(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161296
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20231030BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20231030BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20231030BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20231030BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231030BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/0606
H01M8/04014
H01M8/2475
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071599
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河迫 恵莉加
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博之
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126FF10
5H127AA06
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA03
5H127BA13
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】気化した原料によって燃料電池スタックが劣化することを抑制できる燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11と、貯蔵タンク20と、改質器30と、を有する。燃料電池ユニット11は、燃料電池スタック12を有するとともに、エアクリーナ13aを通じて吸入したエアを酸化剤ガスとして燃料電池スタック12に供給する酸化剤ガス供給部を有する。貯蔵タンク20は、タンク本体21と、投入口22と、を有する。貯蔵タンク20を鉛直方向Zの上半分と下半分に区画する線を燃料電池システム10の中心線Lとする。投入口22は、中心線Lよりも上側に位置している。エアクリーナ13aは、中心線Lよりも下側に位置している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックを有するとともに、吸気口を通じて吸入したエアを酸化剤ガスとして前記燃料電池スタックに供給する酸化剤ガス供給部を有する燃料電池ユニットと、
前記燃料電池ユニットと水平方向に並んで配置され、燃料ガスの原料を液体として貯蔵するタンク本体を有するとともに、前記原料を前記タンク本体の内部に投入するための投入口を有する貯蔵タンクと、
前記貯蔵タンクから供給された前記原料を改質して生成された改質物質を前記燃料ガスとして前記燃料電池スタックへ供給する改質器と、を有する燃料電池システムにおいて、
前記貯蔵タンクを鉛直方向の上半分と下半分に区画する線を前記燃料電池システムの中心線とすると、
前記投入口は、前記中心線よりも上側に位置し、
前記吸気口は、前記中心線よりも下側に位置していることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
吸気口を通じて吸入したエアを酸化剤ガスとして燃料電池スタックに供給する酸化剤ガス供給部を有し、外気と熱交換媒体との間で熱交換する熱交換器を有するとともに、前記熱交換器に向けて送風するファンを有し、前記ファンによる送風によって前記熱交換媒体を冷却して、前記燃料電池スタックを冷却する燃料電池ユニットと、
前記燃料電池ユニットと水平方向に並んで配置され、燃料ガスの原料を液体として貯蔵するタンク本体を有するとともに、前記原料を前記タンク本体の内部に投入するための投入口を有する貯蔵タンクと、
前記貯蔵タンクから供給された前記原料を改質して生成された改質物質を前記燃料ガスとして前記燃料電池スタックへ供給する改質器と、を有する燃料電池システムにおいて、
