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特開2023-161348伸縮シート構造および使い捨て吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161348
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】伸縮シート構造および使い捨て吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20231030BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20231030BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A61F13/494 111
A61F13/49 315A
A61F13/494 115
A61F13/475 111
A61F13/475 112
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071690
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】石川 敬一
(72)【発明者】
【氏名】森浦 理
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA12
3B200BA13
3B200BB11
3B200CA08
3B200CA09
3B200CA11
3B200DA02
3B200DA04
3B200EA24
(57)【要約】
【課題】整然と並ぶ襞を有するギャザーを形成しつつ適切な剛性を有する伸縮シート構造を提供する。
【解決手段】伸縮シート構造を含むギャザーシート32は、内側シート331と、外側シート332と、内側シート331と外側シート332との間に位置し、伸張方向に延びる第1弾性部材3221、第2弾性部材3222および第3弾性部材3223を備える。内側シート331と外側シート332とは伸張方向に配列された複数の線状接合単位5にて接合される。各線状接合単位5と第1ないし第3弾性部材3221~3223との交差位置における当該線状接合単位の接合幅は、互いに隣接する交差位置の間における当該線状接合単位の接合幅よりも大きい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸張力を作用させることにより伸張方向に伸張し、前記伸張力を解除した際に収縮する伸縮シート構造であって、
第1シートと、
前記第1シートに重なる第2シートと、
前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記伸張方向に延びる線状の第1弾性部材と、
前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記第1弾性部材から離間して前記伸張方向に延びる線状の第2弾性部材と、
を備え、
前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1シートと前記第2シートとが前記伸張方向に配列された複数の線状接合単位にて接合され、
各線状接合単位が、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材と交差し、
前記各線状接合単位と前記第1弾性部材との第1交差位置における前記各線状接合単位の接合幅、および、前記各線状接合単位と前記第2弾性部材との第2交差位置における前記各線状接合単位の接合幅が、前記第1交差位置と前記第2交差位置との間における前記各線状接合単位の接合幅よりも大きく、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が収縮した状態において、前記複数の線状接合単位の間において前記第1シートまたは前記第2シートが隆起していることにより、ギャザーが形成されていることを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項2】
伸張方向に伸張力を作用させることにより伸張し、前記伸張力を解除した際に収縮する伸縮シート構造であって、
第1シートと、
前記第1シートに重なる第2シートと、
前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記伸張方向に延びる線状の第1弾性部材と、
前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記第1弾性部材から離間して前記伸張方向に延びる線状の第2弾性部材と、
を備え、
前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1シートと前記第2シートとが前記伸張方向に配列された複数の線状接合単位にて接合され、
前記複数の線状接合単位のそれぞれが、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間において、前記伸張方向と交差する方向に存在し、前記伸長方向に垂直な方向に対して前記交差する方向が傾斜しており、
各線状接合単位が、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材と交差し、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が収縮した状態において、前記複数の線状接合単位の間において前記第1シートまたは前記第2シートが隆起していることにより、ギャザーが形成されていることを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項3】
請求項2に記載の伸縮シート構造であって、
前記各線状接合単位と前記第1弾性部材との第1交差位置における前記各線状接合単位の接合幅、および、前記各線状接合単位と前記第2弾性部材との第2交差位置における前記各線状接合単位の接合幅が、前記第1交差位置と前記第2交差位置との間における前記各線状接合単位の接合幅よりも大きいことを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載の伸縮シート構造であって、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間において、前記複数の線状接合単位のそれぞれが、前記伸張方向と交差する方向に連続して存在することを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項5】
請求項1または2に記載の伸縮シート構造であって、
前記各線状接合単位において、前記第1シートと前記第2シートとが、溶着にて接合されていることを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項6】
請求項1または2に記載の伸縮シート構造であって、
前記第1シートおよび前記第2シートが、折り返し線にて折り返された1枚のシートであり、
前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1弾性部材が前記折り返し線に近接しつつ前記折り返し線に平行に位置し、
前記各線状接合単位が、前記折り返し線と重ならないことを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項7】
請求項1または2に記載の伸縮シート構造であって、
前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記第2弾性部材の前記第1弾性部材とは反対側において、前記第2弾性部材から離間して前記伸張方向に延びる線状の第3弾性部材をさらに備え、
前記複数の線状接合単位のそれぞれが、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間において、前記伸張方向と交差する方向に存在し、
前記各線状接合単位が、前記第3弾性部材と交差し、
前記第1弾性部材、前記第2弾性部材および前記第3弾性部材が収縮した状態において、前記ギャザーが形成され、
前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記各線状接合単位が、直線状であることを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項8】
請求項1または2に記載の伸縮シート構造であって、
前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記第2弾性部材の前記第1弾性部材とは反対側において、前記第2弾性部材から離間して前記伸張方向に延びる線状の第3弾性部材をさらに備え、
前記複数の線状接合単位のそれぞれが、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間において、前記伸張方向と交差する方向に存在し、
前記各線状接合単位が、前記第3弾性部材と交差し、
前記第1弾性部材、前記第2弾性部材および前記第3弾性部材が収縮した状態において、前記ギャザーが形成され、
前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記各線状接合単位が、前記第2弾性部材の位置にて折れ曲がることを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項9】
請求項8に記載の伸縮シート構造であって、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間において、前記伸張方向に垂直な方向に対して前記各線状接合単位が傾斜する角度方向と、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間において、前記伸張方向に垂直な方向に対して前記各線状接合単位が傾斜する角度方向とが、逆であることを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項10】
請求項7に記載の伸縮シート構造であって、
前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1弾性部材の前記第2弾性部材とは反対側において、前記第1弾性部材の近傍にて前記第1弾性部材に沿って前記第1シートおよび前記第2シートのエッジが存在し、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間の間隔が、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間の間隔よりも広いことを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項11】
請求項8に記載の伸縮シート構造であって、
