(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016152
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 1/30 20060101AFI20230126BHJP
H05K 3/20 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
B41M1/30 Z
H05K3/20 C
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120273
(22)【出願日】2021-07-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】灘 秀明
【テーマコード(参考)】
2H113
5E343
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA04
2H113BA05
2H113BA10
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB22
2H113BB32
2H113BC02
2H113CA17
2H113DA53
2H113DA54
2H113DA57
2H113DA58
2H113EA07
2H113FA04
2H113FA10
5E343AA03
5E343AA12
5E343AA33
5E343BB14
5E343BB21
5E343BB62
5E343BB72
5E343DD56
5E343FF08
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】 不良品の発生が抑えられ、材料ロスも少ない厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の厚膜印刷柄付きフィルムロール5の製造方法は、樹脂製で長尺の印刷用基材フィルム1の一方の面に、複数の抜き穴2aが形成されている樹脂製で長尺のマスキングフィルム2が貼合されている貼合物を用意する工程と、印刷用基材フィルム1とマスキングフィルム2との貼合物に対して、マスキングフィルム2の各々の抜き穴2a内にインキ32を充填してインキ膜31を形成する工程と、インキ膜31を乾燥させて、厚さ10~400μmの厚膜印刷柄層3とする工程と、印刷用基材フィルム1、マスキングフィルム2および厚膜印刷柄層3を備えた積層体4をロール状に巻き取る工程と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製で長尺の印刷用基材フィルムの一方の面に、複数の抜き穴が形成されている樹脂製で長尺のマスキングフィルムが貼合されている貼合物を用意する工程と、
前記印刷用基材フィルムと前記マスキングフィルムとの貼合物に対して、前記マスキングフィルムの各々の前記抜き穴内にインキを充填してインキ膜を形成する工程と、
前記インキ膜を乾燥させて、厚さ10~400μmの厚膜印刷柄層とする工程と、
前記印刷用基材フィルム、前記マスキングフィルムおよび前記厚膜印刷柄層を備えた積層体をロール状に巻き取る工程と、を備えた厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法。
【請求項2】
前記印刷用基材フィルムと前記マスキングフィルムとの貼合物を用意する工程が、
前記抜き穴を未形成の前記マスキングフィルムを単独で用い、これを貫通するように打抜いて、複数の前記抜き穴を形成する工程と、
前記印刷用基材フィルムの一方の面に、打ち抜かれた前記マスキングフィルムを貼合する工程と、を備えている請求項1の厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法。
【請求項3】
前記印刷用基材フィルムと前記マスキングフィルムとの貼合物を用意する工程が、
樹脂製で長尺の打抜用基材フィルムの一方の面に、前記抜き穴が未形成の前記マスキングフィルムを貼合する工程と、
前記打抜用基材フィルムと前記マスキングフィルムとの貼合物について、全て貫通するように打抜いて、複数の前記抜き穴を形成する工程と、
前記印刷用基材フィルムの一方の面に、打ち抜かれた前記貼合物を前記打抜用基材フィルムが外側になるように貼合する工程と、
最後に前記打抜用基材フィルムを剥離する工程と、を備えている請求項1の厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法。
【請求項4】
前記印刷用基材フィルムが、前記マスキングフィルムの打抜きでも使用する打抜兼印刷用基材フィルムであり、
前記印刷用基材フィルムと前記マスキングフィルムとの貼合物を用意する工程が、
前記打抜兼印刷用基材フィルムの一方の面に、抜き穴を未形成の樹脂製で長尺のマスキングフィルムを貼合する工程と、
前記打抜兼印刷用基材フィルムと前記マスキングフィルムとの貼合物について、前記マスキングフィルムのみを打抜いて、複数の前記抜き穴を形成する工程と、を備えている請求項1の厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法。
【請求項5】
前記マスキングフィルムが前記印刷用基材フィルムに対して離型性を有して貼合されている請求項1~4のいずれかの厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法。
【請求項6】
前記積層体をロール状に巻き取る工程の前に、
さらに前記厚膜印刷柄層を前記印刷用基材フィルムから転写可能な被転写基材フィルムで前記マスキングフィルムおよび前記厚膜印刷柄層を覆って前記積層体とする工程を備えている請求項1~4のいずれかの厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法。
