IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161411
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】トナー用結着樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071793
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 昌吾
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500CA06
2H500CA12
2H500CA16
2H500CA27
2H500EA32B
2H500EA39B
2H500EA40B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA44B
(57)【要約】
【課題】低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物、及び該トナー用結着樹脂組成物を含有する静電荷像現像用トナーに関する。
【解決手段】2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、極性基を有する変性シリコーンとの重縮合物である非晶性樹脂(A)と、結晶性樹脂(C)とを含有する、トナー用結着樹脂組成物であって、前記非晶性樹脂(A)のアルコール成分とカルボン酸成分から算出されるFedorsの溶解度パラメータ(SP値)(SP)が11.0(cal/cm1/2以下であり、前記変性シリコーンの極性基価が10.0mgKOH/g以上であり、前記結晶性樹脂(C)のSP値(SP)が9.6(cal/cm1/2以下であるトナー用結着樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、極性基を有する変性シリコーンとの重縮合物である非晶性樹脂(A)と、結晶性樹脂(C)とを含有する、トナー用結着樹脂組成物であって、
前記非晶性樹脂(A)のアルコール成分とカルボン酸成分から算出されるFedorsの溶解度パラメータ(SP値)(SP)が11.0(cal/cm1/2以下であり、前記変性シリコーンの極性基価が10.0mgKOH/g以上であり、前記結晶性樹脂(C)のSP値(SP)が9.6(cal/cm1/2以下であるトナー用結着樹脂組成物。
【請求項2】
前記変性シリコーンは、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位を有する、請求項1に記載のトナー用結着樹脂組成物。
【化1】

〔式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、R’はそれぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、aは1又は0であり、Xは、それぞれ独立に、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基であり、*は結合部位である。〕
【化2】

〔式(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、*は結合部位である。〕
【請求項3】
前記Xが、アミノ基である、請求項2に記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項4】
前記非晶性樹脂(A)における変性シリコーンの仕込み量が、前記非晶性樹脂(A)の原料中のアルコール成分及びカルボン酸成分から得られるポリエステルの理論出来高100質量部に対して0.1質量部以上9質量部以下である、請求項1~3のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項5】
前記結晶性樹脂(C)が、結晶性ポリエステル樹脂(C1)である、請求項1~4のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項6】
前記非晶性樹脂(A)に対する前記結晶性樹脂(C)の質量比(結晶性樹脂(C)/非晶性樹脂(A))が、1/99以上50/50以下である、請求項1~5のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項7】
結着樹脂が請求項1~6のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるトナー用結着樹脂組成物、該トナー用結着樹脂組成物を含有した静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)の開発が求められている。例えば、マシンの高速化に対応するため、トナーには、優れた低温定着性が要求されている。
しかしながら、低温定着性が良好なトナーは、多量の印刷を行うことで、印刷物が積み重なった状態になった場合、冷却されず高温環境下になりやすく、定着画像の軟化が原因で、自重により印字面同士の張り付きや、剥がした際に画像荒れが発生する等の画像耐熱性が低下し、画像濃度や光沢のムラを生じやすかった。そこで、低温定着性と画像耐熱性とを両立したトナーが要求されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、低温定着性及び画像保存性に優れるトナーを提供することを目的として、結着樹脂及び結晶性ポリエステルを含有するトナー粒子を有するトナーであって、結着樹脂が、シリコーン構造を有するポリエステルを含有することを特徴とするトナーが記載されている。
また、特許文献2には、低温定着性、耐ドキュメントオフセット性及び耐フィルミング性に優れるトナーを提供することを目的として、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、及びカルビノール基から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有するシリコーンとの反応物である、トナー用結着樹脂が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-060582号公報
【特許文献2】特開2020-063412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、得られたシリコーン含有ポリエステルと結晶性ポリエステルの加熱時の相溶性が不十分であり、低温定着性に改善の余地を残していた。また、特許文献2の技術では、低温定着性、耐ドキュメントオフセット性及び耐フィルミング性に優れるトナーを提供するものの、画像耐熱性に改善の余地を残していた。そのため、低温定着性と画像耐熱性に優れるトナーの開発が要求されている。
【0006】
本発明は、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物、及び該トナー用結着樹脂組成物を含有する静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の〔1〕又は〔2〕に関する。
〔1〕 2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、極性基を有する変性シリコーンとの重縮合物である非晶性樹脂(A)と、結晶性樹脂(C)とを含有する、トナー用結着樹脂組成物であって、
前記非晶性樹脂(A)のアルコール成分とカルボン酸成分から算出されるFedorsの溶解度パラメータ(SP値)(SP)が11.0(cal/cm1/2以下であり、前記変性シリコーンの極性基価が10.0mgKOH/g以上であり、前記結晶性樹脂(C)のSP値(SP)が9.6(cal/cm1/2以下であるトナー用結着樹脂組成物。
〔2〕 結着樹脂が〔1〕に記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物、並びに該トナー用結着樹脂組成物を含有した静電荷像現像用トナーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[トナー用結着樹脂組成物]
本発明の一実施態様に係るトナー用結着樹脂組成物は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、極性基を有する変性シリコーンとの重縮合物である非晶性樹脂(A)と、結晶性樹脂(C)とを含有する、トナー用結着樹脂組成物であって、前記非晶性樹脂(A)のアルコール成分とカルボン酸成分から算出されるFedorsの溶解度パラメータ(SP値)(SP)が11.0(cal/cm1/2以下であり、前記変性シリコーンの極性基価が10.0mgKOH/g以上であり、前記結晶性樹脂(C)のSP値(SP)が9.6(cal/cm1/2以下である。