前記ファンが発生させるエアの流れ方向は、前記燃料電池ユニットの内部から外へ向かう方向であり、前記エアの流れ方向において、前記投入口は、前記ファンよりも下流側に位置していることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池ユニットと前記貯蔵タンクとは前記水平方向に隣り合って配置され、前記投入口と前記吸気口とは、前記水平方向において、前記燃料電池ユニット及び前記貯蔵タンクを挟んで互いに反対側に位置している請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記貯蔵タンク、前記燃料電池ユニット及び前記改質器は収容体に収容され、鉛直方向において、前記改質器は、鉛直方向における前記燃料電池ユニットよりも上側に位置するとともに、前記吸気口は、鉛直方向における前記改質器よりも下側に位置している請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電装置としての燃料電池スタックは、燃料ガスと酸化剤ガスの反応によって電気エネルギーを発生させる。燃料電池スタックを発電装置として使用する場合には、燃料電池スタックの他に、燃料ガスの原料を液体として貯蔵する貯蔵タンクと、貯蔵タンクに貯蔵された原料を改質して生成された改質物質を発生させる改質器と、が必要である。これら燃料電池スタックと、貯蔵タンクと、改質器とのレイアウトの一例として、例えば特許文献1には、燃料電池スタック及び改質器の上方にタンクを配置したレイアウトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、液体の原料をタンクに投入するとき、原料の気化した気化物質が発生する。この気化物質は、燃料電池スタックを劣化させる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するための燃料電池システムは、燃料電池スタックを有するとともに、吸気口を通じて吸入したエアを酸化剤ガスとして前記燃料電池スタックに供給する酸化剤ガス供給部を有する燃料電池ユニットと、前記燃料電池ユニットと水平方向に並んで配置され、燃料ガスの原料を液体として貯蔵するタンク本体を有するとともに、前記原料を前記タンク本体の内部に投入するための投入口を有する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから供給された前記原料を改質して生成された改質物質を前記燃料ガスとして前記燃料電池スタックへ供給する改質器と、を有する燃料電池システムにおいて、前記貯蔵タンクを鉛直方向の上半分と下半分に区画する線を前記燃料電池システムの中心線とすると、前記投入口は、前記中心線よりも上側に位置し、前記吸気口は、前記中心線よりも下側に位置していることを要旨とする。
【0006】
これによれば、投入口を通じて液体の原料をタンク本体の内部に投入する際、液体の原料の一部が気化して気化物質が発生するとともに、その気化物質は、投入口の周囲に残留しやすい。しかし、吸気口は、投入口より下側に位置する。このため、吸気口の周囲に残留する気化物質の量は、投入口の周囲に残留する気化物質の量より少なくなる。
【0007】
燃料電池システムが駆動されて、酸化剤ガス供給部が駆動されたとき、エアは、吸気口を通じて酸化剤ガス供給部に吸入されるとともに、燃料電池スタックに酸化剤ガスとして供給される。このとき、吸気口の周囲に残留する気化物質の量は、投入口の周囲に残留する気化物質の量より少ない。その結果、吸気口を通じて酸化剤ガス供給部に吸入される気化物質の量を抑えることができるため、燃料電池スタックの内部に吸入される気化物質の量を抑えることができる。これにより、気化物質による燃料電池スタックの劣化が抑制される。
【0008】
上記問題点を解決するための燃料電池システムは、吸気口を通じて吸入したエアを酸化剤ガスとして燃料電池スタックに供給する酸化剤ガス供給部を有し、外気と熱交換媒体との間で熱交換する熱交換器を有するとともに、前記熱交換器に向けて送風するファンを有し、前記ファンによる送風によって前記熱交換媒体を冷却して、前記燃料電池スタックを冷却する燃料電池ユニットと、前記燃料電池ユニットと水平方向に並んで配置され、燃料ガスの原料を液体として貯蔵するタンク本体を有するとともに、前記原料を前記タンク本体の内部に投入するための投入口を有する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから供給された前記原料を改質して生成された改質物質を前記燃料ガスとして前記燃料電池スタックへ供給する改質器と、を有する燃料電池システムにおいて、前記ファンが発生させるエアの流れ方向は、前記燃料電池ユニットの内部から外へ向かう方向であり、前記エアの流れ方向において、前記投入口は、前記ファンよりも下流側に位置していることを要旨とする。
【0009】
