(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161511
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ガラスセラミックス及びその製造方法、並びにデバイス
(51)【国際特許分類】
C03C 10/04 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
C03C10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071968
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】391009936
【氏名又は名称】株式会社住田光学ガラス
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】手塚 達也
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA11
4G062BB01
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4G062MM12
4G062NN32
4G062NN33
4G062QQ06
4G062QQ08
(57)【要約】
【課題】融液状態での粘度が十分に低く、イオン交換による効果的な化学強化が可能で且つ内部強度も高い、透明性のガラスセラミックスを提供する。
【解決手段】酸化物換算のモル%で、SiO
2:55%以上70%以下、B
2O
3:0%超10%以下、P
2O
5:0%超5%以下、Li
2O:18%以上30%以下、Na
2O:3%超10%以下、K
2O:0%以上5%以下、及びZrO
2:0%超5%以下である組成を有し、実質的にAl
2O
3を含有しないことを特徴とする、ガラスセラミックスである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物換算のモル%で、
SiO2:55%以上70%以下、
B2O3:0%超10%以下、
P2O5:0%超5%以下、
Li2O:18%以上30%以下、
Na2O:3%超10%以下、
K2O:0%以上5%以下、及び
ZrO2:0%超5%以下
である組成を有し、実質的にAl2O3を含有しないことを特徴とする、ガラスセラミックス。
【請求項2】
融液状態において粘度が100dPa・sを示す温度が1200℃以下である、請求項1に記載のガラスセラミックス。
【請求項3】
Li2SiO3結晶相及びLi2Si2O5結晶相の少なくともいずれかを含む、請求項1又は2に記載のガラスセラミックス。
【請求項4】
厚さ1mmにおいて、波長400nmの光に対する透過率が85%以上である、請求項1又は2に記載のガラスセラミックス。
【請求項5】
ビッカース硬さが600HV以上である、請求項1又は2に記載のガラスセラミックス。
【請求項6】
破壊靭性値が1.00MPa・m1/2以上である、請求項1又は2に記載のガラスセラミックス。
【請求項7】
表面に圧縮応力層を備える、請求項1又は2に記載のガラスセラミックス。
【請求項8】
前記圧縮応力層は、表面圧縮応力値が400MPa以上であり、圧縮応力深さが50μm以上である、請求項7に記載のガラスセラミックス。
【請求項9】
酸化物換算のモル%で、
SiO2:55%以上70%以下、
B2O3:0%超10%以下、
P2O5:0%超5%以下、
Li2O:18%以上30%以下、
Na2O:3%超10%以下、
K2O:0%以上5%以下、及び
ZrO2:0%超5%以下
である組成を有し、実質的にAl2O3を含有しないガラス組成物を調製する工程と、
前記ガラス組成物に結晶化処理を施し、ガラスセラミックスを得る工程と、
を含むことを特徴とする、ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のガラスセラミックスを用いたことを特徴とする、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミックス及びその製造方法、並びにデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、スマートウォッチ及びタブレット端末などのモバイル機器においては、ディスプレーや筐体の保護部材として、ガラス材料からなるカバーガラスが広く用いられている。そのような用途のガラス材料に対しては特に、高強度で、透明性が高いことへの要望が高まっている。
【0003】
ここで、ガラス材料の強度を高める手法としては、イオン交換法による化学強化、及び結晶化が挙げられる。
【0004】
イオン交換法は、ガラス材料を硝酸カリウムや硝酸ナトリウム等の融液に浸漬し、ガラス表面に存在するアルカリ成分をよりイオン半径の大きなアルカリ成分に置換することで、材料表面に圧縮応力を形成し、強度を高める手法である。当該イオン交換法は、従来用いられてきた風冷法等に比べ、高い圧縮応力を形成することが可能であり、また、様々な形状の対象物に適用可能であるという利点がある。