【請求項7】
前記被転写基材フィルムが、フォーミング用基材フィルムである請求項6の厚膜印刷柄付きフィルムロール の製造方法。
【請求項8】
前記被転写基材フィルムが、エキスパンド用基材フィルムである請求項6の厚膜印刷柄付かである厚膜印刷柄付きフィルムロール の製造方法。
【請求項9】
前記積層体をロール状に巻き取る工程の前に、
さらに前記厚膜印刷柄層に対して離型性を有する保護フィルムで前記マスキングフィルムおよび前記厚膜印刷柄層を覆って前記積層体とする工程を備えている請求項1~5のいずれかの厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法。
【請求項10】
前記厚膜印刷柄層が、導電性を有している請求項1~9のいずれかである厚膜印刷柄付きフィルムロール の製造方法。
【請求項11】
前記厚膜印刷柄層が、放熱性を有している請求項1~9のいずれかである厚膜印刷柄付きフィルムロール の製造方法。
【請求項12】
前記厚膜印刷柄層が、接着性を有している請求項1~11のいずれかである厚膜印刷柄付きフィルムロール の製造方法。
【請求項13】
樹脂製で長尺の印刷用基材フィルムと、
前記印刷用基材フィルムの一方の面に貼合され、複数の抜き穴が形成されている樹脂製で長尺のマスキングフィルムと、
前記マスキングフィルムの各々の前記抜き穴内に充填されている厚さ10~400μmの厚膜印刷柄層と、を備えた積層体がロール状に巻き取られてなる厚膜印刷柄付きフィルムロール。
【請求項14】
前記印刷用基材フィルムが、前記マスキングフィルムとの貼合状態での前記マスキングフィルムの打抜きでも使用した打抜兼印刷用基材フィルムである請求項13の厚膜印刷柄付きフィルムロール。)
【請求項15】
前記マスキングフィルムが前記印刷用基材フィルムに対して離型性を有して貼合されている請求項13または請求項14のいずれかの厚膜印刷柄付きフィルムロール。
【請求項16】
前記厚膜印刷柄層を前記印刷用基材フィルムから転写可能な被転写基材フィルムで前記マスキングフィルムおよび前記厚膜印刷柄層が覆われている請求項13~15のいずれかの厚膜印刷柄付きフィルムロール。
【請求項17】
前記厚膜印刷柄層に対して離型性を有する保護フィルムで前記マスキングフィルムおよび前記厚膜印刷柄層が覆われている請求項13~15のいずれかの厚膜印刷柄付きフィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不良品の発生が抑えられ、材料ロスも少ない、厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状のフレキシブルなタッチセンサなどの電気部品シートを使った電気製品が製造されている。例えば、特許文献1には、射出成形時にシート状のタッチセンサを熱可塑性樹脂の成形体と一体化して、タッチセンサ付きの部品モジュールを製造する技術が知られている。
例えば、特許文献1、2に記載の部品モジュールでは、タッチセンサ回路などの機能を発揮する機能層が基材フィルムに形成された電気部品シートを使い、これを成形体の裏面形状に合わせてフォーミングした後、フレキシブルプリント配線基板などを実装し、金型を用いてインサート成形することにより成形体と一体化されている。
特許文献1、2で使用される電気部品シートの製造方法においては、基材フィルム上に形成される機能層、とくに導電性インキを厚膜印刷で印刷して形成される層は、スクリーン印刷などで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014―35806号公報
【特許文献2】特開2019―028928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スクリーン印刷による厚膜印刷には、以下のような課題があった。
すなわち、スクリーン印刷では、
図14に示すように、基材フィルム105の上にスクリーン版100(スクリーンメッシュ100aが乳剤100bで一部を除き被覆され、当該乳剤100bで被覆されていないに開口部100cが印刷パターン1-4に対応している。)を配置し、(図示しない)ドクターによってスクリーン版100上にインキ32を均一に広く延ばすとともに、開口部100cにおいてスクリーンメッシュ100aの孔部分にインキ32を充填した後、スキージ33でスクリーン版100の端からインキ32を基材フィルム105に順次押し付け、スキージ33によって押し付けられた版が基材フィルム105に触れ、離れることにより開口部100cにおいてスクリーンメッシュ100aの孔部分に充填されていたインキ32が基材フィルム105に転写される。つまり、スキージ33によって押し付けられた部分だけスクリーン版100が撓んで基材フィルム105に接触しているものの、接触部分周囲へのインキ32の流動を妨げるものはない。また、印刷パターン104に対応する開口部100c内にも、スクリーンメッシュ100aが存在する。そのため、インキ32の滲みやガタつきが発生する厚膜印刷柄層の印刷パターン104となってしまう。
また、インキ膜の乾燥時に、インキ膜の収縮によって基材フィルム105にも歪みが発生してしまう。
さらに、スクリーン版100には版枠101があるので、スキージ33の移動が版枠101により妨げられ、印刷不可エリア102が発生し、材料ロスとなる。
【0005】
また、厚膜印刷柄層の形成された基材フィルムは、ロールに巻き取るときにも問題が発生する
すなわち、厚膜印刷柄層の形成領域と非形成領域とで凹凸が発生する。その結果、厚膜印刷柄層からなる凸部の形状が、巻き取りで重なった基材フィルムに転写され、痕が残る。
