(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161433
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】媒体搬送構造および媒体取扱装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20231030BHJP
B65H 5/38 20060101ALI20231030BHJP
G07D 11/13 20190101ALI20231030BHJP
【FI】
B65H5/06 N
B65H5/38
G07D11/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071826
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直人
【テーマコード(参考)】
3E141
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141DA08
3E141FG04
3F049AA01
3F049AA04
3F049CA33
3F049DA12
3F049LA08
3F049LB04
3F101FC05
3F101FE08
3F101FE22
3F101LA08
3F101LB04
(57)【要約】
【課題】搬送路が二つのユニットで構成される場合における搬送不良を抑制できる、媒体搬送構造および媒体取扱装置を提供するものである。
【解決手段】装置内に設けられて媒体を搬送する媒体搬送構造100であって、前記媒体を搬送する搬送路Kの両側面を形成する一対の搬送ガイド11,21と、各々の搬送ガイド11,21と共に対向して配置され、回転することによって搬送路K内の前記媒体を搬送する一対の搬送ローラ12,22と、一方の第一搬送ローラ12に連結された弾性部材14と、を備え、一方の第一搬送ガイド11および他方の第二搬送ガイド21は、隣接して配置される二つのユニットにそれぞれ設置されており、第一搬送ローラ12は、弾性部材14の弾性力によって他方の第二搬送ローラ22に突き当てられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内に設けられて媒体を搬送する媒体搬送構造であって、
前記媒体を搬送する搬送路の両側面を形成する一対の搬送ガイドと、
各々の前記搬送ガイドと共に対向して配置され、回転することによって前記搬送路内の前記媒体を搬送する一対の搬送ローラと、
一方の第一搬送ローラに連結された弾性部材と、を備え、
一方の第一搬送ガイドおよび他方の第二搬送ガイドは、隣接して配置される二つのユニットにそれぞれ設置されており、
前記第一搬送ローラは、前記弾性部材の弾性力によって他方の第二搬送ローラに突き当てられている、
ことを特徴とする媒体搬送構造。
【請求項2】
一方の第一ユニットは、他方の第二ユニットとの境界面に平行な回動軸を中心にして回動可能であり、
前記第一ユニットが前記第二ユニットから離間する方向に回動することで、前記搬送路が開放される、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送構造。
【請求項3】
前記回動軸に直交すると共に前記境界面に平行な第一方向の移動を規制する第一方向移動規制構造を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送構造。
【請求項4】
前記回動軸に平行な第二方向の移動を規制する第二方向移動規制構造を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送構造。
【請求項5】
前記搬送路が開放された状態で、前記弾性部材による前記第一搬送ガイドの移動を規制するリミッタ構造を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送構造。
【請求項6】
前記第一搬送ローラおよびシャフトの組合せを二組備えており、
両方の組の前記シャフトが前記第一搬送ガイドに固定されることで、前記第一搬送ガイドと両方の組の前記第一搬送ローラとが一体となって移動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送構造。
【請求項7】
前記第一搬送ローラおよびシャフトの組合せを二組備えており、
一方の組の前記シャフトが前記第一搬送ガイドに固定され、他方の組の前記シャフトが前記第一搬送ガイドに固定されないことで、前記第一搬送ガイドと一方の組の前記第一搬送ローラとが一体となって移動し、他方の組の前記第一搬送ローラが前記第一搬送ガイドに追随せずに移動可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送構造。