以上の構成によれば、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物、並びに該トナー用結着樹脂組成物を含有した静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【0010】
このような効果が得られる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
トナーの低温定着性を改善するためには、非晶性樹脂と親和性の高い結晶性樹脂を使用し、トナーの定着温度を低下させることが効果的である。しかし、非晶性樹脂と結晶性樹脂の親和性が高すぎると、結晶性樹脂が非晶性樹脂中で相溶しすぎることで、画像耐熱性等の耐熱性能が悪化する弊害が生じる。
非晶性樹脂(A)は、非晶性樹脂(A)のアルコール成分とカルボン酸成分から算出されるFedorsの溶解度パラメータ(SP値)が11.0(cal/cm1/2以下であると、変性シリコーンとカルボン酸成分との反応が優先して進行し、次に変性シリコーンとカルボン酸成分との反応物がアルコール成分と反応することにより、非晶性樹脂(A)への変性シリコーンの導入率が高くなる。また、変性シリコーンの極性基価が10.0mgKOH/g以上であると、非晶性樹脂(A)に導入された変性シリコーン部位は、未反応の極性基を介して結晶性樹脂(C)と水素結合等の分子間力により相互作用することができ、結晶性樹脂(C)のSP値が9.6(cal/cm1/2以下であっても、非晶性樹脂(A)と結晶性樹脂(C)との相溶性が高くなる。変性シリコーンが有する極性基がアミノ基であり、結晶性樹脂(C)が酸基を有する場合、非晶性樹脂(A)と結晶性樹脂(C)は酸塩基相互作用により、更に相溶性が高くなると考えられる。そのため、結晶性樹脂(C)の融点が比較的高い温度であってもトナーは低温で軟化することができ、トナーの低温定着性が向上すると考えられる。一方、画像耐熱性が必要とされる工程では、比較的高い温度の融点を有する結晶性樹脂(C)が結晶化しやすく、トナー用結着樹脂組成を硬化させるため、定着画像の画像耐熱性が向上すると考えられる。
【0011】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
明細書中、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径である。
「ビスフェノールA」とは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
炭化水素基に関して、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」を括弧とする記載は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。
【0012】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、極性基を有する変性シリコーンとの重縮合物である非晶性樹脂(A)と、結晶性樹脂(C)とを含有する。
【0013】
〔非晶性樹脂(A)〕
非晶性樹脂(A)(以下、単に「樹脂(A)」ともいう)は、アルコール成分と、カルボン酸成分と、変性シリコーンとの重縮合物であり、非晶性ポリエステル樹脂セグメント及びシリコーンセグメントを有する非晶性シリコーン変性ポリエステル樹脂を含む。
【0014】
なお、樹脂(A)は、非晶性シリコーン変性ポリエステル樹脂に加え、変性シリコーンと未反応の、アルコール成分と、カルボン酸成分との重縮合物である非晶性ポリエステル樹脂を含んでもよい。
【0015】
<アルコール成分>
アルコール成分は、2価以上のアルコールを含む。
2価以上のアルコールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
2価以上のアルコールとしては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、又は、直鎖若しくは分岐の脂肪族ジオールが好ましく、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物がより好ましい。
【0016】
芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物は、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物であり、より好ましくは式(I):
【0017】
【化1】

(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、及びビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物とビスフェノールAのエチレンオキシド付加物との組合せが好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物がより好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む場合、その量は、アルコール成分中、好ましくは70mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0018】
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが好ましい。
第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは3以上4以下である。
第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールが挙げられる。
アルコール成分として、第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを使用する場合、その量は、アルコール成分中、好ましくは70mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0019】
その他の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0020】
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA[2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン]、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド(平均付加モル数2以上12以下)付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0021】
<カルボン酸成分>
カルボン酸成分としては、2価以上のカルボン酸化合物を含み、例えば、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
2価以上のカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下である。
2価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。
【0022】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、又はテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下である。
【0023】
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは16以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸、又は、これらの無水物若しくは炭素数1以上3以下のアルキルエステルが挙げられる。炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、フマル酸が好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物を含む場合、その量は、カルボン酸成分中、好ましくは10mol%以上、より好ましくは20mol%以上、更に好ましくは30mol%以上であり、そして、好ましくは90mol%以下、より好ましくは80mol%以下である。
【0024】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、好ましくは3価のカルボン酸であり、例えばトリメリット酸又はその無水物が挙げられる。これらの中でもトリメリット酸又はその無水物が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸化合物を含む場合、3価以上の多価カルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上、更に好ましくは5mol%以上であり、そして、好ましくは35mol%以下、より好ましくは25mol%以下、更に好ましくは20mol%以下である。
