(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161270
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】回転式圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/344 20060101AFI20231030BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
F04C18/344 351E
F04C29/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071539
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 雅也
【テーマコード(参考)】
3H040
3H129
【Fターム(参考)】
3H040AA09
3H040BB01
3H040CC17
3H040DD07
3H040DD09
3H040DD36
3H129AA05
3H129AA18
3H129AB03
3H129BB34
3H129CC05
3H129CC16
3H129CC38
(57)【要約】
【課題】ロータシャフトを材料毎に分解することができる回転式圧縮機を提供することである。
【解決手段】実施形態の回転式圧縮機は、ロータと、第1シャフトと、第2シャフトと、連結部材と、を持つ。ロータは、円柱状であり、軸方向である第1方向に貫通するロータ孔を有する。第1シャフトは、円柱状であり、第1方向の第1側の端部から第1方向に伸びる第1シャフト孔を有する。第1シャフトの第1方向の第1側の端部がロータ孔の内側に配置される。第2シャフトは、円柱状であり、第1方向に貫通する第2シャフト孔を有する。第2シャフトの第1方向の第1側とは反対側である第2側の端部がロータ孔の内側に配置される。連結部材は、第1シャフト孔および第2シャフト孔の内側に配置され、第1シャフトおよび第2シャフトを第1方向に連結する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状であり、軸方向である第1方向に貫通するロータ孔を有するロータと、
円柱状であり、前記第1方向の第1側の端部から前記第1方向に伸びる第1シャフト孔を有し、前記第1方向の前記第1側の端部が前記ロータ孔の内側に配置される第1シャフトと、
円柱状であり、前記第1方向に貫通する第2シャフト孔を有し、前記第1方向の前記第1側とは反対側である第2側の端部が前記ロータ孔の内側に配置される第2シャフトと、
前記第1シャフト孔および前記第2シャフト孔の内側に配置され、前記第1シャフトおよび前記第2シャフトを前記第1方向に連結する連結部材と、を有する、
回転式圧縮機。
【請求項2】
前記第1シャフトは、外周に第1キー溝を有し、
前記第2シャフトは、外周に第2キー溝を有し、
前記ロータ孔は、内周に第3キー溝を有し、
前記第1キー溝、前記第2キー溝および前記第3キー溝の内側に、キーが配置される、
請求項1に記載の回転式圧縮機。
【請求項3】
前記第1シャフトは、前記ロータの前記第1方向の前記第2側の端面と当接する第1当接部を有し、
前記第2シャフトは、前記ロータの前記第1方向の前記第1側の端面と当接する第2当接部を有する、
請求項1または2に記載の回転式圧縮機。
【請求項4】
前記第1シャフトは、前記第1方向の前記第1側の端部に前記ロータ孔の内側に配置される第1小径部を有するとともに、前記第1小径部の前記第1方向の前記第2側の端部に前記第1当接部を有し、
前記第2シャフトは、前記第1方向の前記第2側の端部に前記ロータ孔の内側に配置される第2小径部を有するとともに、前記第2小径部の前記第1方向の前記第1側の端部に前記第2当接部を有する、
請求項3に記載の回転式圧縮機。
【請求項5】
前記ロータの径方向を第2方向としたとき、
前記第1シャフトは、前記第1シャフト孔の前記第2方向の内側に突出する第1係合部を有し、
