(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016142
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】消毒装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120249
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】591097964
【氏名又は名称】光村印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】柴田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】渡部 健
(72)【発明者】
【氏名】服部 義次
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058EE22
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK23
4C058KK50
(57)【要約】
【課題】不活性化等を要する対象の両面を、単一の光源で照射し、小型化に資する消毒装置を提供する。
【解決手段】消毒装置2は、被消毒物1を挟んだトレー部7を消毒室3で反転させるための反転機構17を有し、この反転機構17は、室内トレー部8の中心部11を支持した中心支持部22と、室内トレー部8の前端部12を支持した端部支持部23と、この端部支持部23と連結されて前後方向にスライドするスライドリンク部24と、中心支持部22と連結されて回転する一対の回転リンク部31とを有している。スライドリンク部24と端部支持部23とは、ギャップ部27のギャップ空間30を介して連結されたことで、スライドリンク部24と端部支持部23とは、タイミングがズレてスライドする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被消毒物を消毒するための消毒室を形成した筐体部と、
前記消毒室で下方に向けて紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記筐体部に形成されて前記被消毒物が挿入される挿入口部と、
前記挿入口部の奥側であって前記紫外線照射部の下方に配置されて前記被消毒物を支持するトレー部と、
前記トレー部を前記消毒室で反転させる反転機構と、を有し、
前記反転機構が、
前記トレー部のうち、前記挿入口部を通じて前記被消毒物が出し入れされる方向である前後方向における中心部を、前記前後方向と直交する方向である側方から支持した中心支持部と、
前記トレー部のうち、前記前後方向における片方の端部を、前記側方から支持した端部支持部と、
前記端部支持部に連結されて前記前後方向にスライドするスライドリンク部と、
前記中心支持部に連結されて回転する回転リンク部と、を有し、
スライドする前記スライドリンク部によって、前記回転リンク部が押し上げられると共に回転し、同時に、前記中心支持部と共に前記中心部が上下に往復し、かつ、前記端部支持部と共に前記端部が前記前後方向における下手側に移動することで、前記トレー部が反転して反転の前後で同じ位置に配置される、
ことを特徴する消毒装置。
【請求項2】
前記スライドリンク部が、
前記回転リンク部を押す押圧部と、
前記前後方向において隙間を介して前記端部支持部と連結されたギャップ部と、を有し、
前記スライドリンク部がスライドし始めると、前記隙間に起因して、前記押圧部で前記回転リンク部が押された後に、前記端部支持部が前記ギャップ部に押されて前記前後方向における下手側にスライドする、
ことを特徴する請求項1に記載された消毒装置。
【請求項3】
前記スライドリンク部がスライドし続けて前記トレー部の姿勢が垂直となるまでの間に、前記回転リンク部が前記スライドリンク部から離れると共に、前記端部支持部が前記ギャップ部に押されて前記前後方向における下手側にスライドする、
ことを特徴する請求項2に記載された消毒装置。
【請求項4】
前記回転リンク部が、
前記端部支持部の上方に配置された固定軸部と、
前記固定軸部から前記スライドリンク部に対して前記前後方向における下手側に伸びた被押圧部と、
前記中心支持部に連結された連結部と、を有する、
ことを特徴する請求項1から請求項3の何れか1項に記載された消毒装置。
【請求項5】
前記中心支持部に対して、前記前後方向の前後で対称となる一対の前記回転リンク部を有し、
前記端部支持部が前記前後方向に往復することで、前記トレー部が、反転した後に逆方向に反転して元の位置に戻る、
ことを特徴する請求項1から請求項4の何れか1項に記載された消毒装置。
【請求項6】
前記トレー部が、
前記消毒室内に備えられた紫外線透過性の室内トレー部と、
前記挿入口部を通って前記室内トレー部に対面して着脱される紫外線透過性の可動トレー部と、を有する、
ことを特徴する請求項1から請求項5の何れか1項に記載された消毒装置。
【請求項7】
前記紫外線照射部が、ピーク波長が222ナノメートルである光を放射するエキシマランプである、
