(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161336
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】通信システム、ネットワーク装置、及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 8/26 20090101AFI20231030BHJP
H04L 45/85 20220101ALI20231030BHJP
H04W 80/04 20090101ALI20231030BHJP
H04W 40/36 20090101ALI20231030BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20231030BHJP
【FI】
H04W8/26 110
H04L45/85
H04W80/04
H04W40/36
H04W88/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071672
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 優希
(72)【発明者】
【氏名】藤田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 有希
【テーマコード(参考)】
5K030
5K067
【Fターム(参考)】
5K030HA08
5K030HC01
5K030HC09
5K030HD03
5K030JA10
5K030LB07
5K067AA23
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE04
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】移動体通信事業者を切り替えても、アドレスの変更を意識せずに通信可能とする。
【解決手段】2以上の移動体通信事業者網に接続される通信システムであって、前記移動体通信事業者網の各々に対応して設けられ、ユーザ情報を管理する管理装置と、前記移動体通信事業者網に接続する端末が送受信するパケットを転送するゲートウェイ装置と、前記移動体通信事業者網と外部ネットワークの間でパケットを転送するアダプタ装置とを備え、前記アダプタ装置は、前記端末が接続する前記移動体通信事業者網が変わっても使用可能なアドレスを前記端末に付与し、前記端末は、前記アダプタ装置から付与されたアドレスを使用して、前記移動体通信事業者網と接続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の移動体通信事業者網に接続される通信システムであって、
前記移動体通信事業者網の各々に対応して設けられ、ユーザ情報を管理する管理装置と、
前記移動体通信事業者網に接続する端末が送受信するパケットを転送するゲートウェイ装置と、
前記移動体通信事業者網と外部ネットワークの間でパケットを転送するアダプタ装置とを備え、
前記アダプタ装置は、前記端末が接続する前記移動体通信事業者網が変わっても使用可能なアドレスを前記端末に付与し、
前記端末は、前記アダプタ装置から付与されたアドレスを使用して、前記移動体通信事業者網と接続することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記移動体通信事業者網の各々に対応して前記端末に記録される識別番号の各々に対応して実アドレスが付与され、1台の前記端末には一つの仮想アドレスが付与されており、
前記アダプタ装置は、前記実アドレス及び前記仮想アドレスを管理することを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の通信システムであって、
前記アダプタ装置は、
前記仮想アドレスを使用した前記端末からのパケット送信ルートを示すアクティブ情報を管理し、
前記アクティブ情報を参照して、前記外部ネットワークから入力されたパケットを前記端末に転送するルートを決定することを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の通信システムであって、
前記アダプタ装置は、前記端末からルート変更要求を受信すると、前記アクティブ情報を更新し、前記外部ネットワークから入力されたパケットを前記端末に転送するルートを変更することを特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項3に記載の通信システムであって、
前記アダプタ装置は、前記端末からのパケット送信ルートの変更を検知すると、前記アクティブ情報を更新し、前記外部ネットワークから入力されたパケットを前記端末に転送するルートを前記検知されたルートに変更することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記アダプタ装置は、
前記移動体通信事業者網に対応して前記端末に記録される識別番号に対応したアドレスを管理し、