前記第2シャフトは、前記第2シャフト孔の前記第2方向の内側に突出する第2係合部を有し、
前記連結部材は、前記第2方向の外側に突出する一対の第3係合部を有し、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記第1方向において前記一対の第3係合部の間に配置され、前記一対の第3係合部に係合する、
請求項3に記載の回転式圧縮機。
【請求項6】
前記連結部材は、円筒状であり、周方向の一部に前記第1方向および前記第2方向に貫通するスリットを有する、
請求項5に記載の回転式圧縮機。
【請求項7】
前記ロータ孔の内径と前記第1シャフトおよび前記第2シャフトの外径との差Δd(μm)は、0<Δd≦10を満たす、
請求項1または2に記載の回転式圧縮機。
【請求項8】
前記ロータは、前記第1シャフトおよび前記第2シャフトより密度の小さい材料で形成される、
請求項1または2に記載の回転式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置において、冷媒を圧縮するために回転式圧縮機が利用されている。回転式圧縮機は、ロータシャフトを有する。ロータシャフトは、様々な材料で構成される。リサイクルのため、ロータシャフトを材料毎に分解することができる回転式圧縮機が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ロータシャフトを材料毎に分解することができる回転式圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の回転式圧縮機は、ロータと、第1シャフトと、第2シャフトと、連結部材と、を持つ。ロータは、円柱状であり、軸方向である第1方向に貫通するロータ孔を有する。第1シャフトは、円柱状であり、第1方向の第1側の端部から第1方向に伸びる第1シャフト孔を有する。第1シャフトの第1方向の第1側の端部がロータ孔の内側に配置される。第2シャフトは、円柱状であり、第1方向に貫通する第2シャフト孔を有する。第2シャフトの第1方向の第1側とは反対側である第2側の端部がロータ孔の内側に配置される。連結部材は、第1シャフト孔および第2シャフト孔の内側に配置され、第1シャフトおよび第2シャフトを第1方向に連結する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の回転式圧縮機を、図面を参照して説明する。
図1は、冷凍サイクル装置の回路図である。冷凍サイクル装置1は、回転式圧縮機10と、四方弁3と、第1熱交換器4と、膨張装置5と、第2熱交換器6と、これらに対して冷媒を流通させる冷媒流路8と、を有する。冷媒は、相変化しながら冷凍サイクル装置1を循環する。
【0008】
回転式圧縮機10は、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。回転式圧縮機10の上流側には、アキュムレータ(気液分離器)2bが配置される。アキュムレータ2bは、気液二相冷媒を分離して、気体冷媒を回転式圧縮機10に供給する。
【0009】
四方弁3は、第1熱交換器4、膨張装置5および第2熱交換器6の冷媒流路8における冷媒の流通方向を逆転させる。四方弁3が
図1の状態にあるとき、回転式圧縮機10から吐出された冷媒は、第1熱交換器4、膨張装置5、第2熱交換器6の順に流通する。このとき、第1熱交換器4は凝縮器(放熱器)として機能し、第2熱交換器6は蒸発器(吸熱器)として機能する。
四方弁3が
図1の状態から切り換わると、回転式圧縮機10から吐出された冷媒は、第2熱交換器6、膨張装置5、第1熱交換器4の順に流通する。このとき、第2熱交換器6は凝縮器(放熱器)として機能し、第1熱交換器4は蒸発器(吸熱器)として機能する。
【0010】
凝縮器は、回転式圧縮機10から吐出される高温・高圧の気体冷媒から放熱して、高温・高圧の気体冷媒を高圧の液体冷媒にする。
膨張装置5は、凝縮器から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、高圧の液体冷媒を低温・低圧の気液二相冷媒にする。膨張装置5は、例えば膨張弁である。
