(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161369
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071717
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野道 大介
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB29
3D333CB46
3D333CC19
3D333CE03
(57)【要約】
【課題】ステアリングの操舵角が小さい際に操舵反力の下限値を小さくすると共に、ステアリングの操舵角が大きい際に操舵反力の上限値を大きくする。
【解決手段】ステアリング装置では、モータ26が駆動されて、入力ギヤ34及び出力ギヤ36を介して、ステアリングに操舵反力が作用される。ここで、入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比が、ステアリングの操舵角が小さい際に小さくされると共に、ステアリングの操舵角が大きい際に大きくされる。このため、ステアリングの操舵角が小さい際に操舵反力の下限値を小さくできると共に、ステアリングの操舵角が大きい際に操舵反力の上限値を大きくできる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵されて車両の転舵輪が転舵されるステアリングと、
前記ステアリングに操舵に対する反力である操舵反力を作用させる反力機構と、
前記反力機構に設けられて前記ステアリングに操舵反力を伝達し、前記ステアリングの操舵角が小さい際に減速比が小さくされると共に、前記ステアリングの操舵角が大きい際に減速比が大きくされる一対の変更ギヤと、
を備えるステアリング装置。
【請求項2】
一対の前記変更ギヤがそれぞれ楕円ギヤにされる請求項1記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反力機構がステアリングに操舵反力を作用させるステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の操舵反力生成制御装置では、第1反力生成モータ又は第2反力生成モータがギヤ機構を介してステアリングホイールに操舵に対する反力を作用させる。また、当該反力は、例えば、ステアリングホイールの操舵角度に比例して大きくされる。
【0003】
ここで、このような操舵反力生成制御装置では、ステアリングホイールの操舵角度が小さい際に当該反力の下限値を小さくできると共に、ステアリングホイールの操舵角度が大きい際に当該反力の上限値を大きくできるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、ステアリングの操舵角が小さい際に操舵反力の下限値を小さくできると共に、ステアリングの操舵角が大きい際に操舵反力の上限値を大きくできるステアリング装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のステアリング装置は、操舵されて車両の転舵輪が転舵されるステアリングと、前記ステアリングに操舵に対する反力である操舵反力を作用させる反力機構と、前記反力機構に設けられて前記ステアリングに操舵反力を伝達し、前記ステアリングの操舵角が小さい際に減速比が小さくされると共に、前記ステアリングの操舵角が大きい際に減速比が大きくされる一対の変更ギヤと、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のステアリング装置は、本発明の第1態様のステアリング装置において、一対の前記変更ギヤがそれぞれ楕円ギヤにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1態様のステアリング装置では、ステアリングが操舵されて、車両の転舵輪が転舵される。さらに、反力機構がステアリングに操舵反力(操舵に対する反力)を作用させる。また、反力機構の一対の変更ギヤがステアリングに操舵反力を伝達する。
【0009】
ここで、ステアリングの操舵角が小さい際に一対の変更ギヤの減速比が小さくされると共に、ステアリングの操舵角が大きい際に一対の変更ギヤの減速比が大きくされる。このため、ステアリングの操舵角が小さい際に操舵反力の下限値を小さくできると共に、ステアリングの操舵角が大きい際に操舵反力の上限値を大きくできる。
【0010】
本発明の第2態様のステアリング装置では、一対の変更ギヤがそれぞれ楕円ギヤにされる。このため、ステアリングの操舵角が小さい際に一対の変更ギヤの減速比を小さくできると共に、ステアリングの操舵角が大きい際に一対の変更ギヤの減速比を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るステアリング装置を示す車両後側から見た正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るステアリング装置を示す車両左側から見た側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るステアリング装置の反力機構を示す上側から見た上面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るステアリング装置の入力ギヤ及び出力ギヤ(ピッチ円形状)を示す車両後側から見た正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るステアリング装置におけるステアリングの操舵角(横軸)とステアリングへの操舵反力(縦軸)との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施形態の変形例に係るステアリング装置の入力ギヤ及び出力ギヤ(ピッチ円形状)を示す車両後側から見た正面図である。