前記端末との間で優先的に使用されるパケット送信ルートを示す優先度情報を管理し、
前記端末からルート変更要求を受信すると、前記端末のアドレス変更を前記ゲートウェイ装置に通知し、前記優先度情報を更新し、前記外部ネットワークから入力されたパケットを転送するルートを変更し、
前記ゲートウェイ装置は、前記アダプタ装置からアドレス変更の通知を受信すると、アドレス変更を前記端末に通知することを特徴とする通信システム。
【請求項7】
2以上の移動体通信事業者網と外部ネットワークの間でパケットを転送するネットワーク装置であって、
前記移動体通信事業者網の各々に対応して設けられ、ユーザ情報を管理する管理装置、及び前記移動体通信事業者網に接続する端末が送受信するパケットを転送するゲートウェイ装置と接続されており、
前記ネットワーク装置は、前記端末が接続する前記移動体通信事業者網が変わっても使用可能なアドレスを前記端末に付与することを特徴とするネットワーク装置。
【請求項8】
2以上の移動体通信事業者網に接続される通信システムにおける通信制御方法であって、
前記通信システムは、前記移動体通信事業者網の各々に対応して設けられ、ユーザ情報を管理する管理装置と、前記移動体通信事業者網に接続する端末が送受信するパケットを転送するゲートウェイ装置と、前記移動体通信事業者網と外部ネットワークの間でパケットを転送するアダプタ装置とを有し、
前記方法は、
前記アダプタ装置が、前記端末が接続する前記移動体通信事業者網が変わっても使用可能なアドレスを前記端末に付与し、
前記端末が、前記アダプタ装置から付与されたアドレスを使用して、前記移動体通信事業者網と接続することを特徴とする通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信事業市場は、回線ビジネスの自由化に伴い、ネットワーク設備を持たない仮想移動体通信事業者(MVNO)が仮想移動体通信サービスを提供している。近年、従来型のライトMVNOの上位サービスであるフルMVNOが登場している。フルMVNOは、複数の移動体通信事業者のSIMを顧客要件や状況によって使い分ける、いわゆるマルチキャリア化を実現しようとしている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特表2020-516198号公報)には、クライアントデバイスからクラウドにデータパケットを送信する方法であって、前記データパケットは通信に含まれ、前記クラウドは複数のメディアノード及び複数のゲートウェイノードで構成され、前記メディアノード及び前記ゲートウェイノードはサーバ上でホストされており、当該方法は、前記通信に含まれる第1のデータパケットを前記クライアントデバイスから第1のゲートウェイノードに送信するステップと、前記通信に含まれる第2のデータパケットを前記クライアントデバイスから第2のゲートウェイノードに送信するステップと、を含むことを特徴とする方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2015-39186号公報)には、アンカー搬送波および少なくとも1つの最初の二次搬送波を介して通信することと、前記少なくとも1つの最初の二次搬送波を変更する命令を受信することと、前記命令に応じて、前記少なくとも1つの最初の二次搬送波を不活性化すること、または少なくとも1つの後続の二次搬送波を活性化することのうちの少なくとも1つとを備える、ワイヤレス通信の方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2020-516198号公報
【特許文献2】特開2015-39186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フルMVNOがマルチキャリア化を実現するためには、移動体通信事業者間で連携した接続が必要であるが、各移動体通信事業者の設備仕様が異なり、単純な連携は困難である。
【0007】
また、通信端末から各移動体通信事業者のシステムを切り替えて通信する場合、移動体通信事業者間で連携していないため、通信セッションを再認証する必要がある。このため、通信端末では再認証の間で通信が一時的に切断される。すなわち、従来の構成では移動体通信事業者毎にPGW、PCEF等の設備を設置しているので、各事業者の設備は連携せずに独立に動作しているため、一方の事業者の設備で無線区間の通信が途切れると、通信が切断する。特に、リアルタイム通信では、遅延が増大する影響が生じる。
【0008】
