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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161286
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】長尺体保持具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/12 20060101AFI20231030BHJP
   F16L 3/10 20060101ALI20231030BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
F16L3/12 B
F16L3/10 Z
H02G3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071575
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】390009999
【氏名又は名称】日動電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】今坂 友昭
(72)【発明者】
【氏名】川端 隆太
【テーマコード(参考)】
3H023
5G363
【Fターム(参考)】
3H023AA03
3H023AC22
3H023AD27
3H023AD33
3H023AE08
5G363AA16
5G363BA07
5G363DA12
5G363DA15
(57)【要約】
【課題】下方側を向く被固定面にベース部を固定した場合でも長尺体を保持させるためのサドル部の操作が行い易い長尺体保持具を提供する。
【解決手段】下方側Z1を向く被固定面Fに固定可能なベース部2と、被固定面Fに沿う姿勢で長尺体5を下方側Z1から仮支持位置に仮支持可能な仮支持部3と、仮支持部3とは別部材で構成されて仮支持位置の長尺体5を保持可能なサドル部4とを備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方側を向く被固定面に固定可能なベース部と、
前記被固定面に沿う姿勢で長尺体を下方側から仮支持位置に仮支持可能な仮支持部と、
前記仮支持部とは別部材で構成されて前記仮支持位置の前記長尺体を保持可能なサドル部とを備えている長尺体保持具。
【請求項2】
前記仮支持部には、前記長尺体を径方向に沿って外部から前記仮支持位置に移動させるための開口部を形成する開口縁部分が備えられ、
前記開口縁部分は、前記仮支持部の弾性変形により前記開口部を拡大した状態で前記長尺体を径方向に沿って外部から前記仮支持位置に移動可能で、且つ、前記仮支持部の弾性復元により前記開口部を元の大きさに復帰させた状態で前記長尺体を径方向に沿って前記仮支持位置から外部に移動不能に構成されている請求項1に記載の長尺体保持具。
【請求項3】
前記サドル部に保持された前記長尺体が沿う方向を長尺体長手方向とし、前記被固定面に沿う方向で且つ前記長尺体長手方向に対して直交する方向の一方側を幅方向第1側とし、その反対側を幅方向第2側として、
前記開口部は、前記仮支持位置に対して前記幅方向第1側の外部からのみ前記長尺体を移動可能に前記幅方向第1側に向けて開口し、
前記サドル部は、前記幅方向第2側の端部である揺動基端部が前記ベース部に揺動可能に連結されて前記揺動基端部を中心に揺動することで、前記ベース部から離間して前記開口部を通した前記長尺体の移動を許容する非保持姿勢と、前記ベース部に接近して前記開口部を通した前記長尺体の移動を許容しない保持姿勢とに姿勢変更可能に構成されていると共に、前記幅方向第1側の端部である揺動先端部が、前記保持姿勢で前記ベース部に連結可能に構成されている請求項2に記載の長尺体保持具。
【請求項4】
前記仮支持部には、前記長尺体を径方向に沿って外部から前記仮支持位置に移動させるための開口部を形成する開口縁部分が備えられ、
前記開口部は、前記仮支持位置に対して下方側の外部からのみ前記長尺体が移動可能に下方側に向けて開口している請求項1に記載の長尺体保持具。
【請求項5】
前記サドル部に保持された前記長尺体が沿う方向を長尺体長手方向とし、前記被固定面に沿う方向で且つ前記長尺体長手方向に対して直交する方向を幅方向として、
前記仮支持部は、前記ベース部に固定される固定部分と、前記サドル部に対して前記長尺体長手方向の一方側において前記固定部分から前記幅方向に並ぶ状態で下方側に向けて突出する一対の第1突出片と、前記サドル部に対して前記長尺体長手方向の他方側において前記固定部分から前記幅方向に並ぶ状態で下方側に向けて突出する一対の第2突出片とを備え、