蒸発器は、膨張装置5から送り込まれる気液二相冷媒を低圧の気体冷媒にする。蒸発器において、低圧の気液二相冷媒が気化する際に周囲から気化熱を奪うことで周囲が冷却される。蒸発器を通過した低圧の気体冷媒は、アキュムレータ2bを介して、上述した回転式圧縮機10の内部に取り込まれる。
【0011】
このように、冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体と液体との間で相変化しながら循環する。冷媒は、気体から液体に相変化する過程で放熱し、液体から気体に相変化する過程で吸熱する。冷凍サイクル装置1は、冷媒の放熱または吸熱を利用して、暖房や冷房、除霜などを行う。
【0012】
図2は、実施形態の回転式圧縮機10の正面断面図である。
図2は、
図3のII-II線における断面図である。
図3は、実施形態の回転式圧縮機10の平面断面図である。
図3は、
図2のIII-III線における断面図である。
【0013】
本願において、円筒座標系のZ方向、R方向およびθ方向が以下のように定義される。Z方向(第1方向)は、ロータ40の軸方向である。+Z方向(第1方向の第2側)は圧縮機構部20から電動機部12に向かう方向であり、-Z方向(第1方向の第1側)は+Z方向の反対側である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、+Z方向は鉛直上方である。R方向(第2方向)は、ロータ40の径方向である。+R方向は、径方向の外側である。θ方向は、ロータ40の周方向である。
【0014】
回転式圧縮機10は、スライディングベーン(ロータリーベーン)型の回転式圧縮機である。
図2に示されるように、回転式圧縮機10は、ケース11と、電動機部12と、ロータシャフト13と、圧縮機構部20と、を有する。
【0015】
ケース11は、両端部が閉塞された円筒状に形成される。ケース11は、電動機部12、ロータシャフト13および圧縮機構部20を収容する。ケース11の内部の下方には、圧縮機構部20を潤滑する潤滑油が存在する。ケース11の内部の上方には、圧縮機構部20により圧縮された気体冷媒が存在する。ケース11の内部の気体冷媒および潤滑油は高圧である。
【0016】
電動機部12は、ケース11の内部の+Z方向に配置される。電動機部12は、固定子12aと、回転子12bと、を有する。固定子12aは、ケース11の内周面に固定される。回転子12bは、固定子12aの内側に配置される。
【0017】
ロータシャフト13は、ケース11と同軸状に配置される。ロータシャフト13は、シャフト30と、ロータ40と、を有する。シャフト30の+Z方向には、電動機部12の回転子12bが固定される。シャフト30の-Z方向には、ロータ40が固定される。電動機部12は、シャフト30を介して、ロータ40を回転させる。ロータ40は、圧縮機構部20に収容される。
【0018】
シャフト30は、シャフト孔31と、給油孔32,33と、を有する。シャフト孔31は、シャフト30の-Z方向の端部から+Z方向に伸びる。給油孔32,33は、シャフト30をR方向に貫通する。給油孔32,33は、第1給油孔32および第2給油孔33である。第1給油孔32は、ロータ40のZ方向の両端面の外側に配置される。第2給油孔33は、第1軸受15の+Z方向に配置される。
シャフト30が回転すると、ケース11の内部の下方に存在する潤滑油が、シャフト孔31を通って上昇する。潤滑油は、シャフト孔31から給油孔32,33を通って、圧縮機構部20の各部に供給される。
【0019】
圧縮機構部20は、ケース11の内部の-Z方向に配置される。圧縮機構部20は、シリンダ21と、ベーン46(
図3参照)と、第1軸受15と、第2軸受19と、マフラ16と、を有する。
【0020】
シリンダ21は、ケース11と同軸状に配置される。シリンダ21は、ケース11の内周面に固定される。
