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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161285
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】回転電機用ステータ及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20231030BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20231030BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K3/04 E
H02K1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071574
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅史
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 洋三
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601EE18
5H601GA15
5H601JJ06
5H603AA09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC05
5H603CC17
5H603CD22
5H603CE02
5H603CE05
5H604AA08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DA14
5H604DA15
5H604DB01
5H604PB03
5H604QA01
(57)【要約】
【課題】回転電機用ステータを使用する際のコイルとステータコアとの間の熱抵抗を低減し得る回転電機用ステータ及びこれを備えた回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機用ステータは、複数のスロットを有するステータコアと、スロットに設けられたコイルと、スロット内の隙間に設けられた樹脂材を備える。回転電機用ステータは、ステータコアの軸方向において、ステータコアの少なくとも一方の端面及び/又はステータコアの内部に配置されたスペーサ板を備える。スペーサ板は、スペーサ板の厚さ方向をステータコアの軸方向に向けており、スペーサ板の面内方向においてスロットの内面よりもスロットの中央側に突出して、スロット内においてコイルとステータコアとの間の少なくとも一部に間隔を設けている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有するステータコアと、該スロットに設けられたコイルと、該スロット内の隙間に設けられた樹脂材を備えた回転電機用ステータであって、
上記ステータコアの軸方向において、該ステータコアの少なくとも一方の端面及び/又は該ステータコアの内部に配置されたスペーサ板を備え、
上記スペーサ板が、該スペーサ板の厚さ方向を該ステータコアの軸方向に向けており、該スペーサ板の面内方向において上記スロットの内面よりも該スロットの中央側に突出して、該スロット内において上記コイルと上記ステータコアとの間の少なくとも一部に間隔を設けている
ことを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項2】
上記スペーサ板が、上記コイルと部分的に当接しており、
上記スペーサ板が、上記スロット内において上記コイルと上記ステータコアとの間の全域にわたって間隔を設けている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項3】
上記コイルが、平角線型コイルであり、
上記スペーサ板が、上記ステータコアの軸方向からの平面視において、上記平角線型コイルの四隅に当接している
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機用ステータ。
【請求項4】
上記スペーサ板の突出先端が、上記ステータコアの軸方向の片側に傾倒していることを特徴とする請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項5】
上記ステータコアと上記スペーサ板とが軸を一にし、
上記スペーサ板の外径が、上記ステータコアの外径よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項6】
上記スペーサ板が、上記ステータコアの軸方向において、該ステータコアの少なくとも一方の端面及び該ステータコアの内部に配置されており、
上記一方の端面が、突出先端傾倒側と反対側の端面であり、
上記ステータコアの軸方向において、上記突出先端傾倒側の方向に移行するに従って上記スペーサ板同士の配置間隔が広くなっている
ことを特徴とする請求項4に記載の回転電機用ステータ。
【請求項7】
上記コイルが、U字状に成形された複数のセグメントコイルからなり、
上記ステータコアの他方の端面におけるコイルエンドが一のセグメントコイルの端部と他のセグメントコイルの端部との連結部を有し、
上記ステータコアの一方の端面におけるコイルエンドが上記連結部を有しない
