(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161499
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/18 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
B60R21/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071952
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA25
3D054CC04
3D054CC15
3D054CC34
(57)【要約】
【課題】側方からの衝撃力の作用後に二次衝突が発生しても、エアバッグを円滑に膨張させることが可能な乗員保護装置の提供。
【解決手段】シートに着座した乗員を保護する構成の乗員保護装置。乗員の腰部の周囲に巻き掛けられる保持ベルト部によって保持される構成のエアバッグ45と、インフレーター20と、を備える。インフレーターが、座部の後面下部側の領域に配設されるインフレーター本体21と、インフレーター本体から延びつつ屈曲されるようにして座部の側方の領域に配置される接続パイプ部25と、を備える。接続パイプ部が、インフレーター本体側となる元部側部位26と、元部側部位と交差するように配置される先端側部位27と、を備えるとともに、左右の側方からの座部側への外力の作用時に、先端側部位の座部側への接近を規制するように、先端側部位を、支持部材30によって支持されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護する構成とされて、
該乗員の前方を覆うように膨張可能な袋状とされるとともに、折り畳まれた状態で、前記乗員の腰部の周囲に巻き掛けられる保持ベルト部によって保持される構成のエアバッグと、
該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
を備える構成の乗員保護装置であって、
前記インフレーターが、
略円柱状として、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして前記シートにおける座部の後面下部側の領域に配設されるインフレーター本体と、
該インフレーター本体から延びつつ屈曲されるようにして、前記座部の側方の領域に配置されて、前記インフレーター本体と前記エアバッグとを接続する接続パイプ部と、
を備える構成とされ、
前記接続パイプ部が、前記インフレーター本体側となる元部側部位と、該元部側部位と交差するように配置されて前記エアバッグ側となる先端側部位と、を備える構成とされるとともに、左右の側方からの前記座部側への外力の作用時に、前記先端側部位の前記座部側への接近を規制するように、前記先端側部位を、支持部材によって支持される構成とされていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記支持部材が、屈曲部位を跨いで、前記元部側部位と前記先端側部位とを連結するように、配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記支持部材が、前記シートフレームにおける側面側から突出するように形成されて、前記先端側部位を支持可能に、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護する構成の乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、乗員の腰部の周囲において折り畳まれて収納されているエアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターを、乗員の着座しているシートの座部の後面下部側の領域に、配置させる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。詳細には、従来の乗員保護装置では、インフレーターは、略円柱状として、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして座部の後面下部側に配置されるインフレーター本体と、インフレーター本体から延びつつ屈曲されるように配置されて座部の側方においてエアバッグと接続される接続パイプ部と、を備える構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の乗員保護装置では、インフレーター本体から延びる接続パイプ部が、屈曲されて、座部の側方となる位置で、エアバッグに接続されている。そのため、例えば車両が側方から進入する等、左右の側方から大きな衝撃力が作用した際に、接続パイプ部が変形する場合があった。接続パイプ部が大きく変形すると、側方からの衝撃力の作用後に二次衝突が発生した場合に、エアバッグに膨張用ガスを円滑に供給できず、エアバッグを円滑に膨張させることができない場合があることから、このような変形の発生を抑制する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、側方からの衝撃力の作用後に二次衝突が発生しても、エアバッグを円滑に膨張させることが可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護する構成とされて、
乗員の前方を覆うように膨張可能な袋状とされるとともに、折り畳まれた状態で、乗員の腰部の周囲に巻き掛けられる保持ベルト部によって保持される構成のエアバッグと、
エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
を備える構成の乗員保護装置であって、
インフレーターが、
略円柱状として、軸方向を左右方向に略沿わせるようにしてシートにおける座部の後面下部側の領域に配設されるインフレーター本体と、
インフレーター本体から延びつつ屈曲されるようにして、座部の側方の領域に配置されて、インフレーター本体とエアバッグとを接続する接続パイプ部と、
を備える構成とされ、
接続パイプ部が、前記インフレーター本体側となる元部側部位と、元部側部位と交差するように配置されてエアバッグ側となる先端側部位と、を備える構成とされるとともに、左右の側方からの座部側への外力の作用時に、先端側部位の座部側への接近を規制するように、先端側部位を、支持部材によって支持される構成とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置では、インフレーターにおいて、インフレーター本体とエアバッグとを接続している接続パイプ部が、インフレーター本体から延びつつ屈曲されるようにして配置される構成であるものの、エアバッグ側となる先端側部位を、支持部材によって支持される構成である。そのため、車両が側方から進入する等、左右の側方から大きな衝撃力が作用することとなっても、接続パイプ部が、屈曲部位を起点として、先端側部位を座部側に接近させるように変形することを、抑制することができる。その結果、側方からの衝撃力の作用後において、二次衝突が発生した場合におけるインフレーター本体の作動時に、インフレーター本体から吐出される膨張用ガスを、接続パイプ部を経て、円滑に、エアバッグ内に流入させることができて、エアバッグを円滑に膨張させることができる。
【0008】
したがって、本発明の乗員保護装置では、側方からの衝撃力の作用後に二次衝突が発生しても、エアバッグを円滑に膨張させることができる。
【0009】
具体的には、支持部材としては、一例として、接続パイプ部において、屈曲部位を跨いで、元部側部位と先端側部位と、を連結するように、配置される構成のものを挙げることができ、また、支持部材を、シートフレームにおける側面側から突出させるように、配置させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。
【
図3】
図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
【
図4】
図1のシートにおける座部の下端側の領域を示す部分拡大背面図である。
【
図5】実施形態の乗員保護装置において、インフレーターの配置部位付近を示す部分拡大横断面図である。
【
図6】実施形態の乗員保護装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
【
図8】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
【
図9】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態の乗員保護装置において、インフレーターの配置部位付近を示す部分拡大横断面図である。
【
図11】
図10の乗員保護装置において、インフレーターの配置部位付近を示す部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の乗員保護装置Sは、
図1~3に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、エアバッグ45を保持する保持ベルト部を構成するシートベルト7と、エアバッグ45と、エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター20と、を備える構成とされている。
【0012】
シート1は、背もたれ部2と座部3とを備えて、シートフレーム4に支持されている。実施形態の場合、シート1を搭載させる車両は、詳細な図示は省略するが、右ハンドル車であり、シート1は、助手席である。すなわち、シート1は、右側を車両における車幅方向の中央側とし、左側を車両における車幅方向の外側として、車両に搭載されている。
【0013】
シートベルト7は、実施形態の場合、シート1に搭載されるもので、シート1に着座した乗員MPを保護するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル13と、を備える構成とされている。ベルト本体8は、背もたれ部2内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に一端を係止され、他端側を、シート1における座部3の後端3a左方に配置されるアンカ部材14(
図1,2参照)に係止されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部2の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員MPの非着座状態においては、
図1,2に示すように、エアバッグ45を保持させている保持ベルト部としてのラップベルト10を、背もたれ部2の前面に露出させるように、構成されている。詳細には、ラップベルト10は、乗員MPの非着座状態において、