【0005】
一方、結晶化は、熱処理等によりガラス内部に結晶を析出させる手法であり、上述したイオン交換法では達成し得ない、材料そのものの強度(例えば、硬さ、破壊靭性など)を高める手法である。特に、結晶化によってガラス内部に析出した結晶のサイズが可視光波長(380~780nm)に対して十分に小さい場合には、透光性のガラスセラミックスとなり得る。
【0006】
そして、近年では、イオン交換法による化学強化と結晶化とを組み合わせることで、従来の強化ガラスに比べ、一層の高強度化が検討されている。
【0007】
また、上述したようなガラス材料に対しては、強度及び透明性に加えて、機能性や意匠性の観点から、形状自由度が高い(複雑な形状への成形が可能である)ことへの要望も同時に高まっている。この点に関し、ガラス材料を用い、曲面などの複雑な形状を有する部材を作製する方法として、ダイレクトプレス法(以下、「DP」と称することがある。)が挙げられる。このDPは、低粘度のガラス融液を金型に直接受け、プレスを行う方法であり、比較的低コストでガラス部材を作製できるという利点がある。そして、かかるDPの適用のためには、ガラス材料の融液状態における粘度が小さいことが求められる。
【0008】
これまで、高強度のガラス又はガラスセラミックスの材料については、種々の報告がされている。
例えば、特許文献1は、成分組成の適正化が図られた、表面圧縮応力が300MPa以上の強化ガラスを開示している。
また、特許文献2は、リチウムシリケート結晶相を含むガラスセラミックスが、高い機械的強度を有し得ることを開示している。
また、特許文献3は、結晶相としてRAl2O4、RTi2O5、R2TiO4、R2SiO4、RAl2Si2O8、及びR2Al4Si5O18(RはZn、Mg、Feから選択される)から選ばれる1種以上を含む結晶化ガラスが、高い可視光透過率を有しつつ高い強度を有し得ることを開示している。
また、特許文献4は、リチウムシリケート結晶相、及びペタライト結晶相を含むガラスセラミックスが、イオン交換による化学強化が可能で、高い機械的強度を有し得ることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-104285号公報
【特許文献2】特開2017-193534号公報
【特許文献3】特開2017-001937号公報
【特許文献4】特表2017-530933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の強化ガラスは、イオン交換により表面付近に圧縮応力層を形成することで割れに対する耐性を高めているにすぎず、材料そのものが持つ強度(例えば破壊靭性)の点において、改善の余地があった。加えて、上記の強化ガラスは、融液状態での粘度が非常に高く、DPを適用することが実質不可能であるという問題もあった。
また、特許文献2に記載のガラスセラミックスは、不透明もしくは半透明である。加えて、上記のガラスセラミックスは、イオン交換を前提とした組成設計がなされていないため、イオン交換による効果的な高強度化の点で、改良の余地があった。
更に、特許文献3に記載の結晶化ガラス及び特許文献4に記載のガラスセラミックスは、いずれも融液状態での粘度が非常に高く、DPを適用することが実質不可能であるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、融液状態での粘度が十分に低く、イオン交換による効果的な化学強化が可能で且つ内部強度も高い、透明性のガラスセラミックス、及びその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、上述したガラスセラミックスを用いたデバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ケイ酸リチウム系ガラスにB2O3、P2O5、Na2O及びZrO2を所定量含有させ、また、Al2O3を用いないことにより、所望のガラスセラミックスが得られることを見出した。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0013】
[1]酸化物換算のモル%で、
SiO2:55%以上70%以下、
B2O3:0%超10%以下、
P2O5:0%超5%以下、
Li2O:18%以上30%以下、
Na2O:3%超10%以下、
K2O:0%以上5%以下、及び
ZrO2:0%超5%以下
である組成を有し、実質的にAl2O3を含有しないことを特徴とする、ガラスセラミックス。
【0014】
[2]融液状態において粘度が100dPa・sを示す温度が1200℃以下である、[1]に記載のガラスセラミックス。
【0015】
[3]Li2SiO3結晶相及びLi2Si2O5結晶相の少なくともいずれかを含む、前記[1]又は[2]に記載のガラスセラミックス。
【0016】
[4]厚さ1mmにおいて、波長400nmの光に対する透過率が85%以上である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【0017】