前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1弾性部材の前記第2弾性部材とは反対側において、前記第1弾性部材の近傍にて前記第1弾性部材に沿って前記第1シートおよび前記第2シートのエッジが存在し、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間の間隔が、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間の間隔よりも広いことを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項12】
請求項1または2に記載の伸縮シート構造であって、
前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸縮方向に平らに伸ばした状態において、前記各線状接合単位の前記伸張方向における存在範囲が、当該各線状接合単位に隣接する線状接合単位の前記伸張方向における存在範囲と部分的に重なることを特徴とする伸縮シート構造。
【請求項13】
着用者からの排泄物を受ける使い捨て吸収性物品であって、
請求項1または2に記載の伸縮シート構造を備えることを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【請求項14】
請求項13に記載の使い捨て吸収性物品であって、
前記ギャザーが、前記着用者の鼠径部に接することを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有する伸縮シート構造および伸縮シート構造を含む使い捨て吸収性物品に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来より、着用者からの排泄物を受ける使い捨て吸収性物品には、様々な部位に伸縮シート構造を含むギャザーが設けられる。例えば、使い捨ておむつの場合、鼠径部に接する部位、足回りに接する部位、胴回りに接する部位等にギャザーが設けられる。また、おむつの内側に配置される補助的な吸収性物品にも漏れ防止のためにギャザーが設けられる。
【0003】
このようなギャザーとして、整然と襞が配列されたギャザーが知られている。例えば、特許文献1では、ホットメルト接着剤が線状かつ一定間隔のストライプ状に塗布された不織布シート間に、ホットメルト線に交差するように伸縮弾性部材を配置することにより、ウエストフラップのギャザーを形成する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、2枚のシート材を伸縮方向およびその直交方向に間欠的に熱融着する際に、伸縮方向を向く弾性部材を溶着を利用して固定する技術が開示されている。特許文献3では、溶着を利用して、一対のシートを接合するとともに一対のシートの間に複数の弾性部材を保持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4-71922号公報
【特許文献2】特開2005-212405号公報
【特許文献3】国際公開第2018/070158号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のように弾性部材に対して垂直な方向に線状に塗布したホットメルト接着剤で弾性部材を固定する場合、弾性部材を適切に接着するために多くのホットメルト接着剤が必要となる。これにより、ギャザーが形状を保とうとする性質(以下、「剛性」という。)が高くなり、ギャザーの肌触りが不快となる。特許文献2のように2次元に間欠的に配列された同形状のドットでシートと弾性部材とを接合する場合、接合強度を維持するために伸張方向におけるドット幅を大きくする必要があり、シートの表面のうち襞として利用する面積が小さくなってしまう。特許文献3では、弾性部材を固定する位置において溶着の際に強く挟み込むようにしているが、弾性部材の固定位置においてシートの強度が弱くなる虞がある。
【0007】
一方、特許文献1ないし3では、ギャザーの襞が、ギャザーを伸張させる方向に対して垂直に形成されるため、襞が伸びる方向に対してギャザーが形状を保とうとする剛性が高くなる。その結果、例えば、鼠径部に接するギャザーの場合、ギャザーが鼠径部に強く接しすぎたり、胴回りのギャザーの場合、おむつを着用する際にギャザーが肌表面に強く引っかかる虞がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、整然と並ぶ襞を有するギャザーを形成しつつ適切な剛性を有する伸縮シート構造および当該伸縮シート構造を有する使い捨て吸収性物品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様1は、伸張力を作用させることにより伸張方向に伸張し、前記伸張力を解除した際に収縮する伸縮シート構造であって、第1シートと、前記第1シートに重なる第2シートと、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記伸張方向に延びる線状の第1弾性部材と、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記第1弾性部材から離間して前記伸張方向に延びる線状の第2弾性部材とを備え、前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1シートと前記第2シートとが前記伸張方向に配列された複数の線状接合単位にて接合され、各線状接合単位が、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材と交差し、前記各線状接合単位と前記第1弾性部材との第1交差位置における前記各線状接合単位の接合幅、および、前記各線状接合単位と前記第2弾性部材との第2交差位置における前記各線状接合単位の接合幅が、前記第1交差位置と前記第2交差位置との間における前記各線状接合単位の接合幅よりも大きく、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が収縮した状態において、前記複数の線状接合単位の間において前記第1シートまたは前記第2シートが隆起していることにより、ギャザーが形成されている。
【0010】
本発明の態様2は、伸張方向に伸張力を作用させることにより伸張し、前記伸張力を解除した際に収縮する伸縮シート構造であって、第1シートと、前記第1シートに重なる第2シートと、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記伸張方向に延びる線状の第1弾性部材と、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記第1弾性部材から離間して前記伸張方向に延びる線状の第2弾性部材とを備え、前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1シートと前記第2シートとが前記伸張方向に配列された複数の線状接合単位にて接合され、前記複数の線状接合単位のそれぞれが、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間において、前記伸張方向と交差する方向に存在し、前記伸長方向に垂直な方向に対して前記交差する方向が傾斜しており、各線状接合単位が、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材と交差し、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が収縮した状態において、前記複数の線状接合単位の間において前記第1シートまたは前記第2シートが隆起していることにより、ギャザーが形成されている。
【0011】
本発明の態様3は、態様2の伸縮シート構造であって、前記各線状接合単位と前記第1弾性部材との第1交差位置における前記各線状接合単位の接合幅、および、前記各線状接合単位と前記第2弾性部材との第2交差位置における前記各線状接合単位の接合幅が、前記第1交差位置と前記第2交差位置との間における前記各線状接合単位の接合幅よりも大きい。
【0012】
本発明の態様4は、態様1または態様2(態様1ないし3のいずれか1つであってもよい。)の伸縮シート構造であって、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間において、前記複数の線状接合単位のそれぞれが、前記伸張方向と交差する方向に連続して存在する。
【0013】
本発明の態様5は、態様1または2(態様1ないし4のいずれか1つであってもよい。)の伸縮シート構造であって、前記各線状接合単位において、前記第1シートと前記第2シートとが、溶着にて接合されている。
【0014】
本発明の態様6は、態様1または2(態様1ないし5のいずれか1つであってもよい。)の伸縮シート構造であって、前記第1シートおよび前記第2シートが、折り返し線にて折り返された1枚のシートであり、前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1弾性部材が前記折り返し線に近接しつつ前記折り返し線に平行に位置し、前記各線状接合単位が、前記折り返し線と重ならない。
【0015】
本発明の態様7は、態様1または2(態様1ないし6のいずれか1つであってもよい。)の伸縮シート構造であって、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記第2弾性部材の前記第1弾性部材とは反対側において、前記第2弾性部材から離間して前記伸張方向に延びる線状の第3弾性部材をさらに備え、前記複数の線状接合単位のそれぞれが、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間において、前記伸張方向と交差する方向に存在し、前記各線状接合単位が、前記第3弾性部材と交差し、前記第1弾性部材、前記第2弾性部材および前記第3弾性部材が収縮した状態において、前記ギャザーが形成され、前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記各線状接合単位が、直線状である。
【0016】
本発明の態様8は、態様1または2(態様1ないし6のいずれか1つであってもよい。)の伸縮シート構造であって、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、前記第2弾性部材の前記第1弾性部材とは反対側において、前記第2弾性部材から離間して前記伸張方向に延びる線状の第3弾性部材をさらに備え、前記複数の線状接合単位のそれぞれが、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間において、前記伸張方向と交差する方向に存在し、前記各線状接合単位が、前記第3弾性部材と交差し、前記第1弾性部材、前記第2弾性部材および前記第3弾性部材が収縮した状態において、前記ギャザーが形成され、前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記各線状接合単位が、前記第2弾性部材の位置にて折れ曲がる。
【0017】
本発明の態様9は、態様8の伸縮シート構造であって、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間において、前記伸張方向に垂直な方向に対して前記各線状接合単位が傾斜する角度方向と、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間において、前記伸張方向に垂直な方向に対して前記各線状接合単位が傾斜する角度方向とが、逆である。
