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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161317
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】塗装ロボットのティーチング方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20231030BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20231030BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20231030BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 J
B05B12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071631
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】593081224
【氏名又は名称】タクボエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小島 光
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
4F035
【Fターム(参考)】
3C269AB13
3C269AB33
3C269BB09
3C269EF02
3C269EF69
3C269EF76
3C269MN42
3C269MN48
3C269QB02
3C269QC01
3C269QD02
3C269QE02
3C269QE10
3C269QE15
3C269QE17
3C269SA15
3C269SA17
3C269SA33
3C707AS13
3C707JU03
3C707LS20
3C707MT01
3C707MT04
4F035AA03
4F035BA02
4F035BA22
4F035BA23
4F035BB02
4F035BB03
4F035BB06
4F035BB32
4F035BC02
(57)【要約】
【課題】実物のロボットコントローラーとティーチングペンダントを用いることなくティーチングを行うことが可能であるとともに、ティーチングの精度をより高めることができるティーチング方法を提供する。
【解決手段】ロボットコントローラーと同等の機能及びティーチングペンダントと同等の機能を有したティーチングシステム7と3Dソフト10を制御手段に備えて、塗装ロボット及びワークを表示部4に3Dで表示し、スプレーガンの軌道が入力されたときに、表示部に表示されている塗装ロボット及びワークの表示を変更し、ティーチングが終了するまで、スプレーガンの軌道の入力がおこなわれたときの塗装ロボット及びワークの表示の変更を繰り返すとともに、塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、ワークにおけるスプレーガンが狙っている個所を楕円錐状の疑似的な噴霧状態やポインタで強調表示する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御手段に備えたティーチングシステム(7)と3Dソフト(10)を用いた塗装ロボットのティーチング方法であって、
前記ティーチングシステム(7)は、塗装ロボットの作動を制御するために用いられるロボットコントローラーの機能と同等の機能及びロボットコントローラーに塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道を教示するティーチングペンダントの機能と同等の機能を有し、
前記3Dソフト(10)は、塗装ロボットとワークの位置情報を用いて、塗装ロボット及びワークを表示部に3Dで表示する機能を有し、
前記3Dソフト(10)によって塗装ロボット及びワークを表示部(4)に3Dで表示し、
前記ティーチングシステム(7)によって表示部(4)に、少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーを具備したティーチングペンダント(13)を表示し、
表示部(4)に表示された矢印キー及び確定キーの操作によって、塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道が教示されたときに、教示されたデータに基づいて、3Dソフト(10)が、表示部(4)に表示されている塗装ロボット及びワークの表示を変更し、
以後はティーチングが終了するまで、表示部(4)に表示された、少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーの操作によるスプレーガンの軌道の教示がおこなわれたときに、教示されたデータに基づいて塗装ロボット及びワークの表示を変更する、処理を繰り返すことを特徴とし、
