(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161410
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】動物用サポーター
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
A01K13/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071791
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】▲かせ▼野 英憲
(57)【要約】 (修正有)
【課題】四足動物の体全体の骨格構造を利用して、重心を適切な位置へ移動させ、背を水平にする動物用サポーターを提供する。
【解決手段】動物用サポーター1は、肩まわり近傍を被覆し、頭部及び前足を挿通するための挿通部51、52を有する前方被覆部10と、前方被覆部10に係止され、胸椎から仙椎にかけて背側上部を被覆する背面被覆部20と、背面被覆部20における腰椎に対応する部分の左端に固着されるとともに、当該左端から左後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、背面被覆部20の上方を介して前方被覆部10の右肩に対応する部分に係着される第1テーピング部30と、背面被覆部20における腰椎に対応する部分の右端に固着されるとともに、当該右端から右後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、背面被覆部20の上方を介して前方被覆部10の左肩に対応する部分に係着される第2テーピング部40とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩まわり近傍を被覆し、頭部及び前足を挿通するための挿通部を有する前方被覆部と、
前記前方被覆部に係止され、胸椎から仙椎にかけて背側上部を被覆する背面被覆部と、
前記背面被覆部における腰椎に対応する部分の左端に固着されるとともに、当該左端から左後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、前記背面被覆部の上方を介して前記前方被覆部の右肩に対応する部分に係着される第1テーピング部と、
前記背面被覆部における腰椎に対応する部分の右端に固着されるとともに、当該右端から右後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、前記背面被覆部の上方を介して前記前方被覆部の左肩に対応する部分に係着される第2テーピング部とを備えることを
特徴とする動物用サポーター。
【請求項2】
請求項1に記載の動物用サポーターにおいて、
前記第2テーピング部が、前記背面被覆部における腰椎に対応する部分の右端に固着されるとともに、当該右端から右後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、前記第1テーピング部と交差するようにして前記背面被覆部の上方を介して前記前方被覆部の左肩に対応する部分に係着されることを
特徴とする動物用サポーター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動物用サポーターにおいて、
前記背面被覆部が、腰椎及び仙椎に対応する部分に、湾曲制限部材を有することを
特徴とする動物用サポーター。
【請求項4】
請求項3に記載の動物用サポーターにおいて、
前記湾曲制限部材が、左右一対で腰椎及び仙椎に対応する部分に設けられることを
特徴とする動物用サポーター。
【請求項5】
請求項1に記載の動物用サポーターにおいて、
前記第1テーピング部及び前記第2テーピング部が、腰椎及び仙椎に対応する部分で交差するように配設されることを
特徴とする動物用サポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四足動物の体全体の骨格構造を利用して、重心を適切な位置へ移動させ、背を水平にする動物用サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
四足動物、例えば、イヌは前足加重であるため、後足での運動量が前足の運動量と比べて少なく、加齢ととともに後足の筋肉が落ちてくる。後足の筋肉が落ちると、臀部を支える力が弱くなり、やがて臀部が下がり、後足が中央寄りになるとともに、身体全体のバランス保持のために前足も中央寄りとなってしまい、背が丸く(上方に湾曲)なってしまう。背が丸くなってしまった犬は、歩行のしづらさから、運動量が減り、更に後足の筋肉が落ちるといった悪循環に陥ってしまう。
