IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤ 図1
  • 特開-タイヤ 図2
  • 特開-タイヤ 図3
  • 特開-タイヤ 図4
  • 特開-タイヤ 図5
  • 特開-タイヤ 図6
  • 特開-タイヤ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161388
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20231030BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 300A
B60C11/13 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071748
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB11
3D131BB19
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC51
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB39V
3D131EB39W
3D131EB39X
3D131EB83V
3D131EB83W
3D131EB83X
3D131EB85V
3D131EB85W
3D131EB85X
3D131EB87V
3D131EB87W
3D131EB87X
3D131EC14V
3D131EC14W
3D131EC14X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】雪上トラクション性能をさらに向上することができるタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2に、ブロック3が設けられたタイヤ1である。ブロック3のブロック壁面6には、第1凹部11が形成されている。第1凹部11は、ブロック踏面5とブロック壁面6とに跨っている。第1凹部11は、ブロック踏面5上に、三角形状の踏面開口を有し、かつ、ブロック壁面6上に、三角形状の壁面開口を有している。壁面開口は、溝底に達することなく終端する第1端17を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、少なくとも一つのブロックと、前記ブロックを区画する溝とが設けられており、
前記ブロックは、ブロック踏面と、前記ブロック踏面からタイヤ半径方向内側に延びて前記溝の溝底に至るブロック壁面とを備え、
前記ブロック壁面には、複数の第1凹部が形成されており、
前記第1凹部のそれぞれは、前記ブロック踏面と前記ブロック壁面とに跨っており、
前記第1凹部のそれぞれは、前記ブロック踏面上に、三角形状の踏面開口を有し、かつ、前記ブロック壁面上に、三角形状の壁面開口を有し、
前記壁面開口は、前記溝底に達することなく終端する第1端を有する、
タイヤ。
【請求項2】
前記溝は、タイヤ軸方向に延びる横溝である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ブロック踏面の正面視において、前記踏面開口は、前記ブロック壁面から隔てた位置に第2端を有し、
前記第1凹部のそれぞれは、前記第1端から前記第2端に延びる稜線を備え、
前記稜線を通り、かつ、前記ブロック踏面と直角なブロック断面において、前記ブロック踏面に対する前記稜線の角度が20~60°である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記踏面開口は、前記ブロック壁面からテーパ状に延びる一対の第1エッジを有し、
前記第1エッジは、それぞれ1~5mmの長さを有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記壁面開口は、前記ブロック踏面からテーパ状に延びる一対の第2エッジを有し、
前記第2エッジは、それぞれ1~5mmである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ブロック壁面には、前記第1凹部のタイヤ半径方向の内側に、複数の第2凹部が形成されており、
前記第2凹部は、それぞれ、前記ブロック壁面上に形成された三角形状の開口部から凹んでいる、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ブロック壁面の正面視において、前記開口部の輪郭形状は、タイヤ半径方向内側に向かってテーパ状である、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2凹部は、タイヤ半径方向の第1の位置に並べられている、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ブロック壁面には、前記第2凹部のタイヤ半径方向の内側に、複数の第3凹部が形成されており、
