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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161507
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】熱融着性積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231030BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071963
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 拓生
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】宮島 紀幸
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BB85
3E086CA28
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK63B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100GB66
4F100JA07B
4F100JA11
4F100JC00B
4F100JK03
4F100JL12A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】ポリプロピレンを含有するポリオレフィン系の積層フィルムであって、バイオマス由来の樹脂を使用することにより環境負荷が低減された積層フィルムにおいて、更に低い引裂強度を有する積層フィルムを提供する。
【解決手段】(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層、及び(C)ラミネート層がポリプロピレンを含有し、
(B)コア層が直鎖状低密度ポリエチレン及びバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有し、
DSC曲線の第2回昇温行程の90から110℃の温度範囲で観測される結晶融解熱量ΔHが4.8~23.2J/gである、上記積層フィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層、及び(C)ラミネート層がポリプロピレンを含有し、
(B)コア層が直鎖状低密度ポリエチレン及びバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有し、
DSC曲線の第2回昇温行程の90から110℃の温度範囲で観測される結晶融解熱量ΔHが4.8~23.2J/gである、上記積層フィルム。
【請求項2】
(B)コア層のバイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量が22から100質量%である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリプロピレンが、ランダムポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnが、4.3以上で
ある、請求項1から3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
薬袋用フィルムに使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンを含有するポリオレフィン系の積層フィルムに関し、より具体的には薬袋用フィルム等において好適に用いられ、特に引裂強度が低く容易に開封可能な包装を形成できるともに、バイオマス由来の樹脂を使用することにより環境負荷も低減された、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減を目的に、各種の包装材に使用する樹脂フィルムを構成する材料の一部を、石油等の化石燃料由来の樹脂から、植物由来の樹脂に置き換える検討がなされている。
例えば、表面層(A)、中間層(B)及びヒートシール層(C)が積層された積層フィルムであって、表面層(A)及びヒートシール層(C)が、それぞれプロピレン系樹脂を含有し、中間層(B)が、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン及び化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンを所定割合で含有する積層フィルムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の様な構成の積層フィルムは包装容器をはじめとする広範な用途に使用されているが、近年薬袋用フィルムにおける使用が広がっている。薬袋用フィルムに用いる場合、開封の容易さ等の観点から、低い引裂強度を有することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-102277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術背景に鑑み、本発明は、ポリプロピレンを含有するポリオレフィン系の積層フィルムであって、バイオマス由来の樹脂を使用することにより環境負荷が低減された積層フィルムにおいて、更に低い引裂強度を有する積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有し、(A)シール層、及び(C)ラミネート層がポリプロピレンを、(B)コア層が直鎖状低密度ポリエチレン及びバイオマス由来の低密度ポリエチレンをそれぞれ含有する積層フィルムにおいて、DSC曲線の第1回降温行程の90から110℃の温度範囲で観測される結晶融解熱量ΔHが所定の数値範囲内にあるときに低い引裂き強度を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層、及び(C)ラミネート層がポリプロピレンを含有し、
(B)コア層が直鎖状低密度ポリエチレン及びバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有し、
DSC曲線の第2回昇温行程の90から110℃の温度範囲で観測される結晶融解熱量ΔHが4.8~23.2J/gである、上記積層フィルム、に関する。
【0007】
以下、[2]から[5]は、いずれも本発明の好ましい一態様又は一実施形態である。
[2]
(B)コア層のバイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量が22から100質量%である、[1]に記載の積層フィルム。
[3]
前記ポリプロピレンが、ランダムポリプロピレンである、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]
前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnが、4.3以上で