図1に示すように、背もたれ部2の左縁2a側において、上下方向に略沿うようにして、背もたれ部2の前面に露出されている。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部2内に収納されるショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル13に連結させた状態で、アンカ部材14とバックル13との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部MW)を拘束し、背もたれ部2の上端左縁側から延びつつバックル13にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩MSから胸部MBにかけて)を拘束する構成とされている(
図3参照)。そして、実施形態の場合、乗員着座時に、シート1に着座した乗員MPの腰部MWの前方に配置されるラップベルト10と、後述するカバー70と、が、折り畳まれたエアバッグ45を収納させて保持する保持ベルト部を、構成している。シートベルト7において、背もたれ部2内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。
【0014】
エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター20は、
図4,5に示すように、インフレーター本体21と、インフレーター本体21から延びるように配置されてインフレーター本体21とエアバッグ45とを接続する接続パイプ部25と、を備えている。
【0015】
インフレーター本体21は、外形形状を略円柱状として、
図4に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして、シート1における座部3の後面下部側の領域に、配設される。インフレーター本体21は、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出部22を軸方向の一端側に配設させる構成とされており、実施形態の場合、ガス吐出部22側の端部を左側に向けるようにして、外周側に配置されるブラケット35を用いて、座部3の下部側に配置されるシートフレーム4の後面側(シートフレーム4の後側部位5)に、取り付けられる構成である。さらに具体的には、インフレーター本体21は、左端21a側に配置されるガス吐出部22を、シートフレーム4の左端の位置に略一致させるようにして、シートフレーム4の後面側(後側部位5)における左半分程度の領域に、配置されている(
図4,5参照)。インフレーター本体21における軸方向の他端側(右端21b側)には、図示しない作動回路から延びるリード線23aを結線させたコネクタ23が、接続されることとなる。インフレーター本体21をシートフレーム4の後側部位5に取り付けるためのブラケット35は、外形形状を略円環状としてインフレーター本体21を保持可能な保持環部35aと、保持環部35aから突出するボルト35bと、を備えている。保持環部35aは、詳細な図示を省略するが、縮径させるようにかしめられることにより、インフレーター本体21を保持する構成である。ブラケット35は、インフレーター本体21の軸方向に沿って離れた2箇所に配置されるもので、それぞれ、保持環部35aによってインフレーター本体21を保持させて、保持環部35aから突出しているボルト35bを、シートフレーム4の後側部位5に形成されている取付孔5aに挿通させてナット5b止めすることにより、インフレーター本体21をシートフレーム4(後側部位5)に取り付けている(
図5参照)。実施形態の場合、インフレーター本体21は、エアバッグ45の膨張に伴うシートベルト7のベルト本体8の引き出しを規制するために、作動開始を、シートベルト7のプリテンショナー機構よりも遅らせるように、設定されている。また、実施形態の場合、インフレーター本体21は、車両前方側に向けるようにシート1を配置させた状態で、前方側と側方側(左方側)とからの衝撃力の作用時に、作動するように、構成されている。
【0016】
インフレーター本体21とエアバッグ45とを接続する接続パイプ部25は、鋼等からなる金属パイプから形成されるもので、インフレーター本体21から延びつつ屈曲されるようにして、座部3の側方の領域に配置されている。実施形態の場合、接続パイプ部25は、インフレーター本体21の左端21a(ガス吐出部22)側から延びつつ屈曲されるようにして、座部3の左方(座部3における車両の車幅方向の外側)の領域に配置されている。接続パイプ部25は、外形形状を略L字形状とされるもので、インフレーター本体21側となる元部側部位26と、元部側部位26と交差するように配置されてエアバッグ45側となる先端側部位27と、元部側部位26と先端側部位27との間の屈曲部位28と、を備える構成とされている。元部側部位26は、車両搭載時に、インフレーター本体21に略沿うように左右方向に略沿って配置されるもので、先端側部位27は、元部側部位26に対して略直交して、車両搭載時に、屈曲部位28から前上方に延びるように、配置される。接続パイプ部25は、元部側部位26の元部端26aを、詳細な説明を省略するが、かしめによる接合によって、インフレーター本体21のガス吐出部22に接続されている。また、接続パイプ部25は、先端側部位27の先端27aを、クランプ38を利用して、エアバッグ45における後述する導管部55の先端55aと接続される構成とされている。
【0017】
接続パイプ部25には、屈曲部位28を間に挟むようにして、元部側部位26と先端側部位27とを連結するような連結部材30が、配設されている。連結部材30は、接続パイプ部25と同様に鋼等からなる板金素材から構成されるもので、実施形態の場合、先端側部位27の先端27a付近と、元部側部位26の元部端26a付近と、を連結するように、配設されている(
