(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161278
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
B65D1/02 100
B65D1/02 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071560
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】市川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】平松 健太
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BB08
3E033CA20
3E033DA04
3E033DA10
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止される合成樹脂製容器において、その封止部のシール状態をより簡便に検査できるようにする。
【解決手段】ヒートシールする際に互いに重なり合う封止部の少なくとも一方側を含む範囲に、未ヒートシール状態において内部に気泡を含む発泡領域を形成しておき、未ヒートシール状態のまま残る発泡領域の光透過率と比較して、封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部8の光透過率の増加度合いを検出することによって、封止部のシール状態の良否を判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止される合成樹脂製容器であって、
ヒートシールによって封止される封止部を含む範囲に、未ヒートシール状態において内部に気泡を含む発泡領域を備え、
前記封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部において、ヒートシールする際に互いに重なり合う前記封止部の内面どうしが融着されており、
前記ヒートシール部の光透過率が、未ヒートシール状態のまま残る前記発泡領域の光透過率と比較して10%以上高くなっていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記ヒートシール部の光透過率が、未ヒートシール状態のまま残る前記発泡領域の光透過率と比較して30%以上高くなっている請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
未ヒートシール状態での前記発泡領域の気泡率が10%以上である請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止される合成樹脂製容器の封止状態の検査方法であって、
ヒートシールする際に互いに重なり合う封止部の少なくとも一方側を含む範囲に、未ヒートシール状態において内部に気泡を含む発泡領域を形成しておき、
未ヒートシール状態のまま残る前記発泡領域の光透過率と比較して、前記封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部の光透過率の増加度合いを検出することによって、封止部のシール状態の良否を判定することを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止される合成樹脂製容器、及びその封止部のシール状態の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止される合成樹脂製の容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような容器を利用して市場に供される製品にあっては、通常、封止部のシール状態を検査した後に出荷されるため、封止部のシール状態をより簡便に検査できるようにすることが求められている。
【0005】
そこで、本発明者らは、内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止される合成樹脂製容器において、その封止部のシール状態をより簡便に検査できるようにすべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る合成樹脂製容器は、内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止される合成樹脂製容器であって、ヒートシールによって封止される封止部を含む範囲に、未ヒートシール状態において内部に気泡を含む発泡領域を備え、前記封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部において、ヒートシールする際に互いに重なり合う前記封止部の内面どうしが融着されており、前記ヒートシール部の光透過率が、未ヒートシール状態のまま残る前記発泡領域の光透過率と比較して10%以上高くなっている構成としてある。
【0007】
