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特開2023-161292乳性飲料および乳性飲料の沈殿発生抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161292
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】乳性飲料および乳性飲料の沈殿発生抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20231030BHJP
   A23L 2/62 20060101ALI20231030BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A23L2/38 P
A23L2/00 L
A23C9/152
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071587
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】末元 雄介
【テーマコード(参考)】
4B001
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC44
4B001AC46
4B001EC08
4B001EC53
4B117LC15
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK18
4B117LK30
4B117LL07
4B117LL09
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】特定量のナトリウムを含む乳性飲料の沈殿発生を抑制する技術を提供する。
【解決手段】本発明は、無脂乳固形分、ナトリウムおよびマグネシウムを含む乳性飲料であって、前記無脂乳固形分量が3.0質量%以上、4.0質量%未満であり、前記ナトリウム含有量(Na)が100mg/100ml以上、300mg/100ml以下であり、前記マグネシウム含有量(Mg)が3mg/100ml以上、20mg/100ml以下であり、前記マグネシウム含有量(Mg)に対する前記ナトリウム含有量(Na)の割合(Na(mg/100ml)/Mg(mg/100ml))が15以上、45以下であり、pH(20℃)が4.0以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無脂乳固形分、ナトリウムおよびマグネシウムを含む乳性飲料であって、
前記無脂乳固形分量が3.0質量%以上、4.0質量%未満であり、
前記ナトリウム含有量(Na)が100mg/100ml以上、300mg/100ml以下であり、
前記マグネシウム含有量(Mg)が3mg/100ml以上、20mg/100ml以下であり、
前記マグネシウム含有量(Mg)に対する前記ナトリウム含有量(Na)の割合(Na(mg/100ml)/Mg(mg/100ml))が15以上、45以下であり、
pH(20℃)が4.0以下である、乳性飲料。
【請求項2】
安定化剤をさらに含有する、請求項1記載の乳性飲料。
【請求項3】
前記安定化剤の含有量が0.01~1.0質量%である、請求項2に記載の乳性飲料。
【請求項4】
前記安定化剤が大豆多糖類である、請求項2または3に記載の乳性飲料。
【請求項5】
容器詰めされた、請求項1または2に記載の乳性飲料。
【請求項6】
濃縮飲料である、請求項1または2に記載の乳性飲料。
【請求項7】
無脂乳固形分、ナトリウムおよびマグネシウムを含む乳性飲料の沈殿発生抑止方法であって、
前記無脂乳固形分量が3.0質量%以上、4.0質量%未満となり、
前記ナトリウム含有量(Na)が100mg/100ml以上、300mg/100ml以下となり、
前記マグネシウム含有量(Mg)が3mg/100ml以上、20mg/100ml以下となり、
前記マグネシウム含有量(Mg)に対する前記ナトリウム含有量(Na)の割合(Na(mg/100ml)/Mg(mg/100ml))が15以上、45以下となるように調整する工程と、
前記乳性飲料のpH(20℃)が4.0以下となるように調整する工程と、
を含む、乳性飲料の沈殿発生抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳性飲料および乳性飲料の沈殿発生抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の消費者の健康志向や嗜好性の多様化等を背景に、様々な乳性飲料が開発されている。乳成分を含む乳性飲料等は、製造過程および製造後において、乳成分の分離や凝集を生じることがあった。
【0003】
従来、乳成分を含む乳性飲料にナトリウム塩を組み合わせることで、沈殿発生を抑制できることが知られている。例えば、特許文献1には、高乳分含有乳飲料において、乳分を50重量%以上含む調製液に、ナトリウム塩を添加して該調製液のナトリウム濃度を35mg/100g以上100mg/100g以下の範囲に調整し、前記調製液をホモジナイズ処理および加熱殺菌する技術が開示されている。また、例えば、特許文献2には、酸性乳性飲料における乳蛋白質は、酸性下において不安定であり、凝集・沈殿が生じるおそれが高いことを背景に、酸性乳、HMペクチンおよび塩化ナトリウムを含み、pHが3.5以下である、酸性乳性濃縮飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-167088号公報
【特許文献2】特開2014-79225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱中症予防対策の一つとして、ナトリウムを40~80mg/100ml含むスポーツドリンクや経口補水液を適宜摂取することが知られている。そこで、本発明者は新たにナトリウム含有量が比較的高い乳性飲料における乳タンパクの凝集・沈殿を抑制することに着目した結果、高濃度でナトリウムを含有させた乳性飲料において、マグネシウムが併用されることで沈殿が発生する場合があることを知見した。そこでさらに、鋭意検討を進めたところ、特定量のナトリウムを含む乳性飲料において、無脂乳固形分量、pH、およびマグネシウム含有量を制御することで効果的に沈殿発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の乳性飲料および乳性飲料の沈殿発生抑制方法が提供される。
