(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161382
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】排水処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20231030BHJP
B01D 24/02 20060101ALI20231030BHJP
B01D 24/00 20060101ALI20231030BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20231030BHJP
C02F 1/56 20230101ALI20231030BHJP
A01K 1/01 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C02F1/00 L
B01D23/10 A
B01D25/06
C02F1/52 K
C02F1/56 K
A01K1/01 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071740
(22)【出願日】2022-04-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】522166840
【氏名又は名称】株式会社令和コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇
(72)【発明者】
【氏名】平田 敏子
【テーマコード(参考)】
2B101
4D015
4D116
【Fターム(参考)】
2B101CC13
2B101CC17
4D015CA20
4D015DA16
4D015DB01
4D015DC02
4D015EA35
4D116AA11
4D116AA12
4D116BA08
4D116DD01
4D116FF01A
4D116GG13
4D116HH30A
4D116QA24A
4D116QA24D
4D116QA31A
4D116QA31D
4D116QA51A
4D116QA51D
4D116TT07
4D116VV09
(57)【要約】
【課題】簡単な設備で処理時間が短く、設備コストや運転コストが少なく、処理後の排水のBOD値を充分に低下させることができる排水処理システムを提供すること。
【解決手段】畜舎等から排出される洗浄廃水等の排水を分離、浄化処理する排水処理システムであって、排水の上澄成分が上澄移送ユニット121によって導入される処理水槽120と、処理水槽120の上澄成分が第1処理水移送ユニット131によって導入される第1濾過槽130と、第1濾過槽130を通過した液体成分が第2処理水移送ユニットに141よって導入される第2濾過槽140とを有すること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜舎等から排出される洗浄廃水等の排水を分離、浄化処理する排水処理システムであって、
排水の上澄成分が上澄移送ユニットによって導入される処理水槽と、
前記処理水槽の上澄成分が第1処理水移送ユニットによって導入される第1濾過槽と、
前記第1濾過槽を通過した液体成分が第2処理水移送ユニットによって導入される第2濾過槽とを有することを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記第1濾過槽及び前記第2濾過槽は、濾過材として多孔質化した木質砕片を有することを特徴とする請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
排水が導入され、沈殿分離が行われる複数の原水槽と、
前記原水槽の沈殿成分が汚泥移送ユニットによって導入される汚泥槽とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記汚泥槽は、前記原水槽の底部よりも下に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の排水処理システム。
【請求項5】
前記複数の原水槽は、凝集剤を投入して撹拌する撹拌ユニットを有することを特徴とする請求項2に記載の排水処理システム。
【請求項6】
前記撹拌ユニットは、導入された排水が原水槽に満たされると排水の導入を停止して所定時間撹拌を行うように構成された撹拌制御部を有することを特徴とする請求項5に記載の排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畜舎等から排出される洗浄廃水等の排水を分離、浄化処理する排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
畜舎等から排出される洗浄廃水等の排水は、強い異臭と汚濁、着色があり、高BOD値を有する。
これらを処理する際に、固形物と液状排水とに分別し、その排水に希釈水を加えて放流したり地下に浸透させる等の方法が取ることも考えられるが、環境汚染を来さない放流可能な浄水とすることは困難であった。
