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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161503
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】接続装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20231030BHJP
   A61M 1/16 20060101ALN20231030BHJP
【FI】
A61M1/36 141
A61M1/16 103
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071957
(22)【出願日】2022-04-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、大学発新産業創出プログラム 社会還元加速プログラム(SCORE)大学推進型 「透析患者QOLを劇的に改善するインプラント人工腎臓Azinzoの研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】大田 能士
(72)【発明者】
【氏名】三木 則尚
(72)【発明者】
【氏名】河野 麗
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB02
4C077CC03
4C077CC04
4C077CC05
4C077DD23
4C077DD24
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH20
4C077JJ03
4C077JJ22
4C077KK02
4C077LL05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流れに淀みが生じにくい接続装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】流路3と,膜5を収容したハウジング7とを,液体の輸送を可能な状態で接続するための内腔9を有する接続装置1であって,接続装置1は,内腔9に設けられた複数の流路調整壁13を有する,接続装置1,及び接続装置1の製造方法であって,接続装置1の本体部11に,複数の積層膜5によって形成される膜間流路17に対応した厚さを有する複数の仮想流路層を設置する工程と,複数の仮想流路層の間に複数の流路調整壁13を形成する工程と,複数の流路調整壁13を形成した後に,仮想流路層を除去することで,複数の流路調整壁13によって形成された調整壁間流路15を得る工程と,を含む接続装置1の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路(3)と,膜(5)を収容したハウジング(7)とを,液体の輸送を可能な状態で接続するための内腔(9)を有する接続装置(1)であって,
前記接続装置(1)は,
前記内腔(9)に設けられた複数の流路調整壁(13)を有する,接続装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の接続装置(1)であって,
前記膜(5)は,複数の積層膜であり,
前記複数の流路調整壁(13)によって形成される調整壁間流路(15)は,
前記複数の積層膜(5)によって形成される膜間流路(17)に対応したものである,
接続装置(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の接続装置(1)であって,
前記膜(5)は,中空糸膜である,
接続装置(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の接続装置(1)であって,
前記内腔(9)は,前記流路(3)の端部から前記ハウジング側の端部に向けて断面積が大きくなる部分を有する,接続装置(1)。
【請求項5】
請求項1に記載の接続装置(1)を含む血液ろ過装置。
【請求項6】
流路(3)と,複数の積層膜(5)を収容したハウジング(7)とを,液体の輸送を可能な状態で接続するため内腔(9)を有する接続装置(1)の製造方法であって,
