IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特開2023-161399転写シート及びメラミン化粧板の製造方法
<>
  • 特開-転写シート及びメラミン化粧板の製造方法 図1
  • 特開-転写シート及びメラミン化粧板の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161399
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】転写シート及びメラミン化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231030BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231030BHJP
   B41M 3/12 20060101ALI20231030BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B32B27/32 B
B32B27/00 Z
B41M3/12
B41J2/01 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071765
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】原田 千穂
(72)【発明者】
【氏名】太田 新
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
4F100
【Fターム(参考)】
2C056FC06
2C056FD13
2C056FD20
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA22
2H113BA23
2H113BA24
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB22
2H113DA47
2H113DA53
2H113DA56
2H113DA57
2H113DA60
2H113DA62
2H113DA64
2H113EA10
2H113FA06
2H113FA10
2H113FA32
2H113FA43
2H113FA45
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03B
4F100AK07
4F100AK07B
4F100AK36
4F100AK36A
4F100AK36B
4F100AK36C
4F100AK51
4F100AL06
4F100AL06B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG10
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ08B
4F100EJ08C
4F100EJ17
4F100EJ17A
4F100EJ17B
4F100EJ17C
4F100EJ34A
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ42B
4F100EJ42C
4F100EJ53B
4F100EJ54
4F100EJ54B
4F100EJ82
4F100EJ82A
4F100EJ82B
4F100EJ82C
4F100GB08
4F100HB31
4F100JB06C
4F100JB13C
4F100JB14
4F100JB14B
4F100JB15B
4F100JK06
4F100JK15A
4F100JL14
4F100JN21
4F100JN21A
4F100JN26A
(57)【要約】
【課題】転写対象物への転写層の選択的な転写を可能とし、転写対象物の優れた意匠性を維持することができる転写シート及びメラミン化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】転写シート1は、基材層2と、基材層2の一方の面2a側に設けられた転写層3と、転写層3の基材層2と反対側の面3a側に設けられた密着層4と、を備えるようにした。そして、転写層3を構成する樹脂を、未硬化の電離放射線硬化性樹脂及び塩素化ポリオレフィン樹脂とした。また、密着層4を構成する樹脂を、撥液性を発現させる成分を非含有の熱硬化型樹脂とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられた転写層と、
前記転写層の前記基材層と反対側の面側に設けられた密着層と、を備え、
前記転写層を構成する樹脂は、未硬化の電離放射線硬化性樹脂及び塩素化ポリオレフィン樹脂であり、
前記密着層を構成する樹脂は、撥液性を発現させる成分を非含有の熱硬化型樹脂である ことを特徴とする転写シート。
【請求項2】
前記転写層における前記塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量は、前記電離放射線硬化性樹脂に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素化ポリプロピレン樹脂である
ことを特徴とする請求項2に記載の転写シート。
【請求項4】
前記基材層の前記一方の面の一部又は全面は、鏡面仕上げ、及び艶消し仕上げのうち少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項3に記載の転写シート。
【請求項5】
前記電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の少なくとも何れかである