図3に示されるように、シリンダ21は、シリンダ室22を有する。シリンダ室22は、シリンダ21をZ方向に貫通する貫通孔の内側に形成される。シリンダ室22の中心軸は、シリンダ21の中心軸から+R方向にずれている。シリンダ室22の内側にロータ40が配置される。ロータ40の中心軸は、シリンダ21の中心軸に一致する。
【0021】
シリンダ21は、冷媒の吸込孔23と、吐出室26と、吐出孔25と、を有する。吸込孔23は、シリンダ21をR方向に貫通する。吸込孔23は、アキュムレータ2b(
図1参照)から供給された気体冷媒を、シリンダ室22に導入する。吐出室26は、シリンダ21の外周の凹部に形成される。吐出孔25は、シリンダ21をR方向に貫通し、シリンダ室22と吐出室26とを連通する。吐出室26には、吐出孔25を開閉する弁体27が配置される。
【0022】
ベーン46は、平板状である。ベーン46は、ロータ40に形成されたスリット47に収容される。スリット47は、ロータ40をZ方向に貫通する。スリット47の+R方向の端部は、ロータ40の外周に開口する。スリットの-R方向の端部には、背圧室48が形成される。背圧室48には高圧の潤滑油が進入する。ベーン46は、潤滑油の圧力および遠心力により、シリンダ室22の側壁に向かって押し付けられる。
【0023】
ベーン46は、シリンダ室22をθ方向に、吸込室および圧縮室に区画する。
図3の例では、ロータ40と共にベーン46が反時計回りに回転する。ベーン46の上流側の吸込室は、吸込孔23を介して気体冷媒を吸い込む。ベーン46の下流側の圧縮室は、気体冷媒を圧縮する。圧縮室の気体冷媒の圧力が上昇すると、弁体27が吐出孔25を開放する。高圧の気体冷媒が、吐出孔25から吐出室26に吐出される。
【0024】
複数のベーン46が、θ方向に等角度間隔で配置される。ロータ40の1回転当たりに、複数回の冷媒の吸込みおよび吐出が行われる。
図3の例では2個のベーンが配置されるが、ベーン46の個数は1個でもよく、3個以上でもよい。
【0025】
第1軸受(主軸受)15は、
図2に示されるように、シリンダ21の+Z方向に配置される。第1軸受15は、ロータ40の+Z方向のシャフト30を回転可能に支持する。第1軸受15は、シリンダ室22の+Z方向の開口を閉塞する。
【0026】
第2軸受(副軸受)19は、シリンダ21の-Z方向に配置される。第2軸受19は、ロータ40の-Z方向のシャフト30を回転可能に支持する。第2軸受19は、シリンダ室22の-Z方向の開口を閉塞する。
【0027】
マフラ16は、第1軸受15の+Z方向に配置される。マフラ16と第1軸受15との間にマフラ室17が形成される。マフラ16は、マフラ孔18を有する。マフラ孔18は、マフラ室17とケース11の内部とを連通する。
【0028】
図3に示されるように、シリンダ室22で圧縮された気体冷媒は、吐出孔25から吐出室26に吐出される。吐出室26の気体冷媒は、連通孔28を通って、
図2に示されるマフラ室17に流入する。マフラ室17の気体冷媒は、マフラ孔18からケース11の内部に吐出される。ケース11の内部の気体冷媒は、ケース11の上部に設けられた吐出口(不図示)から、四方弁3(
図1参照)に供給される。
【0029】
スライディングベーン型の回転式圧縮機10は、ロータ40がシャフト30と同軸で回転する。この回転式圧縮機10は、低コスト、低振動および低騒音である。この回転式圧縮機10では、複数のベーン46によりシリンダ室22が複数の小室に区画される。一区画当たりの体積流量が低減され、吸込脈動および吐出脈動が低減される。この回転式圧縮機10では、ベーン46がロータ40に配置され、シリンダ21に配置されない。シリンダ室22の内径寸法が大きくなり、排除容積が大きくなって、圧縮性能が向上する。
【0030】
ロータシャフト13について詳細に説明する。
図4は、ロータシャフト13の斜視図である。
図5は、
図4のV-V線における断面図である。
図6は、ロータシャフトの分解斜視図である。
図4に示されるように、ロータシャフト13は、ロータ40と、シャフト30と、を有する。