また、厚膜印刷柄層からなる凸部に対してせん断力が発生し、厚膜印刷柄層が剥離したり、傷付いたりする。
さらに、ロールの幅方向に凹凸が存在するので、幅方向に均一にテンションをかけて巻き取るテンションコントロールが困難である。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決し、不良品の発生が抑えられ、材料ロスも少ない厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法は、樹脂製で長尺の印刷用基材フィルムの一方の面に、複数の抜き穴が形成されている樹脂製で長尺のマスキングフィルムが貼合されている貼合物を用意する工程と、印刷用基材フィルムとマスキングフィルムとの貼合物に対して、マスキングフィルムの各々の抜き穴内にインキを充填してインキ膜を形成する工程と、インキ膜を乾燥させて、厚さ10~400μmの厚膜印刷柄層とする工程と、印刷用基材フィルム、マスキングフィルムおよび厚膜印刷柄層を備えた積層体をロール状に巻き取る工程と、を備えている。
【0009】
そして、このような製造方法で得られる厚膜印刷柄付きフィルムロールは、樹脂製で長尺の印刷用基材フィルムと、印刷用基材フィルムの一方の面に貼合され、複数の抜き穴が形成されている樹脂製で長尺のマスキングフィルムと、マスキングフィルムの各々の抜き穴内に充填されている厚さ10~400μmの厚膜印刷柄層と、を備えた積層体がロール状に巻き取られてなるものである。
【0010】
上記構成では、厚膜印刷柄層を形成する際にスクリーン版の代わりにマスキングフィルムを用いる。そのため、マスキングフィルムと印刷用基材フィルムとの間に隙間が存在せず、またスクリーンメッシュも存在しないので、インキの滲みやガタつきの少ない厚膜印刷柄層を得ることができる。また、インキ膜の乾燥時に印刷用基材フィルム及びマスキングフィルムに収縮応力が発生しても、マスキングフィルムの抜き穴内にインキ膜が存在しているため、基材収縮が抑制される。さらに、マスキングフィルムにはスクリーン版のように版枠がないので、印刷不可エリアが発生せず、材料ロスも少ない。
【0011】
また、マスキングフィルムの抜き穴内を厚膜印刷柄層が埋めた状態で巻き取るので、厚膜印刷柄層の形成領域と非形成領域とで凹凸が発生しない。その結果、厚膜印刷柄層からなる凸部の形状が、巻き取りで重なった印刷用基材フィルムに転写されることがない。また、厚膜印刷柄層からなる凸部に対してせん断力が発生せず、厚膜印刷柄層が剥離したり、傷付いたりすることがない。さらに、ロールの幅方向に凹凸が存在しないので、幅方向に均一にテンションをかけて巻き取るテンションコントロールが容易である。
【0012】
1つの態様として、上述した印刷用基材フィルムとマスキングフィルムとの貼合物を用意する工程が、抜き穴を未形成のマスキングフィルムを単独で用い、これを貫通するように打抜いて、複数の抜き穴を形成する工程と、印刷用基材フィルムの一方の面に、打ち抜かれたマスキングフィルムを貼合する工程と、を備えていてもよい。
上記構成では、マスキングフィルム2を単体で打抜くだけなので、工程が簡単で、材料の品数も少なくて済む。
【0013】
1つの態様として、上述した印刷用基材フィルムとマスキングフィルムとの貼合物を用意する工程が、樹脂製で長尺の打抜用基材フィルムの一方の面に、抜き穴が未形成のマスキングフィルムを貼合する工程と、打抜用基材フィルムとマスキングフィルムとの貼合物について、全て貫通するように打抜いて、複数の抜き穴を形成する工程と、印刷用基材フィルムの一方の面に、打ち抜かれた貼合物を打抜用基材フィルムが外側になるように貼合する工程と、最後に打抜用基材フィルムを剥離する工程と、を備えていてもよい。
上記構成では、マスキングフィルムと打抜用基材フィルムとの貼合によって打抜き対象が厚くなっているので、打抜き時および印刷用基材フィルムとの貼合までの搬送時にマスキングフィルムの変形が起こりにくく、正確な抜き穴が得られる。
【0014】
1つの態様として、印刷用基材フィルムが、マスキングフィルムの打抜きでも使用する打抜兼印刷用基材フィルムであり、上述した印刷用基材フィルムとマスキングフィルムとの貼合物を用意する工程が、打抜兼印刷用基材フィルムの一方の面に、抜き穴を未形成の樹脂製で長尺のマスキングフィルムを貼合する工程と、打抜兼印刷用基材フィルムとマスキングフィルムとの貼合物について、マスキングフィルムのみを打抜いて、複数の抜き穴を形成する工程と、を備えていてもよい。
そして、このような製造方法で得られる厚膜印刷柄付きフィルムロールは、印刷用基材フィルムが、マスキングフィルムとの貼合状態でのマスキングフィルムのみの打抜きでも使用した打抜兼印刷用基材フィルムであるものである。
上記構成でも、マスキングフィルムと打抜兼印刷用基材フィルムとの貼合によって厚くなっているので、打抜きから印刷までのマスキングフィルムに変形が起こりにくく、正確な抜き穴が得られる。加えて、打抜兼印刷用基材フィルムが印刷用基材フィルムと打抜用基材フィルムの機能を兼ねているので、工程が簡単で、材料の品数も少なくて済む。
【0015】
1つの態様として、マスキングフィルムが印刷用基材フィルムに対して離型性を有して貼合されていてもよい。
上記構成によれは、ロールから巻き出した後に、マスキングフィルムを剥離除去して川下の工程を行なうことができる。
【0016】
1つの態様として、本発明の厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法は、積層体をロール状に巻き取る工程の前に、さらに厚膜印刷柄層を印刷用基材フィルムから転写可能な被転写基材フィルムでマスキングフィルムおよび厚膜印刷柄層を覆って積層体とする工程を備えていてもよい。
