(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161282
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231030BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20231030BHJP
B60L 53/35 20190101ALI20231030BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
B60L53/14
B60L53/35
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071569
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】竹上 功起
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB02
5G503FA03
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC21
5H125CC06
5H125DD01
5H125DD02
5H125EE09
5H125FF14
(57)【要約】
【課題】センサやスイッチを用いずに受電部と給電部との当接状態を確実に検出することが可能な充電システムの提供にある。
【解決手段】受電部19を備える電動走行体と、受電部19と当接可能な給電部32を備える充電装置12と、を有し、電動走行体は、走行用モータ17と、走行用モータ17を制御する車載コントローラ25と、受電部19を介して充電可能な蓄電装置と、を備える充電システム10において、給電部32は、受電部19と給電部32とが互いに当接するとき、電動走行体の移動に応じて進退可能であり、かつ、給電部32を、受電部19に当接する方向に付勢する付勢部材、を備え、コントローラは、受電部19と給電部32との当接後に走行用モータ17のトルクが閾値以上のとき、電動走行体が充電装置12に対して停止するように走行用モータ17を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電部を備える電動走行体と、
前記受電部と当接可能な給電部を備える充電装置と、を有し、
前記電動走行体は、
走行用モータと、
前記走行用モータを制御するコントローラと、
前記受電部を介して充電可能な蓄電装置と、を備える充電システムにおいて、
前記受電部および前記給電部の少なくとも一方は、
前記受電部と前記給電部とが互いに当接するとき、前記電動走行体の移動に応じて進退可能であり、かつ、前記受電部および前記給電部の少なくとも一方を、前記受電部および前記給電部が互いに当接する方向に付勢する付勢部材、を備え、
前記コントローラは、前記受電部と前記給電部との当接後に前記走行用モータのトルクが閾値以上のとき、前記電動走行体が前記充電装置に対して停止するように前記走行用モータを制御することを特徴とする充電システム。
【請求項2】
前記給電部は、前記付勢部材に付勢され、進退可能な給電側電極体を備え、
前記受電部は、前記電動走行体に固定されている走行体側電極体を備えることを特徴とする請求項1記載の充電システム。
【請求項3】
前記付勢部材は、コイルばねであることを特徴とする請求項1又は2記載の充電システム。
【請求項4】
前記充電装置の周囲に充電エリアが設定され、
前記電動走行体と前記充電装置との通信を可能とする通信部を有し、
前記コントローラは、前記電動走行体が前記充電エリアに存在するとき、前記電動走行体の停止後に充電を開始するように前記通信部を介して前記充電装置を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の充電システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記トルクが予め設定された設定トルク変動パターンで閾値以上になるとき、充電を開始することを特徴とする請求項4記載の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受電部を備える走行体と、受電部と接続可能な給電部を備える充電装置と、を有する充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
充電システムの従来技術として、例えば、特許文献1に開示された無人車の自動充電装置が知られている。特許文献1に開示された無人車の自動充電装置では、無人車には無人車に搭載されたバッテリを充電するための無人車側正負充電端子が設けられ、地上側の充電器には地上側正負充電端子が設けられている。そして、無人車の自動充電装置は、無人車側正負充電端子に地上側正負充電端子を接続した状態でバッテリを充電器により自動で充電する。
【0003】
特許文献1の無人車の自動充電装置では、地上側正負充電端子がハウジングに摺動可能に支持されている。地上側正負充電端子は圧縮コイルスプリングによりハウジングから突出する方向に付勢され、地上側正負充電端子の先端部はハウジングから突出している。ハウジングにはリミットスイッチが固定されている。そして、地上側正負充電端子が圧縮コイルスプリングの付勢力に対抗して所定量移動すると、リミットスイッチがオンするようになっている。
