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特開2023-161544接合材、部材の接合構造、および、接合材付き木製部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161544
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】接合材、部材の接合構造、および、接合材付き木製部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/48 20060101AFI20231030BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
E04B1/48 J
E04B1/48 G
E04B1/58 504L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131673
(22)【出願日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2022071431
(32)【優先日】2022-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507397766
【氏名又は名称】株式会社スクリムテックジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】河野 泰之
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG04
2E125BB08
2E125BD01
2E125BD03
2E125CA81
(57)【要約】
【課題】衝撃力等の力が加わった場合であっても充填剤の剥離を極力防止することができる接合材を提供する。
【解決手段】
孔109が設けられている木製の部材103と、フック部111とこのフック部111から延出している変形部113とを備えて構成されており、フック部111と変形部113とで孔挿入部位115が形成されており、フック部11とは反対側の変形部113の部位で孔突出部位117が形成されている接合材105と、孔109充填されている充填剤107とを有し、木製の部材のせん断破壊強度N等の値が、変形部11の引張破壊強度SNの値よりも大きくなっている部材の接合構造101である。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔が設けられている木製の部材と、
側面部と底面部と上面部とを備えているフック部とこのフック部の底面部から延出しており外径の値が前記フック部の外径の値よりも小さくなっている変形部とを備えて構成されており、前記フック部と前記変形部の前記フック部側の部位とで前記木製の部材の孔に挿入されている孔挿入部位が形成されており、前記フック部とは反対側の前記変形部の部位で前記木製の部材の孔から突出している孔突出部位が形成されている接合材と、
前記木製の部材の孔の内面と、前記接合材の孔挿入部位との間に充填されている充填剤と、
を有し、
前記木製の部材の孔から引き抜く力を前記接合材に加えたときに発生し、また、前記木製の部材の孔に押し込む力を前記接合材に加えたときに発生する前記フック部の側面部と前記充填剤との接合部に発生する応力によって、前記木製の部材の孔から引き抜く力を前記接合材に加えたとき、また、前記木製の部材の孔に押し込む力を前記接合材に加えたときにおける、前記フック部が前記充填剤を圧縮する力の値を軽減するように構成されている部材の接合構造。
【請求項2】
孔が設けられている木製の部材と、
側面部と底面部と上面部とを備えているフック部とこのフック部の底面部から延出しており外径の値が前記フック部の外径の値よりも小さくなっている変形部とを備えて構成されており、前記フック部と前記変形部の前記フック部側の部位とで前記木製の部材の孔に挿入されている孔挿入部位が形成されており、前記フック部とは反対側の前記変形部の部位で前記木製の部材の孔から突出している孔突出部位が形成されている接合材と、
前記木製の部材の孔の内面と、前記接合材の孔挿入部位との間に充填されている充填剤と、
を有し、
前記木製の部材の孔から引き抜く力を前記接合材に加えたとき、また、前記木製の部材の孔に押し込む力を前記接合材に加えたときにおける、前記木製の部材のせん断破壊強度の値、前記フック部の側面部と前記充填剤との接合部の破壊強度の値、前記充填剤の前記フック部によるせん断破壊強度の値のいずれもが、前記変形部の破壊強度の値よりも大きくなっている部材の接合構造。
【請求項3】
孔が設けられている木製の部材と、
側面部と底面部と上面部とを備えているフック部とこのフック部の底面部から延出しており外径の値が前記フック部の外径の値よりも小さくなっている変形部とを備えて構成されており、前記フック部と前記変形部の前記フック部側の部位とで前記木製の部材の孔に挿入されている孔挿入部位が形成されており、前記フック部とは反対側の前記変形部の部位で前記木製の部材の孔から突出している孔突出部位が形成されている接合材と、
前記木製の部材の孔の内面と、前記接合材の孔挿入部位との間に充填されている充填剤と、
を有し、
前記フック部の側面部には、前記充填剤への前記フック部の接合力を高めるためのアンカー部が設けられている部材の接合構造。
【請求項4】
前記接合材の孔突出部位には、金属製のコネクタに設けられている設置部に設置される被設置部が設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の部材の接合構造。
【請求項5】
第1の孔が設けられている第1の木製の部材と、
第2の孔が設けられており、前記第2の孔と前記第1の木製の部材の第1の孔とがつながるようにして、前記第1の木製の部材に設けられている第2の木製の部材と、
変形部と、第1の側面部と第1の底面部と第1の上面部とを備えており前記第1の底面部が前記変形部につながるようにして前記変形部の一方の端部に設けられている第1のフック部と、第2の側面部と第2の底面部と第2の上面部とを備えており前記第2の底面部が前記変形部につながるようにして前記変形部の他方の端部に設けられている第2のフック部とを備えて構成されており、前記変形部の外径の値が、前記第1のフック部の外径の値よりも小さくなっており、前記変形部の外径の値が、前記第2のフック部の外径の値よりも小さくなっており、前記第1のフック部と前記変形部の前記第1のフック部側の部位とで前記第1の木製の部材の第1の孔に挿入されている第1の孔挿入部位が形成されており、前記第2のフック部と前記変形部の前記第2のフック部側の部位とで前記第2の木製の部材の第2の孔に挿入されている第2の孔挿入部位が形成されている接合材と、
前記第1の木製の部材の第1の孔の内面と前記第1の孔挿入部位との間、および、前記第2の木製の部材の第2の孔の内面と前記第2の孔挿入部位との間に充填されている充填剤と、
を有し、
前記第1のフック部の側面部には、前記充填剤への前記第1のフック部の接合力を高めるための第1のアンカー部が設けられており、
前記第2のフック部の側面部には、前記充填剤への前記第2のフック部の接合力を高めるための第2のアンカー部が設けられている部材の接合構造。
【請求項6】
孔が設けられている木製の部材と、
フック部とこのフック部から延出している変形部とを備えて構成されており、前記フック部と前記変形部の前記フック部側の部位とで前記木製の部材の孔に挿入されている孔挿入部位が形成されており、前記フック部とは反対側の前記変形部の部位で前記木製の部材の孔から突出している孔突出部位が形成されている接合材と、
前記木製の部材の孔と、前記接合材の孔挿入部位との間に充填されている充填剤と、
を有し、
前記木製の部材の孔から引き抜く力を前記接合材に加えたときにおける、前記木製の部材のせん断破壊強度の値、前記充填剤の前記フック部による圧縮破壊強度の値、前記充填剤の前記フック部によるせん断破壊強度の値のいずれもが、前記変形部の破壊強度の値よりも大きくなっている部材の接合構造。
【請求項7】
第1の孔が設けられている第1の木製の部材と、
第2の孔が設けられており、前記第2の孔と前記第1の木製の部材の第1の孔とがつながるようにして、前記第1の木製の部材と接している第2の木製の部材と、
変形部と、この変形部の一方の端部に設けられている第1のフック部と、前記変形部の他方の端部に設けられている第2のフック部とを備えて構成されており、前記第1のフック部と前記変形部の前記第1のフック部側の部位とで前記第1の木製の部材の第1の孔に挿入されている第1の孔挿入部位が形成されており、前記第2のフック部と前記変形部の前記第2のフック部側の部位とで前記第2の木製の部材の第2の孔に挿入されている第2の孔挿入部位が形成されている接合材と、
前記第1の木製の部材の第1の孔の内面と前記第1の孔挿入部位との間、および、前記第2の木製の部材の第2の孔の内面と前記第2の孔挿入部位との間に充填されている充填剤と、
を有し、
前記第1の木製の部材を第2の木製の部材から引き離す力を前記第1の木製の部材に加えたときにおける、前記第1の木製の部材のせん断破壊強度の値および前記第2の木製の部材のせん断破壊強度の値、前記第1の孔での前記充填剤の前記第1のフック部による圧縮破壊強度の値および前記第2の孔での前記充填剤の前記第2のフック部による圧縮破壊強度の値、前記充填剤の前記第1のフック部によるせん断破壊強度の値および前記充填剤の前記第2のフック部によるせん断破壊強度の値のいずれもが、前記変形部の破壊強度の値よりも大きくなっている部材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材、部材の接合構造、および、接合材付き木製部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製のオスネジ材と接着剤とを用いた木製の部材の接合構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
従来の木製の部材の接合構造では、孔が設けられている一方の木製の部材と、孔が設けられている他方の木製の部材とを、各孔同士が通じるようにして、一方の木製の部材の端面と他方の木製の部材の端面とを合わせている。
【0004】
また、従来の木製の部材の接合構造では、オスネジ材の長手方向の一方の端部が一方の木製の部材の孔に入っており、オスネジ材長手方向の他方の端部が他方の木製の部材の孔に入っている。
【0005】
さらに、従来の木製の部材の接合構造では、各孔とオスネジ材との間に接着剤を充填している。これにより、一方の木製の部材と他方の木製の部材との接合強度を高めている。そして、たとえば、大きな力が木製の部材にかかっても、一方の木製の部材と他方の木製の部材との接合が維持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-227800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の木製の部材の接合構造において、木製の部材に力(たとえば衝撃力)がかかったときに、たとえば、オスネジ材と接着剤との接合部、接着剤と木製の部材との接合部での接着剤(充填剤)の破壊を阻止することが重要である。
【0008】
本発明は、衝撃力等の力が加わった場合であっても充填剤の破壊を極力防止することができる部材の接合構造、この木製の部材の接合構造に使用される接合材接合材付き木製の部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係る部材の接合構造は、孔が設けられている木製の部材と、側面部と底面部と上面部とを備えているフック部とこのフック部の底面部から延出しており外径の値が前記フック部の外径の値よりも小さくなっている変形部とを備えて構成されており、前記フック部と前記変形部の前記フック部側の部位とで前記木製の部材の孔に挿入されている孔挿入部位が形成されており、前記フック部とは反対側の前記変形部の部位で前記木製の部材の孔から突出している孔突出部位が形成されている接合材と、前記木製の部材の孔の内面と、前記接合材の孔挿入部位との間に充填されている充填剤とを有し、前記木製の部材の孔から引き抜く力を前記接合材に加えたときに発生し、また、前記木製の部材の孔に押し込む力を前記接合材に加えたときに発生する前記フック部の側面部と前記充填剤との接合部に発生する応力によって、前記木製の部材の孔から引き抜く力を前記接合材に加えたとき、また、前記木製の部材の孔に押し込む力を前記接合材に加えたときにおける、前記フック部が前記充填剤を圧縮する力の値を軽減するように構成されている部材の接合構造である。
【0010】
本発明の態様に係る部材の接合構造は、孔が設けられている木製の部材と、側面部と底面部と上面部とを備えているフック部とこのフック部の底面部から延出しており外径の値が前記フック部の外径の値よりも小さくなっている変形部とを備えて構成されており、前記フック部と前記変形部の前記フック部側の部位とで前記木製の部材の孔に挿入されている孔挿入部位が形成されており、前記フック部とは反対側の前記変形部の部位で前記木製の部材の孔から突出している孔突出部位が形成されている接合材と、前記木製の部材の孔の内面と、前記接合材の孔挿入部位との間に充填されている充填剤とを有し、前記木製の部材の孔から引き抜く力を前記接合材に加えたとき、また、前記木製の部材の孔に押し込む力を前記接合材に加えたときにおける、前記木製の部材のせん断破壊強度の値、前記フック部の側面部と前記充填剤との接合部の破壊強度の値、前記充填剤の前記フック部によるせん断破壊強度の値のいずれもが、前記変形部の破壊強度の値よりも大きくなっている部材の接合構造である。