[5]ビッカース硬さが600HV以上である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【0018】
[6]破壊靭性値が1.00MPa・m1/2以上である、前記[1]~[5]のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【0019】
[7]表面に圧縮応力層を備える、前記[1]~[6]のいずれかにに記載のガラスセラミックス。
【0020】
[8]前記圧縮応力層は、表面圧縮応力値が400MPa以上であり、圧縮応力深さが50μm以上である、前記[7]に記載のガラスセラミックス。
【0021】
[9]酸化物換算のモル%で、
SiO2:55%以上70%以下、
B2O3:0%超10%以下、
P2O5:0%超5%以下、
Li2O:18%以上30%以下、
Na2O:3%超10%以下、
K2O:0%以上5%以下、及び
ZrO2:0%超5%以下
である組成を有し、実質的にAl2O3を含有しないガラス組成物を調製する工程と、
前記ガラス組成物に結晶化処理を施し、ガラスセラミックスを得る工程と、
を含むことを特徴とする、ガラスセラミックスの製造方法。
【0022】
[10]前記[1]~[9]のいずれかに記載のガラスセラミックスを用いたことを特徴とする、デバイス。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、融液状態での粘度が十分に低く、イオン交換による効果的な化学強化が可能で且つ内部強度も高い、透明性のガラスセラミックス、及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上述したガラスセラミックスを用いたデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例1のガラスセラミックスのX線回折パターンを示す図である。
【
図2】実施例2のガラスセラミックスのX線回折パターンを示す図である。
【
図3】実施例2のガラスセラミックスの透過スペクトルを示す図である。
【
図4】実施例2のガラスセラミックスの残留応力プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(ガラスセラミックス)
以下、本発明の一実施形態のガラスセラミックス(「本実施形態のガラスセラミックス」と称することがある。)を具体的に説明する。本実施形態のガラスセラミックスは、酸化物換算のモル%で、
SiO2:55%以上70%以下、
B2O3:0%超10%以下、
P2O5:0%超5%以下、
Li2O:18%以上30%以下、
Na2O:3%超10%以下、
K2O:0%以上5%以下、及び
ZrO2:0%超5%以下
である組成を有し、実質的にAl2O3を含有しないことを特徴とする。
かかる本実施形態のガラスセラミックスは、融液状態での粘度が十分に低く、イオン交換による効果的な化学強化が可能で且つ内部強度も高い、透明性のガラスセラミックスである。
【0026】
なお、本明細書において、「ガラスセラミックス」とは、部分的に結晶を含むガラスを指し、例えば、ガラスの内部に結晶を析出させることにより作製できる。また、「ガラスセラミックス」は、当分野では「結晶化ガラス」とも呼ばれる。
【0027】
本実施形態のガラスセラミックスは、上述した所定組成を有するため、融液状態での粘度が十分に低い。そのため、本実施形態のガラスセラミックスを用いれば、DPにより複雑な形状を有する部材を作製することができ、また、低コスト化及び大量生産が可能となる。また、本実施形態のガラスセラミックスは、上述した所定組成に起因して、イオン交換性が高い。そのため、イオン交換(化学強化)により効果的に高い強度を発揮することができる。更に、本実施形態のガラスセラミックスは、上述した所定組成を有するため、透明性を有する上、内部強度(材料そのものの強度)が高い。そのため、本実施形態のガラスセラミックスは、透明性が求められるモバイル機器用カバーガラスなどとして使用可能となる。以上の通り、本実施形態のガラスセラミックスは、ガラス系の材料としての順応性が高い。
【0028】
なお、本実施形態のガラスセラミックスは、上述した成分以外のその他の成分(後述)を含んでもよい。但し、本実施形態のガラスセラミックスは、所望の特性をより確実に発現させる観点から、上述した成分のみからなる組成(酸化物表記で、SiO2、B2O3、P2O5、Li2O、Na2O及びZrO2を必須成分とし、K2Oのみを任意成分とする組成)を有することが好ましい。
ここで、「上述した成分のみからなる」とは、当該成分以外の不純物成分が不可避的に混入する、具体的には、不純物成分の割合が0.2モル%以下である場合を包含するものとする。
【0029】
まず、本実施形態において、ガラスセラミックスの組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
なお、成分に関する「%」表示は、特に断らない限り、酸化物換算のモル%を意味するものとする。