【0018】
本発明の態様10は、態様7の伸縮シート構造であって、前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1弾性部材の前記第2弾性部材とは反対側において、前記第1弾性部材の近傍にて前記第1弾性部材に沿って前記第1シートおよび前記第2シートのエッジが存在し、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間の間隔が、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間の間隔よりも広い。
【0019】
本発明の態様11は、態様8(態様8または9であってもよい。)の伸縮シート構造であって、前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸張方向に平らに伸ばした状態において、前記第1弾性部材の前記第2弾性部材とは反対側において、前記第1弾性部材の近傍にて前記第1弾性部材に沿って前記第1シートおよび前記第2シートのエッジが存在し、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間の間隔が、前記第2弾性部材と前記第3弾性部材との間の間隔よりも広い。
【0020】
本発明の態様12は、態様1または2(態様1ないし11のいずれか1つであってもよい。)の伸縮シート構造であって、前記第1シートおよび前記第2シートを前記伸縮方向に平らに伸ばした状態において、前記各線状接合単位の前記伸張方向における存在範囲が、当該各線状接合単位に隣接する線状接合単位の前記伸張方向における存在範囲と部分的に重なる。
【0021】
本発明の態様13は、着用者からの排泄物を受ける使い捨て吸収性物品であって、態様1または2(態様1ないし12のいずれか1つであってもよい。)の伸縮シート構造を備える。
【0022】
本発明の態様14は、態様13の使い捨て吸収性物品であって、前記ギャザーが、前記着用者の鼠径部に接する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、整然と並ぶ襞を有するギャザーを形成しつつ適切な剛性を有する伸縮シート構造および当該伸縮シート構造を有する使い捨て吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】吸収性物品の構成を示す平面図である。
図2】吸収性物品の自由な状態の1つを示す斜視図である。
図3】吸収性物品の断面図である。
図4】吸収性物品の断面図である。
図5】ギャザーシート近傍を拡大して示す断面図である。
図6】中央接合領域と端部接合領域との境界近傍を拡大して示す図である。
図7】ギャザーシートの一部を示す平面図である。
図8】吸収性物品の一部を示す平面図である。
図9】線状接合単位を拡大して示す図である。
図10】内側シートおよび外側シートが隆起している様子を示す斜視図である。
図11】線状接合単位の他の例を示す図である。
図12】線状接合単位のさらに他の例を示す図である。
図13】線状接合単位のさらに他の例を示す図である。
図14】線状接合単位のさらに他の例を示す図である。
図15】起立したギャザーシートの他の例を示す断面図である。
図16】起立したギャザーシートのさらに他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る使い捨て吸収性物品1(以下、単に「吸収性物品1」ともいう。)の構成を示す平面図である。図1では、吸収性物品1を平面状に広げた状態を示している。吸収性物品1は、着用者が着用する外装物品の内側(すなわち、着用者側)に配置されて着用者からの排泄物を受ける補助吸収具である。外装物品は、使い捨てのおむつ、使い捨てではないおむつ、おむつ状のカバー等である。吸収性物品1は、例えば、病院や介護施設にて介護を受ける人に使用される。図1では、吸収性物品1の着用者に接する側の面を手前にして描いている。以下の説明では、図1の上下方向を「縦方向」と呼び、縦方向に対して垂直な左右方向を「幅方向」と呼ぶ。吸収性物品1は左右対称であり、図1では縦方向を向く中心線に符号11を付す。
【0026】
図2は、吸収性物品1の自由な状態の1つを示す斜視図である。後述するように、吸収性物品1は弾性部材を含み、弾性部材の収縮により全体が湾曲した状態となる。
【0027】
図3は、吸収性物品1を図1中に示すIII-IIIの位置で縦方向に垂直な面で切断した断面図である。ただし、図2に示すように、弾性部材の収縮力により後述のギャザーシートのギャザーが起立することから、図3では、ギャザーが起立した状態を描いている。図4は、吸収性物品1を図1中に示すIV-IVの位置で縦方向に垂直な面で切断した断面図である。
【0028】
図1ないし図4に示すように、吸収性物品1は、トップシート21と、吸収性コア22と、バックシート23とを備える。吸収性コア22は、トップシート21とバックシート23との間に位置する。トップシート21は、センターシート31と、一対のギャザーシート32とを備える。一対のギャザーシート32は、センターシート31の両側部上(すなわち、幅方向の両側に離間した位置)に固定され、縦方向に延びる。各ギャザーシート32は、センターシート31の縦方向の全長に亘って存在する。換言すれば、各ギャザーシート32の縦方向の長さは吸収性物品1の縦方向の長さと実質的に同じである。一対のギャザーシート32の幅方向の内側の部位であるギャザー34は、吸収性物品1の着用時に着用者に向かって起立する。
【0029】
吸収性物品1のうち、図1中の上側の部位および下側の部位はそれぞれ、着用者の腹側および背側の肌に接する前方部および後方部である。吸収性物品1のうち、前方部と後方部との間にて前方部および後方部から連続する部位は、着用者の股間部に対向する中央部である。前方部と中央部との境界、および、後方部と中央部との境界は、明確に定められる必要はない。吸収性物品1では、前方部、中央部および後方部が縦方向に順に並ぶ。図1に示す例では、吸収性物品1は平面視において略矩形状であり、前方部、中央部および後方部の幅方向の幅(すなわち、着用時における左右方向の幅であり、以下、単に「幅」ともいう。)は実質的に同じである。換言すれば、吸収性物品1の幅は、縦方向の全長に亘って略一定である。上述の図3および図4はそれぞれ、中央部および前方部における吸収性物品1の断面図である。吸収性物品1の後方部の断面は、図4に示す前方部の断面と実質的に同様である。吸収性物品1の幅は一定である必要はなく、例えば、後方部の幅が前方部の幅よりも大きくてもよい。
【0030】
図1図3および図4に示すように、吸収性コア22は、トップシート21とバックシート23との間に挟まれる。トップシート21とバックシート23とは、吸収性コア22の周囲において接着剤を用いて接合される。図1では、吸収性コア22の輪郭を細い破線にて描く。図3および図4では、図の理解を容易にするために、吸収性物品1を厚さ方向(すなわち、図3および図4における上下方向)において実際によりも大きく描いており、また、実際には接触している、あるいは、接合されている吸収性物品1の構成要素を、厚さ方向に適宜離間して描いている。
【0031】
トップシート21のセンターシート31は、着用者からの排泄物の水分を速やかに捕捉して吸収性コア22へと移動させる。吸収性コア22は、センターシート31を透過した水分を吸収して速やかに固定する。バックシート23は、主にセンターシート31および吸収性コア22を透過してバックシート23に到達した排泄物の水分等が、吸収性物品1の外側にしみ出すことを防止する。図3に示す例では、吸収性コア22がセンターシート31およびバックシート23に接するが、吸収性コア22とセンターシート31との間に台紙(例えば、ティッシュペーパー)が配置されてもよく、吸収性コア22とバックシート23との間に台紙が配置されてもよい。吸収性コア22は、他のシートで包まれていてもよく、吸収性コア22は複数の吸収性コアが重ねられたものであってもよい。すなわち、吸収性コア22およびその周辺構造には、公知の様々な構造が採用されてよい。
【0032】
トップシート21およびバックシート23の縦方向の長さは、吸収性コア22の長さよりも長い。トップシート21およびバックシート23の幅方向の幅は、吸収性コア22の幅よりも大きい。トップシート21の両側部(すなわち、幅方向の両側の部位)は、全長に亘ってバックシート23の両側部と直接的または介在物を介して間接的に接合される。センターシート31の幅はバックシート23の幅よりも小さくてもよく、この場合、ギャザーシート32の幅方向の外側の端部がバックシート23に接合されてもよい。吸収性物品1の縦方向の端部では、トップシート21の縦方向の端部とバックシート23の縦方向の端部とが直接的または間接的に接合される。トップシート21とバックシート23とは、吸収性コア22の周囲全体に亘って接合されており、これにより、吸収性コア22の全体がトップシート21とバックシート23とにより囲まれる。トップシート21とバックシート23との接合には、例えば、ホットメルト接着剤が用いられる。トップシート21とバックシート23との接合は、ホットメルト接着剤以外の様々な方法により行われてもよい。
【0033】
センターシート31としては、例えば、表面を界面活性剤により親水処理した疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)にて形成された透液性の不織布(ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等)が利用される。なお、センターシート31として、セルロースやレーヨン、コットン等の親水性繊維により形成された不織布(例えば、スパンレース不織布)が利用されてもよい。
【0034】
バックシート23は、好ましくは、複数のシートが積層された積層構造を有する。例えば、バックシート23は、撥液性もしくは不透液性の不織布またはプラスチックフィルムに不織布を積層した構造を有する。バックシート23がプラスチックフィルムを含む場合、プラスチックフィルムは吸収性コア22に対向して配置される。プラスチックフィルムは、好ましくは、透湿性(通気性)を有する。これにより、バックシート23の耐水性を向上することができるとともに、吸収性物品1のムレを防止して着用者の快適性を向上することができる。プラスチックフィルムに積層される不織布としては、例えば、撥液性または不透液性のものが利用される。これにより、バックシート23の手触りや肌触り等の感触を良くすることができる。不織布は、例えば、疎水性繊維にて形成されたスパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布であり、必要に応じて撥液処理が施される。
【0035】
吸収性コア22は、厚さが長さおよび幅よりも小さい略シート状の部材である。吸収性コア22は、吸収性物品1の前方部、中央部および後方部に亘って設けられる。すなわち、吸収性コア22は、着用者の腹側、股下および背側に位置する。吸収性コア22の平面視における形状は、様々に変更されてよい。例えば、吸収性コア22の後方部の幅は、前方部の幅よりも大きくてもよい。あるいは、吸収性コア22の中央部の幅は、前方部および後方部の幅よりも小さくてもよい。