ある、[1]から[3]のいずれか1項に記載の積層フィルム。
[5]
薬袋用フィルムに使用される、[1]から[4]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、プロピレン重合体に起因する優れた特性を維持しながら、引裂強度が大幅に低減されるとともに、バイオマス由来の樹脂を使用することによりその製造等における環境負荷も低減されるなど、実用上高い価値を有する性質を、従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えたものであり、薬袋用フィルムをはじめとする各種用途において、好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層、及び(C)ラミネート層がポリプロピレンを含有し、
(B)コア層が直鎖状低密度ポリエチレン及びバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有し、
DSC曲線の第2回昇温 行程の90から110℃の温度範囲で観測される結晶融解熱量ΔHが4.8~23.2J/gである、上記積層フィルム、である。
すなわち、本発明の積層フィルムは、その(A)シール層、及び(C)ラミネート層にポリプロピレンを含有する。
また本発明の積層フィルムは、その(B)コア層に、直鎖状低密度ポリエチレン及びバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有する。
以下、上記各成分について詳述する。
【0010】
ポリプロピレン
本発明の積層フィルムの少なくとも(A)シール層及び(C)ラミネート層において使用されるポリプロピレンは、一般にポリプロピレン、プロピレン重合体、プロピレン系重合体の名称で製造・販売されている樹脂で、通常、密度が890~930kg/m程度のプロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)又は、プロピレン共重合体、すなわち、プロピレンと共に、他の少量のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のコモノマーから導かれる共重合体である。本発明においてはホモポリプロピレン、及びプロピレン共重合体のいずれを用いてもよいが、ホモポリプロピレンを用いることが好ましい。
少なくとも(A)シール層及び(C)ラミネート層においてポリプロピレンを使用することで、本発明の積層フィルムに、強度、透明性、軽量性等の優れた特性を付与することができる。
【0011】
共重合体である場合には、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、ブロック共重合体が特に好ましい。プロピレンの共重合体である場合における他のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、エチレンと炭素原子数が4~20程度のα-オレフィンを例示することができる。このような他のα-オレフィンは、1種単独で又は2種以上のα-オレフィンを組み合わせて共重合させてもよい。
【0012】
これらポリプロピレンの中でも、得られる積層フィルムの耐熱性や(B)コア層との相溶性等のバランスから、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が110~170℃、とくに115~165℃の範囲にあるプロピレン重合体が好ましく用いられる。
【0013】
本発明において用いられるポリプロピレンが単独で、又はエチレン系重合体、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体、粘着付与樹脂等の他の樹脂とのブレンドで、フィルム形成能を有する限りにおいて、そのメルトフローレート(MFR)は特に限定はされないが、押出加工性等の点からメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2160g荷重)は通常、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~70g/10分の範囲にある。
【0014】
本発明において用いられるポリプロピレンとしては、2種以上のポリプロピレンを組合せて使用することもできる。
【0015】
本発明において用いられるポリプロピレンは、種々公知の製造方法、具体的には、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やシングルサイト触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。特にはシングルサイト触媒を用いて製造することができる。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。メタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物及び上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
【0016】
ポリプロピレンには、本発明の目的に反しない限りにおいて、シリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等の各種添加剤を配合することができる。
【0017】
直鎖状低密度ポリエチレン
本発明において少なくとも(B)コア層において使用される直鎖状低密度ポリエチレンとしては、当該技術分野において一般に直鎖状低密度ポリエチレンとして知られているものを適宜用いることができる。その様な直鎖状低密度ポリエチレンとして、エチレンと、αーオレフィンとの共重合体を用いることができ、チーグラー触媒、メタロセン触媒等の公知の触媒を用いた製造方法により合成したものを用いることができる。
【0018】
α-オレフィンとしては、炭素数が3~20の化合物を用いることができ、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。α-オレフィンは、好ましくは、炭素数4、6又は8の化合物若しくはこれらの混合物であり、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン若しくはこれらの混合物である。
尤も、重合の工程でエチレンを多量化してα-オレフィンを生成させることもでき、この場合は実質的にエチレンのみを原料として製造することもできる。
【0019】
直鎖状低密度ポリエチレンは、市販品であってもよく、例えば、宇部丸善ポリエチレン株式会社製2040F(C-LLDPE、MFR;4.0、密度;0.918g/cm)、株式会社プライムポリマー製エボリュー(登録商標)等を用いることができる。
【0020】
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは、890~940kg/mであり、より好ましくは、900~930kg/mである。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、コモノマー含量を調整することで適宜調整することができ、また触媒や重合温度等の重合条件を選択、調製することでも適宜調整することができる。