【0030】
<SiO2>
本実施形態のガラスセラミックスにおいて、SiO2は、ガラス形成を可能にするとともに、結晶化させた際に主に析出するLi2SiO3結晶相及び/又はLi2Si2O5結晶相を構成する重要な必須成分である。しかしながら、その含有量が70%を超えると、ガラス融液の粘度が著しく高くなる虞がある。一方、その含有量が55%未満であると、ガラス形成能が低下する虞、及び結晶化させた際に透明性が低下する虞がある。よって、本実施形態のガラスセラミックスにおいては、SiO2の含有量を55%以上70%以下の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスセラミックスにおけるSiO2の含有量は、56%以上であることが好ましく、57%以上であることがより好ましく、58%以上であることが更に好ましく、また、69%以下であることが好ましく、67%以下であることがより好ましく、66%以下であることが更に好ましい。
【0031】
<B2O3>
本実施形態のガラスセラミックスにおいて、B2O3は、ガラス形成を可能にするとともに、ガラス融液の粘度を低下させ、更には均質な結晶化を促進する重要な必須成分である。しかしながら、その含有量が10%を超えると、ガラス形成能が低下する虞、及び結晶化させた際に透明性が低下する虞がある。一方、含有していないと、ガラス融液の粘度を低下させる効果を得られず、また、結晶化の際に透明性が低下する虞がある。よって、本実施形態のガラスセラミックスにおいては、B2O3の含有量を0%超10%以下の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスセラミックスにおけるB2O3の含有量は、1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、また、9%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、7%以下であることが更に好ましい。
【0032】
<P2O5>
本実施形態のガラスセラミックスにおいて、P2O5は、均質な結晶化を促進する重要な必須成分である。しかしながら、その含有量が5%を超えると、ガラス形成能が低下する虞、及び結晶化させた際に透明性が低下する虞がある。一方、含有していないと、結晶化させた際に透明性が低下する虞がある。よって、本実施形態のガラスセラミックスにおいては、P2O5の含有量を0%超5%以下の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスにおけるP2O5の含有量は、0.5%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、また、4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
【0033】
<Li2O>
本実施形態のガラスセラミックスにおいて、Li2Oは、ガラス融液の粘度を大幅に低下させるとともに、結晶化させた際に主に析出するLi2SiO3結晶相及び/又はLi2Si2O5結晶を構成し、更には、NaNO3融液等を用いた化学強化処理においてNa+イオンと交換されるLi+イオン源となる重要な必須成分である。しかしながら、その含有量が30%を超えると、ガラス形成能が低下する虞、及び結晶化させた際に透明性が低下する虞がある。一方、その含有量が18%未満であると、ガラス融液の粘度を低下させる効果が不十分であり、また、化学強化処理による強度向上を十分に図ることができない虞がある。よって、本実施形態のガラスセラミックスにおいては、Li2Oの含有量を18%以上30%以下の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスセラミックスにおけるLi2Oの含有量は、19%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、また、29%以下であることが好ましく、28%以下であることがより好ましく、27%以下であることが更に好ましい。
【0034】
<Na2O>
本実施形態のガラスセラミックスにおいて、Na2Oは、ガラス融液の粘度を低下させるとともに、Li2Oとの併用によりガラス形成能を高め、また、NaNO3融液等を用いた化学強化処理においてNa+イオンとLi+イオンとのイオン交換性を高め、更にKNO3融液等を用いた化学強化処理においてK+イオンと交換されるNa+イオン源となる重要な必須成分である。しかしながら、その含有量が10%を超えると、ガラス形成能が低下する虞、及び結晶化させた際に透明性が低下する虞がある。一方、その含有量が3%以下であると、ガラス融液の粘度を低下させる効果が不十分であり、また、化学強化処理による強度向上を十分に図ることができない(例えば、表面圧縮応力値が400MPa以上の圧縮応力層を形成できない)虞がある。よって、本実施形態のガラスセラミックスにおいては、Na2Oの含有量を3%超10%以下の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスセラミックスにおけるNa2Oの含有量は、3.5%以上であることが好ましく、4%以上であることがより好ましく、4.5%以上であることが更に好ましく、また、9%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。