ことを特徴とする請求項4に記載の転写シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の転写シートを用いたメラミン化粧板の製造方法であって、
コア層と前記コア層の一方の面側に部分的に設けられた撥液層とを有する第1積層体を水性メラミン樹脂液に浸漬させ、浸漬させた前記第1積層体の前記撥液層側の面に前記転写シートを積層してなる第2積層体に加圧及び加熱を行って、前記コア層が含む水性メラミン樹脂液の未硬化物を硬化させる工程、
前記転写シートの前記基材層を前記第1積層体から剥離させて、未硬化の前記電離放射線硬化性樹脂及び前記塩素化ポリオレフィン樹脂を含む前記転写シートの前記転写層の一部を前記第1積層体に転写させる工程、
前記第1積層体に電離放射線を照射して、前記転写層の電離放射線硬化性樹脂を硬化させる工程を含むことを特徴とするメラミン化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シート及びメラミン化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、基材層の一方の面側に、転写層及び密着層がこの順に積層されて形成され、転写層が電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む転写シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の転写シートでは、コア層及び未硬化メラミン樹脂層が積層された積層体に、転写シートを積層して加熱及び加圧を行って(熱圧転写)、未硬化メラミン樹脂層を硬化させ、メラミン化粧板を作製するようになっている。
また、転写シートと積層される積層体としては、原紙、絵柄模様層、及び絵柄模様層の絵柄と同調した艶差を付与する撥液層を備えるものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-64132号公報
【特許文献2】特開2018-176484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写シートは、転写層の積層(転写)によって積層体の優れた意匠性を維持するため、転写すべき箇所以外の箇所にまで転写されるといった転写不良を抑制することが求められる。このため、転写シートは、転写対象物への転写層の選択的な転写を可能とし、転写対象物の優れた意匠性を維持することが重要となる。しかしながら、従来の転写シートは、転写対象物への転写層の選択的な転写が十分に実現できていないという問題がある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、転写対象物への転写層の選択的な転写を可能とし、転写対象物の優れた意匠性を維持することができる転写シート及びメラミン化粧板の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)基材層と、(b)基材層の一方の面側に設けられた転写層と、(c)転写層の基材層と反対側の面側に設けられた密着層と、を備え、(d)転写層を構成する樹脂は、未硬化の電離放射線硬化性樹脂及び塩素化ポリオレフィン樹脂であり、(e)密着層を構成する樹脂は、撥液性を発現させる成分を非含有の熱硬化型樹脂である転写シートであることを要旨とする。
【0006】
また、本発明の他の態様は、(a)上記転写シートを用いたメラミン化粧板の製造方法であって、(b)コア層とコア層の一方の面側に部分的に設けられた撥液層とを有する第1積層体を水性メラミン樹脂液に浸漬させ、浸漬させた第1積層体の撥液層側の面に転写シートを積層してなる第2積層体に加圧及び加熱を行って、コア層が含む水性メラミン樹脂液の未硬化物を硬化させる工程、(c)転写シートの前記基材層を第1積層体から剥離させて、未硬化の前記電離放射線硬化性樹脂及び前記塩素化ポリオレフィン樹脂を含む前記転写シートの前記転写層の一部を第1積層体に転写させる工程、(d)第1積層体に電離放射線を照射して、転写層の電離放射線硬化性樹脂を硬化させる工程を含むメラミン化粧板の製造方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、転写対象物への転写層の選択的な転写を可能とし、転写対象物の優れた意匠性を維持することができる転写シート及びメラミン化粧板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る転写シートを表す断面図である。
図2】転写シートの使用方法を表す図であって、(a)は第1積層体を表す断面図であり、(b)は第2積層体を表す断面図であり、(c)はメラミン化粧板を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(転写シート)
本実施形態の転写シート1は、図1に示すように、基材層2の一方の面2a側に、転写層3及び密着層4がこの順に積層されて形成されている。
【0011】
(基材層)
基材層2は、転写シート1のベースとなる層である。基材層2の材料としては、転写後の剥離の容易性の点から、可撓性が高いものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂;ポリオレフィン樹脂が表面にラミネートされた薄葉紙を採用できる。特に、耐熱性及び寸法安定性の点からは、ポリエステル樹脂が好ましい。