ことを特徴する請求項1から請求項6の何れか1項に記載された消毒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に付着した菌やウイルス等を消毒するための消毒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウイルスや細菌(以下、「ウイルス等」と記す。)による感染を予防するために、様々な対策が施されている。ウイルス等は、様々な施設で、取り引きの対象となる書類等を媒体として拡散する場合があるため、書類等を消毒することで、ウイルスの不活性化や殺菌(以下、「不活性化等」と記す。)が施されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された紫外線照射装置(以下、「文献公知1発明」と記す。)は、箱の蓋に紫外線を放射する光源が取り付けられ、紫外線を反射するミラーが箱の内面に取り付けられている。箱内に収容された収容物は、光源からの紫外線と、ミラーで反射した紫外線とが照射されるため、収容物の全体に紫外線が照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、文献公知1発明では、収容物が載置された底面は、収容物によってミラーが遮蔽され、この底面では紫外線が反射しないため、収容物のうち、底面と対面した面は、不活性化等が妨げられる。したがって、例えば、収容物を反転させたり、姿勢を変えたりする必要があるし、そのために、紫外線の照射を中断して、収容物を出し入れする必要がある。
【0006】
仮に、収容物の上下両面に紫外線を照射しようとすれば、上方と下方とで二つの光源を要するため、装置が大型になるうえ、高額になる。例えば、施設の窓口等では、大型の装置を設置するスペースが無い場合もあるし、高額の装置を複数の窓口毎に設置する場合、費用が嵩む。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。本発明は、不活性化等を要する対象の両面を、単一の光源で照射し、小型化に資する消毒装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る消毒装置は、被消毒物を消毒するための消毒室を形成した筐体部と、前記消毒室で下方に向けて紫外線を照射する紫外線照射部と、前記筐体部に形成されて前記被消毒物が挿入される挿入口部と、前記挿入口部の奥側であって前記紫外線照射部の下方に配置されて前記被消毒物を支持するトレー部と、前記トレー部を前記消毒室で反転させる反転機構と、を有し、前記反転機構が、前記トレー部のうち、前記挿入口部を通じて前記被消毒物が出し入れされる方向である前後方向における中心部を、前記前後方向と直交する方向である側方から支持した中心支持部と、前記トレー部のうち、前記前後方向における片方の端部を、前記側方から支持した端部支持部と、前記端部支持部に連結されて前記前後方向にスライドするスライドリンク部と、前記中心支持部に連結されて回転する回転リンク部と、を有し、スライドする前記スライドリンク部によって、前記回転リンク部が押し上げられると共に回転し、同時に、前記中心支持部と共に前記中心部が上下に往復し、かつ、前記端部支持部と共に前記端部が前記前後方向における下手側に移動することで、前記トレー部が反転して反転の前後で同じ位置に配置される、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る消毒装置は、前記スライドリンク部が、前記回転リンク部を押す押圧部と、前記前後方向において隙間を介して前記端部支持部と連結されたギャップ部と、を有し、前記スライドリンク部がスライドし始めると、前記隙間に起因して、前記押圧部で前記回転リンク部が押された後に、前記端部支持部が前記ギャップ部に押されて前記前後方向における下手側にスライドすることが好ましい。
【0010】
本発明に係る消毒装置は、前記スライドリンク部がスライドし続けて前記トレー部の姿勢が垂直となるまでの間に、前記回転リンク部が前記スライドリンク部から離れると共に、前記端部支持部が前記ギャップ部に押されて前記前後方向における下手側にスライドすることが好ましい。
【0011】
本発明に係る消毒装置は、前記回転リンク部が、前記端部支持部の上方に配置された固定軸部と、前記固定軸部から前記スライドリンク部に対して前記前後方向における下手側に伸びた被押圧部と、前記中心支持部に連結された連結部と、を有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る消毒装置は、前記中心支持部に対して、前記前後方向の前後で対称となる一対の前記回転リンク部を有し、前記端部支持部が前記前後方向に往復することで、前記トレー部が、反転した後に逆方向に反転して元の位置に戻ることが好ましい。
【0013】
本発明に係る消毒装置は、前記トレー部が、前記消毒室内に備えられた紫外線透過性の室内トレー部と、前記挿入口部を通って前記室内トレー部に対面して着脱される紫外線透過性の可動トレー部と、を有することが好ましい。
【0014】
本発明に係る消毒装置は、前記紫外線照射部が、ピーク波長が222ナノメートルである光を放射するエキシマランプであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る消毒装置によれば、被消毒物を消毒するための消毒室を形成した筐体部と、消毒室で下方に向けて紫外線を照射する紫外線照射部と、筐体部に形成されて被消毒物が挿入される挿入口部と、挿入口部の奥側であって紫外線照射部の下方に配置されて被消毒物を支持するトレー部と、トレー部を消毒室で反転させる反転機構とを有し、反転機構が、トレー部のうち、挿入口部を通じて被消毒物が出し入れされる方向である前後方向における中心部を、前後方向と直交する方向である側方から支持した中心支持部と、トレー部のうち、前後方向における片方の端部を、側方から支持した端部支持部と、端部支持部に連結されて前後方向にスライドするスライドリンク部と、中心支持部に連結されて回転する回転リンク部とを有し、スライドするスライドリンク部によって、回転リンク部が押し上げられると共に回転し、同時に、中心支持部と共に中心部が上下に往復し、かつ、端部支持部と共に端部が前後方向における下手側に移動することで、トレー部が反転して反転の前後で同じ位置に配置される。