【0035】
<K2O>
本実施形態のガラスセラミックスにおいて、K2Oは、ガラス融液の粘度を低下させ、また、KNO3融液を用いた化学強化処理においてK+イオンとNa+イオンとの交換性を高める成分である。しかしながら、その含有量が5%を超えると、ガラス形成能が低下する虞、及び結晶化させた際に透過率が低下する虞がある。よって、本実施形態のガラスセラミックスにおいては、K2Oの含有量を0%以上5%以下の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスセラミックスにおけるK2Oの含有量は、0.2%以上であることが好ましく、0.7%以上であることがより好ましく、1.0%以上であることが更に好ましく、また、4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが更に好ましい。
【0036】
<ZrO2>
本実施形態のガラスセラミックスにおいて、ZrO2は、均質な結晶化を促進する重要な必須成分である。しかしながら、その含有量が5%を超えると、ガラス融液の粘度が高くなる虞、及び、ガラス形成能が低下する虞がある。一方、含有していないと、結晶化させた際に透明性が低下する虞がある。よって、本実施形態のガラスセラミックスにおいては、ZrO2の含有量を0%超5%以下の範囲とした。同様の観点から、本実施形態のガラスセラミックスにおけるZrO2の含有量は、1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、また、4.5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましい。
【0037】
<Al2O3>
本実施形態のガラスセラミックスにおいて、Al2O3は、少量であってもガラス融液の粘度を著しく高める虞があることが判明した。そこで、本実施形態のガラスセラミックスは、実質的にAl2O3を含有しないものとした。
ここで、本明細書において、「実質的に含有しない」とは、意図して含有させないことを意味する。
【0038】
<その他の成分>
本実施形態のガラスセラミックスには、目的を外れない限り、上述した成分以外のその他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、V2O5、Cr2O3、MnO、MnO2、FeO、Fe2O3、Co2O3、Co3O4、NiO、CuO、MoO3、CeO2、Pr2O3、Nd2O3、Sm2O3、Eu2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びTm2O3等の着色成分が挙げられ、本実施形態のガラスセラミックスは、これらから選択される1種以上の着色成分を、少量(例えば、外割りで合計10モル%以下となるような量)含有することができる。また、その他の成分としては、Sb2O3等の脱泡成分が挙げられ、本実施形態のガラスセラミックスは、かかる脱泡成分を、少量(例えば、外割りで0.5モル%以下となるような量)含有することができる。
なお、本実施形態のガラスセラミックスにおける各成分(SiO2、Li2Oなど)の組成の計算には、上記その他の成分を考慮しないものとする。
【0039】
次に、本実施形態のガラスセラミックスの諸特性について説明する。
【0040】
本実施形態のガラスセラミックスは、上述した通り、透明性を有する。より具体的に、本実施形態のガラスセラミックスは、厚さ1mmにおいて、波長400nmの光に対する透過率が85%以上であることが好ましい。そのため、本実施形態のガラスセラミックスは、例えばモバイル機器の前面ディスプレーなどといった、透明性が求められる部材の作製に適している。
【0041】
本実施形態のガラスセラミックスは、上述した通り、融液状態での粘度が十分に低い。より具体的に、本実施形態のガラスセラミックスは、融液状態において粘度が100dPa・sを示す温度が1200℃以下であることが好ましい。また、本実施形態のガラスセラミックスの融液状態において粘度が100dPa・sを示す温度は、1180℃以下であることがより好ましく、1160℃以下であることが更に好ましい。
なお、ガラスセラミックス等のガラス材料が融液状態である場合には、温度が高いほど粘度が下がる傾向にある。そのため、融液状態において粘度がある値(例えば100dPa・s)を示すときの温度は、一意的に測定されるものである。また、融液状態において粘度が100dPa・sを示す温度は、例えば、ガラスセラミックスの組成を適宜調節することにより、調整することができる。
【0042】
