(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161373
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20231030BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 613
B41J2/16 505
B41J2/16 517
B41J2/14 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071724
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伊左雄
(72)【発明者】
【氏名】古谷田 実
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AG29
2C057AG45
2C057AG68
2C057AG84
2C057AG91
2C057AK07
2C057AP22
2C057AP23
2C057AP25
2C057AP52
2C057AP55
2C057BA03
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】共通電極の抵抗値を低減しても、電極膜が剥がれることを抑制できる液体吐出ヘッドを提供すること。
【解決手段】実施形態の液体吐出ヘッドは、アクチュエータと、基板と、電極と、を備える。アクチュエータは、一方向に配置される複数の圧力室及び前記複数の圧力室と交互に配置される、樹脂壁を有する複数の空気室を有する。基板は、前記アクチュエータが設けられる。電極は、前記複数の圧力室のそれぞれを駆動する複数の個別電極及び前記複数の空気室を駆動する共通電極を含む、金属膜により形成される。前記共通電極の膜厚は、前記個別電極の膜厚よりも厚い。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配置される複数の圧力室及び前記複数の圧力室と交互に配置される、樹脂壁を有する複数の空気室を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータが設けられる基板と、
前記複数の圧力室のそれぞれを駆動する複数の個別電極及び前記複数の空気室を駆動する共通電極を含む、金属膜により形成される電極と、
を備え、
前記共通電極の膜厚は、前記個別電極の膜厚よりも厚い、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記樹脂壁は、前記空気室内の前記共通電極上に配置される、前記空気室の一次側及び二次側に設けられ、前記空気室の一次側及び二次側をそれぞれ閉塞する請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記個別電極及び前記共通電極は、Niスパッタ膜、無電解Niめっき膜、並びに、前記Niスパッタ膜及び前記無電解Niめっき膜と異種金属の電解金属めっき膜を含む多層膜により形成される、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記電解金属めっき膜は、Auめっき膜であり、
前記共通電極のAuめっき膜厚は、前記個別電極のAuめっき膜厚よりも大きい、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記アクチュエータは、一対設けられ、
前記共通電極は、前記一対のアクチュエータの間に配置され、
前記基板には、前記一対のアクチュエータの間に、前記アクチュエータの長手方向に沿って延びる長孔が形成される、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックからなる基板上に、複数の隔壁を所定の間隔で形成し、各隔壁間をインクの流路とする圧電セラミックスが設けられた、インクジェットヘッド等の液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドは、各隔壁の側面に駆動用の電極が形成され、隔壁の端面をその頂部から底部にかけて外側に広がる傾斜面を有する。液体吐出ヘッドの電極は、隔壁の傾斜面及び基板に引出線としてのパターンが形成される。
【0003】
例えば、液体吐出ヘッドは、インク吐出を高速化する為、液体吐出用の溝(以下、吐出溝)と、液体を吐出しない溝(以下、空気溝)を有する独立駆動構造を用いる。
【0004】
このような独立駆動構造の液体吐出ヘッドとして、液体を吐出しない溝の電極を基板中央に束ねて共通GND電極化し、液体吐出用の溝の電極をドライバIC側に引き出す例がある。しかしながら、共通電極抵抗が大きい場合、ドライバICはラッチアップで壊れてしまうという問題点がある。しかし、共通電極の低抵抗化のために電極膜を厚くすると、厚くした電極膜が剥がれやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、共通電極の抵抗値を低減しても、電極膜が剥がれることを抑制できる液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の液体吐出ヘッドは、アクチュエータと、基板と、電極と、を備える。アクチュエータは、一方向に配置される複数の圧力室及び前記複数の圧力室と交互に配置される、樹脂壁を有する複数の空気室を有する。基板は、前記アクチュエータが設けられる。電極は、前記複数の圧力室のそれぞれを駆動する複数の個別電極及び前記複数の空気室を駆動する共通電極を含む、金属膜により形成される。前記共通電極の膜厚は、前記個別電極の膜厚よりも厚い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図。
【