【0021】
直鎖状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2160g荷重)は、0.1~15g/10分であることが好ましく、0.5~12g/10minであることがより好ましく、0.7~11g/10minであることが特に好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2160g荷重)は、従来公知の方法により適宜調整することが可能であり、重合温度等の重合条件を調整したり、分子量調整剤を導入すること等で調整することが可能である。
【0022】
直鎖状低密度ポリエチレンは、チーグラー触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒をはじめとする従来公知の触媒を用いた従来公知の製造法により製造することができる。分子量分布が狭く、高強度のフィルムを形成し得る直鎖状低密度ポリエチレンを得る観点からは、シングルサイト触媒を用いることが好ましい。
【0023】
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができるため好ましい。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む触媒である。
【0024】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0025】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基等が挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。
【0026】
周期律表第IV族の遷移金属化合物において、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、炭素数1~20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基等が挙げられる。
【0027】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種または二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0028】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタン等のランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
【0029】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性
層状珪酸塩、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0031】
分子量分布が広く柔軟性や成形性に優れた直鎖状低密度ポリエチレンを得る観点からは、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒を用いることが好ましい。
好ましいチーグラー触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるチーグラー触媒として一般的に知られているものでよく、例えばチタン化合物および有機アルミニウム化合物を含む触媒であり、ハロゲン化チタン化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒、チタニウム、マグネシム、塩素等からなる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒等を例示することができる。このような触媒としては、より具体的には、無水マグネシウムジハロゲン化物のアルコール予備処理物と有機金属化合物との反応生成物にチタン化合物を反応させて得られる触媒成分(ai)と有機金属化合物(bi)からなる触媒、マグネシウム金属と水酸化有機化合物またはマグネシウムなどの酸素含有有機化合物、遷移金属の酸素含有有機化合物、およびアルミニウムハロゲン化物を反応させて得られる触媒成分(aii)と有機金属化合物の触媒成分(bii)とからなる触媒、(i)金属マグネシウムと水酸化有機化合物、マグネシウムの酸素含有有機化合物、およびハロゲン含有化合物から選んだ少なくとも一員、(ii)遷移金属の酸素含有有機化合物およびハロゲン含有化合物から選ばれた少なくとも一員、(iii)ケイ素化合物を反応させて得られる反応物と、(iv)ハロゲン化アルミニウム化合物を反応させて得られる固体触媒成分(aiii)と有機金属化合物の触媒成分(biii)とからなる触媒等を例示することができる。
【0032】
また、フィリップス触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるフィリップス触媒として一般的に知られているものでよく、たとえば酸化クロム等のクロム化合物を含む触媒系であり、具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア等の固体酸化物に、三酸化クロム、クロム酸エステル等のクロム化合物を担持した触媒を例示することができる。
【0033】
バイオマス由来の低密度ポリエチレン
本発明において少なくとも(B)コア層に用いられる、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとは、バイオマス由来の原料を用いて製造したエチレンを重合して得られる密度905~940kg/mの低密度ポリエチレンを指称する。前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみを単独で使用してもよいし、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと混合して使用することもできる。
【0034】
バイオマス由来の低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは、910~935kg/m、より好ましくは、915~930kg/mである。
バイオマス由来の低密度ポリエチレンのMFRには特に制限はないが、成形性等の観点から、好ましくは0.5~20.0g/10分、より好ましくは、1.0~15.0g/10分であり、さらに好ましくは1.5~10.0g/10分であり、特に好ましくは2.0~9.0g/10分である。
【0035】
バイオマス由来の低密度ポリエチレンの分子量分布にも特に制限はないが、一層良好な製膜性、柔軟性、成形性等の観点から、分子量分布(重量平均分子量:Mw、と数平均分子量:Mn、との比:Mw/Mnで表示)が4.3以上であることが好ましく、5.0~11.0であることがより好ましく、さらに好ましくは6.0~10.0の範囲にある。このMw/Mnはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定でき、より具体的には例えば本願実施例に記載の方法により測定することができる。