【請求項8】
前記第一搬送ローラおよびシャフトの組合せを二組備えており、
両方の組の前記シャフトが前記第一搬送ガイドに固定されないことで、両方の組の前記第一搬送ローラが前記第一搬送ガイドに追随せずに移動可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送構造。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか一項に記載の媒体搬送構造を備えることを特徴とする媒体取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送構造および媒体取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣などの媒体を取り扱う媒体取扱装置が知られている(特許文献1参照)。媒体取扱装置としては、例えば、金融機関に設置されるものや小売店舗の精算所に設置されるものがある。小売店の精算所に設置される場合、例えば、レジスタ部や硬貨処理装置と組み合わされた装置(レジ釣銭機)とし構成される。
【0003】
媒体取扱装置は、媒体(例えば、紙幣)を搬送する媒体搬送構造を備える。
図15に示すように、媒体搬送構造は、例えば、対向する一対の搬送ガイド811,821(例えば、上側搬送ガイドおよび下側搬送ガイド)と、搬送ガイド811,821に取り付けられた搬送ローラとを備える。対向する搬送ガイドの間に形成される空間(「搬送路」と呼ぶ場合がある)を媒体が通過する。
図15(a)に示すように、ジャム除去が不要な部分は、全ての搬送ガイド811,821が固定されている。一方、
図15(b)に示すように、ジャム除去が必要な部分は、片側の搬送ガイド811がシャフト819を回動支点として回動するようになっている。シャフト819は、例えば搬送ガイドを固定するフレームに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送路が二つのユニットで構成される場合を想定する。ジャム除去を行うために、一方のユニットは他方のユニットに対して回動可能であるとする。この場合、搬送ガイドの位置決めを行うために経由する部品点数が増えるので、搬送ガイドの位置ずれが大きくなりやすいという問題がある。
【0006】
搬送ガイドの位置ずれが大きくなると、
図16に示すような不具合が発生する。例えば、
図16(a)に示すように、搬送路の幅(搬送ガイド811,821間の幅)が適切な幅よりも広がることで、搬送ローラ812,822への突入角度が悪化して搬送ローラ812に媒体Bが衝突し、搬送詰まりが発生する。また、
図16(b)に示すように、搬送路の幅が適切な幅よりも狭まることで、搬送方向に隣り合う搬送ガイドとの間に段差が発生してこの段差に媒体Bが衝突し、搬送詰まりが発生する。また、
図16(c)に示すように、搬送ローラ812にテンションを与えている場合、搬送路の幅が適切な幅よりも広がることで、搬送ローラ812のテンションにもばらつきが発生し、媒体Bの搬送に必要なローラテンションを出せなくなることが考えられる。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、搬送路が二つのユニットで構成される場合における搬送不良を抑制できる、媒体搬送構造および媒体取扱装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る媒体搬送構造は、装置内に設けられて媒体を搬送する媒体搬送構造であって、前記媒体を搬送する搬送路の両側面を形成する一対の搬送ガイドと、各々の前記搬送ガイドと共に対向して配置され、回転することによって前記搬送路内の前記媒体を搬送する一対の搬送ローラと、一方の第一搬送ローラに連結された弾性部材と、を備え、一方の第一搬送ガイドおよび他方の第二搬送ガイドは、隣接して配置される二つのユニットにそれぞれ設置されており、前記第一搬送ローラは、前記弾性部材の弾性力によって他方の第二搬送ローラに突き当てられている、ことを特徴とする。
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る媒体取扱装置は、上述した媒体搬送構造を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送路が二つのユニットで構成される場合における搬送不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る媒体搬送構造を備える媒体取扱装置の構成図である。
【