【0003】
例えば、従来の動物用コルセットは、コルセット本体と、左後足の付根前方から内股側を通って臀部へ回りコルセット本体の上面に固着される左後足ベルトと、右後足の付根前方から内股側を通って臀部へ回りコルセット本体の上面に固着される右後足ベルトとを備え、これにより、四足動物の脊椎の動きを規制して安定させるだけでなく、後足の麻痺などが原因で腰部が沈んでしまった四足動物の腰部を浮かせて、その起立動作や歩行動作を助けるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の動物用テーピング式コルセットは、伸縮性のある布製テープを、上部右前肩から上部左側大腿部、上部左前肩から上部右側大腿部にX字になるようにテーピングし、これにより、四足動物の頭部分と腰椎の連携を図るものである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4920606号公報
【特許文献2】特開2014-14348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の動物用コルセットは、コルセット本体上面の中央に設けられたベルト固着部に左後足ベルト及び右後足ベルトを固着し、左後足及び右後足を引き上げることによって腰部を浮かせようとするもので、動物の体全体を用いて腰部の沈みを解消するものではなく、その効果は限定的である。
【0007】
また、特許文献2に記載の動物用テーピング式コルセットは、頭部から大腿部上部まで配設された背部位テープによって頭部分と腰椎との連携を図ろうとするものであるが、上記特許文献1同様に、動物の体全体を用いて腰部の沈みを解消するものではない。
【0008】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、四足動物の体全体の骨格構造を利用して、重心を適切な位置へ移動させ、背を水平にする動物用サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る動物用サポーターは、肩まわり近傍を被覆し、頭部及び前足を挿通するための挿通部を有する前方被覆部と、前方被覆部に係止され、胸椎から仙椎にかけて背側上部を被覆する背面被覆部と、背面被覆部における腰椎に対応する部分の左端に固着されるとともに、当該左端から左後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、背面被覆部の上方を介して前方被覆部の右肩に対応する部分に係着される第1テーピング部と、背面被覆部における腰椎に対応する部分の右端に固着されるとともに、当該右端から右後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、背面被覆部の上方を介して前方被覆部の左肩に対応する部分に係着される第2テーピング部とを備える。
【0010】
このように本発明においては、第1テーピング部が背面被覆部における腰椎に対応する部分の左端に固着されるとともに、当該左端から左後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、背面被覆部の上方を介して前方被覆部の右肩に対応する部分に係着され、第2テーピング部が背面被覆部における腰椎に対応する部分の右端に固着されるとともに、当該右端から右後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、背面被覆部の上方を介して前方被覆部の左肩に対応する部分に係着されることから、第1テーピング部及び第2テーピング部が、左右の肩に係着されて後方に引っ張られることで胸を反らせるとともに、後足をより後方へずらして起こすように内股から臀部をまわって後足に巻回されて装着されることから、体全体の骨格構造を利用して背が湾曲することを予防する。さらには、既に背が湾曲している場合であっても、正しい姿勢に戻すように補助することができる。背が真っ直ぐになることから、前足とともに後足を用いた運動が可能となり、背の湾曲、後足の筋力低下といった悪循環を防ぐことができる。
【0011】
また、前方被覆部及び背面被覆部が、肩回りから背側上部を被覆するように配設されることから、肩の下部から腹部を圧迫することがなく、動物に対して過度な負担をかけることがない。