前記一対の第1突出片の端部及び前記一対の第2突出片の端部によって前記開口縁部分及び前記仮支持部が構成されている請求項4に記載の長尺体保持具。
【請求項6】
前記仮支持部は、分離可能な状態で前記ベース部に連結されている請求項1から5の何れか一項に記載の長尺体保持具。
【請求項7】
前記仮支持部は、上下方向視で前記ベース部の周囲を囲う形状に形成されると共に、前記ベース部に連結された状態において前記ベース部に下方側から係合して前記仮支持部が前記ベース部に対して前記下方側に移動することを規制する下方側係合部と、前記ベース部と連結された状態において前記ベース部に上方側から係合して前記仮支持部が前記ベース部に対して上方側に移動することを規制する上方側係合部とを備えている請求項6に記載の長尺体保持具。
【請求項8】
前記ベース部は、上下方向視で長方形状に形成され、
前記下方側係合部は、前記ベース部の長辺部分に係合し、
前記上方側係合部は、前記ベース部の短辺部分に係合すると共に係合する辺に沿う方向の長さが前記下方側係合部より長く形成されている請求項7に記載の長尺体保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下方側を向く被固定面に対して固定可能なベース部と、長尺体を保持可能なサドル部とを備えた長尺体保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被固定面に固定可能なベース部(ベース)と、長尺体を保持可能なサドル部(サドル)とを備えた長尺体保持具(電線管用固定具)が示されている。この長尺体保持具は、サドル部の係合片がベース部の係合孔に揺動可能に係合しており、これによってサドル部は、長尺体を保持する保持姿勢と、この保持姿勢から90度程度揺動させた非保持姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。長尺体保持具は、ベース部を被固定面に固定し、サドル部を被保持姿勢から保持姿勢に姿勢変更させてサドル部によって長尺体を保持することで、被固定面に対して長尺体を設置するように構成されている。
【0003】
そして、壁面を被固定面として壁面にベース部を固定した場合では、非保持姿勢としたサドル部によって長尺体を下方側から支持することができるため、このサドル部によって長尺体を仮支持することができる。そのため、壁面に対して長尺体を設置する場合では、上述のように被保持姿勢のサドル部に長尺体を仮支持させた後、長尺体と共にサドル部を保持姿勢に揺動させてサドル部をベース部に固定することでサドル部によって長尺体を保持することができるので、長尺体を保持する際に長尺体を手で支える必要がなくなり、長尺体を保持させるためのサドル部の操作が行い易いものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】意匠登録第1055981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した長尺体固定具では、天井面等の下方側を向く面を被固定面として被固定面にベース部を固定した場合では、非保持姿勢としたサドル部では長尺体を下方側から適切に支持することができず、サドル部によって長尺体を保持する際に長尺体を手で支える必要があるため、長尺体を保持させるためのサドル部の操作が行い難くなっていた。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、下方側を向く被固定面にベース部を固定した場合でも長尺体を保持させるためのサドル部の操作が行い易い長尺体保持具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、下方側を向く被固定面に固定可能なベース部と、
前記被固定面に沿う姿勢で長尺体を下方側から仮支持位置に仮支持可能な仮支持部と、
前記仮支持部とは別部材で構成されて前記仮支持位置の前記長尺体を保持可能なサドル部とを備えている点にある。
【0008】
本構成によれば、下方側を向く被固定面にベース部を固定した状態で、仮支持部によって長尺体を仮支持位置に仮支持することができるため、サドル部によって長尺体を保持する際に長尺体を手等で支える必要がなくなるので、長尺体を保持させるためのサドル部の操作が行い易くなる。
従って、下方側を向く被固定面にベース部を固定した場合でも長尺体を保持させるためのサドル部の操作が行い易い長尺体保持具を提供することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記仮支持部には、前記長尺体を径方向に沿って外部から前記仮支持位置に移動させるための開口部を形成する開口縁部分が備えられ、