前記接続装置(1)の本体部(11)に,前記複数の積層膜(5)によって形成される膜間流路(17)に対応した厚さを有する複数の仮想流路層(23)を設置する工程と,
前記複数の仮想流路層(23)の間に複数の流路調整壁(13)を形成する工程と,
前記複数の流路調整壁(13)を形成した後に,前記仮想流路層(23)を除去することで,前記複数の流路調整壁(13)によって形成された調整壁間流路(15)を得る工程と,
を含む接続装置(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,流路と膜とを接続するための接続装置に関する。この発明は,例えば,血液流路と,膜を有する医療機器本体とを接続する際に用いられる接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-158814号公報には,血液濾過装置が記載されている。この装置の本体部は,複数の血液流路層,濾過膜及び濾液流路層を有している。そして,この装置の各血液流路層の各血液流入部は,ひとつの血液入口と接続されている。このため,この装置において血液が流れる際に,血流の方向が変わる箇所や,径が変化する箇所がある。また,この装置では,積層された材料端面にも血液が付着する。その結果,この装置では,血液の滞留が発生し,血栓が発生する原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-158814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は,流路と膜を収容したハウジングとを接続する際に,液体の流れに淀みが生じにくい接続装置を提供することを目的とする。
具体的に説明すると,この発明は,血液流路と,膜を有する医療機器とを接続する際に,血栓が生じる事態を軽減できる接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は,基本的に,接続装置の内腔に複数の流路調整壁を設け,液体の流路を調整することにより解決できるという知見に基づく。
【0006】
この明細書に記載される最初の発明は,接続装置1に関する。接続装置1は,流路3とハウジング7とを,液体の輸送を可能な状態で接続するための装置である。接続装置1は,内腔9に設けられた複数の流路調整壁13を有する。流路3からの液体は,接続装置1の内腔9を経て,ハウジング7内へと伝わる。ハウジング7内は,膜5を収容している。このため,流路3からの液体は,接続装置1の内腔9を経て,膜5へと伝わることとなる。その際に複数の流路調整壁13により,液体の流れが調整される。
【0007】
この明細書に記載される次の発明は,上記の接続装置1の製造方法に関する。
この方法は,仮想流路層の設置工程と,流路調整壁の形成工程と,調整壁間流路取得工程とを含む。
仮想流路層の設置工程は,接続装置1の本体部11に,複数の積層膜5によって形成される膜間流路17に対応した厚さを有する複数の仮想流路層23を設置するための工程である。
流路調整壁の形成工程は,複数の仮想流路層23の間に複数の流路調整壁13を形成するための工程である。
調整壁間流路取得工程は,複数の流路調整壁13を形成した後に,仮想流路層23を除去することで,複数の流路調整壁13によって形成された調整壁間流路15を得るための工程である。
【発明の効果】
【0008】
この発明は,複数の流路調整壁を設け,液体の流路を調整する。これにより,流路と膜を収容したハウジングとを接続する際に,液体の流れに淀みが生じる事態を防止できる。この接続装置は,複数の流路調整壁を有するので,血液流路と膜とを接続する際に,血栓が生じる事態を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は,接続装置の概念図である。
図2図2は,接続装置,流路及びハウジングを接続した様子を示す概念図である。
図3図3は,流路からの液体が接続装置の内腔を経由してハウジング内部の膜へ伝わる様子を示す概念図である。図3(a)は従来技術を説明するための図であり,図3(b)はこの発明を説明するための図である。
図4図4は,仮想流路層の設置工程を説明するための概念図である。図4(a)は複数のシートを設置した様子を示す図である。図4(b)は,複数のシートをまとめた様子を示す図である。図4(c)は,カバーを装着した様子を示す図である。