【0007】
[1] 無脂乳固形分、ナトリウムおよびマグネシウムを含む乳性飲料であって、
前記無脂乳固形分量が3.0質量%以上、4.0質量%未満であり、
前記ナトリウム含有量(Na)が100mg/100ml以上、300mg/100ml以下であり、
前記マグネシウム含有量(Mg)が3mg/100ml以上、20mg/100ml以下であり、
前記マグネシウム含有量(Mg)に対する前記ナトリウム含有量(Na)の割合(Na(mg/100ml)/Mg(mg/100ml))が15以上、45以下であり、
pH(20℃)が4.0以下である、乳性飲料。
[2] 安定化剤をさらに含有する、[1]に記載の乳性飲料。
[3] 前記安定化剤の含有量が0.01~1.0質量%である、[2]に記載の乳性飲料。
[4] 前記安定化剤が大豆多糖類である、[2]または[3]に記載の乳性飲料。
[5] 容器詰めされた、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の乳性飲料。
[6] 濃縮飲料である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の乳性飲料。
[7] 無脂乳固形分、ナトリウムおよびマグネシウムを含む乳性飲料の沈殿発生抑止方法であって、
前記無脂乳固形分量が3.0質量%以上、4.0質量%未満となり、
前記ナトリウム含有量(Na)が100mg/100ml以上、300mg/100ml以下となり、
前記マグネシウム含有量(Mg)が3mg/100ml以上、20mg/100ml以下となり、
前記マグネシウム含有量(Mg)に対する前記ナトリウム含有量(Na)の割合(Na(mg/100ml)/Mg(mg/100ml))が15以上、45以下となるように調整する工程と、
前記乳性飲料のpH(20℃)が4.0以下となるように調整する工程と、
を含む、乳性飲料の沈殿発生抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定量のナトリウムを含む乳性飲料の沈殿発生を抑制する技術が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0010】
本件明細書において、ナトリウム含有量、マグネシウム含有量、カリウム含有量等の各ミネラル成分の含有量は、ICP発光分光分析装置を用いた公知の方法により測定することができる。
【0011】
<乳性飲料>
本実施形態の乳性飲料(以下、単に「飲料」とも称して説明する)は、無脂乳固形分量が3.0質量%以上、4.0質量%未満であり、ナトリウム含有量(Na)が100mg/100ml以上、300mg/100ml以下であり、マグネシウム含有量(Mg)が5mg/100ml以上、20mg/100ml以下であり、マグネシウム含有量(Mg)に対するナトリウム含有量(Na)の割合(Na(mg/100ml)/Mg(mg/100ml))が15以上、45以下であり、pH(20℃)が4.0以下である。
これにより、ナトリウムを高濃度で含有しつつも、乳成分(主に乳タンパク質)の凝集を抑制し、沈殿発生を抑制できる。また、乳性飲料の色味の経時変化を低減し、良好な外観が保持できる。
【0012】
通常、乳タンパク質(主としてカゼイン)は、水系の溶媒中においてミセルを形成し、その表面はマイナスの電荷を帯びているため互いに反発するため、分散して存在することで知られる。そこで、ミネラル成分等のカチオンが飲料中に取り込まれると、かかるミセル間の電気的反発力が低下し、ミセルが凝集し、沈殿を生じると考えられる。本発明は、ミネラル分の中でも特定量のナトリウムとマグネシウムとを組み合わせた時に沈殿が生じることに着目したものであり、特定量のナトリウムを含有することを前提として、無脂乳固形分の含有量とpHを特定しつつ、ナトリウムやマグネシウムの含有量を高度に制御することで、乳タンパク質の凝集を効果的に抑制できる点に技術的価値を有する。
また、本実施形態の飲料は、ナトリウム、マグネシウムといったミネラル分を含むため、熱中症予防対策として、効果的にナトリウム、マグネシウムを摂取することができる。
【0013】
以下、本実施形態の飲料に含まれる成分について説明する。
【0014】
[乳]
本実施形態の乳としては、牛乳、羊乳、馬乳等の獣乳や、豆乳等の植物乳を用いることができる。また、乳の形態としては、生乳、脱脂乳、調整乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、練乳および酸性乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
なお、上記の酸性乳とは、pHを酸性側にした乳をいい、そのpHは、約2~6、好ましくは約3.0~5.0の範囲にある。酸性乳としては、乳酸菌や酵母等の微生物を用いて乳原料を発酵させて調製された発酵酸性乳、および、乳にレモン、オレンジ、グレープフルーツ等の酸性果汁、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸、または、醸造酢や合成酢等の食酢を添加してpHを酸性として得られる酸性化乳(非発酵乳)が挙げられる。より良好な嗜好性を得る観点から、発酵酸性乳が含まれることが好ましい。さらに、酸性乳は、酸性乳中に不溶物として含まれている乳タンパク質を可溶化するためや殺菌を行うために、加熱および冷却処理を施したものであってもよい。
【0016】
本実施形態の飲料中の無脂乳固形分量は、3.0質量%以上、4.0質量%未満であり、好ましくは3.8質量%以下であり、より好ましくは3.6質量%以下である。