前記第3凹部は、それぞれ、前記ブロック壁面上に形成された三角形状の開口部から凹んでいる、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ブロック壁面の正面視において、前記第3凹部の前記開口部の輪郭形状は、タイヤ半径方向内側に向かってテーパ状である、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第3凹部は、タイヤ半径方向の第2の位置に並べられている、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第2凹部のタイヤ半径方向の長さは、前記第1凹部のタイヤ半径方向の長さよりも小さく、
前記第3凹部のタイヤ半径方向の長さは、前記第2凹部のタイヤ半径方向の長さよりも小さい、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項13】
隣接する前記第1凹部間の最小距離は、2mm以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記溝は、タイヤ軸方向に延びる横溝であり、
前記第1凹部は、タイヤ軸方向の外側に位置する外側第1凹部と、前記外側第1凹部よりもタイヤ軸方向の内側に位置する内側第1凹部とを含み、
前記外側第1凹部の容積は、前記内側第1凹部の容積よりも大きい、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド面に溝部が設けられた空気入りタイヤが記載されている。前記溝部の溝壁には、前記トレッド面における形状がジグザグ状となる切欠き部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-136515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の切り欠き部は、路面の雪を踏み固める効果が十分ではなく雪上トラクション性能については、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、雪上トラクション性能をさらに向上することができるタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、少なくとも一つのブロックと、前記ブロックを区画する溝とが設けられており、前記ブロックは、ブロック踏面と、前記ブロック踏面からタイヤ半径方向内側に延びて前記溝の溝底に至るブロック壁面とを備え、前記ブロック壁面には、複数の第1凹部が形成されており、前記第1凹部のそれぞれは、前記ブロック踏面と前記ブロック壁面とに跨っており、前記第1凹部のそれぞれは、前記ブロック踏面上に、三角形状の踏面開口を有し、かつ、前記ブロック壁面上に、三角形状の壁面開口を有し、前記壁面開口は、前記溝底に達することなく終端する第1端を有する、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用することで、雪上トラクション性能をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示すブロックの斜視図である。
図2図1のブロックのブロック壁面の正面図である。
図3】トレッド部の平面図である。
図4】(A)は、図1のブロック踏面を拡大した正面図、(B)は、図2のA-A線断面図である。
図5】第1凹部を説明するためのブロックの斜視図である。
図6】他の実施形態のブロック壁面の正面図である。
図7】(A)は、さらに他の実施形態のブロック壁面の正面図、(B)は、(A)のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の一部を拡大した斜視図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、雪路、とりわけ圧雪路での走行に適した乗用車用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。なお、本発明は、重荷重用の空気入りタイヤの他、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに採用されても良い。
【0010】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、少なくとも1つのブロック3と、ブロック3を区画する溝4とが設けられている。溝4は、本明細書では、溝幅が1.5mmを超える溝状体のものであり、幅が1.5mm以下の切込み状のサイプとは明瞭に区別される。