図2】媒体取扱装置(カバーを外した状態)の側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る媒体搬送構造の拡大図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る媒体搬送構造の構成図であり、
図1のIV-IVに対応する断面図である。
【
図5】入金ユニット側機構を後方から見た場合の斜視図である。
【
図6】入金ユニット側機構を前方から見た場合の斜視図である。
【
図8】入金ユニット側機構(取付用フレームを外した状態)の背面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る媒体搬送構造の概要を説明するための図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る媒体搬送構造の要部拡大図である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る媒体搬送構造の概要を説明するための図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る媒体搬送構造の要部拡大図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る媒体搬送構造を備える貨幣取扱装置の構成図である。
【
図15】従来の媒体搬送構造の概略図であり、(a)はジャム除去が不要な場合の構成であり、(b)はジャム除去が必要な場合の構成である。
【
図16】搬送ガイドの位置ずれが大きくなった場合の不具合を説明するための図であり、(a)は搬送路の幅が広がった場合の不具合であり、(b)は搬送路の幅が狭まった場合の不具合であり、(c)は搬送ローラのテンションにばらつきが発生した場合の不具合である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張等して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0013】
[第1実施形態]
<第1実施形態に係る媒体搬送構造の構成について>
第1実施形態に係る媒体搬送構造100(
図2および
図4参照)の構成および媒体搬送構造100を備える媒体取扱装置1(
図1参照)の概要を説明する。
媒体搬送構造100および媒体取扱装置1の説明における「上下」、「前後」、「左右」は、
図1の矢印に従う。当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。本実施形態では、媒体取扱装置1として紙幣処理装置を想定して説明する。
図1に示す媒体取扱装置1が取り扱う媒体は、主に紙幣である。
【0014】
図1に示すように、媒体取扱装置1は、入金ユニット2と、搬送ユニット3とを主に備える。入金ユニット2は、媒体である紙幣が投入されると共に紙幣を排出する入出金口2aを有し、主に入金および出金に関する処理を行う。搬送ユニット3は、入金ユニット2の後方に隣接して配置され、入金ユニット2との間で紙幣の受け渡しを行う。搬送ユニット3は、例えば紙幣の収納庫(図示せず)を有しており、入金された紙幣を収納庫まで搬送して収納する。入金ユニット2は、「第一ユニット」の一例であり、搬送ユニット3は、「第二ユニット」の一例である。
【0015】
図1に示すように、入金ユニット2および搬送ユニット3は、カバー4によって覆われている。また、
図1では省略するが、カバー4の内部にはフレーム5(
図2参照)が配置されており、フレーム5によって入金ユニット2および搬送ユニット3が媒体取扱装置1の内部に設置されている。カバー4は、例えば樹脂製であり、フレーム5は、例えば金属製である。
図2に示すように、フレーム5は、入金ユニット2側のフレーム5aと、搬送ユニット3側のフレーム5bと、入金ユニット2と搬送ユニット3を連結するフレーム5cなどを有する。
【0016】
図2に示すように、入金ユニット2は、前側下部に設けられた回動軸Pを中心にしてα1,α2方向に回動可能である。本実施形態での回動軸Pは、左右方向の線分に平行である(左右方向と一致している)。α1方向に回動することで入金ユニット2が搬送ユニット3から離間し、一方、α2方向に回動することで入金ユニット2が搬送ユニット3に接近する。
【0017】
媒体取扱装置1は、入金ユニット2を搬送ユニット3に対して位置合わせを行うための位置合わせ構造90を有する(
図2参照)。位置合わせ構造90は、入金ユニット2側の突出部91と、搬送ユニット3側の突出部92とで構成される。位置合わせ構造90は、媒体取扱装置1の左右両側に設けられている。突出部91は、左方向または右方向に突出した部分であり(