これによれば、投入口を通じて液体の原料をタンク本体の内部に投入する際、液体の原料の一部が気化して気化物質が発生するとともに、その気化物質は、投入口の周囲に残留しやすい。
【0010】
燃料電池システムが駆動されると、燃料電池スタックの冷却を目的としてファンが駆動される。すると、ファンによって、熱交換器に向けて送風されるとともに、燃料電池ユニットの内部から外へ向かう方向へのエアの流れが発生する。このとき、投入口は、エアの流れ方向においてファンよりも下流側に位置しているため、投入口の周囲に残留している気化物質は、ファンよりも下流側に吹き飛ばされる。その結果、燃料電池システムの周囲に残留している気化物質の量を抑えることができる。よって、吸気口を通じて酸化剤ガス供給部に吸入される気化物質の量を抑えることができるため、燃料電池スタックの内部に吸入される気化物質の量を抑えることができる。これにより、気化物質による燃料電池スタックの劣化が抑制される。
【0011】
燃料電池システムについて、前記燃料電池ユニットと前記貯蔵タンクとは前記水平方向に隣り合って配置され、前記投入口と前記吸気口とは、前記水平方向において、前記燃料電池ユニット及び前記貯蔵タンクを挟んで互いに反対側に位置していてもよい。
【0012】
これによれば、吸気口と投入口との水平方向への離間距離を大きくしやすくなる。このため、吸気口を通じて酸化剤ガス供給部及び燃料電池スタックに吸入される気化物質の量をより一層抑えることができる。
【0013】
燃料電池システムについて、前記貯蔵タンク、前記燃料電池ユニット及び前記改質器は収容体に収容され、鉛直方向において、前記改質器は、鉛直方向における前記燃料電池ユニットよりも上側に位置するとともに、前記吸気口は、鉛直方向における前記改質器よりも下側に位置していてもよい。
【0014】
これによれば、改質器は、鉛直方向において投入口と吸気口との間に介在する物体的な遮蔽物となる。このため、改質器は、気化物質を吸気口の周囲に及び難くする。その結果として、吸気口から酸化剤ガス供給部を介して燃料電池スタックに吸入される気化物質の量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、気化した原料によって燃料電池スタックが劣化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態の燃料電池システムを模式的に示す斜視図である。
【
図2】燃料電池ユニットを模式的に示す部分破断斜視図である。
【
図3】燃料電池システムを模式的に示す斜視図である。
【
図5】収容体の前面を開口した状態での燃料電池システムを示す正面図である。
【
図6】第2の実施形態の燃料電池システムを模式的に示す斜視図である。
【
図7】第2の実施形態の燃料電池システムを模式的に示す部分破断平面図である。
【
図8】別例の燃料電池システムを模式的に示す部分破断平面図である。
【
図9】その他の別例の燃料電池システムを模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、燃料電池システムを具体化した第1の実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。
【0018】
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11と、貯蔵タンク20と、改質器30と、を有する。燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11、貯蔵タンク20、及び改質器30を収容する収容体40を有していてもよい。燃料電池システム10は、定置型の非常用電源である。
【0019】
<燃料電池ユニット>
図2に示すように、燃料電池ユニット11は、燃料電池スタック12と、酸化剤ガス供給部13と、熱交換器14と、ファン15と、を有する。燃料電池ユニット11は、筐体16を有していてもよい。
【0020】
<筐体>
筐体16は、底板16aと、天板16bと、底板16aの周縁と天板16bの周縁とを繋ぐ筒状の周壁16cと、を有する。燃料電池システム10が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。以下の説明では、Z軸と平行な方向を鉛直方向Zともいい、X軸と平行な方向を水平方向Xともいう。また、Y軸と平行な方向を奥行方向Yともいう。したがって、奥行方向Yは、水平方向X及び鉛直方向Zの両方に直交する方向である。
【0021】