そして、このような製造方法で得られる厚膜印刷柄付きフィルムロールは、厚膜印刷柄層を印刷用基材フィルムから転写可能な非印刷用フィルムでマスキングフィルムおよび厚膜印刷柄層が覆われているものである。
上記構成によれば、厚膜印刷柄層を印刷する基材として不適であるがロールか巻き出した後の川下工程での加工に適した非印刷用フィルムに、印刷用基材フィルム上から厚膜印刷柄層を転写することができる。例えば、被転写基材フィルムが、立体形状に成形するのに適したフォーミング用基材フィルムや引き伸ばして使用するのに適したエキスパンド用基材フィルムである場合などである。
【0017】
1つの態様として、本発明の厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法は、積層体をロール状に巻き取る工程の前に、さらに厚膜印刷柄層に対して離型性を有する保護フィルムでマスキングフィルムおよび厚膜印刷柄層を覆って積層体とする工程を備えていてもよい。
そして、このような製造方法で得られる厚膜印刷柄付きフィルムロールは、厚膜印刷柄層に対して離型性を有する保護フィルムで、マスキングフィルムおよび厚膜印刷柄層が覆われている。
上記構成によれば、保護フィルムを設けてロールとするので、積層体の表面の平滑性がさらに向上する。また、厚膜印刷柄層が保護されて傷つかない。
【0018】
なお、上記した厚膜印刷柄層は、導電性を有していてもよい。また、厚膜印刷柄層が、放熱性を有していてもよい。さらには、厚膜印刷柄層が、接着性を有していてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法は、不良品の発生が抑えられ、材料ロスも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法における印刷および巻取り工程の一例を示す図。
【
図2】第1実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの巻出し後の工程の一例を示す図。
【
図3】第1実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法における打抜き工程の一例を示す図。
【
図4】第2実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法における打抜き工程の一例を示す図。
【
図5】第3実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法における打抜き工程の一例を示す図。
【
図6】第4実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法における巻取り前と巻取り状態の一例を示す図。
【
図7】第4実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの巻出し後の工程の一例を示す図。
【
図8】第4実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの巻出し後の工程の一例を示す図。
【
図9】第5実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法における巻取り前と巻取り状態の一例を示す図。
【
図10】第5実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの巻出し後の工程の一例を示す図。
【
図11】第5実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの巻出し後の工程の一例を示す図。
【
図12】第6実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法における巻取り前と巻取り状態の一例を示す図。
【
図13】第6実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの巻出し後の工程の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法について、図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
<第1実施形態>
(1)厚膜印刷柄付きフィルムロール5の製造方法
図1は、本発明の第1実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造方法における印刷および巻取り工程の一例を示す図である。なお、
図1(a)~(c)は部分断面図である。
第1実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールの製造工程は、最初に、
図1(a)に示すように、樹脂製で長尺の印刷用基材フィルム1の一方の面に、複数の抜き穴2aが形成されている樹脂製で長尺のマスキングフィルム2が貼合されている貼合物を用意する。
【0023】
印刷用基材フィルム1は、後述する厚膜印刷柄層3を印刷できる面を有する樹脂フィルムである。
印刷用基材フィルム1に用いる樹脂材料としては、後述するインキ膜31形成時の耐溶剤性、インキ膜31の乾燥時の耐熱性に優れたものを用いる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリレート系ポリマー、ポリエステル、ポリイミドなどが挙げられる。
印刷用基材フィルム1の厚みは、10~400μmとすることができる。
【0024】
マスキングフィルム2は、印刷用基材フィルム1にインキが載る部分とインキが載らなない部分とを分けるフィルムである。マスキングフィルム2は抜き穴2aを除いて印刷用基材フィルム1を被覆しているため、貫通する抜き穴2aにおいてのみ印刷用基材フィルム1にインキを載せることができる。