【0036】
吸収性コア22は、例えば、シート状の繊維集合体に高吸収性材料が分散されたものである。繊維集合体は、例えば、パルプ繊維および/または合成繊維の集合体である。高吸収性材料は、例えば、粒状のSAP(Super Absorbent Polymer)、または、繊維状のSAF(Super Absorbent Fiber)である。吸収性コア22は、高吸収性材料を含まないシート状の繊維集合体であってもよい。あるいは、吸収性コア22は、パルプ繊維等の繊維を実質的に含まず、透液性の2枚のシート部材(例えば、不織布)の間に高吸収性材料がホットメルト接着剤等により固定されたものであってもよい。
【0037】
各ギャザーシート32は、図1および図3に示すように、サイドシート321と、弾性部材3221~3223とを備える。図1および図3では、右側のギャザーシート32のみに符号321,3221~3223を付している。サイドシート321は、縦方向に長い略帯状のシート部材である。本実施の形態では、左右のギャザーシート32のそれぞれに、3つの弾性部材3221~3223が設けられる。各弾性部材3221~3223は、縦方向に伸びる線状であり、サイドシート321の幅方向の内側の領域に固定される。吸収性物品1が平らに広げられた図1に示す状態では、弾性部材3221~3223は伸張しており、弾性部材3221~3223が収縮することにより、図2に示すようにギャザーシート32が縮んで吸収性物品1は略カップ状に湾曲する。これにより、図3に示すようにギャザーシート32の幅方向の内側の部位がセンターシート31から起立する。
【0038】
図5は、図3の右側のギャザーシート32近傍を拡大して示す図である。左側のギャザーシート32も同構造である。図5に示すように、サイドシート321は1枚のシートを折り返すことにより、内側シート331と外側シート332とが重なる構造を有する。折り返し位置は、ギャザーシート32の幅方向の内側のエッジ333である。3つの弾性部材3221~3223は、内側シート331と外側シート332との間に配置される。以下、3つの弾性部材3221~3223を、幅方向の内側から外側に向かって順に、「第1弾性部材3221」、「第2弾性部材3222」、「第3弾性部材3223」とも呼ぶ。第1弾性部材3221は、ギャザーシート32のエッジ333の近傍において当該エッジに沿って配置される。第2、第3弾性部材3222,3223は、第1弾性部材3221から幅方向の外側に離間して配置される。
【0039】
サイドシート321としては、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS不織布等)が利用され、必要に応じて撥液処理が施される。弾性部材3221~3223としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が利用される。
【0040】
サイドシート321は、センターシート31上に固定される。図1図3および図4では、センターシート31とサイドシート321との間の接合領域、すなわち、センターシート31とギャザーシート32との間の接合領域に平行斜線を付す。本実施の形態では、センターシート31と一対のギャザーシート32とは、圧力を伴う溶着により接合されている。以下、この接合領域を「圧縮接合領域4」という。「圧力を伴う溶着」とは、熱を与えながら押圧する熱溶着、超音波振動を与えながら押圧する超音波溶着などであり、いわゆる、「エンボス加工」である。圧力により圧縮されることから、「圧力を伴う溶着」は「圧縮を伴う溶着」と捉えることもできる。なお、センターシート31とギャザーシート32との間の接合は、他の接合方向、例えば、ホットメルト接着剤を用いる方法が併用されてもよい。
【0041】
圧縮接合領域4は、縦方向に関して中央の範囲に位置する中央接合領域41と、縦方向に関して両端部の範囲に位置する端部接合領域42とを含む。図1に示すように、1つの吸収性物品1において、2つの中央接合領域41と、4つの端部接合領域42が存在する。各中央接合領域41は、3つの弾性部材3221~3223から幅方向の外側に離間する。各端部接合領域42は、3つの弾性部材3221~3223とは重ならない。図1に示すように、各中央接合領域41は、縦方向に細長い。各端部接合領域42は、縦方向に伸びる3つの線状領域を含む。以下、3つの線状領域を幅方向の内側から外側に向かって順に「第1線状領域421」、「第2線状領域422」および「第3線状領域423」と呼ぶ。図1では右上の部分のみに符号421~423を付す。また、第2線状領域422および第3線状領域423は、幅方向において第2および第3弾性部材3222,3223よりも外側に存在することから、これらをまとめて「外側接合領域432」と呼び、幅方向において第2および第3弾性部材3222,3223よりも内側に存在する第1線状領域421を「内側接合領域431」とも呼ぶ。
【0042】
内側接合領域431と外側接合領域432とは、幅方向に離間している。第2および第3弾性部材3222,3223の幅方向の位置は、内側接合領域431と外側接合領域432の間に位置する。最も内側の第1弾性部材3221の幅方向の位置は、内側接合領域431よりも幅方向の内側に位置する。すなわち、3つの弾性部材3221~3223が配置される幅方向の位置は、内側接合領域431および外側接合領域432のいずれの幅方向の存在範囲とも重ならない。
【0043】
吸収性物品1が製造される際には、複数の吸収性物品1に相当する連続したトップシート21と連続したバックシート23との間に複数の吸収性コア22が挟まれ、その後、この積層連続体から個々の吸収性物品1が切断されて得られるが、3つの弾性部材3221~3223と端部接合領域42とが重ならないことにより、切断後、3つの弾性部材3221~3223の端部はギャザーシート32内にて自由に縮んだ状態となる。したがって、切断後は端部接合領域42はいずれの弾性部材3221~3223からも力を受けない。その結果、圧縮接合により硬くなった端部接合領域42が弾性部材3221~3223からの力を受けて内側、すなわち、着用者側へと強く湾曲することが防止され、吸収性物品1の着用感を向上することができる。なお、図1では、端部接合領域42の縦方向の存在範囲と弾性部材3221~3223の縦方向の存在範囲とは重なるが、これらの存在範囲は重ならなくてもよい。
【0044】
第2線状領域422と第3線状領域423とは、縦方向の内側において繋がっている。外側接合領域432を第2線状領域422と第3線状領域423とに分けることにより、吸収性物品1の前方部および後方部の幅方向の外側の領域において吸収性物品1の柔軟性を高めることができる。その結果、前方部および後方部の幅方向の外側の領域がおむつ(おむつ状のカバーを含む。以下同様)の内面や着用者の体に沿い易くなり、着用感を向上することができる。また、端部接合領域42における通気性も向上する。
【0045】
図6は、図1の右上における中央接合領域41と端部接合領域42との境界近傍を拡大して示す図である。図6の多数のドット40のそれぞれは、圧縮接合領域4の1片、すなわち、1つのドット状のエンボスであり、1つの窪んだ領域である。以下、ドット40を「接合要素40」という。圧縮接合領域4は多数の接合要素40にて形成されるが、接合要素40の間隔は小さく、接合要素40の間の領域を含めて圧縮接合領域4を捉えるものとする。
【0046】
図6の上部の引出線にて示すように、端部接合領域42の幅方向の外側エッジ(の幅方向の位置443)は、中央接合領域41の幅方向の内側エッジ(の幅方向の位置442)よりも幅方向の内側に位置する。このように、端部接合領域42が中央接合領域41よりも幅方向の内側に位置することにより、吸収性物品1の前方部および後方部の幅方向の外側の領域において圧縮接合により硬くなった部位が存在せず、柔軟性が向上する。その結果、前方部および後方部の幅方向の外側の領域がおむつ内面や着用者の体に沿い易くなり、着用感を向上することができる。中央接合領域41を端部接合領域42よりも幅方向の外側に位置させることにより、ギャザー34を大きく起立させることが可能となり、排泄物の横漏れを効果的に防止することができる。また、好ましくは、端部接合領域42の幅方向の大きさ、すなわち、端部接合領域42の外側エッジの位置443と端部接合領域42の内側エッジの位置444との間の距離は、中央接合領域41の幅方向の大きさ、すなわち、中央接合領域41の外側エッジの位置441と内側エッジの位置442との間の距離よりも大きい。
【0047】
ここで、中央接合領域41と外側接合領域432とは縦方向において連続する。これにより、吸収性物品1が受ける排泄物が、中央接合領域41と外側接合領域432との間から漏れ出すことを防止することができる。既述のように、接合要素40の間隔は、排泄物が漏れない程度に狭くなっている。さらに好ましくは、圧縮接合領域4は、トップシート21の縦方向の全長に亘って存在する。これにより、圧縮接合領域4が超音波振動を利用して形成される場合、超音波振動が圧縮接合領域4を形成するロール(いわゆる、エンボスロール)の突起に連続的に作用する。その結果、超音波振動が安定してエンボスロールの突起に作用し、溶着接合の強度の変動が低減される。また、エンボスロールが有する突起の摩耗が抑制されてエンボスロールの寿命を向上することができる。圧縮接合領域4を熱溶着にて形成する場合においても、圧縮接合領域4が形成されるシートを挟む一対のロール間に生じる線圧の変動が抑制され、溶着接合の強度の変動が低減される。また、エンボスロールが有する突起の摩耗が抑制されてエンボスロールの寿命を向上することができる。
【0048】
さらに好ましくは、圧縮接合領域4の幅方向における圧縮接合の合計長さの最大値は、最小値の1.25倍以上4倍以下である。ここで、「圧縮接合の合計長さ」とは、幅方向に伸びる直線を想定した場合、この直線上において接合要素40等により実際に圧縮接合されている範囲の合計の長さ(範囲が1つの場合はその範囲の長さ)を意味する。圧縮接合の合計長さの最大値は、より好ましくは最小値の1.5倍以上3倍以下である。これにより、超音波振動が安定してエンボスロールの突起に作用し、溶着接合の強度の変動が低減される。また、エンボスロールが有する突起の摩耗が抑制されてエンボスロールの寿命を向上することができる。圧縮接合領域4を熱溶着にて形成する場合においても、圧縮接合領域4が形成されるシートを挟む一対のロール間に生じる線圧の変動が抑制され、溶着接合の強度の変動が低減される。また、エンボスロールが有する突起の摩耗が抑制されてエンボスロールの寿命を向上することができる。
【0049】