筐体16において、底板16aと天板16bとは鉛直方向Zに対向する。周壁16cは、水平方向Xに対向する第1側壁16d及び第2側壁16eと、奥行方向Yに対向する第3側壁16f及び第4側壁16gと、を有する。第3側壁16fの外面は、奥行方向Yの前面であり、第4側壁16gの外面は、奥行方向Yの後面である。筐体16の第3側壁16fには、複数の通気口16hが配置されている。複数の通気口16hの各々は、第3側壁16fを板厚方向に貫通する。したがって、通気口16hは、燃料電池ユニット11の前面に開口する。筐体16は、燃料電池スタック12、酸化剤ガス供給部13、熱交換器14、及びファン15を収容している。
【0022】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック12は、複数の燃料電池セルをスタック化したものである。燃料電池セルは、固体分子型燃料電池である。燃料電池スタック12は、燃料ガスである水素ガス、及び酸化剤ガスが供給されることによって発電する。酸化剤ガスは、空気中の酸素である。
【0023】
<酸化剤ガス供給部>
酸化剤ガス供給部13は、エアコンプレッサである。酸化剤ガス供給部13は、支持部材17に支持されている。支持部材17は、例えば、第1側壁16dに取り付けられている。なお、燃料電池スタック12は、支持部材17の下方に位置している。酸化剤ガス供給部13は、エアを吸入して圧縮するとともに、圧縮したエアを燃料電池スタック12に供給する。酸化剤ガス供給部13は、エアクリーナ13aを介してエアを吸入する。エアクリーナ13aは、酸化剤ガス供給部13の吸気口である。したがって、酸化剤ガス供給部13は、エアクリーナ13aを通じて吸入したエアを酸化剤ガスとして燃料電池スタック12に供給すると言える。酸化剤ガス供給部13のエアクリーナ13aは、第3側壁16fに対向している。
【0024】
<熱交換器及びファン>
熱交換器14は、外気と熱交換媒体との間で熱交換を行う。熱交換器14は、筐体16の第4側壁16gに配置されている。熱交換器14は、熱交換媒体を燃料電池スタック12との間で循環させる図示しない循環流路を有する。熱交換媒体の一例は冷却水であるが、その他にもLLC等であってもよい。循環流路は、往路と、復路と、ポンプと、を有する。往路は、熱交換器14から燃料電池スタック12に向けて熱交換媒体を流すための流路である。復路は、燃料電池スタック12から熱交換器14に向けて熱交換媒体を流すための流路である。ポンプは、循環流路で熱交換媒体を循環させる。
【0025】
循環流路を循環しつつ往路を通って燃料電池スタック12内に流れ込んだ熱交換媒体は、燃料電池スタック12で発生した熱を吸収して燃料電池スタック12を冷却する。復路を通って熱交換器14内に流れ込んだ熱交換媒体は、外気と熱交換されて冷却される。
【0026】
ファン15は、奥行方向Yにおいて熱交換器14よりも燃料電池スタック12側に位置している。ファン15は、熱交換器14に向けて送風する。熱交換器14及びファン15と、通気口16hとは奥行方向Yに並んでいる。
【0027】
燃料電池スタック12の発電時、ファン15が駆動されることにより、筐体16の外部から通気口16hを介して筐体16の内部にエアが吸入される。筐体16の内部には、通気口16hからファン15に向かうエアの流れが発生する。ファン15が発生させるエアの流れ方向Fは、第3側壁16fから第4側壁16gに向かう方向である。ファン15が発生させるエアの流れ方向Fは、燃料電池ユニット11の内部から外へ向かう方向である。具体的には、ファン15が発生させるエアの流れ方向Fは、通気口16hから熱交換器14に向かう方向である。そして、熱交換器14内に流れ込んだ熱交換媒体は、熱交換器14にてファン15による送風によって外気と強制的に熱交換されて冷却される。したがって、ファン15による送風によって熱交換媒体が冷却されると、冷却された熱交換媒体によって燃料電池スタック12が冷却される。
【0028】
<貯蔵タンク>
図3に示すように、貯蔵タンク20は、水平方向Xに燃料電池ユニット11と並んでいる。貯蔵タンク20は、タンク本体21と、投入口22と、を有する。
【0029】
タンク本体21は、燃料ガスの原料を液体として貯蔵する。原料の一例は、メタノールである。メタノールは、有機溶媒である。メタノールは揮発しやすい。また、メタノールは、改質温度が低いとともに、エネルギー密度が高い。さらに、メタノールは常温で液体である。タンク本体21は、メタノールによって溶出しない金属製であるのが好ましいが、メタノールによって溶出しない樹脂製であってもよい。
【0030】