これらのカルボン酸化合物は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0025】
アルコール成分のヒドロキシ基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.0以下である。
【0026】
<変性シリコーン>
樹脂(A)に用いられる変性シリコーンは、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物を得る観点から、水酸基又はカルボキシ基と反応性を有する極性基を有する変性シリコーンであり、好ましくは水酸基又はカルボキシ基と反応性を有する極性基を側鎖に有する変性シリコーンであり、より好ましくはアミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、及びヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種の極性基を側鎖に有する変性シリコーンである。
【0027】
変性シリコーンの極性基価は、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物を得る観点から、10.0mgKOH/g以上であり、好ましくは10.5mgKOH/g以上、より好ましくは11.0mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは50.0mgKOH/g以下、より好ましくは40.0mgKOH/g以下、更に好ましくは30.0mgKOH/g以下である。
変性シリコーンの極性基価とは、1gの変性シリコーンが有する極性基を水酸化カリウムのmg数に換算した数値である。極性基価は、例えば、極性基がアミノ基であればJIS K2501:2003の方法、極性基がカルボキシ基又はヒドロキシ基であればJIS K0070:1992の方法により測定することができる。また、極性基がエポキシ基であれば、エポキシ基を有する変性シリコーンの溶液に塩酸を加え、クロロヒドリン化により消費された量を水酸化カリウムのmg数で換算して極性基価を求めることができる。
【0028】
変性シリコーンは、好ましくは、式(1)で表される繰り返し単位及び/又は式(3)で表される構造と、式(2)で表される繰り返し単位と、を有する。より好ましくは、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位を有数する変性シリコーン、及び式(2)で表される繰り返し単位を有し、両末端に式(3)で表される構造を有する変性シリコーンであり、更に好ましくは、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位を有する変性シリコーンである。
【0029】
【化2】

〔式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、R’はそれぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、aは1又は0であり、Xは、それぞれ独立に、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基であり、*は結合部位である。〕
【0030】
【化3】

〔式(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、*は結合部位である。〕
【0031】
*-SiR3-b(R''-X) (3)
〔式(3)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、R''はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、bは1以上3以下の整数であり、Xはそれぞれ独立にアミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基であり、*は式(2)で表される繰り返し単位との結合部位である。〕
【0032】
なお、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位は、ランダムであってもよく、ブロックであってもよく、特に限定されない。
【0033】
式(1)~式(3)中、Rの炭化水素基の炭素数は、6以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
Rの炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、フェニル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0034】
式(1)及び式(3)中、R’及びR''のアルキレン基の炭素数は、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下、更に好ましくは3以下であり、そして、好ましくは1以上である。
R’及びR''のアルキレン基としては、例えば、メタンジイル基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、n-プロパン-1,3-ジイル基、n-プロパン-1,2-ジイル基、2-メチルエタン-1,2-ジイル基、1,4-n-ブチル基、1,2-tert-ブチル基、1,5-ペンチル基が挙げられる。これらの中でも、メタンジイル基、エタン-1,2-ジイル基、n-プロパン-1,3-ジイル基、n-プロパン-1,2-ジイル基が好ましい。
【0035】
Xは、それぞれ独立に、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基であり、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキルオキシ基、カルボキシ基、カルボキシアルキルオキシ基、エポキシ基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、又は脂環式エポキシ基であることが好ましい。ヒドロキシアルキルオキシ基は複数のヒドロキシ基を有していてもよく、カルボキシアルキルオキシ基は複数のカルボキシ基を有していてもよい。なかでも、2価以上のカルボン酸化合物のカルボキシ基との反応性の観点、及びトナーの低温定着性を向上する観点から、Xはアミノ基であることが好ましい。
【0036】
変性シリコーンは、式(1)で表される繰り返し単位を40以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、そして1以上含む。
また、式(2)で表される繰り返し単位を500以下、好ましくは450以下、より好ましくは400以下含み、そして、好ましくは10以上、好ましくは30以上、より好ましくは50以上含む。
【0037】
変性シリコーンの官能基当量は、好ましくは300g/mol以上、より好ましくは500g/mol以上、更に好ましくは1,000g/mol以上、更に好ましくは2,000g/mol以上であり、そして、好ましくは10,000g/mol以下、より好ましくは8,000g/mol以下、更に好ましくは6,000g/mol以下である。
なお、官能基当量とは、官能基1モルあたりの変性シリコーンの質量を意味する。
【0038】
変性シリコーンの動粘度は、25℃において、好ましくは10mm/s以上、より好ましくは30mm/s以上、更に好ましくは50mm/s以上であり、そして、好ましくは4,000mm/s以下、より好ましくは3,000mm/s以下、更に好ましくは2,000mm/s以下である。
変性シリコーンの動粘度は、例えば、全自動微量動粘度計(ビスコテック株式会社製)を用いて測定することができる。
【0039】