【0011】
ブロック3は、ブロック踏面5と、ブロック踏面5からタイヤ半径方向内側に延びて溝4の溝底4sに至るブロック壁面6とを備えている。ブロック踏面5とブロック壁面6とは、例えば、ブロックエッジ7を介して繋がっている。
【0012】
ブロック踏面5は、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地する面である。前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤ1の場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0013】
前記「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば"標準リム"、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"である。
【0014】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【0015】
前記「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0016】
ブロック壁面6には、複数の第1凹部11が形成されている。第1凹部11は、ブロック踏面5とブロック壁面6とに跨っている。第1凹部11は、ブロック踏面5上に、三角形状の踏面開口15(図4(A)に示す)を有している。また、第1凹部11は、ブロック壁面6上に、三角形状の壁面開口16(図2に示す)を有している。このような第1凹部11は、雪路走行時、第1凹部11内で雪を取り込んで踏み固めることができる。前記「三角形状」とは、正三角形を含むのは勿論、二等辺三角形などの種々の三角形を含む。
【0017】
図2は、ブロック壁面6の正面図である。図1及び図2に示されるように、壁面開口16は、溝底4sに達することなく終端する第1端17を有している。これにより、壁面開口16が溝底4sに達するような凹部(図示省略)に比して、雪をより強く踏み固めることができる。したがって、本発明のタイヤ1は、雪上トラクション性能をさらに向上することができる。
【0018】
図3は、本実施形態のトレッド部2の平面図である。図3に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、ブロック3がタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に並べられて形成される。また、溝4は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝4Aと、タイヤ軸方向に延びる横溝4Bとを含んでいる。各周方向溝4A及び各横溝4Bは、本実施形態では、直線状に延びている。各周方向溝4A及び各横溝4Bは、周知の形状を採用することができる。
【0019】
ブロック3は、タイヤ赤道C上に位置するクラウンブロック3Aと、最もタイヤ軸方向の外側に位置する一対のショルダーブロック3Bと、クラウンブロック3Aと各ショルダーブロック3Bとの間に位置する一対のミドルブロック3Cとを含んでいる。各ブロック3のブロック踏面5は、それぞれ、外径形状が矩形状で形成されている。なお、トレッド部2のトレッドパターンは、このような態様に限定されるものではなく、周知の種々の形状を採用し得る。
【0020】
第1凹部11は、本実施形態では、横溝4Bの溝底4sに至るブロック壁面6に設けられている。第1凹部11は、例えば、横溝4Bを介して向き合う両側のブロック壁面6に設けられる。第1凹部11は、例えば、クラウンブロック3Aを区画する横溝4Bを形成するブロック壁面6、ショルダーブロック3Bを区画する横溝4Bを形成するブロック壁面6、及び、ミドルブロック3Cを区画する横溝4Bを形成するブロック壁面6に設けられている。これにより、駆動力や制動力を利用して、雪柱を効果的にせん断できるので、より一層、雪上トラクション性能を高めることができる。なお、第1凹部11は、このような配設位置に限定されるものではない。第1凹部11は、例えば、周方向溝4Aの溝底4sに至るブロック壁面6に設けられても良い。このような第1凹部11は、旋回走行での雪上トラクション性能を高める。
【0021】
図4(A)は、ブロック踏面5の部分正面図である。図4(B)は、図2のA-A線断面図であって、ブロック踏面5と直角なブロック断面を示している。図4に示されるように、踏面開口15は、ブロック壁面6から隔てた位置に第2端18を有している。そして、第1凹部11は、第1端17から第2端18に延びる稜線20を備えている。このように、本実施形態の稜線20は、第1凹部11の第1端17からタイヤ半径方向の外側へブロック壁面6から遠ざかる向きに傾斜して直線状に延びている。これにより、ブロック踏面5の接地時に、稜線20は、第1凹部11内に取り込んだ雪に路面の方向への力を作用させるので、より強固な雪柱を形成することができる。また、横溝4Bに繋がるブロック壁面6に設けられる第1凹部11の稜線20では、駆動力や制動力を利用して、横溝4Bと直交する方向へ雪柱を押し出す力を作用させることができるので、排雪効果が発揮される。