【0025】
マスキングフィルム2における複数の抜き穴2aの形成についてさらに詳しく説明すると、
図3に示すように、抜き穴2aが未形成のマスキングフィルム2を単独で用い、これを貫通するように打抜いて形成する。このとき、抜き穴2aは、任意のパターンで形成できる。打抜き手段としては、一般的には平盤状またはロール状の抜き型61を用いて型抜きを行なうが、レーザー光を照射してカットするレーザーカットを用いることもできる。
図3に示す例では、マスキングフィルム2の上から目的の形状の刃62を有する抜き型61を押し当てて(
図3(a)参照)、任意の形状を打ち抜いている(
図3(b)参照)。このとき、抜き型61の刃62がマスキングフィルム2を貫通している(所謂オールカット)。
【0026】
マスキングフィルム2に用いる樹脂材料としては、後述するインキ膜31形成時の耐溶剤性、インキ膜31の乾燥時の耐熱性だけでなく、抜き穴2a形成時の寸法安定性に優れたものを用いる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリレート系ポリマー、ポリエステル、ポリイミドなどが挙げられる。
マスキングフィルム2の厚みは、後述するインキ膜の印刷膜厚(ウエット膜厚)に相当する。インキ膜の印刷膜厚(ウエット膜厚)は、乾燥収縮分を考慮して後述する厚膜印刷柄層の乾乾燥膜厚(ドライ膜厚)よりも厚めとする。
【0027】
本実施形態におけるマスキングフィルム2は、印刷用基材フィルム1に対して離型性を有して貼合されている。すなわち、貼合には、粘着層(図示せず)が用いられるが、マスキングフィルム2を容易に剥離可能なものである(
図2(a)(b)参照)。なお、粘着層は、マスキングフィルム2の剥離時に、マスキングフィルム2とともに全て剥離されてもよいし、印刷用基材フィルム1側に全て残ってもよい。
【0028】
次に、
図1(b)に示すように、印刷用基材フィルム1とマスキングフィルム2との貼合物に対して、マスキングフィルム2の各々の抜き穴2a内にインキを充填してインキ膜31を形成する。
具体的には、テーブル上に貼合物を載置し、マスキングフィルム2上にあるインキ32を載せ、スキージ33をマスキングフィルム2に密着させ水平方向にスライドすることにより、マスキングフィルム2上にあるインキをマスキングフィルム2の抜き穴2aに押し込み、抜き穴2a内に露出する印刷用基材フィルム1上に載せる(平面印刷)。インキの抜き穴2aへの充填と同時に、インキが印刷用基材フィルム1上に載る。スキージがマスキングフィルム2の抜き穴2a上を通過することにより、マスキングフィルム2の厚みで抜き穴2a内のインキを擦り切る。スキージ33のスライド移動は、インキ32をより充填できるようにするために、同じ方向に2回行なってもよいし、往復させてもよい。
【0029】
また、インキの充填は、上記平面印刷に代えて、曲面印刷であってもよい。すなわち、回転するロールに沿って印刷用基材フィルムとマスキングフィルムとの貼合物を送り、固定されたスキージを回転するロール上の貼合物に接触させる。回転するロールに巻かれた貼合物上にインキを載せ、固定されたスキージにてマスキングフィルム上にあるインキをマスキングフィルムの抜き穴に押し込むことによって、インキを抜き穴内に露出する印刷用基材フィルム上に載せる。
【0030】
次に、
図1(c)に示すように、インキ膜31を乾燥させて、厚さ10~400μmの厚膜印刷柄層3とする。
乾燥手段は、熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。また、その他の公知の乾燥手段を用いることもできる。
なお、乾燥収縮によって1回の充填・乾燥でインキを抜き穴2aに充填しきれない場合には、充填・乾燥を2回以上繰り返してもよい。
【0031】
厚膜印刷柄層3は、様々な機能を有することが可能である。例えば、導電性を有するものとすることができる。逆に、厚膜印刷柄層3は、絶縁性を有するものであってもよい。また、厚膜印刷柄層3は、放熱性を有するものであってもよい。さらに、厚膜印刷柄層3は、接着性を有するものであってもよく、前述の導電性、絶縁性や放熱性も併せて有していてもよい。また、厚膜印刷柄層3は、その他の公知の特性を有するものでもよい。
【0032】
なお、厚膜印刷柄層3の厚みが10μmに満たないと、厚膜印刷柄層3が上記したような各種機能を十分に果たせなくなくなる。厚膜印刷柄層3の厚みが400μmを超えると、インキ膜31の乾燥で割れが発生しやすくなり、また抜き穴2a内にインキを充填する際に充填不足が発生しやすくなるという問題が生じる。より好ましくは、20~200μmである。さらに好ましくは、30~100μmである。
また、
【0033】
最後に、
図1(d)に示すように、印刷用基材フィルム1、マスキングフィルム2および厚膜印刷柄層3を備えた積層体4をロール状に巻き取る。
積層体4の巻取りは、印刷用基材フィルム1側を外側にしてもよいし、マスキングフィルム2および厚膜印刷柄層3側を外側にしてもよい。
【0034】
(2)厚膜印刷柄付きフィルムロール5
以上のようにして得られた厚膜印刷柄付きフィルムロール5は、印刷用基材フィルム1と、マスキングフィルム2と、厚膜印刷柄層3と、を備えた積層体4がロール状に巻き取られてなるものである(
図1(d)参照)。
印刷用基材フィルム1は、長尺の樹脂製フィルムである。マスキングフィルム2も、長尺の樹脂製フィルムである。マスキングフィルム2は、印刷用基材フィルム1の一方の面に離型性を有して貼合され、複数の抜き穴2aが形成されている。厚膜印刷柄層3は、厚さ10~400μmで、マスキングフィルム2の各々の抜き穴2a内に充填されている。
【0035】