当該無脂乳固形分量の含有量を上記下限値以上とすることにより、乳風味を高めることができ、また希釈して飲用する際にも十分な乳風味が得られる。一方、当該無脂乳固形分量の含有量を上記上限値以下とすることにより、乳タンパクの凝集を抑制しやすくなる。
【0017】
無脂乳固形分(SNF)とは、乳から水分と脂肪分を取り除いたもので、乳タンパク質、炭水化物(主に糖質)、ミネラル等の灰分およびビタミンを含むものを意図する。通常、牛乳100gに含まれる無脂乳固形分は8.3g程度であり、うち乳タンパク質は3.0g程度、糖質は4.6g程度、灰分は0.7g程度である。
【0018】
無脂乳固形分の含有量は、食品衛生関係法規集「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年12月27日厚生省令第52号)に記載の発酵乳および乳酸菌飲料の無脂乳固形分の定量法によって、測定することができる。
【0019】
[ナトリウム]
本実施形態においてナトリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態で飲料に添加することができる。
ナトリウムを配合することができる塩としては、例えば、クエン酸三ナトリウム等のクエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、安息香酸ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、およびエリソルビン酸ナトリウム等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0020】
本実施形態のナトリウム含有量は、ナトリウムが塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した上で算出される。
【0021】
本実施形態において、ナトリウムの含有量は100mg/100ml以上、300mg/100ml以下である。これにより、高濃度でナトリウムを含有量しつつも、沈殿発生を抑制できる。
また、ナトリウムの含有量は、好ましくは150mg/100ml以上であり、より好ましくは200mg/100ml以上である。一方、ナトリウムの含有量は、好ましくは280mg/100ml以下であり、より好ましくは250mg/100ml以下である。
【0022】
[マグネシウム]
本実施形態においてマグネシウムは、飲食品に用いることができる塩の形態で飲料に添加することができる。
マグネシウムを配合することができる塩としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化マグネシウム・6水和物、L-グルタミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、リン酸一水素マグネシウム等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0023】
本実施形態において、マグネシウムの含有量は3mg/100ml以上、20mg/100ml以下である。また、マグネシウムの含有量は、好ましくは5mg/100ml以上である。一方、マグネシウムの含有量は、好ましくは18mg/100ml以下である。
【0024】
本実施形態の飲料は、マグネシウム含有量(Mg)に対するナトリウム含有量(Na)の割合(Na(mg/100ml)/Mg(mg/100ml))が15以上、45以下である。これにより、沈殿発生を効果的に抑制できる。
【0025】
本実施形態のナトリウム、およびマグネシウムは、これを含むものを原料してもよく、例えば、乳成分、茶、果汁、野菜汁、天然塩、天然水、および海洋深層水等を飲料に添加してもよい。
【0026】
[安定化剤]
本実施形態の飲料は、安定化剤を含むことが好ましい。安定化剤とは、乳の凝集・沈殿を抑制し、分散状態を安定化するために用いられるものである。安定化剤としては、公知の増粘多糖類を用いることができる。
増粘多糖類は、食品や飲料に用いられる公知の増粘多糖類が挙げられるが、例えば、キサンタンガム、カラギナン、アラビアガム、ペクチン、アガロペクチン、ジェランガム、カラヤガム、アルギン酸類、大豆多糖類、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。なかでも、大豆多糖類、およびペクチンが好ましい。
【0027】
上記の大豆多糖類とは、大豆から得られる水溶性の多糖類であり、主な成分はヘミセルロースであり、さらにガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロース、フコース、およびグルコース等の糖類から構成される。この大豆多糖類は、大豆から大豆油や分離大豆タンパク質を製造する際に生成するオカラ(繊維状の絞りかす)から抽出、精製、殺菌して得ることができる。また、大豆多糖類としては市販のものを用いてもよく、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ社製の「SM-700」、「SM-900」、「SM-1200」等が挙げられる。
【0028】
本実施形態の飲料は、ナトリウム、マグネシウム以外のミネラル分を含んでもよい。ミネラル分としては、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛、および銅等が挙げられる。
【0029】
上記カリウムは、飲料にカリウムを配合することができる塩としては、例えば、酒石酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、ソルビン酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、アセスルファムカリウム、アルギン酸カリウム、クエン酸三カリウム等のクエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、L-グルタミン酸カリウム、およびアスコルビン酸カリウム等が挙げられる。
【0030】