タンク本体21の鉛直方向Zへの寸法は、燃料電池ユニット11の鉛直方向Zへの寸法より大きい。タンク本体21は、第1側面21a及び第2側面21bを有する。第1側面21aは、タンク本体21の水平方向Xの一端に位置するとともに、第2側面21bは、水平方向Xの他端に位置する。タンク本体21は、第3側面21c及び第4側面21dを有する。第3側面21cは、タンク本体21の奥行方向Yの一端に位置するとともに、第4側面21dは、奥行方向Yの他端に位置する。第3側面21cは、タンク本体21の前面であり、第4側面21dは、タンク本体21の後面である。タンク本体21は、上端面21eを有する。上端面21eは、筐体16の天板16b、ひいてはエアクリーナ13aよりも上方に位置している。
【0031】
投入口22は、液体のメタノールをタンク本体21の内部に投入するために設けられている。投入口22は、タンク本体21の上端面21eに設けられている。このため、投入口22は、エアクリーナ13aよりも上方に位置している。投入口22は、上端面21eにおける水平方向Xの中間よりも第1側面21a寄りに位置している。詳細には、投入口22は、上端面21eにおける第1側面21aに沿っている。また、投入口22は、上端面21eにおける奥行方向Yの中間に位置している。投入口22は閉塞部材23によって閉塞されている。
【0032】
<改質器>
改質器30は、水蒸気改質反応、部分酸化反応又は水蒸気改質反応と部分酸化反応を組み合わせることによってメタノールを改質して、改質物質としての水素ガスを発生させる。水蒸気改質反応によって水素ガスを発生させる場合、燃料電池システム10は、水を貯蔵するタンクと、反応を促進させるための熱源を有する。部分酸化反応は、発熱反応であるため、改質が自然に進行する。本実施形態では、改質器30は、部分酸化反応によってメタノールを改質する。改質器30は、貯蔵タンク20から供給されたメタノールを改質するとともに、改質によって生成された水素ガスを、燃料ガスとして燃料電池スタック12へ供給する。
【0033】
<燃料電池スタックと酸化剤ガス供給部と改質器との関係>
図4に示すように、酸化剤ガス供給部13には、エアクリーナ13aが接続されている。酸化剤ガス供給部13は、エアクリーナ13aを通じてエアを吸入する。酸化剤ガス供給部13は、酸化剤ガス供給配管31によって燃料電池スタック12と接続されている。酸化剤ガス供給部13によって圧縮されたエアは、酸化剤ガス供給配管31を通じて燃料電池スタック12の図示しないカソードに供給される。改質器30は、接続配管32によって貯蔵タンク20と接続されている。貯蔵タンク20に貯蔵されたメタノールは、接続配管32を通じて改質器30に供給される。改質器30は、燃料ガス供給配管33によって、燃料電池スタック12と接続されている。改質器30で発生した水素ガスは、燃料ガス供給配管33を通じて、燃料電池スタック12の図示しないカソードに供給される。燃料電池スタック12は、水素ガスとエアとの反応によって発電する。
【0034】
<収容体>
図1及び
図5に示すように、収容体40は、燃料電池ユニット11、貯蔵タンク20、及び改質器30を収容する。収容体40は、奥行方向Yの前面に開口する箱状の収容体本体41と、収容体本体41の前面を開閉する扉42と、を有する。収容体本体41の内部には、第1仕切壁51と、第2仕切壁52とが配置されている。第1仕切壁51は、収容体本体41の鉛直方向Zの全体に亘って延びるとともに、水平方向Xの中間位置に配置されている。第2仕切壁52は、第1仕切壁51によって区切られた内部空間Sの片方を鉛直方向Zに2つの空間に区切る。
【0035】
内部空間Sは、タンク収容空間S1と、ユニット収容空間S2と、改質器収容空間S3とに区切られている。タンク収容空間S1は、第1仕切壁51によって水平方向Xに区切られた2つの空間のうちの片方である。ユニット収容空間S2は、タンク収容空間S1と異なる空間であり、かつ第2仕切壁52よりも下側の空間である。改質器収容空間S3は、タンク収容空間S1と異なる空間であり、かつ第2仕切壁52よりも上側の空間である。
【0036】
タンク収容空間S1と、ユニット収容空間S2及び改質器収容空間S3とは、第1仕切壁51を挟んで水平方向Xに隣り合っている。ユニット収容空間S2と改質器収容空間S3とは、第2仕切壁52を挟んで鉛直方向Zに隣り合っている。扉42は、タンク収容空間S1、ユニット収容空間S2、及び改質器収容空間S3を開閉する。
【0037】