また、本発明に係る検査方法は、内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止される合成樹脂製容器の封止状態の検査方法であって、ヒートシールする際に互いに重なり合う封止部の少なくとも一方側を含む範囲に、未ヒートシール状態において内部に気泡を含む発泡領域を形成しておき、未ヒートシール状態のまま残る前記発泡領域の光透過率と比較して、前記封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部の光透過率の増加度合いを検出することによって、封止部のシール状態の良否を判定する方法としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止される合成樹脂製容器において、その封止部のシール状態をより簡便に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の一例を示す説明図である。
【
図2】
図1に示す容器を実際に作製し、封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部の状態を示す写真である。
【
図3】実施例1におけるヒートシール部の外観と比較例2におけるヒートシール部の外観とを対比して示す写真である。
【
図4】実施例1で用意した発泡サンプル片の気泡率と光透過率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の一例を示す説明図である。
図1に示す容器1は、上端が開口して開口部2とされた筒状の首部3と、首部3に対して拡径し、下端側に底部5が形成された胴部4とが一体に成形されており、開口部2から内容物を充填した後に、ヒートシールによって開口部2を封止して内容物を密封できるように構成されている。そして、首部3の側方に張り出すように形成された摘まみ片7を摘まみ上げながら、周方向に沿って溝状に刻設された開封部6を引き裂くことによって開封できるようにしているが、容器1の形状などの具体的な形態は、これに限定されない。内容物を充填した後に、ヒートシールによって封止されて、充填された内容物を密封できるように構成されていればよく、例えば、製袋されたフィルム材の開口部から内容物を充填した後に、ヒートシールによってフィルム材が融着されて封止されるパウチ状の容器、ヒートシールによってフィルム状の蓋材が開口部周縁に融着されて封止されるカップ状の容器などの種々の形態の合成樹脂製容器に適宜適用することができる。
【0012】
また、
図1に示す容器1は、発泡剤を含浸させた発泡性の樹脂材料と、発泡剤を含まない非発泡性の樹脂材料とをダイヘッド内で合流させて、中間層が発泡層、内外層がスキン層の三層構造となるようにダイヘッドから押し出されたパリソンを一対の分割金型間に挟み込み、パリソン内にブローエアーを吹き込んでブロー成形された、いわゆる発泡ダイレクトブローボトルの一例を示している。
【0013】
容器1を成形する樹脂材料としては、非発泡状態で透光性を有し、かつ、ヒートシール可能な任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。より具体的には、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-ポリプロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、又はこれらの混合物などが好ましく用いられる。
【0014】
また、樹脂材料に含浸させる発泡剤としては、二酸化炭素、窒素などの不活性ガスを物理発泡剤として用いてもよく、これらの不活性ガスを発生し得る炭酸化合物、アゾ化合物などを化学発泡剤として用いてもよい。
【0015】
本実施形態において、容器1は、ヒートシールによって封止される封止部を含む範囲(図示する例では、周方向の全周にわたる範囲)に、未ヒートシール状態において内部に気泡を含む発泡領域を備えていればよいが、そのような発泡領域は、内部に含まれる気泡によって不透明な外観を呈するとともに、遮光性や断熱性を有している。このため、
図1に示す容器1にあっては、容器全体に発泡領域が形成されるようにすることで、遮光層を設けたり、印刷を施したりせずとも、光によって品質が劣化し得る内容物に好適に用いることができるようにしている。さらに、氷菓などを内容物とする場合には、容器1を把持して喫食する際に、手に伝わる冷感を低減させることもできる。
【0016】
なお、前述したようにして容器1をブロー成形するに際し、発泡性の樹脂材料と、発泡剤を含まない非発泡性の樹脂材料とをダイヘッド内で合流させるタイミングを調整するなどして、封止部を含む範囲に選択的に発泡領域が形成されるようにしてもよい。
【0017】
また、