図2】実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を示す下面図。
【
図3】実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を一部省略して示す下面図。
【
図4】実施形態に係る液体吐出ヘッドのヘッド本体の構成を示す斜視図。
【
図5】実施形態に係るヘッド本体の構成を示す断面図。
【
図6】実施形態に係るヘッド本体の構成を示す平面図。
【
図7】実施形態に係るヘッド本体の構成を一部省略して示す断面図。
【
図8】実施形態に係るヘッド本体の構成を模式的に示す平面図。
【
図9】実施形態に係るヘッド本体の個別電極及び共通電極の構成を示す断面図。
【
図10】実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法の一例を示す流れ図。
【
図11】実施形態に係るヘッド本体の製造の一例を示す平面図。
【
図12】実施形態に係る液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置の構成を示す説明図。
【
図13】実施形態に係るヘッド本体の変形例の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態に係る液体吐出ヘッド1及び液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置2について、
図1乃至
図12を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す斜視図であり、
図2は、液体吐出ヘッド1の構成を示す下面図である。
図3は、液体吐出ヘッド1の構成を、ノズルプレート114を省略して示す下面図である。
図4は、液体吐出ヘッド1のヘッド本体11の構成を、ノズルプレート114の一部を切欠して示す斜視図であり、
図5は、ヘッド本体11の構成を示す断面図である。
図6は、ヘッド本体11の基板111、アクチュエータ113及び電極117の構成を示す平面図である。
図7は、ヘッド本体11の基板111、アクチュエータ113及び電極117の構成を示す断面図である。
図8は、アクチュエータ113の圧力室1131及び空気室1132の構成を模式的に示す平面図である。
【0010】
図9は、ヘッド本体11の個別電極118及び共通電極119の構成を示す断面図である。
図10は、液体吐出ヘッド1の製造方法の一例として、ヘッド本体11の電極117を形成する一例を示す流れ図である。
図11は、ヘッド本体11の製造における中間成形品を示す平面図である。
図12は、液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置2の構成を示す説明図である。なお、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0011】
液体吐出ヘッド1は、例えば、
図12に示すインクジェット記録装置などの液体吐出装置2に設けられるシェアモードのインクジェットヘッドである。液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置2に設けられた液体収容部としての供給タンク2132を含むヘッドユニット2130に設けられる。
【0012】
液体吐出ヘッド1は、供給タンク2132に貯留された液体としてのインクが供給される。なお、液体吐出ヘッド1は、インクを循環させない非循環式のヘッドであってもよく、また、インクを循環させる循環式のヘッドであってもよい。本実施形態において、液体吐出ヘッド1は、非循環式のヘッドの例を用いて説明する。また、液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置2に設けられた温調装置2116に接続され、インクの温度制御を行う温調用液体(温調水)が供給される。
【0013】
図1乃至
図4に示すように、液体吐出ヘッド1は、ヘッド本体11と、マニフォールドユニット12と、回路基板13と、カバー14と、を備える。例えば、液体吐出ヘッド1は、アクチュエータ113を一対有するヘッド本体11を二組有する、サイドシュータタイプの4列一体構造ヘッドである。
【0014】
ヘッド本体11は、液体を吐出する。
図3乃至
図6に示すように、ヘッド本体11は、基板111と、枠部材112と、複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を有するアクチュエータ113と、ノズルプレート114と、を備える。ヘッド本体11は、アクチュエータ113の複数の圧力室1131と連通する共通液室116を有する。
【0015】
また、ヘッド本体11は、基板111及びアクチュエータ113に、アクチュエータ113の複数の圧力室1131を駆動する電極117と、を有する。
【0016】
本実施形態の例においては、ヘッド本体11がアクチュエータ113を2つ有し、共通液室116は、1つの第1共通液室1161、及び、2つの第2共通液室1162を有する例を用いて説明する。共通液室116は、例えば、アクチュエータ113の複数の圧力室1131の一方の開口と連通する第1共通液室1161と、アクチュエータ113の複数の圧力室1131の他方の開口と連通する第2共通液室1162と、第1共通液室1161の両端と2つの第2共通液室1162の両端とを連続する第3共通液室1163と、を有する。
【0017】
