(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161362
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】燃料タンクの波消し部材
(51)【国際特許分類】
B60K 15/077 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
B60K15/077 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071707
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 和義
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CC10
(57)【要約】
【課題】燃料の液面の高さ位置に関わらず、高い波消しの効果を奏することができる燃料タンクの波消し部材を提供する。
【解決手段】タンク本体2の内面に固定され燃料の波消しを行う第一波消し体11と、第一波消し体11に接続され燃料の波消しを行う第二波消し体21と、を有し、第二波消し体21は、浮力により燃料の液面に応じて第一波消し体11に対して昇降可能になっていることを特徴とする。第一波消し体11及び第二波消し体21は、いずれも板状を呈することが好ましい。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体の内面に固定され燃料の波消しを行う第一波消し体と、
前記第一波消し体に接続され前記燃料の波消しを行う第二波消し体と、を有し、
前記第二波消し体は、浮力により前記燃料の液面に応じて前記第一波消し体に対して昇降可能になっていることを特徴とする燃料タンクの波消し部材。
【請求項2】
前記第一波消し体及び前記第二波消し体は、いずれも板状を呈することを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの波消し部材。
【請求項3】
前記第二波消し体は、下部に設けられた脚部と、波消しを行う規制板と、前記脚部と前記規制板とを連結する連結部と、を備え、
前記第二波消し体が上昇した際に、前記第一波消し体と前記第二波消し体との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料タンクの波消し部材。
【請求項4】
第一波消し体は、前記連結部を挿通させつつ前記脚部の上方への移動を規制する規制部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の燃料タンクの波消し部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの波消し部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、燃料タンクの内部に設置された波消し部材が開示されている。当該波消し部材は、タンク本体の底部に立設され、板状を呈する。波消し部材を設けることにより、燃料タンクに貯留された燃料が波立つのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料タンクの波消し部材は、燃料の液面が低い場合には、燃料の移動を遮ることができるため、波消し効果を奏するものであった。しかし、燃料の液面が高くなると、燃料が波消し部材の上を超えてしまうため、波消しの効果が低くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、燃料の液面の高さ位置に関わらず、高い波消しの効果を奏することができる燃料タンクの波消し部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、タンク本体の内面に固定され燃料の波消しを行う第一波消し体と、前記第一波消し体に接続され前記燃料の波消しを行う第二波消し体と、を有し、前記第二波消し体は、浮力により前記燃料の液面に応じて前記第一波消し体に対して上下方向に移動可能になっていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、燃料の液面に追従して第二波消し体が上方に移動するため、液面の高さ位置が高い場合であっても、高い波消し効果を奏することができる。
【0008】
また、前記第一波消し体及び前記第二波消し体は、いずれも板状を呈することが好ましい。本発明によれば、より高い波消し効果を奏することができる。
【0009】
また、前記第二波消し体は、下部に設けられた脚部と、波消しを行う規制板と、前記脚部と前記規制板とを連結する連結部と、を備え、前記第二波消し体が上昇した際に、前記第一波消し体と前記第二波消し体との間に隙間が形成されることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、燃料が隙間を通過するため、第一波消し体及び第二波消し体に過負荷が作用するのを防ぐことができる。
【0011】
また、第一波消し体は、前記連結部を挿通させつつ前記脚部の上方への移動を規制する規制部を備えていることが好ましい。本発明によれば、第二波消し体の高さ方向の移動量を設定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料タンクの波消し部材によれば、燃料の液面の高さ位置に関わらず、高い波消しの効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材を示す正面図である。
【
図2】第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材を示す側面図である。
【
図3】第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材の係合部を示す平面図である。
【