図5に示されるように、シャフト30は、第1シャフト(主軸部)30aと、第2シャフト(副軸部)30bと、連結部材50と、を有する。第1シャフト30aおよび第2シャフト30bは、鉄系材料により形成される。鉄系材料の密度は、7.9×10
3kg/m
3(7.9g/cm
3)程度である。
【0031】
ロータ40は、第1シャフト30aおよび第2シャフト30bより密度の小さい材料で形成される。ロータ40の密度ρ(kg/m3)は、1.0×103≦ρ≦3.0×103を満たす。例えば、ロータ40はアルミニウムまたは樹脂材料で形成される。アルミニウムの密度は、2.7×103kg/m3(2.7g/cm3)程度である。樹脂材料のうちフェノール樹脂の密度は、1.2~1.95×103kg/m3(1.2~1.95g/cm3)程度である。ロータ40の体積は、第1シャフト30aおよび第2シャフト30bの体積より大きい。ロータ40を密度の小さい材料で形成することにより、回転式圧縮機が軽量化される。
【0032】
ロータ40の縦弾性係数E(GPa)は、10≦E≦100を満たす。ロータ40の剛性が確保される。
【0033】
ロータ40は円柱状である。ロータ40は、Z方向に貫通するロータ孔41を有する。ロータ孔41は、ロータ40のR方向の中心に配置される。
図4に示されるように、ロータ40のZ方向の端面には、凹部42が形成される。凹部42の底面には、スリット47の背圧室48が開口する。シャフト30の第1給油孔32(
図2参照)から流出した潤滑油は、凹部42を介して背圧室48に流入する。
【0034】
第1シャフト30aは、ロータ40の+Z方向に配置される。
図5に示されるように、第1シャフト30aは円柱状(円筒状)である。第1シャフト30aは、第1シャフト孔31aを有する。第1シャフト孔31aは、第1シャフト30aの-Z方向の端部から、+Z方向に伸びる。
図5の例では、第1シャフト孔31aが第1シャフト30aを貫通している。第1シャフト30aは、第1給油孔32および第2給油孔33を有する。第1シャフト孔31aの第2給油孔33より+Z方向には、潤滑油を流通させる必要がない。第1シャフト孔31aは、第1シャフト30aの-Z方向の端部から、少なくとも第2給油孔33の位置まで、+Z方向に伸びていればよく、第1シャフト30aを貫通する必要はない。
【0035】
第1シャフト30aは、-Z方向の端部に第1小径部34aを有し、第1小径部34aの+Z方向に第1大径部36aを有する。第1小径部34aの外径は、第1大径部36aの外径より小さい。第1小径部34aのZ方向の長さは、ロータ40のZ方向の長さの半分程度である。第1小径部34aは、ロータ孔41の内側に配置される。ロータ孔41と第1小径部34aとの嵌め合いは、すきま嵌めである。ロータシャフト13の分解時に、ロータ孔41から第1シャフト30aを容易に引き抜くことができる。ロータ孔41の内径と第1小径部34aの外径との差Δd(μm)は、0<Δd≦10を満たす。回転式圧縮機10の運転時には、ロータ40が熱膨張することによりΔdが小さくなる。ロータ40と第1シャフト30aとのR方向の相対移動が抑制される。
【0036】
第2シャフト30bは、ロータ40の-Z方向に配置される。第2シャフト30bは円柱状(円筒状)である。第2シャフト30bは、第2シャフト孔31bを有する。第2シャフト孔31bは、第2シャフト30bを貫通する。第2シャフト30bは、第1給油孔32を有する。
【0037】
第2シャフト30bは、+Z方向の端部に第2小径部34bを有し、第2小径部34bの-Z方向に第2大径部36bを有する。第2小径部34bの外径は、第2大径部36bの外径より小さい。第2小径部34bのZ方向の長さは、ロータ40のZ方向の長さの半分程度である。第2小径部34bは、ロータ孔41の内側に配置される。ロータ孔41と第2小径部34bとの嵌め合いは、すきま嵌めである。ロータシャフト13の分解時に、ロータ孔41から第2シャフト30bを容易に引き抜くことができる。ロータ孔41の内径と第2小径部34bの外径との差Δd(μm)は、0<Δd≦10を満たす。回転式圧縮機10の運転時には、ロータ40が熱膨張することによりΔdが小さくなる。ロータ40と第2シャフト30bとのR方向の相対移動が抑制される。