さらに、マルチSIMに対応しても、アプリケーションから見た時に、各移動体通信事業者の別個の設備を経由して別の通信を行うことになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、2以上の移動体通信事業者網に接続される通信システムであって、前記移動体通信事業者網の各々に対応して設けられ、ユーザ情報を管理する管理装置と、前記移動体通信事業者網に接続する端末が送受信するパケットを転送するゲートウェイ装置と、前記移動体通信事業者網と外部ネットワークの間でパケットを転送するアダプタ装置とを備え、前記アダプタ装置は、前記端末が接続する前記移動体通信事業者網が変わっても使用可能なアドレスを前記端末に付与し、前記端末は、前記アダプタ装置から付与されたアドレスを使用して、前記移動体通信事業者網と接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、移動体通信事業者を跨いで通信ルートを切り替えても、アドレスの変更を意識せずに通信が可能となる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1のネットワークシステムの構成を示す図である。
【
図2】実施例1の端末の通信経路変更前のネットワークの状態を示す図である。
【
図3】実施例1の端末の通信経路変更後のネットワークの状態を示す図である。
【
図4】実施例1の端末に実装されるSIMを示す図である。
【
図5】実施例1のIPアダプタの構成を示す図である。
【
図6】実施例1のアダプタデータベースが有するテーブルの構成を示す図である。
【
図7】実施例1における移動体通信事業者A側の仮想IPアドレス登録処理のシーケンス図である。
【
図8】実施例1における移動体通信事業者B側の仮想IPアドレス登録処理のシーケンス図である。
【
図9】実施例1における端末からのメッセージを契機とした通信ルート変更処理のシーケンス図である。
【
図10】実施例1における端末からのメッセージを契機としない通信ルート変更処理のシーケンス図である。
【
図11】実施例2の端末に実装されるSIMを示す図である。
【
図12】実施例2のアダプタデータベースが有するテーブルの構成を示す図である。
【
図13】実施例2における移動体通信事業者A側のIPアドレス登録処理のシーケンス図である。
【
図14】実施例2における移動体通信事業者B側の仮想IPアドレス登録処理のシーケンス図である。
【
図15】実施例2における通信ルート変更処理のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1のネットワークシステム100の構成を示す図である。
【0013】
本実施例のネットワークシステム100は、移動体通信事業者Aのネットワーク200と移動体通信事業者Bのネットワーク300とを接続するネットワークシステム100であり、例えばフルMVNO事業者が設置する。
【0014】
本実施例では、移動体通信事業者Aのネットワーク200又は移動体通信事業者Bのネットワーク300に接続された端末400が、インターネット500上のアプリケーションサーバ(図示省略)と通信する。
【0015】
ネットワークシステム100は、HSS101A、101B、PGW・PCEF102A、102B、認証装置103A、103B、PCRF104A、104B、OCS105A、105B、及びIPアダプタ110を有する。HSS101A、101B、PGW102A、102B、認証装置103A、103B、PCRF104A、104B及びOCS105A、105Bは、移動体通信事業者Aのネットワーク200と移動体通信事業者Bのネットワーク300の各々に対応して、一対で設けられている。
【0016】
HSS(Home Subscriber Server)101A、101Bは、契約情報や認証情報などのユーザ情報を管理し、端末400の位置登録を契機として、それらの情報をIPアダプタ110へ通知する加入者管理装置である。PGW・PCEF(Packet data network GateWay・Policy and Charging Enforcement Function)102A、102Bは、PCRF104A、104Bから指示されたポリシーに従って、各移動体通信事業者のネットワーク200、300との間でパケットを送受信するゲートウェイ装置である。認証装置103A、103Bは、各移動体通信事業者のネットワーク200、300に接続された自社の契約者の端末400を認証する。PCRF(Policy and Charging Rule Function)104A、104Bは、ネットワークポリシー及び課金ルールを管理するポリシー管理装置である。OCS(Online Charging System)105A、105Bは、PGW・PCEF102A、102Bから通知されたパケット量に基づいて、ユーザのパケット通信量を管理し、パケット通信量をPCRF104A、104Bに通知する課金管理装置である。
【0017】
IPアダプタ110は、アダプタデータベース111及びアドレスアダプタ112を有する。アダプタデータベース111は、端末400の情報と端末400の仮想IPアドレスと端末400の通信状態を管理するデータベースであり、その詳細は
図5を参照して説明する。アドレスアダプタ112は、アダプタデータベース111に記録された情報に従って、端末400宛のパケットをPGW・PCEF102A、102B(すなわち、各移動体通信事業者のネットワーク200、300)に振り分ける。
【0018】