基板111は、例えばセラミックス材料により矩形板状に形成される。基板111は、例えば、一方向に長い矩形状に形成される。基板111の一面には、電極117の一部となる配線パターンが形成される。具体例として、基板111の一面には、電極117の後述する複数の個別電極118の一部となる配線パターン、及び、単数の共通電極119の一部となる配線パターンが形成される。基板111の一面には、基板111の短手方向に並んで一対のアクチュエータ113が設けられる。基板111の一面とは、基板111の一方の面である。基板111は、例えば、単数の供給口1111と、複数の排出口1112と、を有する。供給口1111及び排出口1112は、基板111の両主面間を貫通する貫通孔である。
【0018】
供給口1111は、インクを第1共通液室1161に供給する入口である。供給口1111は、基板111の短手方向の中央に形成される貫通孔である。供給口1111は、基板111の長手方向に沿って延びる。換言すると、供給口1111は、例えば、アクチュエータ113の長手方向及び第1共通液室1161の長手方向に沿って一方向に長い長孔である。供給口1111は、一対のアクチュエータ113の間に設けられ、第1共通液室1161と対向する位置に開口する。
【0019】
排出口1112は、インクを第2共通液室1162から排出する出口である。排出口1112は、複数、例えば、四つ設けられる。各排出口1112は、例えば、二つの第3共通液室1163に設けられる。なお、複数の排出口1112は、第2共通液室1162に設けられていても良い。
【0020】
枠部材112は、基板111の一方の主面に接着剤等により固定される。枠部材112は、基板111に設けられた供給口1111、複数の排出口1112、及び、アクチュエータ113を囲う。例えば、枠部材112は、段構造を有する。
【0021】
例えば、枠部材112は、矩形枠状に形成されることで、枠部材112の長手方向に沿って一方向に長い開口を形成する。枠部材112の開口には、一対のアクチュエータ113、供給口1111及び四つの排出口1112が配置される。
【0022】
一対のアクチュエータ113は、基板111の実装面に接着される。一対のアクチュエータ113は供給口1111を挟んで二列に並んで基板111に設けられる。アクチュエータ113は、一方向に長い板状に形成される。アクチュエータ113は、枠部材112の開口内に配置され、基板111の主面に接着される。
【0023】
図3、
図4及び
図6に示すように、アクチュエータ113は、長手方向に等間隔に配置された複数の圧力室1131と、長手方向に等間隔に複数配置されるとともに、隣り合う圧力室1131の間に配置された空気室1132と、を有する。換言すると、アクチュエータ113には、長手方向に沿って、複数の圧力室1131及び複数の空気室1132が交互に配置される。
【0024】
アクチュエータ113の基板111とは反対側の面は、ノズルプレート114に接着される。アクチュエータ113は、長手方向に等間隔に並んで配置され、長手方向に直交する方向に沿う複数の溝が形成される。複数の溝は、複数の圧力室1131と、複数の空気室1132と、を形成する。即ち、複数の溝は、複数の圧力室1131を構成する複数の圧力溝と、複数の空気室1132を構成する複数の空気溝とを含む。換言すると、アクチュエータ113は、長手方向に等間隔に並んで配置され、間に溝を形成する壁を構成する駆動素子である複数の圧電体1133を有する。複数の圧電体1133は、隣り合う圧電体1133の間に複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を形成し、駆動電圧が印加されることで、圧力室1131の容積を変化させる。
【0025】
アクチュエータ113は、例えば、短手方向の幅が、頂部側から基板111側に向かって漸次大きくなる。アクチュエータ113の長手方向に直交する方向(短手方向)に沿った断面の断面形状は、台形状に形成される。即ち、アクチュエータ113は、短手方向の側面部に傾斜する傾斜面1134を有する。側面部(傾斜面1134)は、第1共通液室1161及び第2共通液室1162に対向配置される。
【0026】
具体例として、アクチュエータ113は、一方向に長い矩形板状の二枚の圧電材料を、互いの分極方向が逆向きとなるように対向して接着した積層圧電部材により形成される。ここで、圧電材料は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)である。アクチュエータ113は、例えば熱硬化性を有するエポキシ系接着剤によって基板111の実装面に接着される。そして、アクチュエータ113は、例えば、切削加工等によって、傾斜面1134を構成する。また、併せて、基板111及びアクチュエータ113は、例えば、研磨加工によって、電極117の複数の個別電極118及び共通電極119がパターニングされる表面が研磨され、研磨面が形成される。例えば、研磨面は、アクチュエータ113の傾斜面1134及び傾斜面1134の麓の基板111上に形成される。また、アクチュエータ113は、例えば、切削加工により、複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を形成する複数の溝が形成され、隣り合う溝の間を区切る側壁である圧電体(駆動素子)1133が形成される。
【0027】
また、アクチュエータ113には、複数の個別電極118の一部となる配線パターン、及び、単数又は複数の共通電極119の一部となる配線パターンが形成される。
【0028】
圧力室1131は、液体吐出ヘッド1による印字等の動作時に、変形することで、インクをノズル1141から噴射させる。圧力室1131は、入口が第1共通液室1161に開口し、出口が第2共通液室1162に開口する。圧力室1131は、入口からインクが流入し、出口からインクが流出する。なお、圧力室1131は、入口及び出口として説明した両開口からインクが流入する構成であってもよい。
【0029】
空気室1132は、
図7に破線で示すとともに、