【0038】
第1シャフト30aは、第1小径部34aの外周に第1キー溝37aを有する。第1キー溝37aは、第1小径部34aの-Z方向の端部に形成される。第2シャフト30bは、第2小径部34bの外周に第2キー溝37bを有する。第2キー溝37bは、第2小径部34bの+Z方向の端部に形成される。ロータ40は、ロータ孔41の内周に第3キー溝43を有する。第3キー溝43は、ロータ孔41のZ方向の全長にわたって形成される。第1キー溝37a、第2キー溝37bおよび第3キー溝43の内側に、キー(平行キー)44が配置される。キー44は、鉄系材料により形成される。キー44により、ロータ40とシャフト30とのθ方向の相対移動が抑制される。
【0039】
第1シャフト30aは、ロータ40の+Z方向の端面と当接する第1当接部35aを有する。第1当接部35aは、第1大径部36aの-Z方向の端面であり、第1小径部34aの+Z方向の端部にある。第1当接部35aは、第1小径部34aの+R方向にある。第1大径部36aと同径のシャフトに第1小径部34aを形成すれば、同時に第1当接部35aが形成される。第1当接部35aの形成が容易であり、回転式圧縮機10のコストが抑制される。第1当接部35aがロータ40の+Z方向の端面に当接することにより、第1シャフト30aのロータ孔41への入り込みが規制される。
【0040】
第2シャフト30bは、ロータ40の-Z方向の端面と当接する第2当接部35bを有する。第2当接部35bは、第2大径部36bの+Z方向の端面であり、第2小径部34bの-Z方向の端部にある。第2当接部35bは、第2小径部34bの+R方向にある。第2大径部36bと同径のシャフトに第2小径部34bを形成すれば、同時に第2当接部35bが形成される。第2当接部35bの形成が容易であり、回転式圧縮機10のコストが抑制される。第2当接部35bがロータ40の-Z方向の端面と当接することにより、第2シャフト30bのロータ孔41への入り込みが規制される。
【0041】
第1シャフト30aの-Z方向の端部と、第2シャフト30bの+Z方向の端部とは、相互に当接しないことが望ましい。これにより、第1当接部35aおよび第2当接部35bの両方が、ロータ40のZ方向の端面に当接する。
【0042】
第1シャフト30aは、第1係合部38aを有する。第1係合部38aは、第1シャフト孔31aの内周面から-R方向に突出する。第1係合部38aは、第1シャフト孔31aの全周に形成される。第1係合部38aは、第1シャフト孔31aの-Z方向の端部に形成される。
【0043】
第2シャフト30bは、第2係合部38bを有する。第2係合部38bは、第2シャフト30bの内周面から-R方向に突出する。第2係合部38bは、第2シャフト30bの全周に形成される。第2係合部38bは、第2シャフト孔31bの+Z方向の端部に形成される。
【0044】
図7は、連結部材50の斜視図である。
連結部材50は、鉄系材料により形成される。連結部材50は、円筒状である。連結部材50は、θ方向の一部にスリット54を有する。スリット54は、連結部材50をZ方向およびR方向に貫通する。連結部材50は、第3係合部52を有する。第3係合部52は、連結部材50の外周面から+R方向に突出し、先端が連結部材50のZ方向の端部とは反対側に延びる。第3係合部52は、スリット54の位置を除いて連結部材50の全周に形成される。一対の第3係合部52が、連結部材50のZ方向の両端部に形成される。第3係合部52は、Z方向の外側に向かって先細る形状である。
【0045】
図5に示されるように、連結部材50は、第1シャフト孔31aおよび第2シャフト孔31bの内側に配置される。Z方向において、連結部材50の一対の第3係合部52の間に、第1シャフト30aの第1係合部38aおよび第2シャフト30bの第2係合部38bが配置される。一対の第3係合部52が、Z方向において第1係合部38aおよび第2係合部38bに係合する。これにより、第1シャフト30aおよび第2シャフト30bのロータ孔41からの抜け出しが規制される。以上により、第1シャフト30aおよび第2シャフト30bとロータ40とのZ方向の相対移動が抑制される。