端部接合領域42の縦方向の中央側のエッジ(図6において符号445を付す線において、端部接合領域42のエッジ部分は実線で、エッジ以外の部分は破線にて示す。)は、第2および第3弾性部材3222,3223の位置で途切れる不連続な線であり、エッジは幅方向の外側に向かうに従って縦方向の中央側へと傾斜する。なお、エッジは直線には限定されず、曲線でもよい。エッジが途切れた範囲(図6にて符号446を付す。)の幅方向の外側に、追加された接合領域401が存在する。これにより、エンボスロールの回転時に超音波振動が作用するエンボスロールの突起の範囲の変動が低減され、溶着接合の強度の変動が低減される。また、エンボスロールが有する突起の摩耗が抑制されてエンボスロールの寿命を向上することができる。圧縮接合領域4を熱溶着にて形成する場合においても、一対のロール間に生じる線圧の変動が抑制され、溶着接合の強度の変動が低減される。また、エンボスロールが有する突起の摩耗が抑制されてエンボスロールの寿命を向上することができる。なお、「追加された接合領域」は、端部接合領域42において周囲の形状から本来直線的に存在すべきエッジの歪みや、孤立して存在する接合領域等として把握することができる。追加された接合領域401は、エッジが途切れた範囲446の幅方向の内側に設けられてもよい。
【0050】
ここで、便宜上、中央接合領域41の幅方向の最も外側の接合要素40の外側の位置441に対応する中央接合領域41のエッジを「外側エッジ441」、幅方向の最も内側の接合要素40の内側の位置442に対応する中央接合領域41のエッジを「内側エッジ442」と呼び、端部接合領域42の幅方向の最も外側の接合要素40の外側の位置443に対応する端部接合領域42のエッジを「外側エッジ443」、幅方向の最も内側の接合要素40の内側の位置444に対応する端部接合領域42のエッジを「内側エッジ444」と呼ぶと、端部接合領域42の外側エッジ443と内側エッジ444との間における接合要素40の存在割合は、中央接合領域41の外側エッジ441と内側エッジ442との間における接合要素40の存在割合よりも小さい。ここで、「接合要素40の存在割合」とは、幅方向に伸びる直線で圧縮接合領域4を切断した際の、圧縮接合領域4の幅に対する接合要素40の個数の割合または接合要素40の存在範囲の合計長さの割合である。なお、「接合要素40の存在割合」は、対象となる領域全体の面積に対する接合要素40の面積の割合でもよい。
【0051】
端部接合領域42における接合要素40の存在割合を中央接合領域41における接合要素40の存在割合よりも小さくすることにより、端部接合領域42において接合要素40が疎に分散され、吸収性物品1の前方部および後方部の領域、特に、前方部および後方部の幅方向の外側の領域において、吸収性物品1の柔軟性を高めることができる。その結果、前方部および後方部の領域で着用感を向上することができる。一方、中央接合領域41では、ギャザーシート32をセンターシート31に強固に固定することができ、排泄物の横漏れを防止することができる。
【0052】
図6に示すように、幅方向において最も内側に位置する第1弾性部材3221は、内側接合領域431(第1線状領域421)よりも幅方向の内側に位置する。これにより、ギャザーシート32の内側のエッジ333まで襞を形成しつつ、第1線状領域421の幅方向の内側に第1弾性部材3221による不要な力が作用することが防止される。
【0053】
ギャザーシート32の圧縮接合領域4よりも幅方向の内側の部位は、センターシート31上には固定されていない。ギャザーシート32の当該部位は、センターシート31から上方(すなわち、吸収性物品1の着用時における着用者側)に離間可能である。図5に示すように、各サイドシート321の内側のエッジ333の近傍には、第1弾性部材3221が縦方向に伸ばした伸長状態にて接合される。第2および第3弾性部材3222,3223は、第1弾性部材3221から幅方向の外側に離間して縦方向に伸ばした伸長状態にて接合される。第2弾性部材3222と第3弾性部材3223も互いに幅方向に離間する。吸収性物品1の着用時には、各ギャザーシート32において弾性部材3221~3223が収縮することにより、中央接合領域41よりも幅方向の内側の部位が、図3に示すようにセンターシート31から上方に離間し、着用者側へと起立する。また、弾性部材3221~3223の収縮により、ギャザーシート32の中央接合領域41よりも幅方向の内側の部位にギャザー34が形成される。これにより、吸収性物品1では、脚周りからの尿等の漏出が防止される。なお、サイドシート321と弾性部材3221~3223との接合は、後述のように、超音波振動や熱を利用する溶着により行われるが、接着剤により行われてもよい。
【0054】
吸収性物品1は様々に変更されてよい。例えば、バックシート23は、1枚のシートには限定されない。複数のシートが重ねられてもよいし、縦方向または幅方向に複数のシートが接合されたシートであってもよい。バックシート23は、吸収性コア22の液体が吸収性物品1の外側に漏れることを防止する機能を有すればよい。典型的には、バックシート23は、微細な孔が無数に形成されたプラスチックフィルムと、当該プラスチックフィルムの外面に接着された不織布とを有する。バックシート23という表現は、吸収性コア22の下面、すなわち、着用者とは反対側の面を覆うシートを意味する。
【0055】
トップシート21という表現は、吸収性コア22の上面、すなわち、着用者と対向する面を覆うシートを意味する。上記吸収性物品1では、トップシート21はセンターシート31とギャザーシート32とを含むが、これらのシート以外のシートをさらに含んでもよい。センターシート31は透液性を有する。ただし、センターシート31の全体が透液性を有する必要はない。センターシート31も1枚のシートには限定されず、複数のシートが重ねられてもよいし、縦方向または幅方向に複数のシートが接合されたシートであってもよい。
【0056】
ギャザーシート32は、着用者の鼠径部に向かって立ち上がるギャザー34を有するシートを意味し、ギャザーシート32の構造および形状は上記のものには限定されない。ギャザーシート32はセンターシート31の下面に圧力を伴う溶着により接合されてもよい。この場合、例えば、中央接合領域41ではギャザーシート32がセンターシート31の下面に接合され、センターシート31のエッジで上側に折り返されたギャザーシート32の部位が、端部接合領域42にてセンターシート31の上面に接合されてもよい。
【0057】
ギャザーシート32のサイドシート321は、1枚のシートを折り返したものには限定されず、複数のシートが重ねられてもよいし、縦方向または幅方向に複数のシートが接合されたシートであってもよい。ギャザーシート32は、排泄物が幅方向の外側に漏れることを防止し、少なくともギャザーシート32の内側は疎水性である。図3では、ギャザーシート32は、幅方向の外側から内側に向かって立ち上がるが、中央接合領域41で幅方向の外側に折り返されてから着用者の鼠径部に向かって立ち上がってもよい。
【0058】
ギャザーシート32の弾性部材の数は1でもよいし、2でもよいし、4以上でもよい。すなわち、ギャザーシート32には、少なくとも1つの弾性部材が設けられる。弾性部材は、好ましくは線状である。「線状」という表現には、「細い糸状」、「断面が扁平な糸状」、「断面が平らなテープ状」が含まれる。いずれの場合であっても、好ましくは、少なくとも1つの弾性部材は、端部接合領域42とは重ならない。正確には、少なくとも1つの弾性部材の幅方向の位置は、端部接合領域42の幅方向における存在範囲とは重ならない。これにより、少なくとも1つの弾性部材の収縮力が端部接合領域42に作用することが抑制される。好ましくは、1つの弾性部材は、サイドシート321の幅方向の内側のエッジ333の近傍においてエッジ333に沿って配置される。
【0059】
弾性部材の数が1の場合は、外側接合領域432は、弾性部材の幅方向の外側に存在する領域である。内側接合領域431は、弾性部材の幅方向の内側に存在する領域である。弾性部材の数が2以上の場合は、外側接合領域432は、いずれかの弾性部材の幅方向の外側に存在する領域である。内側接合領域431は、当該いずれかの弾性部材の幅方向の内側に存在する領域である。より一般的に表現すれば、外側接合領域432は、少なくとも1つの弾性部材のうち、いずれかの弾性部材(当該いずれかの弾性部材の数は1つでも複数でもよい。)の幅方向の外側に存在する領域であり、内側接合領域431は、当該いずれかの弾性部材の幅方向の内側に存在する領域である。端部接合領域42がいずれの弾性部材とも重ならないことにより、端部接合領域42が弾性部材から直接的に力を受けることはなく、圧縮接合により硬くなった端部接合領域42が内側(図1では紙面の手前側)、すなわち、着用者側へと強く湾曲することが防止され、吸収性物品1の着用感を向上することができる。換言すれば、端部接合領域42と弾性部材とが重なる場合と比べて吸収性物品1の着用時の不快感を低減することができる。
【0060】
内側接合領域431と外側接合領域432とを設け、幅方向におけるこれらの領域の間に1つ以上(好ましくは上記実施の形態のように2つ)の弾性部材を配置することにより、ギャザーシート32のギャザー34が形成される部位が起立しやすくなる。内側接合領域431と外側接合領域432との間に少なくとも1つの弾性部材を設けることにより、ギャザー34の全体形状を安定させることができる。ギャザーシート32では、ギャザー34の先端を安定して起立させるために、複数の弾性部材のうち幅方向において最も内側に位置する弾性部材が、内側接合領域431よりも幅方向の内側に位置することが好ましい。また、内側接合領域431をできるだけ内側に位置させるために、複数の弾性部材のうち幅方向において内側から2番目に位置する弾性部材は、幅方向において内側接合領域431と外側接合領域432との間に位置することが好ましい。すなわち、内側接合領域431よりも幅方向の内側に位置する弾性部材の数は1であることが好ましい。
【0061】
少なくとも1つの弾性部材はギャザーシート32において様々に設けられてよいが、いずれの場合においても、縦方向における弾性部材の存在範囲と縦方向における端部接合領域42の存在範囲とは重なっても重ならなくてもよい。
【0062】
上記実施の形態では、圧縮接合領域4は、多数のドット状の接合要素40であるが、多数の線状の接合要素やメッシュ状の接合形状であってもよい。もちろん、圧縮接合領域4の全体において、センターシート31とギャザーシート32とが隙間無く溶着されてもよい。いずれも場合も圧縮接合領域4の幅方向における圧縮接合の合計長さの最大値は、最小値の1.25倍以上4倍以下であることが好ましい。より好ましくは、上記合計長さの最大値は、最小値の1.5倍以上3倍以下である。
【0063】
好ましくは、圧縮接合領域4は前方の端部接合領域42から後方の端部接合領域42まで連続して存在する。さらに好ましくは、圧縮接合領域4は、トップシート21の縦方向の全長に亘って存在する。ここで、圧縮接合領域4が「連続して存在する」とは、排泄物が漏れない範囲で接合要素40が離間している場合を含む。また、圧縮接合領域4は必ずしも連続して存在する必要はなく、圧縮接合領域4が存在しない位置にて接着剤を用いてセンターシート31とギャザーシート32とが接合されてもよい。上記実施の形態では、端部接合領域42は内側接合領域431と外側接合領域432とに分かれているが、内側接合領域431は省略可能である。この場合、外側接合領域432と端部接合領域42とは一致し、好ましくは、外側接合領域432と中央接合領域41とが縦方向において連続することにより、圧縮接合領域4の全体が縦方向に連続する。
【0064】