【0004】
地上側正負充電端子が無人車側正負充電端子に接触し、さらに移動されることによりハウジング内において地上側正負充電端子が相対的に移動し、リミットスイッチがオンする。リミットスイッチの信号は充電コントローラに送られる。充電コントローラは、リミットスイッチのオン後において地上側正負充電端子と無人車側正負充電端子が正しく接触していると判断すると、充電器による充電を開始する。地上側にリミットスイッチを設け、リミットスイッチによる接触確認により地上側正負充電端子の移動動作を止めることで移動のストローク内であれば無人車の位置が異なっても充電が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された無人車の自動充電装置では、リミットスイッチのオン後に地上側正負充電端子と無人車側正負充電端子との当接状態を判断するため、リミットスイッチを必要とするという問題がある。つまり、無人車を停止させるためにリミットスイッチが必要である。リミットスイッチを必要とする場合、リミットスイッチを設けるスペースが必要になるほか、リミットスイッチを設けるための部品が必要となり充電装置の製作コストが増大する。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、センサやスイッチを用いずに受電部と給電部との当接状態を確実に検出することが可能な充電システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、受電部を備える電動走行体と、前記受電部と当接可能な給電部を備える充電装置と、を有し、前記電動走行体は、走行用モータと、前記走行用モータを制御するコントローラと、前記受電部を介して充電可能な蓄電装置と、を備える充電システムにおいて、前記受電部および前記給電部の少なくとも一方は、前記受電部と前記給電部とが互いに当接するとき、前記電動走行体の移動に応じて進退可能であり、かつ、前記受電部および前記給電部の少なくとも一方を、前記受電部および前記給電部が互いに当接する方向に付勢する付勢部材、を備え、前記コントローラは、前記受電部と前記給電部との当接後に前記走行用モータのトルクが閾値以上のとき、前記電動走行体が前記充電装置に対して停止するように前記走行用モータを制御することを特徴とする。
【0009】
本発明では、コントローラは、受電部と給電部との当接後に走行用モータのトルクが閾値以上になると、電動走行体が充電装置に対して停止するように走行用モータを制御する。そして、電動走行体が停止された後、受電部と給電部との当接は、付勢部材との付勢力によって維持される。つまり、走行用モータのトルクを監視することで、受電部と給電部との当接状態を確実に検出することができるので、当接状態の検出のためにセンサやスイッチを用いる必要がない。
【0010】
また、上記の充電システムにおいて、前記給電部は、前記付勢部材に付勢され、進退可能な給電側電極体を備え、前記受電部は、前記電動走行体に固定されている走行体側電極体を備える構成としてもよい。
この場合、給電側電極体が進退可能とすることで、電動走行体の走行体側電極体を進退させる必要がなく、電動走行体に走行体側電極体の進退のためスペースを確保する必要がない。
【0011】
また、上記の充電システムにおいて、前記付勢部材は、コイルばねである構成としてもよい。
この場合、付勢部材をコイルばねとすることにより、走行用モータのトルクが閾値以上となるまでの連続的に増大することになり、コントローラは受電部と給電部との当接以外によるトルク増大と判別し易くなる。
【0012】
また、上記の充電システムにおいて、前記充電装置の周囲に充電エリアが設定され、前記電動走行体と前記充電装置との通信を可能とする通信部を有し、前記コントローラは、前記電動走行体が前記充電エリアに存在するとき、前記電動走行体の停止後に充電を開始するように前記通信部を介して前記充電装置を制御する構成としてもよい。
この場合、車載コントローラは、充電エリアが設定により充電を可能なエリアを限定することができ、通信部の通信により充電装置を制御することができる。
【0013】
また、上記の充電システムにおいて、前記コントローラは、前記トルクが予め設定された設定トルク変動パターンで閾値以上になるとき、充電を開始する構成としてもよい。
この場合、トルクが予め設定された設定トルク変動パターンで閾値以上になるとき、受電部と給電部を介した蓄電装置の充電を開始することができる。また、予め設定された変動パターン以外で閾値以上になるとき、充電を行わないようにすることも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサやスイッチを用いずに受電部と給電部との当接状態を確実に検出することが可能な充電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る充電システムの概略平面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る充電システムの概略側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る充電システムの概略構成図である。