上述の変性シリコーンとしては、例えば、アミノ基を側鎖に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば、「KF-864」、「KF-865」(信越化学工業株式会社製))、アミノ基を両末端に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば、「KF-8012」(信越化学工業株式会社製))、アミノ基を片末端に有する変性シリコーン;カルボキシ基を側鎖に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば、「X-22-3701E」(信越化学工業株式会社製)、「BY16-880」(東レ・ダウコーニング社製))、カルボキシ基を両末端に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば、「X-22-162C」(信越化学工業株式会社製))、カルボキシ基を片末端に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば、「X-22-3710」(信越化学工業株式会社製));エポキシ基を側鎖に有する変性シリコーン(市販品としては、「X-22-343」(信越化学工業株式会社製))、エポキシ基を両末端に有する変性シリコーン(市販品としては、「X-22-163B」、「X-22-169B」(信越化学工業株式会社製))、エポキシ基を片末端に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば、「X-22-173BX」(信越化学工業株式会社製));ヒドロキシ基を側鎖に有する変性シリコーン(市販品としては、「X-22-4039」(信越化学工業株式会社製))、ヒドロキシ基を両末端に有する変性シリコーン(市販品としては、「KF-6003」「KF-6002」(信越化学工業株式会社製))、ヒドロキシ基を片末端に有する変性シリコーン(市販品としては、「X-22-170BX」「X-22-170DX」(信越化学工業株式会社製))が挙げられる。
【0040】
変性シリコーンがアミノ基を含む基を有する変性シリコーンである場合、式(1)で表される繰り返し単位及び式(3)で表される構造において、*-(R’)-Xで表される基及び-(R''-X)で表される基としては、例えば、下記の置換基1a-1~1a-3が挙げられる。
【0041】
【化4】
【0042】
変性シリコーンがヒドロキシ基含む基を有する変性シリコーンである場合、式(1)で表される繰り返し単位及び式(3)で表される構造において、*-(R’)-Xで表される基及び-(R''-X)で表される基としては、例えば、下記の置換基1b-1~1b-3が挙げられる。これらの中でも、置換基1b-1又は置換基1b-2が好ましく、置換基1b-1がより好ましい。
【0043】
【化5】
【0044】
変性シリコーンがエポキシ基を含む基を有する変性シリコーンである場合、式(1)で表される繰り返し単位及び式(3)で表される構造において、X及びYがグリシジル基、グリシジルオキシ基、及び脂環式エポキシ基であることが好ましく、*-(R’)-Xで表される基及び-(R''-X)で表される基としては、例えば、下記の置換基1b-4~1b-6が挙げられる。これらの中でも、置換基1b-4が好ましい。
【0045】
【化6】
【0046】
変性シリコーンがカルボキシ基を含む基を有する変性シリコーンである場合、式(1)で表される繰り返し単位及び式(3)で表される構造において、X及びYが、カルボキシ基、又はカルボキシアルキルオキシ基であることが好ましく、*-(R’)-Xで表される基及び-(R''-X)で表される基としては、例えば、下記の置換基1b-7が挙げられる。
【0047】
【化7】
【0048】
(樹脂(A)の製造方法)
樹脂(A)は、例えば、アルコール成分、カルボン酸成分、及び変性シリコーンを重縮合させる方法により製造される。なお、アルコール成分、カルボン酸成分、及び変性シリコーンを一括で反応させてもよく、アルコール成分とカルボン酸成分とを反応させた後、変性シリコーンと反応させてもよく、特に限定されない。
当該反応においては、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のエステル化触媒をアルコール成分及びカルボン酸成分の合計量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分及びカルボン酸成分の合計量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて反応させてもよい。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じてアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。
なお、反応は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0049】
樹脂(A)における変性シリコーンの仕込み量は、樹脂(A)の原料中のアルコール成分及びカルボン酸成分から得られるポリエステルの理論出来高100質量部に対して、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物を得る観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更により好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは9質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下である。
樹脂(A)がアルコール成分と、カルボン酸成分と、変性シリコーンとの重縮合物である非晶性シリコーン変性ポリエステル樹脂の他に非晶性樹脂を含む場合、非晶性シリコーン変性ポリエステル樹脂と同じアルコール成分と、カルボン酸成分からなる非晶性ポリエステル樹脂は樹脂(A)とみなす。
【0050】
なお、変性シリコーンが、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有する場合、アルコール成分又はカルボン酸成分とも理解し得るが、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有する化合物が、シリコーン骨格を含む場合には、変性シリコーンとする。例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の合計量を算出する際には、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有する変性シリコーンは、これらの合計量に含めない。
【0051】
(樹脂(A)の物性)
樹脂(A)のアルコール成分とカルボン酸成分から算出されるFedors法による溶解度パラメータ(SP値)(SP)は、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物を得る観点から、11.0(cal/cm1/2以下である。そして、好ましくは9.8(cal/cm1/2以上、より好ましくは10.0(cal/cm1/2以上、更に好ましくは10.2(cal/cm1/2以上である。
【0052】
樹脂(A)の酸価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.5mgKOH/g以上、更に好ましくは1mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは17mgKOH/g以下である。
樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは20mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは90mgKOH/g以下、より好ましくは80mgKOH/g以下、更に好ましくは70mgKOH/g以下である。
【0053】
樹脂(A)の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは85℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは48℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。
【0054】
樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,200以上であり、そして、好ましくは20,000以下、より好ましくは10,000以下、更に好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは3,000以下である。
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上、更に好ましくは3,000以上であり、そして、好ましくは50,000以下、より好ましくは20,000以下、更に好ましくは15,000以下、更に好ましくは10,000以下である。
【0055】
樹脂(A)の溶解度パラメータ(SP)、酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度、数平均分子量、及び重量平均分子量は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた樹脂(A)の溶解度パラメータ(SP)、酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度、数平均分子量、及び重量平均分子量がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0056】