基材層2の一方の面2aの一部又は全面には、鏡面仕上げ、及び艶消し仕上げの少なくとも何れかが行われている。艶消し仕上げされた箇所の光沢値は、特に限定されない。
【0012】
(転写層)
転写層3は、メラミン化粧板12の製造時に用いる第1積層体8(後述)に転写される層である。転写層3を構成する樹脂としては、未硬化の電離放射線硬化性樹脂及び塩素化ポリオレフィン樹脂を採用する。
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂を採用できる。電離放射線としては、例えば、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを採用できる。例えば、紫外線(UV)、電子線(EB)、電磁波、荷電粒子線が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、熱乾燥のみで樹脂が付着しなくなるタックフリー性を有する点、熱圧転写の後でも紫外線や電子線を照射することで硬化できるアフターキュア性を有する点から、例えば、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の少なくとも何れかが好ましい。
【0013】
紫外線硬化型樹脂は、特に限定されず、紫外線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂を採用できる。プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物を採用できる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0014】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラ
ミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの分子量は、250~100000程度が好ましい。
また、ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。さらに、ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0016】
電子線硬化型樹脂は、特に限定されず、不飽和ポリエステル、ビニル基含有化合物、アクリル酸(メタクリル酸)エステル系化合物等が挙げられる。アクリル酸エステル系化合物としては、例えば、一つ以上のアクリル基を有するウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリオールアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のオリゴマー或いはプレポリマーの1種または2種以上が挙げられる。
【0017】
塩素化ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、例えば塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化エチレン-プロピレン共重合体、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体等を採用できる。
転写層3が塩素化ポリオレフィン樹脂を含有することにより、塩素化ポリオレフィン樹脂を含有しない場合と比較して、転写層3と転写層3の塗工面である基材層2との密着性が向上する。塩素化ポリオレフィン樹脂の添加によって転写層3と基材層2との密着性が向上すると、転写層3からの基材層2の剥離の重さ(剥離に必要な引っ張り力)を適度に重くすることが可能となる。
これにより、第1積層体8への転写層3の転写時において、転写対象でない箇所(例えば第1積層体8において撥液層7がある箇所)にまで転写層3の電離放射線硬化性樹脂が転写されてしまうといった転写不良を抑制し、転写層3を転写すべき箇所(例えば第1積層体8において撥液層7(後述)がない箇所)だけに転写させること(選択的な転写)が可能となる。
【0018】
このように、転写シート1において、転写層3が塩素化ポリオレフィン樹脂を含有することにより、転写層3と基材層2との密着性が向上して、転写対象物である第1積層体8への転写層3の選択的な転写が可能となる。このため、第1積層体8に施された意匠(後述する第1積層体8の絵柄模様層6)による優れた意匠性(手触り感や高マット意匠)を維持することができる。さらに、転写シート1の転写層3は、転写対象物である第1積層体8上において易掃性、耐傷性及び耐指紋性といった物性を確実に発揮することができる。
また、第1積層体8上における転写層3の転写不良が抑制されることにより、メラミン化粧板12の製造時の熱圧転写時において、転写層3と密着層4との密着性、ひいては、転写層3と第1積層体8との密着性を向上することができる。
【0019】
このように、転写シート1における転写層3は、基材層2との密着性を向上させて転写対象物(第1積層体8)への選択的な転写を可能とするための添加剤として、塩素化ポリオレフィン樹脂を含有している。選択的な転写が可能となることにより、転写対象物(本例では、第1積層体8)の優れた意匠性を維持することができる。
また、塩素化ポリオレフィン樹脂としては、塩素化ポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。これにより、基材層2(例えば、ポリオレフィン樹脂でラミネートされた薄葉紙)と転写層3との密着性を確実に向上することができる。
【0020】