【
図4】第1の実施形態に係る充電システムによる充電の手順を示すフロー図である。
【
図5】走行用モータのトルクと受電部と当接後の無人搬送車の移動距離との関係を示すグラフ図である。
【
図6】(a)は受電部と給電部が当接直後の状態を示す側面図であり、(b)は受電部が給電部を押し込んだ状態を示す側面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る充電システムの概略側面図である。
【
図8】第3の実施形態に係る充電システムの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る充電システムについて図面を参照して説明する。本実施形態は、電動走行体としての無人搬送車と、無人搬送車を充電する充電装置とを有する充電システムを例示して説明する。
【0017】
図1に示すように、充電システム10は、電動走行体としての無人搬送車11と、充電装置12と、を有している。無人搬送車11は、障害物を回避しつつ自律走行する無人搬送車である。
図2に示すように、無人搬送車11の車体13の上部には、荷Wの載置を可能とする荷台14が備えられている。車体13の前部には、前輪としての左右一対の操舵輪15が備えられ、車体13の後部には、後輪としての左右一対の駆動輪16が備えられている。操舵輪15は操舵用モータ(図示せず)の駆動により操舵される。左右一対の駆動輪16は、走行用モータ17の駆動により回転する。
【0018】
車体13には、蓄電装置としてのバッテリ18が搭載されている。バッテリ18は充放電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ18は、操舵用モータや走行用モータ17等の電力を必要とするに各部と電力配線(図示せず)により接続されている。したがって、バッテリ18の電力は電力配線を通じて車体13の各部に供給される。また、回生時に生じる電力は、電力配線を通じてバッテリ18に蓄えられる。
【0019】
本実施形態では、車体13の前部にバッテリ18を充電するための受電部19が備えられている。受電部19は、走行体側電極体としての正極端子21および負極端子22を備えている。正極端子21および負極端子22は、車体13の前部に形成された凹部23に配設されている。正極端子21および負極端子22が互いに上下となるように、受電部19は車体13に対して固定されている(
図2を参照)。正極端子21および負極端子22は、バッテリ18が備える対応する端子と電力線28、29を介して接続されている。受電部19には充電装置12との光通信による通信を行うための車載通信機24を備えている。正極端子21および負極端子22は、凹部23に配設されているので障害物と干渉し難い。
【0020】
車体13には、無人搬送車11の各部を制御するコントローラとしての車載コントローラ25が搭載されている。
図3に示すように、車載コントローラ25は、CPU26と、RAMおよびROM等からなる記憶部27と、を備えている。車載コントローラ25は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えていてもよい。車載コントローラ25は、コンピュータプログラムにしたがって動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。
【0021】
記憶部27は、処理をCPU26に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部27には、無人搬送車11の各部を制御するための種々のプログラムが記憶されている。車載コントローラ25は、例えば、操舵用モータおよび走行用モータ17を制御し、操舵用モータおよび走行用モータ17を制御することで、無人搬送車11の進行方向および走行速度を制御することが可能である。
【0022】
記憶部27には、無人搬送車11の移動を行なう移動空間に関する環境地図が記憶されている。環境地図は、無人搬送車11が移動空間を移動しながら作成する地図である。無人搬送車11の自己位置推定と環境地図の構築を同時に行なう技術は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と称される。記憶部27、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。無人搬送車11にレーザーレンジファインダ(LRF:光波測距儀)が搭載されることで、車載コントローラ25は、自己位置を推定しつつ環境地図を作成する。
【0023】
環境地図には、充電装置12の周囲に設定される充電エリアEの位置情報が含まれている。車載コントローラ25は、無人搬送車11の走行モードを充電エリアE外では通常走行モードとし、充電エリアE内では充電走行モードとする。通常走行モードでは充電装置12によるバッテリ18の充電を不可とし、充電走行モードでは、充電装置12の充電を可能とする。