【0012】
さらに、第1テーピング部及び第2テーピング部は、前方被覆部や背面被覆部に一端のみが固着されていることから、装着時に配置位置を微調整可能となり、様々な体型の動物に合わせて装着することが可能となる。また、第1テーピング部30及び第2テーピング部40は独立しているため、必要に応じて、左右それぞれの固定力を調整することが可能である。
【0013】
本発明に係る動物用サポーターは、必要に応じて、第2テーピング部が、背面被覆部における腰椎に対応する部分の右端に固着されるとともに、当該右端から右後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、第1テーピング部と交差するようにして背面被覆部の上方を介して前方被覆部の左肩に対応する部分に係着される。
【0014】
このように本発明においては、第2テーピング部が第1テーピング部と交差するようにして背面被覆部の上方を介して前方被覆部の左肩に対応する部分に係着されることから、第1テーピング部と第2テーピング部との交差構造により胸椎から仙椎にかけて左右のブレを抑えつつ、第1テーピング部及び第2テーピング部が、左右の肩に係着されて後方に引っ張られることで胸を反らせるとともに、後足をより後方へずらして起こすように内股から臀部をまわって後足に巻回されて装着されることから、体全体の骨格構造を利用して背が湾曲することを予防する。さらには、既に背が湾曲している場合であっても、正しい姿勢に戻すように補助することができる。背が真っ直ぐになることから、前足とともに後足を用いた運動が可能となり、背の湾曲、後足の筋力低下といった悪循環を防ぐことができる。
【0015】
本発明に係る動物用サポーターは、必要に応じて、背面被覆部が、腰椎及び仙椎に対応する部分に、湾曲制限部材を有する。
【0016】
このように本発明においては、湾曲制限部材が腰椎及び仙椎に対応する部分に配置されることから、第1テーピング部及び第2テーピング部の交差構造とともに、湾曲制限部材により背の湾曲を補助的に抑制できることとなり、より体全体の骨格構造を利用して背が湾曲することを予防する。さらには、既に背が湾曲している場合であっても、正しい姿勢に戻すように補助することができる。
【0017】
本発明に係る動物用サポーターは、必要に応じて、湾曲制限部材が、左右一対で腰椎及び仙椎に対応する部分に設けられる。
【0018】
このように本発明においては、左右一対で腰椎及び仙椎に対応する部分に湾曲制限部材が配置されることから、左右のそれぞれの湾曲制限部材が独立して移動できることとなり、個々の体型にあわせて左右の湾曲制限部材をそれぞれ適切な位置へ配置させることができる。
【0019】
本発明に係る動物用サポーターは、必要に応じて、第1テーピング部及び第2テーピング部が、腰椎及び仙椎に対応する部分で交差するように配設される。
【0020】
このように本発明においては、腰椎及び仙椎に対応する部分で、第1テーピング部及び第2テーピング部が交差するように配設されることから、背面被覆部の後方に設けられる湾曲制限部材の上方にて第1テーピング部及び第2テーピング部が交差し、この交差部分においては二重になった第1テーピング部及び第2テーピング部が伸長状態となり伸びにくくなり、湾曲制限部材が上方へ湾曲しようとしても、その変形を第1テーピング部及び第2テーピング部の交差部分で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る動物用サポーターの概略構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る動物用サポーターの概略構成を示す底面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る動物用サポーターの概略構成を示す側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る動物用サポーターの着用方法を示す概略図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る動物用サポーターの着用方法を示す概略図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る動物用サポーターの着用方法を示す概略図であって、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る動物用サポーターの概略構成を示す平面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る動物用サポーターの着用方法を示す概略図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る動物用サポーターの着用方法を示す概略図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る動物用サポーターの着用方法を示す概略図であって、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る動物用サポーターについて、