図4A】
図2のIVA-IVA矢視図であって、第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材の下降時を示す正面図である。
【
図4B】
図1のIVB-IVB矢視図であって、第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材の下降時を示す側面図である。
【
図5A】第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材の上昇時を示す正面図である。
【
図5B】第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材の上昇時を示す側面図である。
【
図6】燃料の液面が低い場合において、比較例に係る燃料タンクの波消し部材を示す側面図である。
【
図7】燃料の液面が高い場合において、比較例に係る燃料タンクの波消し部材を示す側面図である。
【
図8】燃料の液面が低い場合において、第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材を示す側面図である。
【
図9】燃料の液面が高い場合において、第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材を示す側面図である。
【
図10】本発明の第二実施形態に係る燃料タンクの波消し部材の下降時を示す正面図である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係る燃料タンクの波消し部材の上昇時を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る燃料タンクの波消し部材について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態はあくまで例示であって、本発明を限定するものではない。また、各実施形態は適宜組み合わせて構成することができる。
【0015】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る燃料タンク1は、タンク本体2と、波消し部材10とを備えている。タンク本体2は、樹脂製の中空容器であって、内部に燃料を貯留する部材である。タンク本体2は、例えば、内層2a、バリア層2b及び外層2cの複合層で構成されている。バリア層2bは、例えば、EVOH(ethylene-vinylalcohol copolymer)で形成することができる。
【0016】
図4A及び
図4Bに示すように、波消し部材10は、タンク本体2の底面(内面)に立設され、燃料が波立つのを防ぐ部材である。波消し部材10は、第一波消し体11と、第二波消し体21と、を備えている。第一波消し体11の材料は特に制限されないが、本実施形態では樹脂で形成されている。第一波消し体11は、波消しを行う板状部材である。第一波消し体11には、中空部12,12と、規制部13,13と、係合部14,14と、凹部15と、を備えている。
【0017】
中空部12は、後記する第二波消し体21の脚部22及び連結部23が配置される縦長(例えば、円柱状)の空間である。規制部13は、中空部12の上部に設けられ、連結部23は挿通させつつ脚部22に当接することで、脚部22の上方への移動を規制する部位である。
図4Bに示すように、凹部15は、第一波消し体11の上部において上方に開放する断面矩形の凹である。凹部15は、後記する波消し部24の下部が概ね隙間なく配置される部位である。
【0018】
図4A及び
図4Bに示すように、第一波消し体11の下部には、クリップ31と係合する係合部14が設けられている。クリップ31は、大径部31a,31aと、小径部31bと、を備えている。小径部31bは、大径部31aよりも小径であって、大径部31a,31aの間に設けられている。クリップ31は、タンク本体2の成形段階において一体成形されるか、タンク本体2の成形後に溶着により固着されている。
【0019】
図3に示すように、係合部14は、弾性アーム部14a,14aと、収容部14bと、を備えている。弾性アーム部14aは、板状を呈し弾性変形可能になっている。収容部14bは、平面視半円形状を呈し、大径部31aが収容される部位である。
【0020】
図4A及び
図4Bに示すように、第二波消し体21は、波消しを行う板状部材である。第二波消し体21は、例えば、発泡高密度ポリエチレン等、燃料よりも比重の軽い材料で形成されている。つまり、燃料に対して浮くように形成されている。第二波消し体21は、脚部22,22と、連結部23,23と、波消し部24とを備えている。脚部22は、連結部23の下端に設けられており、連結部23よりも拡径している。連結部23は、脚部22と波消し部24とを連結する軸状部分である。脚部22及び連結部23は、波消し部24に対して二か所に設けられている。波消し部24は、燃料の揺動を受ける板状部材である。
【0021】
なお、第二波消し体21は、浮力によって燃料に対して追従するように昇降すればよく、少なくともその一部が浮遊体となる材料で形成される構成であってもよい。
【0022】
図4A及び
図4Bに示すように、燃料の液面が低い位置にある場合(例えば、燃料の液面が、第一波消し体11の上端よりも低い位置にある場合)、第二波消し体21は最下位置に位置している。つまり、第二波消し体21が燃料に対して浮くことはないため、脚部22が中空部12の底部に接触するとともに、波消し部24の下部が凹部15内に配置される。
【0023】
一方、
図5A及び
図5Bに示すように、燃料の液面が高い位置にある場合(例えば、燃料の液面が、第一波消し体11の上端よりも上に位置にする場合)、第一波消し体11に対して第二波消し体21が上昇する。第二波消し体21は、燃料の浮力によって液面に追従するように昇降する。
図5A及び