【0011】
本発明の態様に係る部材の接合構造では、前記フック部の側面部と前記充填剤との接合部の破壊強度の値が前記充填剤の前記フック部によるせん断破壊強度の値以上の値になっており、前記充填剤の前記フック部によるせん断破壊強度の値が、前記木製の部材のせん断破壊強度の値以上の値になっている。
【0012】
本発明の態様に係る部材の接合構造は、孔が設けられている木製の部材と、側面部と底面部と上面部とを備えているフック部とこのフック部の底面部から延出しており外径の値が前記フック部の外径の値よりも小さくなっている変形部とを備えて構成されており、前記フック部と前記変形部の前記フック部側の部位とで前記木製の部材の孔に挿入されている孔挿入部位が形成されており、前記フック部とは反対側の前記変形部の部位で前記木製の部材の孔から突出している孔突出部位が形成されている接合材と、前記木製の部材の孔の内面と、前記接合材の孔挿入部位との間に充填されている充填剤とを有し、前記フック部の側面部には、前記充填剤への前記フック部の接合力を高めるためのアンカー部が設けられている部材の接合構造である。
【0013】
本発明の態様に係る部材の接合構造では、前記接合材の孔突出部位に、金属製のコネクタに設けられている設置部に設置される被設置部が設けられている。
【0014】
本発明の態様に係る部材の接合構造は、第1の孔が設けられている第1の木製の部材と、第2の孔が設けられており、前記第2の孔と前記第1の木製の部材の第1の孔とがつながるようにして、前記第1の木製の部材に設けられている第2の木製の部材と、変形部と、第1の側面部と第1の底面部と第1の上面部とを備えており前記第1の底面部が前記変形部につながるようにして前記変形部の一方の端部に設けられている第1のフック部と、第2の側面部と第2の底面部と第2の上面部とを備えており前記第2の底面部が前記変形部につながるようにして前記変形部の他方の端部に設けられている第2のフック部とを備えて構成されており、前記変形部の外径の値が、前記第1のフック部の外径の値よりも小さくなっており、前記変形部の外径の値が、前記第2のフック部の外径の値よりも小さくなっており、前記第1のフック部と前記変形部の前記第1のフック部側の部位とで前記第1の木製の部材の第1の孔に挿入されている第1の孔挿入部位が形成されており、前記第2のフック部と前記変形部の前記第2のフック部側の部位とで前記第2の木製の部材の第2の孔に挿入されている第2の孔挿入部位が形成されている接合材と、前記第1の木製の部材の第1の孔の内面と前記第1の孔挿入部位との間、および、前記第2の木製の部材の第2の孔の内面と前記第2の孔挿入部位との間に充填されている充填剤とを有し、前記第1のフック部の側面部には、前記充填剤への前記第1のフック部の接合力を高めるための第1のアンカー部が設けられており、前記第2のフック部の側面部には、前記充填剤への前記第2のフック部の接合力を高めるための第2のアンカー部が設けられている部材の接合構造である。
【0015】
本発明の態様に係る部材の接合構造は、第1の孔が設けられている第1の木製の部材と、第2の孔が設けられており、前記第2の孔と前記第1の木製の部材の第1の孔とがつながるようにして、前記第1の木製の部材に設けられている第2の木製の部材と、変形部と、第1の側面部と第1の底面部と第1の上面部とを備えており前記第1の底面部が前記変形部につながるようにして前記変形部の一方の端部に設けられている第1のフック部と、第2の側面部と第2の底面部と第2の上面部とを備えており前記第2の底面部が前記変形部につながるようにして前記変形部の他方の端部に設けられている第2のフック部とを備えて構成されており、前記変形部の外径の値が、前記第1のフック部の外径の値よりも小さくなっており、前記変形部の外径の値が、前記第2のフック部の外径の値よりも小さくなっており、前記第1のフック部と前記変形部の前記第1のフック部側の部位とで前記第1の木製の部材の第1の孔に挿入されている第1の孔挿入部位が形成されており、前記第2のフック部と前記変形部の前記第2のフック部側の部位とで前記第2の木製の部材の第2の孔に挿入されている第2の孔挿入部位が形成されている接合材と、前記第1の木製の部材の第1の孔の内面と前記第1の孔挿入部位との間、および、前記第2の木製の部材の第2の孔の内面と前記第2の孔挿入部位との間に充填されている充填剤とを有し、前記第1の木製の部材を前記第2の木製の部材から引き離す力を前記第1の木製の部材に加えたときに発生し、また、前記接合材の変形部が塑性変形して延びてしまったことで前記第2の木製の部材から前記第1の木製の部材が僅かに離れている状態で前記第1の木製の部材を前記第2の木製の部材に近づける力を前記第1の木製の部材に加えたときに発生する応力によって、前記第1の木製の部材を前記第2の木製の部材から引き離す力を前記第1の木製の部材に加えたときに発生し、また、前記接合材の変形部が塑性変形して延びてしまったことで前記第2の木製の部材から前記第1の木製の部材が僅かに離れている状態で前記第1の木製の部材を前記第2の木製の部材に近づける力を前記第1の木製の部材に加えたときにおける、前記各フック部それぞれが前記充填剤を圧縮する力の値を軽減するように構成されている部材の接合構造である。
【0016】
本発明の態様に係る部材の接合構造は、第1の孔が設けられている第1の木製の部材と、第2の孔が設けられており、前記第2の孔と前記第1の木製の部材の第1の孔とがつながるようにして、前記第1の木製の部材に設けられている第2の木製の部材と、変形部と、第1の側面部と第1の底面部と第1の上面部とを備えており前記第1の底面部が前記変形部につながるようにして前記変形部の一方の端部に設けられている第1のフック部と、第2の側面部と第2の底面部と第2の上面部とを備えており前記第2の底面部が前記変形部につながるようにして前記変形部の他方の端部に設けられている第2のフック部とを備えて構成されており、前記変形部の外径の値が、前記第1のフック部の外径の値よりも小さくなっており、前記変形部の外径の値が、前記第2のフック部の外径の値よりも小さくなっており、前記第1のフック部と前記変形部の前記第1のフック部側の部位とで前記第1の木製の部材の第1の孔に挿入されている第1の孔挿入部位が形成されており、前記第2のフック部と前記変形部の前記第2のフック部側の部位とで前記第2の木製の部材の第2の孔に挿入されている第2の孔挿入部位が形成されている接合材と、前記第1の木製の部材の第1の孔の内面と前記第1の孔挿入部位との間、および、前記第2の木製の部材の第2の孔の内面と前記第2の孔挿入部位との間に充填されている充填剤とを有し、前記第1の木製の部材を前記第2の木製の部材から引き離す力を前記第1の木製の部材に加えたときに発生し、また、前記接合材の変形部が塑性変形して延びてしまったことで前記第2の木製の部材から前記第1の木製の部材が僅かに離れている状態で前記第1の木製の部材を前記第2の木製の部材に近づける力を前記第1の木製の部材に加えたときにおける、前記各木製の部材それぞれのせん断破壊強度の値、前記各フック部それぞれの側面部と前記充填剤との接合部の破壊強度の値、前記充填剤の前記各フック部それぞれによるせん断破壊強度の値のいずれもが、前記変形部の引張破壊強度の値よりも大きくなっている部材の接合構造である。
【0017】
本発明の態様に係る部材の接合構造は、孔が設けられている木製の部材と、フック部とこのフック部から延出している変形部とを備えて構成されており、前記フック部と前記変形部の前記フック部側の部位とで前記木製の部材の孔に挿入されている孔挿入部位が形成されており、前記フック部とは反対側の前記変形部の部位で前記木製の部材の孔から突出している孔突出部位が形成されている接合材と、前記木製の部材の孔と、前記接合材の孔挿入部位との間に充填されている充填剤とを有し、前記木製の部材の孔から引き抜く力を前記接合材に加えたときにおける、前記木製の部材のせん断破壊強度の値、前記充填剤の前記フック部による圧縮破壊強度の値、前記充填剤の前記フック部によるせん断破壊強度の値のいずれもが、前記変形部の破壊強度の値よりも大きくなっている部材の接合構造である。
【0018】
本発明の態様に係る部材の接合構造は、第1の孔が設けられている第1の木製の部材と、第2の孔が設けられており、前記第2の孔と前記第1の木製の部材の第1の孔とがつながるようにして、前記第1の木製の部材と接している第2の木製の部材と、変形部と、この変形部の一方の端部に設けられている第1のフック部と、前記変形部の他方の端部に設けられている第2のフック部とを備えて構成されており、前記第1のフック部と前記変形部の前記第1のフック部側の部位とで前記第1の木製の部材の第1の孔に挿入されている第1の孔挿入部位が形成されており、前記第2のフック部と前記変形部の前記第2のフック部側の部位とで前記第2の木製の部材の第2の孔に挿入されている第2の孔挿入部位が形成されている接合材と、前記第1の木製の部材の第1の孔の内面と前記第1の孔挿入部位との間、および、前記第2の木製の部材の第2の孔の内面と前記第2の孔挿入部位との間に充填されている充填剤とを有し、前記第1の木製の部材を第2の木製の部材から引き離す力を前記第1の木製の部材に加えたときにおける、前記第1の木製の部材のせん断破壊強度の値および前記第2の木製の部材のせん断破壊強度の値、前記第1の孔での前記充填剤の前記第1のフック部による圧縮破壊強度の値および前記第2の孔での前記充填剤の前記第2のフック部による圧縮破壊強度の値、前記充填剤の前記第1のフック部によるせん断破壊強度の値および前記充填剤の前記第2のフック部によるせん断破壊強度の値のいずれもが、前記変形部の破壊強度の値よりも大きくなっている部材の接合構造である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、衝撃力等の力が加わった場合であっても充填剤の破壊を極力防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る部材の接合構造に使用される接合材の分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る部材の接合構造に使用される接合材の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る部材の接合構造の斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る部材の接合構造の断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る部材の接合構造に使用される接合材の断面図であり、(b)は(a)におけるVB部の拡大図であり、(b)は(a)におけるVC部の拡大図である。
図6】(a)は図5で示す接合材に使用される中間材の断面図であり、(b)は(a)で示す中間材の変形例を示す図であり、(c)は(a)で示す中間材の別の変形例を示す図である。
図7図4に対応する図であって、1つ目の変形例に係る部材の接合構造の断面図である。
図8図7におけるVIII-VIII矢視図である。
図9】(a)は接合材付き木製部材が使用されている2つ目の変形例に係る部材の接合構造の断面図であり、(b)は金属製のコネクタの側面図である。
図10】(a)は3つ目の変形例に係る部材の接合構造の断面図であり、(b)は4つ目の変形例に係る部材の接合構造の断面図である。
図11】さらなる変形例に係る接合材の斜視図である。
図12】さらなる変形例に係る接合材の斜視図である。
図13】(a)は、本発明の別の実施形態に係る部材の接合構造を示す図であり、(b)は(a)におけるXIIIB-XIIIB断面を示す図である。
図14図13で示す部材の接合構造の変形例を示す図であり、(b)は金属製のコネクタの側面図である。
図15図13で示す部材の接合構造の別の変形例を示す図である。
図16】本発明のさらなる別の実施形態に係る部材の接合構造を示す図である。
図17図16で示されている接合材の拡大図である。
図18図16で示す部材の接合構造の変形例を示す図である。
図19】比較例に係る部材の接合構造を示す図である。
図20】比較例に係る部材の接合構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る部材の接合構造1は、木製の部材同士の接合で使用されるものであり、図3図4で示すように、第1の木製の部材3と第2の木製の部材5と接合材7と充填剤(たとえば、接着性を有する充填剤)9とを備えて構成されている。
【0022】
ここで、説明の便宜のために、部材の接合構造1における所定の一方向を縦方向とし、縦方向に対して直交する所定の一方向を横方向とし、縦方向と横方向とに対して直交する方向を高さ方向とする。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0023】