表示部(4)に塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、ワークにおける、スプレーガンが狙っている個所を強調表示する、ことを特徴とする塗装ロボットのティーチング方法。
【請求項2】
スプレーガンのガン先からワークにおけるスプレーガンが狙っている個所に向けて、ガン先を頂点にした円錐状の疑似的な塗料の噴霧状態の表示(16)を行うことで、ワークにおけるスプレーガンが狙っている個所を強調表示することを特徴とする請求項1に記載の塗装ロボットのティーチング方法。
【請求項3】
スプレーガンのガン先から疑似的なレーザーマーカーを表示するとともに、ワークにおけるスプレーガンが狙っている個所をポインタで表示することで、ワークにおけるスプレーガンが狙っている個所を強調表示することを特徴とする請求項1に記載の塗装ロボットのティーチング方法。
【請求項4】
表示部(4)に塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、塗装ロボット及びワークの3D表示とともに、スプレーガンの軌道データ及びスプレーガンとワークとの距離を数値表示することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の塗装ロボットのティーチング方法。
【請求項5】
前記ティーチングペンダントソフト(9)によって表示部(4)に少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーを表示するに際しては、前記数値表示をしている箇所に重ねる位置で表示することを特徴とする請求項4に記載の塗装ロボットのティーチング方法。
【請求項6】
表示部(4)に塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、表示部を複数の画面に分割して、各画面に塗装ロボットとワークを自由な視点で見た表示を行うことを特徴とする請求項4に記載の塗装ロボットのティーチング方法。
【請求項7】
表示部(4)に塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、表示部を複数の画面に分割して、各画面に塗装ロボットとワークを自由な視点で見た表示を行うことを特徴とする請求項5に記載の塗装ロボットのティーチング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットのティーチング方法に係り、より詳しくは、ティーチング対象となる塗装ロボット及び被塗装物を画面に表示させ、この表示させている塗装ロボット及び被塗装物を見ながら塗装ロボットのティーチングを行うことを可能にしたことを特徴とする塗装ロボットのティーチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗装の分野においては、被塗装物(以下「ワーク」と言う。)を大量に塗装する場合において、塗装ロボットを用いて自動的に塗装を行なう方法が採用されている。そして、このような塗装ロボットを用いて自動的に塗装を行う場合には、塗装の膜厚を均一にするために、塗装ガンの噴射口とワークとの距離や角度を一定に保つ必要がある。
【0003】
そのために、このような塗装ロボットを用いた塗装では、予めワークの外形寸法等に基づいて塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道データを計算するとともに、この軌道データを塗装ロボットに記憶させておくことが必要であり、この作業を一般に「ティーチング」という。
【0004】
そして、このティーチングによって、塗装ロボットは、このティーチングされた軌道データに基づいてスプレーガンを移動することができ、これにより自動的にワークを塗装することが可能となる。従って、このような塗装ロボットを用いた塗装では、特に複数個のワークの塗装を行なう場合には、人件費等の経費を削減することができるとともに、すべてのワークに対して正確に同一の塗装を行なうことができるという利点がある。
【0005】
ここで、従来行われているティーチングについて図6を参照して説明すると、図6において31が塗装ロボット、32がワーク、33が前記塗装ロボットの作動を制御するためのロボットコントローラー、34がティーチングペンダントである。そして、ティーチングは一般的に、前記ティーチングペンダント34を用いて行われる。即ち、このティーチングペンダント34は、ロボットコントローラー33のリモコンのような物であり、前記ロボットコントローラー33と接続されている。そして、ティーチングを行う際には、塗装ロボット31の近傍において、ティーチングペンダント34を用いて塗装ロボット31を操作し、所望するスプレーガンの位置を順にロボットコントローラー33に登録し、それにより、ロボットコントローラー33にスプレーガンの軌道を記憶させる方法が一般的である。