図1に示す容器1は、開口部2から内容物を容器1内に充填した後に、図中破線で囲む部位を封止部として、かかる封止部をヒートシールすることによって、開口部2が封止され、充填された内容物を密封できるように構成されている。封止部をヒートシールするには、例えば、一対のヒートシールバーで封止部を挟持し、互いに重なり合う封止部の内面どうしが圧着された状態で、ヒートシールバーが備える発熱要素から発せられた熱が、封止部の表面側から内面側に伝わることによって、封止部の内面(より詳細には、封止部の内面側の表層部)どうしが融着されるようにすればよい。
【0018】
このようにして封止部をヒートシールするにあたり、封止部の内面どうしが良好に融着されるには、封止部の内面側まで十分に熱が伝わらなければならず、その過程で樹脂材料が軟化又は溶融することによって、封止部に形成された発泡領域に含まれていた気泡の多くが消失し(又は扁平に潰れて)、発泡領域が非発泡又は低発泡状態の部位に変化して透光性の外観を呈することになる。このため、封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部8にあっては、不透明な外観を呈していた発泡領域が非発泡又は低発泡状態の部位に変化することによって、透光性の外観を呈するようになり(
図2参照)、その変化の度合いに応じてヒートシール部8の光透過率が増加する。
【0019】
なお、
図2は、
図1に示す容器1を実際に作製し、封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部8の状態を示す写真であり、ヒートシール部8が、透光性の外観を呈していることが見て取れる。
【0020】
一方、封止部の内面側まで十分に熱が伝わらずに、ヒートシールが良好になされていない場合には、発泡領域に含まれていた気泡の多くが消失せずに残ってしまうことから、発泡領域が非発泡又は低発泡状態の部位に変化する度合いは小さく、それに応じてヒートシール部8の光透過率が増加する度合いも小さくなる傾向にある。
【0021】
したがって、未ヒートシール状態のまま残る発泡領域の光透過率と比較して、封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部8の光透過率の増加度合いが小さい場合には、封止部の内面側まで十分に熱が伝わっておらず、その結果、融着不良などによって、開口部2の封止が正常になされていない可能性が高いと考えられる。
【0022】
本実施形態にあっては、このような考えに基づいて、未ヒートシール状態のまま残る発泡領域の光透過率と比較して、封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部8の光透過率の増加度合いを検出することによって、封止部のシール状態の良否を判定することを可能にしている。
【0023】
すなわち、このようにして封止部のシール状態の良否を判定するにあたり、容器1の封止部を含む範囲に、未ヒートシール状態において内部に気泡を含む発泡領域を備えることによって、封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部8において、ヒートシールする際に互いに重なり合う封止部の内面どうしが融着されると、発泡領域が非発泡又は低発泡状態の部位に変化して透光性の外観を呈するようにしている。そして、シール状態が良好であれば、ヒートシール部8の光透過率が、未ヒートシール状態のまま残る発泡領域の光透過率と比較して10%以上、好ましくは30%以上高くなるようにすることで、ヒートシール部8と未ヒートシール部(未ヒートシール状態のまま残る発泡領域)との違いを目視で判別可能となり、封止部のシール状態をより簡便に検査することができる。加えて、消費者も内容物の密封性を目視により確認でき、製品に対する安心感を高める効果も期待できる。
【実施例0024】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
[実施例1]
低密度ポリエチレンに、発泡核剤としてタルクを添加し、物理発泡剤として窒素ガスを含浸させた発泡性の樹脂材料と、低密度ポリエチレン単体で用いた非発泡性の樹脂材料とをダイヘッド内で合流させて、中間層が発泡層、内外層がスキン層の三層構造となるようにダイヘッドから押し出されたパリソンをブロー成形して、胴部が直径40mmの円筒状である発泡ダイレクトブローボトルを成形した。成形されたボトル胴部からセンターラインを中心に高さ40mm×幅30mmのサンプル片(以下、「発泡サンプル片」ともいう)を二枚ずつ切り出して、これらをヒートシールした。
なお、本実施例におけるヒートシール部の写真を
図3に示す。図中破線で囲む部分がヒートシール部であり、それ以外の部分が未ヒートシール部である。
【0026】
[シール条件]
ヒートシールには、富士インパルス株式会社製のシール機「インパルスシーラーV-301」を用いた。本シール機は、片側加熱式のインパルスシーラーであって、シール条件として、ネジの締め付けによって押付け力が調整可能とされており、1~10までの目盛がついたつまみを回すことで、加熱時間が10段階で調整可能とされている。
押付け力は、押付け力が最大となる締め付け方向にネジを回しきった状態を基準とし、押付け力が下がる方向へネジを回した回転数で管理することとし、本実施例では「回転数:0」として、押付け力が最大となるように設定した。