〔非晶性樹脂(B)〕
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、低温定着性及び画像耐熱性に優れる静電荷像現像用トナーを得る観点から、非晶性樹脂(B)(以下、「樹脂(B)」ともいう)を含有していてもよい。
【0057】
樹脂(B)は、特に限定されないが、非晶性樹脂(A)の軟化点より5℃以上高い軟化点を有する非晶性樹脂であり、非晶性ポリエステル系樹脂(B1)(以下、「樹脂(B1)」ともいう)であることが好ましい。
樹脂(A)と樹脂(B)との軟化点の差は、低温定着性及び画像耐熱性に優れる静電荷像現像用トナーを得る観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下である。
【0058】
樹脂(B1)は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合物を含む非晶性ポリエステル系樹脂である。
樹脂(B1)としては、例えば、ポリエステル樹脂、変性されたポリエステル樹脂が挙げられる。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂のウレタン変性物、ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物である非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0059】
<アルコール成分>
アルコール成分としては、樹脂(A)のアルコール成分として挙げたものと同様のアルコール成分が挙げられる。
【0060】
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、及びビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物とビスフェノールAのエチレンオキシド付加物との組合せが好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む場合、その量は、アルコール成分中、好ましくは70mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0061】
<カルボン酸成分>
カルボン酸成分としては、樹脂(A)のカルボン酸成分として挙げたものと同様のカルボン酸成分が挙げられる。
カルボン酸成分は、2価以上のカルボン酸化合物を含み、その含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下である。
【0062】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、又はテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは30mol%以上、より好ましくは40mol%以上、更に好ましくは50mol%以上であり、そして、100mol%以下である。
【0063】
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸、又はこれらの無水物が好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物を含む場合、その量は、カルボン酸成分中、好ましくは2mol%以上、より好ましくは3mol%以上、更に好ましくは5mol%以上であり、そして、好ましくは20mol%以下、より好ましくは15mol%以下、更に好ましくは10mol%以下である。
【0064】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸又はその無水物が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸化合物を含む場合、3価以上の多価カルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、更に好ましくは15mol%以上であり、そして、好ましくは40mol%以下、より好ましくは35mol%以下、更に好ましくは30mol%以下である。
【0065】
アルコール成分のヒドロキシ基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0066】
樹脂(B1)がポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントを有する複合樹脂である場合、付加重合セグメントは、例えば、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物である。複合樹脂については、特開2021-026129号公報が参照される。
【0067】
非晶性樹脂(B)が非晶性ポリエステル樹脂である場合、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合させる工程で製造してもよい。
【0068】
重縮合させる工程では、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のエステル化触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じてアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0069】
(樹脂(B)の物性)
樹脂(B)のアルコール成分とカルボン酸成分から算出されるFedors法による溶解度パラメータ(SP値)(SP)は、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物を得る観点から、好ましくは11.0(cal/cm1/2以下であり、そして、好ましくは9.8(cal/cm1/2以上、より好ましくは10.0(cal/cm1/2以上、更に好ましくは10.2(cal/cm1/2以上である。
【0070】
樹脂(B)の酸価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.5mgKOH/g以上、更に好ましくは1mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
樹脂(B)の水酸基価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは20mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは70mgKOH/g以下、より好ましくは60mgKOH/g以下、更に好ましくは50mgKOH/g以下である。
【0071】
樹脂(B)の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは145℃以下である。
樹脂(B)のガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0072】
樹脂(B)の溶解度パラメータ、酸価、水酸基価、軟化点、及びガラス転移温度は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、樹脂(B)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた溶解度パラメータ、酸価、水酸基価、軟化点、及びガラス転移温度の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0073】
本発明のトナー用結着樹脂組成物において、樹脂(B)を含有する場合、樹脂(A)に対する樹脂(B)の質量比(樹脂(B)/樹脂(A))は、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物を得る観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下、更に好ましくは50/50以下である。
【0074】
〔結晶性樹脂(C)〕
本発明のトナー用結着樹脂組成物が含む結晶性樹脂(C)(以下、単に「樹脂(C)」ともいう)としては、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である結晶性ポリエステル樹脂(C1)(以下、「樹脂(C1)」ともいう)が好ましい。結晶性樹脂(C)は、トナーの低温定着性を向上する観点から、酸基を有することが好ましい。
【0075】
<アルコール成分>
アルコール成分としては、脂肪族ジオールを含み、脂肪族ジオールとしては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールなどのα,ω-脂肪族ジオール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールなどのα,ω-脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオールが挙げられる。