また、環境負荷が小さくなるようBOD値を低下させる方法として、有機物を処理する微生物有し曝気させる曝気槽で排水を処理するもの等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1等で公知の廃水処理システムでは、パーラー廃水を一時ストックする原水槽と、パーラー廃水に含まれる粗大固形物を除去するスクリーンと、前記粗大固形物を除去したパーラー廃水を蓄える貯留槽と、パーラー廃水を分離沈殿させる第一沈殿槽と、前記パーラー廃水に含まれる有機物を処理する微生物を有し曝気させる曝気槽と、処理したパーラー廃水を分離沈殿させる第二沈殿槽を備えることで、固形物と分離した液体成分を曝気槽中の微生物により浄化処理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知の廃水処理システムにおいて、曝気槽において充分に有機物を分解することでBOD値を低下させることが可能であるが、大量の排水を処理するためには、設置面積を多く要し、処理に長時間を要し、曝気のためのポンプ設備等の設備コストや運転コストも高いものとなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な設備で処理時間が短く、設備コストや運転コストが少なく、処理後の排水のBOD値を充分に低下させることができる排水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、畜舎等から排出される洗浄廃水等の排水を分離、浄化処理する排水処理システムであって、排水の上澄成分が上澄移送ユニットによって導入される処理水槽と、前記処理水槽の上澄成分が第1処理水移送ユニットによって導入される第1濾過槽と、前記第1濾過槽を通過した液体成分が第2処理水移送ユニットによって導入される第2濾過槽とを有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明の排水処理システムによれば、連続的に第1濾過槽及び第2濾過槽を通過しながら排水の液体成分を浄化することができるため、曝気のためのポンプ設備等の設備コストや運転コストを低減することができる。
また、排水の上澄成分が上澄移送ユニットによって導入される処理水槽を有することにより、処理水槽の上流で固液分離処理が断続的に行われても排水の上澄成分を処理水槽に蓄えてバッファとして第1濾過槽及び第2濾過槽に連続的に送ることができる。
このことで、第1濾過槽及び第2濾過槽を常に連続稼働状態とすることができ設備を有効活用できる。
【0009】
請求項2に記載の構成によれば、濾過材として多孔質化した木質砕片を有することで、有機物を分解する微生物が最適に保持され、BOD値をさらに低下させることができる。
請求項3に記載の構成によれば、複数の原水槽と、原水槽の沈殿成分が第1汚泥移送ユニットによって導入される汚泥槽とを有することで、排水を1つの原水槽に導入し所定の時間沈殿させている間に他の原水槽に排水の導入が可能となり、沈殿による固液分離を十分に行いつつ排水の連続導入を行って処理効率を向上することができる。
請求項4に記載の構成によれば、流動性の低い沈殿成分を、少ない動力で効率よく汚泥槽に移送することができる。
請求項5、6に記載の構成によれば、原水槽における固体成分の沈殿分離をより確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の排水処理システムの概略構成図。
【
図2】本発明の一実施形態の排水処理システムの平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
本発明の一実施形態の排水処理システム100は、
図1、2に示すように、畜舎等から排出される洗浄廃水等の排水が排水導入ユニット111によって導入され、処理剤を投入して撹拌ユニット112により撹拌された後、沈殿分離が行われる複数の原水槽110と、原水槽110の上澄成分が上澄移送ユニット121によって導入される処理水槽120と、処理水槽120の上澄成分が第1処理水移送ユニット131によって導入される第1濾過槽130と、第1濾過槽130を通過した液体成分が第2処理水移送ユニット141によって導入される第2濾過槽140とを有している。
また、複数の原水槽110の沈殿成分が泥移送ユニット151によって導入される汚泥槽150を有している。
【0012】
汚泥槽150は、原水槽110及び処理水槽120の底部よりも下に配置されており、本実施形態では、原水槽110、処理水槽120、第1濾過槽130及び第2濾過槽140は、床面から立ち上がる隔壁によって区分され、汚泥槽150は床面より下に暗渠として配置されている。
原水槽110の底部には、沈殿成分である固形物を含む汚泥が集積される汚泥桝115が設けられており、汚泥移送ユニット151は、汚泥桝115に集積された汚泥を汚泥槽150に移送するように構成されている。
【0013】
第1濾過槽130及び第2濾過槽140には、多孔質化した木質砕片からなる濾過材が充填されており、第1処理水移送ユニット及び第2処理水移送ユニットから導入される液体成分は、濾過材の上面にシャワーリングされることで均等に浸透するように構成されている。