【0006】
しかしながら、この従来の方法では、スプレーガンとワークの距離やスプレーガンのワークへの狙い目に関しては、現物のワークを近くで見ながら、経験や勘に頼っていたのが現状である。
【0007】
そしてこの方法では、スプレーガンとワークの距離は現物合わせで行い、スプレーガンの狙い目はスケールや専用冶具を用いて確認する必要がある。そのために、その結果として、専用冶具をワークに当てないように慎重に作業しなければならず、作業が煩雑になり時間がかかっていた。また、ワークとスプレーガンとの距離は目視判断によっていたので曖昧にならざるを得なかった。
【0008】
また、従来、パソコンを用いて、ティーチングしたスプレーガンの軌道データの数値をパソコンの画面上に表示することも行われていたが、ロボットコントローラーに記憶させた起動データの数値をパソコンに取り込んで画面に表示するのみでは、塗装ロボットやワークのイメージが掴めにくいため、結局、塗装ロボットの近傍でティーチングをせざるを得ず、作業が煩雑になり時間がかかってしまう問題点は解決することができなかった。
【0009】
そのために本出願人は、過去において、塗装ロボット及びワークを表示部に3Dで表示し、ティーチングペンダントによってスプレーガンの軌道がロボットコントローラーに教示されるたびごとに、教示されたデータに基づいて、表示部に表示している塗装ロボットとワークの表示を変更し、それにより、表示部に3Dで表示されている塗装ロボットとワークを見ながら軌道データの教示を行うことを可能とし、塗装ロボットの近傍で現物のワークを近くで見ながらティーチングを行うことを不要とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-92550号公報
【特許文献2】特開2013-184280号公報
【特許文献3】特開2006-315157号公報
【特許文献4】特開2005-238092号公報
【特許文献5】特開2004-114246号公報
【特許文献6】特開2000-288432号公報
【特許文献7】特開平10-264060号公報
【特許文献8】特開平10-264059号公報
【特許文献9】特開平6-31233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述のような、表示部に表示されたと塗装ロボットとワークを見ながらティーチングする方法においても、ロボットコントローラーとティーチングペンダントは実物の実機を用いるために、ロボットコントローラーとティーチングペンダントが無いところではティーチングができないという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、実物のロボットコントローラーとティーチングペンダントを用いることなくティーチングを行うことが可能なティーチング方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の塗装ロボットのティーチング方法は、
制御手段に備えたティーチングシステムと3Dソフトを用いた塗装ロボットのティーチング方法であって、
前記ティーチングシステムは、塗装ロボットの作動を制御するために用いられるロボットコントローラーの機能と同等の機能及びロボットコントローラーに塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道を教示するティーチングペンダントの機能と同等の機能を有し、
前記3Dソフトは、塗装ロボットとワークの位置情報を用いて、塗装ロボット及びワークを表示部に3Dで表示する機能を有し、
前記3Dソフトによって塗装ロボット及びワークを表示部に3Dで表示し、
前記ティーチングシステムによって表示部に、少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーを具備したティーチングペンダントを表示し、
表示部に表示されたティーチングペンダントにおける矢印キー及び確定キーの操作によって、塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道が教示されたときに、教示されたデータに基づいて、3Dソフトが、表示部に表示されている塗装ロボット及びワークの表示を変更し、
以後はティーチングが終了するまで、表示部に表示された、ティーチングペンダントにおける矢印キー及び確定キーの操作によってスプレーガンの軌道の教示がおこなわれたときに、教示されたデータに基づいて塗装ロボット及びワークの表示を変更する、処理を繰り返すことを特徴とし、