前記開口縁部分は、前記仮支持部の弾性変形により前記開口部を拡大した状態で前記長尺体を径方向に沿って外部から前記仮支持位置に移動可能で、且つ、前記仮支持部の弾性復元により前記開口部を元の大きさに復帰させた状態で前記長尺体を径方向に沿って前記仮支持位置から外部に移動不能に構成されている点にある。
【0010】
本構成によれば、仮支持部を弾性変形させて開口部を拡大した状態とすることで、長尺体を径方向に沿って外部から仮支持位置に移動させることができ、長尺体を仮支持位置に仮支持することができる。また、このように長尺体を仮支持位置に仮支持しており、仮支持部の弾性復元により開口部が元の大きさに復帰している状態では、長尺体が仮支持位置から外部に移動しないため、仮支持位置に仮支持させた長尺体が開口部から外部に移動して落下することを防止できる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記サドル部に保持された前記長尺体が沿う方向を長尺体長手方向とし、前記被固定面に沿う方向で且つ前記長尺体長手方向に対して直交する方向の一方側を幅方向第1側とし、その反対側を幅方向第2側として、
前記開口部は、前記仮支持位置に対して前記幅方向第1側の外部からのみ前記長尺体を移動可能に前記幅方向第1側に向けて開口し、
前記サドル部は、前記幅方向第2側の端部である揺動基端部が前記ベース部に揺動可能に連結されて前記揺動基端部を中心に揺動することで、前記幅方向第1側の端部である揺動先端部が前記ベース部から離間して前記開口部を通した前記長尺体の移動を許容する非保持姿勢と、前記ベース部に接近して前記開口部を通した前記長尺体の移動を許容しない保持姿勢とに姿勢変更可能に構成されていると共に、前記保持姿勢で前記揺動先端部が前記ベース部に連結可能に構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、幅方向において開口部が開口している側とサドル部の揺動先端部側とが同じ側となっており、開口部が下方側に向けて開口している場合に比べて、開口部を通した長尺体の移動を許容するためにサドル部を保持姿勢から非支持姿勢へ姿勢変更させる際の揺動量を少なくすることができるため、ベース部やサドル部をサドル部の大きな揺動を許容する形状に形成する必要がないので、長尺体保持具の構成の簡素化やコンパクト化が図り易くなる。また、仮支持部の開口部を幅方向に向けて開口することで、仮支持部の弾性変形によって開口部が拡大した状態になったとしても、仮支持部による仮支持を維持することができるため、仮支持部の弾性変形如何に関わらず、長尺体が開口部を通って下方側に落下ずることを防止し易くなる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記仮支持部には、前記長尺体を径方向に沿って外部から前記仮支持位置に移動させるための開口部を形成する開口縁部分が備えられ、
前記開口部は、前記仮支持位置に対して下方側の外部からのみ前記長尺体が移動可能に下方側に向けて開口している点にある。
【0014】
被固定面を天井とした場合等、被固定面が高い位置にある場合は、被固定面に対して長尺体を設置する作業は下方側から行うことになるが、本構成によれば、仮支持部の開口部は下方側に向けて開口しているため、長尺体を仮支持位置に仮支持させる作業が下方側から行い易くなる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記サドル部に保持された前記長尺体が沿う方向を長尺体長手方向とし、前記被固定面に沿う方向で且つ前記長尺体長手方向に対して直交する方向を幅方向として、
前記仮支持部は、前記ベース部に固定される固定部分と、前記サドル部に対して前記長手方向の一方側において前記固定部分から前記幅方向に並ぶ状態で下方側に向けて突出する一対の第1突出片と、前記サドル部に対して前記長手方向の他方側において前記固定部分から前記幅方向に並ぶ状態で下方側に向けて突出する一対の第2突出片とを備え、
前記一対の第1突出片の端部及び前記一対の第2突出片の端部によって前記開口縁部分及び前記仮支持部が構成されている点にある。
【0016】
本構成によれば、一対の第1突出片と一対の第2突出片とがサドル部の両側に分散配置されているため、一対の第1突出片の端部及び一対の第2突出片の端部により構成される仮支持部分によって長尺体を幅方向に広い間隔で支持することができるため、長尺体を安定よく仮支持できる。
【0017】
本発明の第6特徴構成は、前記仮支持部は、分離可能な状態で前記ベース部に連結されている点にある。
【0018】
本構成によれば、仮支持部が破損した場合でもベース部と仮支持部とのうちの仮支持部のみを新たなものに交換することができるため、長尺体固定部の全体を新たなものに交換する場合に比べて、仮支持部が破損した場合のコストを抑えることができる。また、仮支持部を備えていなかった長尺体支持具のベース部に対して仮支持部を取り付けることで、長尺体を仮支持できるように長尺体保持具を改良することができる。