貯蔵タンク20は、タンク収容空間S1に収容されている。燃料電池ユニット11は、ユニット収容空間S2に収容されている。燃料電池ユニット11の通気口16hは、収容体本体41の前方に向けて開口している。改質器30は、第2仕切壁52の上面に載置されるとともに、改質器収容空間S3に収容されている。よって、貯蔵タンク20、燃料電池ユニット11、及び改質器30は収容体40に収容されている。燃料電池ユニット11と貯蔵タンク20とは、第1仕切壁51を挟んで水平方向Xに隣り合って配置されている。つまり、燃料電池ユニット11と貯蔵タンク20とは水平方向Xに並設されている。また、燃料電池ユニット11と改質器30とは、第2仕切壁52を挟んで鉛直方向Zに隣り合って配置されている。つまり、燃料電池ユニット11と改質器30とは鉛直方向Zに並設されている。そして、改質器30は、鉛直方向Zにおける燃料電池ユニット11よりも上側に位置するとともに、エアクリーナ13aは、鉛直方向Zにおける改質器30よりも下側に位置している。
【0038】
<投入口とエアクリーナとの位置関係>
貯蔵タンク20を鉛直方向Zの上半分と下半分に区画する線を燃料電池システム10の中心線Lとする。燃料電池ユニット11は、中心線Lよりも下側に位置している。さらに、燃料電池ユニット11は、酸化剤ガス供給部13のエアクリーナ13aを有する。このため、エアクリーナ13aは、中心線Lよりも下側に位置している。改質器30は、中心線Lよりも上側に位置している。
【0039】
投入口22は、タンク本体21の上端面21eに配置されている。このため、投入口22は、中心線Lよりも上側に位置している。上記したように、エアクリーナ13aは、中心線Lよりも下側に位置している。したがって、エアクリーナ13aは、投入口22よりも下側に位置している。
【0040】
投入口22は、タンク本体21の第1側面21aに沿うように上端面21eに配置されている。このため、投入口22は、上端面21eの中でも、水平方向Xにおいてエアクリーナ13aからの距離を大きくする位置に配置されている。
【0041】
[第1の実施形態の作用]
次に、燃料電池システム10の作用を説明する。
投入口22から液体のメタノールをタンク本体21に投入する際、メタノールの一部が気化する。より具体的には、液体のメタノールは、常温で気化するため、揮発すると言える。以下、揮発したメタノールを、単に「揮発メタノール」と記載する。揮発メタノールは気化物質の一例である。揮発メタノールは、投入口22の周囲に残留する。ここで、エアクリーナ13aは、投入口22より下側に位置する。このため、エアクリーナ13aの周囲に残留する揮発メタノールの量は、投入口22の周囲に残留する揮発メタノールの量より少なくなる。
【0042】
その後、燃料電池システム10が駆動されて、酸化剤ガス供給部13が駆動されたとき、酸化剤ガス供給部13の周囲のエアは、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13に吸入されるとともに、燃料電池スタック12に酸化剤ガスとして供給される。
【0043】
このとき、エアクリーナ13aの周囲に残留する揮発メタノールの量は、投入口22の周囲に残留する揮発メタノールの量より少ない。このため、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができる。その結果、燃料電池スタック12の内部に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができる。
【0044】
[第1の実施形態の効果]
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)エアクリーナ13aは、投入口22より下側に位置する。言い換えると、投入口22は、エアクリーナ13aよりも上側に位置する。このため、エアクリーナ13a、ひいては燃料電池スタック12の周囲に残留する揮発メタノールの量は、投入口22の周囲に残留する揮発メタノールの量より少なくなる。その結果、燃料電池スタック12に対する揮発メタノールの影響を抑えることができる。
【0045】
そして、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができるため、燃料電池スタック12の内部に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができる。以上により、揮発メタノールによる燃料電池スタック12の劣化が抑制される。
【0046】
(1-2)投入口22は、第1側面21aに沿うように上端面21eに位置している。つまり、投入口22は、上端面21eの中でも、水平方向Xにおいてエアクリーナ13aからの距離を大きくする位置に位置している。よって、揮発メタノールをエアクリーナ13aの周囲にまで及び難くできる。その結果、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができる。また、燃料電池スタック12に対する揮発メタノールの影響をより一層抑えることができる。