仮想IPアドレスは、IPアダプタ110およびアダプタデータベース111から通知された情報をもとに、PGW・PCEF102A、102Bで管理する。フルMVNOは、PGW・PCEF102A、102Bを自社設備として有するので、PGW・PCEF102A、102Bが、移動体通信事業者を跨がって使用される仮想IPアドレスを管理できる。例えば、PGW・PCEF102A、102Bは、IMSIを設定する際に、IMSIと対応付けた仮想IPアドレスを設定し、HSS101A、101Bに登録する。また、PGW・PCEF102A、102Bは、端末400を認証する際に、仮想IPアドレスを割り当ててもよい。
【0019】
移動体通信事業者Aのネットワーク200は、複数の基地局装置(eNodeB)201A、1以上のMME202A、及びSGW203Aを有する。基地局装置201Aは、端末400と無線で通信する。MME(Mobility Management Entity)202Aは、基地局装置201Aを収容し、モビリティ制御(例えば、端末400の状態管理、位置管理、ページング制御、セキュリティ情報管理)を提供する装置である。SGW(Serving GateWay)203Aは、基地局装置201AとSGW203AとPGW・PCEF102Aの間の通信経路を管理する在圏パケットゲートウェイである。
【0020】
移動体通信事業者Bのネットワーク300は、複数の基地局装置(eNodeB)301B、1以上のMME(Mobility Management Entity)302B、及びSGW(Serving GateWay)303Bを有する。各装置は、移動体通信事業者Aのネットワーク200において説明したものと同じである。
【0021】
図2は通信経路変更前のネットワークの状態を示す図であり、
図3は通信経路変更後のネットワークの状態を示す図である。
【0022】
本実施例では、端末400に実IPアドレスと仮想IPアドレスを割り当て、アプリケーションサーバから見えるアドレスは仮想IPアドレスとする。また、HSS101A、101Bからの端末400の情報を、PGW・PCEF102A、102B及びIPアダプタ110と共有してパケットを転送する。
【0023】
具体的には、IPアダプタ110が、パケットの転送ルート、当該ルートに対応するIMSI、実IPアドレス、仮想IPアドレスのテーブルを保持し、インターネット500側から受信したパケットのルートを変更する。
【0024】
PGW・PCEF102A、102Bは、仮想IPアドレスと実IPアドレスを端末400に割り当てる。端末400は、通信状況が安定している(例えば電波強度が強い)移動体通信事業者のネットワークに接続する。通信に使用するアドレスは仮想IPアドレスなので、アプリケーションサーバからは仮想IPアドレスを用いて、端末400と通信する。
【0025】
端末400は、電波強度が強い移動体通信事業者のネットワークを経由して、仮想IPアドレスにてインターネット500と通信する。端末400は、例えば、電波強度が低下した場合は、IPアダプタ110に通信ルート変更メッセージを送信する。また、IPアダプタ110は、端末400からの通信ルート変更メッセージの検知を契機として、また、仮想IPアドレスを使用した通信のルート変更(例えば、通信中の移動体通信事業者から電波強度が強い他の移動体通信事業者のネットワークを経由した通信)を契機として、仮想IPアドレスを使用した通信ルートが変更されたと判定し、インターネット500側から受信したパケットのルートを変更する。このようにして、端末400からの通信ルートが変更されても、インターネット500側から端末400への通信を途切れないようにしている。
【0026】
図4は、端末400に実装されるSIMを示す図である。
【0027】
端末400には、通信可能な移動体通信事業者に対応する数のSIMが実装される。端末400に実装されるSIM(Subscriber Identity Module)は、ICカードによる物理SIMでも、端末400のメモリに書き込まれるeSIMでもよい。SIM(a)は、移動体通信事業者A用のIMSI(a)と、移動体通信事業者Aとの通信用の実IPアドレスaと、インターネット500側と通信用の仮想IPアドレスcを記録する。SIM(b)は、移動体通信事業者B用のIMSI(b)と、移動体通信事業者Bとの通信用の実IPアドレスbと、インターネット500側と通信用の仮想IPアドレスcを記録する。SIM(a)に記録される仮想IPアドレスcと、SIM(b)に記録される仮想IPアドレスcは同じである。
【0028】
端末400は、実IPアドレスa及び仮想IPアドレスcのいずれを使用しても移動体通信事業者Aのネットワーク200で通信可能であり、実IPアドレスb及び仮想IPアドレスcのいずれを使用しても移動体通信事業者Bのネットワーク300で通信可能である。このため、通常は、端末400は、仮想IPアドレスcを使用して移動体通信事業者Aのネットワーク200及び移動体通信事業者Bのネットワーク300で通信する。
【0029】
【0030】