第1の木製の部材3には、孔(止まり孔)11が設けられている。第2の木製の部材5にも、孔(止まり孔)13が設けられている。また、第2の木製の部材5は、この孔13と第1の木製の部材3の孔11とがお互いにつながるようにして、第1の木製の部材3に接している。
【0024】
接合材7は、第1の木製の部材3の孔11と第2の木製の部材5の孔13とに入り込んでいる。充填剤9は、第1の木製の部材3の孔11と第2の木製の部材5の孔13とに充填されている。さらに説明すると、充填剤9は、第1の木製の部材3の孔11の内面と第2の木製の部材5の孔13の内面と接合材7との間に形成されている間隙47の総てに充填されている。なお、図3では、孔11、13、充填剤9の表示を省略している。
【0025】
接合材7は、図1図2図5、10(a)等で示すように、定着部15と、変形部(靭性担保部)17とを備えて構成されている。
【0026】
定着部15は、木製の部材3(5)に設けられている孔11(13)に挿入されるようになっている。そして、孔11(13)に充填され固化した充填剤(たとえば、合成樹脂で構成された接着剤)9を介して定着部15が木製の部材3(5)に定着され一体的に設置されるようになっている。
【0027】
変形部17は、この長手方向の一端(たとえば一端面もしくは一端面からこの近傍にかけての部位)で、定着部15の長手方向の一端(たとえば一端面もしくは一端面からこの近傍にかけて部位)を支持している。すなわち、変形部17は、この長手方向の一端から他端まで所定の長さ延びている。定着部15は、定着部15(変形部17)の長手方向の一端から他端に向けて、変形部17よりも短い所定の長さ延びている。これにより、接合材7では、この長手方向における定着部15のところで、定着部15と変形部17とが互いがならんで延びている。
【0028】
また、変形部17は、この長手方向の他端部側の部位が定着部15の長手方向の他端から長く延出(突出)している。変形部17は、この長手方向での引張荷重(たとえば衝撃引張荷重)がかかったときに、定着部15と充填剤9との接合部(定着部)にかかる応力を軽減するために設けられている。また、変形部17は、木製の部材3(5)の孔11(13)の内面と充填剤9との接合部(定着部)にかかる応力を軽減するために設けられている。変形部17は、引張荷重によって一時的に弾性変形することで、上記応力を軽減するようになっている。
【0029】
接合材7では、定着部15の長手方向と変形部17の長手方向とがお互いに一致している。定着部15が木製の部材3(5)に充填剤9で固定されている状態で、変形部17の定着部15から延出している部位(たとえば、変形部17の長手方向の他端部)に衝撃引張荷重がかかる。
【0030】
すると、変形部17がこの長手方向で一時的に弾性変形するようになっている。この一時的な弾性変形によって、衝撃引張荷重のエネルギーが吸収され、定着部15と充填剤9との接合部等にかかる応力が軽減されるようになっている。
【0031】
定着部15の長手方向の一端が変形部17の長手方向の一端で支持されていることで、定着部15と変形部17とがお互いに一体化している。なお、上記支持がされていることで、接合材7が長手方向の一方の力にのみ抵抗力を有していてもよい。
【0032】
すなわち、変形部17を固定しておいて、定着部15を長手方向の一端側に移動させる力を定着部15に加えても、定着部15が変形部17に対して移動しないようになっている。一方、変形部17を固定しておいて、定着部15を長手方向の他端側に移動させる力を定着部15に加えると、変形部17に対して定着部15が移動するようになっていてもよい。
【0033】
図4図10(a)で示すように、接合材7が充填剤9とともに木製の部材3(5)に設置された状態では、定着部15と変形部17の一部(少なくとも長手方向で定着部15と同じところにある部位)とが、木製の部材3(5)の孔11(13)に挿入されている。また、変形部17の長手方向の他端部側の部位が木製の部材3(5)の孔から突出している。充填剤9は、たとえば、木製の部材3(5)の孔11(13)の底部から開口部のところまで充填されており孔11(13)を埋めている。
【0034】
接合材7が充填剤9とともに木製の部材3(5)に設置され充填剤9が固まり定着部15が木製の部材3(5)に充填剤9で固定されている。この状態で、接合材7の長手方向の力であって木製の部材3(5)から接合材7を引きぬく方向の小さな力が変形部17に加わったとする。上記力の値を次第に増やしていく。すると、上記力の値が所定の大きな値になるまでは、変形部17が伸びる。一方、定着部15は充填剤9に固着されたままであり、充填剤9は、孔11(13)に固着されたままになっている。
【0035】
ここで、変形部17と定着部15の長手方向での変形部17と定着部15との支持位置についてさらに説明する。上述した説明では、変形部17の長手方向の一端で定着部15の長手方向の一端を支持しているが、一端に限定することなく一端を一端部にしてもよい。ここで、一端部とは、一端よりも僅かに広い範囲を示しており、一端から他端側に僅かに離れた箇所との間の部位である。
【0036】
さらに、変形部17の長手方向の一端部で定着部15の長手方向の中間部を支持してもよいし、変形部17の長手方向の中間部で定着部15の長手方向の一端部を支持してもよいし、変形部17の長手方向の中間部で定着部15の長手方向の中間部を支持してもよい。この場合、上記中間部は長手方向での中間よりも一端側に位置していることが望ましい。
【0037】
ここで、接合材7について図1図2図5を参照しつつさらに具体的に説明する。
【0038】
接合材7は、変形部17を構成している棒状の芯材19と、中間材21と、定着部15を構成している第1の定着部材23と、変形部17で定着部15を支持するための第1の端部材25とを備えて構成されている。
【0039】
芯材19は、たとえば、背の高い円柱状に形成されている。円柱状ということなので、棒状の芯材19は、完全な円柱形状ではなく円柱に近似した形状になっている。たとえば、芯材19の長手方向の端部には所定の長さにわたってオスネジ27が形成されている。これにより、芯材19が細長い円柱状に形成されていることになる。オスネジ27は、たとえば、円柱の材料を転造することによって形成されている。転造によって形成された場合には、オスネジ27の山径の値は、オスネジ27が形成されていない芯材19の長手方向の中間部の外径の値とよりも僅かに大きくなっている。なお、オスネジ27が、切削加工によって形成されていてもよい。切削加工によって形成されている場合には、芯材19のオスネジ27の山径の値は、オスネジ27が形成されていない芯材19の長手方向の中間部の外径の値とほぼ等しくなっている。なお、芯材19の長手方向は、たとえば、図3図4等で示す縦方向と一致している。
【0040】
中間材21は、筒状に形成されており、芯材19が貫通するようにして芯材19の長手方向の中間部に設置されている。中間材21は、たとえば、完全な円筒形状になっている。中間材21の内径の値は、芯材19の外径の値よりも僅かに大きくなっている。中間材21の長さ寸法の値(中心軸の延伸方向における寸法の値)は、芯材19の長さ寸法の値(中心軸の延伸方向における寸法の値)よりも小さくなっている。
【0041】
第1の定着部材23は、筒状に形成されており、外周面に凹凸が形成されており、芯材19が貫通し中間材21に接するか中間材21から僅かに離れるようにして、芯材19の長手方向の一方の端側(第1の端側)に設置されている。第1の定着部材23の凹凸は、第1の定着部材23と充填剤9との接合強度を高めるために設けられている。
【0042】
第1の定着部材23は、外周面に凹凸が形成されていないとすれば、完全な円筒形状になっている。第1の定着部材23の内径の値は、芯材19の外径の値よりも僅かに大きくなっている。第1の定着部材23の長さ寸法の値(中心軸の延伸方向における寸法の値)は、芯材19の長さ寸法の値(中心軸の延伸方向における寸法の値)よりも小さくなっている。
【0043】
第1の定着部材23の外周面の最大外径の値は、中間材21の外径の値とほぼ等しくなっている。第1の定着部材23の外周面の凹凸は、たとえば、オスネジ29で形成されている。オスネジ29は、たとえば、中間材21と同様な材料を転造することによって形成されている。転造することによって形成されている場合には、第1の定着部材23のオスネジ29の山径の値は、中間材21の外径の値よりも僅かに大きくなっている。なお、オスネジ29は、たとえば、中間材21と同様な材料に切削加工を施すことで形成されていてもよい。切削加工で形成されている場合には、オスネジ29の山径の値が、中間材21の外径の値とほぼ等しくなっている。
【0044】
第1の端部材25は、芯材19の長手方向の一方の端側(第1の端側)あって第1の定着部材23よりもさらなる端側で、第1の定着部材23に接するか第1の定着部材23から僅かに離れるようにして、芯材19に一体的に設置されている。
【0045】
第1の端部材25はたとえばナットで構成されている。ナット25は、棒状の芯材19の長手方向の一方の端部に形成されているオスネジ29に螺合している。ナット25の最大外径の値は、たとえば、中間材21の外径の値とほぼ等しくなっている。
【0046】
芯材19に中間材21と第1の定着部材23と第1の端部材25とが設置されていることで、接合材7が形成されている。そして、接合材7の外形が概ね棒状(たとえば円柱状)に形成されている。なお、芯材19の長手方向の一方の端部は、第1の端部材25から僅かに突出している。また、詳しくは後述する第2の定着部材31と第2の端部材33とが設けられていないとすれば、芯材19の長手方向の他方の端部は、中間材21から所定の長さ突出している。
【0047】
接合材7では、第1の端部材25が設けられていることで、第1の定着部材23と中間材21とが、芯材19に対して芯材19の長手方向の一方の端側に移動して芯材19から外れ落ちてしまうことが防止されるようになっている。
【0048】
また、接合材7には、定着部15を構成している第2の定着部材31と、変形部17が定着部15を支持するための第2の端部材33とを備えて構成されている。第2の定着部材31は、たとえば、第1の定着部材23と同形状に形成されている。すなわち、第2の定着部材31は、筒状に形成されており、外周面に凹凸が形成されている。また、第2の定着部材31は、芯材19が貫通し、中間材21に接するか中間材21から僅かに離れるようにして、芯材19の長手方向の他方の端側(第2の端側)に設置されている。
【0049】
第2の端部材33は、芯材19の長手方向の他方の端側(第2の端側)あって第2の定着部材31よりもさらなる端側で、第2の定着部材31に接するか第2の定着部材31から僅かに離れるようにして、芯材19に設置されている。
【0050】
第2の端部材33も、第1の端部材25と同様に、たとえばナットで構成されている。ナット33は、棒状の芯材19の長手方向の他方の端部に形成されているオスネジ35に螺合している。
【0051】
芯材19に中間材21と第1の定着部材23と第2の定着部材31と第1の端部材25と第2の端部材33とが設置されていることでも、接合材7が形成されている。そして、接合材7の外形が棒状(たとえば円柱状)に形成されている。
【0052】
第2の定着部材31と第2の端部材33とが設けられている接合材7では、芯材19の長手方向の一方の端から他方の端に向かうにしたがって、第1の部材25、第1の定着部材23、中間材21、第2の定着部材31、第2の端部材33とがこの順にならんでいる。また、第2の定着部材31等が設けられている接合材7では、芯材19の長手方向の一端部が第1の端部材25から僅かに突出しており、芯材19の長手方向の他端部が第2の端部材33から僅かに突出している。
【0053】
なお、芯材19の長手方向の一端部が第1の端部材25から突出しておらず、芯材19の長手方向の他端部が第2の端部材33から突出していない形態になっていてもよい。
【0054】
さらに、接合材7では、第1の端部材25と第2の端部材33とが設けられていることで、第1の定着部材23と中間材21と第2の定着部材31とが、芯材19から外れてしまうことが防止されている。ただし、第1の端部材25と第2の端部材33とで、芯材19の長手方向で、第1の定着部材23と中間材21と第2の定着部材31とが締め付けられてはいない。なお、第1の端部材25と第2の端部材33とで、芯材19の長手方向で、第1の定着部材23と中間材21と第2の定着部材31とが、付勢力をもって締め付けられていてもよい。
【0055】
芯材19は、鋼等の金属で構成されている。中間材21、第1の定着部材23、第2の定着部材31、第1の端部材25、第2の端部材33も鋼等の金属で構成されている。なお、中間材21、第1の定着部材23、第2の定着部材31については、これらが、硬質の合成樹脂、セラミックス等の金属以外の材料である非金属材料で構成されていてもよい。
【0056】
また、芯材19と、中間材21および第1の定着部材23および第2の定着部材31との間の僅かな間隙37が、合成樹脂等の充填剤9で充填されていてもよいし、充填剤で充填されておらず空洞状態になっていてもよい。間隙37は、接合材7の径方向における円筒状の間隙である。充填剤9は、木製の部材3(5)の孔11(13)に充填されている充填剤と同じ充填剤になっている。なお、充填剤9が、木製の部材3(5)の孔11(13)に充填されている充填剤と異なる仕様の充填剤になっていてもよい。