【0022】
稜線20を通り、かつ、ブロック踏面5と直角なブロック断面において、ブロック踏面5に対する稜線20の角度α1が20~60°であるのが望ましい。角度α1が20°以上であるので、第1凹部11内の容積が確保されて、大きな雪柱を形成することができる。角度α1が60°以下であるので、第1凹部11内に取り込んだ雪に路面方向の力を効果的に与えることができる。このような作用を効果的に発揮させるために、角度α1は、30度以上がさらに望ましく、50度以下がさらに望ましい。
【0023】
図5は、第1凹部11を説明するためのブロック3を模式的に示す部分斜視図である。図5に示されるように、踏面開口15は、ブロック壁面6(ブロックエッジ7)からテーパ状に延びる一対の第1エッジ21を有している。また、壁面開口16は、ブロック踏面5(ブロックエッジ7)からテーパ状に延びる一対の第2エッジ22を有している。一対の第1エッジ21は、例えば、第2端18で繋がっている。一対の第2エッジ22は、例えば、第1端17で繋がっている。
【0024】
各第1エッジ21は、それぞれ1~5mmの長さLaを有してる。長さLaが過度に大きいと、第1凹部11内に取り込んだ雪を強く押し固めることができなくなるおそれがある。長さLaが過度に小さいと、雪柱の体積が小さくなり、雪上トラクション性能が低下するおそれがある。このため、長さLaは、2mm以上がさらに望ましく、3mm以下がさらに望ましい。同様の観点より、各第2エッジ22の長さLbは、それぞれ1mm以上が望ましく、2mm以上がさらに望ましく、5mm以下が望ましく、3mm以下がさらに望ましい。
【0025】
隣接する第1凹部11間の最小距離L1nは、2mm以下であるのが望ましい。これにより、より多くの雪柱を形成することができるので、高い雪上トラクション性能を発揮することができる。本発明の第1凹部11は、踏面開口15及び壁面開口16が三角形状であるので、第1凹部11を並べる場合、例えば、踏面開口15及び壁面開口16が四角形状のもの(図示省略)に比べて、最小距離L1nを小さくすることができる。このため、本実施形態の第1凹部11では、より大きな雪柱せん断力を発揮することができる。本発明では、最小距離L1nが0mmとされている。
【0026】
図1図2及び図4に示されるように、ブロック壁面6には、第1凹部11のタイヤ半径方向の内側に、複数の第2凹部12が形成されている。また、ブロック壁面6には、第2凹部12のタイヤ半径方向の内側に、複数の第3凹部13が形成されている。第2凹部12は、それぞれ、ブロック壁面6上に形成された三角形状の開口部25Aから凹んでいる。また、第3凹部13は、それぞれ、ブロック壁面6上に形成された三角形状の開口部25Bから凹んでいる。このような第2凹部12は、第1凹部11が摩耗消滅した後に、ブロック踏面5に現れて、路面との間で雪柱を形成し、せん断力を発揮する。第3凹部13は、第2凹部12が摩耗消滅した後に、ブロック踏面5に現れて、路面との間で雪柱を形成し、せん断力を発揮する。このように、本実施形態のタイヤ1は、長期間に亘って雪上トラクション性能を向上する。第1凹部11と第2凹部12との間のタイヤ半径方向の最小距離L1mは、2mm以下が望ましく、1mm以下がさらに望ましい。本発明では、最小距離L1mは、0mmとされている。
【0027】
第2凹部12は、例えば、開口部25Aから錐状に凹んでいる。第2凹部12は、本実施形態では、開口部25Aから三角錐状に凹んでいる。第3凹部13は、例えば、開口部25Bから錐状に凹んでいる。第3凹部13は、本実施形態では、開口部25Bから三角錐状に凹んでいる。これにより、各凹部12、13内からも容易に排雪することができる。
【0028】
ブロック壁面6の正面視において、第2凹部12の開口部25Aの輪郭形状は、例えば、タイヤ半径方向内側に向かってテーパ状である。また、第3凹部13の開口部25Bの輪郭形状は、例えば、タイヤ半径方向内側に向かってテーパ状である。このような第2凹部12は、第1凹部11が摩耗消滅した後、より強固な雪柱を形成することができる。また、第3凹部13は、第2凹部12が摩耗消滅した後、より強固な雪柱を形成することができる。
【0029】
第2凹部12は、例えば、ブロック壁面6から最も離隔する第2凹部端12t(図4(B)に示す)と、開口部25Aのタイヤ半径方向の第2内端12i(図2に示す)と、第2凹部端12tと第2内端12iとを繋ぐ第2稜線12jとを含んでいる。第2稜線12jは、第2内端12iから第2凹部端12tに向かってタイヤ半径方向の外側へ連続して傾斜して延びている。これにより、車両からの荷重が、第2稜線12jから第2凹部12内に取り込まれた雪に効果的に作用するので、より強固な雪柱を形成することができる。