図4参照)。さらに詳細には、連結部材30は、先端側部位27と元部側部位26とにおいて相互に対向する対向面相互(右側面27bと前側面26bと)を連結するように、配設されている。この連結部材30は、左右の側方(実施形態の場合、左方であって車幅方向の外方)からの座部3側への外力Fの作用時(
図5参照)に、先端側部位27の座部3側への接近(右方への移動)を規制するもので、先端側部位27を支持する支持部材を、構成している。
【0018】
エアバッグ45は、シートベルト7のラップベルト10を保持ベルト部として、ラップベルト10に保持されつつ、長尺状に折り畳まれて、周囲をカバー70に覆われるもので、具体的には、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に重ねられるようにして、周囲をカバー70に覆われて、ラップベルト10の領域に配置されている(
図3参照)。換言すれば、エアバッグ45は、ラップベルト10とカバー70との間の隙間に、折り畳まれて収納される構成である。また、
図1に示すような非装着状態においては、エアバッグ45は、背もたれ部2の前面に露出しているラップベルト10の背面側(背もたれ部2側)に、配置されている。カバー70は、可撓性を有したシート体から構成されて、エアバッグ45の展開膨張時に所定箇所を破断されて、エアバッグ45における後述するバッグ本体46を突出可能に、構成されている。
【0019】
エアバッグ45は、
図6,7に示すように、乗員MPを保護可能に膨張するバッグ本体46と、インフレーター20と接続されてバッグ本体46に膨張用ガスを流入させる導管部55と、バッグ本体46をラップベルト10に保持させるための取付部57と、を備えている。
【0020】
バッグ本体46は、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱状として構成されるもので、左右の側方から見た状態での膨張完了形状を、前側に斜辺を有するような略直角三角形状とし、前後方向側から見た状態での膨張完了形状を、上下に幅広とした略長方形状とするように、構成されている(
図8,9参照)。バッグ本体46は、
図6,7に示すように、膨張完了時に乗員MP側(後側)に配置される後壁部48と、後壁部48と前後方向側で対向して配置される前壁部47と、膨張完了時の下端側に配置される下壁部49と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部50,右壁部51と、を有している。このバッグ本体46は、膨張完了時に、後壁部48によって乗員MPの上半身MUを受け止め、かつ、この後壁部48による上半身MUの受止時に、下壁部49を、乗員MPの大腿部MTと当接させて、大腿部MTに支持させることにより、乗員MPを保護する構成とされている(
図9参照)。このバッグ本体46は、下壁部49における後端49a側の下面側に、導管部55を配置させ、この導管部55を介して、インフレーター20(インフレーター本体21)からの膨張用ガスを内部に流入させる構成である。下壁部49における後端49a側の領域には、導管部55と連通される連通孔53が、円形に開口して、実施形態の場合、左右方向側で2個並設されている。そして、バッグ本体46は、この連通孔53の周縁の部位で、導管部55と連結されている。
【0021】
導管部55は、バッグ本体46から左方に延びるように構成されるもので、先端55a側を開口させた略筒形状として、接続パイプ部25と接続されている。導管部55は、エアバッグ45の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配置される構成である(
図8,9参照)。この導管部55は、先端55a側を、上述したごとく、クランプ38を用いて、接続パイプ部25における先端側部位27の先端27aに接続される構成である。バッグ本体46をラップベルト10に取り付ける取付部57は、
図6,7に示すように、導管部55の下面側に縫着されている。取付部57は、ラップベルト10を挿通可能に、両端側を開口させた略筒状とされている。そして、この取付部57にラップベルト10を挿通させることにより、エアバッグ45は、ラップベルト10に連結されて、ラップベルト10に保持される構成である。
【0022】
実施形態の乗員保護装置Sでは、車両に搭載されたシート1にシートベルト7を装着しつつ乗員MPが着座した状態で、インフレーター20が作動すれば、インフレーター本体21から吐出される膨張用ガスが、接続パイプ部25と導管部55とを経て、バッグ本体46内に流入することとなり、エアバッグ45におけるバッグ本体46が、カバー70を破断させるようにして、保持ベルト部としてのラップベルト10から前上方に突出しつつ、
図8,9に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0023】
そして、実施形態の乗員保護装置Sでは、インフレーター20において、インフレーター本体21とエアバッグ45とを接続している接続パイプ部25が、インフレーター本体21から延びつつ屈曲されるようにして配置される構成であるものの、エアバッグ45側となる先端側部位27を、支持部材としての連結部材30によって支持される構成である。そのため、車両が側方から進入する等、左右の側方(実施形態の場合、左方)から大きな衝撃力(外力)Fが作用することとなっても、接続パイプ部25が、屈曲部位28を起点として、先端側部位27を座部3側(具体的には、シートフレーム4に接近させるように変形することを、抑制することができる。その結果、側方(左方)からの衝撃力の作用後において、二次衝突が発生した場合におけるインフレーター本体21の作動時に、インフレーター本体21から吐出される膨張用ガスを、接続パイプ部25を経て、円滑に、エアバッグ45(バッグ本体46)内に流入させることができて、エアバッグ45(バッグ本体46)を円滑に膨張させることができる。特に、実施形態の乗員保護装置Sでは、接続パイプ部25は、座部3において、車両の車幅方向における外側となる位置に、配設される構成であることから、車両の進入等により、直接大きな衝撃力が作用することが考えられるが、上述したごとく、支持部材としての連結部材30によって支持されることから、車両の進入等による大きな衝撃力が直接作用することとなっても、変形を抑制できて、エアバッグ45に膨張用ガスを円滑に流入させることができる。