IPアダプタ110は、アダプタデータベース111及びアドレスアダプタ112を有する。
【0031】
アダプタデータベース111は、端末400の情報と端末400仮想IPアドレスと端末400の通信状態を管理するテーブルを有し、その詳細は
図5を参照して説明する。アダプタデータベース111は、プロセッサ、メモリ、補助記憶装置(HDD)及び通信インターフェース(NIC)を有する計算機によって構成される。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する演算装置である。プロセッサが、各種プログラムを実行することによって、IPアダプタ110が提供する機能が実現される。なお、プロセッサがプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算装置(例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア)で実行してもよい。メモリは、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。補助記憶装置(HDD)は、例えば、磁気記憶装置等の大容量かつ不揮発性の記憶装置であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時にプロセッサが使用するデータを格納する。通信インターフェースは、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
【0032】
アドレスアダプタ112は、アダプタデータベース111に記録された情報に従って、は、端末400宛のパケットをPGW・PCEF102A、102B(すなわち、各移動体通信事業者のネットワーク200、300)に振り分ける。アドレスアダプタ112は、プロセッサ、メモリ、補助記憶装置、及び通信インターフェース(NIC)を有する計算機によって構成される。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する演算装置である。プロセッサが、各種プログラムを実行することによって、IPアダプタ110が提供する機能が実現される。なお、プロセッサがプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算装置(例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア)で実行してもよい。メモリは、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。補助記憶装置は、例えば、磁気記憶装置等の大容量かつ不揮発性の記憶装置であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時にプロセッサが使用するデータを格納する。通信インターフェースは、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
【0033】
図6は、アダプタデータベース111が有するテーブルの構成を示す図である。
【0034】
図6(A)に示すように、アダプタデータベース111のテーブルは、通信ルート、IMSI、実IPアドレス、仮想IPアドレス、及び通信状況のデータを関連付けて格納する。通信ルートは、端末400が送受信する通信が通過する移動体通信事業者のネットワークの識別情報である。IMSIは、端末400に発行される加入者識別番号であり、端末400に実装されるSIMに記録される。実IPアドレスは、端末400が、各移動体通信事業者のネットワークで通信するためのアドレスである。仮想IPアドレスは、端末400が、インターネット500側と通信するために使用するアドレスである。通信状況は、各移動体通信事業者のネットワークで端末400が通信しているACTIVE状態か、通信が休止しているSTANDBY状態かを表すデータである。
【0035】
アダプタデータベース111のIMSI、実IPアドレス、及び仮想IPアドレスは、IPアダプタの構成定義として、GUI(Graphical User Interface)等のインターフェースを使用して設定する。
【0036】
アダプタデータベース111は、接続優先度の情報を含んでもよい。端末400は接続優先度が高い移動体通信事業者のネットワークに優先的に接続する。
【0037】
アダプタデータベース111は、5タプルの情報(送信元IPアドレス、送信元ポート番号、宛先IPアドレス、宛先ポート番号、プロトコル番号)を含んでもよい、通信ルートと5タプルの情報の関連付けによって、アプリ毎に通信ルートを変更できる。
【0038】
図7は、移動体通信事業者A側の仮想IPアドレス登録処理のシーケンス図である。
【0039】