【0030】
同様に、第3凹部13は、例えば、ブロック壁面6から最も離隔する第3凹部端13t(図4(B)に示す)と、開口部25Bのタイヤ半径方向の第3内端13i(図2に示す)と、第3凹部端13tと第3内端13iとを繋ぐ第3稜線13jとを含んでいる。第3稜線13jは、第3内端13iから第3凹部端13tに向かってタイヤ半径方向の外側へ連続して傾斜して延びている。
【0031】
第2稜線12jの角度α2は、例えば、第1凹部11の稜線20の角度α1と同じである。第3稜線13jの角度α3は、本実施形態では、第2稜線12jの角度α2と同じである。これにより、第1凹部11ないし第3凹部13において、同じ大きさの雪柱せん断力を発揮することができる。という効果が期待される。角度α2は、第2稜線12jを通り、かつ、ブロック踏面5と直角なブロック断面において、ブロック踏面5(と平行な面)に対する第2稜線12jの角度である。角度α3は、第3稜線13jを通り、かつ、ブロック踏面5と直角なブロック断面において、ブロック踏面5(と平行な面)に対する第3稜線13jの角度である。
【0032】
同様の観点より、第2凹部12の奥行D2は、第1凹部11の奥行D1と同じ長さであるのがより望ましい。第3凹部13の奥行D3は、第2凹部12の奥行D2と同じ長さであるのが望ましい。第1凹部11の奥行D1は、ブロック壁面6(壁面開口16)と第2端18との間の最短距離である。第2凹部12の奥行D2は、ブロック壁面6と第2凹部端12tとの間の最短距離である。第3凹部13の奥行D3は、ブロック壁面6と第3凹部端13tとの間の最短距離である。
【0033】
第2凹部12は、例えば、それぞれ、タイヤ半径方向の第1の位置e1(図2に示す)に並べられている。本実施形態では、各第2凹部12の開口部25Aのタイヤ半径方向の第2内端12iが第1の位置e1と接するように配されている。第3凹部13は、例えば、それぞれ、タイヤ半径方向の第2の位置e2に並べられている。各第3凹部13の開口部25Bのタイヤ半径方向の第3内端13iが第2の位置e2と接するように、配されている。
【0034】
図2に示されるように、ブロック壁面6の正面視において、第2凹部12は、第1凹部11及び第3凹部13とブロック壁面6の長手方向(タイヤ半径方向と直交する方向)で位置ずれしている。これにより、ブロック3の剛性の段差が小さくなる。また、ブロック壁面6の正面視において、第1凹部11及び第3凹部13は、ブロック壁面6の長手方向で同じ位置に配されている。第2凹部12は、本実施形態では、第1凹部11及び第3凹部13とブロック壁面6の長手方向で半ピッチ位置ずれしている。
【0035】
ブロック3は、隣接する第1凹部11と、これら第1凹部11のタイヤ半径方向の内側に位置する第2凹部12とで囲まれるブロック凸部23を含んでいる。ブロック凸部23は、本実施形態では、複数の三角状の面を有しており、圧雪路に対して高い突き刺さり効果を有するので、さらに雪上トラクション性能を高めることができる。第1凹部11が摩耗消滅すると、隣接する第2凹部12と、これら第2凹部12のタイヤ半径方向の内側に位置する第3凹部13とで囲まれたブロック凹部23が現れる。また、第2凹部12が摩耗消滅すると、隣接する第3凹部13と、これら第3凹部12のタイヤ半径方向の内側に位置する後述する第4凹部14とで囲まれたブロック凹部23が現れる。
【0036】
本実施形態では、ブロック壁面6の正面視において、第1凹部11の壁面開口16の開口面積S1は、第2凹部12の開口部25Aの開口面積S2と同じとされている。また、第2凹部12の開口部25Aの開口面積S2は、第3凹部13の開口部25Bの開口面積S3と同じとされている。このように、各凹部11~13の開口面積S1~S3は、それぞれ、同じとされている。このようなブロック3は、各凹部11ないし13のそれぞれ自体が、同じ圧雪効果を発揮して、雪上トラクション性能を高めるのに役立つ。前記「同じ」とは、本明細書では、タイヤ製造上の精度誤差による開口面積の相違を含む。
【0037】
本実施形態のブロック壁面6には、第3凹部13のタイヤ半径方向の内側に、複数の第4凹部14が形成されている。第4凹部14は、例えば、タイヤ半径方向の第3の位置e3(図2に示す)に並べられている。第4凹部14は、本実施形態では、第2凹部12と同じ形状で成形されている。このような第4凹部14は、第3凹部13が摩耗消滅すると、ブロック踏面5に現れて、路面との間で雪柱を形成し、せん断力を発揮する。なお、ブロック壁面6には、例えば、第4凹部14のタイヤ半径方向の内側に、複数の第5凹部(図示省略)が形成されてても良いし、第5凹部のタイヤ半径方向の内側に、複数の第6凹部(図示省略)が形成されてても良い。第4凹部14、第5凹部及び第6凹部は、例えば、第2凹部12又は第3凹部13と同じ形状で形成されるのが望ましい。