【0046】
ロータシャフト13の組み立て方法について説明する。
図6に示されるように、第1シャフト30aの第1キー溝37aまたは第2シャフト30bの第2キー溝37bにキー44が配置される。第1シャフト30aの第1小径部34aおよび第2シャフト30bの第2小径部34bが、ロータ孔41に挿入される。これと同時に、ロータ40の第3キー溝43に、キー44が挿入される。第1シャフト30aの第1当接部35aおよび第2シャフト30bの第2当接部35bが、ロータ40のZ方向の両端面に当接する。
【0047】
第2シャフト30bの-Z方向の端部から、第2シャフト孔31bに、連結部材50が挿入される。
図7に示される連結部材50のスリット54を押しつぶし、連結部材50を縮径させた状態で、連結部材50が挿入される。
図5に示される連結部材50の+Z方向の第3係合部52が、第1シャフト30aの第1係合部38aおよび第2シャフト30bの第2係合部38bを乗り越える。第3係合部52は+Z方向に向かって先細る形状なので、連結部材50の挿入抵抗が小さい。Z方向において、一対の第3係合部52の間に、第1係合部38aおよび第2係合部38bが配置される。第2シャフト孔31bを通して、-Z方向の第3係合部52の加締めが実施されてもよい。一対の第3係合部52が、第1係合部38aおよび第2係合部38bに密着する。以上により、ロータシャフト13の組み立てが完了する。
【0048】
ロータシャフト13の分解方法について説明する。
第2シャフト30bの-Z方向の端部から、第2シャフト孔31bに、ドリルが挿入される。ドリルにより、連結部材50の-Z方向の第3係合部52が破壊(破砕)される。-Z方向の第3係合部52と第2シャフト30bの第2係合部38bとの係合が解消される。第2シャフト30bが、ロータ孔41から-Z方向に引き抜かれる。第1シャフト30aおよび連結部材50が、ロータ孔41から+Z方向に引き抜かれる。連結部材50は、第1シャフト孔31aの+Z方向の端部から取り出される。第1キー溝37a、第2キー溝37bまたは第3キー溝43から、キー44が取り出される。以上により、ロータシャフト13が、材料の異なる構成部材に分解される。
【0049】
(付記1)
円柱状であり、軸方向である第1方向に貫通するロータ孔を有するロータと、
円柱状であり、前記第1方向の第1側の端部から前記第1方向に伸びる第1シャフト孔を有し、前記第1方向の前記第1側の端部が前記ロータ孔の内側に配置される第1シャフトと、
円柱状であり、前記第1方向に貫通する第2シャフト孔を有し、前記第1方向の前記第1側とは反対側である第2側の端部が前記ロータ孔の内側に配置される第2シャフトと、
前記第1シャフト孔および前記第2シャフト孔の内側に配置され、前記第1シャフトおよび前記第2シャフトを前記第1方向に連結する連結部材と、を有する、
回転式圧縮機。
【0050】
第2シャフト孔31bから連結部材を破壊すれば、第1シャフト30aおよび第2シャフト30bをロータ孔41から引き抜くことができる。これにより、ロータシャフト13を材料毎に分解することができる。ロータシャフト13をリサイクルすることができる。
【0051】
(付記2)
前記第1シャフトは、外周に第1キー溝を有し、
前記第2シャフトは、外周に第2キー溝を有し、
前記ロータ孔は、内周に第3キー溝を有し、
前記第1キー溝、前記第2キー溝および前記第3キー溝の内側に、キーが配置される、
付記1に記載の回転式圧縮機。
【0052】
第1シャフト30aおよび第2シャフト30bとロータ40との周方向の相対移動が抑制される。
【0053】
(付記3)
前記第1シャフトは、前記ロータの前記第1方向の前記第2側の端面と当接する第1当接部を有し、
前記第2シャフトは、前記ロータの前記第1方向の前記第1側の端面と当接する第2当接部を有する、
付記1または2に記載の回転式圧縮機。
【0054】
第1シャフト30aおよび第2シャフト30bのロータ孔41への入り込みが規制される。
