(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161352
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】風力減衰装置
(51)【国際特許分類】
F03D 13/20 20160101AFI20231030BHJP
F03D 3/02 20060101ALI20231030BHJP
F03D 3/04 20060101ALI20231030BHJP
F03D 9/45 20160101ALI20231030BHJP
【FI】
F03D13/20
F03D3/02 B
F03D3/04 A
F03D9/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071694
(22)【出願日】2022-04-25
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】595112915
【氏名又は名称】株式会社ヤマダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 将人
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 次郎
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA14
3H178AA22
3H178AA43
3H178AA53
3H178BB46
3H178BB77
3H178DD30Z
(57)【要約】
【課題】 コンパクトで建築物等に容易に取り付け可能であり、風向変化に対して安定して風力を減衰させ得る垂直軸型の回転翼による風力発電装置を用いた風力減衰装置の提供。
【解決手段】 垂直軸型の回転翼からなる風力発電部を複数併置させてなる風力減衰装置である。方形の窓部を有する風洞の内部空間に回転翼の回転軸を平行かつ等距離となるように併置させていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直軸型の回転翼からなる風力発電部を複数併置させてなる風力減衰装置であって、
方形の窓部を有する風洞の内部空間に前記回転翼の回転軸を平行かつ等距離となるように併置させていることを特徴とする風力減衰装置。
【請求項2】
前記窓部は、前記風洞の流れ方向において、前記回転翼の直径よりも大なる厚さを有することを特徴とする請求項1記載の風力減衰装置。
【請求項3】
前記風力発電部は前記回転翼に機械接続された回転軸部を有する回転発電機を含み、前記回転発電機の出力を制御して前記風洞を通過する風速分布を制御する制御部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の風力減衰装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記風力発電部のぞれぞれの前記回転発電機の出力を独立して制御可能であることを特徴とする請求項3記載の風力減衰装置。
【請求項5】
前記制御部は、所定回転数以上で前記回転発電機の出力を制御を開始することを特徴とする請求項3記載の風力減衰装置。
【請求項6】
前記回転翼は、前記回転軸の周囲に半円筒形の羽根を配置させ長手両端部で配置固定されていることを特徴とする請求項1記載の風力減衰装置。
【請求項7】
前記回転翼は、前記羽根を3枚有することを特徴とする請求項6記載の風力減衰装置。
【請求項8】
前記回転翼は、前記回転軸に軸体を有しないことを特徴とする請求項6記載の風力減衰装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置を用いた風力減衰装置に関し、特に、垂直軸型の回転翼による風力発電装置を用いた風力減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や構造物の強風対策として、植樹や植林、防風壁などが利用されてきたが、回転翼による風力発電装置を建築物等に設置し、この回転翼で風力を減衰させつつ発電をも行おうとすることが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、設置場所に吹き付けられた風によって垂直軸型の回転翼部を回転させ、風の流速エネルギーを回転エネルギーに変換して風力を減衰させる建築資材を開示している。4本の支柱部の内部には、回転軸の周囲に3枚の回転翼を取り付けた回転翼部が同軸に軸支され、回転翼部の回転軸上下端部には発電機が配置されてユニット構造体を形成している。かかるユニット構造体を横又は縦に複数並べて連結し、建築物等の窓枠側部や庇に取り付けられる。建築物等の壁面に衝突したビル風は四方に分散するが、かかる分散風が上記した連結したユニット構造体に衝突して回転翼部を回転させ風力を減衰させる一方、発電エネルギーを取り出すことができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
垂直軸型の回転翼による風力発電装置を用いた風力減衰装置では、風向変化の影響を受けづらいが、特に、市街地のように風向変化が激しい場所ではその動作も不安定になりやすい。また、風向変化により装置本体に大きな負荷が掛かるため、装置本体の剛性を高める必要が生じる。そのため、重量が大きくなって建築物等の補強なども必要となって、その設置が非常に煩雑となってしまうこともあった。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、コンパクトで建築物等に容易に取り付け可能であり、風向変化に対して安定して風力を減衰させ得る垂直軸型の回転翼による風力発電装置を用いた風力減衰装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による装置は、垂直軸型の回転翼からなる風力発電部を複数併置させてなる風力減衰装置であって、方形の窓部を有する風洞の内部空間に前記回転翼の回転軸を平行かつ等距離となるように併置させていることを特徴とする。