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つの項に記載の回転電機用ステータと、回転電機用ロータを備えたことを特徴とする回転電機。
【請求項9】
上記回転電機用ロータが、スキューを有し、
上記ステータコアの軸方向において、上記スペーサ板が、上記スキューに対向する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機用ステータ及び回転電機に係り、さらに詳細には、回転電機用ステータを使用する際のコイルとステータコアとの間の熱抵抗を低減し得る回転電機用ステータ及びこれを備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコアのスロット内にコイルを挿入する際にコイルに傷が生じることを回避し、回転電機を使用する際にコイルとステータコアとの電気絶縁性を確保することを可能にした回転電機用ステータが提案されている(特許文献1参照)。この回転電機用ステータは、スロット内に絶縁樹脂製ボビンが挿入された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/017133号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような絶縁樹脂製ボビンを用いると、スロットの内壁と絶縁樹脂製ボビンとの間、及び絶縁樹脂製ボビンと絶縁樹脂製ボビンに挿入されるコイルとの間に隙間が生じる。また、このような絶縁樹脂製ボビンは、スロット内に挿入する必要があるために、一定の機械的強度を必要とし、スロット内のコイル占積率を高めようとする際に、その薄肉化に限界がある。従って、これらの隙間の発生や絶縁樹脂製ボビンの薄肉化限界性によって、特許文献1に記載されたような回転電機用ステータにおいては、更なる熱抵抗の低減を実現させることが難しいという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、回転電機用ステータを使用する際のコイルとステータコアとの間の熱抵抗を低減し得る回転電機用ステータ及びこれを備えた回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ステータコアに所定のスペーサ板を設けることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の回転電機用ステータは、複数のスロットを有するステータコアと、スロットに設けられたコイルと、スロット内の隙間に設けられた樹脂材を備える。この回転電機用ステータは、ステータコアの軸方向において、ステータコアの少なくとも一方の端面及び/又はステータコアの内部に配置されたスペーサ板を更に備える。そして、スペーサ板は、スペーサ板の厚さ方向をステータコアの軸方向に向けており、スペーサ板の面内方向においてスロットの内面よりもスロットの中央側に突出して、スロット内においてコイルとステータコアとの間の少なくとも一部に間隔を設けている。
【0008】
また、本発明の回転電機は、上述した回転電機用ステータと、回転電機用ロータを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステータコアに上述のスペーサ板を設けたため、回転電機用ステータを使用する際のコイルとステータコアとの間の熱抵抗を低減し得る回転電機用ステータ及びこれを備えた回転電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の回転電機用ステータの第1実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示した回転電機用ステータのスロット部分をステータコアの軸方向に対して垂直に切断した部分断面図である。
図3図1に示した回転電機用ステータのスロット部分をステータコアの周方向に沿って切断した部分断面図である。
図4】ステータコアの一例を示す平面図である。
図5図5(A)及び(B)は、図1に示した分割ステータコアとスペーサ板との組み立ての様子を示す説明図である。
図6】回転電機用ステータの第2実施形態のスロット部分をステータコアの軸方向に対して垂直に切断した部分断面図である。
図7図7(A)~(C)は、回転電機用ステータの第3実施形態のスロット部分を示す部分断面図である。
図8】回転電機用ステータの第4実施形態をステータコアの軸方向に沿って切断した断面図である。
図9】回転電機用ステータの第5実施形態を示す斜視図である。
図10】回転電機用ステータの第5実施形態をステータコアの軸方向に沿って切断した断面図である。
図11】回転電機用ステータの第6実施形態をステータコアの軸方向に沿って切断した断面図である。
図12図12(A)及び(B)は、回転電機用ステータの第7実施形態においてスロットにコイルを挿入する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の回転電機用ステータ及び回転電機について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、「回転電機用ステータ」及び「回転電機用ロータ」をそれぞれ単に「ステータ」及び「ロータ」ということがある。
【0012】
(第1実施形態)