また、加熱時間は、目盛の数字が大きいほど長くなり、本実施例では「目盛:10」として、加熱時間が最大となるように設定した。
【0027】
[評価]
サンプル片をヒートシールした後に形成されるヒートシール部の状態について、シール可否、シール部外観、気泡率、光透過率、光透過率差の5項目で評価した。
(1)シール可否
ヒートシールされたサンプル片を手で引っ張ってシール状態を確認するとともに、テスコ株式会社製のX線CT装置「TXS90-ACTIS」で撮影した断面画像により、融着界面における空隙の有無を確認することで良好にヒートシールされているか否かを「〇(良好)」、「×(不良)」で評価した。その結果を表1に示す。
(2)シール部外観
ヒートシール部と未ヒートシール部との違いを目視で判別可能か否かを「〇(判別可能)」、「×(判別不可、又は判別困難)」で評価した。その結果を表1に示す。
(3)気泡率
アルファミラージュ株式会社製の電子比重計「MDS-300」にて測定した比重から下記式(1)を用いて算出した。その結果を表1に示す。
気泡率=(1-(発泡状態での比重/非発泡体状態での比重))×100・・・(1)
(4)光透過率、及び光透過率差
株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計「UV-3600iPlus」にて500nmにおける分散透過光測定によって、ヒートシール部の光透過率と、未ヒートシール部の光透過率とを測定した。ヒートシール部の光透過率、及びヒートシール部と未ヒートシール部との光透過率差を表1に示す。
【0028】
【0029】
[実施例2]
加熱時間を「目盛:8」として2目盛分短縮した以外は実施例1と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0030】
[実施例3]
加熱時間を「目盛:6」として4目盛分短縮した以外は実施例1と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0031】
[比較例1]
加熱時間を「目盛:4」として6目盛分短縮した以外は実施例1と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表1に併せて示す。
なお、シールが不十分であり、サンプル片が分離してしまったため、気泡率は未測定である。
【0032】
[比較例2]
押付け力を「回転数:2」として、押しつけ力を弱めた以外は実施例1と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表1に併せて示す。
なお、本比較例におけるヒートシール部の写真を、実施例1におけるヒートシール部の写真と対比させて
図3に示す。
【0033】
[比較例3]
押付け力を「回転数:2」として、押しつけ力を弱めた以外は実施例2と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表1に併せて示す。
なお、ヒートシール部を一見するとシールされているように見えるが、X線CT画像で確認すると、ところどころ非融着部があることが確認できた。
【0034】
[比較例4]
実施例1で用意した発泡サンプル片をヒートシールせずに、二枚重ねて光透過率を測定したところ19.8%であった。参照のため、この値を表1の評価項目「光透過率」の欄に記載する。実施例1~3、比較例1~3にあっては、この値を未ヒートシール部の光透過率として、ヒートシール部と未ヒートシール部との光透過率差を算出した。また、参照のため、発泡サンプル片の気泡率を表1の評価項目「気泡率」の欄に記載する。
【0035】
[比較例5]
低密度ポリエチレンを単体で用いてダイヘッドから押し出されたパリソンをブロー成形して、胴部が直径40mmの円筒状であるダイレクトブローボトルを成形した。成形されたボトル胴部からセンターラインを中心に高さ40mm×幅30mmのサンプル片(以下、「非発泡サンプル片」ともいう)を二枚ずつ切り出して、これらをヒートシールせずに、二枚重ねて光透過率を測定したところ80.1%であった。参照のため、この値を表1の評価項目「光透過率」の欄に記載する。
【0036】
上記実施例1~3、及び比較例1にあっては、この順に加熱時間が短くなるようにシール条件を変更しているが、加熱時間が短くなっていくにつれて、ヒートシール部と未ヒートシール部との光透過率差が小さくなっていくことが確認でき、シール良好と評価された実施例のうち、加熱時間が最も短い実施例3における当該光透過率差は12.1%であり、シール不良と評価された比較例1における当該光透過率差は5.5%であった。
【0037】
また、実施例1及び比較例2、実施例2及び比較例3のそれぞれにあっては、加熱時間を同じにして、押付け力が異なるようにシール条件を変更しているが、これらの対比から、押付け力が弱くなることによっても、ヒートシール部と未ヒートシール部との光透過率差が小さくなることが確認できる。そして、当該光透過率差が4.6%の比較例2では、シール可否の評価が良好とされてはいるものの、