すなわち、トレー部が反転するため、トレー部に支持された被消毒物の上面及び下面の何れもが、紫外線照射部に向けられる。したがって、被消毒物の両面を、単一の紫外線照射部で、同等の条件で照射することができる。被消毒物の面毎に紫外線照射部を要しないため、装置の小型化に資する。また、トレー部が反転する際、トレー部が回転する軸となる中心部が、上下に往復するため、トレー部の初期位置を低くしつつ、反転に必要な最低限の範囲でトレー部を回転させることができる。トレー部の初期位置が低ければ、挿入口部の位置も低くなることから、利用者は、被消毒物を挿入口部に出し入れし易いし、トレー部が回転する範囲が限られた狭い範囲であれば、装置の小型化に資する。
【0016】
本発明に係る消毒装置によれば、スライドリンク部が、回転リンク部を押す押圧部と、前後方向において隙間を介して端部支持部と連結されたギャップ部とを有し、スライドリンク部がスライドし始めると、隙間に起因して、押圧部で回転リンク部が押された後に、端部支持部がギャップ部に押されて前後方向における下手側にスライドする。ギャップ部により、スライドリンク部と端部支持部とは、相対的に別個にスライドするため、スライドリンク部がスライドするタイミングと、端部支持部がスライドするタイミングとを、ずらすことができる。スライドリンク部は、端部支持部から独立してスライドし始め、このことによって、回転リンク部がスライドリンク部に押し上げられ、トレー部の中心部が上方に移動する。次いで、スライドリンク部に付随して前後方向における下手側にスライドしたギャップ部に、端部支持部が追随し、このことによって、トレー部の端部が前後方向における下手側に移動する。すなわち、トレー部は、初めに、回転軸となる中心部が上方に移動し、次いで、端部が下手側に移動することで、円滑に反転する。
【0017】
本発明に係る消毒装置によれば、スライドリンク部がスライドし続けてトレー部の姿勢が垂直となるまでの間に、回転リンク部がスライドリンク部から離れると共に、端部支持部がギャップ部に押されて前後方向における下手側にスライドする。スライドリンク部が前後方向における下手側にスライドし続けると、回転リンク部も回転し続けるが、やがて、回転リンク部はスライドリンク部から離れ、スライドリンク部から回転リンク部に作用する外力が無くなる。一方で、端部支持部は、スライドリンク部に付随してスライドしているギャップ部に追随しているため、端部支持部がスライドすることによって、トレー部の端部は、前後方向における下手側に移動する。すなわち、トレー部は、端部が下手側に移動することで、中心部が上方に移動するため、反転し続けることができる。
【0018】
本発明に係る消毒装置によれば、回転リンク部が、端部支持部の上方に配置された固定軸部と、固定軸部からスライドリンク部に対して前後方向における下手側に伸びた被押圧部と、中心支持部に連結された連結部とを有している。この構成により、回転リンク部は、被押圧部が、スライドリンク部に押されることで、固定軸部で回転し、中心支持部を上下に往復させることができる。
【0019】
本発明に係る消毒装置によれば、中心支持部に対して、前後方向の前後で対称となる一対の回転リンク部を有し、端部支持部が前後方向に往復することで、トレー部が、反転した後に逆方向に反転して元の位置に戻る。すなわち、トレー部が反転を繰り返すことで、トレー部に支持された被消毒物の上面及び下面の何れもが、紫外線照射部に向けられるうえ、トレー部が元の位置に戻るため、被消毒物も、挿入口部から挿入されたときの元の姿勢に戻る。したがって、被消毒物を、挿入されたときと同じ姿勢で、挿入口部から消毒室の外側に排出することができる。
【0020】
本発明に係る消毒装置によれば、トレー部が、消毒室内に備えられた紫外線透過性の室内トレー部と、挿入口部を通って室内トレー部に対面して着脱される紫外線透過性の可動トレー部とを有している。被消毒物が、室内トレー部と可動トレー部との間に支持されるため、トレー部が反転しても、被消毒物が落下しない。また、各トレー部が紫外線透過性を有しているため、紫外線が、各トレー部を透過して被消毒物の両面に万遍なく照射される。
【0021】
本発明に係る消毒装置によれば、紫外線照射部が、ピーク波長が222ナノメートルである光を放射するエキシマランプである。したがって、紫外線は、人体に無害であり、かつ、効果的に不活性化等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る消毒装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る消毒装置における反転機構の概略であって、トレー部の動作のうち、初期状態が示された初期状態概略説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る消毒装置における反転機構を上方から視した概略であって、トレー部の動作のうち、初期状態が示された初期状態概略上面説明図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV断面の拡大であって、本発明の実施形態に係る消毒装置における反転機構の初期状態部分拡大概略説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