒体Pほど搬送時の摩擦抵抗が大きいため、入口センサ62に到達するまでの時間T1が長くなる傾向がある。規定値Thは、定型サイズの普通紙(滑りやすい媒体の代表例)が給紙ローラ12から入口センサ62に到達するまでの標準時間Tsに、10m秒を加算した値である。時間T1が規定値Thよりも長ければ、滑りにくい媒体Pとして扱い、時間T1が規定値Th以下であれば、滑りやすい媒体Pとして扱う。
【0069】
CPU101は、時間T1が規定値Thよりも長い場合には(ステップS105でYES)、CPU101は、電流アップフラグをONにする(ステップS106)。
【0070】
CPU101は、また、電流アップフラグがONの場合には、モータドライバ105からベルトモータ35の駆動電流を、電流アップフラグがOFFの場合よりも例えば25%高くする(ステップS107)。
【0071】
すなわち、滑りにくい媒体Pに印刷を行う場合には、滑りやすい媒体Pに印刷を行う場合よりも、ベルトモータ35の駆動電流を増加させ、ベルトモータ35のトルク(すなわち搬送ベルト31の駆動力)を増加させる。
【0072】
このようにベルトモータ35のトルクを増加させることにより、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差によってベルトモータ35の負荷が増大しても、ベルトモータ35が脱調せずに回転を継続することができる。
【0073】
なお、時間T1が規定値Th以下の場合(ステップS105でNO)には、滑りやすい媒体Pであることから、ステップS106はスキップする。
【0074】
媒体Pがさらに搬送され、書込みセンサ63が媒体Pの先端を検知すると、露光ヘッド23K,23Y,23M,23Cがそれぞれ所定のタイミングで駆動される(ステップS107)。これにより、感光体ドラム21K,21Y,21M,21Cの表面に潜像が形成される。感光体ドラム21K,21Y,21M,21C上の潜像は、現像ローラ24K,24Y,24M,24Cのトナーによって現像される。
【0075】
また、露光ヘッド23K,23Y,23M,23Cのそれぞれの露光開始から所定時間後に、これらに対向する転写ローラ34に転写電圧が印加される(ステップS108)。これにより、感光体ドラム21K,21Y,21M,21C上のトナー像が、搬送ベルト31上の媒体Pに順次転写される。
【0076】
CPU101は、媒体Pの後端が書込みセンサ63を通過すると(ステップS111でYES)、媒体Pの長さLを算出する(ステップS112)。媒体Pの長さLは、媒体Pの先端が書込みセンサ63を通過した時間と、媒体Pの後端が書込みセンサ63を通過した時間との差から算出することができる。
【0077】
算出した媒体Pの長さLが、媒体Pの定型サイズに基づく基準長さAに対して、A-3[mm]≦L≦A-1[mm]の範囲(規定範囲)にある場合には(ステップS113でYES)、電流アップフラグをOFFする(ステップS114)。基準長さAは、CPU101が、印刷コマンドで指定された媒体Pのサイズ(通常は定型サイズ)に基づいて設定する。
【0078】
媒体Pの長さが定型サイズよりも短い場合、媒体カセット11内の媒体Pが給紙ローラ12よりも奥側(図1の左側)に配置されている可能性がある。この場合、入口センサ62に到達するまでの時間T1が長くなった理由は、媒体Pの滑りにくさではなく、媒体カセット11内の媒体Pの配置のずれと考えられる。そこで、媒体Pの長さLが上記の規定範囲内にある場合には、ステップS106でONに設定した電流アップフラグをOFFに戻す。
【0079】
但し、媒体Pの長さLがA-3[mm]未満である場合には、給紙エラーが発生しないようにユーザが媒体カセット11内のガイド11aの位置合わせを行っていると想定されるため、電流アップフラグをそのまま維持する。
【0080】
また、算出した媒体Pの長さLが上記の規定範囲外である場合には(ステップS113でNO)、電流アップフラグはそのまま維持する。
【0081】
なお、ステップS112~S114が行われている時点では、既に媒体Pへのトナー像の転写が進行しているため、ステップS114の結果に基づくベルトモータ35の駆動電流は、次の媒体Pへの印刷時から適用される。
【0082】
感光体ドラム21K,21Y,21M,21C上のトナー像が転写された搬送ベルト31は、搬送ベルト31によって定着ユニット40に搬送される。定着ユニット40では、定着ローラ41および加圧ローラ42が媒体Pに熱および圧力を加え、トナー像を媒体Pに定着する。
【0083】
トナー像が定着した媒体Pは、定着ローラ41の回転によって媒体排出部50に送られる。媒体排出部50では、排出ローラ51が媒体Pを搬送路A2に沿って搬送し、排出口から排出する。排出された媒体Pは、スタッカ部53上に積載される。
【0084】
ステップS111で媒体Pの後端が書込みセンサ63を通過してから所定の時間が経過すると、転写ローラ34の転写電圧をオフする(ステップS115)。