【0019】
本発明の第7特徴構成は、前記仮支持部は、上下方向視で前記ベース部の周囲を囲う形状に形成されると共に、前記ベース部に連結された状態において前記ベース部に下方側から係合して前記仮支持部が前記ベース部に対して前記下方側に移動することを規制する下方側係合部と、前記ベース部と連結された状態において前記ベース部に上方側から係合して前記仮支持部が前記ベース部に対して上方側に移動することを規制する上方側係合部とを備えている点にある。
【0020】
本構成によれば、仮支持部によってベース部の周囲を囲むことでベース部に対して仮支持部が幅方向や長尺体長手方向に移動することを規制しつつ、下方側規制部によってベース部に対して仮支持部が下方側に移動を規制すると共に上方側規制部によってベース部に対して仮支持部が上方側に移動を規制することで、仮支持部をベース部に固定することができる。
【0021】
本発明の第8特徴構成は、前記ベース部は、上下方向視で長方形状に形成され、
前記下方側係合部は、前記ベース部の長辺部分に係合し、
前記上方側係合部は、前記ベース部の短辺部分に係合すると共に係合する辺に沿う方向の長さが前記下方側係合部より長く形成されている点にある。
【0022】
本構成によれば、上方側係合部は、下方側係合部より広い間隔でベース部に係合するため大きな力が掛かり易いが、その上方側係合部を、下方側係合部より長く形成することで力を分散させた状態でベース部に係合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態における長尺体を保持した状態を示す長尺体保持具の斜視図
図2】第1実施形態におけるベース部を被固定面に固定する途中の状態を示す長尺体保持具の斜視図
図3】第1実施形態における長尺体を仮支持した状態を示す長尺体保持具の側面図
図4】第1実施形態における長尺体保持具の分解斜視図
図5】第1実施形態における長尺体保持具の底面図
図6】第1実施形態における長尺体保持具の平面図
図7】第1実施形態における図5のA-A断面図
図8】第1実施形態における図5のB-B断面図
図9】第2実施形態における長尺体を保持した状態を示す長尺体保持具の斜視図
図10】第2実施形態における長尺体を仮支持した状態を示す長尺体保持具の側面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
本発明に係る長尺体保持具の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、長尺体保持具1は、下方側Z1を向く被固定面Fに固定可能なベース部2と、被固定面Fに沿う姿勢で長尺体5を下方側Z1から仮支持位置P1に仮支持可能な仮支持部3と、仮支持位置P1の長尺体5を保持可能なサドル部4とを備えている。ベース部2と仮支持部3とサドル部4とは夫々が別部材で構成されている。本実施形態では、長尺体5を、内部に電線が収容される電線管としている。電線管には外径が異なる複数種類の電線管があり、保持する電線管の太さに応じた長尺体保持具1が用いられる。
【0025】
以下、長尺体保持具1について説明を加えるが、図1に示すように、長尺体保持具1を、天井面等の下方側Z1を向く被固定面Fに固定した状態に基づいて上下方向Zを定義して説明する。また、図1に示すようにサドル部4に保持された長尺体5が沿う方向を長尺体長手方向Xとし、被固定面Fに沿う方向で且つ長尺体長手方向Xに対して直交する方向を幅方向Yとしている。更に、幅方向Yの一方側を幅方向第1側Y1とし、その反対側を幅方向第2側Y2としている。
【0026】
図4図7及び図8に示すように、ベース部2は、上下方向視で長方形状に形成されている。また、ベース部2は、鋼板を屈曲させて形成されており、長尺体長手方向Xの両端部を上方側Z2に屈曲させて幅方向視で角ばったU字状に形成されている。そして、ベース部2は、被固定面Fに固定した状態では、ベース部2の長尺体長手方向Xの端部が被固定面Fに接触し、ベース部2の長尺体長手方向Xの端部以外の中間部が被固定面Fから離間している。
【0027】
図4に示すように、ベース部2には、ベース部2を被固定面Fに固定するためのボルト8(図2参照)を挿通させるボルト挿通孔9と、サドル部4の揺動基端部24が係合する係合孔10と、サドル部4の揺動先端部25をベース部2に固定するためのビス11(図1図2及び図7参照)が螺合する螺合孔12とが備えられている。ボルト挿通孔9と係合孔10と螺合孔12とは幅方向Yに一直線状に並ぶ状態で備えられており、係合孔10はボルト挿通孔9の幅方向第2側Y2に備えられ、螺合孔12はボルト挿通孔9の幅方向第1側Y1に備えられている。ボルト挿通孔9の周囲には、ボルト8の頭部を収容するための凹部が形成されており、ボルト8の頭部が仮支持位置P1にある長尺体5に接触しないようになっている。係合孔10には、サドル部4の揺動基端部24が挿脱可能な幅広部分10Aと、この幅広部分10Aより長尺体長手方向Xの幅が狭く挿入した揺動基端部24の脱落を規制する幅狭部分10Bとを備えている。