【0038】
図6は、他の実施形態のブロック壁面6の正面図である。本実施形態と同じ構成には、同じ符号が付されてその説明が省略される場合がある。図6に示されるように、この実施形態では、ブロック3は、外側ブロック3rと、外側ブロック3rよりもタイヤ軸方向の内側で隣接する内側ブロック3qとを含んでいる。
【0039】
外側ブロック3rの第1凹部11rの容積は、例えば、内側ブロック3qの第1凹部11qの容積よりも大きくされている。外側ブロック3rの第2凹部12rの容積は、例えば、内側ブロック3qの第2凹部12qの容積よりも大きくされている。外側ブロック3rの第3凹部13rの容積は、例えば、内側ブロック3qの第3凹部13qの容積よりも大きくされている。これにより、大きな横力が作用する旋回時に、外側ブロック3rが内側ブロック3qよりも大きく変形することに伴い、外側ブロック3rに配された第1凹部11rないし第3凹部13rでの雪柱せん断力を高めることができる。このため、旋回時の雪上トラクション性能が向上する。
【0040】
外側ブロック3rにおいて、例えば、第1凹部11rの壁面開口16の開口面積は、第2凹部12rの開口部25Aの開口面積、及び、第3凹部13rの開口部25Bの開口面積と同じとされている。また、内側ブロック3qでは、例えば、第1凹部11qの壁面開口16の開口面積は、第2凹部12qの開口部25Aの開口面積、及び、第3凹部13qの開口部25Bの開口面積と同じとされている。
【0041】
図7(A)は、さらに他の実施形態のブロック壁面6の正面図である。図7(B)は、図7(A)のB-B線断面図である。本実施形態と同じ構成には、同じ符号が付されてその説明が省略される場合がある。図7に示されるように、この実施形態では、ブロック壁面6に、それぞれ、複数の第1凹部11ないし第3凹部13が設けられている。
【0042】
一般に、タイヤ1は、加硫金型(図示省略)に投入された生タイヤを加硫することにより製造される。本発明のタイヤ1を製造するための加硫金型には、第1凹部11ないし第3凹部13の反転模様となる凸部が設けられており、タイヤ1が加硫されることで、第1凹部11ないし第3凹部13が形成される。このように、加硫後、加硫金型の前記凸部は、タイヤ1の第2凹部12及び第3凹部13と噛み合った状態となる。この実施形態では、第2凹部12のタイヤ半径方向の長さL2は、第1凹部11のタイヤ半径方向の長さL1よりも小さくされている。また、第3凹部13のタイヤ半径方向の長さL3は、第2凹部12の長さL2よりも小さくされている。これにより、第2凹部12及び第3凹部13と、前記加硫金型の凸部との噛み合わせが小さく、加硫金型からタイヤ1を取り外しやすくなる。
【0043】
また、一般に、圧雪路面の走行時、摩耗初期では、溝4内に取り込まれた雪は、溝底4sまで達することがあまりなく、溝4によって固められる可能性が小さい。さらに、摩耗終期では、溝4の深さが小さくなるので、溝4内に取り込まれた雪は、溝底4sまで達することになり、溝底4sによって強く踏み固められる可能性が高い。この実施形態では、摩耗初期において、大きい長さL1の第1凹部11が雪を踏み固めることができるので、雪柱せん断力が高く維持される。また、摩耗終期では、第1凹部11が消滅して、第2凹部12又は第3凹部13のみが出現していることになる。第2凹部12の長さL2及び第3凹部13の長さL3は、第1凹部11の長さL1よりも小さいが、溝4自体と、第2凹部12又は第3凹部13によって強固な雪柱が形成されるので、摩耗終期においても雪柱せん断力が高く維持される。このような作用を効果的に発揮させるために、第3凹部13は、溝が50%摩耗したときに、ブロック踏面5に出現するように設けられるのが望ましい。
【0044】
特に限定されるものではないが、第1凹部11の長さL1は、1.5mm以上が望ましく、1.8mm以上がさらに望ましく、2.5mm以下が望ましく、2.3mm以下がさらに望ましい。第2凹部12の長さL2は、1.0mm以上が望ましく、1.3mm以上がさらに望ましく、2.0mm以下が望ましく、1.8mm以下がさらに望ましい。第3凹部13の長さL3は、0.5mm以上が望ましく、0.8mm以上がさらに望ましく、1.5mm以下が望ましく、1.3mm以下がさらに望ましい。
【0045】
同様の観点より、第2凹部12の奥行D2は、例えば、第1凹部11の奥行D1よりも小さくされている。また、第3凹部13の奥行D3は、例えば、第2凹部12の奥行D2よりも小さくされている。なお、この実施形態では、第1凹部11の幅W1、第2凹部12の幅W2及び第3凹部13の幅W3は、同じ長さとされている。
【0046】