る消毒装置における反転機構の概略であって、トレー部の動作のうち、反転動作の第一過程が示された第一過程概略説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る消毒装置における反転機構の概略であって、トレー部の動作のうち、反転動作の第二過程が示された第二過程概略説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る消毒装置における反転機構の概略であって、トレー部の動作のうち、反転動作の第三過程が示された第三過程概略説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る消毒装置における反転機構の概略であって、トレー部の動作のうち、反転動作の第四過程が示された第四過程概略説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る消毒装置における反転機構の概略であって、トレー部の動作のうち、反転動作の第五過程が示された反転状態程概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る消毒装置2を図面に基づいて説明する。
図1は、消毒装置2の外観が示されている。消毒装置2は、例えば、官公署、公共施設、民間施設等で取り引きされる書類やカード類等の比較的薄いものを被消毒物1として、不活性化等の処理を施すものである。なお、以下では、
図1に示されているとおり、消毒装置2の高さ方向を上方又は下方(Up、Down)とし、消毒装置2の奥行方向であって、被消毒物1が出し入れされる方向を前方又は後方(Front、Back)とし、前後方向と直交する方向であって消毒装置2の幅方向を左側方又は右側方(Left、Right)とする。
【0024】
図1に示されているとおり、消毒装置2は、内側に被消毒物1を消毒するための消毒室3が形成された箱型の筐体部4と、消毒室3で被消毒物1に紫外線を照射する紫外線照射部5と、被消毒物1が挿入される挿入口部6と、被消毒物1が置かれるトレー部7と、このトレー部7を消毒室3で反転させるための反転機構17(
図2等参照。)と、この反転機構17を操作するための反転操作部13と、消毒装置2の電源の入り切りを選択する電源スイッチ14と、消毒装置2の稼働状態を表す表示部15とを有している。筐体部4は、六面体であり、消毒室3は、少なくともA4用紙が反転できる程度の広さである。
【0025】
紫外線照射部5は、筐体部4の上面部においてほぼ中央に取り付けられ、消毒室3で下方に向けて紫外線を照射する。紫外線照射部5は、例えば、エキシマーレーザーを用いたランプであり、具体的には、ピーク波長が222ナノメートルである光を放射する誘電体バリア放電エキシマランプである。なお、紫外線の波長は、200ないし230ナノメートル程度でもよく、人体に無害であれば、その他の波長であってもよい。
【0026】
挿入口部6は、筐体部4の正面部において、底面部に近い下部に形成され、左右方向に長い。電源スイッチ14及び表示部15は、筐体部4の正面部において、右側に配置されている。表示部15は、例えば、紫外線照射中ランプ、反転中ランプ、電源ランプ等である。
【0027】
トレー部7は、消毒室3内に取り付けられた板状の室内トレー部8と、この室内トレー部8に着脱される板状の可動トレー部9とを有している。室内トレー部8は、挿入口部6の前方において、紫外線照射部5の下方に配置され、反転機構17によって回転可能に支持されている。室内トレー部8の下面であって、前端部及び左右側端部には、可動トレー部9を支持するためのガイド部(図示省略。)が形成されている。可動トレー部9は、後端部に、利用者が把持するための取っ手部10が形成されている。可動トレー部9は、被消毒物1が載せられた状態で、挿入口部6に挿入され、ガイド部に支持されることで、室内トレー部8の下面に対面して、室内トレー部8に取り付けられる。室内トレー部8と可動トレー部9との間は、例えば、0.1から30.0ミリメートルであり、各トレー部8,9間に、被消毒物1が支持される。各トレー部8,9は、例えば、メッシュ状のアルミ製等である。なお、各トレー部8,9の間隔は、任意であるが、被消毒物1の厚みや、ヨレ具合に応じて調節することも可能である。被消毒物1の厚みが薄い、又は、枚数が少ない場合、被消毒物1を適切に挟む観点から、各トレー部8,9間は、例えば、0.1から10.0ミリメートル程度としてもよい。
【0028】
反転機構17は、筐体部4において、右側面部の内側及び左側面部の内側に配置されている。右側面部の下部には、操作用スリット16が形成され、反転操作部13は、操作用スリット16を介して、筐体部4の内側において反転機構17の一部に取り付けられている。
【0029】
ここで、反転機構17を図面に基づいて説明する。
図2は、消毒装置2を右側方から視し、かつ、筐体部4を省略したときの反転機構17の概略が示され、
図3は、消毒装置2を上方から視し、かつ、筐体部4を省略したときの反転機構17の概略が示されている。同図は、反転機構17が稼働する前であって、室内トレー部8(トレー部7)の姿勢がほぼ水平である初期状態が示されている。
図4は、
図2の一部を拡大した断面が示されている。なお、左右の反転機構部17は、対称であって同様の構成であるため、以下では、右側の反転機構部17を説明し、左側の反転機構部17の説明を省略する。
【0030】
図2及び
図3に示されているとおり、反転機構17は、板状の基板部18に取り付けられている。基板部18は、前後方向の中央に形成された上下方向に長手の上下スリット19と、この上下スリット19の下部に形成された前後方向に長手の前後スリット20とを有し、基板部18の右側(