【0008】
かかる特徴によれば、窓部によって限定された空間に風力発電部を配置させることで安定して風力の減衰を得られるとともに、窓部を与えた枠体を設置箇所に固定するだけで設置可能となるのでコンパクトに建築物等に容易に取り付け可能となるのである。
【0009】
上記した発明において、前記窓部は、前記風洞の流れ方向において、前記回転翼の直径よりも大なる厚さを有することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、安定して風力の減衰を得られるのである。
【0010】
上記した発明において、前記風力発電部は前記回転翼に機械接続された回転軸部を有する回転発電機を含み、前記回転発電機の出力を制御して前記風洞を通過する風速分布を制御する制御部を含むことを特徴としてもよい。また、前記制御部は、前記風力発電部のぞれぞれの前記回転発電機の出力を独立して制御可能であることを特徴としてもよい。更に、前記制御部は、所定回転数以上で前記回転発電機の出力を制御を開始することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、安定して風力の減衰を得られるのである。
【0011】
上記した発明において、前記回転翼は、前記回転軸の周囲に半円筒形の羽根を配置させ長手両端部で配置固定されていることを特徴としてもよい。また、前記回転翼は、前記羽根を3枚有することを特徴としてもよい。更に、前記回転翼は、前記回転軸に軸体を有しないことを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、安定した風力の減衰を阻害することなく、風力発電部を軽量化できて、コンパクトで建築物等に容易に取り付け可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による1つの実施例における風力減衰装置の斜視図である。
【
図2】風力減衰装置に用いられる回転翼の上断面図である。
【
図3】本発明による1つの実施例における風力減衰装置の要部の正断面図である。
【
図4】本発明による1つの実施例における風力減衰装置のブロック図である。
【
図5】一列に併置された回転翼に対する風の向きを示す上断面図である。
【
図6】風洞内に一列に併置された回転翼に対する風の向きを示す上断面図である。
【
図7】風力減衰装置の複数を接続した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による1つの実施例としての風力減衰装置について、
図1乃至
図7を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、風力減衰装置10は、正面視で方形の窓部1wを有するフレーム型の風洞1と、風洞1の内部空間に備えられ鉛直方向に延びる垂直軸型の回転翼2の複数とを含む。風洞1は、上フレーム11a、下フレーム11b、左フレーム11c、右フレーム11dの中空の角柱状の各フレームを組み合わせて形成されている。複数備えられる回転翼2は、窓部1wの開口面に沿って一列となるよう、互いの回転軸Aを平行かつ等距離とするよう併置されている。
【0015】
図2を併せて参照すると、回転翼2は、上下に長手方向を有する複数の羽根22と、その長手両端部を固定する円板状体21a及び21bとを含む。円板状体21a及び21bは、一方の主面に羽根22を固定しており、他方の主面の中心に回転軸Aに沿って延びる回転軸体23a及び23bを備える。回転軸体23a及び23bは、それぞれ上フレーム11a及び下フレーム11b内部に挿通されて、それぞれスラスト軸受24a及び24bによって回転自在に軸支される。これによって、回転翼2は、回転軸Aの周りに回転可能とされる。
【0016】
また、上側の回転軸体23aは、スラスト軸受24aを貫通した先で回転発電機25の回転軸部25aに機械接続されており、風力を受けた回転翼2の回転によって発電可能である。つまり、回転翼2は、回転発電機25を含めて風力発電部20として機能する。回転発電機25は、複数の回転翼2のそれぞれに同様に接続されている。つまり、風力減衰装置10は、風力発電部20を複数併置させている。また、風力発電部20のそれぞれは回転発電機25によって生成された電力を外部の蓄電池などに出力可能とするよう図示しない配線を備える。
【0017】
なお、上フレーム11a及び下フレーム11bは上記したように中空の角柱状体であり、スラスト軸受24a及び24b、回転発電機25をこれらの内部に収容している。スラスト軸受24aは上フレーム11aの内周面の下側に固定され、スラスト軸受24bは、下フレーム11bの内周面の上側に固定される。また、上フレーム11aは、中空状の内部を上下に分断するように板状体11a-1を備え、回転発電機25を板状体11a-1の上面に固定している。
【0018】
図3に示すように、回転翼2は、いわゆるサボニウス型の風車のように上面視の断面を略半円とする半円筒形の羽根22を回転軸Aの周囲に備えている。本実施例においては、羽根22は3枚備えられており、かかる断面の半円の弦Cを回転軸A上に通しつつ、この弦を120度間隔とし、互いに重ならないように配置される。そして、羽根22は、上記したような配置とされつつ、その長手両端部を円板状体21a及び21bに配置固定されている。
【0019】