上記実施の形態では、端部接合領域42の幅方向の外側のエッジ443が、中央接合領域41の幅方向の内側のエッジ442よりも幅方向の内側に位置するが、端部接合領域42の幅方向の外側のエッジ443が、中央接合領域41の幅方向の外側のエッジ441よりも幅方向の内側に位置するのみでもよい。この場合も、吸収性物品1の前方部および/または後方部の幅方向の外側の部位の柔軟性を向上することができる。なお、圧縮接合領域4はドット状の接合要素40の集合の場合もあるため、上記の通りエッジ441~444は、圧縮接合領域4の外側または内側に接する線を意味する。エッジ441~444が曲線の場合は、一方のエッジが他方のエッジに対して「幅方向の内側に位置する」とは、原則として、一方のエッジの全体が他方のエッジの全体に対して幅方向の内側に位置することを意味するが、一方のエッジの極一部または他方のエッジの極一部が上記定義を満たさない場合も含む。
【0065】
上記実施の形態では、外側接合領域432は、縦方向に伸びる第2線状領域422および第3線状領域423からなるが、3以上の線状領域から構成されてもよい。また、これらの線状領域は繋がっていなくてもよい。この場合、最も外側の線状領域が外側接合領域432と捉えられてよい。端部接合領域42を線状の領域の集合とすることにより、端部接合領域42の柔軟性を向上するとともに端部接合領域42における通気性を向上することができる。少なくとも端部接合領域42の縦方向の端部側の部位が、縦方向に伸びる複数の線状の領域の集合であることが好ましい。
【0066】
好ましくは、センターシート31と一対のギャザーシート32とは、圧縮接合領域4のみにおいて接合される。すなわち、これらは溶着のみにより接合され、これらの間には接着剤は存在しない。もちろん、必要に応じてセンターシート31と一対のギャザーシート32との接合に接着剤が補助的に用いられてもよい。
【0067】
上記吸収性物品1は例示に過ぎず、上記実施の形態にて説明したセンターシート31とギャザーシート32との溶着による接合は、パンツ型の使い捨ておむつ、テープにより胴回りを固定するオープン型の使い捨ておむつ、おむつやおむつ状のカバー内に配置される補助吸収具、尿取りパッド、その他、着用者からの排泄物を受ける様々な吸収性物品に利用することができる。
【0068】
次に、ギャザーシート32の構造について説明する。図7は、図1の吸収性物品1の前方部における右側のギャザーシート32の一部を示す平面図である。図7では、図6で省略したギャザーシート32の構造も示している。図8は、吸収性物品1の図6と同様の部位に図7の構造を示したものである。図7は、ギャザーシート32のギャザー34が形成される部位の一部と、ギャザー34が形成されない端部の一部を示す。ギャザーシート32のギャザー34は、伸張力を作用させることにより伸張方向に伸張し、当該伸張力を解除した際に収縮する伸縮シート構造を含む。
【0069】
図7において、黒く塗りつぶした部位および黒く塗りつぶした領域を繋ぐ太い線は、内側シート331と外側シート332(図5参照)とが圧力を伴う溶着により接合された領域を示す。破線334は、内側シート331の幅方向の外側の端を示す。溶着により接合された領域は、いわゆるエンボスの領域である。「圧力を伴う溶着」とは、熱を与えながら押圧する熱溶着、超音波振動を与えながら押圧する超音波溶着などであり、いわゆる、「エンボス加工」である。圧力により圧縮されることから、「圧力を伴う溶着」は「圧縮を伴う溶着」と捉えることもできる。なお、内側シート331と外側シート332との間の接合は、他の接合方向、例えば、ホットメルト接着剤を用いる方法が用いられてもよい。
【0070】
内側シート331および外側シート332をそれぞれ「第1シート」および「第2シート」と一般的に呼ぶと、図5に示すように、第2シートは第1シートに重なる。第1弾性部材3221は、第1シートと第2シートとの間に位置し、伸張方向に延びる線状の弾性部材である。第2弾性部材3222も第1シートと第2シートとの間に位置し、第1弾性部材3221から離間して伸張方向に延びる線状の弾性部材である。さらに、第3弾性部材3223も第1シートと第2シートとの間に位置し、第2弾性部材3222の第1弾性部材3221とは反対側において、第2弾性部材3222から離間して伸張方向に延びる線状の弾性部材である。
【0071】
図7において、上下方向がギャザーシート32の伸張方向である。ギャザーシート32を伸張方向に平らに伸ばした状態において、すなわち、内側シート331および外側シート332を伸張方向に平らに伸ばした状態において、ギャザー34の領域では、内側シート331と外側シート332とは、伸張方向に配列された複数の線状接合単位5にて接合される。これにより、整然と襞が並んだ美しいギャザー34を形成することができる。
【0072】
図7の例の場合、黒く塗りつぶした領域として示す各線状接合単位5において、内側シート331と外側シート332とが、溶着にて接合される。溶着の場合、接着剤を用いる場合に比べて線状接合単位5の接合幅、特に、一対の弾性部材との交差位置の間における接合幅を小さくすることが容易となり、より美しいギャザー34を形成することができる。接合が溶着により行われる場合、接着剤は併用されないことが好ましい。すなわち、接合が溶着のみにより行われることが好ましい。
【0073】
図9は3つの線状接合単位5を拡大して示す図である。図9では、1つの線状接合単位5を二点鎖線にて囲むことにより示している。第1弾性部材3221、第2弾性部材3222および第3弾性部材3223が収縮した状態において、複数の線状接合単位5の間において内側シート331または外側シート332が隆起していることにより、ギャザー34が形成される。もちろん、複数の線状接合単位5の間において内側シート331および外側シート332が隆起していることにより、ギャザー34が形成されてもよい。図10は、内側シート331および外側シート332が隆起している様子を示す斜視図である。ギャザー34を幅方向に垂直な面で切断した断面を破線で示している。図10に示すように、ギャザーシート32では襞が整然と並ぶギャザー34が形成される。
【0074】
図9に示すように、複数の線状接合単位5のそれぞれは、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間において、伸張方向と交差する方向に連続して存在する。また、複数の線状接合単位5のそれぞれは、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間においても、伸張方向と交差する方向に連続して存在する。線状接合単位5が連続して存在することにより、美しいギャザー34を形成することができる。
【0075】
図7に示す例の場合、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間において線状接合単位5が伸びる方向(すなわち、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間における上記の「交差する方向」)は、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間において線状接合単位5が伸びる方向(すなわち、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間における上記の「交差する方向」)と同じである。すなわち、内側シート331および外側シート332を伸張方向に平らに伸ばした状態において、各線状接合単位5は直線状である。以下、第1弾性部材3221と第3弾性部材3223との間において線状接合単位5が連続して存在する上記交差する方向を「線状接合方向」と呼ぶ。線状接合単位5が直線状であることにより、第1弾性部材3221から第3弾性部材3223に至る襞を直線状とすることができ、ギャザー34を美しく形成することができる。
【0076】
線状接合方向は、伸長方向に垂直な方向に対して傾斜する。また、全ての線状接合単位5の線状接合方向は同じである。線状接合方向をこのような方向とすることにより、ギャザー34が肌に当たる力を弱めることができる。特に、ギャザー34が肌に当たる瞬間の力を弱めることができ、装着時の感触を向上することができる。
【0077】
図9に示す例では、第3弾性部材3223の第1弾性部材3221とは反対側に、2つの独立した接合領域501,502が存在する。これらの接合領域501,502は、線状接合単位5に含められなくてもよく、線状接合単位5に含められてもよい。接合領域501,502が線状接合単位5に含められる場合、第3弾性部材3223の第1弾性部材3221とは反対側では、線状接合単位5が不連続に存在することになる。
【0078】
図5に示すように、内側シート331および外側シート332は、エッジ333にて折り返された1枚のシートである。エッジ333は、1枚のシートの折り返し線であることから、以下、エッジ333を「折り返し線333」とも呼ぶ。図7に示すように、内側シート331および外側シート332を伸張方向に平らに伸ばした状態において、第1弾性部材3221は、折り返し線333に近接しつつ折り返し線333に平行に位置する。一方、各線状接合単位5は、折り返し線333とは重ならない。すなわち、各線状接合単位5は、折り返し線(エッジ)333の手前までしか存在しない。換言すれば、各線状接合単位5は折り返し線333から離間している。これにより、溶着により折り返し線(エッジ)333でギャザーシート32が硬くなることが防止され、ギャザー34の肌触りを良好とすることができる。特に、ギャザー34の先端が鼠径部に触れる際の感触を向上することができる。折り返し線333と第1弾性部材3221との間の距離は、好ましくは、5mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。
【0079】
各線状接合単位5は、第1弾性部材3221、第2弾性部材3222および第3弾性部材3223と交差する。ここで、図9を参照しつつ、各線状接合単位5と第1弾性部材3221との交差位置を「第1交差位置511」と呼び、各線状接合単位5と第2弾性部材3222との交差位置を「第2交差位置512」と呼び、各線状接合単位5と第3弾性部材3223との交差位置を「第3交差位置513」呼ぶ。第1交差位置511における線状接合単位5の接合幅は、第1交差位置511と第2交差位置512との間における当該線状接合単位5の接合幅よりも大きい。第2交差位置512における線状接合単位5の接合幅は、第1交差位置511と第2交差位置512との間における当該線状接合単位5の接合幅よりも大きく、第2交差位置512と第3交差位置513との間における当該線状接合単位5の接合幅よりも大きい。第3交差位置513における線状接合単位5の接合幅は、第2交差位置512と第3交差位置513との間における当該線状接合単位5の接合幅よりも大きい。
【0080】
「接合幅」は、線状接合単位5の幅をおよそ定めるのであれば、様々に定められてよい。例えば、接合幅は、伸張方向に平行な直線で線状接合単位5を切断した際の幅(長さ)として定められてもよい。また、接合幅は、線状接合方向に垂直な直線で線状接合単位5を切断した際の幅(長さ)として定められてもよい。互いに隣接する2つの交差位置の間における接合幅は、交差位置における接合幅よりも小さい。換言すれば、交差位置において線状接合単位5の接合幅は相対的に大きい。
【0081】
交差位置以外における接合幅を相対的に小さくすることにより、ギャザー34において、(線状接合単位5全体を太くする場合に比べて)規則的な大きな襞を形成することができる。一方、交差位置では、第1弾性部材3221、第2弾性部材3222および第3弾性部材3223を内側シート331および外側シート332に強固に固定することができる。