図2等において紙面表側)に反転機構17が配置され、基板部18の左側(
図2等において紙面裏側)に、室内トレー部8が配置されている。反転機構17は、室内トレー部8のうち、前後方向の中心部11を、上下スリット19を介して右側から支持した中心支持部22と、室内トレー部8のうち、前後方向における前端部12
を、前後スリット20を介して右側から支持した端部支持部23と、この端部支持部23と連結されて前後方向にスライドするスライドリンク部24と、中心支持部22と連結されて回転する一対の回転リンク部31とを有している。中心支持部22が、上下スリット19に沿って上下にスライドすることで、室内トレー部8の中心部11が上下に移動し、一方で、端部支持部23が、前後スリット20に沿って前後にスライドすることで、室内トレー部8の前端部が前後に移動する。
【0031】
中心支持部22は、上下方向に長手であって、上下スリット19に取り付けられている。中心支持部22の下端部の左側は、室内トレー部8の中心部11と連結され、中心支持部22の上端部の右側は、回転リンク部31と連結されている。中心支持部22は、上下スリット19に沿って上下に自在にスライドする。端部支持部23は、前後スリット20に取り付けられている。端部支持部23の左側は、室内トレー部8の前端部12と連結され、端部支持部23の右側は、隙間を空けてスライドリンク部24と連結されている。
【0032】
スライドリンク部24は、基板部18の右面に固定されて前後に伸びた上下一対のレール部21に沿って前後にスライドする。レール部21は、前後スリット20と対峙している。スライドリンク部24は、レール部21に取り付けられたスライド本体部25と、このスライド本体部25の上部の左側に連結された押圧部26と、スライド本体部25の下部の左側であって、押圧部26の下方に固定されたギャップ部27とを有している。スライド本体部25は、上下に長手の直方体であって、右側には、反転操作部13が取り付けられている。押圧部26は、ローラーであって、スライド本体部25に対して自在に回転する。
【0033】
図4に示されているとおり、ギャップ部27は、前後に長手の板状のギャップ本体片28と、このギャップ本体片28の前後両端から左方に突出した一対のギャップガイド片29とを有している。ギャップガイド片29同士の間には、ギャップ空間30が形成され、ギャップ空間30には、端部支持部23が配置されている。端部支持部23は、ギャップ空間30において前後に隙間を介して、ギャップ部27と連結されているため、端部支持部23は、ギャップ空間30の間でスライドし、ギャップ部27によって、端部支持部23とスライドリンク部24とは、タイミングがズレてスライドする。
【0034】
図2及び
図3に示されているとおり、一対の回転リンク部31は、中心支持部22に対して、前後方向において対称であり、かつ、端部支持部23の上方に配置されている。両回転リンク部31は、同様の構成であり、動作も同じであるため、以下では、前方の回転リンク部31について説明し、後方の回転リンク部31の説明を省略する。
【0035】
回転リンク部31は、ほぼ三角形の板状に形成された回転本体部32と、この回転本体部32に固定されて中心支持部22に連結された連結部33とを有している。回転本体部32は、端部支持部23の上方であって、基板部18の右面の前側に連結された固定軸部35と、この固定軸部35からスライドリンク部24の後方に向かって伸びた被押圧部36とを有している。連結部33は、長孔34が形成され、この長孔34を介して中心支持部22と連結されている。被押圧部36は、スライドリンク部24の後方に向かうにしたがって下方に傾斜し、スライドリンク部24の押圧部26の後方に至っている。
【0036】
次に、反転機構17の動作を、図面に基づいて説明する。
図5ないし
図9は、反転機構17が稼働して、トレー部7が反転している最中の各状態が示されている。
図2ないし
図9に示されているとおり、消毒装置2は、初期状態から反転状態までを経ることによって、トレー部7が反転し、反転機構17は、反転の前後で同じ位置に配置される。反転機構17は、初期状態から第二過程状態に渡って、二つの動作を実現する。第一の動作は、回転リンク部31が、室内トレー部8の回転軸となる中心部11を、上方に移動させる動作(以下、「回転軸上昇動作」と記す。)であり、第二の動作は、スライドリンク部24が、室内トレー部8の前端部を後方に移動させる動作(以下、「前端部スライド動作」と記す。)である。
【0037】
図2に示されているとおり、初期状態では、スライドリンク部24は、レール部21において、前端側に配置されている。回転リンク部31は、スライドリンク部24の上に乗っている。具体的には、回転リンク部31の被押圧部36が、スライドリンク部24の押圧部26に当たっている。回転リンク部31の連結部33は、ほぼ水平に配置されている。室内トレー部8の姿勢も、ほぼ水平である。初期状態では、
図4に示されているとおり、端部支持部23は、スライドリンク部24のギャップ部27のギャップ空間30において、後方に配置されている。初期状態において、スライドリンク部24が後方にスライドすると、第一過程状態となる。
【0038】
第一過程状態では、回転軸上昇動作が発動する。