本実施形態のガラスセラミックスは、上述した通り、内部強度(材料そのものの強度)が高い。より具体的に、本実施形態のガラスセラミックスは、Li2SiO3結晶相及びLi2Si2O5結晶相の少なくともいずれかを含むことが好ましい。上記Li2SiO3結晶相及びLi2Si2O5結晶相はいずれも、内部強度(材料そのものの強度)の向上に大きく寄与することができる。
なお、ガラスセラミックスにおける上記Li2SiO3結晶相及び/又はLi2Si2O5結晶相の存在は、X線回折パターンから特定することができる。また、上記Li2SiO3結晶相及び/又はLi2Si2O5結晶相は、ガラスセラミックスの組成(特に、SiO2及びLi2O)や、熱処理等の結晶化の条件を適宜調節することにより、形成させることができる。
【0043】
また、上記内部強度に関し、本実施形態のガラスセラミックスは、ビッカース硬さが600HV以上であることが好ましい。また、本実施形態のガラスセラミックスのビッカース硬さは、630HV以上であることがより好ましく、650HV以上であることが更に好ましい。
なお、ガラスセラミックスのビッカース硬さは、例えば、ガラスセラミックスの組成や、熱処理等の結晶化の条件を適宜調節することにより、調整することができる。
【0044】
また、上記内部強度に関し、本実施形態のガラスセラミックスは、破壊靭性値が1.00MPa・m1/2以上であることが好ましい。また、本実施形態のガラスセラミックスの破壊靭性値は、1.10MPa・m1/2以上であることがより好ましく、1.20MPa・m1/2以上であることが更に好ましい。
なお、ガラスセラミックスの破壊靭性値は、JIS R1607:2015に準拠して測定することができる。また、ガラスセラミックスの破壊靭性値は、例えば、ガラスセラミックスの組成や、熱処理等の結晶化の条件を適宜調節することにより、調整することができる。
【0045】
本実施形態のガラスセラミックスは、表面に圧縮応力層を備えることが好ましい。上述の通り、本実施形態のガラスセラミックスは、イオン交換性が高いため、イオン交換法による化学強化などにより表面に圧縮応力層を形成することで、効果的により高い強度をガラスセラミックスに発現させることができる。
なお、圧縮応力層は、応力値が0MPa超である層を指す。また、ガラスセラミックス表面への圧縮応力層の形成は、例えば、ガラスセラミックスに対し、イオン交換法による化学強化処理を施す、急冷させて表面に歪みを加える等により、達成することができる。
【0046】
また、本実施形態のガラスセラミックスが表面に圧縮応力層を備える場合、当該圧縮応力層は、表面圧縮応力値が400MPa以上であり、圧縮応力深さが50μm以上であることが好ましい。また、本実施形態のガラスセラミックスの表面圧縮応力値は、450MPa以上であることがより好ましく、500MPa以上であることが更に好ましい。同様に、本実施形態のガラスセラミックスの圧縮応力深さは、55μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることが更に好ましい。
なお、表面圧縮応力値は、最表面における応力値を指し、表面応力計を用いて測定することができる。また、圧縮応力深さは、応力値が0MPa超である層の厚みを指し、散乱光光弾性解析装置を用いて測定することができる。また、表面圧縮応力値及び圧縮応力深さは、圧縮応力層の形成条件(例えば、化学強化処理の時間及び温度)を適宜調節することにより、調整することができる。
【0047】
(ガラスセラミックスの製造方法)
次に、本発明の一実施形態のガラスセラミックスの製造方法(「本実施形態の製造方法」と称することがある。)を具体的に説明する。本実施形態の製造方法は、酸化物換算のモル%で、
SiO2:55%以上70%以下、
B2O3:0%超10%以下、
P2O5:0%超5%以下、
Li2O:18%以上30%以下、
Na2O:3%超10%以下、
K2O:0%以上5%以下、及び
ZrO2:0%超5%以下
である組成を有し、実質的にAl2O3を含有しないガラス組成物を調製する工程(ガラス調製工程)と、
前記ガラス組成物に結晶化処理を施し、ガラスセラミックスを得る工程(結晶化工程)と、
を含むことを特徴とする。かかる製造方法によれば、上述した本実施形態のガラスセラミックスを製造することができる。また、本実施形態の製造方法は、必要に応じて、その他の工程(例えば、化学強化工程など)を含んでもよい。
【0048】
<ガラス調製工程>
ガラス調製工程は、所定の組成を有するガラス組成物を調製する工程である。ガラス調製工程では、例えば、上記ガラス組成物(ひいてはガラスセラミックス)に含有される各成分の原料、及び必要に応じて任意に含有されるその他の成分の原料として、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩などを所定の割合で秤量し、十分混合したものをガラス調合原料とする。次いで、このガラス調合原料を、原料等と反応性のない熔融容器(例えば貴金属坩堝)に投入して、電気炉にて1200~1500℃に加熱して熔融し、得られた融液を適時撹拌する。次いで、電気炉で清澄、均質化してから、適当な温度に予熱した金型内に鋳込んだ後、電気炉内で徐冷して歪みを取り除くことで、ガラス組成物を得ることができる。