まず、IPアダプタ110は、端末400用にSIMを発行するタイミングで、端末400のSIMにIMSIを付与し、移動体通信事業者A用のIMSI(a)と移動体通信事業者A用の実IPアドレスaと移動体通信事業者B用のIMSI(b)と移動体通信事業者B用の実IPアドレスbと仮想IPアドレスcを、アダプタデータベース111に仮登録する(1001)。そして、IPアダプタ110は、移動体通信事業者A用のIMSI(a)と実IPアドレスaと仮想IPアドレスcをPGW・PCEF102Aに送り、IMSI(a)と仮想IPアドレスcの登録を依頼する(1002)。
【0040】
また、端末400が移動体通信事業者Aのネットワーク200に接続を試みると(1003)、HSS101AはPGW・PCEF102Aに端末400の認証を依頼する(1004)。PGW・PCEF102Aは、端末400の認証が完了すると(1005)、IMSI(a)と実IPアドレスaと仮想IPアドレスcを、HSS101Aに送り、登録を依頼する(1006)。PGW・PCEF102Aは、認証成功を端末400に応答する(1007)。このとき、PGW・PCEF102Aは、実IPアドレスaと仮想IPアドレスcを端末400に通知してもよい。
【0041】
HSS101Aは、移動体通信事業者Aのネットワーク200の識別情報、移動体通信事業者A用のIMSI、移動体通信事業者A用の実IPアドレスa、仮想IPアドレスc、移動体通信事業者Aのネットワーク200における通信状態をIPアダプタ110に送り、登録を依頼する(1008)。そして、移動体通信事業者Aのデータがアダプタデータベース111に登録される(1009)。
【0042】
図8は、移動体通信事業者B側の仮想IPアドレス登録処理のシーケンス図である。
【0043】
まず、IPアダプタ110は、
図7のステップ1001で仮登録された移動体通信事業者B用のIMSI(b)と実IPアドレスbと仮想IPアドレスcをPGW・PCEF102Bに送り、IMSI(b)と仮想IPアドレスcの登録を依頼する(1012)。
【0044】
また、端末400が移動体通信事業者Bのネットワーク300に接続を試みると(1013)、HSS101BはPGW・PCEF102Bに端末400の認証を依頼する(1014)。PGW・PCEF102Bは、端末400の認証が完了すると(1015)、IMSI(b)と実IPアドレスbと仮想IPアドレスcを、HSS101Bに送り、登録を依頼する(1016)。PGW・PCEF102Bは、認証成功を端末400に応答する(1017)。このとき、PGW・PCEF102Bは、実IPアドレスbと仮想IPアドレスcを端末400に通知してもよい。
【0045】
HSS101Bは、移動体通信事業者Bのネットワーク300の識別情報、移動体通信事業者B用のIMSI、移動体通信事業者B用の実IPアドレスb、仮想IPアドレスc、及び移動体通信事業者Bのネットワーク300における通信状態をIPアダプタ110に送り、登録を依頼する(1018)。そして、移動体通信事業者Bのデータがアダプタデータベース111に登録される(1019)。
【0046】
図9は、端末400からのメッセージを契機とした通信ルート変更処理のシーケンス図である。
【0047】
まず、端末400が、移動体通信事業者Bのネットワーク300を介した通信中に、移動体通信事業者Bの基地局装置301Bから送信される電波強度の低下を検知すると(1101)、通信中の基地局装置301B、SGW303B及びPGW・PCEF102Bを経由して、IPアダプタ110にルート変更要求メッセージを送信する(1102)。
【0048】
IPアダプタ110は、ルート変更要求メッセージの受信確認メッセージを、PGW・PCEF102B、SGW303B及び基地局装置301Bを経由して端末400に送信する(1103)。この受信確認メッセージは、変更後のパケット転送ルートの情報を含む。また、IPアダプタ110は、ルート変更要求メッセージの受信から所定時間経過後に、端末400宛のパケット転送ルートを移動体通信事業者Bのネットワーク300から他の移動体通信事業者(例えばA社)のネットワークに変更する(1104)。この所定時間は、受信確認メッセージが端末400に届いて、端末400でパケット転送ルートの変更が完了する程度の時間にするとよい。
【0049】
端末400は、受信確認メッセージをIPアダプタ110から受信すると、受信確認メッセージに含まれている情報に従って変更後のパケット転送ルートを特定し、変更後のパケット転送ルートを構成する移動体通信事業者Aのネットワーク200に接続し、移動体通信事業者Aのネットワーク200にパケット転送ルートを変更する(1105)。
【0050】
その後、端末400は、移動体通信事業者Aのネットワーク200を経由して、通信を継続する(1106)。
【0051】
なお、端末400は、パケット転送ルートの変更後に、パケット転送ルートの変更前の移動体通信事業者Bのネットワーク300と待受状態を維持しても、切断してもよい。
【0052】
図10は、端末400からのメッセージを契機としない通信ルート変更処理のシーケンス図である。
【0053】
まず、端末400が、移動体通信事業者Bのネットワーク300を介した通信中に、移動体通信事業者Bの基地局装置301Bから送信される電波強度の低下を検知すると(1111)、変更後のパケット転送ルートを構成する移動体通信事業者Aのネットワーク200に接続し、パケット転送ルートを変更して(1112)、移動体通信事業者Aのネットワーク200を経由してパケットを送信する(1113)。