また、上記カルシウムは、乳成分由来のカルシウムのほか、カルシウム塩を添加して調整することができる。カルシウム塩としては、例えば、L-アスコルビン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、塩化カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、L-グルタミン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酢酸カルシウム、サッカリンカルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、炭酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、フェロシアン化カルシウム、プロピオン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、およびリン酸二水素カルシウム等を使用することができる。
【0031】
本実施形態の飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の他の成分を含んでもよい。具体的には、甘味料、酸味料、果汁、香料、ビタミン、着色料、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、およびpH調整剤等の飲料に通常配合される成分を含有することができる。
【0032】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、リン酸、フィチン酸、アスコルビン酸およびそれらの塩類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記の果汁としては、例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、およびライム果汁等の柑橘類果汁;リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、パイナップル果汁、マンゴー果汁、ウメ果汁、アンズ果汁、キウイ果汁、メロン果汁、およびライチ果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0035】
以下、本実施形態の飲料の詳細についてさらに説明する。
【0036】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、4.0未満であり、好ましくは3.9以下であり、より好ましくは3.8以下であり、さらに好ましくは3.7以下である。
pHを上記上限値以下とすることにより良好な乳風味を保持しつつ、沈殿発生を抑制できる。一方、pHの下限値はとくに限定されないが、飲みやすさ等を保持する点から、好ましくは2.4以上であり、より好ましくは2.6以上であり、さらに好ましくは3.0以上である。
【0037】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いる等して行うことができる。pHの調整は、例えば、pH調整剤を用いること等により行うことができる。
【0038】
[粒径]
また、本実施形態の乳性飲料に含まれる微粒子は、乳タンパク質等によって構成される粒子であり、たとえば、カゼインミセル等である。
本実施形態の乳性飲料に含まれる微粒子のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をD50としたとき、D50は、好ましくは0.8~3.0μmであり、より好ましくは0.9~2.0μmであり、さらに好ましくは1.0~1.5μmである。また、当該累積90%に相当する粒径をD90としたとき、D90は、好ましくは1.0~7.0μmであり、より好ましくは1.5~4.0μmである。
上記のように粒径を制御することで、凝集をより安定的に制御し、沈殿発生を抑制できる。
D50、D90は、飲料に含まれる無脂乳固形分量、ナトリウム含有量、マグネシウム含有量を制御し、均質化処理を施す等によって、調整できる。
【0039】
[酸度]
本実施形態の飲料の酸度は、0.5g/100ml以上、3g/100ml以下であることが好ましく、1g/100ml以上、2g/100ml以下であることがより好ましい。
酸度を、上記下限値以上とすることにより、おいしさが得られるようになる。一方、酸度を、上記上限値以下とすることにより、過度な酸味を抑制し、おいしさを両立できる。
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0040】
[可溶性固形分]
本実施形態の飲料の可溶性固形分(°Bx)は、飲用しやすくする観点から、好ましくは、20以上70以下であり、より好ましくは、30以上60以下であり、さらに好ましくは40以上55以下である。
可溶性固形分は、飲料全量に対する可溶性固形分の合計含有量を示す。可溶性固形分は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度として測定することができる。
可溶性固形分は、甘味料の量、その他の各種成分の量等により調整することができる。
【0041】
[炭酸ガス]
本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよく、濃縮飲料とする場合、長期保存を可能とする点から炭酸ガスを含まないものとしてもよい。
炭酸飲料とした場合、炭酸ガスの圧力は、嗜好性にあわせて適宜調整できるが、例えば、1.0~5.0ガスボリュームであることが好ましく、1.5~3.5ガスボリュームであることがより好ましい。
炭酸ガス圧力(ガスボリューム)は、標準状態(1気圧、20℃)において、飲料全体の体積に対して溶けている炭酸ガスの体積の割合を表したものである。
炭酸ガスの圧入方法は、公知の方法を用いることができる。
【0042】
なお、本実施形態の飲料が炭酸ガスを含む場合、飲料のpH、クエン酸酸度、ブリックス等の諸物性は、炭酸ガスをガス抜きした状態の物性を表す。
【0043】
[飲料の種類]