図5Bでは、第二波消し体21が最も上に位置する状態を描画している。つまり、脚部22,22が規制部13,13にそれぞれ当接することにより、第二波消し体21の上方への移動を規制している。
【0024】
次に、燃料タンク1の製造方法について説明する。まず、タンク本体2及び波消し部材10をそれぞれ形成する。次に、タンク本体2の開口(図示省略)から波消し部材10を挿入し、クリップ31,31に波消し部材10の係合部14,14を押し込み、両者を係合させる。弾性アーム部14a,14aが弾性変形した後、元の状態に復元することで、クリップ31に対して係合部14を固定することができる。これにより、タンク本体2に対して波消し部材10が設置される。
【0025】
ここで、
図6は、燃料の液面が低い場合において、比較例に係る燃料タンクの波消し部材を示す側面図である。
図7は、燃料の液面が高い場合において、比較例に係る燃料タンクの波消し部材を示す側面図である。
図6及び
図7に示す比較例に係る燃料タンク100は、タンク本体2の内部に板状の波消し部材40を備えている。波消し部材40は、燃料Fの液面Faに追従する構成にはなっていない。
【0026】
従来の燃料タンクの波消し部材40であると、
図6に示すように、液面Faの高さ位置が低い場合は、燃料Fが波消し部材40により移動が遮られるため、波消し効果を奏することができる。一方、
図7に示すように、液面Faの高さ位置が高い場合(波消し部材40の上端よりも上に位置する場合)、燃料Fが波消し部材40を超えてしまうため、燃料の波消し効果が低減するという問題がある。
【0027】
これに対し、
図8に示すように、本実施形態に係る波消し部材10であると、液面Faの高さ位置が低い場合は、燃料Fが波消し部材10(第一波消し体11)により移動が遮られるため、波消し効果を奏することができる。他方、
図9に示すように、液面Faの高さ位置が高い場合(第一波消し体11の上端よりも上に位置する場合)、液面Faの上昇に伴って、第二波消し体21が浮力により上昇する。つまり、液面Faに追従して昇降する。これにより、液面Faの高さが高い場合であっても、第二波消し体21が燃料Fの移動を遮るため、燃料Fの波消し効果を奏することができる。
【0028】
また、本実施形態では、
図5Aに示すように、第二波消し体21が上昇した際、第一波消し体11と第二波消し体21との間に隙間Sが形成される。これにより、燃料の揺動を第二波消し体21で抑制しつつ、当該隙間Sに多少の燃料Fが流通することで、第二波消し体21に燃料Fによる過負荷が作用するのを防ぎ、波消し部材10の破損を防ぐことができる。
【0029】
また、第一波消し体11及び第二波消し体21の形状は、適宜設定すればよいが、本実施形態では両者がいずれも板状を呈するため、高い波消し効果を奏することができる。
【0030】
また、本実施形態では、第一波消し体11が、連結部23を挿通させつつ脚部22の上方への移動を規制する規制部13を備えているため、例えば、連結部23の長さを調整することで第二波消し体21の高さ方向の移動量を適宜設定することができる。また、凹部15に波消し部24の下部が嵌ることで、第一波消し体11に対して第二波消し体21がガタつくのを防ぐことができる。
【0031】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る燃料タンクの波消し部材について説明する。第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
図10に示すように、本実施形態に係る波消し部材10Aは、第一波消し体11A及び第二波消し体21Aを備えている。第一波消し体11Aは、中空部12Aと、規制部13Aと、係合部14と、凹部15と、を備えている。中空部12Aは、第一波消し体11Aの長手方向全体が中空となるように設けられている。規制部13A及び凹部15も長手方向全体に亘って形成されている。
【0033】
第二波消し体21Aは、脚部22Aと、連結部23Aと、波消し部24Aと、を備えている。脚部22Aは、連結部23Aに対して幅広となるように形成されている。波消し部24Aは、燃料の揺動を受ける板状部材である。波消し部24Aには、板厚方向に連通する複数の連通孔25が形成されている。連結部23Aは、脚部22Aと波消し部24Aとを連結する部材であって、規制部13Aを挿通するように形成されている。
【0034】
図10に示すように、燃料の液面が低い位置にある場合(例えば、燃料の液面が、第一波消し体11Aの上端よりも低い位置にある場合)、第二波消し体21Aは最下位置に位置している。つまり、脚部22Aが中空部12Aの底部に接触するとともに、波消し部24Aの下部が凹部15内に配置される。
【0035】
一方、
図11に示すように、燃料の液面が高い位置にある場合(例えば、燃料の液面が、第一波消し体11Aの上端よりも上に位置にする場合)、第一波消し体11Aに対して第二波消し体21Aが上昇する。第二波消し体21Aは、燃料の浮力によって液面に追従するように昇降する。
図11では、第二波消し体21Aが最も上に位置する状態を描画している。つまり、脚部22A,22Aが規制部13Aに当接することにより、第二波消し体21Aの上方への移動を規制している。
【0036】
本実施形態によっても第一実施形態と概ね同じ効果を奏することができる。また、連通孔25を備えることで、燃料の揺動を第二波消し体21Aで抑制しつつ、連通孔25に多少の燃料Fが流通することで、第二波消し体21Aに燃料Fによる過負荷が作用するのを防ぎ、波消し部材10Aの破損を防ぐことができる。
【0037】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、波消し部材を板状としたが、柱状等他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 燃料タンク
2 タンク本体
10 波消し部材
11 第一波消し体
12 中空部
13 規制部
14 係合部
21 第二波消し体
22 脚部
23 連結部
24 波消し部
S 隙間