【0024】
本実施形態の車載コントローラ25は、充電装置12との通信に基づいて充電制御を行う。無人搬送車11が充電装置12と充電可能な状態で接続されたとき、充電装置12に充電指令を出してバッテリ18に対する充電を行う。充電の制御の手順については後述する。また、車載コントローラ25は、駆動中の走行用モータ17のトルクを監視する機能を有しており、走行用モータ17の電流値に基づいてトルクを求めている。
【0025】
次に、充電装置12について説明する。本実施形態の充電装置12は、路面(床面)に設置されている。充電装置12は、装置本体31と、給電部32と、付勢部材としてのコイルばね33と、充電側コントローラ34と、を有する。
【0026】
箱状の装置本体31の側部には給電部32が備えられている。給電部32は、給電基台35と、給電側電極体としての正極端子36および負極端子37を備えている。給電基台35には、正極端子36が進退可能に挿入される空間38と、負極端子37が進退可能に挿入される空間39と、を有する。正極端子36は、円柱体であって空間38に挿入されているが、装置本体31の側部から突出するとともに、給電基台35に対して進退可能に備えられている。負極端子37は、円柱体であって空間39に挿入されているが、装置本体31の側部から突出するとともに、給電基台35に対して進退可能に備えられている。
【0027】
正極端子36および負極端子37は互いに上下となるように配設されている(
図2を参照)。正極端子36および負極端子37を備える給電部32は、電力配線42、43を介して充電器40と接続されており、充電器40は外部電源(図示せず)と接続されている(
図3を参照)。正極端子36および負極端子37は、付勢部材としてのコイルばね33により突出する方向に付勢されている。コイルばね33は、圧縮コイルばねであり、空間38、39にそれぞれ収容されている。正極端子36および負極端子37における突出側の端部が押し込まれると、正極端子36および負極端子37における空間側の端部がコイルばね33を圧縮する方向へ移動する。コイルばね33の付勢力はフックの法則に従う。
【0028】
給電部32には無人搬送車11との光通信による通信を行うための充電側通信機41を備えている。車載通信機24および充電側通信機41は、無人搬送車11と充電装置12との通信を可能とする通信部に相当する。充電側コントローラ34は、充電装置12の各部を制御する。具体的には、給電部32を制御するほか、充電側通信機41を制御する。充電側コントローラ34は、給電部32による充電に関する指令を出す。
【0029】
次に、充電システム10による無人搬送車11の受電部19と充電装置12の給電部32との当接状態を検出する手順について説明する。
図4に示すように、車載コントローラ25は、まず、走行中の無人搬送車11に充電要求が発生したとき、充電装置12へ向けて走行する(ステップS101)。このとき、無人搬送車11は通常走行モードで走行している。充電要求は、バッテリ18の残容量に基づいて判断される。通常走行モードでは、走行用モータ17のトルクが閾値以上となるとき、車載コントローラ25は異常と判断して緊急停止する。
【0030】
次に、無人搬送車11の現在位置が充電エリアE内であるか否かを判別する(ステップS102)。無人搬送車11の現在位置が充電エリアE内であると判別されると、車載コントローラ25は、無人搬送車11の走行モードを、通常走行モードから充電走行モードへ切り換えられる。そして充電走行モードにより充電装置12へ向けて走行する(ステップS103)。充電走行モードでは、走行用モータ17のトルクが閾値以上のときに充電が可能となる。車載コントローラ25が充電エリアE内でないと判別すると、ステップS101へ戻る。
【0031】
次に、車載コントローラ25は、走行用モータ17のトルクが閾値T以上であるか否かを判別する(ステップS104)。走行用モータ17のトルクは、車載コントローラ25により監視されている。車載コントローラ25が走行用モータ17のトルクが閾値T以上であると判別すると、走行用モータ17のトルク増大が予め設定された変動パターンであるか否かを判別する(ステップS105)。
【0032】
受電部19と給電部32が当接した状態で無人搬送車11が走行を継続すると、給電部32における正極端子36および負極端子37がコイルばね33のばね力(付勢力)に抗して押し込まれる。このため、コイルばね33は圧縮され、コイルばね33のばね力は受電部19への反力となるが、ばね力の増大はフックの法則に従い、連続的であって直線的な増大となる。そして、無人搬送車11がばね力に対抗して走行しようとするため、
図5に示すように、走行用モータ17のトルクは、ばね力の増大に対応して連続的であって直線的な増大となる。車載コントローラ25には、走行用モータ17のトルクの連続的であって直線的に増大の変動パターン(以下、「設定トルク変動パターン」と表記する)が予め設定されている。トルクの増大の変動が設定トルク変動パターンであると、車載コントローラ25は受電部19と給電部32が当接していると認識できる。閾値Tは、コイルばね33の高さが自由高さと密着高さの間での付勢力と対応するトルクとすればよい。