【0036】
バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10℃/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭いピークが1個ないし複数個あり、該ピークの最高温度、すなわち融点が70~130℃であることが好ましく、さらに好ましくは80~120℃の範囲にある。
【0037】
バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、市販品でもよく、例えば、Braskem社から製造販売されているものを用いることができる。具体的な銘柄としては、SBC818、SPB681等を好適に使用することができる。
本発明において用いられる、バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、下記の製造方法により得られたものを用いることが好ましいが、それには限定されない。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなる低密度ポリエチレンはバイオマス由来となる。なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよく、バイオマス由来ではないエチレンや、エチレン以外の原料モノマーを含んでいてもよい。
【0038】
バイオマス由来の低密度ポリエチレンの原料となるバイオマスエチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により得ることができる。以下、バイオマスエチレンの製造方法の一例を説明する。
【0039】
バイオマスエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
【0040】
本発明において、バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
バイオマスエチレンを得るために、この段階で、エタノール中の不純物総量が1ppm以下にする等の高度な精製をさらに行ってもよい。
【0041】
エタノールの脱水反応によりエチレンを得る際には通常触媒が用いられるが、この触媒は、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。プロセス上有利なのは、触媒と生成物の分離が容易な固定床流通反応であり、例えば、γ-アルミナ等が好ましい。
この脱水反応は吸熱反応であるため、通常加熱条件で行う。商業的に有用な反応速度で
反応が進行すれば、加熱温度は限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上の温度が適当である。上限も特に限定されないが、エネルギー収支および設備の観点から、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。
反応圧力も特に限定されないが、後続の気液分離を容易にするため常圧以上の圧力が好ましい。工業的には触媒の分離の容易な固定床流通反応が好適であるが、液相懸濁床、流動床等でもよい。
【0042】
エタノールの脱水反応においては、原料として供給するエタノール中に含まれる水分量によって反応の収率が左右される。一般的に、脱水反応を行う場合には、水の除去効率を考えると水が無いほうが好ましい。しかしながら、固体触媒を用いたエタノールの脱水反応の場合、水が存在しないと他のオレフィン、特にブテンの生成量が増加する傾向にあることが判明した。恐らく、少量の水が存在しないと脱水後のエチレン二量化を押さえることができないためと推察している。許容される水の含有量の下限は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上必要である。上限は特に限定されないが、物質収支上および熱収支の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0043】
このようにしてエタノールの脱水反応を行うことによりエチレン、水および少量の未反応エタノールの混合部が得られるが、常温において約5MPa以下ではエチレンは気体であるため、これら混合部から気液分離により水やエタノールを除きエチレンを得ることができる。この方法は公知の方法で行えばよい。
気液分離により得られたエチレンはさらに蒸留され、このときの操作圧力が常圧以上であること以外は、蒸留方法、操作温度、および滞留時間等は特に制約されない。
【0044】
原料がバイオマス由来の発酵エタノールの場合、得られたエチレンには、エタノール発酵工程で混入した不純物であるケトン、アルデヒド、およびエステル等のカルボニル化合物ならびにその分解物である炭酸ガスや、酵素の分解物・夾雑物であるアミンおよびアミノ酸等の含窒素化合物ならびにその分解物であるアンモニア等が極微量含まれる。ポリエチレンの製造や使用においては、これら極微量の不純物が問題となるおそれがあるので、精製により除去しても良い。精製方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。好適な精製操作としては、例えば、吸着精製法をあげることができる。用いる吸着剤は特に限定されず、従来公知の吸着剤を用いることができる。例えば、高表面積の材料が好ましく、吸着剤の種類としては、バイオマス由来の発酵エタノールの脱水反応により得られるエチレン中の不純物の種類・量に応じて選択される。
【0045】
なお、エチレン中の不純物の精製方法として苛性水処理を併用してもよい。苛性水処理をする場合は、吸着精製前に行うことが望ましい。その場合、苛性処理後、吸着精製前に水分除去処理を施す必要がある。
【0046】
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
【0047】
上記のバイオマス由来のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなバイオマス由来のα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリオレフィンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
【0048】
バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、エチレン単独重合体であることが好ましい。バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となるからである。
【0049】