表示部に塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、ワークにおける、スプレーガンが狙っている個所を強調表示する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗装ロボットのティーチング方法では、塗装ロボットの作動を制御するために用いられるロボットコントローラーと同等の機能と、ロボットコントローラーに塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道データを教示するティーチングペンダントと同等の機能を有するティーチングシステムと、塗装ロボットとワークの位置情報を用いて塗装ロボット及びワークを表示部に3Dで表示するための3Dソフトを制御手段に組み込み、制御手段の表示部に塗装ロボットとワークを3Dで表示し、この表示を見ながらティーチングを行うこととしている。
【0015】
そのために、塗装ロボットやワークのみならず、ロボットコントローラーやティーチングペンダントを用いることなく、場所を問わずに、オフラインによって塗装ロボットのティーチングを行うことが可能である。従って、軌道データのティーチングに際して、塗装ロボットの近傍に移動する必要がないので、ティーチング作業が容易で、短時間で行うことが可能である。
【0016】
また、スプレーガンとワークの距離の現物合わせや、スケールや専用冶具を用いてスプレーガンの狙い目をスケールや専用冶具を用いて確認する必要もないために、これによっても、作業時間を短縮することが可能である。
【0017】
更に、本発明では、表示部に塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、ワークにおける、スプレーガンが狙っている個所を強調表示するために、経験や勘に頼ることなく、塗装する部位を正確に狙うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の塗装ロボットのティーチング方法の実施例を説明するためのシステム全体のブロック図である。
図2】本発明の塗装ロボットのティーチング方法の実施例における表示部への表示の方法を説明するための図である。
図3】本発明の塗装ロボットのティーチング方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の塗装ロボットのティーチング方法の実施例におけるスプレー表示を説明するための図である。
図5】本発明の塗装ロボットのティーチング方法の実施例における表示部への表示の具体例を示すイメージである。
図6】従来のティーチング方法を説明するためにブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の塗装ロボットのティーチング方法は、PC等の制御手段に備えたティーチングシステム及び3Dソフトを用いて行う塗装ロボットのティーチング方法であって、ティーチングシステムは、塗装ロボットの作動を制御するために用いられるロボットコントローラーと同等の機能と、ロボットコントローラーに塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道データを教示するティーチングペンダントと同等の機能を有するシステムとしている。
【0020】
また、3Dソフトは、塗装ロボットとワークの位置情報を用いて、塗装ロボット及びワークを表示部に3Dで表示する機能を有している。
【0021】
そして、本発明の塗装ロボットのティーチング方法では、まず、3Dソフトによって、塗装ロボット及びワークを表示部に3Dで表示する。
【0022】
また、表示部に、少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーを具備したティーチングペンダントを表示する。
【0023】
そして、表示部に表示された矢印キー及び確定キーの操作によって、塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道が教示されたときに、教示されたデータに基づいて、表示部に表示されている塗装ロボット及びワークの表示を変更する。
【0024】
そして、以後は、ティーチングが終了するまで、表示部に表示されたティーチングペンダントにおける矢印キー及び確定キーの操作によるスプレーガンの軌道の教示がおこなわれたときに教示されたデータに基づいて塗装ロボット及びワークの表示を変更する、処理を繰り返す。
【0025】
また、表示部に塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、ワークにおける、スプレーガンが狙っている個所を強調表示することとしており、協調表示する方法としては、スプレーガンのガン先から、ワークにおけるスプレーガンが狙っている個所に向けて、ガン先を頂点にした楕円錐状の疑似的な塗料の噴霧状態を表示する方法や、スプレーガンのガン先から疑似的なレーザーマーカーを表示するとともにワークにおけるスプレーガンが狙っている個所をポインタで表示する方法が考えられ、これにより、経験や勘に頼ることなく、塗装する部位を正確に狙うことを可能とし、ティーチングの精度を高めることが可能となる。
【0026】