【0085】
後続の媒体Pがある場合には(ステップS116でYES)、上述したステップS102に戻る。後続の媒体Pがない場合には(ステップS116でNO)、媒体Pの後端が排出センサ65を通過するのを待って(ステップS117でYES)と、ヒータ43の加熱を停止し、所定時間後にドラムモータ27、ベルトモータ35および定着モータ44の回転を停止する(ステップS118)。これにより、媒体Pへの印刷動作が完了する。
【0086】
なお、同一の媒体カセット11の2枚目以降の媒体Pに印刷を行う場合には(ステップS104でNO)、ステップS104~S106をスキップし、既に設定されている電流アップフラグに基づいてベルトモータ35の駆動電流を設定する(ステップS107)。
【0087】
これは、同じ媒体カセット11内の媒体Pは同種類であるため、滑りにくさは1枚目の媒体Pと同じと考えてよいためである。また、2枚目以降の媒体Pは先行する媒体Pにつられて媒体カセット11から出てしまう場合があり、ステップS105での時間T1の算出精度が低下する可能性があるためでもある。
【0088】
<作用>
以上の印刷動作によれば、滑りにくい媒体Pに印刷を行う場合には、滑りやすい媒体Pに印刷を行う場合よりも、モータドライバ105からベルトモータ35に供給する駆動電流を高くし、これによりベルトモータ35のトルク(すなわち搬送ベルト31の搬送力)を増加させる。そのため、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差によりベルトモータ35の負荷が増大しても、ベルトモータ35が脱調せずに回転を継続することができる。その結果、図3に示したような横筋の発生を抑制し、印刷不良を低減することができる。
【0089】
また、給紙開始(給紙ローラ12の回転開始)から入口センサ62による媒体検知までの時間T1に基づいて、ベルトモータ35の駆動電流を増加させるか否かを判断しているため、媒体Pの滑りにくさに応じたベルトモータ35のトルクの切り替えが可能になる。
【0090】
特に、給紙ローラ12が媒体Pを搬送路A1に送り出す際に、媒体Pが分離パッド13に接触しながら送り出されるため、媒体Pの滑りにくさによって入口センサ62への到達時間に差が生じやすい。そのため、媒体Pの滑りにくさに正確に対応したベルトモータ35のトルクの切り替えが可能になる。
【0091】
また、書込みセンサ63のON、OFFのタイミングから媒体Pの長さを算出し、長さPが定型サイズよりも短い場合には電流アップフラグをオフにするため、媒体Pの滑りにくさ以外の要因で時間T1が長くなった場合にはベルトモータ35のトルクを増加させないようにすることができる。
【0092】
なお、ここでは、媒体Pの滑りにくさに対応する物理量(情報)として、媒体Pの給紙が開始されてから入口センサ62に到達するまでの時間T1を測定している。しかしながら、この例に限定されるものではなく、媒体Pが搬送路上の2点間を通過する時間で判断してもよい(後述する実施の形態3)。また、媒体Pの滑りにくさに対応する物理量であれば、他の物理量(情報)を用いてもよい。
【0093】
なお、ベルトモータ35の駆動電流を増加させた状態で連続印刷を行うと、ベルトモータ35およびモータドライバ105が加熱する可能性がある。そこで、連続印刷枚数が所定枚数(例えば100枚)を超えた場合には、間欠印刷を行うことが望ましい。
【0094】
間欠印刷は、例えば10枚印刷する毎に、2.5枚分の印刷時間に相当する休止時間を設ける印刷方法である。これにより、ベルトモータ35の駆動電流を増加させたことによるベルトモータ35およびモータドライバ105の加熱を抑えることができる。
【0095】
間欠印刷を行った場合、印刷に要する総時間が長くなる可能性があるが、これについては実施の形態2で説明する。
【0096】
なお、ここではベルトモータ35にステッピングモータを用いたが、他の種類のモータを用いてもよい。但し、ステッピングモータは、トルクおよび回転数を独立して制御しやすいという利点があるため、ステッピングモータを用いることが最も望ましい。
【0097】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、実施の形態1の画像形成装置1は、媒体Pの滑りにくさに対応する物理量(具体的には、媒体Pの給紙が開始されてから入口センサ62に到達するまでの時間T1)に応じて、搬送ベルト31の駆動力(すなわちベルトモータ35のトルク)を切り替える。すなわち、滑りにくい媒体Pに印刷を行う場合には、滑りやすい媒体Pに印刷を行う場合よりも搬送ベルト31の駆動力を大きくする。そのため、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差によりベルトモータ35の負荷が増大しても、ベルトモータ35が脱調せずに回転を継続することができ、横筋等の印刷不良の発生を抑制することができる。
【0098】
実施の形態2.