これらの中でも、α,ω-脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールがより好ましく、1,12-ドデカンジオールが更に好ましい。
【0076】
脂肪族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは40mol%以上、より好ましくは45mol%以上、更に好ましくは50mol%以上であり、そして100mol%以下である。
【0077】
アルコール成分は、脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール、ステアリルアルコール等の長鎖の1価のアルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0078】
<カルボン酸成分>
カルボン酸成分として、脂肪族ジカルボン酸化合物を含有する。脂肪族ジカルボン酸化合物としては、直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、好ましくは4以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が好ましく挙げられる。これらの中でも、ドデカン二酸、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0079】
脂肪族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下である。
【0080】
カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸化合物とは異なる他のカルボン酸成分を含有していてもよい。他のカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物;3価以上の多価カルボン酸化合物、ステアリン酸等の長鎖の1価のカルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0081】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下である。
(樹脂(C)の物性)
【0082】
樹脂(C)のFedors法による溶解度パラメータ(SP値)(SP)は、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与えるトナー用結着樹脂組成物を得る観点から、9.6(cal/cm1/2以下である。そして、好ましくは8.9(cal/cm1/2以上、より好ましくは9.1(cal/cm1/2以上、更に好ましくは9.3(cal/cm1/2以上である。
【0083】
樹脂(C)の酸価は、トナーの低温定着性を向上する観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0084】
樹脂(C)の軟化点は、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
樹脂(C)の融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
【0085】
樹脂(C)の溶解度パラメータ(SP)、酸価、軟化点、及び融点は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂(C)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた樹脂(C)の溶解度パラメータ(SP)、酸価、軟化点、及び融点がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0086】
樹脂(A)に対する樹脂(C)の質量比(樹脂(C)/樹脂(A))は、好ましくは1/99以上、より好ましくは5/95以上、更に好ましくは10/90以上であり、そして、好ましくは50/50以下、より好ましくは30/70以下、更に好ましくは20/80以下である。
また樹脂(A)と樹脂(B)の質量の合計に対する樹脂(C)の質量比(樹脂(C)/樹脂(A)+樹脂(B))は、好ましくは1/99以上、より好ましくは3/97以上、更に好ましくは5/95以上であり、そして、好ましくは50/50以下、より好ましくは40/60以下、更に好ましくは30/70以下である。
【0087】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の一実施態様に係る静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)は結着樹脂を含有する静電荷像現像用トナーであって、結着樹脂が上述した本発明のトナー用結着樹脂組成物を含有する。
本発明によれば、低温定着性及び画像耐熱性に優れるトナーを与える静電荷像現像用トナーを提供することができる。
静電荷像現像用トナーは、少なくとも上記の結着樹脂を含有し、これに加え、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の他の成分を含有していてもよい。また、静電荷像現像用トナーは、トナー母粒子(以下、「トナー粒子」ともいう)と、該トナー母粒子に外添された外添剤とを含むことが好ましい。
【0088】
<着色剤>
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、その他のカラートナーのいずれであってもよい。
【0089】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
また、着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、トナー粒子に対して、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0090】
<離型剤>
離型剤としては、例えば、炭化水素ワックス、エステルワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミドワックスが挙げられる。
【0091】
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
なお、離型剤を2種以上組み合わせて使用する場合は、それぞれの離型剤の融点が、前述の範囲内であることが好ましい。
【0092】
離型剤の含有量は、結着樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0093】
<荷電制御剤>
荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤、負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」、「ボントロンN-79」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
【0094】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
使用する荷電制御剤は、トナーを使用する印刷機の特性及び着色剤の種類等に応じて、適宜選択すればよい。
【0095】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0096】
[トナーの製造方法]
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性等の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、樹脂(A)及び樹脂(C)、並びに必要に応じて樹脂(B)、着色剤、離型剤、及び荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸又は2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
トナーの製造方法は、好ましくは、樹脂(A)及び樹脂(C)、並びに必要に応じて樹脂(B)等を含有する混合物を80℃以上200℃以下の範囲内の温度で溶融混練する工程を含む。溶融混練温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
トナーの製造方法は、好ましくは、溶融混練により得られた混合物を、粉砕及び分級しトナー粒子を得る工程を含む。当該粉砕及び分級は、公知の方法により行うことができる。
【0097】