図8に実線で示すように、アクチュエータ113に形成された空気溝の長手方向の両側が、感光性樹脂等により形成された樹脂壁である防液壁1135によって塞がれることで、第1共通液室1161及び第2共通液室1162と隔てられる。具体例として、空気室1132の防液壁1135は、空気室1132を形成する溝内に紫外線硬化樹脂を注入した後、マスクプレート等を用いて、必要な部分、例えば、溝の第1共通液室1161隣接側及び第2共通液室1162隣接側である両端部に紫外線を照射することで形成される。このような防液壁1135は、空気室1132へのインクの侵入を防止する。また、防液壁1135は、アクチュエータ113の空気室1132内に形成された共通電極119上に形成される。また、空気室1132は、ノズルプレート114によって塞がれ、ノズル1141が配置されない。よって、空気室1132には、インクが流入しない。
【0030】
ノズルプレート114は、板状に形成される。ノズルプレート114は、枠部材112の基板111とは反対側の主面に接着剤等により固定される。ノズルプレート114は、複数の圧力室1131と対向する位置に形成された複数のノズル1141を有する。本実施形態において、ノズルプレート114は、複数のノズル1141が一方向に並ぶノズル列1142を二列有する。
【0031】
第1共通液室1161は、一対のアクチュエータ113の両端部を除く中央側の間に形成され、供給口1111から各アクチュエータ113の複数の圧力室1131の一方の開口へのインクの流路を構成する。第1共通液室1161は、アクチュエータ113の長手方向に沿って延びる。
【0032】
第2共通液室1162は、各アクチュエータ113と枠部材112との間にそれぞれ形成される。第2共通液室1162は、第3共通液室1163から複数の圧力室1131の他方の開口へのインクの流路を形成する。第2共通液室1162は、アクチュエータ113の長手方向に沿って延びる。
【0033】
第3共通液室1163は、例えば、アクチュエータ113の長手方向の両端と隣接する。第3共通液室1163は、一対のアクチュエータ113の長手方向の両端側において、第1共通液室1161及び二つの第2共通液室1162を連通する。第3共通液室1163は、第1共通液室1161から各アクチュエータ113の複数の圧力室1131を通過せずに、第2共通液室1162へ至る一部のインクの流路を形成する。また、第3共通液室1163は、第1共通液室1161及び二つの第2共通液室1162から排出口1112へのインクの流路を形成する。
【0034】
電極117は、金属材料により膜状に形成された電極膜(金属膜)である。電極117は、例えば、複数の圧力室1131のそれぞれ駆動する複数の個別電極118と、複数の圧力室1131を同時に駆動する単数又は複数の共通電極119と、を有する。
【0035】
図7に示すように、電極117は、基板111の上面及びアクチュエータ113の傾斜面1134に形成される導体部分である第1電極部1171と、アクチュエータ113の複数の圧力室1131及び複数の空気室1132の底面及び側面に形成される導体部分である第2電極部1172と、を有する。
【0036】
第1電極部1171は、配線パターン(引出線)である。第1電極部1171は、多層膜により形成される。第2電極部1172は、圧力室1131及び空気室1132を形成する溝の底面に形成される。第2電極部1172は、第1電極部1171と同じ層の多層膜により形成される。
【0037】
図7及び
図9に示すように、電極117は、Niスパッタ膜11731、無電解Niめっき膜11732、並びに、Niスパッタ膜11731及び無電解Niめっき膜11732と異なる金属(異種金属)で形成された電解金属めっき膜11733を含む。なお、電極117は、無電解Niめっき膜11732及び電解金属めっき膜11733の間に、電解Niめっき膜を有する構成であってもよい。
【0038】
電解金属めっき膜11733は、例えば、Auめっき膜である。以下の説明において、電解金属めっき膜11733を電解Auめっき膜11733として説明する。なお、電解金属めっき膜11733は、Au以外の他の金属材料であってもよい。
【0039】
電極117は、
図9に示すように、個別電極118の電解Auめっき膜11733のめっき膜厚t1よりも、共通電極119の電解Auめっき膜11733のめっき膜厚t2が厚い。なお、Niスパッタ膜11731の厚さ及び無電解Niめっき膜11732の厚さは、個別電極118及び共通電極119で、同じ厚さである。このため、共通電極119は、個別電極118よりも膜厚が厚く、そして、抵抗値が低い。なお、Niスパッタ膜11731及び無電解Niめっき膜11732の厚さは、異なっているが、同じ膜厚であってもよい。
【0040】
複数の個別電極118は、駆動素子である複数の圧電体1133に個別に駆動電圧を印加する。複数の個別電極118は、各圧力室1131を個別に変形させる。個別電極118は、基板111に形成された配線パターン及びアクチュエータ113に形成された配線パターンにより形成される。個別電極118は、第1電極部1171及び第2電極部1172によって形成される配線パターンである。複数の個別電極118は、回路基板13に接続される。
【0041】
具体例として、
図7に示すように、複数の個別電極118は、各圧力室1131の内面、アクチュエータ113の傾斜面1134及び基板111上に成膜される。具体的には、個別電極118は、第2電極部1172により、圧力室1131を形成する圧電体1133の側面、及び、圧力室1131(圧力溝)の底面に形成される。また、個別電極118は、第1電極部1171により、傾斜面1134及び基板111の研磨面に形成される。個別電極118は、圧力室1131内から、基板111の短手方向の端部へ延び、基板111の回路基板13が接続される接続部1116に端部が配置される。個別電極118は、圧力室1131の底部及び圧電体1133を形成する圧電部材の表面に密着するように設けられる。例えば、基板111上の個別電極118は、枠部材112の下面側において、枠部材112を基板111に接着させる接着剤によって覆われる。