図5図5は,流路調整壁の形成工程を説明するための概念図である。図5(a)はカバー内部に樹脂を入れた様子を示す図である。図5(b)は樹脂を硬化させた様子を示す図である。
図6図6は,調整壁間流路取得工程を説明するための図である。図6(a)は,仮想流路層を取り除いた際の様子を示す概念図である。図6(b)は,カバーを取り除き接続装置を得た様子を示す図である。
図7図7は,血液ろ過装置の分解図である。
図8図8は,実施例で得られた接続装置を示す図面に代わる写真である。
図9図9は,接続装置の使用例を示す図面に代わる写真である。図9(a)は,流路調整壁を設けない接続装置を用いた後の様子を示す。図9(b)は流路調整壁を設けた接続装置を用いた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0011】
図1は,接続装置の概念図である。図1に示されるように,接続装置1は,本体部11と,本体部11の内側の空間である内腔9と,内腔9に設けられた複数の流路調整壁13を有する。図1に示されるように,内腔9に存在する複数の流路調整壁13のうち隣接する2つの壁の間は,調整壁間流路15を形成する。内腔9の壁面と,流路調整壁13の最も外側に位置するものの間も調整壁間流路15を形成してもよい。図1は,接続装置1のほかに,流路3及びハウジング7も描画されている。図2は,接続装置,流路及びハウジングを接続した様子を示す概念図である。
【0012】
接続装置1は,流路3とハウジング7とを,液体の輸送を可能な状態で接続するための装置である。接続装置1は,液体の淀みを軽減して,流路3からハウジング7内の膜5へと液体を輸送することを目的とした機器である。このため,流路3の端部の内径と,ハウジング7の端部の内径とが異なる場合に,この接続装置1を好ましく用いることができる。接続装置1は,例えば,インプラント型人工腎臓,携帯型人工腎臓,血液透析器(ダイライザ―),血液濾過器(ヘモダイアフィルタ―),体外式膜型人工肺(ECMO),又は持続血液濾過透析器において,血液の流路と,膜を収容する部位とを接続するために用いることができる。医療機器において,血液流路からの血液を膜へと導く用途に,この接続装置1を好ましく用いることができる。
【0013】
接続装置1は,公知の素材を用いて成形できる。接続装置1の素材の例は,ポリ塩化ビニル,ポリエチレン,ポリプロピレン,環状ポリオレフィン,ポリスチレン,ポリカーボネート,アクリル樹脂,メタクリル樹脂,アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体,ポリエチレンテレフタレート,ブタジエン-スチレン共重合体,ポリアミド(例えば,ナイロン6,ナイロン6・6,ナイロン6・10,ナイロン12),天然ゴム,ブチルゴム,イソプレンゴム,ブタジエンゴム,スチレン-ブタジエンゴム,シリコーンゴム,種熱可塑性エラストマー,PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン),チタン,ステンレス鋼,アルミニウム,銅,及び銅系合金である。
【0014】
接続装置1は,流路3やハウジング7に合わせた形状とすることができる。接続装置1やその内部の内腔9や本体部11の形状も用途に合わせて適切なものとすればよい。
【0015】
流路3
流路3は,液体の通路であり,接続装置1を介してハウジング7と接続されることで,流路3内の液体がハウジング7内の膜へと伝えられるものである。流路を流れる液体の例は,血液,透析液,露液,生理食塩水,灌流液,点滴液及び水である。これらの中では,血液が好ましい。流路3の内径の例は,2mm以上2cm以下である。流路の内径は,2mm以上8mm以下でも,3mm以上7mm以下でも,3mm以上5mm以下でも,2mm以上4mm以下でもよい。流路3の例は,人工血管及びチューブである。
【0016】
ハウジング7