【0024】
したがって、実施形態の乗員保護装置Sでは、側方からの衝撃力の作用後に二次衝突が発生しても、エアバッグ45を円滑に膨張させることができる。
【0025】
具体的には、実施形態の乗員保護装置Sでは、接続パイプ部25において、元部側部位26と先端側部位27とを連結している連結部材30が、先端側部位27を支持する支持部材を構成している。そのため、支持部材を接続パイプ部と一体的に取り扱うことができて、取扱性が良好であり、好ましい。なお、実施形態では、連結部材30は、先端側部位27と元部側部位26とにおいて相互に対向する右側面27bと前側面26bとを連結するように、配設される構成であるが、連結部材の配置位置は、実施形態に限定されるものではない。例えば、連結部材は、先端側部位を座部側に接近させるような変形を抑制可能であれば、接続パイプ部の上面側と下面側とにおいて、それぞれ、先端側部位と元部側部位の上面相互、下面相互を、それぞれ、連結させるように、配設させる構成としてもよい。
【0026】
また、支持部材75としては、
図10,11に示すように、接続パイプ部25Aに設けず、シートフレーム4A側から突出させるような構成のものを、配設させてもよい。詳細には、支持部材75は、シートフレーム4Aの左側面(シートフレーム4Aにおける左側部位6A)の後端付近から、接続パイプ部25Aにおける先端側部位27A側となる左方に向かって突出するように、形成されるもので、インフレーター20A(接続パイプ部25Aを取り付けた状態のインフレーター本体21)をシートフレーム4Aに取り付けた状態で、先端側部位27Aの右方において、先端側部位27Aとの間に僅かに隙間を設けられるようにして、配設されている。この支持部材75の先端面75aと先端側部位27Aとの間の隙間は、車両搭載状態における支持部材75と先端側部位27Aとの非接触の状態を維持可能で、かつ、左右の側方(左方)からの座部3側への外力Fの作用時に支持部材75の先端面75aを先端側部位27Aにおける支持部材75側の面(右側面27b)に当接させて、先端側部位27Aを支持可能とするような寸法に、設定されている。接続パイプ部25Aは、連結部材を配設させていない構成である以外は、前述のインフレーター20における接続パイプ部25と同一の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
【0027】
支持部材75をこのような構成とする場合にも、車両が側方から進入する等、左右の側方(実施形態の場合、左方)から大きな衝撃力(外力)Fが作用した際において、接続パイプ部25Aが、座部3側(右方)に移動しようとしても、瞬時に、右側面27bを支持部材75と接触させて、支持部材75に支持されることから(
図11の二点鎖線参照)、屈曲部位28Aを起点として、先端側部位27Aを座部3側(具体的には、シートフレーム4に接近させるように変形することを、抑制することができる。
【0028】
実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ45を保持させる保持ベルト部として、シートベルト7のラップベルト10を利用しているが、エアバッグを保持させる保持ベルト部は、ラップベルトに限定されるものではなく、例えば、シートベルトとは別体のベルトを、シートに着座した乗員の腰部の前方に配置させ、このベルトに、エアバッグを保持させる構成としてもよい。また、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7のラップベルト10によりエアバッグ45を保持させる構成であるものの、インフレーター20が、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動よりも遅れて作動することから、シートベルト7により乗員MPのシート1に対する着座状態を安定して維持させた状態で、エアバッグ45を膨張させることができ、エアバッグ45とシートベルト7とにより、乗員MPを安定して保護することができる。
【0029】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7とインフレーター20とが、シート1に搭載される構成とされている。そのため、シート1を前後で大きくスライドさせたり回転させたりして、車両に対して移動させた状態で使用する場合にも、シート1に着座した乗員MPを、エアバッグ45によって的確に保護することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…シート、3…座部、4,4A…シートフレーム、20,20A…インフレーター、21…インフレーター本体、25,25A…接続パイプ部、26,26A…元部側部位、27,27A…先端側部位、28,28A…屈曲部位、30…連結部材(支持部材)、45…エアバッグ、75…支持部材、MP…乗員、S…乗員保護装置。