詳しくは後述するが、密着層4は、メラミン化粧板12の製造時の熱圧転写により、第1積層体8の絵柄模様層6と接合し、撥液層7(後述)とは接合しない性質を有する。このため、第1積層体8において、転写層3の転写対象である部分(密着層4が絵柄模様層6と接合する部分)における転写シート1の剥離の重さXは、転写層3の転写対象でない部分(撥液層7のある部分)における転写シート1の剥離の重さYよりも重い。このため、転写シート1において、転写層3からの基材層2の剥離の重さAを以下の関係式(1)を満たすようにすることで、転写対象物である第1積層体8への転写層3の選択的な転写がより確実に可能となる
X>A>Y・・・(1)
【0021】
上記関係式を満たすように上記転写層3からの基材層2の剥離の重さAを好適に制御するため、本実施形態では、転写層3における塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量は、主成分である電離放射線硬化性樹脂に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。
転写層3における塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が当該範囲内であれば、転写層3からの基材層2の剥離の重さAを、上記関係式を満たすように好適に制御することができる。つまり、第1積層体8への転写層3の転写時において、転写対象でない箇所(例えば第1積層体8において撥液層7がある箇所)にまで転写層3の電離放射線硬化性樹脂が転写されてしまうといった転写不良を確実に抑制し、転写層3を転写すべき箇所(例えば第1積層体8において撥液層7がない箇所)だけに確実に転写させること(選択的な転写)が可能となる。
したがって、転写層3における塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が当該範囲内であれば、転写対象物である第1積層体8への転写層3の選択的な転写が確実に可能となり、第1積層体8に施された意匠(第1積層体8の絵柄模様層6)による優れた意匠性(手触り感や高マット意匠)を確実に維持することができる。
【0022】
一方、電離放射線硬化性樹脂に対する塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が上記範囲内でない場合には、上述の剥離重さAの制御が困難となり得る。
例えば塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が電離放射線硬化性樹脂に対して0.1質量%未満であると、基材層2と転写層3との密着性が十分に向上せずに剥離重さが不足して転写層3からの基材層2の剥離の重さAが、転写シート1の剥離の重さYよりも軽くなる(A<Y)場合がある。このため、第1積層体8において転写層3の転写対象でない部分(撥液層7がある部分)にまで転写層3が転写される、すなわち基材層2に残存すべき転写層3部分までが第1積層体8に転写されるといった転写不良が起きうる。したがって、転写層3の選択的な転写が実現できない場合がある。
また、塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が電離放射線硬化性樹脂に対して10質量%を超えると、メラミン化粧板12の製造時の熱圧転写時における転写層3からの基材層2の剥離重さが大きく増大し、転写層3からの基材層2の剥離の重さAが、転写シート1の剥離の重さXよりも重くなる(X<A)場合がある。このため、第1積層体8において転写層3の転写対象の部分(撥液層7がない部分)に転写層3が転写されない、すなわち転写されるべき転写層3が基材層2側に残存するという全体的な転写不良が起き得る。したがって、選択的な転写が実現できない場合がある。
【0023】
(密着層)
密着層4は、転写層3と第1積層体8との密着性を向上させるための層である。密着層4を構成する樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂を採用できる。熱硬化型樹脂としては、シリコンオイル等、撥液性を発現する成分を含まない樹脂を採用することが好ましい。これにより、密着層4は、撥液層7を構成する樹脂(メラミン樹脂や、尿素系樹脂、フェノール系樹脂等)との密着性を向上することができる。また、撥液性を発現する成分を含まない樹脂を採用することにより、熱圧転写時に第1積層体8の撥液層7上にあるメラミン樹脂の弾き残しを密着層4に付着させることができ、弾き残しのメラミン樹脂による撥液層7の白化を防止できる。なお、撥液性を発現する成分を含まない樹脂としては、密着層4の転写層3と反対側の面4aが、純水に対する接触角が90度以下となる樹脂が好ましく、60度以下となる樹脂がより好ましく、30度以下となる樹脂が最も好ましい。
本実施形態による転写シート1では、上述のように転写層3が塩素化ポリオレフィン樹脂を含有することにより、転写層3の転写不良が抑制され、転写層3と密着層4、第1積層体8との密着性が向上する。また密着層4によりメラミン樹脂の弾き残しが除去されることで、転写層3と第1積層体8との密着性をさらに向上することができる。
なお、密着層4は、メラミン化粧板12の製造時の熱圧転写により、第1積層体8の絵柄模様層6(後述)とは接合するが、撥液層7(後述)とは接合しない性質を有する。
【0024】
(転写シートの使用方法)
次に、本実施形態に係る転写シート1の使用方法について説明する。図2は、転写シート1を使用して、メラミン化粧板12を製造する方法を説明するための図である。