ここで、表示部に塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、塗装ロボット及びワークの3D表示とともに、スプレーガンの軌道データ及びスプレーガンとワークとの距離を数値表示するとよく、これにより、起動データやスプレーガンとワークとの距離を正確に管理することが可能となる。
【0027】
また、ティーチングペンダントソフトによって表示部に少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーを表示するに際しては、前記数値表示をしている箇所に一部が重なる位置で表示するとよく、それにより、表示部を有効に使用することができる。
【0028】
更に、表示部に塗装ロボット及びワークを3Dで表示するに際して、表示部を複数の画面に分割して、各画面に塗装ロボットとワークを自由な視点で見た表示を行うとよく、それにより、ティーチングの状態を確実に把握することが可能となる。
【実施例0029】
本発明の塗装ロボットのティーチング方法の実施例について図面を参照して説明すると、図1は、本実施例の塗装ロボットのティーチング方法(以下単に「ティーチング方法」という。)を実施するための全体のシステムを説明するためのブロック図であり、図において1は、PC等の制御手段である。即ち、本実施例のティーチング方法は、PC等の制御手段を用いて、この制御手段にティーチングに必要な各種のソフトを組み込んで実施されることとしている。
【0030】
なお、前記制御手段1は一般的なPCと同様に、キーボード等の操作部3、モニター等の表示部4、ROM、RAM、ストレージ等の記憶手段としてのメモリ5、及び電源6を有しているとともに、PC1の全体の制御等を行うCPU等の制御部2を有している。
【0031】
次に、図において21は、本実施例のティーチング方法を実施するために前記制御手段に組み込まれる各種のソフトであり、これらの各種のソフトは、前記制御手段1のROM等に組み込まれる。そして本実施例においてこれらの各種のソフトとしては、ティーチングシステム7と、3Dソフト10が含まれ、ティーチングシステム7は、ロボットコントローラーソフト8とティーチングペンダントソフト9を具備している。
【0032】
ここで、ロボットコントローラーソフト8は、塗装ロボットの作動を制御するために用いられるロボットコントローラーと同等の機能を有するソフトとしていり、ティーチングペンダントソフト9は、ロボットコントローラーに塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道データを教示するティーチングペンダントと同等の機能を有するソフトとし、更に3Dソフト10は、表示部4に塗装ロボットとワークを3Dで表示する機能を有するソフトとしている。
【0033】
即ち、3Dソフト10は、制御手段1に記憶された、塗装ロボットに関する外形、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークの位置情報、及びスプレーガンとワークとの距離等の情報を用いて、塗装ロボットとワークの3D表示データを生成し、それらの3D表示データに基づいて、前記表示部4に、塗装ロボットとワークを3Dで表示する機能を有する。
【0034】
また、ティーチングペンダントソフト9は、表示部4に、少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーを具備したティーチングペンダントを表示し、表示された矢印キー及び確定キーを操作することによって、塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道をロボットコントローラーソフトに教示することとしている。
【0035】
即ち、表示された矢印キー及び確定キーを操作すると、スプレーガンの軌道が前記ロボットコントローラーソフト8に教示され、ロボットコントローラーソフト8はその情報を3Dソフト10に伝える。そうすると、3Dソフト10は、ロボットコントローラーソフト8からの指示に従い、スプレーガンの表示位置を新たな位置に変更し、更にそれとともに、新たな位置におけるスプレーガンとワークとの距離を計算する。また、ティーチングペンダントにおける確定キーの選択により軌道が確定したときは、その軌道データがロボットコントローラーソフトに伝えられ、その位置が制御手段1等に記憶される。
【0036】
従って、本実施例のティーチング方法では、ティーチングに基づく塗装ロボットの稼働状況を表示部4で確認することができるので、表示部4に表示された塗装ロボット及びワークを見ながら、ティーチングを行うことができる。
【0037】
なお、図において11は、表示部4において、ティーチングに従った塗料噴霧のシミュレーションを行うための塗装ソフトで、制御手段1に組み込まれる。そして、この塗装ソフトによる塗料噴霧のシミュレーションを行うことでティーチングの検証を行うことも可能にしている。
【0038】
次に、このように構成されるシステムを用いて行う本実施例のティーチング方法について図3を参照して説明すると、図3は本実施例のティーチング方法を説明するためのフローチャートである。