図5に示されているとおり、第一過程状態では、スライドリンク部24が後方にスライドし始め、このスライドリンク部24によって、回転リンク部31が、押し上げられると共に回転している。具体的には、スライドリンク部24がスライドすることで、スライドリンク部24の押圧部26が、回転リンク部31の被押圧部36に接触して被押圧部36を押し続けると、回転リンク部31は、スライドリンク部24がスライドすることに追随して、徐々に押し上げられ、固定軸部35を回転軸として(
図5において右回りに)回転する。回転リンク部31が回転することに伴い、連結部33の角度は、初期状態(
図2参照。)をゼロ度とすれば、鋭角に変化する。同時に、回転リンク部31が回転することに追随して、連結部33に連結されている中心支持部22は、上方にスライドする。中心支持部22が上昇することに伴い、室内トレー部8の中心部11が上方に移動する。したがって、室内トレー部8は、中心部11が前端部12よりも上方に変位した斜めの姿勢となる。
【0039】
このとき、室内トレー部8の中心部11が上昇するのと同時に、室内トレー部8の前端部12は、前後スリット20に沿って僅かに後方に移動し、このことに伴い、端部支持部23も、後方にスライドするが、端部支持部23は、ギャップ部27のギャップ空間30の範囲にあり、ギャップ部27がスライドリンク部24に付随して先行してスライドしているため、端部支持部23はギャップガイド片29と接触していない。したがって、第一過程状態において、端部支持部23は、ギャップ部27に押されてスライドするわけではない。第一過程状態において、スライドリンク部24が更に後方にスライドし続けると、第二過程状態となる。
【0040】
第二過程状態では、前端部スライド動作が発動する。
図6に示されているとおり、第二過程状態では、スライドリンク部24が後方にスライドし続け、回転リンク部31が更に押し上げられて回転し、同時に、中心支持部22が更に上昇する。したがって、室内トレー部8は、中心部11が前端部12よりも更に上方に変位して、第一過程状態よりも垂直に近い斜めの姿勢となる。
【0041】
このとき、第一過程状態と同様に、室内トレー部8の中心部11が上昇するのと同時に、室内トレー部8の前端部12は、前後スリット20に沿って徐々に後方に移動し、このことに伴い、端部支持部23も、後方にスライドする。ここで、スライドリンク部24の押圧部26が、回転リンク部31の被押圧部36の後端を超えることから、被押圧部36に接触していた押圧部26が、被押圧部36から離れ、回転リンク部31は、スライドリンク部24からの外力から解放される。ほぼ同時に、ギャップ部27における前端のギャップガイド片29が、端部支持部23に当たるため、端部支持部23は、ギャップ部27に押されてスライドし続ける。すなわち、第一過程状態における回転軸上昇動作の後に、前端部スライド動作が発動するため、室内トレー部8は、回転し続ける。
【0042】
以上のとおり、反転機構17は、回転軸上昇動作と前端部スライド動作との二つの動作を実現する。各動作は、ギャップ部27のギャップ空間30に起因して、時間的にズレて作動するため、回転軸上昇動作は、第二過程状態において終了し、第二過程状態では、回転軸上昇動作に替わって前端部スライド動作が発動する。すなわち、はじめに、回転軸上昇動作によって、スライドリンク部24がスライドし、スライドリンク部24の押圧部26で押されることで回転リンク部31が押し上げられて回転し、室内トレー部8の中心部11が上方に移動することで、第一過程状態を経る。次いで、前端部スライド動作によって、スライドリンク部24がスライドすることに追随してギャップ部27が端部支持部23を押し、端部支持部23がスライドすると共に室内トレー部8の前端部12が後方に移動することで、第二過程状態を経る。なお、各動作が切り替わるタイミングは、明確に区別できなくてもよい。したがって、各動作が時間的に重なる場合もある。
【0043】
第二過程状態において、スライドリンク部24が更に後方にスライドし続けると、第三過程状態となる。第三過程状態では、前端部スライド動作が継続する。
図7に示されているとおり、第三過程状態では、スライドリンク部24がスライドし続け、スライドリンク部24のギャップ部27によって端部支持部23が押され続け、端部支持部23がレール部21の中間あたりに配置される。したがって、室内トレー部8の前端部12は、室内トレー部8の中心部11の真下あたりに変位し、室内トレー部8は、中心部11と前端部12とが、上下方向に揃ってほぼ垂直の姿勢となる。このとき、中心部11が上方に移動することに伴って、中心支持部22が上昇し、このことに追随して、回転リンク部31の連結部33が押し上げられ、回転リンク部31も回転する。
【0044】
反転機構17は、第三過程状態から反転状態に渡って、第二の動作である前端部スライド動作に加えて、第三の動作と第四の動作とを実現する。第三の動作は、室内トレー部8の姿勢が自重で変化する動作(以下、「自重スライド動作」と記す。)であり、第四の動作は、回転リンク部31が、室内トレー部8の回転軸となる中心部11を、下方に移動させる動作(以下、「回転軸下降動作」と記す。)である。
【0045】
第三過程状態において、スライドリンク部24が更に後方にスライドし続けると、第四過程状態となる。第三過程状態から第四過程状態に渡って、前端部スライド動作に加えて、自重スライド動作が発動する。
図8に示されているとおり、第四過程状態では、スライドリンク部24が後方にスライドし続け、スライドリンク部24のギャップ部27によって端部支持部23が押され続け、端部支持部23が、中心支持部22よりも後方に配置される。したがって、室内トレー部8は、前端部12が中心部11よりも後方に変位した斜めの姿勢となる。
【0046】