【0057】
なお、上記説明では、定着部材23(31)は、外周にオスネジ27が形成されている円筒状になっているが、外周に他の態様で凹凸が形成されているもよい。たとえば、図6(a)で示すように、大径部39と小径部41とが、筒の中心軸の延伸方向で、交互にならんでいる態様であってもよい。
【0058】
図6(a)で示す定着部材23(31)では、外周の断面形状が三角波の形状になっているが、外周の断面形状が矩形波の形状になっていてもよいし、等脚台形波等の台形波の形状になっていてもよい。さらに、外周の断面形状が正弦波等の他の形状になっていてもよいし、不規則な形態で定着部材23(31)の外周に凹凸が形成されていてもよい。
【0059】
図6(b)で示す定着部材23(31)では、図6(a)で示す定着部材23(31)におて、定着部材23(31)がこの中心軸の延伸方向で複数の部材23A、23B、23C、23D(31A、31B、31C、31D)に分割されている。これにより、定着部材23(31)の長さ寸法(筒の中心軸の延伸方向における寸法)の値を容易に調整することができるとともに、定着部材23(31)の長さ寸法の値が大きくなっても、筒にするための貫通孔を機械加工によって容易に設けることができる。
【0060】
各部材23A、23B、23C、23D(31A、31B、31C、31D)の寸法(筒の中心軸の延伸方向における寸法)の値は、たとえば、お互い異なっている。なお、各部材23A、23B、23C、23D(31A、31B、31C、31D)のうちの少なくとも一部のもので、寸法(筒の中心軸の延伸方向における寸法)の値がお互いに一致していてもよい。
【0061】
図6(c)で示す定着部材23(31)は、金属製のフレキシブルチューブを所定の長さに切断したことで形成されている。図6(c)で示す定着部材23(31)では、筒の外周だけでなく、筒の内周にも繰り返し凹凸が形成されている。
【0062】
また、定着部材23(31)を、鉄筋コンクリートに使用される異形鉄筋を素材として形成してもよい。すなわち、異形鉄筋を所定の長さに切断し、この切断した異形鉄筋に貫通孔を設けて筒状に形成し、これを定着部材23(31)として採用してもよい。
【0063】
部材の接合構造1では、第1の木製の部材3が四角柱状に形成されている。第2の木製の部材5も四角柱状に形成されている。第1の木製の部材3の長手方向は高さ方向になっている。第2の木製の部材5の長手方向は縦方向になっている。
【0064】
部材の接合構造1では、第1の木製の部材3の側面の一部(長手方向の中間部)に第2の木製の部材5の長手方向の端面が接している。
【0065】
第1の木製の部材3の孔11は、第1の木製の部材3の一方の側面からこの一方の側面に対向している他方の側面側に凹んでいる。第2の木製の部材5の孔13は、第2の木製の部材5の長手方向の一方の端面からこの一方の端面に対向している他方の端面側に凹んでいる。
【0066】
第1の木製の部材3の孔11と第2の木製の部材5の孔13とは、上述したようにお互いがつながっているとともに、これらの中心軸がお互いに一致している。これにより、1つの孔11と1つの孔13とで、1つの円柱状の閉鎖された空間43が形成されている。
【0067】
なお、上記説明では、第1の木製の部材3の孔11(第2の木製の部材5の孔13)が円柱状に形成されていることになる。ここで、第1の木製の部材3の孔11(第2の木製の部材5の孔13)をメスネジで形成する等し、第1の木製の部材3の孔11(第2の木製の部材5の孔13)の側面に凹凸が繰り返し現れる形態にしてもよい。
【0068】
円柱形状の空間43の長手方向(円柱の高さ方向)は縦方向になっている。なお、空間43は、詳しくは後述する充填剤の導入孔45が形成されているので、厳密には閉鎖されていないが、ここでは、閉鎖された空間とする。閉鎖された空間43は、複数(たとえば2つ)設けられている。複数の空間43は、お互いが所定の距離だけ離れて配置されている。
【0069】
空間43の円柱の径は、接合材7の外径よりもわずかに大きくなっており、空間43の円柱の高さ寸法の値は、接合材7の高さ寸法の値よりもわずかに大きくなっている。そして、空間43に接合材7が配置されていることで、空間43の内壁面と接合材7との間には、間隙47が形成されている。充填剤9は、間隙47の総てにわたって充填されている。
【0070】
空間43に接合材7が配置されている状態では、接合材7の中間材21の長手方向の一方の部位と第1の定着部材23と第1の端部材25とが第1の木製の部材3の孔11に入り込んでいる。また、空間43に接合材7が配置されている状態では、接合材7の中間材21の長手方向の他方の部位と第2の定着部材31と第2の端部材33とが第2の木製の部材5の孔13に入り込んでいる。
【0071】
充填剤の導入孔45は、第1の木製の部材3、第2の木製の部材5のそれぞれに設けられている小孔で形成されている。小孔45は、第1の木製の部材3、第2の木製の部材5の外部と空間43をつないでいる。第1の木製の部材3の小孔45は、空間43の長手方向の一方の端部で、空間43につながっている。第2の木製の部材5の小孔45は、空間43の長手方向の他方の端部で、空間43につながっている。
【0072】
小孔45は、充填剤9を空間43内に充填するために使用される他、充填剤9を充填しているときに空間43内の空気を排出するためのエアー抜き孔としても使用されるようになっている。
【0073】
なお、図4で示す部材の接合構造1では、空間43の総てが充填剤9で満たされているが、中間材21のところに、充填剤9が存在しておらず空隙になっていてもよい。すなわち、中間材21の外周面が充填剤9と接触していない構成であってもよい。
【0074】
ここで、部材の接合構造1での組立手順について説明する。
【0075】
第1の木製の部材3の孔11に接合材7の一方の端部を挿入して状態で、第2の木製の部材5の孔13に接合材7の他方の端部が入るようにして、第1の木製の部材3に第2の木製の部材5を設置する。これにより、接合材7が入っている空間43が形成される。
【0076】
続いて、小孔45を用いて空間43内に流動体状の充填剤9を充填し、この後、充填剤9を硬化させることで、部材の接合構造1が得られる。
【0077】
次に、部材の接合構造1に荷重が加えられた場合について説明する。
【0078】
第1の木製の部材3を固定しておき、図4に矢印A1で示す衝撃力(引張衝撃荷重)を第2の木製の部材5に加える。すると、充填剤9と第1の木製の部材3の孔11の内面との接合部、充填剤9と第2の木製の部材5の孔13の内面との接合部に、応力が発生する。また、充填剤9と第1の定着部材23との接合部、充填剤9と第2の定着部材31との接合部、および、芯材19に応力が発生する。
【0079】
上記衝撃力によって、芯材19に発生する引張応力によって芯材19が、縦方向にたとえば弾性限度内で一時的に延び、または、塑性変形により延び、上記衝撃力のエネルギーを吸収する。これにより、充填剤9と孔11の内面との接合部、充填剤9と孔13の内面との接合部、充填剤9と第1の定着部材23との接合部、充填剤9と第2の定着部材31との接合部における充填剤9の剥離、損傷等が防止される。
【0080】
また、図5で示す間隙37に充填剤9が充填されている態様で第1の木製の部材3を固定しておき、図4に矢印A1で示す衝撃力(引張衝撃荷重)を第2の木製の部材5に加える。すると、芯材19と充填剤9との接合部で芯材19から充填剤9が先に剥離し、芯材19が縦方向にたとえば弾性限度内で一時的に延び、または、塑性変形により延びる。そして、上記衝撃力のエネルギーを吸収する。
【0081】
なお、芯材19と充填剤9との接合部で芯材19から充填剤9が先に剥離する理由は、芯材19の外径が小さく芯材19と充填剤9との接合部(円柱側面状の接合部)の面積が小さくなっているからである。また、芯材19と充填剤9との接合部で芯材19から充填剤9が先に剥離する理由は、芯材19がこの長手方向で僅かに延びることにより、ポアソン比に応じて、芯材19の外径が僅かに小さくなるからである。
【0082】
なお、図4に矢印A1で示す引張衝撃荷重に代えてもしくは加えて、図4に矢印A2で示すモーメント(衝撃荷重に相当するモーメント)を第2の木製の部材5に加える。これによっても、矢印A1で示す引張衝撃荷重の場合と同様にして、上述した充填剤9の剥離、損傷等が防止される。
【0083】
部材の接合構造1では、定着部15が木製の部材3(5)に設けられている孔11(13)に挿入され充填剤9を介して木製の部材3(5)に定着されるように構成されており、変形部17が長手方向の一端で定着部15の長手方向の一端を支持している。また、変形部17の長手方向の他端部側の部位が定着部15の長手方向の他端から延出している。
【0084】
そして、変形部17にこの長手方向の引張荷重(たとえば衝撃引張荷重)がかかったときの、定着部15と充填剤9との接合部等にかかる応力を軽減するために、上記引張荷重によって変形部17が一時的に弾性変形し、または、塑性変形する。
【0085】
これにより、木製の部材3(5)に衝撃力等の力が加わった場合であっても充填剤9と接合材7との接合部、充填剤9と木製の部材3(5)との接合部に係る応力が低減され、充填剤9の剥離等が極力防止される。
【0086】
さらに、接合材7では、変形部17の長手方向の端部だけで定着部15の長手方向の端部だけを支持している。これにより、変形部17の長手方向の一部で、定着部15をこの長手方向の全長にわたって支持する場合に比べて、変形部17において弾性変形する部位の長さを長くすることができる。また、接合材7を次に述べる比較例に係るものより短くしても衝撃力を十分に吸収することができる。
【0087】
ここで、比較例に係る部材の接合構造301について、図19を参照しつつ説明する。
【0088】
部材の接合構造301では、孔307が設けられている一方の木製の部材309と、同様にして孔311が設けられている他方の木製の部材313とを、孔307と孔311とが通じるようにして、木製の部材309端面と木製の部材313の端面とを合わせている。
【0089】
また、部材の接合構造301では、オスネジ材303の長手方向の一方の端部が一方の木製の部材309の孔307に入っており、オスネジ材303の長手方向の他方の端部が他方の木製の部材313の孔311に入っている。
【0090】
さらに、部材の接合構造301では、孔307、311とオスネジ材303との間に接着剤305を充填している。これにより、一方の木製の部材309と他方の木製の部材313との接合強度を高めている。たとえば、図19に矢印で示す力(ある程度の大きさの力)が、木製の部材309、313にかかっても、一方の木製の部材309と他方の木製の部材313との接合が維持されるようになっている。
【0091】
ところで、従来の部材の接合構造301において、図19に矢印で示す力(たとえば衝撃力)がかかったときに、オスネジ材303と接着剤305との接合部での接着剤(充填剤)305の剥離等が発生する事態の発生が懸念される。また、接着剤305と木製の部材309、313との接合部での接着剤(充填剤)305の剥離等が発生する事態の発生が懸念される。この理由は、衝撃力に対するオスネジ材303の伸び量が不十分で衝撃力のエネルギーを十分に吸収することができないからである。衝撃力のエネルギーを十分に吸収させるためには、オスネジ材303の長さ寸法の値をさらに大きくする等の形状変更が必要になる。
【0092】
また、部材の接合構造1で使用される接合材7が、棒状の芯材19と、筒状に形成され芯材19が貫通するようにして芯材19の長手方向の中間部に設置される中間材21とを備えて構成されている。また、接合材7が、第1の定着部材23と第1の端部材25とを備えて構成されている。
【0093】
ここで、第1の定着部材23が筒状に形成されており外周面に凹凸が形成されており芯材19が貫通し中間材21に接するようにして芯材19の長手方向の一方の端側(第1の端側)に設置されている。また、第1の端部材25が、芯材19の長手方向の一方の端側(第1の端側)あって第1の定着部材23よりもさらなる端側で、第1の定着部材23に接するようにして、芯材19に設置されている。
【0094】
これにより、接合材7が使用された部材の接合構造1では、木製の部材3(5)に衝撃力等の力が加わった場合に、棒状の芯材19がこの長手方向で弾性変形して一時的に延び、または、塑性変形により延び、衝撃力のエネルギーを吸収するようになっている。そして、部材の接合構造1において、充填剤9と接合材7との接合部、充填剤9と木製の部材3(5)との接合部に係る応力が低減され、充填剤9の剥離等が極力防止される。
【0095】
接合材7では、芯材19の長手方向の両端部のそれぞれに、第1の定着部材23と第2の定着部材31とが配置されている。これにより、第1の木製の部材3と第2の木製の部材5との接合に使用されたときに、衝撃力等の力に対する第1の木製の部材3と第2の木製の部材5との接合強度を確保することができる。また、第1の定着部材23と第2の定着部材31との内側に位置している部位が存在することで、芯材19の長さを確保することができ、衝撃力のエネルギーを的確に吸収することができる。