図1図3に示すように、本実施形態の回転電機用ステータ10は、複数のスロット50sを有するステータコア50と、スロット50sに設けられたコイル60と、スロット50s内の隙間に設けられた樹脂材70を備えている。
【0013】
本実施形態のステータ10は、図1図3中において矢印Zで示すステータコア50の軸方向において、ステータコア50の内部に配置されたスペーサ板80を更に備えている。
【0014】
本実施形態では、スペーサ板80が、図1中において矢印Zで示すスペーサ板80の厚さ方向をステータコア50の軸方向に向けている。さらに、スペーサ板80が、スペーサ板80の厚さ方向に対して垂直なスペーサ板80の面内方向においてスロット50sのスロット内面50cよりもスロット50sのスロット中央50d側に突出している(図2参照)。これにより、本実施形態では、スロット50s内においてコイル60とステータコア50との間の全域にわたって間隔Sを設けている(図2図3参照)。
【0015】
さらに、本実施形態では、スペーサ板80が、コイル60と部分的に当接している。より具体的には、図示例では、コイル60が平角線型コイルであり、スペーサ板80がステータコア50の軸方向からの平面視において、コイル60の四隅60cに当接している。
【0016】
なお、図示例のステータ10は、5枚のスペーサ板80を備え、このスペーサ板80で6個に分割された分割ステータコア51a~51fを備えている。また、図示例のステータ10では、ステータコア50の一方の端面50a及び他方の端面50bにスペーサ板80が配置されていない。
【0017】
図示例の分割ステータコア51a~51fは、絶縁被膜55を有する電磁鋼板53からなる。さらに、図示例の分割ステータコア51aは1枚の電磁鋼板53を有し、図示例の分割ステータコア51b~51eは5枚の電磁鋼板53を有し、図示例の分割ステータコア51fは2枚の電磁鋼板53を有する。また、スペーサ板80の面内方向は、例えば、図2中の矢印Yで示すステータコアの周方向及び矢印Xで示すステータコアの径方向によって規定することが可能である。
【0018】
また、例えば、図4に示すように、ステータコア50は、積層された絶縁被膜55付き電磁鋼板53同士を接合するためのかしめ部50A及び溶接部50Bを有している。また、図示例のステータコア50は、3つのロケート穴50eを有している。
【0019】
さらに、例えば、図5(A)に示すように、樹脂成形などによって作製されたガイド部品90を、分割ステータコア51a~51f及びスペーサ板80のロケート穴50e,80e(図4参照)に挿入して、図5(B)に示すように、スペーサ板80付きのステータコア50を形成する。なお、図5(A)に示すように、分割ステータコア51a~51f及びスペーサ板80には、接着材57が塗布されている。また、図示しないが、スペーサ板付きのステータコアにコイルを挿入した後、スペーサ板に設けられた樹脂材の流路(例えば、図2中の樹脂材70部分に相当)から樹脂材を流し込み硬化させる。なお、図5中の分割ステータコア51a~51f及びスペーサ板80の断面図は、図4中のV-V線に沿って切断した断面図に相当する。
【0020】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態のステータ10においては、ステータコア50の内部に配置されたスペーサ板80が、スペーサ板80の厚さ方向をステータコア50の軸方向に向けており、スペーサ板80の面内方向においてスロット内面50cよりもスロット中央50d側に突出して、スロット50s内においてコイル60とステータコア50との間の少なくとも一部に間隔Sを設けている。このような構造を有することにより、予め成形された絶縁樹脂製ボビンをスロットに挿入するのではなく、上述したスペーサ板80でスロット50s内に形成された狭い隙間に樹脂材70を充填する構造にできるため、コイル60とステータコア50との間隔を小さく、換言すれば熱伝達経路距離を短くすることができる。そのため、本実施形態のステータ10によれば、回転電機用ステータを使用する際のコイルとステータコアとの間の熱抵抗の低減を実現できる。
【0021】
また、本実施形態のステータ10によれば、ステータコア50のスロット50s内にコイル60を挿入する際のコイル60とステータコア50との接触を抑制ないし防止できるという副次的な利点も得られる。
【0022】
特に、本実施形態のステータ10においては、スペーサ板80が、コイル60と部分的に当接しており、スロット50s内においてコイル60とステータコア50との間の全域にわたって間隔Sを設けている。従って、上述したスペーサ板80でスロット50s内に形成された狭い隙間には樹脂材70が充填されやすい。そのため、本実施形態のステータ10によれば、回転電機用ステータを使用する際のコイルとステータコアとの間の熱抵抗の更なる低減を実現できる。また、本実施形態のステータ10によれば、ステータコアのスロット内にコイルを挿入する際のコイルとステータコアとの接触をより抑制ないし防止できるという副次的な利点も得られる。
【0023】