図1ないし
図6を用いて説明する。本実施形態の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
四足動物としては、ネコ科、マングース科、ハイエナ科、イヌ科等が属する食肉目の動物が挙げられるが、以下では、イヌ科イヌ属のイヌである場合を例にとって説明する。
【0023】
本実施形態に係る四足動物用サポーター(イヌ用サポーター)1は、イヌの肩まわり近傍を被覆する前方被覆部10と、前方被覆部10に縫着され、イヌの胸椎から仙椎にかけて背側上部を被覆する背面被覆部20と、背面被覆部20におけるイヌの腰椎に対応する部分の左端に縫着される第1テーピング部30と、背面被覆部20におけるイヌの腰椎に対応する部分の右端に縫着される第2テーピング部40とを備える。
【0024】
前方被覆部10は、経方向及び緯方向に伸縮性を有する編地又は織地で形成され、その表面(イヌの体とは反対側の面)側は面ファスナーのループ面となっている。
このように、前方被覆部10は、その表面を面ファスナーのループ面とすることから、イヌの体に直接動物用サポーター1を装着しても、毛が絡まないようになっている。
【0025】
前方被覆部10は、イヌの左肩から右肩までを下まわりに覆う帯状の肩被覆部分11と、肩被覆部分11の中央から延びて、イヌの胸部を覆う略逆Y字状の胸被覆部分12とで構成される。
【0026】
背面被覆部20は、経方向及び緯方向に伸縮性を有する編地又は織地で形成される。
背面被覆部20は、前方被覆部10の肩被覆部分11の左右両端部、及び前方被覆部10の胸被覆部分12の胸部側左右両端部に縫着される。これにより、前方被覆部10と背面被覆部20とで、開口部としての、イヌの頭部を挿通するための頭挿通部51と、イヌの両前足をそれぞれ挿通するための前足挿通部52が形成される。頭挿通部51及び前足挿通部52まわりは伸縮性を有する生地で縁取りされ、面ファスナーのループ面がイヌの体毛に絡みにくい仕様となっている。
背面被覆部20は、イヌの腹部を圧迫しないように当該腹部を露出させた状態で、前方被覆部10の各縫着部分から、イヌの背側上部に向かって延在し、胸椎から仙椎までに対応する部分を被覆する。
【0027】
背面被覆部20は、前方被覆部10における肩被覆部分11との縫着部分近傍に、第1テーピング部30及び第2テーピング部40を挿通するための左前方ループ部分21と右前方ループ部分22とを備える。
また、背面被覆部20は、背面被覆部20後方のイヌの仙椎に対応する部分に、左後方ループ部分23と右後方ループ部分24とを備える。
【0028】
第1テーピング部30及び第2テーピング部40は、帯状で、長手方向に伸縮性を有する編地又は織地で形成される。
第1テーピング部30は、背面被覆部20のイヌの腰椎に対応する部分の左側端に縫着され、第2テーピング部40は、背面被覆部20のイヌの腰椎に対応する部分の右側端に縫着される。
第1テーピング部30及び第2テーピング部40の背面被覆部20に対する固着方法としては、上述した縫着の他、ホットメルト、超音波溶着、熱融着等が挙げられるが、製造性の観点から、縫着であることが好ましい。
【0029】
第1テーピング部30及び第2テーピング部40の長さとしては、45ないし100cmであることが好ましく、55ないし90cmであることがより好ましく、63ないし83cmであることが特に好ましい。
第1テーピング部30及び第2テーピング部40の幅としては、2ないし6cmであることが好ましく、2.5ないし4cmであることがより好ましく、2.8ないし3.3cmであることが特に好ましい。
第1テーピング部30及び第2テーピング部40の長手方向の最大伸度は、1.5ないし5であることが好ましく、2ないし3であることがより好ましく、2.3ないし2.7であることが更に好ましい。長手方向の最大伸度を1.5ないし5とすることで、イヌの身体の動きに対して無理な力が掛からず、安定した支持固定力を得やすくすることができる。