【0096】
ところで、接合材7において、中間材21を削除してもよい。
【0097】
すなわち、接合材7を、棒状の芯材19と第1の定着部材23と第1の端部材25とを備えた構成にしてもよい。さらに、接合材7が、第2の定着部材31と第2の端部材33とを備えた構成されていてもよい。
【0098】
また、部材の接合構造1において、上述したように、充填剤9が、中間材21のところに設けられていなくてもよい。すなわち、充填剤9が、第1の木製の部材3の孔11の内うちの、第1の定着部材23と第1の端部材25とが入り込んでいる部位のみに充填されていてもよい。また、充填剤9が、第2の木製の部材5の孔13の内うちの、第2の定着部材31と第2の端部材33とが入り込んでいる部位のみに充填されていてもよい。
【0099】
さらに説明すると、第1の木製の部材3の孔11の内うちの中間材21が入り込んでいる部位と、第2の木製の部材5の孔13の内うちの中間材21が入り込んでいる部位とには、充填剤9が入り込んでいないようにしてもよい。
【0100】
ここで、1つ目の変形例に係る部材の接合構造1aについて、図7図8を参照しつつ説明する。
【0101】
部材の接合構造1aでは、木製の部材3(5)の孔11(13)の孔の形態、接合材7の中間材21の形態が、部材の接合構造1と異なっているが、その他の箇所は、部材の接合構造1と同様に構成されている。
【0102】
すなわち、部材の接合構造1aでは、第1の木製の部材3の孔11が、奥側が小径部49になっており手前側が大径部51になっている。第2の木製の部材5の孔13も、奥側が小径部49になっており手前側が大径部51になっている。
【0103】
また、中間材21の外径の値が第1の定着部材23の外径の値および第2の定着部材31の外径の値よりも大きくなっている。
【0104】
そして、中間材21の長手方向における一部の部位が第1の木製の部材3の孔11の大径部51に入り込んでおり、中間材21の残りの部位が第2の木製の部材5の孔13の大径部51に入り込んでいる。第1の定着部材23と第1の端部材25とが第1の木製の部材3の孔11の小径部49に入り込んでいる。また、第2の定着部材31と第2の端部材33とが第2の木製の部材5の孔13の小径部に入り込んでいる。
【0105】
充填剤9が、第1の木製の部材3の孔11の小径部49と第2の木製の部材5の孔13の小径部49とに充填されている。
【0106】
部材の接合構造1aでは、中間材21の外径の値と大径部51の内径の値とはお互いが一致しているが、中間材21の外径の値が大径部51の内径の値よりもごくわずかに小さくっていてもよい。中間材21の外径の値が大径部51の内径の値よりもごくわずかに小さくっている態様では、中間材21の外面と大径部51の内面との間にごく僅かな間隙が形成されていることになる。このごく僅かな間隙には充填剤9で充填されておらず、ごく僅かな間隙は空洞になっている。なお、充填剤9が、中間材21のところ(上記ごく僅かな間隙)に充填されていてもよい。
【0107】
部材の接合構造1aでは、充填剤9が、第1の木製の部材3の孔11の内うちの、第1の定着部材23と第1の端部材25とが入り込んでいる部位に充填されている。また、第2の木製の部材5の孔13の内うちの、第2の定着部材31と第2の端部材33とが入り込んでいる部位に充填されている。そして、中間材21の部位には充填剤9が存在していない。
【0108】
これにより、充填剤9が木製の部材3(5)の孔11(13)から溢れることを的確に防止することができる。また、第1の木製の部材3の接合面と第2の木製の部材5の接合面とを平面の状態にすることができ、第1の木製の部材3と第2の木製の部材5との接合を正確にしかも容易にすることができる。
【0109】
また、部材の接合構造1aでは、中間材21の一部の部位が第1の木製の部材3の孔11の大径部51に入り込んでおり、中間材21の残りの部位が第2の木製の部材5の孔13の大径部51に入り込んでいる。
【0110】
ここで、中間材21の外径の値と大径部51の内径の値とがお互いが一致するようにすれば、第1の木製の部材3に対する第2の木製の部材5の位置決めを容易にすることができる。また、第1の木製の部材3に対する第2の木製の部材5の位置ずれを防止することできる。
【0111】
すなわち、第1の木製の部材3を固定した状態で第2の木製の部材5に図7に矢印A3で示す方向の力(高さ方向の力)を加えたときの、第1の木製の部材3に対する状態で第2の木製の部材5の位置ずれを阻止することができる。
【0112】
次に、2つ目の変形例に係る部材の接合構造1bについて、図9を参照しつつ説明する。
【0113】
部材の接合構造1bでは、木製の部材3に金属製のコネクタ53が設置されている点等が、部材の接合構造1と異なっているが、その他の箇所は、部材の接合構造1と同様に構成されている。
【0114】
すなわち、部材の接合構造1bは、接合材7と木製の部材3と金属製のコネクタ53とを備えて構成されている。接合材7における芯材19の長手方向の他方の端部(第2の端部)には、金属製のコネクタ53に設けられている設置部55に設置される被設置部57が設けられている。
【0115】
被設置部57はたとえばオスネジで構成されており、金属製のコネクタ53に設けられている設置部(たとえばメスネジ)55に被設置部57のオスネジが螺合するようになっている。これにより、芯材19(接合材7)が、金属製のコネクタ53に一体的に設置されるようになっている。
【0116】
さらに説明すると、木製の部材3には、孔11が設けられている。中間材21と第1の定着部材23と第1の端部材25とが第1の木製の部材3の孔11に入り込んでおり、被設置部57が木製の部材3から突出している。
【0117】
そして、被設置部57が金属製のコネクタ53の設置部55に設置されており、金属製のコネクタ53が木製の部材3に接している。なお、部材の接合構造1bにおける接合材7と木製の部材3と金属製のコネクタ53との構成物を接合材付き木製部材81と呼んでもよい。
【0118】
さらに詳しく説明すると、木製の部材3の高さ方向の端部であって横方向の両端部には、直方体状の切り欠きが設けられている。金属製のコネクタ53は、4つの辺状部を有する矩形な枠状に形成されており、1つの辺状部には設置部55を構成するメスネジが形成されている。メスネジが形成されている1つの辺状部に対向する他の1つの辺状部には貫通孔59が形成されている。
【0119】
被設置部57を構成しているオスネジの、設置部55を構成しているメスネジへの螺合が完了している状態では、2つの金属製のコネクタ53のそれぞれが、木製の部材3の2つの切り欠きのそれぞれにぴったり嵌まり込んでいる。これにより、金属製のコネクタ53が設置された木製の部材3は、切り欠きが消失した四角柱状になっている。なお、木製の部材3と金属製のコネクタ53とがさらに接着剤等によって互いにくっついていてもよい。
【0120】
部材の接合構造1bでは、金属製のコネクタ53が設置された木製の部材3が、他の構造物(たとえばコンクリートの土台)61に設置されるようになっている。
【0121】
さらに説明すると、他の構造物61の上面からは、オスネジ63が突出している。金属製のコネクタ53が、他の構造物61の上面に当接するようにして、金属製のコネクタ53の貫通孔59にオスネジ63を貫通させ、ナット65で金属製のコネクタ53の他の1つの辺状部を締め付ける。これにより、金属製のコネクタ53が設置された木製の部材3が、他の構造物61に一体的に設置されるようになっている。
【0122】
図9で示す接合材付き木製部材81を使用すれば、木製の部材3を、金属製のコネクタ53を用いて、他の部材(たとえばアンカーボルトが突出しているコンクリート等の構造物)61に強固に設置することができる。
【0123】
次に図10(a)を参照しつつ、3つ目の変形例に係る部材の接合構造1cについて説明する。3つ目の変形例に係る部材の接合構造1cは、図5等で示す接合材7のような端部材25(33)としてナットが使用されていない接合材が使用されていない点で、部材の接合構造1と異なる。
【0124】
すなわち、部材の接合構造1cで使用されている接合材7は、円柱状の芯材19と、円筒状の定着部15と、芯材19と円筒状の定着部15をつないでいる連結部67とを備えて構成されている。なお、図10(a)では示していないが、定着部15の外周面には、オスネジ等の凹凸が形成されている。
【0125】
筒状の定着部15の内径の値は、円柱状の芯材19の外径の値よりも大きくなっている。円柱状の芯材19の長さ寸法の1/2の値は、筒状の定着部15の長さ寸法(中心軸の延伸方向における寸法)に値よりも大きくなっている。
【0126】
連結部67は、芯材19の長手方向における端部と、定着部15の長手方向の端部とをつないでいる。芯材19の中心軸と定着部15の中心軸とはお互いが一致している。一対の定着部15のうちの一方の定着部15は、一方の連結部67から芯材19の長手方向の中央側に延出している。一対の定着部15のうちの他方の定着部15は、他方の連結部67から芯材19の長手方向の中央側に延出している。
【0127】
部材の接合構造1cで使用されている接合材7は、図10(a)では、一体成形されている態様で示されているが、部材の接合構造1cで使用されている接合材7の各部位が別途成形され、その後、溶接等によって適宜くっつけられていてもよい。
【0128】
次に図10(b)を参照しつつ、4つ目の変形例に係る部材の接合構造1dについて説明する。4つ目の変形例に係る部材の接合構造1dも、端部材25(33)としてナットが使用されていない点等が、部材の接合構造1と異なる。
【0129】
部材の接合構造1dでは接合材7が、変形部17を構成している柱状(たとえば円柱状)の小径部69と、定着部15を構成している柱状(たとえば円柱状)の大径部71とを備えて構成されている。大径部71は、鍛造プレスなどによって柱状(たとえば円柱状)に成形されている。また、大径部71は、小径部69の長手方向の両端部に設けられている。大径部71にも図示していないが凹凸が形成されている。
【0130】
なお、大径部71が、多角形柱状に形成されていてもよい。多角形柱状として三角形柱状(たとえば、底面、上面の形状が正三角である正三角柱状)、四角形柱状(たとえば、底面、上面の形状が正四角形である正四角形柱状)、以下、同様にして、五角形柱状、六角形柱状、八角形柱状等を掲げることができる。なお、大径部71の外周にも凹凸が形成されておらず、滑らかな面(複数の平面もしくは円柱側面状の曲面)になっていてもよい。
【0131】
次に、変形例に係る接合材7について図11図12を参照しつつ説明する。
【0132】
図11で示す接合材7は、長手方向の両端部にオスネジ73が形成されているスタッドボルト75と、オスネジ73に螺合しているナット77とを備えて構成されている。ナット77は、オスネジ73の最も奥側(スタッドボルト75の長手方向中央側)でオスネジ73に螺合している。
【0133】
図11で示す接合材7では、スタッドボルト75のオスネジ73とナット77とが定着部15を形成しており、スタッドボルト75の中央部(オスネジ73が形成されていない部位)が変形部17を形成している。
【0134】
図12(a)で示す接合材7では、図11で示す接合材7にさらにワッシャ83を設けた点が、図11で示す接合材7と異なる。ワッシャ83は、スタッドボルト75が貫通するようにして、オスネジ73のところで、ナット77に接してもしくはナット77から僅かに離れて設けられている。また、ワッシャ83は、スタッドボルト75の長手方向で、ナット77よりも中央側に位置している。
【0135】
図12(a)で示す接合材7では、接合材7の左下の端部のオスネジ73に、1つのワッシャ83と1つのナット77を設けてある。接合材7の右上の端部のオスネジ73に、1つのワッシャ83と2つのナット77を設けてあり、ワッシャ83を2つのナット77で挟み込んでいる。なお、図12(a)で示す接合材7において、接合材7の長手方向の両端部が、オスネジ73に、1つのワッシャ83と1つのナット77を設けた構成になっていてもよい。また、接合材7の長手方向の両端部が、オスネジ73に、1つのワッシャ83と2つのナット77を設けた構成になっていてもよい。
【0136】
図12(b)で示す接合材7では、図11で示す接合材7にさらにナット79を設けた点が、図11で示す接合材7と異なる。ナット79は、スタッドボルト75の長手方向の両端でオスネジ73に螺合している。ナット79も定着部15を形成している。
【0137】
ここで、図10(b)で示すように大径部71を設ける態様で、図11図12で示すように、ナット(たとえば六角ナット)77、79等を設ける場合について説明する。この場合、大径部71もしくはナット77、79等の引っ掛かり面積に対する接着剤9の指圧強度が、引っ張り強度以上であり、かつ、降伏強度以上になっていることが望ましい。すなわち、指圧強度>引っ張り強度>降伏強度以上になっていることが望ましい。ここで、引っ張り強度とは、接着剤9が充填される孔11(13)の径の表面積(孔が円柱状である場合には円柱の側面の面積)で確保される強度である。降伏強度とは、芯材19の降伏強度である。指圧強度>引っ張り強度>降伏強度とすることで、大径部71と接着剤9との互いの接合部が破壊される前に、スチール製の芯材19が降伏点の強度に達することで、塑性変形を生じ、大径部71と接着剤9とが破壊され脆性破壊が生じることとを防ぐ効果がある。