【0082】
厳密には、交差位置では、弾性部材が熱により切断されないようにしつつ弾性部材が内側シート331および外側シート332に固定される。このような固定を実現するために、内側シート331と外側シート332との溶着は、弾性部材の幅方向の両側で行われ、内側シート331と弾性部材との溶着、および、外側シート332と弾性部材との溶着は僅かにのみ行われる。このような溶着を実現するために、溶着の際に用いられるエンボスロールの突起に、弾性部材を避ける溝が形成される。これにより、例えば、弾性部材の幅方向の両側において、内側シート331と弾性部材とが僅かに溶着されたり、外側シート332と弾性部材とが僅かに溶着される。あるいは、弱い圧力にて内側シート331と外側シート332との間に弾性部材が挟まれた状態で熱が加えられ、弾性部材が内側シート331および外側シート332の少なくとも一方と溶着される。
【0083】
ギャザー34では、各線状接合単位5が、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間、および、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間において、伸長方向に垂直な方向に対して傾斜することにより、ギャザー34が肌に接する際のギャザー34の撓みが容易に得られる。その結果、吸収性物品1の着用感を向上することができる。
【0084】
図7に示す例では、内側シート331および外側シート332を伸張方向に平らに伸ばした状態において、第1弾性部材3221の第2弾性部材3222とは反対側において、第1弾性部材3221の近傍にて第1弾性部材3221に沿って内側シート331および外側シート332のエッジ333が存在する。すなわち、ギャザーシート32のエッジ333、第1弾性部材3221、第2弾性部材3222および第3弾性部材3223がこの順で幅方向の外側に向かって位置する。そして、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間の間隔は、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間の間隔よりも広い。これにより、ギャザー34の先端側、すなわち、第1弾性部材3221側ではギャザー34が撓みやすくなって着用感が向上し、ギャザー34の根元側、すなわち、第3弾性部材3223側では剛性を高めてギャザー34を安定して起立させることができる(後述の図11ないし図14や他の変形例においても同様)。
【0085】
図9に符号52にて示すように、内側シート331および外側シート332を伸縮方向に平らに伸ばした状態において、各線状接合単位5の伸張方向における存在範囲52は、当該各線状接合単位5に隣接する線状接合単位5の伸張方向における存在範囲52と部分的に重なる(後述の図11ないし図14や他の変形例においても同様)。なお、線状接合単位5が第1弾性部材3221と第3弾性部材3223との間にのみ存在すると捉えた場合でも互いに隣接する線状接合単位5の上記存在範囲は重なる。これにより、エンボスロールを用いて溶着を行う際に、エンボスロールに生じる線圧の変動が抑制され、溶着接合の強度の変動や溶着時の穴開きが低減される。また、エンボスロールが有する突起の摩耗が抑制されてエンボスロールの寿命を向上することができる。
【0086】
図11は線状接合単位5の他の例を示す図であり、図9と同様に3つの線状接合単位5を示す。図11の線状接合単位5は、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間において不連続であり、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間においても不連続である。このように、弾性部材の間において線状接合単位5は連続していなくてもよい。図11の線状接合単位5の他の構造は図9と同様である。すなわち、第1交差位置511における線状接合単位5の接合幅は、第1交差位置511と第2交差位置512との間における当該線状接合単位5の接合幅よりも大きい。第2交差位置512における線状接合単位5の接合幅は、第1交差位置511と第2交差位置512との間における当該線状接合単位5の接合幅よりも大きく、第2交差位置512と第3交差位置513との間における当該線状接合単位5の接合幅よりも大きい。第3交差位置513における線状接合単位5の接合幅は、第2交差位置512と第3交差位置513との間における当該線状接合単位5の接合幅よりも大きい。以下に説明する図13および図14においても同様である。
【0087】
また、線状接合単位5は直線状であり、ギャザー34では、各線状接合単位5が、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間、および、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間において、伸長方向に垂直な方向に対して傾斜する。図9の線状接合単位5の説明は、第1弾性部材3221と第3弾性部材3223との間で線状接合単位5が連続する点を除いて、図11の例にも適用される。
【0088】
図12は線状接合単位5のさらに他の例を示す図であり、図9と同様に3つの線状接合単位5を示す。図12の線状接合単位5では、第1弾性部材3221と第3弾性部材3223との間において接合幅が一定である。すなわち、第1交差位置511、第2交差位置512および第3交差位置513での接合幅は、第1交差位置511と第2交差位置512との間の接合幅と同じであり、第2交差位置512と第3交差位置513との間の接合幅とも同じである。線状接合単位5の間隔が広く、十分な大きさの襞を形成することができるのであれば、線状接合単位5の接合幅は一定であってもよい。図9の線状接合単位5の説明は、線状接合単位5の接合幅が一定であることを除いて、図12の例にも適用される。
【0089】
図13は線状接合単位5のさらに他の例を示す図であり、図9と同様に3つの線状接合単位5を示す。図13の各線状接合単位5は、内側シート331および外側シート332を伸張方向に平らに伸ばした状態において、第2弾性部材3222の位置、すなわち、第2交差位置512にて折れ曲がる。図13の線状接合単位5の他の構造は、図9の線状接合単位5と同様であり、図9の線状接合単位5の説明は、線状接合単位5が折れ曲がることを除いて、図13の例にも適用される。
【0090】
図13の複数の線状接合単位5のそれぞれは、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間において、伸張方向と交差する第1交差方向に存在し、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間において、伸張方向と交差する第2交差方向に存在する。そして、第1交差方向と第2交差方向とが異なることにより、線状接合単位5が折れ曲がる。各線状接合単位5は、第1交差位置511、第2交差位置512および第3交差位置513において第1弾性部材3221、第2弾性部材3222および第3弾性部材3223とそれぞれ交差する。ギャザー34では、第1弾性部材3221、第2弾性部材3222および第3弾性部材3223が収縮した状態において、互いに隣接する各2つの線状接合単位5の間において折れ曲がった襞が形成され、これらの襞の集合としてギャザー34が形成される。
【0091】
襞が折れ曲がることにより、ギャザー34の剛性を低下させることができる。すなわち、ギャザーシート32を収縮させてエッジ333(図5参照)を身体に当てた場合に、ギャザー34が、第2交差位置512で撓みやすくなる。これにより、ギャザー34を身体に滑らかに接触させることができ、吸収性物品1の装着感を向上することができる。また、ギャザー34が折れ曲がることにより、ギャザー34の内側の空間を大きく確保することができ、多くの排泄物を一度に受け入れることができる。
【0092】
好ましくは、上記第1交差方向と上記第2交差方向とは、伸張方向に垂直な方向に対して逆方向である。換言すれば、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間において、伸張方向に垂直な方向に対して各線状接合単位5が傾斜する角度方向と、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間において、伸張方向に垂直な方向に対して各線状接合単位5が傾斜する角度方向とが、逆である。さらに換言すれば、各線状接合単位5は略V字状である。これにより、各襞がバネのように折れ曲がり、ギャザー34の肌触りを向上することができる。
【0093】
なお、ギャザー34をより適切に起立させるために、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間において、線状接合単位5の伸びる方向である第2交差方向が伸張方向に垂直であってもよい。
【0094】
図14は線状接合単位5のさらに他の例を示す図であり、図13と同様に3つの線状接合単位5を示す。図14の各線状接合単位5は、内側シート331および外側シート332を伸張方向に平らに伸ばした状態において、第2弾性部材3222の位置、すなわち、第2交差位置512にて折れ曲がる。図14の線状接合単位5は、第1弾性部材3221と第2弾性部材3222との間において不連続であり、第2弾性部材3222と第3弾性部材3223との間においても不連続である。図14の線状接合単位5の他の構造は図13と同様である。図13の線状接合単位5の説明および図13において適用される図9の線状接合単位5の説明は、第1弾性部材3221と第3弾性部材3223との間で線状接合単位5が不連続である点を除いて、図14の例にも適用される。
【0095】
図15は、起立したギャザーシート32の他の例を示す断面を図3と同様に示す図である。図15では、図3と同様の構成要素には同符号を付している。図15のギャザーシート32は、中央接合領域41の幅方向の内側から幅方向の外側に向かって立ち上がり、第3弾性部材3223および第2弾性部材3222を経由した後、幅方向の内側に向かう。ギャザーシート32の幅方向の内側の先端近傍に第1弾性部材3221が配置される。このように、ギャザー34は、一旦幅方向の外側に向かってから内側に向かうように立ち上がってもよい。これにより、ギャザー34の内側の空間を大きくすることができる。
【0096】
図16は、起立したギャザーシート32のさらに他の例を示す断面を図3と同様に示す図である。図16では、図3と同様の構成要素には同符号を付している。図16のギャザーシート32は、中央接合領域41の幅方向の内側から幅方向の内側に向かって立ち上がってから外側に向かって立ち上がり、第3弾性部材3223および第2弾性部材3222を経由した後、幅方向の内側に向かう。ギャザーシート32の幅方向の内側の先端近傍に第1弾性部材3221が配置される。このように、ギャザー34は、一旦幅方向の内側に向かってから外側に向かい、さらに内側に向かうように立ち上がってもよい。これにより、ギャザー34の内側の空間を大きくすることができる。図15図16のギャザーシート32では、断面においてギャザー34が折れ曲がるため、図13図14のような折れ曲がった線状接合単位5が採用されることが好ましい。