バイオマス由来の低密度ポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(14C)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、14Cが一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中の14C含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中には14Cが殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれる14Cの割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、ポリエチレン中の14Cの含有量をP14Cとした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=P14C/105.5×100
【0050】
本発明で用いることのできるバイオマス由来の低密度ポリエチレンにおいては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100%となる。なお、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0%となる。
【0051】
本発明において、バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、バイオマス度が100%である必要はない。バイオマス由来の低密度ポリエチレンの一部にでもバイオマス由来の原料が用いられていれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減できるからである。
【0052】
本発明で用いることができるバイオマス由来の低密度ポリエチレンにおいて、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができるが、高分岐度の分子構造が得られることから、高圧法の重合装置を用いることが好ましい。
重合触媒として、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0053】
分子量分布が広く柔軟性や成形性に優れたバイオマスポリエチレンを得る観点からは、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒を用いることが好ましい。
好ましいチーグラー触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるチーグラー触媒として一般的に知られているものでよく、例えばチタン化合物および有機アルミニウム化合物を含む触媒であり、ハロゲン化チタン化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒、チタニウム、マグネシム、塩素等からなる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒等を例示することができる。このような触媒としては、より具体的には、無水マグネシウムジハロゲン化物のアルコール予備処理物と有機金属化合物との反応生成物にチタン化合物を反応させて得られる触媒成分(a)と有機金属化合物(b)からなる触媒、マグネシウム金属と水酸化有機化合物またはマグネシウムなどの酸素含有有機化合物、遷移金属の酸素含有有機化合物、およびアルミニウムハロゲン化物を反応させて得られる触媒成分(A)と有機金属化合物の触媒成分(B)とからなる触媒、(i)金属マグネシウムと水酸化有機化合物、マグネシウムの酸素含有有機化合物、およびハロゲン含有化合物から選んだ少なくとも一員、(ii)遷移金属の酸素含有有機化合物およびハロゲン含有化合物から選ばれた少なくとも一員、(iii)ケイ素化合物を反応させて得られる反応物と、(iv)ハロゲン化アルミニウム化合物を反応させて得られる固体触媒成分(A)と有機金属化合物の触媒成分(B)とからなる触媒等を例示することができる。
【0054】
また、フィリップス触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるフィリップス触媒として一般的に知られているものでよく、たとえば酸化クロム等のクロム化合物を含む触媒系であり、具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア等の固体酸化物に、三酸化クロム、クロム酸エステル等のクロム化合物を担持した触媒を例示することができる。
【0055】
バイオマス由来の低密度ポリエチレンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。また、他のエチレン系重合体をはじめとする、他のポリマーと共に用いてもよい。
【0056】
バイオマス由来の低密度ポリエチレンには、本発明の目的を損なわない範囲で、通常オレフィン重合体に添加される種々公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤(滑剤)等を必要に応じて配合することができる。
【0057】
本発明の積層フィルムは、以下に説明する(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する。
【0058】
(A)シール層
本発明の積層フィルムを構成する(A)シール層は、ポリプロピレンを含有する。(A)シール層がポリプロピレンを含有することで、本発明の積層フィルムは、強度、透明性、軽量性、弾性率等の好ましい効果を実現することができる。
良好なヒートシール性を実現する等の観点からは、(A)シール層が含有するポリプロピレンは、その一部または全部がランダムポリプロピレンであることが好ましい。
(A)シール層中のポリプロピレンの含有量は、80質量%以上であることが好ましく、85~99.9質量%であることがより好ましく、90~99.8質量%であることが特に好ましい。
【0059】
(A)シール層は、バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有していてもよい。
(A)シール層がバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有することで、積層フィルムのバイオマス度を一層向上することができる。また、引裂き易さを一層向上することができる。
(A)シール層におけるバイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1~9質量%であることがより好ましく、2~7質量%であることが特に好ましい。
(A)シール層のバイオマス度の測定方法は、(B)コア層のバイオマス度に関して後述するものと同様である。
【0060】
(A)シール層の厚みには特に制限はないが、弾性率等の観点から、1.3μm以上であることが好ましく、2.5μm以上であることが特に好ましい。
一方、透明性等の観点からは、25μm以下であることが好ましく、23μm以下であることが特に好ましい。
【0061】
(B)コア層
本発明の積層フィルムを構成する(B)コア層は、直鎖状低密度ポリエチレン及びバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有する。