【
図7】本発明の実施形態の変形例に係るステアリング装置におけるステアリングの操舵角(横軸)と入力ギヤから出力ギヤへの減速比(縦軸)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、本発明の実施形態に係るステアリング装置10が車両後側から見た正面図にて示されており、
図2には、ステアリング装置10が車両左側から見た側面図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両左方を矢印LHで示し、上方を矢印UPで示している。
【0013】
図1及び
図2に示す如く、本実施形態に係るステアリング装置10には、ステアリング12が設けられている。ステアリング12の内周側には、正面視T字状の内側部12Aが設けられると共に、ステアリング12の外周側には、把持部としての正面視U字状のリム部12Bが設けられており、リム部12Bは、内側部12Aの車両左側端、車両右側端及び下端と一体にされている。ステアリング12は、車両後側における車両の運転席に向けられており、ステアリング12は、運転席に着座する乗員(運転者)の車両前側に配置される。このため、乗員がリム部12Bを把持してステアリング12を操舵(回転操作)可能にされており、ステアリング12は、操舵中央位置(操舵角0°の位置)から左回し方向及び右回し方向に最大操舵角(本実施形態では90°)まで操舵可能にされている。
【0014】
ステアリング12の内側部12Aには、上側かつ車両左右方向中央の部分において、回転部材としての略円柱状のステアリングシャフト14の車両後側端部が固定されており、ステアリングシャフト14は、ステアリング12を支持すると共に、ステアリング12の操舵と一体回転される。
【0015】
ステアリングシャフト14の車両前側には、反力機構16(
図3参照)が設けられており、反力機構16は、ステアリングシャフト14を回転可能に支持している。反力機構16は、車体側に固定されており、これにより、ステアリング装置10が車両に設置されている。
【0016】
反力機構16には、検出部としての角度センサ18が設けられており、角度センサ18は、ステアリングシャフト14の回転方向及び回転角度を検出して、ステアリング12の操舵方向及び操舵角を検出する。角度センサ18は、車両の制御装置20に電気的に接続されており、制御装置20には、車両の転舵装置22が電気的に接続されている。転舵装置22は、車両の転舵輪24(例えば前輪)に機械的に接続されており、ステアリング12が操舵されて、角度センサ18がステアリング12の操舵方向及び操舵角を検出した際には、制御装置20の制御により、転舵装置22が転舵輪24をステアリング12の操舵方向及び操舵角に対応する転舵方向及び転舵角に転舵させる。これにより、ステアリング装置10は、ステアバイワイヤシステムを構成しており、ステアリング12は、転舵輪24に、電気的に接続されて、機械的には接続されない構成にされている。
【0017】
反力機構16には、駆動装置としてのモータ26が設けられており、モータ26は、ブラシ付きモータにされると共に、制御装置20に電気的に接続されている。モータ26の出力軸には、第1ギヤ28が同軸上に固定されると共に、第1ギヤ28には、第2ギヤ30が噛合されており、第2ギヤ30には、減速ギヤ機構32が機械的に接続されている。減速ギヤ機構32には、変更ギヤとしての入力ギヤ34が機械的に接続されており、入力ギヤ34には、変更ギヤとしての出力ギヤ36が噛合されている。出力ギヤ36は、ステアリングシャフト14に同軸上に固定されており、出力ギヤ36は、ステアリングシャフト14及びステアリング12と一体回転される。モータ26が駆動された際には、モータ26の出力(トルク)が、第1ギヤ28から第2ギヤ30を介して減速ギヤ機構32に伝達されて、減速ギヤ機構32によって減速されつつ入力ギヤ34を介して出力ギヤ36ひいてはステアリングシャフト14及びステアリング12に伝達される。
【0018】
入力ギヤ34及び出力ギヤ36は、それぞれ楕円ギアにされており(
図4の(A)及び(B)参照)、入力ギヤ34の回転中心O1及び出力ギヤ36の回転中心O2は、それぞれ入力ギヤ34の中心及び出力ギヤ36の中心と一致されている。ステアリング12の操舵角が0°にされる際には、入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比が最小にされる(
図4(A)参照)と共に、ステアリング12の操舵角が最大操舵角(90°)にされる際には、入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比が最大にされる(
図4(B)参照)。このため、入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比は、ステアリング12の操舵角が小さくなるに従い比例して小さくされると共に、ステアリング12の操舵角が大きくなるに従い比例して大きくされる。
【0019】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0020】
以上の構成のステアリング装置10では、ステアリング12が操舵されて、角度センサ18がステアリング12の操舵方向及び操舵角を検出した際に、反力機構16において、制御装置20の制御により、モータ26が駆動されて、ステアリング12の操舵に対する反力である操舵反力(トルク)がステアリング12に作用される。このため、ステアリング12が転舵輪24に機械的に接続されていなくても、ステアリング12が転舵輪24に機械的に接続される場合と同様に、ステアリング12に操舵反力が作用される。
【0021】