【0033】
車載コントローラ25が走行用モータ17のトルク増大が設定トルク変動パターンであると判別すると、無人搬送車11を停止させるように走行用モータ17を制御する(ステップS106)。次に、車載コントローラ25は、車載通信機24と充電側通信機41との間で光通信を行う(ステップS107)。そして、車載コントローラ25は、通信結果に基づいて充電可能か否かを判別する(ステップS108)。具体的には、車載コントローラ25は、通信により充電装置12に対して指令を出し、給電部32から受電部19へ電流を流させ、受電部19における電圧を検出することで充電可能であると判別する。車載コントローラ25は、受電部19と給電部32の充電可能であると判別すると、通信により充電装置12の充電側コントローラ34に対して充電を開始するように指令を送る(ステップS109)。充電側コントローラ34は、車載コントローラ25の指令を受けてバッテリ18に対する充電を開始する(ステップS110)。充電の開始により一連のフローが終了する。
【0034】
ステップS105で走行用モータ17のトルク増大が設定トルク変動パターンでないと判別されると、給電部32が受電部19以外の障害物と当接している異常が発生しているとしてフローを終了する(ステップS111)。また、ステップS107において受電部19と給電部32との接続が正常でないと判別されると、接続異常としてフローを終了する(ステップS111)。
【0035】
次に、本実施形態の充電システム10による無人搬送車11のバッテリ18の充電について説明する。無人搬送車11は、荷Wを搬送するために通常走行モードにより走行する。走行中の無人搬送車11では、車載コントローラ25が走行用モータ17のトルクを常に監視している。無人搬送車11が走行を繰り返す等してバッテリ18の残容量が所定の残容量まで低下すると、車載コントローラ25が充電要求の指令を出す。充電要求の指令が出されると、車載コントローラ25は、無人搬送車11を充電装置12へ向けて走行するように走行用モータ17を含む各部を制御する。
【0036】
無人搬送車11を充電装置12へ向けて走行するが、無人搬送車11が充電装置12の充電エリアE外に存在するときは、通常走行モードによる走行を継続する。このとき、何らかの理由で無人搬送車11が障害物と干渉して走行を継続しようとすると、走行用モータ17のトルクが閾値Tを超えることが有り得るが、車載コントローラ25は異常発生として認識し、無人搬送車11を停止する。一方、無人搬送車11が充電装置12の充電エリアE内に存在するときは、車載コントローラ25は、走行モードを通常走行モードから充電走行モードに切り換え、無人搬送車11は充電走行モードにより走行し、充電装置12を目指す。
【0037】
図6(a)に示すように、無人搬送車11の走行により受電部19と給電部32とは当接する。さらに無人搬送車11が走行を継続するので、例えば、
図6(b)に示すように、給電部32の正極端子36および負極端子37がコイルばね33の付勢力に対抗して押し込まれる。コイルばね33の付勢力はフックの法則に基づきコイルばね33の圧縮量に応じて増大する。受電部19における正極端子21および負極端子22は、コイルばね33の付勢力を反力として受ける。このため、受電部19の給電部32との当接後に無人搬送車11が、給電部32の正極端子36および負極端子37を押し込む方向へ移動すると、無人搬送車11の走行用モータ17のトルクもコイルばね33の付勢力の増大と同様に増大する。
【0038】
車載コントローラ25は、充電走行モードであって走行用モータ17のトルクが閾値T以上となる。そして、走行用モータ17のトルクの変動が設定トルク変動パターンであるとき、車載コントローラ25は、受電部19と給電部32との接続が正常であって停止できる状態として、無人搬送車11の走行を停止する指令を出す。無人搬送車11が停止されると、コイルばね33の閾値T以上のトルクに対応する付勢力が受電部19の正極端子21および負極端子22に常に作用する。このため、無人搬送車11が停止しても、正極端子21と正極端子36との当接および負極端子22と負極端子37との当接が維持される。
【0039】
無人搬送車11の停止後には、車載コントローラ25は、車載通信機24を介して充電側通信機41と光通信を行い、充電が可能であれば、充電装置12に充電の指令を出す。充電装置12は、車載コントローラ25の指令を受けてバッテリ18に対する充電を開始する。バッテリ18に対する充電が終了すると、車載コントローラ25は、無人搬送車11を充電装置12から離間させるように走行用モータ17を制御する。無人搬送車11は、充電装置12から離間し、充電エリアE外に出ると充電走行モードから通常走行モードへ走行モードを切り換える。
【0040】
本実施形態の充電システム10は、以下の効果を奏する。
(1)車載コントローラ25は、受電部19と給電部32との当接後に走行用モータ17のトルクが閾値T以上になると、無人搬送車11が充電装置12に対して停止するように走行用モータ17を制御する。そして、無人搬送車11が停止された後、受電部19と給電部32との当接は、コイルばね33との付勢力によって維持される。つまり、走行用モータ17のトルクを監視することで、受電部19と給電部32との当接状態を確実に検出することができるので、当接状態の検出のためにセンサやスイッチを用いる必要がない。その結果、充電システム10の製作コストを抑制することができる。