【0028】
図2に示すように、ベース部2はボルト8を用いて被固定面Fに固定する。
図2では、ベース部2にサドル部4を装着した状態でベース部2を被固定面Fに固定する状態を示しているが、サドル部4はベース部2に対して着脱可能に構成されており、通常、ベース部2にサドル部4を装着していない状態でベース部2を被固定面Fに固定し、このようにベース部2を被固定面Fに固定した後にサドル部4をベース部2に装着する。
尚、仮支持部3もベース部2に対して着脱可能に構成されているが、通常、ベース部2に仮支持部3を装着した状態でベース部2を被固定面Fに固定する。
【0029】
図3に示すように、仮支持部3には、長尺体5を径方向に沿って外部P2から仮支持位置P1に移動させるための開口部15を形成する開口縁部分16が備えられている。
開口縁部分16は、仮支持部3の弾性変形により開口部15を拡大した状態(図3に破線で示す状態)で長尺体5を径方向に沿って外部P2から仮支持位置P1に移動可能で、且つ、仮支持部3の弾性復元により開口部15を元の大きさに復帰させた状態(図3に実線で示す状態)で長尺体5を径方向に沿って仮支持位置P1から外部P2に移動不能に構成されている。
【0030】
説明を加えると、仮支持部3は、仮支持部3の弾性変形によって開口部15の大きさを元の大きさL1から拡大した大きさL2より大きく拡大可能に構成されている。そして、仮支持部3の開口部15は、自然状態では元の大きさL1となっており、外部P2から仮支持位置P1に移動させる長尺体5を開口縁部分16に押し付けて広げることで、仮支持部3が弾性変形して開口部15が拡大した大きさL2となり、長尺体5を径方向に沿って外部P2から仮支持位置P1に移動させることができるようになっている。長尺体5を仮支持位置P1に移動させた状態では仮支持部3の弾性復元によって元の大きさL1に復元される。
そのため、開口部15の元の大きさL1は、仮支持位置P1に仮支持する長尺体5の外径L3より小さく、開口部15を拡大した大きさL2は、仮支持する長尺体5の外径L3と同じ大きさとなっている。
【0031】
仮支持部3は、ベース部2やサドル部4に比べて弾性変形し易い素材で構成されている。具体的には、ベース部2やサドル部4は金属材によって構成されているのに対して、仮支持部3は樹脂材によって構成されている。このように、仮支持部3は、樹脂材によって構成されることでその全体が弾性変形可能に構成されている。
【0032】
図4に示すように、仮支持部3は、開口縁部分16に加えて、ベース部2に固定される固定部分17と、仮支持位置P1の長尺体5を下方側Z1から支持する仮支持部分20とを備えている。
説明を加えると、仮支持部3は、サドル部4に対して長尺体長手方向Xの一方側において固定部分17から幅方向Yに並ぶ状態で下方側Z1に向けて突出する一対の第1突出片18と、サドル部4に対して長尺体長手方向Xの他方側において固定部分17から幅方向Yに並ぶ状態で下方側Z1に向けて突出する一対の第2突出片19とを備えている。
一対の第1突出片18における幅方向第2側Y2にある第2側第1突出片18Bは、幅方向第1側Y1にある第1側第1突出片18Aより長く形成されている。また、同様に、一対の第2突出片19における幅方向第2側Y2にある第2側第2突出片19Bは、幅方向第1側Y1にある第1側第2突出片19Aより長く形成されている。
【0033】
このように長さが異なる一対の第1突出片18の端部及び同じく長さが異なる一対の第2突出片19の端部によって開口縁部分16が構成されており、開口部15は、仮支持位置P1に対して幅方向第1側Y1の外部P2からのみ長尺体5を移動可能に幅方向第1側Y1に向けて開口している。また、長い第2側第1突出片18B及び第2側第2突出片19Bによって、仮支持位置P1の長尺体5を下方側Z1から支持する仮支持部分20が構成されている。そして、仮支持部分20によって仮支持位置P1に仮支持されている長尺体5の重心は、開口部15に対して幅方向Y(本実施形態では幅方向第2側Y2)にずれた箇所に位置している。このように、仮支持部分20は、仮支持部3における開口縁部分16や固定部分17とは別の部分によって構成されている。
【0034】