制御装置20の制御では、ステアリング12への操舵反力が、基本的には、ステアリング12の操舵角が0°から大きくなるに従い、0Nmから大きくされる。さらに、ステアリング12への操舵反力は、ステアリング12の操舵角速度、車両の速度、ステアリング12の操舵角の増減及び乗員の好みに対応して増減される。例えば、ステアリング12の操舵角速度が大きくなるに従い、また、車両の速度が大きくなるに従い、操舵反力が増加されると共に、ステアリング12の操舵角速度が小さくなるに従い、また、車両の速度が小さくなるに従い、操舵反力が減少される。さらに、ステアリング12の操舵角が増加される際(ステアリング12が操舵中央位置とは反対側に操舵される際)に対し、ステアリング12の操舵角が減少される際(ステアリング12が操舵中央位置側に操舵される際)に、操舵反力が小さくされる。
【0022】
このため、ステアリング12に作用させる必要がある操舵反力(以下「必要操舵反力」という)は、
図5に示すステアリング12の操舵角に応じた最小値RAから最大値RBまでの範囲にされている。必要操舵反力の最小値RAは、ステアリング12の操舵角が小さくなるに従い小さくされて、ステアリング12の操舵角が0°近傍では、0Nmにされている。必要操舵反力の最大値RBは、ステアリング12の操舵角が0°近傍から大きくなるに従い大きくされる。
【0023】
ところで、モータ26の駆動力が極めて小さい際には、モータ26の出力のステアリング12への伝達経路における摩擦及びモータ26のトルクリップルにより、モータ26が出力不能になる。このため、モータ26の出力には下限値が存在し、これにより、ステアリング12への操舵反力にも下限値が存在する。一方、モータ26の駆動力が極めて大きい際には、モータ26内の温度が耐熱温度に達することで、コイル被覆が溶けてショートする。このため、モータ26の出力には上限値が存在し、これにより、ステアリング12への操舵反力にも上限値が存在する。
【0024】
ここで、反力機構16では、入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比が、ステアリング12の操舵角が小さくなるに従い小さくされると共に、ステアリング12の操舵角が大きくなるに従い大きくされる。このため、ステアリング12の操舵角が小さくなるに従いステアリング12への操舵反力の下限値TAを小さくできると共に、ステアリング12の操舵角が大きくなるに従いステアリング12への操舵反力の上限値TBを大きくできる(
図5参照)。これにより、例えば、モータ26によりステアリング12に必要操舵反力の範囲(ステアリング12の操舵角に応じた最小値RAから最大値RBまでの範囲)を作用させることができる。しかも、ステアリング12の操舵角が0°近傍である際に操舵反力の下限値TAを効果的に小さくでき(略0°にでき)、ステアリング12の操舵角が0°から増加されて(ステアリング12が操舵中央位置から操舵されて)モータ26が出力を開始する際におけるステアリング12への操舵反力(下限値TA)を効果的に小さくできて、乗員がステアリング12を操舵中央位置から操舵する際に違和感を感じることを抑制できる。さらに、モータ26がブラシ付きモータであってもステアリング12に必要操舵反力の範囲を作用させることができ、モータ26を例えばブラシレスモータにする必要をなくすことができて、コストを低減できる。
【0025】
また、入力ギヤ34及び出力ギヤ36がそれぞれ楕円ギアにされている。このため、ステアリング12の操舵角が小さくなるに従い入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比を小さくできると共に、ステアリング12の操舵角が大きくなるに従い入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比を大きくできる。
【0026】
(変形例)
図6には、上記実施形態の変形例に係るステアリング装置50の入力ギヤ34及び出力ギヤ36が車両後側から見た正面図にて示されている。
【0027】
本変形例に係るステアリング装置50では、ステアリング12の最大操舵角が120°にされている。
【0028】
反力機構16では、入力ギヤ34及び出力ギヤ36の形状がそれぞれ
図6の入力ギヤ34A及び出力ギヤ36Aの形状又は入力ギヤ34B及び出力ギヤ36Bの形状にされている。このため、
図7に示す如く、入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比は、ステアリング12の操舵角が小さくなるに従い2次曲線で小さくされると共に、ステアリング12の操舵角が大きくなるに従い2次曲線で大きくされる。
【0029】
これにより、ステアリング12の操舵角が小さくなるに従いステアリング12への操舵反力の下限値TAを小さくできると共に、ステアリング12の操舵角が大きくなるに従いステアリング12への操舵反力の上限値TBを大きくできる。
【0030】
したがって、本変形例でも、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0031】
なお、上記実施形態(変形例を含む)において、入力ギヤ34及び出力ギヤ36の形状はどのような形状でもよく、ステアリング12の操舵角が小さい際に入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比が小さくされると共に、ステアリング12の操舵角が大きい際に入力ギヤ34から出力ギヤ36への減速比が大きくされればよい。
【0032】
また、上記実施形態(変形例を含む)では、モータ26がブラシ付きモータにされる。しかしながら、モータ26がブラシレスモータにされてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10・・・ステアリング装置、12・・・ステアリング、16・・・反力機構、24・・・転舵輪、34・・・入力ギヤ(変更ギヤ)、34A・・・入力ギヤ(変更ギヤ)、34B・・・入力ギヤ(変更ギヤ)、36・・・出力ギヤ(変更ギヤ)、36A・・・出力ギヤ(変更ギヤ)、36B・・・出力ギヤ(変更ギヤ)、50・・・ステアリング装置