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、低温定着性及び画像耐熱性に優れる静電荷像現像用トナーを得る観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、耐ホットオフセット性の観点から、8μm以下であり、好ましくは7μm以下、より好ましくは6.8μm以下である。
【0098】
トナーは、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理されていることが好ましい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機材料微粒子、及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いる場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0099】
トナーは、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例0100】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
なお、「アルキレンオキシド(X)」等の標記において、かっこ内の数値Xは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を意味する。
【0101】
[測定方法]
〔樹脂の酸価及び水酸基価〕
樹脂の酸価及び水酸基価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶性樹脂の場合はアセトンとトルエンの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕に、結晶性樹脂の場合はクロロホルムに変更した。
【0102】
〔変性シリコーンのアミン価〕
変性シリコーンの全アミン価は、ASTM D2073の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみASTM D2073規定のエタノールから、トルエンに変更した。
【0103】
〔樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量〕
以下の方法により得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料を、テトラヒドロフラン(非晶性樹脂の場合)又はクロロホルム(結晶性樹脂の場合)に、25℃で溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC製)を用いて濾過して不溶解分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(非晶性樹脂)又はクロロホルム(結晶性樹脂)を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン「A-500」(5.0×10)、「A-1000」(1.01×10)、「A-2500」(2.63×10)、「A-5000」(5.97×10)、「F-1」(1.02×10)、「F-2」(1.81×10)、「F-4」(3.97×10)、「F-10」(9.64×10)、「F-20」(1.90×10)、「F-40」(4.27×10)、「F-80」(7.06×10)、「F-128」(1.09×10)(以上、東ソー株式会社製)を標準試料として作成したものを用いた。
測定装置:「HLC-8220CPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL」+「G3000HXL」(東ソー株式会社製)
【0104】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出しした。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0105】
〔非晶性樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0106】
〔結晶性樹脂の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで-10℃まで冷却し、1分間温度を保持した。次に試料を昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで-30℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピーク温度を融点とした。
【0107】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/分で昇温し、熱量を測定した。得られた吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
【0108】
〔トナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、次のとおり測定した。
・測定装置:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマン・コールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「コールターマルチサイザー(登録商標)IIIバージョン 3.51」(ベックマン・コールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製)
・分散液:「エマルゲン(登録商標)109P」〔ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance、グリフィン法)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:ビーカー内で、前記試料分散液を、前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、得られた粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
【0109】
[トナー評価]
〔最低定着温度〕
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印刷面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm)。その後、総定着圧が30kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を100℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着状態の印刷物の定着試験を行った。得られた印刷物の画像部分にセロハン粘着テープ「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆株式会社製、幅:18mm、JIS Z 1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。なお、印刷に用いた紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m)を使用した。
テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。
【0110】
〔画像耐熱性〕
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印刷面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm)。その後、総定着圧が30kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を140℃に設定し未定着状態の印刷物の定着を行った。なお、印刷に用いた紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m)を使用した。
該定着画像同士を重ね合わせて、100g/cmの加重下、60℃温度下、湿度50%の条件下にて、1日間放置し、1日後に引き剥がしたときのドキュメントオフセットの有無を目視で確認した。得られた結果を下記基準で評価した。
A:ドキュメントオフセットが確認できない。
B:定着画像の剥がれは確認できないが、剥がす際にわずかに張り付きが生じる。
C:剥がす際に張り付きが生じ、定着画像にわずかに剥がれが(白抜け等)が生じる。
D:剥がす際に張り付きが生じ、定着画像に白抜けがはっきりと確認できる。
E:紙同士が固着しており、引き剥がすと紙が破損する。
【0111】
[樹脂の製造]
製造例A1(樹脂A-1の製造)