図1図5及び図6に示すように、仮支持部3は、上下方向視でベース部2の周囲を囲う形状に形成されている。そして、図5及び図8に示すように、仮支持部3は、ベース部2に連結された状態においてベース部2に下方側Z1から係合して仮支持部3がベース部2に対して下方側Z1に移動することを規制する下方側係合部21と、図6及び図7に示すように、ベース部2と連結された状態においてベース部2に上方側Z2から係合して仮支持部3がベース部2に対して上方側Z2に移動することを規制する上方側係合部22とを備えている。
【0035】
図5及び図8に示すように、下方側係合部21は、長方形状に形成されているベース部2の長辺部分に係合している。第1側第1突出片18A及び第1側第2突出片19Aは、長尺体長手方向Xの内側に突出して上下方向視でベース部2と重なる領域を有しており、これら第1側第1突出片18A及び第1側第2突出片19Aによって下方側係合部21が構成されている。
図6及び図7に示すように、上方側係合部22は、長方形状に形成されているベース部2の短辺部分に係合している。上方側係合部22は、ベース部2の短辺部分における中央部分(被固定面Fから離れている部分)に係合しており、ベース部2と被固定面Fとの間に位置している。
そして、図5及び図6に示すように、上方側係合部22は、係合する辺に沿う方向の長さが下方側係合部21より長く形成されている。つまり、上方側係合部22は、その幅方向Yの長さが下方側係合部21の長尺体長手方向Xの長さより長く形成されている。
【0036】
図5及び図6に示すように、仮支持部3の固定部分17が上下方向視でベース部2の周囲を囲う形状に形成されており、この固定部分17によって仮支持部3がベース部2に対して長尺体長手方向Xや幅方向Yに相対的に移動することが規制されている。
また、図7及び図8に示すように、下方側係合部21及び上方側係合部22がベース部2に係合することで、仮支持部3がベース部2に対して上下方向Zに相対的に移動することが規制されている。そして、これらの下方側係合部21及び上方側係合部22並びに固定部分17が弾性変形することで、仮支持部3はベース部2に対して上下方向Zに分離可能となっている。
このように、仮支持部3は、分離可能な状態でベース部2に連結されている。
【0037】
図4に示すように、サドル部4は、幅方向第2側Y2の端部である揺動基端部24と、幅方向第1側Y1の端部である揺動先端部25とを備えている。
図1及び図2に示すように、サドル部4は、幅方向第2側Y2の端部である揺動基端部24がベース部2に揺動可能に連結されて揺動基端部24を中心に揺動することで、ベース部2から離間して開口部15を通した長尺体5の移動を許容する非保持姿勢(図2及び図3参照)と、ベース部2に接近して仮支持位置P1にある長尺体5をベース部2との協働で保持する保持姿勢(図1参照)とに姿勢変更可能に構成されている。
また、サドル部4は、幅方向第1側Y1の端部である揺動先端部25が、保持姿勢でベース部2に連結可能に構成されている。
【0038】
図4に示すように、サドル部4の揺動基端部24には係合凹部24Aが備えられており、この係合凹部24Aの長尺体長手方向Xの幅は、サドル部4における係合凹部24Aに隣接する隣接部分の長尺体長手方向Xの幅より狭くなっている。また、この係合凹部24Aは、その長尺体長手方向Xの幅がベース部2における係合孔10の幅狭部分10Bの長尺体長手方向Xの幅より狭くなっており、係合孔10の幅狭部分10Bに係合可能に構成されている。
そして、上述のようにサドル部4をベース部2に係合させた状態では、サドル部4を非保持姿勢と保持姿勢とに亘って90°の範囲で姿勢変更可能となっている。
尚、揺動基端部24における係合凹部24Aより基端側(図4における幅方向第2側Y2)の部分は、その長尺体長手方向Xの幅が係合孔10の幅広部分10Aの長尺体長手方向Xの幅より広くなっているものの先細り形状となっているため、サドル部4を幅方向Yの沿う軸心周りに傾けた姿勢とすることで幅広部分10Aに挿入可能となっている。そのため、サドル部4の揺動基端部24は、ベース部2の係合孔10に対して係脱可能であるが、図1図3図5に示すようなサドル部4が通常の姿勢のままでは係合孔10から下方側Z1に外れない構成となっている。
【0039】
サドル部4は、鋼板を屈曲させて形成されており、揺動基端部24と揺動先端部25との間の部分が幅方向視でU字状に形成されている。このサドル部4のU字状に形成された部分は、保持した長尺体5が当接する保持部26と、保持部26と揺動基端部24や揺動先端部25とを接続する一対の接続部27とが備えられている。保持部26は、保持する長尺体5の外径L3と同径の円弧状に形成されており、一対の接続部27の夫々は、直線状に形成されている。
【0040】
図1図5、及び図7に示すように、サドル部4を保持姿勢に姿勢変更させている状態では、サドル部4の揺動先端部25を挿通させたビス11をベース部2の螺合孔12に螺合させることで、サドル部4を保持姿勢でベース部2に固定することができるとともに、図1に示すように、ベース部2とサドル部4とによって長尺体5を囲み、長尺体5を保持することができる。