ここで、最大伸度とは、「巾3.0cmの試験片を用意し、巾方向の全幅をつかみ、引張試験機(島津製作所製、EZ-TEST EZ-L)にセットした後、10cm間隔(L0)に印を付け、54.4Nの荷重を加え、1分間保持後の印間の長さ(L1)を、L0で除した値」をいう。
【0030】
第1テーピング部30は、その先端部に接合され、前方被覆部10の面ファスナーのループ面に脱着可能な面ファスナーのフック面を有する係着部分31を備える。
同様に、第2テーピング部40は、その先端部に接合され、前方被覆部10の面ファスナーのループ面に脱着可能な面ファスナーのフック面を有する係着部分41を備える。
【0031】
第1テーピング部30は、左後方ループ部分23及び右前方ループ部分22に案内されて、前方被覆部10の面ファスナーのループ面に係着され、第2テーピング部40は、右後方ループ部分24及び左前方ループ部分21に案内されて、前方被覆部10の面ファスナーのループ面に係着される。このようにして、第1テーピング部30及び第2テーピング部40がイヌの背面にてX字状に配されることとなる。
【0032】
次に、本実施形態に係る動物用サポーター1の装着方法について、
図4ないし
図6を用いて説明する。
【0033】
まず、
図4に示すように、イヌの頭部を背面被覆部20の開口部分から挿入し、頭挿通部51に通す。
次に、イヌの左前足及び右前足を順次抱え、それぞれ対応する左側及び右側の前足挿通部52に左足及び右足を挿通させて、前方被覆部10を装着させる。
【0034】
次に、
図5に示すように、イヌの排泄の妨げとならないように、第2テーピング部40を右後足の付け根前方から内股に通し、臀部にまわして右後方ループ部分24に挿通する。続けて、第2テーピング部40を背面被覆部20の上方を通して、左前方ループ部分21に挿通し、第2テーピング部40の係着部分41を前方被覆部10の面ファスナーのループ面に係着させる。
【0035】
同様に、
図6に示すように、背面被覆部20がイヌの背面に載置された状態で、イヌの排泄の妨げとならないように、第1テーピング部30を左後足の付け根前方から内股に通し、臀部にまわして左後方ループ部分23に挿通する。続けて、第1テーピング部30を背面被覆部20の上方を通して、右前方ループ部分22に挿通し、第1テーピング部30の係着部分31を前方被覆部10の面ファスナーのループ面に係着させる。
【0036】
最後に、イヌに無理な負荷が掛からないように、第1テーピング部30及び第2テーピング部40の配置、伸張状態を微調整し、動物用サポーター1の装着を完了する。
【0037】
なお、動物用サポーター1をイヌに装着させる前に、あらかじめ第1テーピング部30を左後方ループ部分23及び右前方ループ部分22に挿通するとともに、第2テーピング部40を右後方ループ部分24及び左前方ループ部分21に挿通した後、動物用サポーター1をイヌに装着するようにしてもよい。
【0038】
以上のように、第1テーピング部30が背面被覆部20における腰椎に対応する部分の左端に固着されるとともに、当該左端から左後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、背面被覆部20の上方を介して前方被覆部10の右肩に対応する部分に係着され、第2テーピング部40が背面被覆部20における腰椎に対応する部分の右端に固着されるとともに、当該右端から右後足の付け根前方、内股、臀部をまわり、背面被覆部20の上方を介して前方被覆部10の左肩に対応する部分に係着されることから、第1テーピング部30及び第2テーピング部40が、左右の肩に係着されて後方に引っ張られることで胸を反らせるとともに、後足をより後方へずらして起こすように内股から臀部をまわって後足に巻回されて装着されることから、体全体の骨格構造を利用して背が湾曲することを予防する。さらには、既に背が湾曲している場合であっても、正しい姿勢に戻すように補助することができる。背が真っ直ぐになることから、前足とともに後足を用いた運動が可能となり、背の湾曲、後足の筋力低下といった悪循環を防ぐことができる。
【0039】
また、前方被覆部10及び背面被覆部20が、肩回りから背側上部を被覆するように配設されることから、肩の下部から腹部を圧迫することがなく、動物に対して過度な負担をかけることがない。
【0040】
さらに、第1テーピング部30及び第2テーピング部40は、前方被覆部10や背面被覆部20に一端のみが固着されていることから、装着時に配置位置を微調整可能となり、様々な体型の動物に合わせて装着することが可能となる。また、第1テーピング部30及び第2テーピング部40は独立しているため、必要に応じて、左右それぞれの固定力を調整することが可能である。