図3参照)、突出部92は、前方向に突出した部分である。入金ユニット2をα2方向に回動することで閉じた場合に、突出部92の上に突出部91が乗るようになっている。つまり、突出部92は、受け部の役割を担い、入金ユニット2の重さを支える。媒体取扱装置1は、入金ユニット2を閉じた状態で媒体を取り扱う処理を行うことが可能であり、例えばメンテナンス時に入金ユニット2が開かれる。
【0018】
図2に示すように、入金ユニット2と搬送ユニット3との境界を「境界面Q」と呼ぶ場合がある。境界面Qは、平面である必要はなく、凹凸があってもよい。本実施形態での境界面Qは、上下左右で構成される平面に平行である。回動軸Pは、境界面Qに対して平行である。
【0019】
図4に示すように、媒体取扱装置1は、内部に搬送路Kを有する。搬送路Kは、紙幣を搬送する空間であり、対向する一対の搬送ガイドの間に形成される。搬送路Kは、媒体取扱装置1が備える構成要素を結ぶようにして設けられており、分岐する場合もある。以下では、搬送路K内を媒体が移動する経路を「搬送ルートR」と呼ぶ。
図4では、入金処理における搬送ルートRを太線矢印で示している。媒体取扱装置1は、例えば、入金された紙幣を取り込む搬送ルートR1、搬送ルートR1に接続され紙幣を上方に搬送する搬送ルートR2、搬送ルートR2に接続され紙幣を後方に搬送する搬送ルートR3などを備える。
【0020】
本実施形態では搬送ルートR2に着目し、搬送ルートR2を実現する媒体搬送構造100について説明する。媒体搬送構造100は、媒体を搬送するための機構であり、入金ユニット2と搬送ユニット3との境界面Q(
図2参照)付近に設けられる。媒体搬送構造100は、境界面Qに沿って媒体を上下方向に搬送する。媒体搬送構造100は、分離可能であり、入金ユニット2を搬送ユニット3から離間するα1方向に回動することによって、搬送路Kが開放される。
【0021】
図4に示すように、媒体搬送構造100は、主に、入金ユニット2側に配置される入金ユニット側機構10と、搬送ユニット3側に配置される搬送ユニット側機構20とを備える。入金ユニット側機構10は、主に、第一搬送ガイド11と、上下方向に並べて配置される二組の第一搬送ローラ12と、弾性部材14とを備える。搬送ユニット側機構20は、主に、第二搬送ガイド21と、上下方向に並べて配置される二組の第二搬送ローラ22とを備える。
【0022】
図4に示すように、第一搬送ガイド11と第二搬送ガイド21とは対向して配置され、媒体である紙幣を搬送する搬送路Kの両側面を形成する。その為、第一搬送ガイド11と第二搬送ガイド21とをまとめて「一対の搬送ガイド」と呼ぶ場合がある。また、各組の第一搬送ローラ12と第二搬送ローラ22とは対向して配置され、媒体である紙幣を両側から挟持することが可能である。第一搬送ローラ12と第二搬送ローラ22は、挟持した状態で回転することによって搬送路K内の紙幣を搬送する。その為、第一搬送ローラ12と第二搬送ローラ22とをまとめて「一対の搬送ローラ」と呼ぶ場合がある。なお、本実施形態では、一対の搬送ローラ12,22を上下に合計で二組備える構成としているが、搬送ローラ12,22の組数は特に限定されず、一組や二組よりも多い複数組で構成されてもよい。
【0023】
搬送ユニット側機構20の第二搬送ガイド21は、搬送ユニット3側のフレーム5bに固定されている。各組の第二搬送ローラ22は、左右方向に配置されたシャフト23に固定されている。シャフト23の両端部近くには図示しないベアリングが軸支されており、ベアリングはフレーム5bに支持されている。シャフト23と第二搬送ローラ22は共に回転するようになっている。第二搬送ローラ22は、第一搬送ローラ12と対向する位置に配置されている(つまり、左右方向に並べて配置されている)。本実施形態での搬送ユニット側機構20が有する第二搬送ローラ22は、合計で4個である。
【0024】
この構成により、搬送ユニット側機構20の第二搬送ガイド21、第二搬送ローラ22およびシャフト23の位置は不動であり、例えば紙幣を搬送する場合に位置が変更されない。一方、本実施形態に係る入金ユニット側機構10の第一搬送ガイド11、第一搬送ローラ12およびシャフト13の位置は不動ではなく可動であり、これらの構成要素が一体となって移動可能な構成である。その為、例えば紙幣を搬送する場合に、許容される範囲内で位置が変更されるようになっている。
【0025】
図5ないし
図9を参照して(適宜、
図1ないし
図4を参照)、入金ユニット側機構10の構成を説明する。
図5に示すように、第一搬送ガイド11は、搬送面11a側に上下方向に沿った溝が左右方向に並べて形成されており、特定の溝に第一搬送ローラ12が収納されている。