次に、実施の形態2で説明する。実施の形態1では、滑りにくい媒体Pに印刷を行う場合に、滑りやすい媒体Pに印刷を行う場合よりもベルトモータ35のトルク(搬送ベルト31の駆動力)を高くした。これに対し、実施の形態2では、滑りにくい媒体Pに印刷を行う場合に、滑りやすい媒体Pに印刷を行う場合よりも、搬送ベルト31の走行速度(すなわち搬送速度)を低下させ、感光体ドラム21の周速との速度差を小さくする。
【0099】
図5は、実施の形態2の印刷動作を示すフローチャートである。ステップS101~S105は、実施の形態1で説明した通りである。ステップS105において、媒体Pの給紙が開始されてから入口センサ62に到達するまでの時間T1が規定値Thよりも長い場合には(ステップS105)、CPU101は、速度ダウンフラグをONする(ステップS201)。
【0100】
CPU101は、また、速度ダウンフラグがONの場合には、モータドライバ105からベルトモータ35へのパルス電流のパルス数を減少させ、ベルトモータ35の回転速度を低下させる(ステップS207)。
【0101】
具体的には、滑りにくい媒体Pに印刷を行う場合には、ベルトモータ35の回転速度を例えば0.5%低下させ、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差を例えば0に減少させる。
【0102】
搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差が減少すると、実施の形態1で説明したベルトモータ35の負荷の増加が抑えられる。そのため、ベルトモータ35の駆動電流を高くしなくても(すなわちベルトモータ35のトルクを大きくしなくても)、横筋等の印刷不良の発生を抑制することができる。
【0103】
なお、ベルトモータ35の回転速度を低下させる場合には、これに合わせて給紙モータ16および定着モータ44の回転速度も低下させることが望ましい。また、ステップS113における媒体Pの長さLの規定範囲の数値も変更することが望ましい。
【0104】
ステップS202以降の処理は、実施の形態1のステップS114(電源アップフラグOFF)の代わりに、速度ダウンフラグをOFFする処理(ステップS203)を行うことを除き、実施の形態1で説明した通りである。
【0105】
上述した実施の形態1のようにベルトモータ35の駆動電流を増加させる場合、所費電力が大きくなる。また、連続印刷時には、ベルトモータ35およびモータドライバ105の加熱を抑えるために間欠印刷を行う場合も生じ、印刷に要する総時間が長くなる。
【0106】
これに対し、実施の形態2では、ベルトモータ35の駆動電流を増加させないため、消費電力が少なくて済む。また、ベルトモータ35およびモータドライバ105の加熱が生じにくいため、間欠印刷を行う必要がなく、従って印刷に要する総時間を短縮することができる。
【0107】
但し、実施の形態2では、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差を小さくするため、実施の形態1と比較すると印刷品質が低下する可能性がある。
【0108】
そこで、操作パネル113に、図6に一例を示すようなモード選択画面を表示し、ユーザに、印刷速度を優先する印刷モード1と、画質を優先する印刷モード2のいずれかを選択させるようにしてもよい。
【0109】
印刷モード1が選択された場合には、図4に示した印刷動作を実行することにより、高品質の画像を印刷することができる。また、印刷モード2が選択された場合には、図5に示した印刷動作を実行することにより、連続印刷時の印刷時間を短縮することができる。
【0110】
実施の形態2の画像形成装置は、上述した点を除き、実施の形態1の画像形成装置1と同様に構成されている。
【0111】
以上説明したように、実施の形態2では、媒体Pの滑りにくさに対応する物理量(具体的には、媒体Pの給紙が開始されてから入口センサ62に到達するまでの時間T1)に応じて、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差を切り替える。すなわち、滑りにくい媒体Pに印刷を行う場合には、滑りやすい媒体Pに印刷を行う場合よりも、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差を小さくする。そのため、ベルトモータ35の負荷の増大を抑え、横筋等の印刷不良の発生を抑制することができる。