【0041】
また、第2テーピング部40が第1テーピング部30と交差するようにして背面被覆部20の上方を介して前方被覆部10の左肩に対応する部分に係着されることから、第1テーピング部30と第2テーピング部40との交差構造により胸椎から仙椎にかけて左右のブレを抑えつつ、第1テーピング部30及び第2テーピング部40が、左右の肩に係着されて後方に引っ張られることで胸を反らせるとともに、後足をより後方へずらして起こすように内股から臀部をまわって後足に巻回されて装着されることから、体全体の骨格構造を利用して背が湾曲することを予防する。さらには、既に背が湾曲している場合であっても、正しい姿勢に戻すように補助することができる。背が真っ直ぐになることから、前足とともに後足を用いた運動が可能となり、背の湾曲、後足の筋力低下といった悪循環を防ぐことができる。
【0042】
(本発明の第2の実施形態)
第1の実施形態に係る動物用サポーターにおいては、加齢、怪我、ヘルニア等の症状による四足動物(イヌ)の背の湾曲を抑える、又は予防するために第1テーピング部及び第2テーピング部を有する構成としているが、これに限らず、
図7に示すように、四足動物(イヌ)の背の湾曲を抑えるため、第1テーピング部及び第2テーピング部とともに、背面被覆部後方に湾曲制限部材を有する構成とすることもできる。
【0043】
動物用サポーター2における背面被覆部60は、その後方であるイヌの腰椎及び仙椎に対応する部分に湾曲制限部材70を有する。湾曲制限部材70は、四足動物(イヌ)の背の湾曲を抑えるために用いる部材のことを意味し、背面被覆部60後方に設けられた袋状部分80に内包されている。
図7に示す例では、袋状部分80は、縫製により左右に区画されており、それぞれに湾曲制限部材70が内包されている。
【0044】
なお、湾曲制限部材70は、露出した状態で背面被覆部60に固着されていてもよいが、装着の容易性の観点から、袋状部分80に内包されることが好ましい。
湾曲制限部材70を露出した状態で固着する方法としては、縫着、ホットメルト、超音波溶着、熱融着等を用いることができる。
【0045】
湾曲制限部材70は、前後方向に長尺なブーメラン状とされ、装着時に、イヌの腰椎から仙椎に対応する部分の左右位置に配置されるようになっている。
湾曲制限部材70の形状としては、
図7に示す形状に特に制限されず、例えば、略長方形、楕円形、ブーメラン状等の湾曲制限部材を用いることができるが、背の湾曲を抑制する観点から、ブーメラン状が好ましい。
また、左右の湾曲制限部材70を連結させて一体化された湾曲制限部材、例えば、U字状やH字状の湾曲制限部材を用いることもできる。
しかし、イヌによっては、背の形状が必ずしも完全に左右対称となっていない場合もあることから、装着性、イヌの快適性の点から、湾曲制限部材70を左右で別体とすることが好ましい。
このように、左右一対で腰椎及び仙椎に対応する部分に湾曲制限部材70が配置されることから、左右のそれぞれの湾曲制限部材70が独立して移動できることとなり、個々の体型にあわせて左右の湾曲制限部材70をそれぞれ適切な位置へ配置させることができる。
【0046】
湾曲制限部材70の原料としては、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン等を用いることができる。
湾曲制限部材70の厚みとしては、1ないし5mmであることが好ましく、1.5ないし4mmであることがより好ましく、2ないし3mmであることが特に好ましい。
湾曲制限部材70の総面積は、40ないし120cm2であることが好ましく、50ないし100cm2であることがより好ましく、60ないし80cm2であることが特に好ましい。
【0047】
湾曲制限部材70の引張強さとしては、30ないし50MPaであることが好ましく、32ないし40MPaであることがより好ましい。ここで、引張強さは、JIS K 7127に準じて測定した。引張速度は、200mm/minとした。
【0048】
湾曲制限部材70の引張弾性率としては、600ないし1000MPaであることが好ましく、700ないし950MPaであることがより好ましく、800ないし900MPaであることが特に好ましい。ここで、引張弾性率は、JIS K 7127に準じて測定した。引張速度は、50mm/minとした。
【0049】