図7に示すように、第一搬送ガイド11から第一搬送ローラ12の一部が後方に突出している。
図6に示すように、搬送面11aに対して裏面側(前面側)には、取付用フレーム15が設置される。取付用フレーム15は、第一搬送ガイド11を入金ユニット2側のフレーム5a(
図4参照)に取り付けるための部材である。第一搬送ガイド11は、取付用フレーム15に対して前後方向に移動可能である。
【0026】
図6に示すように、取付用フレーム15には、入金ユニット2側のフレーム5a(
図4参照)との固定に使用される孔15aが形成されている。また、取付用フレーム15には、第一搬送ガイド11を支持するための孔15bが三つ形成されている。第一搬送ガイド11の裏面側には、鉤形状(先の曲がった形状)を呈する突起部11bが三つ形成されており、突起部11bが孔15bに挿通することによって第一搬送ガイド11が取付用フレーム15から落下しない(離脱しない)ようになっている。なお、突起部11bは、搬送路Kが開放された状態で、弾性部材14による第一搬送ガイド11の移動を規制するリミッタの役割を担う(詳細は後記する)。その為、取付用フレーム15の孔15bおよび第一搬送ガイド11の突起部11bは、「リミッタ構造」の一例である。
【0027】
図8に示すように、各組の第一搬送ローラ12は、左右方向に配置されたシャフト13に軸支されている。軸としてのシャフト13は、第一搬送ガイド11に固定されており、第一搬送ローラ12と共に回転しないようになっている。各組の第一搬送ローラ12は、シャフト13の両端部近くに離した状態で配置されている(つまり、左右方向に並べて配置されている)。
図8に示すように、入金ユニット側機構10が有する第一搬送ローラ12は、合計で4個である。
【0028】
図7に示すように、弾性部材14は、第一搬送ガイド11と取付用フレーム15との間に設置される。
図8に示すように、本実施形態の弾性部材14は、ダブルトーションばねであり、ねじりコイルばねを2個結合した形状である(コイル部14aを二つ有する)。弾性部材14は、端部14b付近が下側のシャフト13に接触し、結合部14c付近が上側のシャフト13に接触している。弾性部材14は、コイル部14aに荷重を加えた状態(コイル部14aが曲げ応力を発生して回転した状態)で配置されており、シャフト13を後方(搬送ユニット3の方向)に押す力(弾性力)を発生している(つまり、搬送ユニット3の方向にテンションが掛かっている)。
【0029】
この構成により、
図4に示すように、入金ユニット2を閉じた状態では、搬送ユニット3側の第二搬送ローラ22に入金ユニット2側の第一搬送ローラ12が突き当たっている。つまり、シャフト13を介して第一搬送ローラ12に連結された弾性部材14の弾性力によって、第一搬送ローラ12が第二搬送ローラ22に突き当てられている。言い換えれば、第一搬送ローラ12が第二搬送ローラ22に当接した状態からさらに第二搬送ローラ22に押し付けられている。第一搬送ローラ12が第二搬送ローラ22に当接することで、第一搬送ガイド11から第二搬送ガイド21までの距離(つまり、搬送路Kの幅)が所定値(搬送に適した値)となっている。
【0030】
(抜け落ち防止構造「リミッタ構造」)
図2に示すように、入金ユニット2を開いた状態では、第一搬送ローラ12が突き当たる対象がないので、弾性部材14の力によって第一搬送ガイド11が入金ユニット2を閉じた状態よりもβ1方向に移動する。第一搬送ガイド11が所定量だけβ1方向に移動した所で、
図6に示す突起部11bが取付用フレーム15に引っ掛かり第一搬送ガイド11は係止した状態となる。つまり、入金ユニット2を開いた状態でも第一搬送ガイド11が取付用フレーム15から一定距離以上離れない構造になっている。なお、入金ユニット2を閉じた状態では、突起部11bと取付用フレーム15との間に隙間が形成される。つまり、リミッタ構造は、第一搬送ローラ12を第二搬送ローラ22に突き当てる場合の妨げにはなっていない。
【0031】
(上下方向の位置決め構造「第一方向移動規制構造」)
図8に示すように、第一搬送ガイド11の左右端部には、左右何れかの方向に突出する突出部11cが形成されている。また、
図3に示すように、入金ユニット2側のフレーム5aには、突出部11cの対応する位置に案内溝5aaが形成されている(
図3では略コの字状の部材)。案内溝5aaの前後方向の寸法は、突出部11cの前後方向の寸法よりも大きくなっており、突出部11cが案内溝5aaに挿入された状態で第一搬送ガイド11は前後方向に移動することができる。一方、案内溝5aaの上下方向の寸法は、突出部11cの上下方向の寸法と同じであり(または少しだけ大きくなっており)、突出部11cが案内溝5aaに挿入された状態で第一搬送ガイド11は上下方向に移動することができない。つまり、第一搬送ガイド11は、上下方向の移動を規制されている。上下方向は、