まず図2(a)に示すように、コア層5の一方の面5a側に、絵柄模様層6及び撥液層7がこの順に積層された第1積層体8を形成する。撥液層7は、コア層5の一方の面5a上に部分的に設けられ、撥液層7がある箇所とない箇所とで艶差を付与する。
【0025】
ここで、コア層5としては、例えば、フェノール樹脂含浸紙又はその積層体を用いることができる。フェノール樹脂含浸紙は、例えば、クラフト紙にフェノール樹脂を主成分とする樹脂を含浸させ、乾燥させることにより得られる。また、コア層5としては、ガラスクロス又はガラス不織布を用いてもよいし、ガラスクロス又はガラス不織布を基材とするプリプレグを用いてもよい。プリプレグは、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を含有する樹脂組成物をガラスクロス又はガラス不織布に含浸させることにより得られる。
絵柄模様層6は、メラミン化粧板12に絵柄模様による意匠を付与するための層である。絵柄模様としては、例えば木目柄を採用できる。絵柄模様層6は、公知の印刷方法で設けることができる。印刷インキとしては、樹脂含浸適性の点から水性インキが好ましい。
【0026】
撥液層7は、メラミン化粧板12に艶差による意匠を付与するための層である。艶差としては、例えば、絵柄模様層6の木目柄と同調した導管模様の艶差を採用できる。撥液層7を構成する樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を持つ熱硬化型樹脂や電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いることができる。硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アミノアルキド系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂;(メタ)アクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を採用できる。
【0027】
続いて、形成した第1積層体8を、水性メラミン樹脂液に浸漬した後、第1積層体8の撥液層7側の面8aに転写シート1を積層して第2積層体9を形成する。その際、撥液層7上に残った水性メラミン樹脂液のはじき残しは、転写シート1の密着層4で除去される。続いて、図2(b)に示すように、形成した第2積層体9を2枚の鏡面板10、11の間に挟み、第2積層体9に加圧及び加熱を行って、コア層5が含む水性メラミン樹脂液の未硬化物を硬化させる(熱圧転写)。熱圧転写により、未硬化の電離放射線硬化性樹脂および塩素化ポリオレフィン樹脂を含む転写シート1の転写層3は、密着層4を介して、絵柄模様層6(以下、「硬化メラミン樹脂層6」とも呼ぶ)と接合される。なお、絵柄模様層6のうち撥液層7が設けられている部分は密着層4と接合されない。つまり、撥液層7が設けられている部分(密着層4と接合されない部分)は、撥液層7が設けられていない部分(密着層4と接合する部分)に比べて、第1積層体8からの転写シート1の剥離性が軽い。
【0028】
続いて、図2(c)に示すように、基材層2を第1積層体8から剥離させる。基材層2を第1積層体8から剥離する際、転写層3及び密着層4のうち、硬化メラミン樹脂層6と接合されている部分は、第1積層体8側に残存する。これにより、転写層3の基材層2側の面3bが露出し、露出した面3bでメラミン化粧板12の表面が形成される。一方、転写層3及び密着層4のうち、硬化メラミン樹脂層6と接合されていない部分、つまり、撥液層7と接触している部分は、基材層2側に残存する。具体的には、転写シート1の転写層3が塩素化ポリオレフィン樹脂を含有することにより、塩素化ポリオレフィン樹脂を含有しない場合と比較して、転写層3と転写層3の塗工面である基材層2との密着性が向上する。このため、上述のように、転写層3及び密着層4が硬化メラミン樹脂層6と接合されていない部分(第1積層体8からの転写シート1の剥離性が軽い部分)、すなわち撥液層7と接触している部分は、基材層2側に残存することとなる。一方で、転写層3及び密着層4が硬化メラミン樹脂層6と接合されている部分(第1積層体8からの転写シート1の剥離性が重い部分)、すなわち撥液層7と接触していない部分では転写層3及び密着層4が第1積層体8に転写されて基材層2には残存しない。すなわち基材層2が剥離することとなる。したがって、転写シート1は、転写対象物への転写層の選択的な転写が可能となる。
これにより、撥液層7が露出し、露出した撥液層7でメラミン化粧板12の表面が形成され、撥液層7がある箇所とない箇所との艶差による意匠が付与される。続いて、剥離後の第1積層体8に電離放射線を照射し、転写層3の電離放射線硬化性樹脂を硬化させると、メラミン化粧板12が完成する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る転写シート1では、転写層が塩素化ポリオレフィン樹脂を含むことで転写対象物への転写層の選択的な転写を可能とし、転写対象物の優れた意匠性を維持することができる転写シート1を提供できる。さらに、転写シート1では、転写層3を構成する樹脂を、未硬化の電離放射線硬化性樹脂としたため、熱圧転写実行時に転写層3の柔軟性を向上でき、熱圧転写による転写層3の膜割れを防止可能である。
また、転写層3の層内強度が弱くなるため、基材層2を第1積層体8から剥離する際に、第1積層体8の撥液層7の外縁に沿って転写層3が破れ、撥液層7上への転写層3の転写を防止でき、転写層3を選択的に転写させて、撥液層7による光沢調整が可能となる。
【0030】