【0047】
(1-3)投入口22は、タンク本体21の上端面21eに位置している。つまり、投入口22は、タンク本体21の外面に沿う位置の中でも、鉛直方向Zにおいてエアクリーナ13aからの距離を最も大きくする位置に位置している。よって、揮発メタノールをエアクリーナ13aの周囲にまで及び難くできる。その結果、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができる。また、燃料電池スタック12に対する揮発メタノールの影響をより一層抑えることができる。
【0048】
(1-4)鉛直方向Zにおいて、改質器30は、燃料電池ユニット11よりも上側に位置している。このため、改質器30は、投入口22とエアクリーナ13aとの間に介在する物体的な遮蔽物となる。このため、改質器30は、揮発メタノールをエアクリーナ13aの周囲に及び難くする。その結果、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができる。
【0049】
(1-5)改質器30は、第2仕切壁52の上面に載置されている。改質器30は、メタノールを改質する際、発熱する。改質器30で発生した熱は、第2仕切壁52に伝わる。このため、改質器30で発生した熱が、燃料電池ユニット11の燃料電池スタック12に伝わり難くなる。
【0050】
(1-6)改質器30と燃料電池ユニット11との間には、第2仕切壁52が介在している。第2仕切壁52は、投入口22とエアクリーナ13aとの間に介在する物体的な遮蔽物となる。このため、第2仕切壁52は、揮発メタノールをエアクリーナ13aの周囲に及び難くする。その結果、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができる。
【0051】
[第2の実施形態]
次に、燃料電池システム10を具体化した第2の実施形態を
図6~
図7にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、投入口22の位置を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0052】
図6及び
図7に示すように、タンク本体21の第4側面21dは、燃料電池ユニット11の熱交換器14よりも奥行方向Yの後ろ側に位置する。さらに、第4側面21dは、筐体16の第4側壁16gの外面よりも奥行方向Yの後ろ側に位置する。投入口22は、タンク本体21の第4側面21dに配置されている。このため、投入口22は、ファン15及び熱交換器14よりも奥行方向Yの後ろ側に位置している。
【0053】
上記したように、ファン15が発生させるエアの流れ方向Fは、通気口16hから熱交換器14に向かう方向である。また、エアの流れ方向Fは、奥行方向Yの第3側壁16fから第4側壁16gに向かう方向である。
【0054】
そして、投入口22は、第4側壁16gの外面よりも奥行方向Yの後ろ側に位置している。このため、エアの流れ方向Fにおいて、投入口22は、エアクリーナ13aよりも下流側に位置しているとともに、ファン15よりも下流側に位置している。
【0055】
[第2の実施形態の効果]
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1-4)、(1-5)、(1-6)の記載の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
【0056】
(2-1)投入口22は、エアの流れ方向Fにおいてファン15よりも下流側に位置しているため、投入口22の周囲に残留している揮発メタノールは、ファン15よりも下流側に吹き飛ばされる。このため、エアクリーナ13aの周囲に残留する揮発メタノールの量は、投入口22の周囲に残留する揮発メタノールの量より少ない。その結果、燃料電池スタック12に対する揮発メタノールの影響を抑えることができる。さらに、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができるため、燃料電池スタック12の内部に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができる。以上により、揮発メタノールによる燃料電池スタック12の劣化が抑制される。
【0057】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○