【0138】
ここで、別の実施形態に係る部材の接合構造101について図13を参照しつつ説明する。部材の接合構造101は、木製の部材103(第1の木製の部材3と同様な部材)と接合材105と充填剤107(充填剤9と同様な充填剤)とを備えて構成されている。木製の部材103には孔109が設けられている。
【0139】
接合材105は、フック部111とこのフック部111から延出している変形部113とを備えて構成されており、棒状に形成されている。接合材105では、フック部111と変形部113のフック部111側の部位とで木製の部材103の孔109に挿入されている孔挿入部位115が形成されている。また、接合材105では、フック部111とは反対側の変形部113の部位で木製の部材103の孔109から突出し延出している孔突出部位117が形成されている。
【0140】
充填剤107は、接合材105を木製の部材103に固定するために、木製の部材103の孔109と、接合材105の孔挿入部位115との間に充填されている。
【0141】
また、部材の接合構造101では、せん断破壊強度Nの値、圧縮破壊強度の値C、せん断破壊強度Asの値のいずれもが、引張破壊強度SNの値よりも大きくなっている。
【0142】
せん断破壊強度Nとは、木製の部材103の孔109から引き抜く力を接合材105の孔突出部位117と木製の部材103とに加えたときにおける、木製の部材103のせん断破壊強度である。
【0143】
圧縮破壊強度Cとは、木製の部材103の孔109から引き抜く力を接合材105の孔突出部位117と木製の部材103とに加えたときにおける、充填剤107のフック部111による圧縮破壊強度である。
【0144】
せん断破壊強度Asとは、木製の部材103の孔109から引き抜く力を接合材105の孔突出部位117と木製の部材103とに加えたときにおける、充填剤107のフック部111によるせん断破壊強度である。
【0145】
引張破壊強度SNとは、木製の部材103の孔109から引き抜く力を接合材105の孔突出部位117と木製の部材103とに加えたときにおける、変形部113(孔突出部位117や孔挿入部位115)の引張破壊強度である。
【0146】
接合材105は、たとえば鋼等の金属で構成されている。さらに具体的は、接合材105は、建築構造用圧延棒鋼(SNR材)で構成されている。接合材105は、素材に対してたとえば塑性加工を施すことで得られる。なお、接合材105が、切削加工等の機械加工を施すことや鋳造等の他の方法によって得られたものであってもよい。
【0147】
接合材105は、背の低い大径部119と、大径部119と一体化している細長い小径部121とを備えて構成されている。大径部119の一方の側の面からは、棒状の小径部121が長く直線的に延出している。そして、大径部119がフック部111を形成しており、小径部121が変形部113を形成している。たとえば、大径部119や小径部121の表面には、ネジ山等の凸部が設けられていない。
【0148】
さらに具体的には、木製の部材103は、たとえば四角柱状に形成されていることで、底面124が平面になっている。木製の部材103の孔109は円柱状に形成されている。木製の部材103の孔109は、木製の部材103の肉部に形成されており、四角柱の平面(底面)124から木製の部材103の上方向(内側方向)に向けてあけられており止まり孔になっている。木製の部材103の孔109の円柱の中心軸(円柱の高さ方向に延びている中心軸)は、底面124に対して直交している。
【0149】
接合材105の大径部119は背の低い円柱状(円板状)に形成されている。小径部121は細長い円柱状に形成されている。大径部119の円柱の一方の面(円形状の下面)と小径部121の円柱の一方の面(円形状の上面)とが互いに接合している形態で、小径部121が大径部119から下側に延出している。そして、接合材105の全体が概ね棒状になっている。なお、大径部119は背の低い円柱状ではなく、背の低い六角柱状(たとえば、正六角柱状)背の低い四角柱状(たとえば、正四角柱状)等の他の形状に形成されていてもよい。
【0150】
大径部119の円柱の中心軸(円柱の高さ方向に延びている中心軸)と小径部121の円柱の中心軸(円柱の高さ方向に延びている中心軸)とは、互いが一致している。なお、接合材105において、応力集中を避けるために、小径部121から大径部119への移行部位で小径部121の外径が次第に大きくなっていてもよい。小径部121の大径部119近傍の部位125(図10(b)参照)が側面視で円弧状に形成されていてもよい。
【0151】
接合材105が木製の部材103の孔109に挿入されており、孔109内が充填剤107で満たされている状態を接合材設置完了状態とする。接合材設置完了状態では、木製の部材103の孔109の中心軸と、接合材105の中心軸とが互いに一致している。接合材設置完了状態では、大径部119と、孔挿入部位115が木製の部材103の孔109内に入っており、孔突出部位117が木製の部材103の孔109から突出している。接合材設置完了状態では、大径部119の円柱の他方の面(円形状の上面)と、木製の部材103の孔109の底面123との間は、所定の寸法だけ離れている。
【0152】
また、接合材設置完了状態では、充填剤107は、木製の部材103の、孔挿入部位115が存在していない孔109内に充填されている。すなわち、接合材設置完了状態では、木製の部材103の孔109の全体が、接合材105の孔挿入部位115と充填剤107とで満たされている。
【0153】
木製の部材103の孔109から引き抜く力(図13の矢印参照)を接合材105に加えるときには、木製の部材103が図示しない何等からのものに固定されている。したがって、図13に矢印で示す力を接合材105の孔突出部位117に加えても、木製の部材103と接合材105とは、図13に矢印で示す方向に移動しないようになっている。
【0154】
ここで、図13に矢印で示す力を接合材105に加えたときにおける上記各破壊強度について、図13を参照しつつ説明する。
【0155】
木製の部材103の孔109の内径を「r3」とし、孔109の深さを「L2」とする。大径部119の外径をr2とし大径部119の高さ(厚さ)を「t2」とし、孔挿入部位115の内径を「r1」とし、孔挿入部位115の高さ(長さ)を「L」とする。
【0156】
図13では、「t2<L」になっており、「L+t2<L2」になっており、「r1<r2<r3」になっている。ここで、「L+t2≒L2」になっていてもよいし、「r2≒r3」になっていてもよい。
【0157】
木製の部材103のせん断破壊強度Nは、「N=π×r3×L×fs」で表すことができる。「fs」は、木製の部材103の単位面積あたりのせん断破壊強度である。
【0158】
充填剤107のフック部111による(フック部111での圧縮による)圧縮破壊強度の値Cは、「C={(r2)-(r1)}×(π/4)×fc」で表すことができる。「fc」は、充填剤107の単位面積あたりの圧縮破壊強度である。充填剤107のフック部111による圧縮は、フック部111が充填剤107に引っ掛かっていることで発生する。
【0159】
充填剤107のフック部111によるせん断破壊強度Asは、「As=π×r2×L×Afs」で表すことができる。「Afs」は、充填剤107の単位面積あたりのせん断破壊強度である。
【0160】
変形部113の引張破壊強度SNは、「SN=(r1)×(π/4)×fe」で表すことができる。「fe」は、変形部113の単位面積あたりの引張破壊強度である。
【0161】
部材の接合構造1では、せん断破壊強度Nの値、圧縮破壊強度Cの値、せん断破壊強度Asの値のいずれもが、引張破壊強度SNの値よりも大きくなっている。
【0162】
さらにすると、図13に矢印で示す力(引張力)の値を「0」から次第に大きくしていくと、変形部113(小径部121;孔突出部位117もしくは孔挿入部位115)が最も早く破壊するようになっている。
【0163】
部材の接合構造101では、充填剤107のフック部111による圧縮破壊強度Cの値が充填剤107のフック部111によるせん断破壊強度Asの値以上の値になっている。また、充填剤107のフック部111によるせん断破壊強度Asの値が、木製の部材103のせん断破壊強度Nの値以上の値になっている。
【0164】
すなわち、部材の接合構造1では、せん断破壊強度Nの値、圧縮破壊強度の値Cの値、せん断破壊強度Asの値、引張破壊強度SNの値が、「C≧As≧N>SN」になっている。なお、木製の部材103のせん断破壊強度Nの値、充填剤107のフック部111による圧縮破壊強度Cの値、充填剤107のフック部111によるせん断破壊強度Asの値に関して、上述した大きさの順序が異なっていてもよい。
【0165】
部材の接合構造1では、せん断破壊強度Nの値、圧縮破壊強度Cの値、充せん断破壊強度Asの値のいずれもが、引張破壊強度SNの値よりも大きくなっている。これにより、木製の部材103と接合材105との接合部の強度のコントロールを木製の部材103や充填剤107ではなく接合材(鋼材)105側で行うが可能となる。
【0166】
また、変形部113の引張破壊強度SNの値を最も小さくして木製の部材103と接合材105との接合部の強度のコントロールを接合材105側で行うことで、接合部に衝撃力が加わった場合に、接合材105が弾性変形しやすくなっている。これにより、上記衝撃力を接合材105で吸収し、木製の部材103や充填剤107が破壊させることが防止される。なお、接合材105にSNR材等を用いれば、高い靱性性能も確保する事が可能となる。
【0167】
また、部材の接合構造1では、「充填剤107のフック部による圧縮破壊強度Cの値≧充填剤107のフック部111によるせん断破壊強度Asの値≧木製の部材103のせん断破壊強度Nの値>変形部113の引張破壊強度SNの値」になっている。これにより、図20で示す比較例に係る部材の接合構造321と同様の強度での接合をすることが可能となる。
【0168】
比較例に係る部材の接合構造321では、接合棒鋼323(接合材105に相当)の長手方向にネジ山(異形棒鋼タイプのように多数の小さな突起でもよい)を設けている。これにより、接着剤剤325(充填剤に相当)と接合棒鋼323との間に摩擦抵抗Faを生じさせている。
【0169】
比較例に係る部材の接合構造321での木材327(木製の部材103に相当)と接着剤325については、接着剤325と木材327が一体化した状態を作っている。そして、接合棒鋼323に引張力が加わった場合、最終的には木材327のせん断破壊を生じる仕組みとしている。
【0170】
比較例に係る部材の接合構造321における接合強度Naは、接合棒鋼(GIR;Clued in rod)323の挿入孔329の直径raの周長に対する木材定着表面積に木材327の単位面積あたりのせん断強度fsaを掛けたものとなる。すなわち、Na=π×ra×La×fsaとなる。比較例に係るGIRは、Fa>Naとすることにより、接合部の引張強度計算を可能としている。
【0171】
ここで、図13で示すものの変形例に係る部材の接合構造101aについて図14を参照しつつ説明する。変形例に係る部材の接合構造101aでは、接合材105の孔突出部位117に、金属製のコネクタ127に設けられている設置部129に設置される被設置部131が設けられている点が、図13で示す部材の接合構造101と異なる。変形例に係る部材の接合構造101aのその他の点は、図13で示す部材の接合構造101と同様に構成されている。被設置部131は、木製の部材103に設けられている。
【0172】
金属製のコネクタ127、金属製のコネクタ127の設置部129、木製の部材103の被設置部131は、図9で示すものと同様に構成されている。すなわち、金属製のコネクタ127は、図9で示す金属製のコネクタ53と同様に構成されている。金属製のコネクタ127の設置部129も、図9で示す設置部55と同様に構成されている。被設置部131も、図9で示す被設置部57と同様に構成されている。また、接合材105aには、金属製のコネクタ127に螺合するオスネジ部が形成されている。
【0173】
続いて、図13で示すものの別の変形例に係る部材の接合構造101bについて図15を参照しつつ説明する。別の変形例に係る部材の接合構造101bは2つの木製の部材133、135同士を互いに接合している点が、図13で示す部材の接合構造101と異なっており、その他の点は、接合構造101と同様に構成されている。また、別の変形例に係る部材の接合構造101bは、接合材105bの形態が、図4で示す部材の接合構造1と異なっており、その他の点は、図4で示す部材の接合構造1と同様に構成されている。
【0174】
さらに説明すると、変形例に係る部材の接合構造101bは、第1の木製の部材133と第2の木製の部材135と接合材105bと充填剤107とを備えて構成されている。第1の木製の部材133(図4の第1の木製の部材3に相当)には、第1の孔137(図4の孔11に相当)が設けられている。
【0175】