ちなみに、転写層3が硬化後の電離放射線硬化性樹脂を含む場合には、転写層3の層内強度が強いため、基材層2を第1積層体8から剥離する際に、転写層3が破れず、撥液層7上にも転写層3が転写され、転写層3を選択的に転写できず、光沢調整が困難となる。
また、本実施形態に係る転写シート1では、密着層4を構成する樹脂を、撥液性を発現させる成分を非含有の熱硬化型樹脂とした。それゆえ、例えば、メラミン化粧板12の製造時に、撥液層7に密着層4を接触させることで、撥液層7上に残った水性メラミン樹脂液のはじき残しを密着層4で吸収でき、メラミン化粧板12の白化を防止できる。また、第1積層体8表面の撥液層7がない箇所に、転写層3を適切に転写することができる。
【0031】
ちなみに、密着層4が撥液性を発現させる成分を含有する熱硬化樹脂を含む場合には、メラミン化粧板12の製造時に、撥液層7上に残った水性メラミン樹脂液のはじき残しが密着層4で吸収されず、はじき残しが除去されず、メラミン化粧板12に白化を生じる。また、第1積層体8表面の撥液層7がない箇所にも、転写層3が適切に転写されない。
また、本実施形態に係る転写シート1では、電離放射線硬化性樹脂を、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の少なくとも何れかとした。そのため、例えば、メラミン化粧板12の製造時、熱圧転写後に、転写層3に紫外線や電子線を照射することで、熱圧転写による転写層3の膜割れを防止しつつメラミン化粧板12の強度を向上することができる。
【0032】
また、本実施形態に係るメラミン化粧板12の製造方法では、コア層5とコア層5の一方の面5a側に部分的に設けられた撥液層7とを有する第1積層体8を水性メラミン樹脂液に浸漬させ、浸漬させた第1積層体8の撥液層7側の面に転写シート1を積層してなる第2積層体9に加圧及び加熱を行って、コア層5が含む水性メラミン樹脂液の未硬化物を硬化させる工程、転写シート1の基材層2を第1積層体8から剥離させて、未硬化の電離放射線硬化性樹脂及び塩素化ポリオレフィン樹脂を含む転写シート1の転写層3の一部を第1積層体8に転写させる工程、第1積層体8に電離放射線を照射して、転写層3の電離放射線硬化性樹脂を硬化させる工程を含むようにした。それゆえ、選択的に光沢調整が施されたメラミン化粧板12を容易に得ることができる。また易掃性、耐傷性及び耐指紋性に優れ、手触り感を有するメラミン化粧板12を得ることができる。
【0033】
(本実施形態の効果)
本実施形態の転写シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)基材層2と、基材層2の一方の面側に設けられた転写層3と、転写層3の基材層2と反対側の面側に設けられた密着4と、を備え、転写層3を構成する樹脂は、未硬化の電離放射線硬化性樹脂及び塩素化ポリオレフィン樹脂であり、密着層4を構成する樹脂は、撥液性を発現させる成分を非含有の熱硬化型樹脂である。
これにより、転写シート1は、転写対象物(例えば、第1積層体8)への転写層3の選択的な転写を可能とし、転写対象物の優れた意匠性を維持することができる。
【0034】
(2)転写層3における塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量は、電離放射線硬化性樹脂に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲内である。
これにより、転写層3からの基材層2の剥離の重さAを好適に制御することがかのうとなる。したがって、転写対象物(例えば、第1積層体8)への転写層3の選択的な転写を確実に実現可能とし、転写対象物の優れた意匠性を確実に維持することができる。
(3)転写層3における塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素化ポリプロピレン樹脂である。
これにより、転写層3と基材層2との密着性を確実に向上することがでる。したがって転写対象物(例えば、第1積層体8)への転写層3の選択的な転写をさらに確実に実現可能とし、転写対象物の優れた意匠性をさらに確実に維持することができる。
【0035】
(4)基材層2の一方の面(転写層3が設けられる面)の一部又は全面は、鏡面仕上げ、及び艶消し仕上げのうち少なくともいずれかである。
これにより、転写層3の表面において種々の意匠性を付与することができる。
(5)転写層3における電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の少なくとも何れかである。
これにより、転写層3において熱乾燥のみで樹脂が付着しなくなるタックフリー性や、熱圧転写の後でも紫外線や電子線を照射することで硬化できるアフターキュア性を付与することができる。
【0036】
(実施例)
以下に、本発明の実施形態に係る転写シート1の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
まず、基材層2として、薄葉紙の一方の面にポリプロピレン樹脂がラミネートされた原反を用意した。薄葉紙の坪量は、40g/m2とした。また、ポリプロピレンの厚みは、16μmとした。また、原反の表面光沢値は、1.0(HORIBA製60°光沢計による計測値)とした。続いて、基材層2のポリプロピレン樹脂側の面上に、転写層用の塗工液の主剤として熱乾燥のみでタックフリー性を有する1液硬化型の紫外線硬化型樹脂を塗工して、転写層3を形成した。紫外線硬化型樹脂の乾燥後の塗布量は、6g/m2とした。また上記塗工液は、主剤である紫外線硬化型樹脂に対し塩素化ポリプロピレン樹脂(塩素化PP)を0.1質量%添加した組成とした。続いて、転写層3の一方の面(基材層2と反対側の面)上に、密着層用の塗工液であるシリコンオイルを非含有のウレタン樹脂を塗工して、密着層4を形成した。ウレタン樹脂の乾燥後の塗布量は2g/m2とした。これにより実施例1の転写シート1を作製した。