ハウジング7は,内部に膜5を収容するための要素である。ハウジングは,内部に膜を有する医療機器の本体であってもよい。ハウジングの例は,血液濾過装置(特開2017-158814号公報)における,六角柱状の本体部である。ハウジング7は,内部に膜5を有するので,例えば,濾過装置として機能する。膜5の例は,平面状の膜であってもよいし,中空糸膜であってもよい。膜5が平面状である場合は,複数の膜が積層されたものであってもよい。ハウジング7内部の膜5が,複数の膜が積層されたものである場合,膜と膜との間にコネクタ21が存在するときがある。そして,複数の膜が積層されたものである場合,膜と膜との間には,濾過等する液体が流れる膜間流路17が存在する。膜5の例は,血液透析濾過膜である。血液透析ろ過膜の孔径は,0.1nm以上10nm以下が好ましく,0.5nm以上2nm以下でもよい。このサイズであれば,ウィルスや菌が通過できないので,ウィルスや菌が混入しても,血液に混入しないので,感染症を防止できる。
【0017】
内腔9
内腔9は,接続装置1の本体部11の内側の空間(領域)を意味する。接続装置1の本体部11は,その内部に内腔9が存在する筐体(外箱)である。接続装置1は,流路3とハウジング7とを,液体の輸送を可能な状態で接続するための装置である。例えば,流路3の端部のうち接続装置1と接続されるもの内腔(液体が通る領域)の断面積は,ハウジング7の端部のうち接続装置1と接続されるもの内腔(液体が通る領域)より小さいことがある。このため,流路3とハウジング7とを直接接続できない。接続装置1の内腔9は,流路3の端部の形状に適合した第1の端部と,ハウジング7の端部に適合した第2の端部とを有する。ここで「適合した」とは,液体を,漏れや淀みがない状態で伝えられるように,物理的に接続されていることを意味する。このため,接続装置1を用いることで,流路3とハウジング7とを接続でき,内腔9の形状が滑らかなので,液体の流れが淀む事態を軽減できる。内腔9の形状の例は,第1の端部から続き,流路3の端部の内腔形状に適合した導入部と,第2の端部へと続きハウジング7の端部の内腔形状に適合した導出部と,導入部及び導出部を滑らかにつなぐ連結部とを有するものである。
【0018】
上記の通り,ハウジング7の端部の内腔の断面の面積が,流路3の端部の内腔の断面の面積より大きい場合,内腔9は,流路3の端部からハウジング側の端部に向けて断面積が大きくなる部分を有することが好ましい。内腔9の外壁部分は,流路3の端部からハウジング側の端部に向けて断面積が次第に大きくなる形状を有するものが好ましい。特に,一般的に流路3の内腔部分の断面は,液体を淀みなく流すために円形状(楕円形状を含む)である。一方,ハウジング7内部の膜5が,複数の膜が積層されたものである場合,ハウジング7の端部の内腔部分の形状は矩形(正方形や四角形)である場合がある。このように,流路3の端部の内腔部分の形状と,ハウジング7の端部の内腔部分の形状が異なる場合,流路3とハウジング7とを接続しようとすると,液体の流れに淀みが生ずるおそれがある。この接続装置1を用いることで,液体の流れを滑らかにすることができる。例えば,液体が血液の場合,液体の淀みは血栓が生ずる原因となる。この接続装置1を用いることで,血液の流れを滑らかにし,血栓が生じる事態を効果的に軽減できる。
【0019】
流路調整壁13
流路調整壁13は,内腔9に設けられた複数の壁を意味する。隣接する2つの流路調整壁13の間には,液体が流れる領域である調整壁間流路15が形成される。なお,内腔9の外壁と,もっとも外側に位置する流路調整壁13との間にも調整壁間流路15が形成されてもよい。内腔9の形状が第1の端部から第2の端部に向けて変化する場合,内腔9内を流れる液体の流速が変化する。この変化をできる限り少なくすることが望ましい。流路調整壁13により流路の断面積の変化を抑えることができる。さらに,流路調整壁13により,調整壁間流路15が形成されるので,液体の流れを滑らかにすることができる。
【0020】
図3は,流路からの液体が接続装置の内腔を経由してハウジング内部の膜へ伝わる様子を示す概念図である。図3(a)は従来技術を説明するための図であり,図3(b)はこの発明を説明するための図である。ハウジング7内部の膜5が,複数の膜が積層されたものである場合,コネクタ21に液体がぶつかると,液体の流れに淀みが生ずる。例えば,流体が血液である場合,このコネクタと衝突する部位から血栓が生じることがある。このため,流路調整壁13の好ましい例は,流路調整壁13がこのコネクタ21と連続するように形成される。すると,調整壁間流路15と膜間流路17とが連結されるので,内腔9を流れる液体が滑らかに複数の積層膜5へと伝わる。