【0039】
そして、本実施例の塗装ロボットのティーチング方法では、S1の初期設定において、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークとの位置情報、及びスプレーガンとワークとの距離等の情報を制御手段1等に記憶する。そしてこれらの記憶は、表示部4に表示された入力画面において、マウスやキーボード等を用いて行われる。
【0040】
次に、前記S1の初期設定において、塗装ロボットに関する基本データやワークに関する基本データ、塗装ロボットとワークとの位置情報及びスプレーガンとワークとの距離等の情報が記憶されると、この記憶された各種のデータに基づいて、3Dソフト10によって、塗装ロボット及びワークの3D表示データが作成される(S2)。そして、S3において、3Dソフト10は、表示部4に、塗装ロボット及びワークの初期状態を3Dで表示する。
【0041】
また、本実施例のティーチング方法では、初期設定において、塗装ロボットやワークの基本データの入力とともに、塗料を噴霧するときの霧化圧、パターン圧、吐出量、吐出速度、及び吐出時間等が入力される。
【0042】
次に、本実施例の塗装ロボットのティーチング方法では、S4において、ティーチングペンダントソフト9により、スプレーガンの軌道のティーチングが行われる。即ち、ティーチングペンダントソフト9によって、表示部4にティーチングペンダントの画面が表示され、このティーチングペンダントの画面において、スプレーガンの軌道がティーチングされる。
【0043】
ここで、図2は、ティーチング画面を説明するための図であり、図において12は数値表示部である。そしてこの数値表示部12には、初期設定で入力した各種のデータ、即ち、塗料を噴霧するときの霧化圧、パターン圧、吐出量、吐出速度、及び吐出時間等や、スプレーガンの軌道データの数値や、ワークとスプレーガンの距離、ワークを装着するワーク治具の中心からのオフセット量などが表示される。
【0044】
次に、図において13が、スプレーガンの軌道を入力するためのティーチングペンダントの画面である。そして本実施例において前記ティーチングペンダントの画面13には、図示は省略するが、表示部4に表示されている塗装ロボットにおけるスプレーガンの位置を変更するための矢印キーが表示され、矢印キーとしては、右、左、上、下、左右の上斜め、左右の下斜めの各キー、及び右側、左側、上方側及び下方側への回転キーが備えられている。そして、表示部4における矢印キーを操作することによって、スプレーガンの軌道がティーチングされ、その情報が、ロボットコントローラーソフト8を介して3Dソフト10に伝えられる。
【0045】
なお、ティーチングペンダントの画面13には、前記矢印キーの他に、矢印キーにより変更されたスプレーガンの位置や向きを確定するための確定キーが備えられている。また、本実施例においては、前記ティーチングペンダントの画面13は、前記数値表示をしている箇所の一部に重ねるような位置で表示することとしている。
【0046】
次に、S4におけるティーチングによってスプレーガンの次の位置が選択されて、軌道データがロボットコントローラーソフト8を介して3Dソフト10に伝えられると、スプレーガンの新たな位置に基づいて、3Dソフトが、スプレーガンの表示を新たな位置に変更する。即ち、3Dソフト10は、塗装ロボット及びワーク等の3D表示データを修正等することで新たな塗装ロボット及びワーク等の3D表示データを作成し、その新たに作成した3D表示データに基づいて、S6において、前記表示部8に表示してある塗装ロボット及びワークの3D表示を修正し、前記表示部4に、塗装ロボット及びワークの新たな3D表示を行う。
【0047】
そして、操作者が、塗装ロボット及びワークの新たな3D表示を確認し、その位置で良いと判断したときに確定キーを押すことで、スプレーガンの軌道が制御手段1等に登録される。
【0048】
なお、本実施例では、表示部4に塗装ロボット及びワークの新たな3D表示を行うときに、スプレーガンの新たな位置に従い、スプレーガンとワークとの距離を計算し、数値表示部12に表示されているスプレーガンとワークとの距離の表示を変更する。この点に関しては、S1の初期設定において、スプレーガンとワークとの距離等の情報が入力されており、3Dソフトはその初期設定で入力された数値に基づいて3D表示データを作成しているために、ティーチングに従いスプレーガンの位置を変更した場合でも、スプレーガンとワークとの距離を容易に演算することが可能である。
【0049】
そして、ティーチングが終了するまで、前記ティーチングペンダントの画面13において選択された軌道データの3Dソフト10への伝達と、新たな軌道データに基づく、塗装ロボット及びワークの表示の変更と、を繰り返し、これにより、表示部4に表示している塗装ロボット及びワークを、ティーチングペンダントソフト9によるティーチングに対応させて、実際の塗装ロボット及びワークの状態と同じように、リアルタイムで動かすこととしている。