また、図2及び図3に示すように、サドル部4を非保持姿勢に姿勢変更させた状態では、開口部15を通した外部P2と仮支持位置P1との間での長尺体5の移動が許容されている。尚、図示は省略するが、被保持姿勢では揺動基端部24の規制部24Bがベース部2に当接しており、サドル部4の非保持姿勢以上の揺動(図2及び図3に示す姿勢から時計回りの揺動)が規制されている。
【0041】
上述のように構成された長尺体保持具1を用いて下方側Z1を向く被固定面Fに対して長尺体5を設置する場合は次のようにする。
まず、仮支持部3が取り付けられ且つサドル部4が取り付けられていないベース部2をボルト8を用いて被固定面Fに固定する。尚、本実施形態では、サドル部4について、後述するように長尺体5を仮支持部3に仮支持させた後にベース部2に取り付けるようにしているが、ベース部2を被固定面Fに固定する前にサドル部4をベース部2に取り付ける(ベース部2にサドル部4を取り付けた状態でベース部2を被固定面Fに固定する)等、サドル部4をベース部2に取り付けるタイミングは適宜変更してもよい。
【0042】
次に、仮支持部3の開口部15に長尺体5を押し付けて仮支持部3を弾性変形させることで開口部15を拡大した状態とし、長尺体5を幅方向第1側Y1の外部P2から仮支持位置P1に押し込み、図3に示すように、長尺体5を仮支持部3によって仮支持位置P1に仮支持させる。このように仮支持位置P1に長尺体5を仮支持した状態では、仮支持部3の弾性復元により開口部15は元の大きさに復帰した状態となっており、長尺体5が仮支持位置P1がら外部P2に移動することによって長尺体5が落下することが防止されている。
そして、長尺体5を仮支持位置P1に仮支持している状態で、サドル部4の揺動基端部24をベース部2の係合孔10に係合させた後、図1に示すように、サドル部4を保持姿勢に姿勢変更させると共にビス11を用いて保持姿勢のサドル部4をベース部2に固定することで、サドル部4とベース部2とによって囲まれた空間に長尺体5を保持する。
【0043】
このように下方側Z1を向く被固定面Fにベース部2を固定した状態で、仮支持部3によって長尺体5を仮支持位置P1に仮支持することができ、サドル部4によって長尺体5を保持する際に長尺体5を手で支える必要がなくなるので、長尺体5を保持させるためのサドル部4に対する作業が行い易くなっている。
【0044】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る長尺体保持具の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
第2実施形態の長尺体保持具について説明するにあたり、第1実施形態の長尺体保持具と異なる構成について主に説明し、同じ構成については説明を省略する。
【0045】
図9及び図10に示すように、一対の第1突出片18(第1側第1突出片18Aと第2側第1突出片18B)は同じ長さに形成されており、一対の第2突出片19(第1側第2突出片19Aと第2側第2突出片19B)は同じ長さに形成されている。
【0046】
このように長さが同じ一対の第1突出片18の端部及び同じく長さが同じ一対の第2突出片19の端部によって開口縁部分16が構成されており、開口部15は、仮支持位置P1に対して下方側Z1の外部P2からのみ長尺体5を移動可能に下方側Z1に向けて開口している。また、一対の第1突出片18の端部及び一対の第2突出片19の端部によって、仮支持位置P1の長尺体5を下方側Z1から支持する仮支持部分20が構成されている。そして、仮支持部分20によって仮支持位置P1に仮支持されている長尺体5の重心は、幅方向Yにおいて開口部15が形成される範囲内に位置している。
このように、仮支持部分20は、仮支持部3における開口縁部分16と同じ部分によって構成されている。
【0047】
上方側係合部22は、ベース部2の短辺部分における中央部分(被固定面Fから離れている部分)に係合しており、ベース部2と被固定面Fとの間に位置している。
また、一対の第1突出片18及び一対の第2突出片19は、その上端部において長尺体長手方向Xの内側に突出して上下方向視でベース部2と重なる領域を有しており、これら一対の第1突出片18の内側に突出している部分及び一対の第2突出片19の内側に突出している部分によって下方側係合部21が構成されている。尚、図9には、第2側第2突出片19Bの長尺体長手方向Xの内側に突出する下方側係合部21のみ図示している。
【0048】
上述のように構成された長尺体保持具1を用いて下方側Z1を向く被固定面Fに対して長尺体5を設置する場合は次のようにする。