なお,図3(b)のようにコネクタ21の両側面に膜5が形成されている場合,流路調整壁13がコネクタ21と膜5と連続するように形成されてもよい。そのようにすれば,膜5の厚みが無視できない場合であっても,液体の流れを滑らかにすることができる。なお,流路からの液体が接続装置の内腔を経由してハウジング内部の膜へ伝わる様子を示す。一方,ハウジング内部から液体放出用流路へとつながる際にも,この接続装置を好ましく用いることができる。もっとも,流路からの液体が接続装置の内腔を経由してハウジング内部の膜へ伝わる場合と,ハウジングからの液体が接続装置を介して液体放出用流路へと伝わる場合で流速や液体の状況は異なる。このため,それらの条件を考慮して,調整壁間流路15を設計することが好ましい。
【0021】
内腔9が,導入部,連結部及び導出部を有する場合,流路調整壁13は連結部及び導出部に設けられるか,導出部に設けられることが好ましい。このようにすることで,液体が流れる部分の断面積が急激に変化する事態を緩和できる。複数の流路調整壁13は,並行となるように設けられることが好ましい。複数の流路調整壁13が並行して設けられるので,調整壁間流路15がまっすぐとなる部分を有し,液体の流れが促進される。
【0022】
流路調整壁13は,周期的に設けられた凸部により形成されてもよいし,リブレット構造を採用してもよい。
【0023】
この明細書に記載される次の発明は,上記の接続装置1の製造方法に関する。
この方法は,仮想流路層の設置工程と,流路調整壁の形成工程と,調整壁間流路取得工程とを含む。
【0024】
仮想流路層の設置工程
仮想流路層の設置工程は,接続装置1の本体部11に,複数の積層膜5によって形成される膜間流路17に対応した厚さを有する複数の仮想流路層23を設置するための工程である。接続装置1の本体部11は,その内部に内腔9が存在するハウジング(筐体,外箱)である。
図4は,仮想流路層の設置工程を説明するための概念図である。図4(a)は複数のシートを設置した様子を示す図である。図4(b)は,複数のシートをまとめた様子を示す図である。図4(c)は,カバーを装着した様子を示す図である。図4(a)に示されるように,コネクタ21とコネクタ21の間に相当する位置に複数のシートを設置する。なお,ハウジングと接続装置1とを一体成型する場合,コネクタ21とコネクタ21の間に位置する膜間流路17にシートを設置する。このシートは,後に,調整壁間流路15となる。このためシートの大きさや厚さは,膜間流路17や調整壁間流路15に合わせて調整すればよい。次に,図4(b)に示されるように複数のシートを接続部25によりまとめる。この接続部25は,接続装置1の一部となる要素であり,流路3との接合部部分となってもよい。次に,図4(c)に示されるように接続装置の本体部に相当する領域を形成するためのカバーを装着する。このようにして,接続装置となる領域内に仮想流路層23が形成される。
【0025】
流路調整壁の形成工程
流路調整壁の形成工程は,複数の仮想流路層23の間に複数の流路調整壁13を形成するための工程である。図5は,流路調整壁の形成工程を説明するための概念図である。図5(a)はカバー内部に樹脂を入れた様子を示す図である。図5(b)は樹脂を硬化させた様子を示す図である。図5(a)に示されるようにカバー内部に樹脂を入れる。その後,図5(b)に示されるように樹脂を硬化させる。すると,複数の仮想流路層23の間に複数の流路調整壁13が形成されることとなる。このような樹脂は公知である。この方法により流路調整壁13を形成する場合,熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を好ましく用いることができる。熱硬化性樹脂や熱硬化性樹脂は公知である。熱硬化性樹脂の例は,高温時に熱安定性を有する芳香族基を含有したエポキシ化合物である。光硬化性樹脂は熱硬化性樹脂光酸発生剤を添加することでえてもよい。光酸発生剤の例は,SbF 、PF 、BF 、及びAsF である。光酸発生剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、0.5~2.0質量部の範囲である。光硬化性樹脂を用いる場合は,カバーを透明にするなど,カバーが光を透過させる性質のものとすることが好ましい。
【0026】
調整壁間流路取得工程