第2の木製の部材135(図4の第2の木製の部材5に相当)には、第2の孔139(図4の孔13に相当)が設けられている。第2の木製の部材135は、第2の孔139が、第1の木製の部材133の第1の孔137につながるようにして、第1の木製の部材133と接している。
【0176】
接合材105bは、変形部113の両端にフック部111が設けられている点が、図13で示す接合材105と異なっており、その他の点は、図13で示す接合材105と同様に構成されている。
【0177】
すなわち、接合材105bは、変形部113と、変形部113の長手方向の一方の端部(第1の端部)に設けられている第1のフック部111(111a)を備えて構成されている。また、接合材105bは、変形部113の長手方向の他方の端部(第2の端部)に設けられている第2のフック部111(111b)を備えて構成されている。
【0178】
第1のフック部111aと変形部113の第1のフック部111a側の部位とで第1の木製の部材133の第1の孔137に挿入されている第1の孔挿入部位115(115a)が形成されている。第2のフック部111bと変形部113の第2のフック部111b側の部位とで第2の木製の部材135の第2の孔139に挿入されている第2の孔挿入部位115(115b)が形成されている。
【0179】
充填剤107は、接合材105bを第1の木製の部材133と第2の木製の部材135とに固定し、第1の木製の部材133と第2の木製の部材135とを接合するために設けられている。充填剤107は、第1の木製の部材133の第1の孔137の内面と第1の孔挿入部位115aとの間に充填されている。さらに、第2の木製の部材135の第2の孔139の内面と第2の孔挿入部位115bとの間に充填されている。なお、図15で示す状態では、図15の下側の孔挿入部位115bのところには、充填剤107が充填されているが、図15の上側の孔挿入部位115bのところは、充填剤107が充填される前の状態を示している。
【0180】
変形例に係る部材の接合構造101bでも、各破壊強度の値の関係が、図13で示す部材の接合構造101と同様になっている。
【0181】
すなわち、せん断破壊強度N1の値、圧縮破壊強度C1の値、せん断破壊強度As1の値のいずれもが、引張破壊強度(SN)の値よりも大きくなっている。また、せん断破壊強度N2(たとえば、N2=N1)の値、圧縮破壊強度C2(たとえば、C2=C1)の値、せん断破壊強度As2(たとえば、As2=As1)の値のいずれもが、引張破壊強度SNの値よりも大きくなっている。
【0182】
せん断破壊強度N1とは、第1の木製の部材133を第2の木製の部材135から引き離す力を第1の木製の部材133に加えたときにおける、第1の木製の部材103のせん断破壊強度である。せん断破壊強度N2とは、第1の木製の部材133を第2の木製の部材135から引き離す力を第1の木製の部材133に加えたときにおける、第2の木製の部材135のせん断破壊強度である。せん断破壊強度N1およびせん断破壊強度N2は、上述したせん断破壊強度Nと同様なものである。
【0183】
圧縮破壊強度C1とは、第1の木製の部材133を第2の木製の部材135から引き離す力を第1の木製の部材133に加えたときにおける、第1の孔137での充填剤107の第1のフック部111aによる圧縮破壊強度である。圧縮破壊強度C2とは、第1の木製の部材133を第2の木製の部材135から引き離す力を第1の木製の部材133に加えたときにおける、第1の孔137での充填剤107の第2のフック部111bによる圧縮破壊強度である。圧縮破壊強度C1と圧縮破壊強度C2とは、上述した圧縮破壊強度Cと同様なものである。
【0184】
せん断破壊強度As1とは、第1の木製の部材133を第2の木製の部材135から引き離す力を第1の木製の部材133に加えたときにおける、充填剤107の第1のフック部111aによるせん断破壊強度である。せん断破壊強度As2とは、第1の木製の部材133を第2の木製の部材135から引き離す力を第1の木製の部材133に加えたときにおける、充填剤107の第2のフック部111bによるせん断破壊強度である。せん断破壊強度As1とせん断破壊強度As2とは、上述したせん断破壊強度Asと同様なものである。
【0185】
なお、図13で示す部材の接合構造101の場合と同様にして、たとえば、圧縮破壊強度C1の値および圧縮破壊強度C2の値が、せん断破壊強度As1の値およびせん断破壊強度As2の値以上の値になっている。また、せん断破壊強度As1の値せん断破壊強度As2の値が、せん断破壊強度N1の値およびせん断破壊強度N2の値以上の値になっている。
【0186】
ここで、本発明のさらなる別の実施形態に係る部材の接合構造201について図16図17を参照しつつ説明する。部材の接合構造201は、フック部213等の形態が、図13図14で示す部材の接合構造101と異なっている。
【0187】
部材の接合構造201は、木製の部材205と接合材221と充填剤225とを備えて構成されている。木製の部材205には、孔203が設けられている。接合材221は、芯材19と同様な金属で構成されており、フック部213と変形部215とを備えて構成されている。フック部213は、側面部207と底面部209と上面部211とを備えている。変形部215は、フック部213の底面部209から延出している。変形部215の外径の値はフック部213の外径の値よりも小さくなっている。
【0188】
接合材221では、フック部213と変形部215のフック部213側の部位とで木製の部材205の孔203に挿入されている孔挿入部位217が形成されている。また、接合材221では、フック部213とは反対側の変形部215の部位で木製の部材205の孔203から突出している孔突出部位219が形成されている。
【0189】
充填剤225(充填剤9と同様な充填剤)は、木製の部材205の孔203の内面223と、接合材221の孔挿入部位217との間に充填されている。
【0190】
部材の接合構造201で、木製の部材205を図示していないものに固定しておいて、木製の部材205の孔203から接合材221を引き抜く力(図16の矢印A16a参照)を接合材221に加える。また、部材の接合構造201で、木製の部材205を図示していないものに固定しておいて、木製の部材205の孔203に接合材221を押し込む力(図16の矢印A16b参照)を接合材221に加える。このときに、フック部213の側面部207と充填剤225との接合部227に応力が発生する。
【0191】
部材の接合構造201では、上記応力によって、フック部213が充填剤225を圧縮する力(押圧力)の値を軽減するように構成されている。フック部213が充填剤225を圧縮する力とは、木製の部材205の孔203から引き抜く力(図16の矢印A16a参照)を接合材221に加えたときに、フック部213が充填剤225を圧縮する力である。このとき、充填剤225の、図16の参照符号229で示す部位が圧縮される。
【0192】
また、部材の接合構造201では、上記応力によって、フック部213が充填剤225を圧縮する力(押圧力)の値を軽減するように構成されている。フック部213が充填剤225を圧縮する力とは、木製の部材205の孔203に押し込む力(図16の矢印A16b参照)を接合材221に加えたときに、フック部213が充填剤225を圧縮する力である。このとき、充填剤225の、図16の参照符号231で示す部位が圧縮される。
【0193】
なお、フック部213の上面部211は、孔203の底面233と対向している。フック部213の底面部209は、開口部235から大きく離れてはいるが孔203の開口部235と対向している。フック部213の側面部207は、孔203の側面(孔203の、底面を除く面)237と対向している。
【0194】
また、上述したように、孔203から引き抜く力を接合材221に加えたときに発生するフック部213の充填剤225を圧縮する力とは、フック部213の底面部209(変形部215が延出している部位を除く)が充填剤225を押す力である。また、孔203に押し込む力を接合材221に加えたときに発生するフック部213の充填剤225を圧縮する力とは、フック部213の上面部211が充填剤225を押す力である。
【0195】
ところで、部材の接合構造201では、木製の部材205の孔203から引き抜く力を接合材221に加えたとき、また、木製の部材205の孔203に押し込む力を接合材221に加えたときにおける破壊強度の値が次のようになっている。
【0196】
木製の部材205のせん断破壊強度Nの値が、変形部215の引張破壊強度(圧縮破壊強度)SNの値よりも大きくなっている。
【0197】
フック部213の側面部207と充填剤225との接合部227の破壊強度Csの値(たとえば、充填剤225のせん断破壊強度)が、変形部215の引張破壊強度(圧縮破壊強度)SNの値よりも大きくなっている。
【0198】
また、充填剤225のフック部213によるせん断破壊強度Asの値が、変形部215の引張破壊強度(圧縮破壊強度)SNの値よりも大きくなっている。つまり、せん断破壊強度Nの値、破壊強度Csの値、せん断破壊強度Asの値のいずれもが、変形部215の引張破壊強度(圧縮破壊強度)SNの値よりも大きくなっている。ここで、引張破壊強度や圧縮破壊強度を、単に「破壊強度」と呼んでもよい。
【0199】
たとえば、部材の接合構造201では、フック部213の側面部207と充填剤225との接合部227の破壊強度Csの値が充填剤225のフック部213によるせん断破壊強度Asの値以上の値になっている。さらに、部材の接合構造201では、充填剤225のフック部213によるせん断破壊強度Asの値が、木製の部材205のせん断破壊強度Nの値以上の値になっている。すなわち、破壊強度Csの値≧せん断破壊強度Asの値≧せん断破壊強度Nの値>破壊強度SNの値になっている。
【0200】
部材の接合構造201では、フック部213の側面部207に、充填剤225へのフック部213の接合力を高めるためのアンカー部239が設けられている。また、アンカー部239は、木製の部材205の孔203から引き抜く力を接合材221に加えたときの、フック部213が充填剤225を圧縮する力の値を軽減するために設けられている。また、アンカー部239は、木製の部材205の孔203に押し込む力を接合材221に加えたときの、フック部213が充填剤225を圧縮する力の値を軽減するために設けられている。アンカー部239は多数の凹凸で形成されている。
【0201】
たとえば、フック部213の側面部207にはオスネジが形成されている。これにより、フック部213の側面部207に、充填剤225へのフック部213の接合力を高めるためのアンカー部239が形成されていることになる。
【0202】
なお、フック部213の側面部207をオスネジ以外の他の形態にしてもよい。たとえば、フック部213の側面部を、図6(a)で示すように、大径部39と小径部41とが、フック部213の中心軸の延伸方向で、交互にならんでいる構成にしてもよい。また、フック部213として、鉄筋コンクリートに使用される異形鉄筋を素材として採用してもよい。
【0203】
ここで、図16で示す金属製のコネクタ241(図9で示す金属製のコネクタ53と同様な金属製のコネクタ)等について説明する。なお、図16で示す金属製のコネクタ241等は、図9で示すものと同様に構成されている。
【0204】
接合材221の孔突出部位219には、金属製のコネクタ241に設けられている設置部243に設置される被設置部245が設けられている。
【0205】
すなわち、部材の接合構造201は、接合材221と木製の部材205と金属製のコネクタ241とを備えて構成されている。接合材221の長手方向の端部には、金属製のコネクタ241に設けられている設置部243に設置される被設置部245が設けられている。
【0206】
被設置部245はたとえばオスネジで構成されており、金属製のコネクタ241に設けられている設置部(たとえばメスネジ)243に被設置部245のオスネジが螺合するようになっている。これにより、接合材221が、金属製のコネクタ241に一体的に設置されるようになっている。
【0207】
さらに説明すると、被設置部245が木製の部材205の孔203から突出している。そして、被設置部245が金属製のコネクタ241の設置部243に設置されており、金属製のコネクタ241が木製の部材205に接している。部材の接合構造201では、金属製のコネクタ241が設置された木製の部材205が、他の構造物(たとえばコンクリートの土台)246に設置されるようになっている。
【0208】
接合材221は、図17で示すように、スタッドボルト247とネジ部材249とを備えて構成されている。スタッドボルト247は、細長い円柱状の素材の長手方向の両端部にオスネジ251、253を設けた形態になっている。オスネジ251、253はたとえば転造ネジになっている。
【0209】
ネジ部材249は、細長いオスネジ状に形成されている。ネジ部材249の外周には、ネジ部材249の長手方向の全長にわたってオスネジ255が形成されている。ネジ部材249の長手方向の一方の端部には、メスネジ257が形成されている。オスネジ255の中心軸とメスネジ257の中心軸とは互いが一致している。
【0210】