図2に示す回動軸Pに直交すると共に境界面Qに平行な方向(第一方向)の一例である。これにより、搬送ユニット3側の第二搬送ローラ22に入金ユニット2側の第一搬送ローラ12が、上下方向の位置がずれることなく突き当たっている。
【0032】
(左右方向の位置決め構造「第二方向移動規制構造」)
図9に示すように、第一搬送ガイド11の突出部11cが形成される内側部分には、左右何れかの方向に突出する凸部11dが形成されている。また、取付用フレーム15には、凸部11dに対応する位置に部材が存在している。凸部11dの形状やサイズは、第一搬送ガイド11と取付用フレーム15との隙間を埋めることが可能なものであればよく、数も限定されない。凸部11dによって第一搬送ガイド11と取付用フレーム15との隙間が埋められることで、第一搬送ガイド11は、左右方向に移動することができない(または移動量が極めて小さい)。つまり、第一搬送ガイド11は、左右方向の移動を規制されている。左右方向は、
図2に示す回動軸Pに平行な方向(第二方向)の一例である。これにより、搬送ユニット3側の第二搬送ローラ22に入金ユニット2側の第一搬送ローラ12が、左右方向の位置がずれることなく突き当たっている。
【0033】
以上のように、第1実施形態に係る媒体搬送構造100および当該媒体搬送構造100を備える媒体取扱装置1によれば、入金ユニット2を閉じた場合に、搬送ユニット3側の第二搬送ローラ22に入金ユニット2側の第一搬送ローラ12が突き当たることによって、第一搬送ローラ12に固定された第一搬送ガイド11の位置が決まるようになっている。つまり、第一搬送ガイド11の位置は、第一搬送ローラ12の位置に伴って決まるので、位置ずれが最小限のばらつきとなる。
【0034】
[第2実施形態]
第1実施形態では、軸であるシャフト13,23が搬送ガイド11,21に固定されていたので、搬送ローラ12,22の軸の傾きは搬送ガイド11,21の部品精度に依存している。つまり、搬送ガイド11,21とは別に搬送ローラ12,22の軸の傾きだけを調整することが難しい構造になっている。その為、搬送ユニット3側の第二搬送ローラ22の軸の傾きと、入金ユニット2側の第一搬送ローラ12の軸の傾きとが一致しない場合、第二搬送ローラ22と第一搬送ローラ12とが接地しない、または接地していても十分なローラテンションを出せない場合が発生してしまう。例えば、
図10(a)に示すように、左下の第二搬送ローラ22の軸が傾くことで、第二搬送ローラ22と第一搬送ローラ12とが接地しない状態が発生する(4点接地ではなく3点接地となっている)。このように、搬送ローラ12,22が接地する箇所としない箇所とが混在すると、搬送ローラ12,22のフィード力の差が発生してしまい、差が無視できないほど大きくなるとスキューなどの搬送不良が発生する。
【0035】
そこで、
図10(b)に示すように、第2実施形態に係る媒体搬送構造100Aでは、上下方向に並べて配置される二組の第一搬送ローラ12のどちらか一方(ここでは、下側の組の第一搬送ローラ12)のシャフト13(軸)を第一搬送ガイド11とは別に傾けることができる構造にする。具体的には、第一搬送ガイド11に形成され、第一搬送ローラ12のシャフト13が挿通する孔11eの形状を前後方向(第一搬送ローラ12を押し付る方向)に大きくする。孔11eの前後方向の寸法を大きくする方法は限定されず、長孔や溝形状などにすることができる。例えば、
図11に示すように、シャフト13の前後方向の寸法L1に対して、シャフト13が挿通する孔11eの前後方向の寸法L2を長くし(長孔にし)、シャフト13が前後方向に傾く構造にする。このとき、長孔である孔11eのガタ量は、想定する軸の傾きよりも大きく、かつ、可動する第一搬送ガイド11の前後の媒体受け渡しが発生する箇所で搬送不良が発生しない寸法とするのがよい。
【0036】
以上説明した第2実施形態に係る媒体搬送構造100Aによっても、第1実施形態と略同等の効果を奏することができる。
また、第2実施形態に係る媒体搬送構造100Aによれば、一方の軸が挿通する孔11eを長孔にすることで、軸が傾いていても搬送ローラ12,22の接地が可能になる。その為、搬送に必要なフィード力を発生させることができ、かつ、左右の搬送ローラ12,22のフィード力の差異を最小限にできるので、スキューなどの不具合が発生するのを抑制できる。
【0037】
[第3実施形態]
第1,2実施形態では、両方の組または片方の組のシャフト13が第一搬送ガイド12に固定されることで、第一搬送ガイド12と少なくとも何れか一方の組の第一搬送ローラ12とが一体となって移動する。その為、シャフト13が固定された組の第一搬送ローラ12を媒体が通過するたびに、第一搬送ガイド12が媒体の厚さ分だけ振動(移動)する。これにより、例えば