表1-1に示すアルコール成分、カルボン酸成分、アミノ変性シリコーン、エステル化触媒、及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、常圧で4時間反応を行った。その後、235℃、8kPaにて所望の酸価と軟化点まで減圧反応を行い、シリコーン変性非晶性ポリエステル系樹脂A-1を得た。各種物性を表1-1に示す。
【0112】
製造例A2~A4、及びA6、並びに比較製造例A’2及びA’3(樹脂A-2~A-4、及びA-6、並びに樹脂A’-2及びA’-3の製造)
アルコール成分、カルボン酸成分、アミノ変性シリコーン、エステル化触媒、及びエステル化助触媒の種類及び仕込み量を、表1-1及び表1-2に記載のとおり変更した他は製造例A1と同様の条件で所望の酸価と軟化点まで反応を行い、シリコーン変性非晶性ポリエステル系樹脂A-2~A-4、及びA-6、並びに樹脂A’-2及びA’-3を得た。各種物性を表1-1及び表1-2に示す。
【0113】
製造例A5(樹脂A-5の製造)
表1-1に示すアルコール成分、テレフタル酸、アミノ変性シリコーン、エステル化触媒、及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、8kPaにて1時間減圧で反応を行った。その後、常圧で180℃まで冷却し、表1-1に示すフマル酸及びラジカル重合禁止剤を添加した後、210℃まで10℃/hの速度で段階的に昇温した。その後、210℃、16kPaにて所望の軟化点まで減圧反応を行い、シリコーン変性非晶性ポリエステル系樹脂A-5を得た。各種物性を表1-1に示す。
【0114】
比較製造例A’1(樹脂A’-1の製造)
表1-2に示すアルコール成分、カルボン酸成分、エステル化触媒、及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、製造例A1と同様の条件で所望の酸価と軟化点まで反応を行い、非晶性ポリエステル樹脂A’-1を得た。各種物性を表1-2に示す。
【0115】
表1-1及び表1-2中、使用したアミノ変性シリコーンは、以下の構成を有する。
・KF-864:変性シリコーン「KF-864」(モノアミノ基を側鎖に有する変性シリコーン、動粘度(25℃)=1,700mm/s、分子量=30,000、官能基当量=3,800g/mol、全アミン価14.7mgKOH/g、信越化学工業株式会社製)
・KF-865:変性シリコーンオイル「KF-865」(モノアミノ基を側鎖に有する変性シリコーン、動粘度(25℃)=110mm/s、分子量=5,000、官能基当量=5,000g/mol、全アミン価11.2mgKOH/g、信越化学工業株式会社製)
・KF-8012:変性シリコーンオイル「KF-8012」(両末端にアミノ基を有するシリコーン、動粘度(25℃)=90mm/s、分子量=4,400、官能基当量=2,200g/mol、全アミン価25.5mgKOH/g、信越化学工業株式会社製)
・KF-8008:変性シリコーンオイル「KF-8008」(両末端にアミノ基を有するシリコーン、動粘度(25℃)=450mm/s、分子量=11,400、官能基当量=5,700g/mol、全アミン価9.8mgKOH/g、信越化学工業株式会社製)
【0116】
【表1-1】

【表1-2】
【0117】
製造例B1(樹脂B-1の製造)
アルコール成分としてビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物2450g及びビスフェノールAのエチレンオキサイド(2.2)付加物2275g、カルボン酸成分としてテレフタル酸1322g及びドデセニル無水コハク酸188g、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)20.4g、及びエステル化助触媒として没食子酸1水和物2.04gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて撹拌しながらマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、常圧で2.5時間反応を行った後、8kPaにて1時間減圧で反応を行った。その後、常圧で190℃まで冷却し、トリメリット酸無水物554gを添加し、210℃まで10℃/hの速度で段階的に昇温した。その後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、非晶性ポリエステル樹脂B-1を得た。各種物性を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
製造例C1(樹脂C1-1の製造)
表3に示すアルコール成分、カルボン酸成分、エステル化触媒、及び重合禁止剤を、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃まで昇温し、5時間反応を行った後、200℃まで10℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂C1-1を得た。各種物性を表3に示す。
【0120】
製造例C2及び比較製造例C’1(樹脂C1-2及びC1’-1の製造)
アルコール成分、カルボン酸成分、エステル化触媒、及び重合禁止剤の種類及び仕込み量を、表3に記載のとおり変更した他は製造例C1と同様の条件で所望の軟化点まで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂C1-2及びC1’-1を得た。各種物性を表3に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
[トナーの製造]
実施例1
非晶性樹脂A-1を60質量部、非晶性樹脂B-1を30質量部、及び結晶性ポリエステル樹脂C1-1を10質量部、並びに着色剤「ECB―301」(大日精化工業株式会社製)5質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット株式会社製)1質量部、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、パラフィンワックス、融点:75℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーでよく撹拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。スクリューの回転速度は200r/min、スクリュー内の加熱設定温度は90℃であり、混練物の温度は140℃、混練物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を140℃から50℃まで1.5時間で冷却し、50℃で、冷却ローラーで圧延冷却した後、45℃で4時間静置後、ジェットミルで粉砕、分級し、体積中位粒径(D50)5.5μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に対し、外添剤「AEROSIL NAX 50」(日本アエロジル株式会社製、疎水性シリカ、疎水化処理剤:HMDS、個数平均粒子径:約30nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添処理を行い、トナーを得た。上記[トナー評価]に記載の方法で最低定着温度及び画像耐熱性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0123】
実施例2~8及び比較例1~5
結着樹脂を表4に記載のとおり変更した他は実施例1と同様にして、実施例2~8及び比較例1~5のトナーを得た。評価結果を表4に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
実施例及び比較例の結果から、本発明のトナー用結着樹脂組成物を含有する静電荷像現像用トナーは、低温定着性及び画像耐熱性に優れることが分かる。
一方、結晶性樹脂(C)として、SP値が9.6(cal/cm1/2よりも大きい樹脂C1’-1を含むトナー用結着樹脂組成物を用いた比較例1及び2のトナーは、画像耐熱性に劣っていた。
また、非晶性樹脂(A)に代えて変性シリコーン由来の部位を含まない樹脂A’-1を含むトナー用結着樹脂組成物を用いた比較例3のトナー、非晶性樹脂(A)として全アミン価が10.0mgKOH/g未満である変性シリコーン由来の部位を含む樹脂A’-2を含むトナー用結着樹脂組成物を用いた比較例4のトナー、及び非晶性樹脂(A)として、SP値が11.0(cal/cm1/2よりも大きい樹脂A’-3を含むトナー用結着樹脂組成物を用いた比較例5のトナーは、最低定着温度が高く、低温定着性に劣るものであった。これは、非晶性樹脂と結晶性樹脂との相溶性が不十分であったためと考えられる。
更に、実施例4及び5並びに比較例の結果から、SPとSPCとの差(ΔSP)の大きさに関わらず、トナー用結着樹脂組成物に含まれる非晶性樹脂(A)のSP値及び結晶性樹脂(C)のSP値が特定の範囲であることにより、低温定着性及び画像耐熱性に優れる静電荷像現像用トナーが得られることが分かる。