(B)コア層が直鎖状低密度ポリエチレンを含有することで、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとの間の高い相溶性、それに伴う高い透明性、しっとりした風合い、コシ感等の好ましい効果を実現することができる。
(B)コア層における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量に特に制限はないが、78質量%以下であることが好ましく、73質量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
(B)コア層がバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有することで、バイオマス度が向上し環境負荷が低減されるとともに、低引裂強度、高弾性率等の好ましい効果を実現することができる。
(B)コア層におけるバイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、22質量%以上であることが好ましく、24質量%以上であることがより好ましく、27質量%以上であることが特に好ましい。(B)コア層におけるバイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量が22から100質量%であることで、十分なバイオマス度が実現できるとともに、低引裂強度、高弾性率等の好ましい効果を一層顕著に実現することができる。また、本発明の積層フィルム全体の90から110℃の結晶融解熱量ΔHを、後述する所定の範囲内とすることが一層容易となる。
【0063】
上述の高いバイオマス度、低引裂強度、高い透明性、高弾性率等の好ましい効果を一層顕著なものとする観点から、(B)コア層の厚みを、(A)シール層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みよりも大きなものとすることが好ましく、(A)シール層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みの和と同等又はそれよりも大きなものとすることが特に好ましい。具体的には、(B)コア層の厚みが、(A)シール層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みの和の55%以上であることが好ましく、70%から240%であることがより好ましく、85%から160%であることが特に好ましい。
なお、(B)コア層の厚みは、2.5~50μmであることが好ましく、より好ましくは5.0~45μmの範囲にある。
【0064】
バイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、例えば、(B)コア層を製造する際の樹脂組成物の配合を調整することによって適宜増減させることができる。
製造後の(B)コア層のバイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、例えば、放射性炭素(14C)測定によってフィルム中のバイオマス由来の炭素の含有量を測定し、この測定結果とバイオマス由来の低密度ポリエチレン中のバイオマス由来の炭素の含有量とから計算することができる。
【0065】
(C)ラミネート層
本発明の積層フィルムを構成する(C)ラミネート層はポリプロピレンを含有する。
ポリプロピレンは、耐熱性が高く、軽量で、低コストなので、これを含有することで(C)ラミネート層を、耐熱性が高く、軽量で、低コストなものとすることができる。
更に、層間の親和性の点から、(C)ラミネート層にポリプロピレンを用いると、隣接する(B)コア層、及びそれを介して(A)シール層にもポリプロピレンを使用し易くなり、積層フィルム全体を耐熱性が高く、軽量で、低コストなものとすることができる。
(C)ラミネート層におけるポリプロピレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
(C)ラミネート層におけるポリプロピレンも、ランダムポリプロピレンであることが好ましい。
【0066】
本発明の積層フィルムを構成する(C)ラミネート層は、必要又は所望に応じて、後述の(D)基材層をはじめとする他の層と積層することができる。
従って、(C)ラミネート層は、(D)基材層をはじめとする他の層との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましい。
例えば、(D)基材層をはじめとする他の層と同種の材料を使用することが好ましく、したがって(D)基材層に好ましく用いられる、ポリプロピレンの材料やポリエステル系の材料を使用することが好ましい。
また、他の層との間のラミネート強度を更に向上するため、(C)ラミネート層の表面((B)コア層と積層する面とは反対側の面)に、コロナ処理、粗面化処理等の処理を行ってもよい。
【0067】
(C)ラミネート層は、バイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有していてもよい。
(C)ラミネート層がバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有することで、積層フィルムのバイオマス度を一層向上することができる。また、引裂強度を一層低減することができる。
(C)ラミネート層におけるバイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8~20質量%であることがより好ましく、1.5~15質量%であることがさらに好ましく、2.0~12質量%であることが特に好ましい。
(C)ラミネート層のバイオマス度の測定方法は、(B)コア層のバイオマス度に関して上記にて説明したものと同様である。
【0068】
本発明の積層フィルムを保管等する際のブロッキング防止の観点からは、(C)ラミネート層は、ブロキング防止剤を含んでいてもよい。
ブロッキング防止剤としては、粉末状のシリカ、好ましくは合成シリカ、等を好適に使用することができる。粉末状のシリカを(C)ラミネート層中に均一に分散させる観点からは、粉末状のシリカを、(C)ラミネート層を構成するポリプロピレンとの混和性に優れた樹脂中、例えば各種ポリオレフィンに分散してマスターバッチを形成し、次いでマスターバッチをポリプロピレン中に添加してもよい。
【0069】
(C)ラミネート層の厚みには特に制限はないが、1.3~25μmであることが好ましく、より好ましくは2.5~23μmの範囲にある。
【0070】
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層のいずれも、本発明の目的に反しない限りにおいて、ポリプロピレン、及びバイオマス由来の低密度ポリエチレン以外の、各種添加材、充填材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、抗菌剤、防曇剤等を添加することができる。さらにまた、その他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類、炭化水素樹脂、石油樹脂等を本発明の目的に反しない範囲で配合してもよい。