【0042】
共通電極119は、複数の圧電体1133に駆動電圧を印加する。共通電極119は、例えば、複数の圧電体1133の全てに同じ駆動電圧を印加する。共通電極119は、複数の圧力室1131を同時に変形させる。共通電極119は、基板111に形成された配線パターン及びアクチュエータ113に形成された配線パターンにより形成される。共通電極119は、基板111の供給口1111の内周面から複数の空気室1132を形成する圧電体1133に渡って設けられた配線パターンである。共通電極119は、回路基板13に接続される。
【0043】
具体例として、
図7に示すように、共通電極119は、各空気室1132の内面、アクチュエータ113の傾斜面1134及び個別電極118が形成される領域を避けて基板111上に成膜される。具体的には、共通電極119は、第2電極部1172により、各空気室1132を形成する圧電体1133の側面、及び、空気室1132(空気溝)の底面に形成される。また、共通電極119は、第1電極部1171により、各空気室1132内から、基板111の中央部へ向かって、傾斜面1134上に設けられるとともに、一対のアクチュエータ113の間の基板111の研磨面上及び供給口1111の内周面に形成される。また、共通電極119は、基板111の短手方向の端部へ延び、基板111の回路基板13が接続される接続部1116に端部が配置される。
【0044】
換言すると、共通電極119は、基板111の短手方向の端部に形成された接続部1116から複数の個別電極118が形成されていない領域、及び、一対のアクチュエータ113の間である基板111の短手方向中央側を介して、アクチュエータ113の傾斜面1134及び複数の空気室1132の内面に一体に設けられる。また、空気室1132内に設けられる共通電極119の一部は、防液壁1135の外面及び空気室1132の内面の間に配置される。
【0045】
図1、
図4及び
図5に示すように、マニフォールドユニット12は、マニフォールド121と、天板122と、インク供給管123と、インク排出管124と、一対の温調用管である温調水供給管125及び温調水排出管と、を備える。なお、インク供給管123、インク排出管124、温調水供給管125及び温調水排出管の数は適宜設定できる。
【0046】
マニフォールド121は、板状又はブロック状に形成される。
図5に示すように、マニフォールド121は、基板111の供給口1111と連続し、液体供給流路を形成する供給流路1211と、基板111の排出口1112と連続し、液体排出流路を形成する排出流路と、温調用の流体の流路を形成する温調用流路1213と、を備える。
【0047】
マニフォールド121の一方の主面は、基板111の主面に固定される。また、マニフォールド121は、基板111が固定される主面とは反対の主面に、天板122が固定される。また、マニフォールド121には、例えば、インク供給管123、インク排出管124、温調水供給管125及び温調水排出管が天板122を介して固定される。
【0048】
供給流路1211は、孔や溝によってマニフォールド121に形成される流路である。供給流路1211は、インク供給管123及び基板111の供給口1111を流体的に接続する。
【0049】
排出流路は、孔や溝によってマニフォールド121に形成される流路である。排出流路は、インク排出管124及び基板111の排出口1112を流体的に接続する。
【0050】
温調用流路1213は、孔や溝によってマニフォールド121に形成される流路である。温調用流路1213は、温調水供給管125及び温調水排出管を流体的に接続する。
【0051】
温調用流路1213の両端は、マニフォールド121の一方の主面に設けられた温調水供給管125及び温調水排出管と接続される開口である。また、温調用流路1213は、マニフォールド121に固定される基板111と熱交換が可能に形成される。
【0052】
天板122は、マニフォールド121の基板111が設けられる面とは反対の面に設けられる。天板122は、マニフォールド121を覆うことで、供給流路1211、排出流路及び温調用流路1213を封止する。
【0053】
また、天板122は、各管123、124、125を接続し、各管123、124、125及び各流路1211、1213を連通させる開口を有する。
【0054】
インク供給管123は、供給流路1211に接続される。インク排出管124は、排出流路に接続される。温調水供給管125及び温調水排出管は、温調用流路1213の一次側及び二次側に接続される。
【0055】
図4に示すように、回路基板13は、一端が基板111の接続部1116に接続される配線フィルム131と、配線フィルム131に搭載されたドライバIC132と、配線フィルム131の他端に実装されたプリント配線基板133と、を備える。
【0056】
回路基板13は、ドライバIC132により駆動電圧をアクチュエータ113の配線パターンに印加することでアクチュエータ113を駆動し、圧力室1131の容積を増減させて、ノズル1141から液滴を吐出させる。
【0057】
配線フィルム131は、複数の個別電極118及び共通電極119に接続される。例えば、配線フィルム131は、基板111の接続部に熱圧着等により固定されるACF(異方導電性フィルム)である。接続される配線フィルム131は、例えば、一つのヘッド本体11に対して複数設けられる。本実施形態においては、配線フィルム131は、1つのアクチュエータ113に2つ連結される。配線フィルム131は、例えば、ドライバIC132が実装されたCOF(Chip on Film)である。
【0058】