図12に示すように、二つ折れ媒体のように意図しない変形をした媒体Btが通過する場合、可動する搬送ガイド11の前後の媒体受け渡し部で想定を超えるずれが発生し、ずれが大きい場合には搬送面以外の部分に媒体Btが衝突して搬送不良が発生する。そこで、第3実施形態では、上下方向に並べて配置される二組の第一搬送ローラ12を第一搬送ガイド11とは別に前後方向に移動することができる構造にする。
【0038】
具体的には、
図13に示すように、第3実施形態に係る媒体搬送構造100Bは、入金ユニット2側の第一搬送ガイド11に突き当て部11fを設け、また、搬送ユニット3側の第二搬送ガイド21の対応する位置にも突き当て部21fを設ける。また、第一搬送ガイド11と取付用フレーム15との間に弾性部材16を設置する。ここでの弾性部材16は、例えば板バネであり、荷重を加えた状態で配置されている。弾性部材16は、第一搬送ガイド11を後方(搬送ユニット3の方向)に押す力を発生し(つまり、搬送ユニット3の方向にテンションが掛かっている)、搬送ユニット3側の突き当て部21fに入金ユニット2側の突き当て部11fを押し付けている。この場合のテンションは、媒体の搬送負荷で第一搬送ガイド11が動かない程度の強さとするのがよい。
【0039】
また、
図13に示すように、第一搬送ローラ12のシャフト13が挿通する部分がU字溝11gになっており、対向する第二搬送ローラ22の方向(前後方向)に移動可能となっている。第一搬送ローラ12は、弾性部材14によって後方(搬送ユニット3の方向)にテンションが掛けられている。第一搬送ガイド11の抜け落ち防止構造「リミッタ構造」は、第1実施形態と同じである。この構造により、媒体が通過した場合であっても第一搬送ガイド11と第二搬送ガイド21との距離は不変であり、第一搬送ローラ12のみが媒体の厚み分だけ前方に押し下げられる。
【0040】
以上説明した第3実施形態に係る媒体搬送構造100Bによっても、第2実施形態と略同等の効果を奏することができる。
具体的には、第一搬送ガイド11の位置は、第二搬送ガイド21の位置で決まるので、最小限のばらつきとなる。
また、第一搬送ローラ12の軸が押し付け方向(前後方向)に対し可動になっているので、第二搬送ローラ22に対して第一搬送ローラ12が浮いてしまうことを抑制できる。
さらに、第一搬送ガイド11と第一搬送ローラ12とを別の弾性部材(弾性部材14,16)で押すことで、第一搬送ローラ12の動きに第一搬送ガイド11が影響されないようになっている。その為、二つ折れ媒体のように意図しない変形をした媒体Btが通過した場合に、第一搬送ガイド11の前後の媒体受け渡し部でズレが発生しない。
【0041】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
各実施形態では、媒体搬送構造100,100A,100Bを備える装置として、
図1に示す紙幣処理装置を想定していた。しかしながら、各実施形態に係る媒体搬送構造100,100A,100Bを適用できる装置は、紙幣処理装置に限定されず、媒体を取り扱う種々の装置に用いることができる。例えば、各実施形態に係る媒体搬送構造100,100A,100Bを
図14に示す貨幣取扱装置1001に用いることができる。
図14に示す貨幣取扱装置1001は、紙幣を処理する紙幣処理部1002と、硬貨を処理する硬貨処理部1003とを備える。
【0042】
また、各実施形態に記載の各構成要素の一部を組合せ/省略しても良い。また、上述した各実施形態や、各変形例の構成及び/又は機能の全部又は一部を組み合わせても良い。また、各実施形態及び各変形例の構成及び/又は機能のうち少なくとも一部を省略してもよい。または各実施形態及び各変形例の構成及び/又は機能のうち少なくとも一部を、他の実施形態及び他の変形例の構成及び/又は機能と置き換えてもよい。または、各実施形態及び各変形例の構成及び/又は機能のうち少なくとも一部を、他の実施形態及び他の変形例のうち少なくとも一つに、新たな構成及び/又は機能として追加してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 媒体取扱装置
2 入金ユニット(第一ユニット)
3 搬送ユニット(第二ユニット)
4 カバー
5,5a,5b,5c フレーム
10 入金ユニット側機構
11 第一搬送ガイド
12 第一搬送ローラ
13 シャフト
14 弾性部材
15 取付用フレーム
20 搬送ユニット側機構
21 第二搬送ガイド
22 第二搬送ローラ
23 シャフト
100,100A,100B 媒体搬送構造