【0071】
積層フィルム
本発明の積層フィルムは、上述の様に、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する。本発明の積層フィルムにおいては、好ましくは(B)コア層を介して、(C)ラミネート層と(A)シール層とが積層されるが、それ以外の層が存在していてもよい。
【0072】
本発明の積層フィルムは、種々公知のフィルム成形方法、例えば、予め、(C)ラミネート層、(B)コア層、及び(A)シール層となるフィルムをそれぞれ成形した後、当該フィルムを貼り合せて積層フィルムとする方法、多層ダイを用いて(B)コア層及び(A)シール層からなる複層フィルムを得た後、当該(B)コア層面に、(C)ラミネート層を押出して積層フィルムとする方法、多層ダイを用いて(C)ラミネート層及び(B)コア層からなる複層フィルムを得た後、当該(B)コア層面に、(A)シール層を押出して積層フィルムとする方法、あるいは、多層ダイを用いて(C)ラミネート層、(B)コア層及び(A)シール層からなる積層フィルムを得る方法などを採用することができる。
【0073】
また、フィルム成形方法は、種々公知のフィルム成形方法、具体的には、T-ダイキャストフィルム成形方法、インフレーションフィルム成形方法を採用し得る。
本発明の積層フィルム及びそれを構成する各層は、延伸されていないフィルム(無延伸フィルム)であっても、延伸フィルムであってもよい。
【0074】
本発明の積層フィルムの厚さには特に限定はされないが、実用的な強度を確保する等の観点から、5μm以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。一方、例えば(D)基材層と積層された後においても実用的な可撓性を有する等の観点からは、通常100μm以下であり、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0075】
本発明の積層フィルムの、DSC測定より得られる第2回昇温工程の融解曲線より算出した90℃~110℃の結晶融解熱量ΔHは、4.8~23.2J/gであることが好ましい。
90℃~110℃の結晶融解熱量ΔHが上記範囲にあることで、本発明の積層フィルムは引裂強度が大幅に低減され、易開封性が求められる各種包材、容器用のフィルム、例えば薬袋用フィルム、において好適に使用することができる。
90℃~110℃の結晶融解熱量ΔHが4.8~23.2J/gの範囲内にあることで上記の有利な技術的効果が実現されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、製膜温度から十分に低い上記の温度範囲内で融解する結晶成分の量が適切な範囲内にあることで、引裂きやすい樹脂分散構造が形成され得ることと何らかの関係が有ることが推定できる。
【0076】
DSCによる第2回昇温工程の融解曲線の測定、及び当該融解曲線からの90℃~110℃の融解熱量ΔHの算出は、従来公知の方法により行うことができ、より具体的には、例えば本願実施例記載の方法により行うことができる。
90℃~110℃の結晶融解熱量ΔHは、4.9~15.0J/gであることがより好ましく、5.0~11.0J/gであることがさらに好ましい。
90℃~110℃の融解熱量ΔHは、バイオマス由来の低密度ポリエチレンの添加量を増加することや、添加している層の厚みを増加すること等により増加させることができる。
【0077】
本発明の積層フィルムは、(B)コア層、並びに好ましくは(A)シール層、及び/又は(C)ラミネート層、にバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含有することで、製造における化石燃料の使用量を低減し、環境負荷を低減することができる。
積層フィルムのバイオマス度は、各層のバイオマス度を各層の質量で加重平均して計算することができる。
積層フィルムのバイオマス度は、各層のバイオマス度を調整することで適宜増減することができ、各層のバイオマス度は、各層に使用する樹脂のバイオマス度及びその使用量を調整することで適宜増減することができる。
本発明の積層フィルムのバイオマス度は、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.07質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムのバイオマス度は高いほど好ましく、特に上限は存在しないが、フィルムの物性や、コスト等との関係から、通常60質量%以下であり、多くの場合50質量%以下である。
【0078】
本発明の積層フィルムは延伸フィルムであっても無延伸フィルムであってもよいが、
機械的物性の向上の観点からは、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることが特に好ましい。
二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、多段延伸等の方法が適宜採用される。
二軸延伸の条件としては、公知の二軸延伸フィルムの製造条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を100~145℃、延伸倍率を4~7倍の範囲、横延伸温度を150~190℃、延伸倍率を8~11倍の範囲とすることが挙げられる。
【0079】
(D)基材層
所望に応じて、本発明の積層フィルムを、その(C)ラミネート層において、(D)基材層と積層することができる。
【0080】
(D)基材層には特に制限はなく、例えば通常プラスチック包装に使用されるフィルムを、好適に使用することができる。
好ましい(D)基材層の材質としては、例えば、各種ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン-エチレン共重合体、結晶性ポリブテン-1、結晶性ポリ4-メチルペンテン-1、低-、中-、或いは高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂から構成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。また、包装する内容物が酸素に敏感なものの場合には、上記フィルムに金属酸化物等を蒸着したフィルム、或いは有機化合物を被覆したフィルムや、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層を設けてもよい。
これらの材料からなるプラスチックフィルムは、未延伸、一軸延伸、或いは二軸延伸して用いられる。
【0081】
(D)基材層として、これらのプラスチックフィルムを単層で、或いは、二種以上を積層したものとして使用することができ、また、これらのプラスチックフィルムの一種、或いは、二種以上と、アルミニウム等の金属箔、紙、セロファン等を貼合わせて構成することもできる。