このように構成することで、厚膜印刷柄層3を形成する際に、従来のスクリーン版の代わりに用いたマスキングフィルム2と印刷用基材フィルム1との間に隙間が存在しないので、インキの滲みやガタつきの少ない厚膜印刷柄層3を得ることができる。また、インキ膜31の乾燥時に印刷用基材フィルム1及びマスキングフィルム2に収縮応力が発生しても、マスキングフィルム2の抜き穴2a内にインキ膜31が存在しているため、基材収縮が抑制される。さらに、マスキングフィルム2にはスクリーン版100(
図14参照)のように版枠101がないので、印刷不可エリア102が発生せず、材料ロスも少ない。
【0036】
また、マスキングフィルム2の抜き穴2a内を厚膜印刷柄層3が埋めた状態で巻き取るので、厚膜印刷柄層3の形成領域と非形成領域とで凹凸が発生しない。その結果、厚膜印刷柄層3からなる凸部の形状が、巻き取りで重なった印刷用基材フィルム1に転写される、つまり凸部の痕が残ることがない。また、厚膜印刷柄層3からなる凸部に対してせん断力が発生せず、厚膜印刷柄層3が剥離したり、傷付いたりすることがない。さらに、ロールの幅方向に凹凸が存在しないので、幅方向に均一にテンションをかけて巻き取るテンションコントロールが容易である。
【0037】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法について、
図4を用いて説明する。なお、
図4(a)~(d)は部分断面図である。
第2実施形態は、印刷用基材フィルム1とマスキングフィルム2との貼合物を用意する工程が、第1実施形態と異なり、以下のようになるものである。
すなわち、最初に、
図4(a)に示すように、樹脂製で長尺の打抜用基材フィルム6の一方の面に、抜き穴2aが未形成のマスキングフィルム2を貼合する。
【0038】
打抜用基材フィルム6は、マスキングフィルム2との積層によって、マスキングフィルム2の寸法安定性を向上させる樹脂フィルムである。とくに厚膜印刷柄層3が薄いためにマスキングフィルム2を薄くせざるを得ないときに用いるのが好ましい。
【0039】
打抜用基材フィルム6に用いる樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリレート系ポリマー、ポリエステル、ポリイミドなどが挙げられる。
打抜用基材フィルム6の厚みは、25~200μmとすることができる。
【0040】
本実施形態における打抜用基材フィルム6は、マスキングフィルム2に対して離型性を有して貼合されている。すなわち、貼合には、粘着層(図示せず)が用いられるが、打抜用基材フィルム6を容易に剥離可能なものである。なお、粘着層は、打抜用基材フィルム6の剥離時に、打抜用基材フィルム6とともに全て剥離されてもよいし、マスキングフィルム2側に全て残ってもよい。
【0041】
次に、
図4(b)に示すように、打抜用基材フィルム6とマスキングフィルム2との貼合物について、全て貫通するように打抜いて、複数の抜き穴2aを形成する。
【0042】
次いで、
図4(c)に示すように、印刷用基材フィルム1の一方の面に、打ち抜かれた貼合物を打抜用基材フィルム6が外側になるように貼合する。
【0043】
最後に、
図4(d)に示すように、打抜用基材フィルム6を剥離する。
【0044】
このような製造方法で得られる厚膜印刷柄付きフィルムロール5は、第1実施形態と同様に、印刷用基材フィルム1と、マスキングフィルム2と、厚膜印刷柄層3とを備えた積層体4がロール状に巻き取られてなるものである。
【0045】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。
【0046】
このように構成することで、マスキングフィルム2と打抜用基材フィルム6との貼合によって打抜き対象が厚くなっているので、打抜き時および印刷用基材フィルムとの貼合までの搬送時にマスキングフィルム2の変形が起こりにくく、正確な抜き穴が得られる。
【0047】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法について、
図5を用いて説明する。なお、
図5(a)~(c)は部分断面図である。
第3実施形態は、前述の印刷用基材フィルム1が、マスキングフィルム2の打抜きでも使用する打抜兼印刷用基材フィルム7であり、前述の印刷用基材フィルム1とマスキングフィルム2との貼合物を用意する工程が、第1実施形態と異なり、以下のようになるものである。
すなわち、最初に、
図5(a)に示すように、打抜兼印刷用基材フィルム7の一方の面に、抜き穴2aを未形成の樹脂製で長尺のマスキングフィルム2を貼合する。
【0048】
打抜兼印刷用基材フィルム7は、印刷用基材フィルムと打抜用基材フィルムの機能を兼用する樹脂フィルムである。
【0049】
打抜兼印刷用基材フィルム7に用いる樹脂材料としては、インキ膜31形成時の耐溶剤性、インキ膜31の乾燥時の耐熱性に優れるだけでなく、抜き穴2a形成時のマスキングフィルム2の寸法安定性を向上させるものを用いる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリレート系ポリマー、ポリエステル、ポリイミドなどが挙げられる。
打抜兼印刷用基材フィルム7の厚みは、50~200μmとすることができる。
【0050】
次に、
図5(b),
図5(c)に示すように、打抜兼印刷用基材フィルム7とマスキングフィルム2との貼合物について、マスキングフィルム2のみを打抜いて(所謂ハーフカット)、複数の抜き穴2aを形成する。
【0051】
このような製造方法で得られる厚膜印刷柄付きフィルムロール5は、打抜兼印刷用基材フィルム7と、マスキングフィルム2と、厚膜印刷柄層3とを備えた積層体4がロール状に巻き取られてなるものである。第1実施形態とは、印刷用基材フィルム1に代えて打抜兼印刷用基材フィルム7を用いる点が異なる。