以上、本発明の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0047】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0048】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、少なくとも一つのブロックと、前記ブロックを区画する溝とが設けられており、
前記ブロックは、ブロック踏面と、前記ブロック踏面からタイヤ半径方向内側に延びて前記溝の溝底に至るブロック壁面とを備え、
前記ブロック壁面には、複数の第1凹部が形成されており、
前記第1凹部のそれぞれは、前記ブロック踏面と前記ブロック壁面とに跨っており、
前記第1凹部のそれぞれは、前記ブロック踏面上に、三角形状の踏面開口を有し、かつ、前記ブロック壁面上に、三角形状の壁面開口を有し、
前記壁面開口は、前記溝底に達することなく終端する第1端を有する、
タイヤ。
[本発明2]
前記溝は、タイヤ軸方向に延びる横溝である、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記ブロック踏面の正面視において、前記踏面開口は、前記ブロック壁面から隔てた位置に第2端を有し、
前記第1凹部のそれぞれは、前記第1端から前記第2端に延びる稜線を備え、
前記稜線を通り、かつ、前記ブロック踏面と直角なブロック断面において、前記ブロック踏面に対する前記稜線の角度が20~60°である、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記踏面開口は、前記ブロック壁面からテーパ状に延びる一対の第1エッジを有し、
前記第1エッジは、それぞれ1~5mmの長さを有する、本発明1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明5]
前記壁面開口は、前記ブロック踏面からテーパ状に延びる一対の第2エッジを有し、
前記第2エッジは、それぞれ1~5mmである、本発明1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明6]
前記ブロック壁面には、前記第1凹部のタイヤ半径方向の内側に、複数の第2凹部が形成されており、
前記第2凹部は、それぞれ、前記ブロック壁面上に形成された三角形状の開口部から凹んでいる、本発明1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明7]
前記ブロック壁面の正面視において、前記開口部の輪郭形状は、タイヤ半径方向内側に向かってテーパ状である、本発明6に記載のタイヤ。
[本発明8]
前記第2凹部は、タイヤ半径方向の第1の位置に並べられている、本発明6又は7に記載のタイヤ。
[本発明9]
前記ブロック壁面には、前記第2凹部のタイヤ半径方向の内側に、複数の第3凹部が形成されており、
前記第3凹部は、それぞれ、前記ブロック壁面上に形成された三角形状の開口部から凹んでいる、本発明6ないし8のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明10]
前記ブロック壁面の正面視において、前記第3凹部の前記開口部の輪郭形状は、タイヤ半径方向内側に向かってテーパ状である、本発明9に記載のタイヤ。
[本発明11]
前記第3凹部は、タイヤ半径方向の第2の位置に並べられている、本発明9又は10に記載のタイヤ。
[本発明12]
前記第2凹部のタイヤ半径方向の長さは、前記第1凹部のタイヤ半径方向の長さよりも小さく、
前記第3凹部のタイヤ半径方向の長さは、前記第2凹部のタイヤ半径方向の長さよりも小さい、本発明9ないし11のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明13]
隣接する前記第1凹部間の最小距離は、2mm以下である、本発明1ないし12のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明14]
前記溝は、タイヤ軸方向に延びる横溝であり、
前記第1凹部は、タイヤ軸方向の外側に位置する外側第1凹部と、前記外側第1凹部よりもタイヤ軸方向の内側に位置する内側第1凹部とを含み、
前記外側第1凹部の容積は、前記内側第1凹部の容積よりもが大きい、本発明1ないし13のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0049】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 ブロック
5 ブロック踏面
6 ブロック壁面
11 第1凹部
15 踏面開口
16 壁面開口
17 第1端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7