【0041】
(2)給電部32は、コイルばね33に付勢され、進退可能な正極端子36および負極端子37を備え、受電部19は、無人搬送車11の車体13に固定されている正極端子21および負極端子22を備えている。このため、正極端子36および負極端子37が進退可能とすることで、無人搬送車11の正極端子21および負極端子22を進退させる必要がなく、無人搬送車11に正極端子21および負極端子22の進退のためスペースを確保する必要がない。
【0042】
(3)付勢部材をコイルばね33とすることにより、走行用モータ17のトルクが閾値以上となるまでの連続的に増大することになり、車載コントローラ25は、受電部19と給電部32との当接以外によるトルク増大と判別し易くなる。また、無人搬送車11が停止したとき、受電部19と給電部32との間では、コイルばね33の付勢力により充電に必要な接地圧力を確保することができる。
【0043】
(4)充電装置12の周囲に充電エリアEが設定されている。充電システム10は、無人搬送車11と充電装置12との通信を可能とする通信部を有する。車載コントローラ25は、無人搬送車11が充電エリアE内に存在するとき、無人搬送車11の停止後に充電を開始するように車載通信機24および充電側通信機41を介して充電装置12を制御する。車載コントローラ25は、充電エリアEが設定されることにより充電を可能なエリアを限定することができ、通信部の通信により充電装置12を制御することができる。
【0044】
(5)車載コントローラ25は、走行用モータ17のトルクが設定トルク変動パターンで閾値T以上になるとき、充電を開始することができる。設定トルク変動パターン以外で閾値T以上になるとき、充電を行わないようにすることも可能となる。設定トルク変動パターン以外で閾値T以上になる例としては、急激にトルクが上昇する無人搬送車11と障害物との干渉が考えられ、車載コントローラ25は、異常発生として直ちに無人搬送車11を停止することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る充電システムについて説明する。本実施形態では、受電部が備える正極端子および負極端子が無人搬送車の移動に応じて進退可能であり、給電部が備える正極端子および負極端子が固定されている点で、第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成について第1の実施形態を援用し、共通の符号を用いる。
【0046】
図7に示すように、充電システム50は、電動走行体としての無人搬送車51と、充電装置52と、を有している。車体13の前部にバッテリ18を充電するための受電部53が備えられている。受電部53は、走行体側電極体としての正極端子54および負極端子55を備えている。受電部53には、正極端子54が進退可能に挿入される空間56と、負極端子55が進退可能に挿入される空間57と、を有する。
【0047】
正極端子54は、円柱体であって空間56に挿入されているが、車体13の前部から突出するとともに、車体13に対して進退可能に備えられている。負極端子55は、円柱体であって空間57に挿入されているが、車体13の前部から突出するとともに、車体13に対して進退可能に備えられている。正極端子54および負極端子55は、付勢部材としてのコイルばね33により突出する方向に付勢されている。コイルばね33は、圧縮コイルばねであり、空間56、57にそれぞれ収容されている。
【0048】
充電装置52の給電部58は、給電基台35と、給電側電極体としての正極端子59および負極端子61を備えている。正極端子59および負極端子61は、装置本体31の側部に形成された凹部62に配設されている。正極端子59および負極端子61は給電基台35に対して固定されている。
【0049】
本実施形態では、第1の実施形態の効果(1)、(3)~(5)と同等の効果を奏する。また、受電部53は、コイルばね33に付勢され、進退可能な正極端子54および負極端子55を備え、給電部58は、給電基台35に固定されている正極端子59および負極端子61を備えている。このため、正極端子54および負極端子55を進退可能とすることで、充電装置52の正極端子59および負極端子61を進退させる必要がなく、充電装置52に正極端子59および負極端子61の進退のためスペースを確保する必要がない。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る充電システムについて説明する。本実施形態では、給電部だけでなく受電部が備える正極端子および負極端子が無人搬送車の移動に応じて進退可能である点で、第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成について第1の実施形態を援用し、共通の符号を用いる。
【0051】