ネジ部材249の外径(オスネジ255の山径もしくは谷径)の値は、スタッドボルト247の外径(オスネジ251、253の山径もしくは谷径の値よりも大きくなっている。
【0211】
接合材221では、ネジ部材249のメスネジ257にスタッドボルト247のオスネジ253が螺合することで、ネジ部材249とスタッドボルト247とが一体化している。
【0212】
接合材221では、スタッドボルト247のオスネジ251が、被設置部245になっている。接合材221では、スタッドボルト247の長手方向の中間部が変形部215になっている。スタッドボルト247の長手方向の中間部とは、たとえば、スタッドボルト247の、ネジ部材249に螺合している部位と金属製のコネクタ241に係合している部位とを除く部位である。また、接合材221では、ネジ部材249が、フック部213になっている。
【0213】
ここで、木製の部材のせん断破壊強度N、フック部の側面部と充填剤との接合部の破壊強度Cs、充填剤のフック部によるせん断破壊強度As、変形部の引張破壊強度(圧縮破壊強度)SNについて図16を参照しつつ説明する。
【0214】
木製の部材205の孔203の内径を「r1a」とし、孔203の深さを「L1a」とする。フック部213の外径(たとえばオスネジ255の山径)を「r2a」としフック部213の長さを「L2a」とする。変形部215の外径を「r3a」とし、フック部213を除く孔挿入部位217の長さを「L3a」とする。
【0215】
図16では、「L2a+L3a<L1a」になっており、「r3a<r2a<r1a」になっている。ここで、「L2a+L3a≒L1a」になっていてもよいし、「r1a≒r2a」になっていてもよい。
【0216】
木製の部材205のせん断破壊強度Nは、「N=π×r1a×L1a×fs」で表すことができる。「fs」は、木製の部材205の単位面積あたりのせん断破壊強度である。
【0217】
フック部213の側面部207と充填剤225との接合部227の破壊強度Csは、たとえば、Cs=π×r2a×L2a×Afs」で表すことができる。「Afs」は、充填剤107の単位面積あたりのせん断破壊強度である。
【0218】
充填剤229のフック部213によるせん断破壊強度Asは、As=π×r1a×L3a×Afs」で表すことができる。「Afs」は、充填剤225の単位面積あたりのせん断破壊強度である。
【0219】
変形部215の引張破壊強度(圧縮破壊強度)SNは、「SN=(r3a)×(π/4)×fe」で表すことができる。「fe」は、変形部215の単位面積あたりの引張破壊強度(圧縮破壊強度)である。
【0220】
図16で示す部材の接合構造201において、地震等により、木製の部材205が、他の構造物246や金属製のコネクタ241に対して上側に向かう所定の大きさ力が加わると、変形部215が延びて塑性変形する。これにより、木製の部材205の下面259と他の構造物246の上面261との間に間隙が形成される。
【0221】
上記間隙が形成された状態で、木製の部材205に、他の構造物246や金属製のコネクタ241に対して下側に向かう力が加わると、木製の部材205、接合材221、充填剤225で上述した力を受けるようになる。なお、木製の部材205の下面259と他の構造物246の上面261とが図16で示すように互いに接触している状態で木製の部材205に、他の構造物246や金属製のコネクタ241に対して下側に向かう力が加わる。このときには、木製の部材205の下面259と他の構造物246の上面261とが互いに押し合うので、木製の部材205、接合材221、充填剤225で上述した力をほとんど受けることが無い。
【0222】
部材の接合構造201では、接合材221に大きな衝撃力が加わった場合においては、変形部215が変形し衝撃力を吸収するようになっている。部材の接合構造201では、木製の部材205の孔203から引き抜く力を接合材221に加えたときに、フック部213の側面部207と充填剤225との接合部227に応力が発生するようになっている。また、部材の接合構造201では、木製の部材205の孔203に押し込む力を接合材221に加えたときに、フック部213の側面部207と充填剤225との接合部227に応力が発生するようになっている。
【0223】
そして、上記応力によって、木製の部材205の孔203から引き抜く力を接合材221に加えたときにおける充填剤225の圧縮力の値を軽減するように構成されている。また、木製の部材205の孔203に押し込む力を接合材221に加えたときにおける充填剤225の圧縮力の値を軽減するように構成されている。なお、充填剤225の圧縮力とは、フック部213が充填剤225を圧縮する力である。これにより、フック部213による圧縮で充填剤225が破壊されることを抑えることができる。
【0224】
また、部材の接合構造201では、木製の部材205の孔203から引き抜く力を接合材221に加えたときにおける、変形部215の引張破壊強度(圧縮破壊強度)SNの値が他の強度N、Cs、Asの値よりも小さくなっている。また、木製の部材205の孔203に押し込む力を接合材221に加えたときにおける、変形部215の引張破壊強度(圧縮破壊強度)SNの値が他の強度の値よりも小さくなっている。
【0225】
これにより、接合材221に衝撃力が加わったときにおける、木製の部材205のせん断破壊、フック部213の側面部207と充填剤225との接合部227の破壊および充填剤225のフック部213によるせん断破壊を防ぐことができる。
【0226】
また、部材の接合構造201では、フック部213の側面部207に、充填剤225へのフック部213の接合力を高めるためのアンカー部239が設けられているので、フック部213の側面部207と充填剤225との接合強度が高まっている。これにより、木製の部材205の孔203から引き抜く力を接合材221に加えたとき、および、木製の部材205の孔203に押し込む力を接合材221に加えたときにおける充填剤225のフック部213による圧縮力の値を軽減するようになっている。
【0227】
次に、図16で示す部材の接合構造201の変形例に係る部材の接合構造401について図18を参照しつつ説明する。
【0228】
部材の接合構造201では、木製の部材205が他の構造物246に設置されている。部材の接合構造401は、第1の木製の部材405が第2の木製の部材409に設置されている点が、部材の接合構造201と異なり、その他の点は、部材の接合構造201と同様に構成されており、同様の効果を奏するようになっている。
【0229】
すなわち、部材の接合構造401は、第1の木製の部材405と第2の木製の部材409と接合材433と充填剤439とを備えて構成されている。第1の木製の部材405には、第1の孔403が設けられている。第2の木製の部材409には、第2の孔407が設けられている。第2の木製の部材409は、第2の孔407と第1の木製の部材405の第1の孔403とがつながるようにして、第1の木製の部材405に設けられている。
【0230】
接合材433は、変形部411と第1のフック部419と第2のフック部427とを備えて構成されている。第1のフック部419は、第1の側面部413と第1の底面部415と第1の上面部417とを備えている。第1のフック部419は、第1の底面部415が変形部411に直接つながるようにして変形部411の長手方向の一方の端部に設けられている。
【0231】
第2のフック部427は、第2の側面部421と第2の底面部423と第2の上面部425とを備えている。第2のフック部427は、第2の底面部423が変形部411に直接つながるようにして変形部411の長手方向の他方の端部に設けられている。
【0232】
変形部411の外径の値は、第1のフック部419の外径の値よりも小さくなっており、変形部411の外径の値は、第2のフック部427の外径の値よりも小さくなっている。第1のフック部419の外径の値と第2のフック部427の外径の値とは互いが等しくなっている。
【0233】
接合材433では、第1のフック部419と変形部411の第1のフック部419側の部位とで第1の木製の部材405の第1の孔403に挿入されている第1の孔挿入部位429が形成されている。また、接合材433では、第2のフック部427と変形部411の第2のフック部427側の部位とで第2の木製の部材409の第2の孔407に挿入されている第2の孔挿入部位431が形成されている。
【0234】
充填剤439は、第1の木製の部材405の第1の孔403の内面435と第1の孔挿入部位429との間、および、第2の木製の部材409の第2の孔407の内面437と第2の孔挿入部位431との間に充填されている。なお、第1の孔403に充填されている充填剤439と第2の孔407の充填されている充填剤439とは互いがつながっており、一体化している。
【0235】
第1のフック部419の第1の側面部413には、充填剤439への第1のフック部419の接合力を高めるための第1のアンカー部441が設けられている。第2のフック部427の第2の側面部421には、充填剤439への第2のフック部427の接合力を高めるための第2のアンカー部443が設けられている。
【0236】
接合材433は、ネジ部材445が、スタッドボルト447の両端部に設けられている点が、図16図17で示す接合材221と異なり、その他の点は、接合材221と同様に構成されている。
【0237】
また、部材の接合構造401では、接合材433と第1の孔403と第2の孔407と充填剤439とが、第1の木製の部材405と第2の木製の部材409とが互いに接している面に対して対称になっている。
【0238】
また、部材の接合構造401における木製の部材405、409のせん断破壊強度N、フック部419、427の側面部413、421と充填剤439との接合部の破壊強度Csを、部材の接合構造201の場合と同様に考えることができる。さらに、充填剤439のフック部419、427によるせん断破壊強度As、変形部411の引張破壊強度SNも、部材の接合構造201の場合と同様に考えることができる。
【0239】
なお、部材の接合構造401において、第1の木製の部材405を第2の木製の部材409から引き離す力を第1の木製の部材405に加えたときに発生し、また、接合材433の変形部411が塑性変形して延びてしまったことで第2の木製の部材409から第1の木製の部材405が僅かに離れている状態で第1の木製の部材405を第2の木製の部材409に近づける力を第1の木製の部材405に加えたときに発生する応力によって、第1の木製の部材405を第2の木製の部材409から引き離す力を第1の木製の部材405に加えたときに発生し、また、接合材433の変形部411が塑性変形して延びてしまったことで第2の木製の部材409から第1の木製の部材405が僅かに離れている状態で第1の木製の部材405を第2の木製の部材409に近づける力を第1の木製の部材405に加えたときにおける、各フック部419、427それぞれが充填剤439を圧縮する力の値を軽減するように構成されていてもよい。
【0240】
また、部材の接合構造401において、第1の木製の部材405を第2の木製の部材409から引き離す力を第1の木製の部材405に加えたときに発生し、また、接合材433の変形部411が塑性変形して延びてしまったことで第2の木製の部材409から第1の木製の部材405が僅かに離れている状態で第1の木製の部材405を第2の木製の部材409に近づける力を第1の木製の部材405に加えたときにおける、各木製の部材405、409それぞれのせん断破壊強度Nの値、各フック部419、427それぞれの側面部413、421と充填剤439との接合部の破壊強度Csの値、充填剤439の各フック部419、427それぞれによるせん断破壊強度Asの値のいずれもが、変形部411の引張破壊強度SNの値よりも大きくなっていてもよい。
【0241】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0242】
201 部材の接合構造
203 孔
205 木製の部材
207 側面部
209 底面部
211 上面部
213 フック部
215 変形部
217 孔挿入部位
219 が孔突出部位
221 接合材
223 孔の内面
225 充填剤
227 接合部
239 アンカー部
241 金属製のコネクタ
243 設置部
245 被設置部
401 部材の接合構造
403 第1の孔
405 第1の木製の部材
407 第2の孔
409 第2の木製の部材
411 変形部
413 第1の側面部
415 第1の底面部
417 第1の上面部
419 第1のフック部
421 第2の側面部
423 第2の底面部
425 第2の上面部
427 第2のフック部
429 第1の孔挿入部位
431 第2の孔挿入部位
433 接合材
435 第1の孔の内面
437 第2の孔の内面
439 充填剤
441 第1のアンカー部
443 第2のアンカー部
As 充填剤のフック部によるせん断破壊強度
Cs フック部の側面部と充填剤との接合部の破壊強度
N 木製の部材のせん断破壊強度
SN 変形部の破壊強度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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