また、本実施形態のステータ10においては、コイル60が平角線型コイルであり、スペーサ板80がステータコア50の軸方向からの平面視において平角線型コイル60の四隅60cに当接している。従って、コイル間の隙間を小さくする場合における幾何学的限界は殆どなく、コイル間の隙間を小さくすることができる。また、コイルが絶縁被膜を有するコイルでありかつ角Rを有する場合、理論上、コイル間の隙間間隔をゼロにする(隙間をなくす)形状のスペーサ板を採用することも可能である。そのため、本実施形態のステータ10によれば、スロット内におけるコイル占積率を高めることができるという副次的な利点も得られる。
【0024】
さらに、本実施形態のステータ10においては、スロット50s内に樹脂材70を充填し、スペーサ板80と樹脂材70とでコイル60を固定した後において、後述するU字状に成形されたセグメントコイルの端部を曲げ加工する場合に、ステータコア50のスロットエッジにコイル60が接触してコイル表面が傷つくことを抑制ないし防止できるという副次的な利点も得られる。なお、本発明においては、スペーサ板80で後述するセグメントコイルを固定し、セグメントコイルの端部を曲げて加工した後に、樹脂材70を充填してもよい。この場合、コイルエンドの樹脂材での鋳ぐるみを一緒に行うことが可能となる。
【0025】
また、本実施形態のステータ10とロータ(図示せず)を備えた回転電機によれば、コイルの温度上昇を抑制しコイルの抵抗値を低減して、回転電機の高効率化を実現できる。さらに、本実施形態のステータ10とロータを備えた回転電機によれば、スロット内におけるコイル占積率を向上させて、回転電機のトルクを向上させることができる。
【0026】
図6図12は、本発明の回転電機用ステータの第2実施形態~第7実施形態を説明する図である。以下の実施形態では、上述した第1実施形態と同じ構成部位に同一符号を付して詳細な発明を省略する。
【0027】
(第2実施形態)
図6に示すように、本実施形態の回転電機用ステータ10Aは、スロット50s内におけるコイル占積率を小さく、換言すれば、スロット50s内に充填される樹脂材70の流路を多く設けて大きくしたこと以外は、第1実施形態の回転電機用ステータ10と同じ構造を有している。
【0028】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、スロット50s内に充填される樹脂材70の流路を多く設けて大きくしため、上述したスペーサ板80でスロット50s内に形成された狭い隙間には樹脂材70が充填されやすいので、第1実施形態と同様に、回転電機用ステータを使用する際のコイルとステータコアとの間の熱抵抗の低減を実現できる。
【0029】
(第3実施形態)
図7(A)は、本実施形態の回転電機用ステータのスロットにコイルを挿入する前のスロット部分をステータコアの軸方向に対して垂直に切断した部分断面図である。また、図7(B)は、本実施形態の回転電機用ステータのスロットにコイルを挿入した後であって樹脂材を充填する前のスロット部分をステータコアの軸方向に対して垂直に切断した部分断面図である。さらに、図7(C)は、本実施形態の回転電機用ステータのスロットにコイルを挿入した後のスロット部分をステータコアの周方向に沿って切断した部分断面図である。
【0030】
図7(C)に示すように、本実施形態の回転電機用ステータ10Bは、スペーサ板80の突出先端80aがステータコア50の軸方向(図中で矢印Zで示す方向)の片側(図中では下側)に傾倒していること以外は、第1実施形態の回転電機用ステータ10と同じ構造を有している。なお、図7(A)に示すように、スペーサ板80はスロット50s内において櫛歯状の突出先端80aを有しており、図7(B)に示すように、突出先端80aの一部がスロット50s内へのコイル60の挿入に伴って変形している。
【0031】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、スペーサ板80の突出先端80aをステータコア50の軸方向の片側に傾倒させたため、第1実施形態の利点に加えて、分割ステータコア51b~51dとスペーサ板80との組み立て工程において組み立て公差のバラツキがあってもコイル60とステータコア50との間にスペーサ板80の厚さ分の間隔を確保してスロット50s内にコイル60を安定的に挿入できる。なお、図示しないが、本発明においては、スロット50s内にコイル60を挿入する前に予め突出先端80aをステータコア50の軸方向の片側又は両側に傾倒させてもよい。
【0032】
(第4実施形態)
図8に示すように、本実施形態の回転電機用ステータ10Cは、スペーサ板80がステータコア50の軸方向においてステータコア50の双方の端面50a,50b及びステータコア50の内部に配置され、環形形状のステータコア50と環形形状のスペーサ板80とが軸を一にし、スペーサ板80の外径80rがステータコア50の外径50rよりも大きいこと以外は、第1実施形態の回転電機用ステータ10と同じ構造を有している。
【0033】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、スペーサ板80の外径80rがステータコア50の外径50rよりも大きいため、ステータ10Cをハウジング40に固定する際にスペーサ板80とハウジング40の嵌め合いによって位置出しし樹脂材71で固定する構造とすることにより、第1実施形態の利点に加えて、一般的なステータ焼嵌め構造で生じるステータコアの内部応力を低減することができる。このような樹脂材71は、例えば、ステータ10Cをハウジング40に嵌め込んだ後、樹脂材71を充填することによって作製することができる。
【0034】