調整壁間流路取得工程は,複数の流路調整壁13を形成した後に,仮想流路層23を除去することで,複数の流路調整壁13によって形成された調整壁間流路15を得るための工程である。
図6は,調整壁間流路取得工程を説明するための図である。図6(a)は,仮想流路層を取り除いた際の様子を示す概念図である。図6(b)は,カバーを取り除き接続装置を得た様子を示す図である。仮想流路層23を取り除くとともに,カバーを取り外す。仮想流路層23が除かれると,その位置に調整壁間流路15が形成されることとなる。図6(a)は,仮想流路層を取り除いた際の様子を示す概念図である。なお,仮想流路層を取り除く前にカバーを取り除いてもよい。図6(b)に示されるように,接続装置1がハウジング7と一体成型されない場合は,膜5に相当した部位を除去してもよい。このようにして接続装置を得ることができる。接続装置は,ハウジング7やその内部の膜5と一体となるように成型するものが好ましい。接続装置とハウジング7やその内部の膜5とを一体成型することにより,通常はパッキン等を使ってリークを防がなければならない部品同士の境界面が無くなる。上記は膜5が積層型のものを中心に説明した。一方,膜5が中空糸のものの場合,中空糸と同径の棒状体を用いて,膜5が積層型のものと同様にして,接続装置を製造できる。
【0027】
上記は,複数の積層膜5を有するハウジング7を用いて接続装置を製造する方法について説明した。一方,接続装置は,ハウジング7を製造する際に,一緒に製造してもよい。
【0028】
流路3からの液体は,接続装置1の内腔9を経て,ハウジング7内へと伝わる。接続装置1は,内腔9に設けられた複数の流路調整壁13を有する。ハウジング7内は,膜5を収容している。このため,流路3からの液体は,接続装置1の内腔9に存在する流路調整壁13により形成される調整壁間流路15を経て,ハウジング7内の膜5へと伝わることとなる。
【0029】
血液ろ過装置
図7は,血液ろ過装置の分解図である。この例では流路3は人工血管である。人工血管は,例えば,生体の血管と接続される。この例では,動脈ポートと静脈ポートに接続装置1が接続される。血液流路層と濾液流路層との間に膜5が存在する。この例では血液流路層,膜5,及び濾液流路層の組合せが複数層積層される。濾液は,濾液チューブから排出される。
【0030】
血液流路層は,板状本体部と,板状本体部に形成され,血液流路を形成するための溝(切欠き)と,溝の側壁に形成された樹脂層と,を有するものが好ましい。このようにすれば,板状本体部と血液が接しないので,板状本体部の材質の選択の余地を広げることができる。樹脂層は,溝の側壁の高さ方向の中心部に比べ,最下部と最上部が厚く,厚みがなだらかに変化する形状を有するものが好ましい。このような形状を有すると,血液流路内で血栓ができる事態を効果的に防止できる。この構成は,インプラント型人工腎臓,携帯型人工腎臓,血液透析器,血液濾過器,又は体外式膜型人工肺に用いることができる。
【実施例0031】
PTFEシートから,幅2mm,長さ40mm以上のPTFEシート片を切り出した。
PTFEシート片をコネクションパーツ円形端部側から規定数挿入した。この実施例ではPTFEシート片(0.3×2.0mm)が4枚であった。このため,PTFEシート片の積層断面は1.2×2.0mmとなり,コネクションパーツの矩形断面の寸法と一致した。この時,コネクションパーツの矩形断面の対角線長さがコネクションパーツの円形端面の直径に相当するように設計することが望ましい。このように設計すると,断面積が常に一定となるため,流速低下が発生せず,抗血栓性に有利に働く。
PTFEシート片の先端を積層フィルタの各入口に挿入した。挿入長さは約5mmであった。
接着剤を用いてコネクションパーツを積層フィルタに固定した。コネクションパーツがPMMAの場合は血液適合性に劣るため,事前に内部コーティングをして抗血栓処理を行った。
コネクションパーツと積層フィルタとの隙間のPTFEシート片部分に紫外線硬化型接着剤4305(高粘度タイプ)を滴下し,紫外線露光機(14±4W/m)で180 秒以上照射して,紫外線硬化型接着剤を硬化させた。この操作は複数回に分割して実施することもできる。
隙間のPTFEシート片が完全に覆われた後,リブレット外装を積層フィルタに固定した。