ドライバIC132は、配線フィルム131を介して複数の個別電極118及び共通電極119に接続される。なお、ドライバIC132は、配線フィルム131ではなく、ACP(異方導電ペースト)、NCF(非導電性フィルム)、及びNCP(非導電性ペースト)のような他の手段によって、複数の個別電極118及び共通電極119に接続されても良い。
【0059】
プリント配線基板133は、各種電子部品やコネクタが搭載されたPWA(Printing Wiring Assembly)である。
【0060】
カバー14は、例えば、一対のヘッド本体11の側面、マニフォールドユニット12及び回路基板13を覆う外郭体141と、一対のヘッド本体11のノズルプレート114側の一部を覆うマスクプレート142と、を備える。
【0061】
外郭体141は、例えば、マニフォールドユニット12のうちインク供給管123、インク排出管124、温調水供給管125及び温調水排出管と、回路基板13の端部とを、外部に露出させる。
【0062】
マスクプレート142は、一対のヘッド本体11のうち、複数のノズル1141及びノズルプレート114の複数のノズル1141の周囲を除く部位を覆う。
【0063】
次に、液体吐出ヘッド1の製造方法の一例として、ヘッド本体11の電極117を成形する例を、
図10に示す流れ図を用いて説明する。
【0064】
まず、基板111を構成する基材101及びアクチュエータ113の所定の領域に、スパッタリングを行い、Niスパッタ膜11731を形成する(ACT1)。ここで、基材101は、
図11に示すように、基板111よりも大きい矩形状に形成され、基板111となる領域に研磨面を含む。また、基材101の基板111となる領域上には、一対のアクチュエータ113が接合されている。
【0065】
ACT1の具体例として、研磨面を含む基板111となる領域を含む基材101上、アクチュエータ113の傾斜面1134及びアクチュエータ113の複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を構成する複数の圧電体1133(複数の溝)の内面にNiスパッタ膜11731を形成する。
【0066】
次に、無電解めっき法を用いて、Niスパッタ膜11731上に無電解Niめっき膜11732を形成する(ACT2)。例えば、Niスパッタ膜11731を触媒として、無電解Niめっき膜11732を形成する。
【0067】
次に、PEP(Photo Engraving Process)等のフォトリソグラフィ等により、形成したNiスパッタ膜11731/無電解Niめっき膜11732による電極をパターニングする(ACT3)。このときの電極パターンは、例えば、基板111及びアクチュエータ113に形成される複数の個別電極118及び共通電極119と同様のパターンである。なお、基材101は、基板111よりも大きい形状であることから、
図11に示すように、基材101の個別電極118及び共通電極119が形成される領域以外にも電極が形成され、そして、個別電極118及び共通電極119と連続する。
【0068】
次に、電解めっき法を用いて、パターニングした無電解Niめっき膜11732上に、電解Auめっき膜11733を形成する(ACT4)。これにより、複数の個別電極118及び共通電極119に電解Auめっき膜11733が形成される。このときの、電解Auめっき膜11733のめっき膜厚は、個別電極118及び共通電極119ともに、同じ膜厚となる。
【0069】
次に、
図11に二点鎖線で示すラインCのように、レーザ加工法等を用いて、複数の個別電極118と共通電極119とが非連続となるように、基材101上に形成された電極をカットする(ACT5)。このとき、基材101上に形成された電極だけでなく、基材101の一部を切り離しても良い。
【0070】
具体例として、ACT5の前においては、基材101のうち基板111を構成する領域以外の領域には、複数の個別電極118及び共通電極119と連続する電極が形成される。そして、ACT5において、レーザ加工法によってラインCに沿って電極を切り離し、複数の個別電極118と接続する電極と、共通電極119と接続する電極とを電気的に切り離す。加えて、一対のアクチュエータ113の並び方向で複数の個別電極118と連続する基材101の実装側電極部1011は、基材101とともに複数の個別電極118と切り離される。なお、ACT5の電極カットは、レーザ加工法でなく、フォトリソグラフィ等の他の方法によっておこなってもよい。
【0071】
次に、電解めっき法を用いて、共通電極119に選択的に電解Auめっき膜を形成する(ACT6)。即ち、共通電極119の電解Auめっき膜11733上に、さらに電解Auめっき膜を形成する。なお、ACT5において、個別電極118と共通電極119とが電気的に切り離されているため、電解めっきのために共通電極119に通電しても、個別電極118には通電されないことから、共通電極119のみを電解めっきできる。この電解めっきにより、
図8に示すように、共通電極119の電解Auめっき膜11733の厚さt2が、個別電極118の電解Auめっき膜11733の厚さt1よりも厚くなる。
【0072】
次に、基材101を基板111の形状となるように外形カットし(ACT7)、空気室1132(空気溝)の第1共通液室1161隣接側及び第2共通液室1162隣接側に、樹脂壁としての防液壁1135を形成する(ACT8)。例えば、空気室1132(空気溝)の第1共通液室1161隣接側を一次側とし、第2共通液室1162隣接側を二次側とする。ただし、第2共通液室1162隣接側を一次側とし、第1共通液室1161隣接側を二次側としてもよい。これにより、空気室1132内に防液壁1135が形成されて、空気室1132内に形成された共通電極119の一部の表面に、防液壁1135が接触して設けられる。次に、一対のアクチュエータ113の上面を研磨する(ACT9)。
【0073】