まず、仮支持部3が取り付けられ且つサドル部4が取り付けられていないベース部2をボルト8を用いて被固定面Fに固定する。尚、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、サドル部4をベース部2に取り付けるタイミングは適宜変更してもよい。
【0049】
次に、仮支持部3の開口部15に長尺体5を押し付けて仮支持部3を弾性変形させることで開口部15を拡大した状態とし、長尺体5を下方側Z1の外部P2から仮支持位置P1に押し込み、図10に示すように、長尺体5を仮支持部3によって仮支持位置P1に仮支持させる。このように仮支持位置P1に長尺体5を仮支持した状態では、仮支持部3の弾性復元により開口部15は元の大きさに復帰した状態となっており、長尺体5が仮支持位置P1がら外部P2に移動することによって長尺体5が落下することが防止されている。
そして、長尺体5を仮支持位置P1に仮支持している状態で、サドル部4の揺動基端部24をベース部2の係合孔10に係合させた後、図9に示すように、サドル部4を保持姿勢に姿勢変更させると共にビス11を用いて保持姿勢のサドル部4をベース部2に固定することで、サドル部4とベース部2とによって囲まれた空間に長尺体5を保持する。
【0050】
このように下方側Z1を向く被固定面Fにベース部2を固定した状態で、仮支持部3によって長尺体5を仮支持位置P1に仮支持することができ、サドル部4によって長尺体5を保持する際に長尺体5を手で支える必要がなくなるので、長尺体5を保持させるためのサドル部4に対する作業が行い易くなっている。
【0051】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0052】
(1)上記実施形態では、仮支持部3を樹脂材によって構成することで、仮支持部3を弾性変形可能とする構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、仮支持部3に板バネ等の弾性部材を備えることで、仮支持部3を弾性変形可能とする構成としてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、被固定面Fを天井面とする例を説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、被固定面Fを、梁の下面等の天井面以外の下方側Z1を向く面としてもよく、また、被固定面Fを、壁等の下方側Z1を向かない面としてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、電線管を長尺体5とする構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、配管や電線等の電線管以外のものを長尺体5としてもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、仮支持部3に、一対の第1突出片18と一対の第2突出片19とを備える構成を例として説明したが、仮支持部3に、一対の第1突出片18と一対の第2突出片19とのいずれか一方のみを備える構成としてもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、仮支持部3の弾性変形により開口部15を拡大した状態とし、且つ、仮支持部3の弾性復元により開口部15を元の大きさに復帰させる構成としたが、このような構成に限定されない。例えば、仮支持部3の開口部15の大きさを長尺体5の外径L3より大きくし、仮支持部3を弾性変形させることなく長尺体5を径方向に沿って外部P2から仮支持位置P1に移動可能な構成としてもよい。
【0057】
(6)上記実施形態では、仮支持部3を、ベース部2と別体として分離可能な状態でベース部2に連結する構成を例として説明したが、仮支持部3をベース部2と一体形成する構成としてもよい。また、仮支持部3をベース部2に連結させる構成として、仮支持部3の下方側係合部21と上方側係合部22とをベース部2に係合させることに代えて、仮支持部3に突起部を備えて、ベース部2の屈曲させた両端部に形成した孔に仮支持部3の突起部を嵌合させる等、仮支持部3をベース部2に連結させる構成は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 長尺体保持具
2 ベース部
3 仮支持部
4 サドル部
5 長尺体
15 開口部
16 開口縁部分
17 固定部分
18 第1突出片
19 第2突出片
21 下方側係合部
22 上方側係合部
24 揺動基端部
25 揺動先端部
F 被固定面
P1 仮支持位置
P2 外部
X 長尺体長手方向
Y1 幅方向第1側
Y2 幅方向第2側
Z1 下方側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10