ここで、室内トレー部8の前端部12に連結されている端部支持部23は、ギャップ部27のギャップ空間30の範囲にあり、スライド可能であるため、端部支持部23が前端のギャップガイド片29から離れて後端のギャップガイド片29に当たるまでの間、室内トレー部8は、自重により、中心部11が下方に移動すると共に前端部12が後方に移動する。すなわち、第三過程状態におけるスライド動作の最中に、自重スライド動作が発動するため、室内トレー部8は、回転し続ける。なお、自重スライド動作は、必須ではない。自重スライド動作が発動するか否かは、スライドリンク部24がスライドする速さに影響するため、スライドリンク部24がスライドする速さが、ギャップ空間30でスライドする端部支持部23の速さよりも速ければ、自重スライド動作は、発動しないか、発動しても一瞬である場合もある。また、ギャップ空間30や中心支持部22に、ダンパー等(図示省略。)の緩衝機構が備えられることで、自重スライド動作が発動しないようにすることも可能である。
【0047】
第四過程状態では、回転軸下降動作が発動する。
図8に示されているとおり、第四過程状態では、スライドリンク部24が後方にスライドし続け、回転リンク部31が、スライドリンク部24の上に乗る。具体的には、スライドリンク部24がスライドし続け、スライドリンク部24のギャップ部27に端部支持部23が追随する。このことに伴い、室内トレー部8の前端部12が後方に向けて移動すると共に、室内トレー部8の中心部11が下方に移動する。同時に、中心部11に連結されている中心支持部22は、下方にスライドする。中心支持部22が下降することに伴い、回転リンク部31が、固定軸部35を回転軸として(
図8において右回り)回転する。スライドリンク部24が、回転リンク部31の下方に配置されると、回転リンク部31の被押圧部36の前端が、スライドリンク部24の押圧部26の前方に接触する。ここで、被押圧部36が、押圧部26の上に乗ることから、回転リンク部31は、スライドリンク部24からの外力が作用し、回転リンク部31は、スライドリンク部24によって支持される。ほぼ同時に、ギャップ部27における前端のギャップガイド片29が、端部支持部23から離れる。したがって、第四過程状態において、端部支持部23は、ギャップ部27に追随してスライドするわけではない。回転リンク部31が、スライドリンク部24に追随することで徐々に回転し、連結部33に連結されている中心支持部22が、下方にスライドし、中心支持部22が下降することに伴い、室内トレー部8の中心部11が下方に向けて移動する。
【0048】
第四過程状態において、スライドリンク部24が更に後方にスライドし続けると、反転状態となる。
図9に示されているとおり、反転状態は、スライドリンク部24が、レール部21の後端側に配置され、各リンク部24,31の状態は、初期状態と同じである。反転状態では、室内トレー部8は、初期状態における室内トレー部8が反転した状態であり、ほぼ水平である。
【0049】
反転状態において、スライドリンク部24が、前方にスライドすると、上記と同じ過程を経て、初期状態となる。すなわち、各リンク部24,31が稼働することによって、端部支持部23が前後方向に往復し、中心支持部22が上下方向に往復し、このことに伴って、室内トレー部8は、反転し、その後、逆方向に反転して、元の姿勢に戻る。
【0050】
次に、消毒装置2の使用手順を説明する。
【0051】
図1において、可動トレー部9の上に、被消毒物1が置かれた状態で、可動トレー部9が、消毒装置2の挿入口部6に挿入される。可動トレー部9は、消毒室3の室内トレー部8に取り付けられる。可動トレー部9は、室内トレー部8の下面と対面した状態で室内トレー部8に支持され、被消毒物1が、各トレー部8,9に挟まれる。
【0052】
消毒室3で、紫外線照射部5を稼働させるためのセンサー(図示省略。)が作動する。センサーは、例えば、可動トレー部9が室内トレー部8に取り付けられたこと、トレー部7が水平であること、被消毒物1が置かれたことによる重量の変化、スライドリンク部24がレール部21において、前端側に配置されたこと等を感知して作動する。センサーからの信号を受信した制御部(図示省略。)が、紫外線照射部5に信号を送信し、紫外線照射部5が稼働する。紫外線照射部5は、トレー部7に向けて紫外線を照射する。トレー部7は、紫外線透過性を有しているため、紫外線は、トレー部7を透過して、被消毒物1の上面に照射される。照射時間は任意であり、予め設定した照射時間を経過した後に自動的に照射が停止するよう制御してもよいし、任意の時間が経過した後に手動で照射を停止してもよい。次いで、反転操作部13が操作され、トレー部7が反転する。再びセンサーが作動し、紫外線照射部5が稼働する。紫外線は、トレー部7を透過して、被消毒物1の下面に照射される。反転操作部13が操作されて再びトレー部7が逆向きに反転する。以上によって、被消毒物1の両面に、不活性化等の処理が施される。最後に、可動トレー部9が挿入口部6から引き出され、被消毒物1が取り出される。
【0053】
次に、本実施形態の効果を説明する。
【0054】