【0049】
或いは、ガラス調製工程は、ダイレクトプレス法(DP)により所定形状を有する部材に成形することで行うこともできる。より具体的に、上述したようなガラス調合原料を、電気炉にて1200~1500℃に加熱して熔融する。次いで、得られたガラス融液を1200℃以下とした後、所定形状を有する金型に対し、流出パイプ等により流下させる。そして、シャー刃により、或いは金型を真下に急降下させることにより、表面張力でくびれ部を形成させてガラス融液流を分離し、所望質量のガラス融液塊とする。その後、金型内で冷却されつつ、このガラス融液塊をプレスして、所定形状を有するガラス部材(ガラス組成物)を得ることができる。
このようなDPによる成形は、特に、モバイル機器の筐体などといった、比較的大きく複雑な形状を有する部材を作製するのに好適である。
【0050】
上記ガラス組成物の組成(酸化物換算)の具体的な説明は、上述したガラスセラミックスの組成の説明と実質的に同じであるため、省略する。
【0051】
<結晶化工程>
結晶化工程は、上記ガラス組成物に結晶化処理を施し、ガラスセラミックスを得る工程である。結晶化工程では、例えば、上記ガラス組成物を、ガラス転移温度より高く且つ当該ガラス組成物が熔融しない温度域で熱処理することで、結晶が析出し、ガラスセラミックスを得ることができる。なお、熱処理の温度は、より確実に所望のガラスセラミックスを得る観点から、400~700℃であることが好ましい。また、熱処理の時間は、より確実に所望の結晶を析出させる観点から、1~20時間であることが好ましい。加えて、結晶化工程における熱処理としては、透明性を高める観点から、400~500℃の比較的低温域において熱処理を行ったのち、600~700℃の比較的高温域で熱処理を行う、などの多段階熱処理を行うことが好ましい。
【0052】
また、結晶化工程では、上述した熱処理以外に、レーザアニール処理を行うこともできる。
【0053】
或いは、ガラス調製工程として上述したダイレクトプレス法(DP)により所定形状を有する部材に成形する際に、結晶化処理が施されることもある。例えば、DPによる成形の際、400~700℃の温度域における冷却速度が緩やかである場合には、ガラス部材(ガラス組成物)中で結晶が析出し得る。
【0054】
<化学強化工程>
また、本実施形態の製造方法では、結晶化工程で得られたガラスセラミックスに、イオン交換による化学強化処理を施す工程(化学強化工程)を更に行ってもよい。化学強化処理は、加熱されたNaNO3又はKNO3等の融液に上記ガラスセラミックスを浸漬させる処理であり、この処理により、当該ガラスセラミックスの表面付近のLi+イオンやNa+イオンがよりイオン半径の大きなイオンと入れ替わり、こうしてガラスセラミックスの表面に圧縮応力層が形成される。
【0055】
なお、化学強化処理では、表面圧縮応力値及び圧縮応力深さをより大きくする、即ち、一層の化学強化を図る観点から、加熱されたNaNO3の融液に浸漬させたのち、加熱されたKNO3の融液に浸漬させる、多段階浸漬処理を行うことが好ましい。
【0056】
また、化学強化処理では、表面圧縮応力値及び圧縮応力深さをより大きくする、即ち、一層の化学強化を図る観点から、NaNO3又はKNO3等の融液の温度が、360~440℃であることが好ましい。また、表面圧縮応力値の低下を抑制する観点から、化学強化処理における浸漬時間が、24時間以下であることが好ましい。
【0057】
(デバイス)
本発明の一実施形態のデバイスは、上述したガラスセラミックスを用いたことを特徴とする。換言すると、本発明の一実施形態のデバイスは、上述したガラスセラミックスを、一部材として備える。
【0058】
上記デバイスは、典型的には、強度、透明性及び形状自由度の少なくともいずれかが求められる部材(例えば、ディスプレーや筐体の保護部材、前面ディスプレー、光学機器の保護部材など)を備えるデバイスである。上記デバイスとしては、例えば、電子デバイス、光学デバイス等が挙げられる。電子デバイスとしては、ノートPC、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット端末等が挙げられる。また、光学デバイスとしては、カメラ、望遠鏡、プロジェクター、車載カメラ、車載センサー等が挙げられる。
【実施例0059】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
(ガラス組成物の調製)
表1、表2に記載の各成分の原料としてそれぞれに相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩などを、ガラス化した後に100gとなるように秤量し、十分混合して、白金坩堝に投入し、電気炉にて1200~1500℃で1~2時間熔融し、融液を得た。
【0061】
得られた融液について、粘度が100dPa・sを示す温度の測定を、回転円筒法にて行った。具体的に、融液中に白金製の円筒を浸漬させ、円筒を回転させたときに当該円筒の受ける回転力(トルク)から求められる粘度が100dPa・sを示す時の温度を測定した。結果を表1、表2に示す。