【0112】
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1では、媒体Pの給紙が開始されてから入口センサ62に到達するまでの時間T1に基づいて、ベルトモータ35の駆動電流を切り替えた。これに対し、実施の形態3では、媒体Pが搬送路A1上の2点間を移動する時間に基づいて、ベルトモータ35の駆動電流を切り替える。
【0113】
図7は、実施の形態3の画像形成装置1Aの基本構成を示す図である。実施の形態3では、媒体Pの先端が給紙センサ61(第1のセンサ)を通過してから、入口センサ62(第2のセンサ)に到達するまでの時間を計測し、その計測時間に基づいてベルトモータ35の駆動電流を切り替える。
【0114】
そのため、搬送路A1に沿って、給紙センサ61から入口センサ62までの区間には、媒体Pに接触する接触部材17を設けている。接触部材17は、分離パッド13と同様、媒体Pに一定の搬送抵抗を与えるものであり、例えばゴム等のパッドである。このようにすれば、滑りにくい媒体Pと滑りやすい媒体Pとで、2点間を通過する時間に差を設けることができる。
【0115】
実施の形態3の印刷動作は、実施の形態1で説明した通りであるが、ステップS105では、媒体Pの先端が給紙センサ61を通過してから、入口センサ62に到達するまでの時間をT1とする。
【0116】
時間T1が規定値Thよりも長い場合には、滑りにくい媒体Pとして扱い、ベルトモータ35の駆動電流を増加させる。時間T1が規定値Th以下である場合には、滑りやすい媒体Pとして扱い、ベルトモータ35の駆動電流は増加させない。
【0117】
また、実施の形態3では、時間T1が媒体カセット11内の媒体Pの位置ずれの影響を受けないため、図4に示したステップS112~S114の処理が不要になる。
【0118】
給紙センサ61、入口センサ62およびCPU101は、媒体Pの滑りにくさに応じた物理量(ここでは時間T1)を検出する検出部に相当する。ここでは、媒体Pの先端が給紙センサ61を通過してから入口センサ62に到達する時間を計測したが、この例に限定されるものではなく、媒体Pの搬送路上の2点間を移動する時間を計測すればよい。その2点間には、媒体Pに接触する接触部材を配置することが望ましい。
【0119】
実施の形態3の画像形成装置1Aは、上述した点を除き、実施の形態1の画像形成装置1と同様に構成されている。
【0120】
以上説明したように、実施の形態3では、媒体Pが搬送路上の2点間を通過する時間に基づいて、搬送ベルト31の搬送力(すなわちベルトモータ35のトルク)を切り替える。そのため、実施の形態1と同様、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差によりベルトモータ35の負荷が増大しても、ベルトモータ35が脱調せずに回転を継続することができ、横筋等の印刷不良の発生を抑制することができる。
【0121】
なお、この実施の形態3は、実施の形態2の画像形成装置に適用してもよい。すなわち、媒体Pが搬送路の2点間を通過する時間T1が規定値T1よりも長い場合に、搬送ベルト31の走行速度と感光体ドラム21の周速との速度差を小さくするようにしてもよい。この場合には、実施の形態2と同様、ベルトモータ35の負荷の増大を抑制し、印刷不良の発生を抑制することができる。
【0122】
実施の形態1~3では、感光体ドラム21からのトナー像を、搬送部としての搬送ベルト31に搬送される媒体Pに転写する構成について説明したが、搬送部は搬送ベルトには限定されない。
【0123】
実施の形態1~3では、画像形成装置1をプリンタとした例について説明したが、本開示は、プリンタに限らず、複写機、ファクシミリ装置、またはMFP(Multi Function Peripheral)等の電子写真法を用いた画像形成装置に適用することができる。
【0124】
以上、望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本開示は上記の実施の形態に限定されるものではなく、各種の改良または変形を行なうことができる。
【0125】
以下、本開示の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
(付記1)
現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体から現像剤像が転写される媒体を搬送する搬送部と、