図3に示すように、ヒートシール部と未ヒートシール部との違いを目視で判別するのは困難であった。さらに、当該光透過率差が2.3%の比較例3では、前述したように、一見するとシールされているように見えるが、X線CT画像で確認すると、ところどころ非融着部があることから、シール可否の評価が不良とされている。
【0038】
このような結果に基づいて考察することにより、シール部外観を目視してシール状態の良否を容易に判定できるようにするには、ヒートシール部と未ヒートシール部との光透過率差が10%以上あることが必要であり、実施例1及び2の評価結果を参酌すると、より好適には当該光透過率差が30%以上あれば、シール状態の良否をより容易に判定できると結論付けた。
【0039】
また、
図4に、実施例1で用意した発泡サンプル片の気泡率と光透過率の関係をグラフで示す。このグラフから、気泡率が10%程度までの気泡率が低い領域では、光透過率の変化が急峻であり、それよりも高い気泡率では光透過率の変化がなだらかになっていることが確認できる。このことから、ヒートシール部と未ヒートシール部との光透過率差を大きくして、より明確にシール状態の良否を判定するためには、未ヒートシール状態での発泡領域の気泡率を10%以上とすることが好適といえる。
【0040】
[実施例4]
実施例1で用意した発泡サンプル片と、比較例5で用意した非発泡サンプル片とをヒートシールした。シール条件は、実施例1と同一の条件とし、発泡サンプル片側から加熱した。このようにして形成されたヒートシール部の状態を評価した。その結果を表2に示す。
【0041】
【0042】
[実施例5]
ヒートシール条件を実施例2と同一の条件とした以外は、実施例4と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表2に併せて示す。
【0043】
[比較例6]
ヒートシール条件を実施例3と同一の条件とした以外は、実施例4と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表2に併せて示す。
なお、シールが不十分であり、サンプル片が分離してしまったため、気泡率は未測定である。
【0044】
[比較例7]
ヒートシール条件を比較例1と同一の条件とした以外は、実施例4と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表2に併せて示す。
なお、シールが不十分であり、サンプル片が分離してしまったため、気泡率は未測定である。
【0045】
[実施例6]
非発泡サンプル片側から加熱した以外は、実施例4と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表2に併せて示す。
【0046】
[実施例7]
非発泡サンプル片側から加熱した以外は、実施例5と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表2に併せて示す。
【0047】
[比較例8]
非発泡サンプル片側から加熱した以外は、比較例6と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表2に併せて示す。
【0048】
[比較例9]
非発泡サンプル片側から加熱した以外は、比較例7と同様にして、ヒートシール部の状態を評価した。その結果を表2に併せて示す。
なお、シールが不十分であり、サンプル片が分離してしまったため、気泡率は未測定である。
【0049】
[比較例10]
実施例1で用意した発泡サンプル片と、比較例5で用意した非発泡サンプル片とをヒートシールせずに、二枚重ねて光透過率を測定したところ31.7%であった。参照のため、この値を表2の評価項目「光透過率」の欄に記載する。また、実施例4~7、比較例6~9にあっては、この値を未ヒートシール部の光透過率として、ヒートシール部と未ヒートシール部との光透過率差を算出した。
【0050】
上記実施例4~7,及び比較例6~9によれば、ヒートシールされる二枚のサンプル片のうち、どちらか一方が発泡してさえいれば、ヒートシール部と未ヒートシール部との光透過率差と、シール可否の評価、及びシール部外観の評価との間に相関関係が認められ、当該光透過率差が大きいほど、シール可否が良好と評価され、シール部外観が判別可能と評価される傾向にあることが解る。このような結果に基づいて考察することにより、ヒートシールする際に互いに重なり合う封止部の一方側と他方側との組み合わせや、シール条件に応じて、封止部のシール状態の良否を判定する閾値を適宜設定しておきさえすれば、ヒートシールする際に互いに重なり合う封止部の少なくとも一方側を含む範囲に、未ヒートシール状態において内部に気泡を含む発泡領域を形成しておくことで、封止部をヒートシールした後に形成されるヒートシール部の光透過率の増加度合いを検出することによって、封止状態の良否を判定できると結論付けた。
【0051】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。