外装内を満たすように紫外線硬化型接着剤4304を内部に充填し,紫外線露光機(14±4W/m)で300秒以上照射し硬化させる。一度に全量を充填すると効果時の樹脂収縮により内部に気泡が発生するため,複数回に分割することが望ましい。内部に充填するものは血液と接触しないため,材料は選ばないため,PDMSのようなシリコーン樹脂を用いることができる。もっともシリコーン樹脂を用いて内部を充填した場合は,シリコーン樹脂が硬化するまでに室温で48時間以上放置することが望ましい。
全ての硬化作業か完了した後に,コネクションパーツから出ているPTFEシート片をピンセットもしくは鉗子等で引き抜いた。
【0032】
図8は,実施例で得られた接続装置を示す図面に代わる写真である。この例では,接続装置はハウジングと一体に成型されている。図9は,接続装置の使用例を示す図面に代わる写真である。図9(a)は,流路調整壁を設けない接続装置を用いた後の様子を示す。図9(a)に示されるように流路調整壁がないと,血栓が生じている。図9(b)は流路調整壁を設けた接続装置を用いた例を示す。図9(b)に示されるように流路調整壁を設けることで長時間接続装置を利用しても血流に変化はなく,血栓が生じなかった。
【0033】
本発明は,例えば,医療機器の分野で利用されうる。
【符号の説明】
【0034】
1 接続装置
3 流路
5 膜
7 ハウジング
9 内腔
13 流路調整壁
15 調整壁間流路
17 膜間流路
23 仮想流路層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-09-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路(3)と,膜(5)を収容したハウジング(7)とを,液体の輸送を可能な状態で接続するための内腔(9)を有する接続装置(1)であって,
前記接続装置(1)は,
前記内腔(9)に設けられた複数の流路調整壁(13)を有する,接続装置(1)
であって,
前記膜(5)は,複数の積層膜であり,
前記複数の流路調整壁(13)によって形成される調整壁間流路(15)は,
前記複数の積層膜(5)によって形成される膜間流路(17)に対応したものであり,
前記ハウジング(7)と前記接続装置(1)とを接続した際に,前記調整壁間流路(15)と前記膜間流路(17)とが連結される,
接続装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の接続装置(1)であって,
前記ハウジング(7)は,前記複数の膜(5)の端部に存在するコネクタ(21)を含み,
前記ハウジング(7)と前記接続装置(1)とを接続した際に,前記複数の流路調整壁(13)のそれぞれは,前記コネクタ(21)と連続する,
接続装置(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の接続装置(1)であって,
前記複数の流路調整壁(13)は,並行して設けられる,
接続装置(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の接続装置(1)であって,
前記内腔(9)は,前記流路(3)の端部から前記ハウジング側の端部に向けて断面積が大きくなる部分を有する,接続装置(1)。
【請求項5】
請求項1に記載の接続装置(1)を含む血液ろ過装置。
【請求項6】
流路(3)と,複数の積層膜(5)を収容したハウジング(7)とを,液体の輸送を可能な状態で接続するため内腔(9)を有する接続装置(1)の製造方法であって、
前記内腔(9)は前記接続装置(1)の本体部(11)の内部に形成された空間であり、
前記接続装置(1)を製造した際に、前記本体部(11)となる部分の内部に,前記複数の積層膜(5)によって形成される膜間流路(17)に対応した厚さを有する複数の仮想流路層(23)を設置する工程工程と,
前記複数の仮想流路層(23)の間に複数の流路調整壁(13)を形成する工程と,
前記複数の流路調整壁(13)を形成した後に,前記仮想流路層(23)を除去することで,前記複数の流路調整壁(13)によって形成された調整壁間流路(15)を得る工程と,
を含み,
前記調整壁間流路(15)は,前記膜間流路(17)に対応したものであり,
前記ハウジング(7)と前記接続装置(1)とを接続した際に,前記調整壁間流路(15)と前記膜間流路(17)とが連結される,接続装置(1)の製造方法。