また、背面被覆部60は、左右の前方ループ部分21、22及び左右の後方ループ部分23、24に加え、左右の中央ループ部分61、62を備える。
【0050】
左中央ループ部分61及び右中央ループ部分62は、袋状部分80の前方に配置され、左後方ループ部分23及び右後方ループ部分24は、袋状部分80の後方に配置される。
【0051】
次に、本実施形態に係る動物用サポーター2の装着方法について、
図8ないし
図10を用いて説明する。
【0052】
まず、
図8に示すように、イヌの頭部を背面被覆部60の開口部分側から挿入し、頭挿通部51に通す。
次に、イヌの左前足及び右前足を順次抱え、それぞれ対応する左側及び右側の前足挿通部52に左足及び右足を挿通させて、前方被覆部10を装着させる。
【0053】
次に、
図9に示すように、第2テーピング部40を右後足の付け根前方から内股に通し、臀部にまわして右後方ループ部分24、左中央ループ部分61の順で挿通する。続けて、第2テーピング部40を背面被覆部60の上方を通して、左前方ループ部分21に挿通し、第2テーピング部40の係着部分41を前方被覆部10の面ファスナーのループ面に係着させる。
【0054】
同様に、
図10に示すように、背面被覆部60がイヌの背面に載置された状態で、第1テーピング部30を左後足の付け根前方から内股に通し、臀部にまわして左後方ループ部分23、右中央ループ部分62の順で挿通し、第1テーピング部30を袋状部分80上方で第2テーピング部40とX字状に交差させる。続けて、第1テーピング部30を背面被覆部60の上方を通して、右前方ループ部分22に挿通し、第1テーピング部30の係着部分31を前方被覆部10の面ファスナーのループ面に係着させる。
【0055】
最後に、イヌに無理な負荷が掛からないように、第1テーピング部30及び第2テーピング部40の配置、伸張状態を微調整し、動物用サポーター2の装着を完了する。
【0056】
なお、動物用サポーター2をイヌに装着させる前に、あらかじめ第1テーピング部30を左後方ループ部分23、右中央ループ部分62及び右前方ループ部分22に挿通するとともに、第2テーピング部40を右後方ループ部分24、左中央ループ部分61及び左前方ループ部分21に挿通した後、動物用サポーター2をイヌに装着するようにしてもよい。
【0057】
このように、湾曲制限部材70が腰椎及び仙椎に対応する部分に配置されることから、第1テーピング部30及び第2テーピング部40の交差構造とともに、湾曲制限部材70により背の湾曲を補助的に抑制できることとなり、より体全体の骨格構造を利用して背が湾曲することを予防する。さらには、既に背が湾曲している場合であっても、正しい姿勢に戻すように補助することができる。
【0058】
また、腰椎及び仙椎に対応する部分で、第1テーピング部30及び第2テーピング部40が交差するように配設されることから、背面被覆部60の後方に内包される湾曲制限部材70の上方にて第1テーピング部30及び第2テーピング部40が交差し、この交差部分においては二重になった第1テーピング部30及び第2テーピング部40が伸長状態となって伸びにくくなり、湾曲制限部材70が上方へ湾曲しようとしても、その変形を第1テーピング部30及び第2テーピング部40の交差部分で抑制することができる。
【実施例0059】
図7に示す動物用サポーター2を用いて、着用評価を実施した。
【0060】
具体的には、トイプードル(オス、体重:3.0kg、体長:24.0cm)、マルチーズ×トイプードル(メス、体重:3.0kg、体長:29.0cm)、ミニチュアピンシャー(オス、体重:3.1kg、体長:29.0cm)、パグ(メス、体重:5.7kg、体長:26.0cm)、トイプードル(オス、体重:6.3kg、体長:36.0cm)、シーズー(オス、体重:6.5kg、体長:30.0cm)の6匹に動物用サポーター2を装着させて、着用評価を行った。
着用評価の実施にあたっては、背中(腰椎から仙椎にかけて)が湾曲しており、前足に重心が偏った状態のイヌを用いて評価した。
また、着用評価は、動物用サポーター2を対象となるイヌに1日あたり2時間装着させた状態で行った。
【0061】
その結果、3日目には後足を使うことに慣れ、後足に踏ん張りが見られ、背中の湾曲に改善が見られた。
【0062】
【0063】
以上から、本発明に係る動物用サポーターが、四足動物(イヌ)の体全体の骨格構造を利用して、重心を適切な位置へ移動させ、背を水平にすることに有用であることが確認された。
背が真っ直ぐになることから、前足とともに後足を用いた運動が可能となり、背の湾曲、後足の筋力低下といった悪循環を防ぐことができる。