図8に示すように、充電システム70は、電動走行体としての無人搬送車71と、充電装置12と、を有している。車体13の前部にバッテリ18を充電するための受電部73が備えられている。受電部73は、走行体側電極体としての正極端子74および負極端子75を備えている。受電部73には、正極端子74が進退可能に挿入される空間76と、負極端子75が進退可能に挿入される空間77と、を有する。
【0052】
正極端子74は、空間76に挿入されているが、車体13の前部から突出せず、車体13に対して進退可能に備えられている。負極端子75は、空間77に挿入されているが、車体13の前部から突出せず、車体13に対して進退可能に備えられている。正極端子74および負極端子75は、付勢部材としてのコイルばね33により突出する方向に付勢されている。コイルばね33は、圧縮コイルばねであり、空間76、77にそれぞれ収容されている。
【0053】
本実施形態では、第1の実施形態の効果(1)、(3)~(5)と同等の効果を奏する。また、受電部73は、コイルばね33に付勢され、進退可能な正極端子74および負極端子75を備え、給電部32は、給電基台35に進退可能な正極端子36および負極端子37を備えている。このため、正極端子36、74、負極端子37、75を進退させることで、受電部73と給電部32との当接状態を確実に検出することができる。
【0054】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0055】
○ 上記の実施形態では、付勢部材として圧縮コイルばねを例示して説明したが、これに限らない。付勢部材は、例えば、引っ張りコイルばねでもよい。また、付勢部材は、コイルばねに限らず、付勢力が連続的に増大するゴム系材料による弾性部材であってもよい。
○ 上記の実施形態では、充電装置の周囲に充電エリアを設定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、充電エリアを設定せず、電動走行体の停止後に充電を開始するように通信部を介して充電装置を制御してもよい。
○ 上記の実施形態では、走行用モータのトルクが予め設定された設定トルク変動パターンで閾値以上になるとき、充電を開始するとしたが、これに限らない。例えば、走行用モータのトルクが、単に閾値以上になった場合でも、充電を開始できるようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、設定トルク変動パターンのトルクの増大が連続的であって直線的としたが、これに限らない。設定トルク変動パターンのトルクの増大は直線的でなくてもよいが、トルクの増大が連続的であることが好ましい。
○ 上記の実施形態では、コントローラは、走行用モータのトルクが閾値以上であるか否かを判別し、走行用モータのトルクが閾値以上であると判別すると、走行用モータのトルク増大が予め設定された設定トルク変動パターンであるか否かを判別したがこれに限らない。コントローラは、例えば、走行用モータのトルク増大が予め設定された変動パターンであるか否かを判別し、トルク増大が設定トルク変動パターンであると判別するとき、走行用モータのトルクが閾値以上であるか否かを判別してもよい。
〇 上記の実施形態では、コントローラが、走行用モータのトルクが閾値以上であると判別し、さらに、走行用モータのトルク増大が予め設定された設定トルク変動パターンであるとき、停止指令を出したが、これに限定されない。例えば、コントローラは、走行用モータのトルクが閾値以上であると判別すると、停止指令を出してもよく、電動走行体の停止後に走行用モータのトルク増大が予め設定された設定トルク変動パターンであるか否かを判別してもよい。
○ 上記の実施形態では、電動走行体としての無人搬送車はSLAMにより自律走行するとしたがこれに限らない。例えば、路面に設置した磁気テープ等により誘導され、走行する電動走行体であってもよい。
〇 上記の実施形態では、電動走行体として操舵輪と駆動輪を備える無人搬送車を例示して説明したが、これに限らない。例えば、オムニホイール等の全方向車輪を備える電動走行体であってもよい。
○ 上記の実施形態では、電動走行体として無人搬送車を例示して説明したが、これに限らない。電動走行体としては、例えば、無人フォークリフトや無人トーイングトラクターでもよく、あるいは、自律走行する電動掃除機や警備ロボットであってもよい。また、おオペレータ搭乗による有人操作可能な電動走行体や、遠隔操作可能な電動走行体に本発明を適用することが可能である。有人操作又は遠隔操作可能な電動走行体では、走行用モータのトルクが閾値以上となると、停止されるので操作による走行用モータの過度な負荷発生を防止できる。
【符号の説明】
【0056】
10、50、70 充電システム
11、51、71 無人搬送車
12、52 充電装置
13 車体
15 操舵輪
16 駆動輪
17 走行用モータ
18 バッテリ
19、53、73 受電部
21、54、74 正極端子(受電部)
22、55、75 負極端子(受電部)
24 車載通信機
25 車載コントローラ
32、58 給電部
33 コイルばね
34 充電側コントローラ
36、59 正極端子(給電部)
37、61 負極端子(給電部)
41 充電側通信機
E 充電エリア
W 荷