【0054】
IPアダプタ110は、端末400からのパケットの到着ルートを監視しており、従来と異なるルート(例えば、移動体通信事業者Aのネットワーク200)を経由して端末400からパケットの到着を検知すると(1114)、IPアダプタ110から端末400宛のパケット転送ルートを端末400からのパケットが到着した移動体通信事業者Aのネットワーク200に変更する(1115)。
【0055】
このように、端末400及びIPアダプタ110でパケット転送ルートを変更して、ルート変更後の移動体通信事業者Aのネットワーク200を経由して双方向でパケットを転送する(1116)。
【0056】
以上に説明したように、本発明の実施例1によると、移動体通信事業者を切り替えても、IPアドレスの変更を意識せずに双方向のリアルタイム通信が可能となる。
【0057】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例2では、端末400がSIMに記録されている切替前のIPアドレスを切替後のルートでも使用してパケットを転送する。また、端末400のミドルウェアが、パケット転送ルート切り替えタイミングで、アプリケーションとのセッションを一時的に維持し通信を継続する。なお、実施例2においては、主に前述した実施例1との相違点について説明し、実施例1と同じ構成及び処理の説明は省略する。
【0058】
実施例2のネットワークシステム100は、実施例1と同様に
図1に示すように構成される。PGW・PCEF102A、102Bは、実IPアドレスを端末400に割り当てる。端末400は、通信状況が安定している(例えば電波強度が強い)移動体通信事業者のネットワークに接続する。また、インターネット500上のアプリケーションサーバから見えるアドレスは実IPアドレスであり、パケット転送ルート切替時にSIMのIPアドレスを書き換え、端末400のミドルウェアは、端末400内のIPアドレス変更中に、アプリケーションプログラムとのセッションを一定の時間だけ維持して待期することで、アプリケーションサーバと端末400との通信を継続する。
【0059】
図11は、実施例2の端末400に実装されるSIMを示す図である。
【0060】
端末400には、通信可能な移動体通信事業者に対応する数のSIMが実装される。端末400に実装されるSIMは、端末400のメモリに書き込まれるeSIMがよい。SIM(a)は、移動体通信事業者A用のIMSI(a)と、移動体通信事業者Aとの通信用の実IPアドレスaを記録する。SIM(b)は、移動体通信事業者B用のIMSI(b)と、移動体通信事業者Bとの通信用の実IPアドレスbを記録する。
【0061】
端末400は、実IPアドレスa及び実IPアドレスbのいずれかを使用して移動体通信事業者Aのネットワーク200及び移動体通信事業者Bのネットワーク300で通信可能である。
【0062】
図12は、アダプタデータベース111が有するテーブルの構成を示す図である。
【0063】
図12(A)に示すように、アダプタデータベース111のテーブルは、通信ルート、IMSI、端末固有ID、及び優先度のデータを関連付けて格納する。通信ルートは、端末400が送受信する通信が通過する移動体通信事業者のネットワークの識別情報である。IMSIは、端末400に発行される加入者識別番号であり、端末400に実装されるSIMに記録される。端末固有IDは、端末400に一意に付与される識別情報である。端末400の製造番号であるIMEI(International Mobile Equipment Identity)を使用してもよいし、MVNO事業者が独自に定めた一意の識別情報でもよい。仮想IPアドレスは、端末400が、インターネット500側と通信するために使用するアドレスである。優先度は、端末400が移動体通信事業者のネットワークに接続する優先度である。
【0064】
アダプタデータベース111のIMSIは、IPアダプタの構成定義として、GUI(Graphical User Interface)等のインターフェースを使用して設定する。
【0065】
アダプタデータベース111は、5タプルの情報(送信元IPアドレス、送信元ポート番号、宛先IPアドレス、宛先ポート番号、プロトコル番号)を含んでもよい、通信ルートと5タプルの情報の関連付けによって、アプリ毎に通信ルートを変更できる。
【0066】
図13は、実施例2における移動体通信事業者A側のIPアドレス登録処理のシーケンス図である。
【0067】
まず、IPアダプタ110は、端末400用にSIMを発行するタイミングで、移動体通信事業者A用のSIMにIMSI(a)と移動体通信事業者B用のIMSI(b)を端末400に付与し、付与されたIMSIをアダプタデータベース111に仮登録する(1201)。
【0068】