【0050】
従って、本実施例のティーチング方法では、実際の塗装ロボットやワークのみならず、実際のロボットコントローラーやティーチングペンダントを用いることなく、スプレーガンの軌道のティーチングを行うことができる。
【0051】
なお、図2において14は、塗装ロボット及びワークの3D表示を行うためのバーチャル空間である。即ち本実施例においては、前記数値表示部12と並ぶ配置でバーチャル空間14を備えており、このバーチャル空間14に、塗装ロボット及びワークの3D表示を行うこととしている。
【0052】
また、バーチャル空間14は、3画面14a、14b、14cに分割しており、それぞれの画面には、上方側から見た塗装ロボットとワークの表示、側面側から見た塗装ロボットとワークの表示、及び塗装ロボットとワークを自由な視点で見た表示等の各種の表示を行うことを可能にしている。但し、どのような表示を行うかは特に限定されず、いずれの表示を行ってもよい。
【0053】
次に、図4は、前記バーチャル空間14に表示するスプレーガン15を示す図であり、本実施例においてバーチャル空間14に表示するスプレーガン15では、ガン先からガンの前方側における、ワークにおけるスプレーガンが狙っている個所に向けて、ガン先を頂点にした円錐状の疑似的な塗料の噴霧状態の表示16を行うこととしている。そしてこれにより、スプレーガンが狙っている個所を強調表示することとしている。即ち、初期設定において、塗料の噴霧状態表示16について、X方向半径a、Y方向半径b、及び長さcを入力することとしており、バーチャル空間14にスプレーガンを表示する際に、初期設定で入力した値に従って、ガン先からガンの前方に向けて、楕円錐状の塗料の噴霧状態の表示16を行うこととし、これにより、実際の噴霧状態と同様な噴霧状態を把握可能とし、経験や勘に頼ることなく、塗装する部位を正確に狙うことを可能とし、更に、オーバースプレー時の塗料の無駄吹きを確認することも可能としている。
【0054】
なお、図において17は噴霧塗料の噴霧パターンを前方から見た状態を示している。また、噴霧状態の表示は、塗りつぶしあるいは線画のいずれでもよい。更に強調表示の方法としては、ガン先を頂点にした楕円錐状の疑似的な塗料の噴霧状態を表示する方法の他に、スプレーガンのガン先から疑似的なレーザーマーカーを表示するとともにワークにおけるスプレーガンが狙っている個所をポインタで表示する方法でもよい。
【0055】
このように、本実施例のティーチング方法では、実際の塗装ロボット、ワーク、ロボットコントローラー及びティーチングペンダントを用いることなく、ティーチングシステムを組み込んだ制御手段のみを用いてスプレーガンの軌道のティーチングを行うことができるので、塗装ロボットの近傍で現物のワークを近くで見ながら、経験や勘に頼ってティーチングペンダントを操作する方法と異なり、ティーチング作業が容易であり、短時間で行うことが可能となった。
【0056】
また、前記バーチャル空間14にスプレーガンを表示するに際しては、ガン先からワークにおけるスプレーガンが狙っている個所に向けて、ガン先を頂点にした円錐状の疑似的な塗料の噴霧状態の表示を行う方法、又はスプレーガンのガン先から疑似的なレーザーマーカーを表示するとともにワークにおけるスプレーガンが狙っている個所をポインタで表示する方法を採用することで、ワークにおけるスプレーガンが狙っている個所を強調表示することとしているために、実際の噴霧状態と同様な噴霧状態を把握することができ、経験や勘に頼ることなく、塗装する部位を正確に狙うことを可能とし、更に、オーバースプレー時の塗料の無駄吹きを確認することも可能である。なお図5は、ティーチングペンダントの画面13の操作でティーチングをおこなっている最中の表示部4を示したイメージ図である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の塗装ロボットのティーチング方法では、ティーチングシステムを組み込んだ制御手段のみを用いてスプレーガンとワークを表示部に表示しながらスプレーガンのティーチングを行うとともに、スプレーガンの表示に際しては楕円錐状の塗料の噴霧状態を表示するために、スプレーガンのティーチングの全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 制御手段
2 CPU(制御部)
3 操作部
4 表示部
5 メモリ(RAM、ROM、ストレージ等)
6 電源
7 ティーチングシステム
8 ロボットコントローラーソフト
9 ティーチングペンダントソフト
10 3Dソフト
11 塗装ソフト
12 数値表示部
13 ティーチングペンダントの画面
14 バーチャル空間
15 スプレーガン
16 噴霧状態表示
17 パターン
21 ティーチング方法を実施するための各種のソフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6