これらの工程により、ヘッド本体11の電極117が成形される。なお、これらの工程の後、回路基板13の一端が基板111の接続部1116に接続され、枠部材112が基板上に接合され、ノズルプレート114が基板111、枠部材112及びアクチュエータ113上に接合されることで、ヘッド本体11が成形される。なお、回路基板13の接続及び枠部材112の接合は、ACT8の後に行われ、そして、ACT9において一対のアクチュエータ113に加え、枠部材112の上面を研磨してもよい。
【0074】
このように構成された液体吐出ヘッド1は、ヘッド本体11に、各圧電体1133に駆動電圧をそれぞれ個別に印加できる複数の個別電極118、及び、全ての圧電体1133に駆動電圧を印加できる共通電極119を有する。
【0075】
このため、液体吐出ヘッド1は、複数の圧力室1131を選択的に、個別に、又は、共通して駆動することができる。そして、圧力室1131が駆動すると、圧力室1131がシェアモード変形し、圧力室1131内に供給されたインクが加圧される。よって、液体吐出ヘッド1は、加圧されたインクを、変形した圧力室1131に対向するノズル1141から選択的に吐出することができる。
【0076】
また、共通電極119は、個別電極118よりも膜厚が厚いことから、複数の空気室1132に接続される駆動電圧を印加する共通電極119の抵抗値を低減させることができる。即ち、共通電極119の抵抗値を小さくできることから、複数の圧力室1131を駆動するときに、ヘッド本体11のノズル1141の並び方向で中央部側と端部側とで吐出性能に差が生じることを抑制できる。
【0077】
また、防液壁1135は、空気室1132内において、溝幅方向に充填された構造のため、共通電極119は、空気室1132内において、防液壁1135により一部が押さえられる。また、防液壁1135が空気室1132の第1共通液室1161隣接側及び第2共通液室1162隣接側に設けられることで、アクチュエータ113の隣り合う圧電体1133が防液壁1135により一体となることから、アクチュエータ113の圧電体1133の剛性を向上させることができる。
【0078】
よって、膜厚が厚くなり、電解Auめっき膜11733の密着力が小さくなっても、防液壁1135により、共通電極119の電極剥がれを抑制することができる。特に、電極117の成形時において、アクチュエータ113の研磨工程によってアクチュエータ113に研磨方向の振動が生じる。しかしながら、アクチュエータ113の研磨工程において振動が生じても、共通電極119の一部の表面に防液壁1135が設けられるため、ヘッド本体11は、共通電極119の剥がれを抑制することができる。
【0079】
以上説明した実施形態の液体吐出ヘッド1によれば、空気室1132内の共通電極119上に防液壁1135(樹脂壁)を設けることで、共通電極119の膜厚を個別電極118の膜厚よりも厚くし、共通電極119の抵抗値を低減しても、電極膜である電解Auめっき膜11733が剥がれることを抑制できる。
【0080】
以下、液体吐出ヘッド1を有するインクジェット記録装置2について、
図12を参照して説明する。インクジェット記録装置2は、筐体2111と、媒体供給部2112と、画像形成部2113と、媒体排出部2114と、支持装置である搬送装置2115と、温調装置2116と、メンテナンス装置2117と、制御部2118と、を備える。また、インクジェット記録装置2は、液体吐出ヘッド1に供給するインクの温度を調整する温調装置を備えている。
【0081】
インクジェット記録装置2は、媒体供給部2112から画像形成部2113を通って媒体排出部2114に至る所定の搬送路2001に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
【0082】
媒体供給部2112は複数の給紙カセット21121を備える。画像形成部2113は、用紙を支持する支持部2120と、支持部2120の上方に対向配置された複数のヘッドユニット2130と、を備える。媒体排出部2114は、排紙トレイ21141を備える。
【0083】
支持部2120は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト21201と、搬送ベルト21201を裏側から支持する支持プレート21202と、搬送ベルト21201の裏側に備えられた複数のベルトローラ21203と、を備える。
【0084】
ヘッドユニット2130は、複数のインクジェットヘッドである液体吐出ヘッド1と、各液体吐出ヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数の供給タンク2132と、インクを供給するポンプ2134と、液体吐出ヘッド1と供給タンク2132とを接続する接続流路2135と、を備える。
【0085】
本実施形態において、液体吐出ヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色の液体吐出ヘッド1と、これらの各色のインクをそれぞれ収容する4色の供給タンク2132を備える。供給タンク2132は接続流路2135によって液体吐出ヘッド1に接続される。
【0086】
ポンプ2134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。ポンプ2134は、制御部2118に接続され、制御部2118により駆動制御される。
【0087】
接続流路2135は、液体吐出ヘッド1のインク供給管123に接続される供給流路を備える。また、接続流路2135は、液体吐出ヘッド1のインク排出管124に接続される回収流路を備える。例えば、液体吐出ヘッド1が非循環式の場合には、回収回路は、メンテナンス装置2117に接続され、液体吐出ヘッド1が循環式の場合には、回収流路は、供給タンク2132に接続される。
【0088】