【0052】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。
【0053】
このように構成することで、マスキングフィルム2と打抜兼印刷用基材フィルム7との貼合によって厚くなっているので、打抜きから印刷までマスキングフィルムに変形が起こりにくく、正確な抜き穴が得られる。加えて、打抜兼印刷用基材フィルムが印刷用基材フィルムと打抜用基材フィルムの機能を兼ねているので、工程が簡単で、材料の品数も少なくて済む。
【0054】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法について、
図6を用いて説明する。なお、
図6(a)は部分断面図である。
第4実施形態は、前述の積層体4をロール状に巻き取る工程の前に、さらに厚膜印刷柄層3を印刷用基材フィルム1から転写可能なフォーミング用基材フィルム8A(被転写基材フィルム8の一例)でマスキングフィルム2および厚膜印刷柄層3を覆って積層体4とする工程(
図6(a)参照)を備えているものである。
【0055】
このような製造方法で得られる厚膜印刷柄付きフィルムロール5は、第1実施形態と同様に、印刷用基材フィルム1と、マスキングフィルム2と、厚膜印刷柄層3とを備えた積層体4がロール状に巻き取られてなるものである(
図6(b)参照)が、本実施形態では、さらに積層体4がフォーミング用基材フィルム8Aを備えている。フォーミング用基材フィルム8Aは、マスキングフィルム2および厚膜印刷柄層3を覆っている。
【0056】
フォーミング用基材フィルム8Aは、マスキングフィルム2に対して離型性を有して貼合されている。また、厚膜印刷柄層3は、印刷用基材フィルム1に対してよりもフォーミング用基材フィルム8Aに対して高い密着性を有して貼合されている。すなわち、厚膜印刷柄付きフィルムロール5から積層体4(
図7(a)参照)を再び巻き出してマスキングフィルム2をフォーミング用基材フィルム8Aから剥離する際に、フォーミング用基材フィルム8A側に厚膜印刷柄層3が残る(
図7(b)参照)。
なお、積層体4各層の貼合には、それぞれ粘着力が適宜調整された粘着層(図示せず)が用いられるが、マスキングフィルム2とフォーミング用基材フィルム8Aとの間の粘着層は、マスキングフィルム2のフォーミング用基材フィルム8Aからの剥離時に、マスキングフィルム2とともに全て剥離されてもよいし、フォーミング用基材フィルム8A側に全て残ってもよい。
【0057】
フォーミング用基材フィルム8Aは、厚膜印刷柄層3を印刷する基材として不適であるがロールか巻き出した後のフォーミング工程(川下工程の一例)での加工に適した樹脂フィルムである。
フォーミングは、例えば、厚膜印刷柄層3が転写されたフォーミング用基材フィルム8A(以下、被フォーミング材85という)を加熱軟化した後(
図8(a)参照)、被フォーミング材85を立体形状の治具83に相対的に押し付けることにより被フォーミング材85を治具83の形状に沿わせる(
図8(b)参照)。冷却後は、フォーミングされた被フォーミング材85を治具83から取り除く(
図8(c)参照)。なお、フォーミングの際には、熱成形だけでなく、真空成形や圧空成形を組み合わせてもよい。
図8についてさらに詳しく例示すると、下記のようになる。すなわち、
図8(a)に示すように、被フォーミング材85を上部チャンバー81、下部チャンバー82で挟み、上部チャンバー81と被フォーミング材85との間の空間、下部チャンバー82と被フォーミング材85との間の空間からポンプ84にて真空引きする。このとき、上部チャンバー81内に設けられているIRヒーター86によって被フォーミング材85は加熱軟化されている。
また、
図8(b)に示すように、下部チャンバー82と被フォーミング材85との間の空間に設けられ、治具83を載せたリフトテーブル87を上昇させ、加熱軟化された被フォーミング材85に押し付ける同時に、上部チャンバー81と被フォーミング材85との間の空間へ真空ポンプ84によって空気を送りこみ、加熱軟化された被フォーミング材85を治具83に押し付ける。
【0058】
フォーミング用基材フィルム8Aに用いる樹脂材料としては、熱成形性に優れたものを用いる。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ABSなどが挙げられる。
フォーミング用基材フィルム8Aの厚みは、10~400μmである。
【0059】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。
【0060】
このように構成することで、厚膜印刷柄層3を印刷する基材として不適であるがロールか巻き出した後のフォーミング工程での加工に適したフォーミング用基材フィルム8Aに、印刷用基材フィルム1上から厚膜印刷柄層)3を転写することができる。
【0061】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法について、
図9、
図10を用いて説明する。
第5実施形態は、前述の積層体4をロール状に巻き取る工程の前に、さらに厚膜印刷柄層3を印刷用基材フィルム1から転写可能なエキスパンド用基材フィルム8B(被転写基材フィルム8の一例)でマスキングフィルム2および厚膜印刷柄層3を覆って積層体4とする工程(
図9(a)参照)を備えているものである。
【0062】
このような製造方法で得られる厚膜印刷柄付きフィルムロール5は、第1実施形態と同様に、印刷用基材フィルム1と、マスキングフィルム2と、厚膜印刷柄層3とを備えた積層体4がロール状に巻き取られてなるもの(
図9(b)参照)であるが、本実施形態では、さらに積層体4がエキスパンド用基材フィルム8Bを備えている。エキスパンド用基材フィルム8Bは、マスキングフィルム2および厚膜印刷柄層3を覆っている。