特に、本実施形態によれば、ステータコアの内部応力の低減によって生じることがあるステータコアの磁気特性の低減を抑制できるため、回転電機の性能を向上させることができる。内部応力によって磁気特性が低減しやすい材料、例えば、アモルファス材料からなるステータコアなどにおいては、回転電機の性能を向上させやすい。
【0035】
(第5実施形態)
図9及び図10に示すように、本実施形態の回転電機用ステータ10Dは、ステータコア50の軸方向においてスペーサ板80がステータコア50の少なくとも一方の端面50a及びステータコア50の内部に配置されており、一方の端面50aが突出先端80a傾倒側と反対側の端面であり、ステータコア50の軸方向において突出先端80a傾倒側(図中で他方の端面50b側)の方向に移行するに従ってスペーサ板80,80同士の配置間隔が広くなっていること以外は、第4実施形態の回転電機用ステータ10と同じ構造を有している。なお、本実施形態では、ステータコア50の他方の端面50bにもスペーサ板80が配置されている。
【0036】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、スペーサ板80が上述のように配置されているため、第1実施形態の利点に加えて、ステータコア50の一方の端面50a側からスロット50s内にコイル60を挿入する際のコイル60とステータコア50との接触をより抑制ないし防止できるという利点が得られる。また、本実施形態によれば、一方の端面50a側にガイドにもなるスペーサ板80を多く配置することにより、ガイド機能が強化されるという利点もある。さらに、他方の端面50b側に移行するに従ってスペーサ板80,80同士の間隔を広くすることにより、スペーサ板80のトータルの枚数を減らすことができるという利点もある。また、図示しないが、詳しくは後述するセグメントコイルの端部を曲げ加工する際にコイルとステータコアとの接触を抑制ないし防止しやすいという観点から、一方の端面側と同様に、他方の端面側にも多くのスペーサ板を配置することも好ましい。
【0037】
(第6実施形態)
図11に示すように、本実施形態の回転電機用ステータ10Eは、ステータコア50の軸方向においてスペーサ板80が回転電機用ロータ20の段スキュー20aに対向する位置に設けられていること以外は、第1実施形態の回転電機用ステータ10と同じ構造を有している。なお、回転電機用ロータ20は、ロータシャフト30の外周に固定されている。
【0038】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、ステータコア50の軸方向においてスペーサ板80をロータ20の段スキュー20aに対向する位置に設けたため、スペーサ板80の材質が非磁性である場合、ロータ20側の磁気特性をなまらすことが可能であり、回転電機の性能を向上させることができる。換言すれば、磁気特性を発揮しにくい部位同士を対向する位置に設けたため、回転電機の性能を低下させにくい。
【0039】
(第7実施形態)
図12(B)に示すように、本実施形態の回転電機用ステータ10Fは、コイル60がU字状に成形された複数のセグメントコイル61からなり、ステータコア50において、他方の端面50bにおけるコイルエンド60bが一のセグメントコイル61の端部と他のセグメントコイル61の端部との連結部60dを有し、一方の端面50aにおけるコイルエンド60aが連結部を有しないこと以外は、第1実施形態の回転電機用ステータ10と同じ構造を有している。
【0040】
上述のような構造は、図12(A)に示すように、スペーサ板80付きのステータコア50に矢印で示すようにセグメントコイル61を挿入し、次いで、図12(B)に示すように、矢印で示すようにセグメントコイル61の端部を曲げて溶接などにより連結することによって得ることができる。
【0041】
次に、本実施形態の利点について詳細に説明する。
本実施形態によれば、コイル60が上述のような構造を有しているため、第1実施形態の利点に加えて、ステータコアにまとめてコイルを挿入して結線することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0042】
以上のように説明したステータを備えた回転電機は、コイルに通電して、電動機として機能することが可能であると共に、回転電機に外部から伝達される駆動力により発電する発電機として機能することも可能である。
【0043】
ここで、各構成要素の仕様や材種について更に詳細に説明する。
【0044】
ステータ10等としては、例えば、環形形状を有するものを挙げることができる。しかしながら、本発明ではこれに限定されず、従来公知の形状のものを採用することができる。
【0045】
ロータ20としては、例えば、ステータ10等の内側に配置され、従来公知の電磁鋼板等を積層してなるロータコアに永久磁石を介挿したり、又はコイルを巻回したりして設けたものを挙げることができる。また、ロータは、段スキューなどのスキューを有する構造を有していてもよく、スキューを有しない構造であってもよい。さらに、ロータは、例えば、従来公知のロータシャフト30の外周に固定されている。
【0046】
ハウジング40としては、例えば、従来公知のウォータージャケットを備えたものを挙げることができる。また、ハウジングの材質としては、例えば、鋳鉄やアルミニウム合金を挙げることができる。