これによって、回転翼2は、水平面内のどの方向からの風に対しても回転し、風のエネルギーを吸収して風力を減衰させて、回転発電機25により発電を行うことができる。なお、回転翼2は、このように円板状体21a及び21bの間については羽根22のみで形成されており、回転軸Aに軸体を有しない。そのため、円板状体21a及び21bの間には、羽根22以外に通過する風の抵抗となるものがない。また上記したような回転翼2によれば、安定した風力の減衰を阻害することなく、風力発電部20を軽量化でき、コンパクトで建築物等に容易に取り付け可能とし得る。
【0020】
なお、回転翼2は羽根22を3枚有しているが、羽根22を2枚とする場合に比べて回転軸A付近の空気の流れを複雑にするものと考えられる。風の上流側から回転翼2の内部に入り込んむ空気は、羽根22の凹面に沿って回転軸Aに向けて流入する。一方、回転翼2の回転に伴い、回転軸A付近から下流側へ向けて凹面に沿って空気が流出する。つまり、凹面に沿って空気の流れの方向が変わる。このように空気が3つの羽根22のそれぞれから流入又は流出して複雑に絡み合い、流体としてのエネルギー損失を上昇させるものと考えられる。また、羽根22を3枚とすることで、回転軸A付近の流路も2枚の場合に比べて細くなり、粘性を有する空気であれば、損失は上昇すると考えられる。回転翼2の回転を維持できる範囲において、このような損失は周囲の風力の減衰に寄与するため好ましい。
【0021】
図4に示すように、風力減衰装置10は、複数の風力発電部20を備え、それぞれの回転発電機25を電気回路からなる制御部30に接続させている。また、制御部30はブレーキ抵抗器31に接続され、必要に応じて回転発電機25の個々の内部抵抗を増減させることができる。例えば、制御部30は、回転発電機25のそれぞれの出力を監視し、ブレーキ抵抗器31を用いて回転発電機25の内部抵抗を変化させ、回転翼2の抗力を変化させる。回転翼2の抗力を変化させることで、これを通過する風力のエネルギーを変化させることができる。つまり、通過する風力を風力発電部20のそれぞれで制御し得る。その結果、風洞1を通過する風速分布を制御することが可能となる。なお、制御部30の動作には、回転発電機25によって得た電力を用いることも好ましい。
【0022】
また、上記したように制御部30は、回転発電機25の個々の内部抵抗を制御することができる。つまり、風力発電部20のぞれぞれの回転発電機25の出力を独立して制御可能である。なお、制御部30は、回転翼2の回転数が所定回転数以上となったところで回転発電機25の出力の制御を開始するようにすることも好ましい。強風によって回転翼2の回転数が過剰となることを抑制できる。
【0023】
ところで、
図5(a)に示すように、回転翼2(2-1~2-6)を上記と同様に一列に併置させ、風洞1の代わりに風Wをほとんど遮ることのない枠体1’に取り付けた場合を考える。回転翼2の併置された方向(紙面左右方向)に対して浅い角度で斜めに風Wが吹いているとする。このとき、回転翼2のうち、風Wに対して上流側の端に配置された回転翼2-1は全面に風Wを受けて回転する。
【0024】
ところが、同図(b)を参照すると、回転翼2-1に当たった風Wの影Sの中に、隣接する回転翼2-2の多くの部分を隠してしまう。紙面上の方向で説明すると、この例では、回転翼2の回転方向は羽根22(
図3参照)の形状から反時計回りである。一方、回転翼2-1においては、影Sのために、上端側の一部に左側からのみ風Wが当たることになる。風Wの当たる位置と方向からは回転翼2-2を時計回りに回そうとすることになってしまい、結果として回転翼2-1は回転しないか、少なくとも回転翼2-1よりも遅い回転となる。このように、風洞1のない場合は、風Wの向きによって併置された複数の回転翼2の回転に大きな影響を与えてしまう。
【0025】
これに対し、
図6(a)に示すように、本実施例では、回転翼2(2-1~2-6)を一列に併置させ、風洞1の内部空間に配置させている。特に、風洞1の内部空間は、回転翼2の併置による面の厚さ方向(紙面上下方向)に延びており、この方向を流れ方向としている。この場合、回転翼2の併置された方向(紙面左右方向)に対して浅い角度で斜めに吹いている風Wも、風洞1の内部では上下方向に向くように回転翼2の併置された方向に対して深い角度で吹くようにされる。
【0026】
その結果、同図(b)に示すように、回転翼2-1によって生じる風Wの影Sは、風洞1のない場合に比べて隣接する回転翼2-2を隠す部分を小さくする。つまり、併置された複数の回転翼2であっても、風Wの向きによる回転への影響を小とすることができる。このように、風洞1の窓部1wによって限定された空間に風力発電部20を配置させることで安定して風力の減衰を得られる。かかる観点から、風洞1は、回転翼2の併置による面の厚さ方向、つまり風洞1の流れ方向の厚さを回転翼2の直径よりも大とすることが好ましい。
【0027】
また、
図7に示すように、風力減衰装置10は風洞1の外周を方形とするユニットとすることで、これら複数を互いに接続して、広い面積に対応した風力減衰装置とすることもできる。
【0028】
以上のように、風力減衰装置10によれば、安定して風力の減衰を得ることができる。特に、風洞1を用いたことで、コンパクトで建築物等に容易に取り付け可能であり、風向変化に対して安定して風力を減衰させることができる。
【0029】
ここまで本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。また、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0030】
1 風洞
2 回転翼
22 羽根
10 風力減衰装置
20 風力発電部
25 回転発電機
30 制御部
A 回転軸