好ましい(D)基材層として、例えば、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエステルフィルムからなる単層フィルム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとPETを積層した二層構成のフィルム、PET/ナイロン/ポリエチレンを積層した三層構成のフィルム等が挙げられる。これらの積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることもできる。また、デザインを表現するインキ層を設けてもよい。
【0082】
(D)基材層を(C)ラミネート層に積層する方法には特に制限はないが、例えば押出しラミネート等により(C)ラミネート層に(D)基材層を直接積層することができる。また、ドライラミネート等により接着剤を介して(C)ラミネート層に(D)基材層を積層してもよい。接着剤としては、ウレタン系接着剤、酸変性ポリオレフィン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤等、通常のものを使用することができる。
(D)基材層の厚さは任意に設定することができるが、通常は、5~1000μm、好ましくは9~100μmの範囲から選択される。
【0083】
本発明の積層フィルム、及び本発明の積層フィルムの(C)ラミネート層に(D)基材層を積層した積層フィルムは、各種用途において好ましく使用され、特に包材として使用するのに適している。
【0084】
その様な包材の好ましい例として、薬袋用フィルムを挙げることができる。すなわち、本発明の積層フィルムは引裂強度が低く開封性に優れた包装を形成できるので、薬袋用フィルムとして特に好適に使用することができる。
本発明の積層フィルム(又は本発明の積層フィルムの(C)ラミネート層に(D)基材層を積層した積層フィルム)は、その1方の外層に(A)シール層を有するので、積層フィルム中央部で、(A)シール層が内面側になるように二つ折りして、次いで、3方を熱溶着することによって一連に熱溶着部を形成し、薬剤の収納部を区画形成することができる。すなわち、薬剤分包用分包袋とするための薬袋用フィルムとして使用できる。また、本発明の積層フィルム(又は本発明の積層フィルムの(C)ラミネート層に(D)基材層を積層した積層フィルム)を使用すれば、熱溶着タイプの連続式分包機で、薬剤を連続して分包した一連の薬剤分包袋とすることもできる。
薬袋、薬剤分包袋に分包する薬剤としては、特に限定されるものではなく、医薬品又はその調合物は勿論、サプリメント、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品等も分包の対象物になり得る。
【実施例0085】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0086】
実施例/比較例における物性、特性の評価は、以下の方法により行った。
(1)分子量分布(Mw/Mn)
下記の条件で、ポリマー試料を前処理後、GPCで分子量を測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を分子量分布とした。
i)前処理
試料(30mg)にGPC測定用移動相(o-ジクロロベンゼン)20mLを加えて145℃で振とう溶解し、得られた溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルタで熱ろ過したものをGPC測定に供した。
ii)GPC
装置:東ソー株式会社製、ゲル浸透クロマトグラフHLC-8321
カラム:東ソー株式会社製、内径7.5mm×30cm、4本(TSKgel GMH6-HT:2本、及びTSKgel GMH6-HTL:2本)
カラム温度:140℃
検出器:示差屈折計
流量:1mL/min
サンプリング間隔:0.5秒
【0087】
(2)融解熱量
示差走査熱量計(DSC)としてティー・エイ・インスツルメント社製Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JISK7121を参考にし、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、-50℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して熱融解曲線を測定し、得られた熱融解曲線(第2回昇温時)の90~110℃における試料の結晶融解熱量ΔHを求めた。
【0088】
(3)引裂強度
東洋精機製作所社製の軽荷重引裂き試験機を使用して、測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RHの条件で、実施例および比較例で得られた積層フィルムのMD方向及びTD方向の引裂き強度をそれぞれ測定した。
【0089】
実施例/比較例で用いた樹脂等の各構成成分の詳細は、以下のとおりである。

・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
密度:910kg/m
MFR(2.16kg、190℃):3.6g/10分
融点:115℃

・バイオマス由来の低密度ポリエチレン(B-LDPE)
ブラスケム社製、商品名:SBC818
MFR(2.16kg、190℃):8.3g/10min
密度:918kg/m
分子量分布(Mw/Mn):8.59

・ランダムポリプロピレン-1(rPP-1)
密度:910kg/m
MFR(2.16kg、210℃):7.0g/10分
融点:131℃

・ランダムポリプロピレン-2(rPP-2)
密度:900kg/m
MFR(2.16kg、210℃):7.0g/10分
融点:125℃
【0090】
(比較例1)
各層を構成する成分を表1に示す配合で、それぞれ別々の押出機に供給し、Tダイ法によって(A)シール層/(B)コア層/(C)ラミネ-ト層となる構成の三層共押出フィルムからなる、厚み50μmの積層フィルムを成形し、ラミネ-ト層にコロナ処理を施して熱融着性積層フィルムを得た。各層の厚み比率は(A)シール層:(B)コア層:(C)ラミネ-ト層=25:50:25であった。
得られた積層フィルムについて、上記(2)から(3)の方法にしたがい評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例1から5)
(B)コア層の組成を表1に示す通りに変更したことを除くほか、比較例1と同様にして積層フィルムを作製して、評価した。
結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の積層フィルムは、プロピレン重合体に起因する優れた特性を維持しながら、引裂強度が大幅に低減されるとともに、バイオマス由来の樹脂を使用することによりその製造等における環境負荷も低減されるなど、実用上高い価値を有する性質を高いレベルで兼ね備えたものであり、薬袋用フィルムをはじめとする各種包装用フィルム等に好適であり、医薬、ヘルスケア、看護、介護、宿泊、農業、食品、流通などの産業の各分野において高い利用可能性を有する。