【0055】
(付記4)
前記第1シャフトは、前記第1方向の前記第1側の端部に前記ロータ孔の内側に配置される第1小径部を有するとともに、前記第1小径部の前記第1方向の前記第2側の端部に前記第1当接部を有し、
前記第2シャフトは、前記第1方向の前記第2側の端部に前記ロータ孔の内側に配置される第2小径部を有するとともに、前記第2小径部の前記第1方向の前記第1側の端部に前記第2当接部を有する、
付記3に記載の回転式圧縮機。
【0056】
第1大径部36aと同径のシャフトに第1小径部34aを形成すれば、同時に第1当接部35aが形成される。第2大径部36bと同径のシャフトに第2小径部34bを形成すれば、同時に第2当接部35bが形成される。第1当接部35aおよび第2当接部35bの形成が容易であり、回転式圧縮機10のコストが抑制される。
【0057】
(付記5)
前記ロータの径方向を第2方向としたとき、
前記第1シャフトは、前記第1シャフト孔の前記第2方向の内側に突出する第1係合部を有し、
前記第2シャフトは、前記第2シャフト孔の前記第2方向の内側に突出する第2係合部を有し、
前記連結部材は、前記第2方向の外側に突出する一対の第3係合部を有し、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記第1方向において前記一対の第3係合部の間に配置され、前記一対の第3係合部に係合する、
付記3または4に記載の回転式圧縮機。
【0058】
第1シャフト30aおよび第2シャフト30bのロータ孔41からの抜け出しが規制される。第1シャフト30aおよび第2シャフト30bとロータ40とのZ方向の相対移動が抑制される。
【0059】
(付記6)
前記連結部材は、円筒状であり、周方向の一部に前記第1方向および前記第2方向に貫通するスリットを有する、
付記5に記載の回転式圧縮機。
【0060】
スリット54を押しつぶし、連結部材50を縮径させることにより、第2シャフト孔31bへの連結部材50の挿入が容易になる。
【0061】
(付記7)
前記ロータ孔の内径と前記第1シャフトおよび第2シャフトの外径との差Δd(μm)は、0<Δd≦10を満たす、
付記1から6のいずれか1つに記載の回転式圧縮機。
【0062】
ロータシャフト13の分解時に、ロータ孔41から第1シャフト30aおよび第2シャフト30bを容易に引き抜くことができる。第1シャフト30aおよび第2シャフト30bとロータ40との第2方向の相対移動が抑制される。
【0063】
(付記8)
前記ロータは、前記第1シャフトおよび前記第2シャフトより密度の小さい材料で形成される、
付記1から7のいずれか1つに記載の回転式圧縮機。
【0064】
ロータ40の体積は、第1シャフト30aおよび第2シャフト30bの体積より大きい。ロータ40を密度の小さい材料で形成することにより、回転式圧縮機が軽量化される。
【0065】
実施形態では、第1大径部36aと第1小径部34aとの間に第1当接部35aが形成され、第2大径部36bと第2小径部34bとの間に第2当接部35bが形成される。これに対して、外径が一定のシャフトの外周に突起を設けて、第1当接部35aおよび第2当接部35bが形成されてもよい。
【0066】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ロータ40と、第1シャフト30aと、第2シャフト30bと、連結部材50と、を持つ。これにより、ロータシャフト13を材料毎に分解することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
10…回転式圧縮機、13…ロータシャフト、30a…第1シャフト、30b…第2シャフト、31a…第1シャフト孔、31b…第2シャフト孔、34a…第1小径部、34b…第2小径部、35a…第1当接部、35b…第2当接部、37a…第1キー溝、37b…第2キー溝、38a…第1係合部、38b…第2係合部、40…ロータ、41…ロータ孔、43…第3キー溝、44…キー、50…連結部材、52…第3係合部、54…スリット。