【0038】
上記転写層用の塗工液(塩素化PPを添加した紫外線硬化型樹脂)及び密着層用の塗工液(ウレタン樹脂)の塗工は、化粧シート製造用グラビア七色印刷機を用いて行った。印刷速度は、100m/分とした。また、乾燥条件は、各層毎に100℃で乾燥させ、さらに、全層塗工後に5mずつ2ゾーンに分割されたアフター乾燥ゾーンで順に120℃、180℃の2段階の温度設定で乾燥させて、樹脂を十分に乾燥させた。これにより、実施例1による転写シート1を得た。転写シート1は乾燥後に巻き取って保存した。
【0039】
続いて、第1積層体8を水性メラミン樹脂液に浸漬し、水性メラミン樹脂液に浸漬された第1積層体8の撥液層7側の面と、作製した転写シート1の密着層4側の面とを重ね合わせて第2積層体9を形成した。第1積層体8は、コア層5であるフェノール樹脂含浸紙の上に、メラミン樹脂による撥液層7および水性インキによる絵柄模様層6(メラミン樹脂のオーバーレイ)を設けた構成とした。続いて、形成した第2積層体9を2枚の鏡面板10、11の間に挟み、第2積層体9に加圧及び加熱を行った(熱圧転写)。熱圧転写は、熱プレス機を用いて圧力100kg/cm2、成形温度160℃、加熱加圧時間10分間の条件で行った。続いて、基材層2を第1積層体8から剥離させた後、剥離後の第1積層体8に電離放射線(紫外線)を照射し、転写層3の電離放射線硬化性樹脂を硬化させた。これにより実施例1のメラミン化粧板12を作製した。
ここで、第1積層体8の絵柄模様層6は、木目柄とし、撥液層7は、導管模様とした。
【0040】
(実施例2)
転写層用の塗工液において主剤である紫外線硬化型樹脂に対し、塩素化ポリプロピレン樹脂を0.5質量%添加した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2の転写シート1及びメラミン化粧板12を得た。
(実施例3)
転写層用の塗工液において主剤である紫外線硬化型樹脂に対し、塩素化ポリプロピレン樹脂を1質量%添加した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例3の転写シート1及びメラミン化粧板12を得た。
(実施例4)
転写層用の塗工液において主剤である紫外線硬化型樹脂に対し、塩素化ポリプロピレン樹脂を5質量%添加した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例4の転写シート1及びメラミン化粧板12を得た。
(実施例5)
転写層用の塗工液において主剤である紫外線硬化型樹脂に対し、塩素化ポリプロピレン樹脂を10質量%添加した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例5の転写シート1及びメラミン化粧板12を得た。
【0041】
(比較例1)
転写層用の塗工液において主剤である紫外線硬化型樹脂に対し、塩素化ポリプロピレン樹脂を添加しなかった。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1の転写シート及びメラミン化粧板を得た。
【0042】
<性能評価>
実施例1-5、比較例1のメラミン化粧板12に対して以下の性能評価を行った。
(意匠性(選択的転写)評価)
意匠性(選択的転写)評価では、メラミン化粧板12の意匠性を目視で評価した。特に、転写シートの転写層が、第1積層体8において転写されるべきでない箇所(撥液層7の導管模様の部分)に転写されているかという点について着目した。判定員の人数は10人とし、目視により、撥液層7の導管模様の部分に転写層が転写されている(メラミン化粧板12の意匠性が低い)と判定した判定員の人数によって、意匠性を評価した。
具体的には、以下の基準によりメラミン化粧板12の意匠性が低いとした判定員の数を「〇」、「△」、「×」の3段階に分けて、意匠感を評価した。
〔評価基準〕
〇:0人が導管模様に転写ありと判定
△:1~5人が導管模様に転写ありと判定
×:6人以上が導管模様に転写ありと判定
以上の評価基準での評価結果において、「〇」「△」を合格とし、「×」を不合格とする。
【0043】
(意匠性(白化防止)評価)
意匠感評価では、メラミン化粧板12の意匠性を目視で評価した。特に、導管模様(撥液層7の導管模様の部分)の白化に着目した。判定員の人数は10人とし、導管模様の白化が生じていない(意匠性が高い)と判定した判定員の人数によって、意匠性を評価した。具体的には、以下の基準によりメラミン化粧板12の導管模様の白化が生じていないとした判定員の数を「◎」、「〇」、「△」、「×」の4段階に分けて、意匠感を評価した。
〔評価基準〕
◎:10人が導管模様の白化なしと判定
〇:7~9人が導管模様の白化なしと判定
△:1~6人が導管模様の白化なしと判定
×:0人が導管模様の白化なしと判定
以上の評価基準での評価結果において、「◎」「〇」を合格とし、「△」「×」を不合格とする。
【0044】
(剥離性評価)
剥離性評価では、熱プレス機による熱圧転写後に第1積層体8から転写シートを剥離する際の重さ(剥離性)について、以下の基準により「〇」、「△」、「×」の3段階で官能評価した。
〔評価基準〕
〇:剥離性軽い
△:剥離性重い
×:剥離できない