【0063】
エキスパンド用基材フィルム8Bは、マスキングフィルム2に対して離型性を有して貼合されている。また、厚膜印刷柄層3は、印刷用基材フィルム1に対してよりもエキスパンド用基材フィルム8Bに対して高い密着性を有して貼合されている。すなわち、厚膜印刷柄付きフィルムロール5から積層体4(
図10(a)参照)を再び巻き出してマスキングフィルム2をエキスパンド用基材フィルム8Bから剥離する際に、エキスパンド用基材フィルム8B側に厚膜印刷柄層3が残る(
図10(b)参照)。
なお、積層体4各層の貼合には、それぞれ粘着力が適宜調整された粘着層(図示せず)が用いられるが、マスキングフィルム2とエキスパンド用基材フィルム8Bとの間の粘着層は、マスキングフィルム2のエキスパンド用基材フィルム8Bからの剥離時に、マスキングフィルム2とともに全て剥離されてもよいし、エキスパンド用基材フィルム8B側に全て残ってもよい。
【0064】
エキスパンド用基材フィルム8Bは、厚膜印刷柄層3を印刷する基材として不適であるがロールか巻き出した後のエキスパンド工程(川下工程の一例)での加工に適した樹脂フィルムである。
エキスパンドは、代表的な例として、エキスパンド用基材フィルム8B上の厚膜印刷柄層3によって貼付した状態(
図11(a)参照)の半導体ウエハ200をチップ単位に切断(ダイシング)した後、ダイシングされたチップを保持したエキスパンド用基材フィルム8Bを周方向に引き延ばす(
図11(b)参照)ことによって、チップ同士の間隔を広げ、CCDカメラ等によるチップの認識性を高めるとともに、ピックアップの際に隣接するチップ同士が接触することによって生じるチップの破損を防止するために行われる。
【0065】
エキスパンド用基材フィルム8Bに用いる樹脂材料としては、延伸性に優れたものを用いる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン?酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
エキスパンド用基材フィルム8Bの厚みは、10~400μmとすることができる。
【0066】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。
【0067】
このように構成することで、厚膜印刷柄層3を印刷する基材として不適であるがロールか巻き出した後のエキスパンド工程での加工に適したエキスパンド用基材フィルム8Bに、印刷用基材フィルム1上から厚膜印刷柄層)3を転写することができる。
【0068】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態に係る厚膜印刷柄付きフィルムロールとその製造方法について、
図12,
図13を用いて説明する。
第6実施形態は、前述の積層体4をロール状に巻き取る工程の前に、さらに厚膜印刷柄層3に対して離型性を有する保護フィルム9でマスキングフィルム2および厚膜印刷柄層3を覆って積層体4とする工程(
図12参照)を備えているものである。
【0069】
このような製造方法で得られる厚膜印刷柄付きフィルムロール5は、第1実施形態と同様に、印刷用基材フィルム1と、マスキングフィルム2と、厚膜印刷柄層3とを備えた積層体4がロール状に巻き取られてなるものであるが、本実施形態では、さらに積層体4が離型性を有する保護フィルム9を備えている。保護フィルム9は、マスキングフィルム2および厚膜印刷柄層3を覆っている。
【0070】
保護フィルム9は、少なくとも厚膜印刷柄層3に対して離型性を有して貼合されている(
図13参照)。
なお、積層体4各層の貼合には、それぞれ粘着力が適宜調整された粘着層(図示せず)が用いられるが、厚膜印刷柄層3と保護フィルム9との間の粘着層は、保護フィルム9と一体のマスキングフィルム2の剥離時に、保護フィルム9とともに全て剥離されてもよいし、厚膜印刷柄層3側に全て残ってもよい。また、保護フィルム9の剥離とマスキングフィルム2の剥離とは別々に行なってもよい。
【0071】
保護フィルム9に用いる樹脂材料としては、耐擦傷性、耐摩耗性に優れたものを用いる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリレート系ポリマー、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、などが挙げられる。
保護フィルム9の厚みは、25~200μmとすることができる。
【0072】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。
【0073】
このように構成することで、積層体4の表面の平滑性がさらに向上する。また、厚膜印刷柄層3が保護されて傷つかない。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 印刷用基材フィルム
2 マスキングフィルム
2a 抜き穴
3 厚膜印刷柄層
31 インキ膜
32 インキ
33 スキージ
4 積層体
5 厚膜印刷柄付きフィルムロール
6 打抜用基材フィルム
61 抜き型
62 刃
7 打抜兼印刷用基材フィルム
8 被転写基材フィルム
8A フォーミング用基材フィルム
8B エキスパンド用基材フィルム
81 上部チャンバー
82 下部チャンバー
83 治具
84 真空ポンプ
85 被フォーミング材
86 iRヒーター
87 リフトテーブル
9 保護フィルム
100 スクリーン版
100a スクリーンメッシュ
100b 乳剤
100c 開口部
101 版枠
102 印刷不可エリア
103 印刷可能エリア
104 印刷パターン
105 基材フィルム
200 半導体ウエハ