搬送装置2115は、媒体供給部2112の給紙カセット21121から画像形成部2113を通って媒体排出部2114の排紙トレイ21141に至る搬送路2001に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置2115は、搬送路2001に沿って配置される複数のガイドプレート対21211~21218と、複数の搬送用ローラ21221~21228と、を備えている。搬送装置2115は、用紙Pを液体吐出ヘッド1に相対移動可能に支持する。
【0089】
温調装置2116は、温調水タンク21161、温調水を供給する配管やチューブ等の温調用回路21162、温調水を供給するポンプ及び温調水の温度を調整する温調器等を有する。温調装置2116は、温調器で所定の温度に調整した温調水タンク21161の温調水を、ポンプの送水によって温調用回路21162を介して液体吐出ヘッド1の温調水供給管125に供給する。また、温調装置2116は、マニフォールドユニット12を通って温調水排出管から排出された水を、温調用回路21162を介して温調水タンク21161に回収する。なお、温調器は、例えば、ヒーターやクーラーである。また、温調装置2116は、液体吐出ヘッド1に供給するインクの温度を調整する構成としてもよい。
【0090】
メンテナンス装置2117は、例えば、メンテナンス時にノズルプレート114の外面に残存するインクを吸引し、回収する。また、液体吐出ヘッド1が非循環式である場合には、メンテナンス装置2117は、メンテナンス時に、ヘッド本体11内のインクを回収する。このようなメンテナンス装置2117は、回収したインクを貯留するトレイやタンク等を有する。
【0091】
制御部2118は、プロセッサの一例としてのCPU21181と、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等のメモリと、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0092】
以上説明した実施形態の液体吐出装置2によれば、空気室1132内の共通電極119上に防液壁1135(樹脂壁)を設けることで、共通電極119の膜厚を個別電極118の膜厚よりも厚くし、共通電極119の抵抗値を低減しても、電極膜である電解Auめっき膜11733が剥がれることを抑制できる。
【0093】
なお、本発明の実施形態は上述した構成に限定されない。例えば、上述した例では、液体吐出ヘッド1は、一対のヘッド本体11を設ける構成を説明したがこれに限定されず、一つのヘッド本体11を有する構成としてもよい。また、上述した例では、液体吐出ヘッド1は、非循環式の例を説明したが循環式でもよい。
【0094】
また、上述した例では、液体吐出ヘッド1は、樹脂壁としての防液壁1135をアクチュエータ113の空気室1132(空気溝)内に備える例を説明したがこれに限定されない。例えば、
図13に示すように、液体吐出ヘッド1のヘッド本体11は、アクチュエータ113の圧力室1131(圧力溝)内に、圧力室1131を流れる液体を絞る絞り11361を形成する樹脂壁1136をさらに有する構成としてもよい。なお、樹脂壁1136は、防液壁1135と同じ成形方法によって成形される。
【0095】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、空気室内の共通電極上に樹脂壁を設けることで、共通電極の抵抗値を低減しても、電極膜が剥がれることを抑制できる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1…液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)、2…液体吐出装置(インクジェット記録装置)、11…ヘッド本体、12…マニフォールドユニット、13…回路基板、14…カバー、111…基板、112…枠部材、113…アクチュエータ、114…ノズルプレート、116…共通液室、117…電極、118…個別電極、119…共通電極、121…マニフォールド、122…天板、123…インク供給管、124…インク排出管、125…温調水供給管、131…配線フィルム、132…ドライバIC、133…プリント配線基板、141…外郭体、142…マスクプレート、1111…供給口、1112…排出口、1116…接続部、1131…圧力室、1132…空気室、1133…圧電体(駆動素子)、1134…傾斜面、1135…防液壁、1141…ノズル、1142…ノズル列、1161…第1共通液室、1162…第2共通液室、1163…第3共通液室、1171…第1電極部、1172…第2電極部、1211…供給流路、1213…温調用流路、2001…搬送路、2111…筐体、2112…媒体供給部、2113…画像形成部、2114…媒体排出部、2115…搬送装置、2116…温調装置、2117…メンテナンス装置、2118…制御部、2120…支持部、2130…ヘッドユニット、2132…供給タンク、2134…ポンプ、2135…接続流路、11731…Niスパッタ膜、11732…無電解Niめっき膜、11733…電解Auめっき膜(電解金属めっき膜)、21121…給紙カセット、21141…排紙トレイ、21201…搬送ベルト、21202…支持プレート、21203…ベルトローラ、21211…ガイドプレート対、21212…ガイドプレート対、21213…ガイドプレート対、21214…ガイドプレート対、21215…ガイドプレート対、21216…ガイドプレート対、21217…ガイドプレート対、21218…ガイドプレート対、21221…搬送用ローラ、21222…搬送用ローラ、21223…搬送用ローラ、21224…搬送用ローラ、21225…搬送用ローラ、21226…搬送用ローラ、21227…搬送用ローラ、21228…搬送用ローラ、P…用紙。