【0097】
ギャザーシート32の構造および用途は様々に変更可能である。ギャザーシート32が有する伸縮シート構造は、吸収性物品1において人の鼠径部に接するギャザー34以外の様々な箇所に利用されてよい。伸縮シート構造は、上記説明において、内側シート331、外側シート332、弾性部材および線状接合単位5により形成される構造であり、伸張力を作用させることにより伸張方向に伸張し、当該伸張力を解除した際に収縮する構造である。ギャザー34は、伸縮シート構造そのものであると捉えられてもよく、伸縮シート構造に含まれるものと捉えられてもよい。伸縮シート構造を含む物体は、「伸縮シート構造体」と表現することができる。上記説明におけるギャザー34やギャザーシート32は、伸縮シート構造体でもある。
【0098】
上記伸縮シート構造を有する吸収性物品は、補助吸収具には限定されず、パンツ型の使い捨ておむつ、テープにより胴回りを固定するオープン型の使い捨ておむつ、おむつやおむつ状のカバー内に配置される補助吸収具、尿取りパッド、その他、着用者からの排泄物を受ける様々な吸収性物品であってもよい。伸縮シート構造は、例えば、使い捨ておむつの胴回りのギャザーを形成する構造として、あるいは、足回りのギャザーを形成する構造として利用することができる。このように、弾性部材を挟む上記内側シート331および外側シート332は、他の用途のシートであってよく、伸縮シート構造において弾性部材を挟むこれらのシートを「第1シート」および「第2シート」と一般的に呼ぶことができる。弾性部材の数も3には限定されず、少なくとも2であり、4以上であってもよい。すなわち、伸縮シート構造は、少なくとも、第1シートと、第1シートに重なる第2シートと、第1シートと第2シートとの間に位置し、伸張方向に延びる線状の第1弾性部材と、第1シートと第2シートとの間に位置し、第1弾性部材から離間して伸張方向に延びる線状の第2弾性部材とを含む。
【0099】
第1シートおよび第2シートは、1枚のシートを折り曲げたものである必要はなく、個別のシートであってもよい。第1シートと第2シートとは同じ材料のシートであっても異なる材料のシートであってもよい。第1シートおよび第2シートは不織布には限定されず、プラスチックフィルムや他の材料のシートであってもよいし、親水性であっても疎水性であってもよい。
【0100】
第1シートおよび第2シートを伸張方向に平らに伸ばした状態において、第1シートと第2シートとが伸張方向に配列された複数の線状接合単位にて接合される。複数の線状接合単位の形状は、図9図11ないし図14等の線状接合単位5のように、直線であってもよく、折れ曲がってもよい。各線状接合単位は2箇所以上で折れ曲がってもよく、曲線でもよい。例えば、各線状接合単位は横向きの略C字状でもよく、横向きの略S字状でもよい。複数の線状接合単位の形状は、完全に同一である必要はない。例えば、伸長方向に向かって複数の線状接合単位の形状が漸次変化してもよい。このように、第1弾性部材と第2弾性部材との間において、複数の線状接合単位のそれぞれは、伸張方向と交差する方向に存在するが、当該交差する方向は、伸張方向に平行でなければよく、一定である必要はない。
【0101】
また、好ましくは、図9図11ないし図14のように、当該交差する方向はが伸長方向に垂直な方向に対して傾斜する。これにより、整然と並ぶ襞を有するギャザー形成しつつ適切な剛性を有する伸縮シート構造を提供することができる。交差する方向、すなわち、線状接合単位が伸びる方向は、幅方向に対して3°以上25°以下、さらに好ましくは、5°以上20°以下傾斜することが好ましい。また、交差する方向が幅方向において変化する場合は、線状接合単位が伸びる方向は、幅方向に平行な部分が含まれてもよい。図13図14のように線状接合単位が折れ曲がる場合、ギャザーの先端側で折れ曲がりやすくするために、先端側の第1弾性部材と第2弾性部材との間における線状接合単位が伸びる方向の幅方向に対する傾斜角は、(先端側ではない)第2弾性部材と第3弾性部材との間における線状接合単位が伸びる方向の幅方向に対する傾斜角よりも大きいことが好ましい。この場合において、第1弾性部材と第2弾性部材との間における線状接合単位が伸びる方向の幅方向に対する傾斜方向は、第2弾性部材と第3弾性部材との間における線状接合単位が伸びる方向の幅方向に対する傾斜方向と同じ側であっても異なる側であってもよい。
【0102】
「第1シートおよび第2シートを伸張方向に平らに伸ばした状態」とは、ギャザーにおける襞が消滅するまで伸縮シート構造を伸張させた状態をいう。この状態では、各弾性部材は伸張状態である。
【0103】
既述のように、伸縮シート構造では、弾性部材の数は少なくとも2である。したがって、2つの弾性部材に注目し、これらを「第1弾性部材」および「第2弾性部材」と一般的に呼ぶ場合(これらの弾性部材は、もちろん、図3に示す第1弾性部材3221および第2弾性部材3222には限定されない。)、第1弾性部材および第2弾性部材が収縮した状態において、複数の線状接合単位の間において第1シートまたは第2シートが隆起していることにより、ギャザーが形成される。「隆起」とは、襞を形成するために盛り上がっていることをいい、例えば、複数の線状接合単位を含む面から第1シートの一部または第2シートの一部が離間することをいう。なお、複数の線状接合単位の間において第1シートおよび第2シートが隆起してもよい。複数の線状接合単位の間において第1シートおよび第2シートの少なくとも一方が「完全に」隆起する必要はなく、複数の線状接合単位の間において実質的に隆起すればよい。
【0104】
第1弾性部材と第2弾性部材とに注目した場合、既述のように、好ましくは、各線状接合単位と第1弾性部材との第1交差位置における当該線状接合単位の接合幅、および、当該線状接合単位と第2弾性部材との第2交差位置における当該線状接合単位の接合幅は、第1交差位置と第2交差位置との間における当該線状接合単位の接合幅よりも大きい。既述のように、「接合幅」は、およそ線状接合単位の幅を定めるのであれば、様々に定義されてよい。交差位置において接合幅を大きくすることにより、第1シートおよび第2シートと第1および第2弾性部材との接合を強固としつつ、ギャザーの柔軟性を確保することができる。交差位置のみで接合幅を大きくすることにより、ギャザーの剛性が高くなりすぎず、ギャザーのクッション性を得ることができ、好ましい肌触りを得ることができる。その結果、整然と並ぶ襞を有するギャザーを形成しつつ適切な剛性を有する伸縮シート構造を提供することができる。
【0105】
好ましくは、第1および第2交差位置における接合幅は、第1交差位置と第2交際位置との間における接合幅の5倍以上12倍以下である。さらに好ましくは、7倍以上10倍以下である。これにより、十分な大きさの襞を容易に形成することができる。
【0106】
ギャザーの柔軟性を確保するために、線状接合単位を伸張方向に垂直な方向に対して傾斜させる技術と、線状接合単位と弾性部材との交差位置において線状接合単位の接合幅を大きくすることとは互いに独立した技術であり、伸縮シート構造に必ずしも両方の技術が適用される必要はない。
【0107】
各線状接合単位は、第1弾性部材および第2弾性部材と第1交差位置および第2交差位置でそれぞれ交差する。既述のように、弾性部材と重なる位置では、弾性部材が介在するため第1シートと第2シートとは完全には接合されない。すなわち、線状接合単位と弾性部材とが「交差する」とは、概念的な線状接合単位と弾性部材とが交差することを意味し、第1シートと第2シートとの接合領域が弾性部材と重なることを意味しない。線状接合単位は、既述のように、上記交差する方向に連続して存在してもよく、不連続に存在してもよい。ギャザーにある程度の剛性を与えたい場合、線状接合単位は弾性部材間において連続することが好ましい。これにより、例えば、ギャザーが鼠径部に接する場合に、尿等の排泄物が漏れることが抑制される。線状接合単位は、襞の形成に寄与する接合領域を指し、図9図11ないし図14の例の場合、内側シート331と外側シート332との接合領域のうち、主として第1弾性部材3221と第3弾性部材3223との間の接合領域を指すが、領域501、502が含められてもよい。少なくとも隣接する弾性部材間における接合領域が線状接合単位として把握される。
【0108】
線状接合単位における第1シートと第2シートとの接合は、好ましくは溶着である。しかし、接着剤を用いて接合が行われてもよく、溶着と接着剤とを用いて接合が行われてもよい。接合が溶着により行われる場合、第1シートおよび第2シートは、好ましくは、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布である。例えば、第1シートおよび第2シートは、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS不織布等から選択された同種または異種の材料である。溶着を利用することにより、襞を確実に形成することができ、伸張方向に一様に襞が配列された美しいギャザーを安定して形成することができる。また、襞を安定して形成することができるため、弾性部材や線状接合単位(すなわち、溶着領域)が肌に接することが抑制され、肌触りが向上する。
【0109】
図9図11ないし図14の例のように弾性部材の数が3の場合、これらを「第1弾性部材」、「第2弾性部材」および「第3弾性部材」と一般的に呼ぶと(これらの弾性部材は、もちろん、図3に示す第1弾性部材3221、第2弾性部材3222および第3弾性部材3223には限定されない。)、上記の第1弾性部材と第2弾性部材に注目して行った説明は、第2弾性部材と第3弾性部材に関する説明に適用することができる。すなわち、複数の線状接合単位のそれぞれが、第2弾性部材と第3弾性部材との間において、伸張方向と交差する方向に存在し、各線状接合単位が、第2弾性部材および第3弾性部材と交差する。そして、第1弾性部材、第2弾性部材および第3弾性部材が収縮した状態において、隣接する線状接合単位の間に襞が形成され、これによりギャザーが形成される。
【0110】
好ましくは、各線状接合単位と第2弾性部材との第2交差位置における当該線状接合単位の接合幅、および、当該線状接合単位と第3弾性部材との第3交差位置における当該線状接合単位の接合幅は、第2交差位置と第3交差位置との間における当該線状接合単位の接合幅よりも大きい。上記の第1弾性部材と第2弾性部材に注目して行った他の説明も、第2弾性部材と第3弾性部材に関する説明に適用することができる。
【0111】
上記伸縮シート構造は、吸収性物品以外の製品に利用されてもよい。整然と並ぶギャザーを形成することが望まれる様々な製品に採用可能である。
【0112】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0113】
1 吸収性物品
5 線状接合単位
34 ギャザー
331 内側シート(第1シート)
332 外側シート(第2シート)
333 エッジ(折り返し線)
511 第1交差位置
512 第2交差位置
3221 第1弾性部材
3222 第2弾性部材
3223 第3弾性部材
図1
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