また、第1濾過槽130及び第2濾過槽140の底部には側面に多数の流入孔が設けられたパイプ部材で構成された底部配管135、145が配置されており、濾過材を通過した液体成分を効率よく回収できるように構成されている。
本実施形態では、2槽の原水槽110が設けられているが、3槽以上としてもよい。
また、第1濾過槽130が2槽に区分され、合計で第2濾過槽140の倍の容量で構成されているが、それぞれの液体成分の通過速度に応じて適宜容量比を設定すればよい。
また、第1濾過槽130、第2濾過槽140は、わずかに混じる固形物による目詰まりの防止及び微生物の活性の維持のため、中間高さ部にブロアー配管を設けるのが望ましい。
【0014】
以上のように構成された排水処理システム100で牛舎内パーラー(牛乳を取り出す場所)から出た排水の処理を行う際の具体的な処理の流れについて説明する。
各槽の容量は以下の通りである。
原水槽 ・・約35m3*2
第1濾過槽 ・・約40m3*2
第2濾過槽 ・・約40m3
処理水槽 ・・約90m3
また、第1濾過槽130、第2濾過槽140の濾過材として「マートンチップ」(登録商標)を使用した。
【0015】
まず、牛舎内パーラーから出た排水を排水導入ユニット111に備えられたポンプによって一方の原水槽110に30tになるまで入れる。
一方の原水槽110に30tの排水が導入されると、一方の原水槽111に繋がる電動ボール弁が閉じられ、他方の原水槽111に繋がる電動ボール弁が開放される。
次に撹拌ユニット112によって一方の原水槽110の撹拌しながら処理剤を投入する。
本実施形態では処理剤として、ポリ硫酸第二鉄液、苛性ソーダ溶液、高分子凝集促進剤(ZフロックC-101)を使用した。
定量ポンプ(図示せず)を使用してポリ硫酸第二鉄を2分間で45L注入し、その後、苛性ソーダ液を2分間で20L注入し、最後に、高分子凝集促進剤450Lを3分で注入する。
原水槽110に薬品が注入されたら、定量ポンプの配管も一方の原水槽111に繋がる電動ボール弁が閉じられ、他方の原水槽111に繋がる電動ボール弁が開放される。
【0016】
さらに2分ほど撹拌して撹拌ユニット112の動作を一旦停止し、1分後に逆回転で撹拌した後に撹拌ユニット112の動作を停止して30分~1時間静置する。
次に、上澄移送ユニット121のポンプが稼働して上澄成分を処理水槽120に移送するとともに、汚泥移送ユニット151のポンプが稼働して沈殿成分を汚泥槽150に移送する。
この時、汚泥移送ユニット151のポンプは、上澄移送ユニット121のポンプが稼働を停止するまで、10秒駆動20秒停止の間欠動作を繰り返す。
その後、原水槽110の底部に残った汚泥を撹拌モーターを約20秒作動させた後に汚泥移送ユニット151のポンプを連続作動させて原水槽110に残った内容物を全て汚泥槽150に移送する。
上記処理を2つの原水槽110で交互に行うことで、処理水槽120に所定の量の液体を常に貯留させる、以降の連続処理を効率良く行うことが可能となる。
【0017】
処理水槽120に貯留された液体成分は、第1処理水移送ユニット131のポンプによって第1濾過槽130に移送される。
この時、わずかに残留する固体成分が汚泥として処理水槽120の底部に沈殿しても混じらないよう、処理水槽120の底部より500mm上方から取水するのが望ましい。
また、1年に2回程度メンテナンスとして、処理水槽120の底部に沈殿した汚泥を汚泥槽150に移送するのが望ましい。
第1濾過槽130を通過した液体成分は、第2処理水移送ユニット141のポンプによって第2濾過槽140に移送される。
第2濾過槽140から排出される処理水は、大幅にBOD値が低下しており、その水を牛舎内パーラーの洗浄水として再利用することも可能であり、そのまま放流することも可能となる。
【0018】
【0019】
上記の表からも分かる通り、第1濾過槽130を通過することでBOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、SS(浮遊物質・懸濁物質)、リンのいずれも水質汚濁防止法に基づき環境省の定める一般排水基準を下回る値まで低下し、第2濾過槽140を通過することでSS、リンがさらに低下している。
請求項1に係る発明の排水処理システムによれば、連続的に第1濾過槽及び第2濾過槽を通過しながら排水の液体成分を浄化することができるため、曝気のためのポンプ設備等の設備コストや運転コストを低減することができる。
また、排水の上澄成分が上澄移送ユニットによって導入される処理水槽を有することにより、処理水槽の上流で固液分離処理が断続的に行われても排水の上澄成分を処理水槽に蓄えてバッファとして第1濾過槽及び第2濾過槽に連続的に送ることができる。
このことで、第1濾過槽及び第2濾過槽を常に連続稼働状態とすることができ設備を有効活用できる。
また、複数の原水槽と、原水槽の沈殿成分が第1汚泥移送ユニットによって導入される汚泥槽とを有することで、排水を1つの原水槽に導入し所定の時間沈殿させている間に他の原水槽に排水の導入が可能となり、沈殿による固液分離を十分に行いつつ排水の連続導入を行って処理効率を向上することができる。