本実施形態の飲料は、濃縮飲料であってもよく、希釈されずにそのまま飲用される飲料であってもよい。長期保存を可能とし、嗜好性や目的等に応じて適宜濃度調整できる点から、水等で希釈してから飲用される濃縮飲料であることが好ましい。濃縮倍率としては、たとえば、2~50倍であることが好ましく、3~20倍であることがより好ましい。また、通常、濃縮飲料である場合、飲料に含まれる酸やミネラル分等に乳成分等が凝集しやすく、より、沈殿が生じやすいといえる。これに対し、本実施形態の飲料は、濃縮飲料であったとしても、乳成分の凝集、沈殿を抑制できる。
【0044】
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノール等のアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0045】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料または積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。持ち運びや使い勝手の観点からプラスチック容器が好ましく、また、飲料を外観から視認できる観点からは、ペットボトルが好ましい。
【0046】
飲料の容量としては、特に限定されないが、容量としては、特に限定されないが、例えば、好ましくは100mL~2000mL、好ましくは150mL~1500mLであり、より好ましくは200mL~1000mlである。飲み切りやすい点からは、100~500mlがより好ましい。
【0047】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。加熱殺菌は、例えば、65℃で10分間と同等以上の殺菌価を有する加熱殺菌により行うことができる。加熱殺菌の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌等の方法を採用することができる。具体的には、上記のレトルト殺菌法は、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行う方法である。
【0048】
[製造方法]
本実施形態の飲料は、上記各種成分を公知の方法により、混合して得ることができる。
【0049】
<乳性飲料の沈殿発生抑止方法>
本実施形態の性飲料の沈殿発生抑止方法は、当該乳性飲料が無脂乳固形分、ナトリウムおよびマグネシウムを含むことを前提として、
前記無脂乳固形分量が3.0質量%以上、4.0質量%未満となり、前記ナトリウム含有量(Na)が100mg/100ml以上、300mg/100ml以下となり、前記マグネシウム含有量(Mg)が5mg/100ml以上、20mg/100ml以下となり、前記マグネシウム含有量(Mg)に対する前記ナトリウム含有量(Na)の割合(Na(mg/100ml)/Mg(mg/100ml))が15以上、45以下となるように調整する工程と、
前記乳性飲料のpH(20℃)が4.0以下となるように調整する工程と、
を含む。これにより、飲料の沈殿発生を効果的に抑制できる。
なお、各成分の混合方法、含有量の調製方法等は公知の方法とすることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0051】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(1)粒度分布
堀場製作所社製「LA-960」を用いてレーザー回折散乱法により、飲料中の微粒子の粒度分布を測定した。
当該乳性飲料の体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をDx50、累積90%に相当する粒径をDx90とした。また、当該乳性飲料を55℃で6日間静置保存した後の体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をDy50、累積90%に相当する粒径をDy90とした。
【0053】
(2)飲料の物性
・可溶性固形分:飲料(20℃)について糖用屈折計(ATAGO RX-5000α)を用いて測定した。
・酸度:飲料100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)をJAS規格の酸度測定法で定められた方法に基づき測定し、算出した。
・pH:飲料(20℃)について、pHメータ(HM-30R)を用いて測定した。
【0054】
(3)評価
製造後、55℃で6日間静置保存した各容器詰め飲料について外観を目視にて観察し、以下の順に従い評価した。
・評価基準
〇:凝集がみられなかった
△:やや凝集がみられた
×:凝集がみられた
【0055】
(4)実施例および比較例
[実験1]ナトリウムとマグネシウムの組み合わせによる沈殿発生への影響の検証
以下の表1に示す含有量となるように各原料を混合して、飲料を得た。得られた飲料を容器詰めして、上記(1)~(3)の測定および官能評価を行った。可溶性固形分は50°Bx、酸度は1.3、pHは3.2であった。その他結果を表1に示す。
(原料)
・大豆多糖類:製造元不二製油株式会社
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果より、参考例はNa含有量が25.9mg/100mlであり、安定性が○であった。実施例1~3は、Na含有量が218.7mg/100mlであるが、Mg含有量が順に5.0、8.7、12.3mg/100mlであり、安定性が○であった。比較例1,2はそれぞれ、Na含有量が218.7mg/100mlであるが、Mg含有量が19.7、27.1mg/100mlであり、安定性が△、×であった。
【0058】
[実験2]SNF量の変動
以下の表2に示す含有量となるように発酵乳の含有量を調整した以外は、実験1と同様にして、飲料を得た。得られた飲料を容器詰めして、上記(1)~(3)の測定および官能評価を行った。可溶性固形分は50°Bx、酸度は1.3、pHは3.2であった。その他結果を表2に示す。
【0059】
【表2】