前記媒体の滑りにくさに対応する物理量を検出し、検出した物理量に応じて、前記搬送部の搬送力または搬送速度を切り替える制御部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
(付記2)
前記制御部は、より滑りにくい媒体を搬送する場合には、より滑りやすい媒体を搬送する場合よりも、前記搬送部の搬送力を大きくする
ことを特徴とする付記1に記載の画像形成装置。
(付記3)
前記制御部は、より滑りにくい媒体を搬送する場合には、より滑りやすい媒体を搬送する場合よりも、前記搬送部の搬送速度と前記像担持体の速度との速度差を小さくする
ことを特徴とする付記1または2に記載の画像形成装置。
(付記4)
前記搬送部に前記媒体を給紙する給紙部と、
前記媒体の搬送路に配置され、前記媒体の通過を検知するセンサと
を有し、
前記物理量は、前記給紙部が前記媒体の給紙を開始してから、前記センサが前記媒体を検知するまでの時間である
ことを特徴とする付記1から3までの何れか1項に記載の画像形成装置。
(付記5)
前記給紙部から給紙される前記媒体に接触する接触部材をさらに有する
ことを特徴とする付記4に記載の画像形成装置。
(付記6)
前記搬送部に前記媒体を給紙する給紙部と、
前記媒体の搬送路に配置され、前記媒体の通過を検知する第1のセンサおよび第2のセンサと
を有し、
前記物理量は、前記第1のセンサが前記媒体を検知してから、前記第2のセンサが前記媒体を検知するまでの時間である
ことを特徴とする付記1から3までの何れか1項に記載の画像形成装置。
(付記7)
前記搬送路において前記第1のセンサと前記第2のセンサとの間に配置され、前記媒体に接触する接触部材をさらに有する
ことを特徴とする付記6に記載の画像形成装置。
(付記8)
前記制御部は、前記媒体の搬送方向の長さを計測し、計測した長さに応じて、前記時間に基づいて切り替えた前記搬送力または前記搬送速度を元に戻す
ことを特徴とする付記4から7までの何れか1項に記載の画像形成装置。
(付記9)
前記像担持体の表面速度が、前記搬送部の搬送速度よりも所定の割合だけ速く設定されている
ことを特徴とする付記1から8までの何れか1項に記載の画像形成装置。
(付記10)
前記搬送部はモータによって駆動され、
前記制御部は、前記搬送力を、前記モータのトルクによって制御する
ことを特徴とする付記1から9までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
(付記11)
前記モータのトルクは、前記モータに供給する駆動電流によって制御する
ことを特徴とする付記10に記載の画像形成装置。
(付記12)
前記搬送部はモータによって駆動され、
前記制御部は、前記搬送速度を、前記モータの回転速度によって制御する
ことを特徴とする付記1から11までの何れか1項に記載の画像形成装置。
(付記13)
前記搬送部は、前記モータの駆動力によって走行して前記媒体を搬送する搬送ベルトを有する
ことを特徴とする付記10から12までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0126】
1 画像形成装置、 10 媒体供給部、 11 媒体カセット(媒体収容部)、 12 給紙ローラ(給紙部)、 13 分離パッド(接触部材)、 14 搬送ローラ、 16 給紙モータ、 20 画像形成ユニット、 21 感光体ドラム(像担持体)、 22 帯電ローラ(帯電部材)、 23 露光ヘッド(露光装置)、 24 現像ローラ(現像剤担持体)、 25 供給ローラ(供給部材)、 26 トナーカートリッジ(現像剤収容体)、 27 ドラムモータ、 30 転写ユニット、 31 搬送ベルト(搬送部)、 32 駆動ローラ(駆動部)、 33 テンションローラ、 34 転写ローラ(転写部)、 35 ベルトモータ、 40 定着ユニット、 41 定着ローラ(定着部材)、 42 加圧ローラ(加圧部材)、 44 定着モータ、 50 媒体排出部、 61 給紙センサ(第1のセンサ)、 62 入口センサ(センサ、第2のセンサ)、 63 書込みセンサ、 64 65 たるみセンサ、 66 排出センサ、 70 筐体、 100 制御部、 101 CPU(主制御部)、 104 モータドライバ(給紙制御部)、 105 モータドライバ(搬送制御部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7