【0047】
(ステータコア)
ステータコア50としては、例えば、従来公知の絶縁被膜付き電磁鋼板からなるものを挙げることができる。このステータコアは、1枚の電磁鋼板からなってもよく、数百枚などの複数枚の電磁鋼板からなってもよい。同様に、分割ステータコア51a~51fも、1枚の電磁鋼板からなってもよく、複数枚の電磁鋼板からなってもよい。しかしながら、本発明ではこれに限定されず、例えば、3Dプリンターなどで作製されたステータコアを採用することもできる。また、ステータコアの材質としては、例えば、ケイ素鋼やアモルファス磁性材料を挙げることができる。なお、上述したロータコアにおいても、例えば、ステータコアと同様の電磁鋼板を採用することができるが、必ずしも同一の電磁鋼板を採用する必要はない。
【0048】
(コイル)
コイル60としては、例えば、絶縁被膜付きの丸線型コイルや平角線型コイルを挙げることができる。スロット内におけるコイル占積率を高める観点からは、平角線型コイルを用いることが好ましい。しかしながら、本発明はこれらに限定されず、例えば、絶縁被膜がない丸線型コイルや平角線型コイルを採用することも可能である。これらの絶縁被膜がないコイルは、コスト低減の観点から優れている。コイル本体の材質として、例えば、銅を挙げることができる。絶縁被膜の材質としては、例えば、アミドイミドやポリイミドを挙げることができる。
【0049】
(樹脂材)
樹脂材70の厚みは、例えば、電気絶縁性を確保し得るという観点からは、数十μm程度まで薄くすることができる。また、樹脂材70,71として、例えば、従来公知のワニス材などの絶縁性樹脂材料を用いることができる。また、樹脂材には、セラミックスなどの絶縁性の無機物などが含まれていてもよい。さらに、スロット51s内の樹脂材70とステータ10等とハウジング40との間の樹脂材71とは同一であっても異なってもよい。さらに、図示しないが、コイルエンド60a,60bを樹脂材70,71で鋳ぐるんでもよい。
【0050】
(スペーサ板)
スペーサ板80としては、例えば、環形形状を有するものを挙げることができる。しかしながら、本発明では、スロット部分のみに所定の構造(段落0007参照)を形成できれば、その形状は特に限定されない。また、スペーサ板は、いくつかの円弧形状に分割されていてもよい。スペーサ板は、例えば、コイルと接触したときに傷つけにくいという観点からは、コイルよりも硬度が低いものであることが好ましい。また、スペーサ板の材質は、例えば、電気絶縁材であることが好ましい。しかしながら、これに限定されず、コイルとステータとの電気絶縁性を確保し得れば、金属などの導電材を用いることも可能である。さらに、スペーサ板の材質は、スペーサとしての機能のみを持たせるという観点からは、非磁性であることが好ましい。さらに、これらに加えて軟らかいという観点から、スペーサ板としては、特に、樹脂製のものを用いることが好ましく、金属を樹脂で被覆したものを用いることも可能である。
【0051】
以上、本発明を若干の実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0052】
本発明においては、回転電機用ステータを使用する際のコイルとステータコアとの間の熱抵抗の低減を実現すべく、ステータコアにスペーサ板を設けたことを骨子とする。
【0053】
従って、コイルとステータコアとの間の熱抵抗の低減効果が得られれば、スロット内においてコイルとステータコアとの間の一部のみに間隔が設けられていてもよい。
【0054】
また、上述の効果が得られれば、ステータコアの一方の端面のみ又は双方の端面のみにスペーサ板が配置されていてもよい。さらに、上述の効果が得られれば、ステータコアの軸方向からの平面視において、スペーサ板がコイルの周面のどの位置に当接していてもよく、金型成形を利用して樹脂材をスロット内の隙間に3MPaのような高い圧力で充填する場合にはスペーサ板がコイルの周面に当接していなくてもよい。
【0055】
さらに、例えば、上述した構成要素は、各実施形態に示した構成に限定されるものではなく、ステータコア、コイル、樹脂材、スペーサ板の仕様や材質の細部を変更することや、一の実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と入れ替えて又は組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 回転電機
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F 回転電機用ステータ
20 回転電機用ロータ
20a 段スキュー
30 ロータシャフト
40 ハウジング
50 ステータコア
50A かしめ部
50B 溶接部
50a,50b 端面
50c スロット内面
50d スロット中央側
50e ロケート穴
50r 外径
50s スロット
51a,51b,51c,51d,51e,51f 分割ステータコア
53 電磁鋼板
55 絶縁被膜
57 接着材
60 コイル(平角線型コイル)
60a,60b コイルエンド
60c 四隅
60d 連結部
61 セグメントコイル
70,71 樹脂材
80 スペーサ板
80a 突出先端
80e ロケート穴
80r 外径
90 ガイド部品
S 間隔
図1
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