なお、上記温度が1200℃を超える例については、融液状態での粘度が不良であると判定して、ガラスを得た後の操作及び評価には進まずに終了した。
【0062】
次いで、上記融液を適時撹拌し、均質化を図り清澄してから、適当な温度に予熱した金型内に鋳込んだ。その後、電気炉内で徐冷して歪みを取り除くことで、ガラス(ガラス組成物)を得た。
なお、ガラス化しなかった例については、品質不良であると判定して、その後の操作及び評価には進まずに終了した。
【0063】
(結晶化処理)
次いで、上記ガラスについて、電気炉にて、700℃以下、1~20時間の熱処理を1段階又は多段階行った(条件を表1、表2に示す)。これにより、ガラス内部に結晶が析出し、ガラスセラミックスを得た。なお、各例における熱処理の条件は、ガラス組成などそれぞれの種々の状況に応じて適宜決定した。
【0064】
得られたガラスセラミックスについて、X線回折装置(株式会社リガク製、「ULTIMA4」)を用いて得られるX線回折パターンから、析出した結晶相の同定を行った。結果を表1、表2に示す。なお、実施例では、概ね、Li
2SiO
3結晶相及び/又はLi
2Si
2O
5結晶相のみの析出が確認されたが、比較例の中には、Li
2SiO
3結晶相及びLi
2Si
2O
5結晶相以外の結晶相の析出が確認された例もあった。参考までに、実施例1のガラスセラミックスのX線回折パターンを
図1に示し、実施例2のガラスセラミックスのX線回折パターンを
図2に示す。
【0065】
また、得られたガラスセラミックスの透明性について、分光光度計(株式会社日立製、「U-4100」)を用い、厚さ1mmにおいて波長400nmの光に対する透過率を測定し、以下の基準に従って評価した。結果を表1、表2に示す。
○:透過率が85%以上
×:透過率が85%未満
参考までに、実施例2のガラスセラミックスの厚さ1mmにおける、波長200~800nmの光に対する透過スペクトルを
図3に示す。
なお、透過率が85%未満である例については、透明性が不良であると判定して、その後の操作及び評価には進まずに終了した。
【0066】
また、得られたガラスセラミックスのビッカース硬さについて、ビッカース硬度計(株式会社マツザワ製、「MMT-X3」)を用いて測定した。結果を表1、表2に示す。かかる測定値が大きいほど、内部強度(材料そのものの強度)が高いことを示す。
【0067】
また、得られたガラスセラミックスの破壊靭性値について、JIS R1607:2015「ファインセラミックスの室温破壊靭性試験方法」に準拠したIF法を用いて測定した。結果を表1、表2に示す。かかる測定値が大きいほど、内部強度(材料そのものの強度)が高いことを示す。
【0068】
(化学強化処理)
次いで、上記ガラスセラミックスについて、化学強化処理を施した。具体的に、360~440℃に加熱されたNaNO3の融液に24時間以下浸漬させたのち、360~440℃に加熱されたKNO3の融液に24時間以下浸漬させた(条件を表1、表2に示す)。これにより、ガラスセラミックスの表面に圧縮応力層を形成した。なお、各例における化学強化処理の条件は、ガラス組成や、前段で行った熱処理の条件などそれぞれの種々の状況に応じて適宜決定した。
【0069】
圧縮応力層が形成されたガラスセラミックスについて、表面圧縮応力値及び圧縮応力深さを測定した。具体的に、表面圧縮応力値の測定には、ガラス表面応力計(有限会社折原製作所製、「FSM-6000LEUV」)を用いた。また、圧縮応力深さの測定には、散乱光光弾性解析装置(有限会社折原製作所製、「SLP-2000」)を用いた。結果を表1、表2に示す。参考までに、実施例2のガラスセラミックスについて上記のガラス表面応力計及び散乱光光弾性解析装置により測定された値から、合成ソフトウェア(有限会社折原製作所製、「Pmc」)を用いて計算された残留応力プロファイルを、
図4に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
表1より、実施例1~20に係るガラスセラミックスは、融液状態での粘度が十分に低く、透明性を有し、内部強度(材料そのものの強度)が高いことが分かる。更に、実施例1~20に係るガラスセラミックスは、化学強化により表面圧縮応力値が400MPa以上の圧縮応力層を形成でき、即ち、イオン交換による効果的な化学強化が可能であることも分かる。
【0073】
これに対し、表2より、比較例1~15においては、ガラスセラミックスの作製に当たってそもそもガラス化できないか、又はガラス化できたとしても、融液状態での粘度、透明性、及びイオン交換による効果的な化学強化のいずれかを達成できていないことが分かる。
本発明によれば、融液状態での粘度が十分に低く、イオン交換による効果的な化学強化が可能で且つ内部強度も高い、透明性のガラスセラミックス、及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上述したガラスセラミックスを用いたデバイスを提供することができる。