上記したとおり、本実施形態によれば、被消毒物1が挟まれたトレー部7を消毒室3で反転させるための反転機構17を有し、この反転機構17は、室内トレー部8の中心部11を支持した中心支持部22と、室内トレー部8の前端部12を支持した端部支持部23と、この端部支持部23と連結されて前後方向にスライドするスライドリンク部24と、中心支持部22と連結されて回転する一対の回転リンク部31とを有している。各リンク部24,31が稼働することによって、トレー部7が反転するため、トレー部7に挟まれた被消毒物1の上面及び下面の何れもが、紫外線照射部5に向けられる。したがって、被消毒物1の両面を、単一の紫外線照射部5で、同等の条件で照射することができる。被消毒物1の上下面毎に紫外線照射部5を要しないため、消毒装置2の小型化に資する。また、トレー部7が反転する際、トレー部7が回転する軸となる室内トレー部8の中心部11が、上下に往復するため、トレー部7の初期位置を低くしつつ、反転に必要な最低限の範囲でトレー部7を回転させることができる。トレー部7の初期位置が低ければ、挿入口部6の位置も低くなることから、利用者は、被消毒物1を挿入口部6に出し入れし易いし、トレー部7が回転する範囲が限られた狭い範囲であれば、消毒装置2の小型化に資する。
【0055】
本実施形態によれば、スライドリンク部24は、ギャップ部27を有し、このギャップ部27と端部支持部23とは、ギャップ空間30において前後に隙間を介して連結されている。ギャップ部27のギャップ空間30に起因して、スライドリンク部24と端部支持部23とは、相対的に別個にスライドするため、端部支持部23とスライドリンク部24とは、タイミングがズレてスライドする。すなわち、回転軸上昇動作は、第二過程状態において終了し、第二過程状態では、回転軸上昇動作に替わって前端部スライド動作が発動するため、トレー部7は、初めに、回転軸となる室内トレー部8の中心部11が上方に移動し、次いで、前端部12が前後に移動することで、円滑に反転する。また、第一過程状態における回転軸上昇動作の後に、前端部スライド動作が発動するため、トレー部7は、回転し続けることができる。
【0056】
本実施形態によれば、一対の回転リンク部31は、中心支持部22に対して、前後方向において対称であり、同じ動作をするため、スライドリンク部24が、前後方にスライドし、往復すると、トレー部7が反転を繰り返す。トレー部7が反転を繰り返すことで、トレー部7に支持された被消毒物1の上面及び下面の何れもが、紫外線照射部5に向けられるうえ、トレー部7が元の位置に戻るため、被消毒物1も、挿入口部6から挿入されたときの元の姿勢に戻る。したがって、被消毒物1を、挿入されたときと同じ姿勢で、挿入口部6から消毒室3の外側に排出することができる。
【0057】
本実施形態によれば、被消毒物1が、室内トレー部8と可動トレー部9との間に支持されるため、トレー部7が反転しても、被消毒物1が落下しない。また、各トレー部8,9がメッシュ状であるため、紫外線が、各トレー部8,9を透過して被消毒物1の両面に万遍なく照射される。
【0058】
本実施形態によれば、紫外線照射部5は、例えば、ピーク波長が222ナノメートルである光を放射する誘電体バリア放電エキシマランプである。したがって、紫外線は、人体に無害であり、かつ、効果的に不活性化等を実現することができる。
【0059】
本発明の他の実施形態では、各トレー部の紫外線透過性は、例えば、透明なガラスやプラスチック等によって実現される。
他の実施形態では、反転操作部を有しておらず、反転機構は、モーター等を通じて自動的に稼働する。この場合、筐体部にスリットは形成されておらず、反転機構は、筐体部の内部で、制御部によって制御される。1回の反転動作のサイクルは、任意であるが、例えば、30秒間等とすることができる。
他の実施形態では、可動トレー部が、室内トレー部の上面に対面して配置される。この場合、被消毒物は、可動トレー部の下面に、例えばクリップ等の挟持手段によって取り付けられる。
他の実施形態は、室内トレー部と可動トレー部とが一体である。この場合、トレー部は、一対のトレー部が隙間を空けて対面したものであり、被消毒物のみが挿入口部から挿入される。
他の実施形態は、ギャップ部を有しておらず、スライドリンク部と端部支持部とが一体である。この場合、スライドリンク部がスライドすれば、室内トレー部の中心部と前端部とが同時に移動する。すなわち、回転軸上昇動作と前端部スライド動作とが同時に発動する。
他の実施形態の初期状態では、スライドリンク部は、レール部において、後端側に配置されている。
他の実施形態では、被消毒物は、カード類、手帳類、ノート、雑誌、本、A5用紙、B5用紙、B4用紙、A3用紙、クリアファイル等が含まれ、消毒室は、これらが反転できる程度の広さである。
他の実施形態では、室内トレー部が、挿入口を通じて出し入れ可能であり、室内トレー部は、端部支持部及び中心支持部に着脱される。この場合、室内トレー部が引き出され、この室内トレー部に被消毒物が置かれ、可動トレー部で挟まれた後、室内トレー部と可動トレー部とが挿入口に挿入される。
他の実施形態では、反転機構部が、右側又は左側の何れかにのみ配置されている。
他の実施形態では、左右の反転機構部が、シャフトやギヤを介して連結されている。この場合、片方の反転操作部の操作によって、両反転機構部が連動する。
【0060】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 被消毒物
2 消毒装置
3 消毒室
4 筐体部
5 紫外線照射部
6 挿入口部
7 トレー部
8 室内トレー部
9 可動トレー部
10 取っ手部
11 中心部
12 前端部
13 反転操作部
14 電源スイッチ
15 表示部
16 操作用スリット
17 反転機構
18 基板部
19 上下スリット
20 前後スリット
21 レール部
22 中心支持部
23 端部支持部
24 スライドリンク部
25 スライド本体部
26 押圧部
27 ギャップ部
28 ギャップ本体片
29 ギャップガイド片
30 ギャップ空間(隙間)
31 回転リンク部
32 回転本体部
33 連結部
34 長孔
35 固定軸部
36 被押圧部