図8に示すように、投入口22とエアクリーナ13aとは、水平方向Xにおいて、燃料電池ユニット11及び貯蔵タンク20を挟んで互いに反対側に位置していてもよい。
【0058】
このように構成した場合、エアクリーナ13aと投入口22との水平方向Xへの離間距離を大きくできる。このため、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13及び燃料電池スタック12に吸入される揮発メタノールの量をより一層抑えることができる。
【0059】
○
図9に示すように、投入口22は、連通配管43によって収容体40の外部と連通していてもよい。これによれば、揮発メタノールは、収容体40の内部へ侵入し難くなる。このため、エアクリーナ13aの周囲に残留する揮発メタノールの量は、投入口22の周囲に残留する揮発メタノールの量より少なくなる。その結果、燃料電池スタック12に対する揮発メタノールの影響を抑えることができる。さらに、エアクリーナ13aを通じて酸化剤ガス供給部13に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができるため、燃料電池スタック12の内部に吸入される揮発メタノールの量を抑えることができる。以上により、揮発メタノールによる燃料電池スタック12の劣化が抑制される。
【0060】
○燃料電池ユニット11と改質器30は、鉛直方向Zに並んでいなくてもよい。例えば、貯蔵タンク20と、燃料電池ユニット11と、改質器30とは、水平方向Xに並んでいてもよい。この場合、貯蔵タンク20と改質器30との間に燃料電池ユニット11が配置されている。この場合であっても、投入口22は、中心線Lよりも上側に位置するとともに、エアクリーナ13aは、中心線Lよりも下側に位置している。又は、エアの流れ方向Fにおいて、投入口22は、エアクリーナ13aよりも下流側に位置している。
【0061】
○燃料電池ユニット11、貯蔵タンク20、及び改質器30は、収容体40に収容されていなくてもよい。
○第1の実施形態において、中心線Lよりも上側に投入口22が位置していれば、投入口22は、タンク本体21の第1側面21a、第3側面21c、及び第4側面21dのいずれに位置していてもよい。
【0062】
○第1の実施形態において、上端面21eでの投入口22の位置は、任意に変更してもよい。
○第1の実施形態において、中心線Lよりも下側にエアクリーナ13aが位置していれば、エアクリーナ13aは、筐体16内のいずれの位置に位置していてもよい。例えば、エアクリーナ13aは、第3側壁16fの近くであって、かつ第2側壁16eの近くに位置していてもよい。
【0063】
○第2の実施形態において、エアの流れ方向Fにおいて、ファン15よりも下流側に投入口22が位置していれば、第4側面21dでの投入口22の位置は任意に変更してもよいが、中心線Lより上側が好ましい。
【0064】
○第2の実施形態では、収容体40のユニット収容空間S2と改質器収容空間S3を上下方向に入れ替えてもよい。そして、改質器30を燃料電池ユニット11の下側に配置してもよい。
【0065】
○各実施形態において、エアクリーナ13aは無くてもよい。この場合、酸化剤ガス供給部13の吸気口は、エアコンプレッサの吸入ポートとなる。
○第1の実施形態の燃料電池システム10は、熱交換器14とファン15を有していなくてもよい。この場合、燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11と、貯蔵タンク20と、改質器30とを有するだけである。
【0066】
○各実施形態において、酸化剤ガス供給部13はエアを圧縮して供給するエアコンプレッサでなくてもよい。つまり、酸化剤ガス供給部13は、エアを圧縮することなく移送するだけのポンプであってもよい。
【0067】
○貯蔵タンク20に貯蔵される貯蔵物は、メタノール以外にもエタノール、ブタノール、プロパノールなどの揮発性の有機化合物でもよいし、アンモニアでもよい。貯蔵タンク20に貯蔵される貯蔵物は、大気圧で気化する液体であってもよい。
【0068】
○燃料電池システム10は、車載用でもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
・前記投入口は、連通配管によって前記収容体の外部と連通している燃料電池システム。
【符号の説明】
【0069】
L…中心線、10…燃料電池システム、11…燃料電池ユニット、12…燃料電池スタック、13a…吸気口としてのエアクリーナ、13…酸化剤ガス供給部、14…熱交換器、15…ファン、20…貯蔵タンク、21…タンク本体、22…投入口、30…改質器、40…収容体。