また、端末400が移動体通信事業者Aのネットワーク200に接続を試みると(1203)、HSS101AはPGW・PCEF102Aに端末400の認証を依頼する(1204)。PGW・PCEF102Aは、端末400を認証可能であれば、IPアドレスの割り当てをIPアダプタ110に依頼する(1205)。IPアダプタ110は、IPアドレス割当依頼に応じて、接続を試みた端末400のIPアドレスを決定し、決定されたIPアドレスをIMSI(a)に対応付けてアダプタデータベース111に記録する。
【0069】
IPアダプタ110は、決定したIPアドレスをPGW・PCEF102Aに送り、IPアドレスの登録を依頼する(1206)。PGW・PCEF102Aは、IPアドレスの登録が完了すると認証処理を完了し(1207)、認証成功を端末400に応答する(1208)。
【0070】
図14は、実施例2における移動体通信事業者B側の仮想IPアドレス登録処理のシーケンス図である。
【0071】
図13のステップ1201で移動体通信事業者A用のIMSI(a)と移動体通信事業者B用のIMSI(b)が登録された後、端末400が移動体通信事業者Aのネットワーク200に接続を試みると(1213)、HSS101BはPGW・PCEF102Bに端末400の認証を依頼する(1214)。PGW・PCEF102Bは、端末400を認証可能であれば、IPアドレスの割り当てをIPアダプタ110に依頼する(1215)。IPアダプタ110は、IPアドレス割当依頼に応じて、接続を試みた端末400のIPアドレスを決定し、決定されたIPアドレスをIMSI(b)に対応付けてアダプタデータベース111に記録する。
【0072】
IPアダプタ110は、決定したIPアドレスをPGW・PCEF102Bに送り、IPアドレスの登録を依頼する(1216)。PGW・PCEF102Bは、IPアドレスの登録が終了すると認証処理を完了し(1217)、認証成功を端末400に応答する(1218)。
【0073】
図15は、実施例2における通信ルート変更処理のシーケンス図である。
【0074】
まず、端末400のミドルウェアが、移動体通信事業者Bのネットワーク300を介した通信中に、移動体通信事業者Bの基地局装置301Bから送信される電波強度の低下を検知すると(1221)、端末400の通信モジュールB(移動体通信事業者Bのネットワーク300と通信する通信モジュール)を介してルート変更要求メッセージをIPアダプタ110に送信する(1222)。
【0075】
IPアダプタ110は、IPアドレス変更入替通知を移動体通信事業者A側のPGW・PCEF102A及び移動体通信事業者B側のPGW・PCEF102Bに送る(1223、1224)。PGW・PCEF102Bは、IPアドレス変更通知を端末400に送る(1225)。
【0076】
端末400のOSは、PGW・PCEF102BからIPアドレス変更通知を受信すると、実装されている移動体通信事業者A用のSIMのIPアドレスaを現在通信に使用しているIPアドレスbに書き換える。
【0077】
端末400のミドルウェアは、SIMの書き換えによるIPアドレスの変更を検知すると(1226)、通信モジュールBとのセッションを切断し、端末400で動作しているアプリケーションソフトウェアとの間でセッションを継続する(1227)。
【0078】
移動体通信事業者A側のPGW・PCEF102Aは、IPアドレス変更通知を端末400に送る(1228)。
【0079】
端末400のミドルウェアは、IPアドレスの変更を検知すると(1229)、移動体通信事業者Aのネットワークと通信する通信モジュールAとのセッションを確立し、端末400で動作しているアプリケーションソフトウェアとの間でセッションを継続する。
【0080】
その後、端末400は、IPアドレスbを使って移動体通信事業者Aのネットワーク200を経由して、通信を継続する(1230)。
【0081】
以上に説明したように、本発明の実施例2によると、仮想IPアドレスを使用せずに、移動体通信事業者を切り替えても、IPアドレスの変更を意識せずに双方向のリアルタイム通信が可能となる。
【0082】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0083】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0084】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0085】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0086】
100 ネットワークシステム
101A、101B HSS
102A、102B PGW・PCEF
103A、103B 認証装置
104A、104B PCRF
105A、105B OCS
110 IPアダプタ
111 アダプタデータベース
112 アドレスアダプタ
200 移動体通信事業者Aのネットワーク
201A、301B 基地局装置
202A、302B MME
203A、303B SGW
300 移動体通信事業者Bのネットワーク
400 端末
500 インターネット