以上の評価基準での評価結果において、「〇」「△」を合格とし、「×」を不合格とする。
なお、「剥離性軽い」とは、第1積層体8において撥液層7が設けられた部分において力をかけずに転写シートを剥離できることを示す。また「剥離性重い」とは、撥液層7が設けられた部分において力をかければ転写シートを剥離できることを示す。
【0045】
以上の性能評価の結果を、表1に示す。なお、以上の評価基準での評価結果において、「〇」「△」を合格とし、「×」を不合格とする。
【0046】
【表1】
【0047】
上記表1に示すように、実施例1~5のメラミン化粧板12では、「意匠性(選択的転写)評価」の評価結果はいずれも合格(「〇」、「△」)となった。つまり、実施例1~5の転写シートは、転写対象物(第1積層体8)への転写層の選択的な転写が可能であり、転写対象物の優れた意匠性を維持可能であることが確認された。具体的には、実施例1~4では、撥液層7の導管模様の部分に転写層が転写されておらず、転写対象物への転写層の選択的な転写が実現されており、「意匠性(選択的転写)評価」が合格(〇)となった。なお、実施例5の転写シートでは塩素化ポリプロピレンの含有量が(10質量%)であり、実施例1~4の転写シートに比べて多いことから、実施例1~4に比べると低い評価(△)となった。
また、上記表1に示すように、実施例1~5のメラミン化粧板12では、「剥離性評価」の評価結果についても、いずれも合格(「〇」、「△」)となった。なお実施例4、5の転写シートでは実施例1~3の転写シートに比べて転写層における塩素化ポリプロピレンの含有量が多い(5質量%以上)ことから、実施例1~3に比べると「剥離性評価」の評価が低かった(△)。
また、実施例1~5のメラミン化粧板では、白化がなく、選択的な光沢差があり、木目の立体感や照り感を感じることができ、「意匠性(白化防止)評価」の評価結果が「◎」となった。
【0048】
一方、比較例1のメラミン化粧板12では、転写層に塩素化ポリプロピレン樹脂を含まないため、転写層から基材層が剥離する際の剥離重さが不足して第1積層体8の転写対象でない箇所(撥液層7の導管模様の部分)にまで転写層3が転写されていた。つまり、転写対象物への転写層の選択的な転写が実現されておらず、「意匠感評価」が不合格「×」となった。
【0049】
したがって、実施例1~5の転写シート1は、比較例1の転写シート1と異なり、転写層が塩素化ポリオレフィン樹脂を含むことで、転写対象物への転写層の選択的な転写を可能とし、転写対象物の優れた意匠性を維持することができることが確認された。またさらに、実施例1~5の転写シート1は、転写層の電離放射線硬化性樹脂が未硬化の柔軟な状態であり、密着層の熱硬化型樹脂が撥液性を発現させる成分を非含有であるため、熱圧転写による転写層3の膜割れを防止できることが確認された。
【0050】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられた転写層と、
前記転写層の前記基材層と反対側の面側に設けられた密着層と、を備え、
前記転写層を構成する樹脂は、未硬化の電離放射線硬化性樹脂及び塩素化ポリオレフィン樹脂であり、
前記密着層を構成する樹脂は、撥液性を発現させる成分を非含有の熱硬化型樹脂である ことを特徴とする転写シート。
(2)
前記転写層における前記塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量 は、前記電離放射線硬化性樹脂に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)に記載の転写シート。
(3)
前記塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素化ポリプロピレン樹脂である
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の転写シート。
(4)
前記基材層の前記一方の面の一部又は全面は、鏡面仕上げ、及び艶消し仕上げのうち少なくともいずれかである
ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の転写シート。
(5)
前記電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の少なくとも何れかである
ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の転写シート。
(6)
上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の転写シートを用いたメラミン化粧板の製造方法であって、
コア層と前記コア層の一方の面側に部分的に設けられた撥液層とを有する第1積層体を水性メラミン樹脂液に浸漬させ、浸漬させた前記第1積層体の前記撥液層側の面に前記転写シートを積層してなる第2積層体に加圧及び加熱を行って、前記コア層が含む水性メラミン樹脂液の未硬化物を硬化させる工程、
前記転写シートの前記基材層を前記第1積層体から剥離させて、未硬化の前記電離放射線硬化性樹脂及び前記塩素化ポリオレフィン樹脂を含む前記転写シートの前記転写層の一部を前記第1積層体に転写させる工程、
前記第1積層体に電離放射線を照射して、前記転写層の電離放射線硬化性樹脂を硬化させる工程を含むことを特徴とするメラミン化粧板の製造方法。
【符号の説明】
【0051】
1…転写シート、2…基材層、3…転写層、4…密着層、5…原紙、6…絵柄模様層、7…撥液層、8…第1積層体、9…第2積層体、10…鏡面板、11…鏡面板、12…メ
ラミン化粧板
図1
図2