(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161558
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】導電回路布帛
(51)【国際特許分類】
H05K 1/09 20060101AFI20231030BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20231030BHJP
D06M 11/83 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H05K1/09 A
H05K3/12 610B
D06M11/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033081
(22)【出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2022071767
(32)【優先日】2022-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106817
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 みふね
(72)【発明者】
【氏名】竹内 智也
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 俊輔
【テーマコード(参考)】
4E351
4L031
5E343
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351BB01
4E351CC11
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
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4E351DD12
4E351DD19
4E351DD20
4E351GG20
4L031AA18
4L031AB31
4L031BA04
4L031CB12
4L031DA15
5E343AA02
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5E343BB22
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5E343FF02
5E343FF05
5E343GG08
5E343GG11
(57)【要約】
【課題】滲みがなくシャープな輪郭を有する導電性の回路が表面に形成された導電回路布帛に関する。
【解決手段】繊維材料からなる布帛の表面に、金属を含有する導電パターンからなる導電回路が形成されており、前記導電パターンの輪郭領域の金属量M
O(μg/mm
2)が、前記導電パターンの内側領域の金属量M
I(μg/mm
2)よりも小さいことを特徴とする、導電回路布帛である。前記輪郭領域の金属量M
Oと前記内側領域の金属量M
Iとの比(M
O/M
I)が0.3~0.9であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料からなる布帛の表面に、金属を含有する導電パターンからなる導電回路が形成されており、前記導電パターンの輪郭領域の金属量MO(μg/mm2)が、前記導電パターンの内側領域の金属量MI(μg/mm2)よりも小さいことを特徴とする、導電回路布帛。
【請求項2】
前記輪郭領域の金属量MOと前記内側領域の金属量MIとの比(MO/MI)が0.3~0.9であることを特徴とする、請求項1に記載の導電回路布帛。
【請求項3】
前記輪郭領域と前記内側領域の間に、金属量MMがMO<MM<MIを満たす中間領域が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の導電回路布帛。
【請求項4】
前記導電パターンが、長手方向と幅方向とを有するライン状であって、幅方向に内側領域と該内側方向の両側にある輪郭領域とを有する、幅100μm以上のライン状パターンを含むものである、請求項1又は2記載の導電回路布帛。
【請求項5】
請求項1記載の導電回路布帛を製造する方法であって、印刷方式を用いて導電パターンを印刷する印刷工程を含む、導電回路布帛の製造方法。
【請求項6】
前記印刷工程が、インクジェット印刷装置を用いてインクジェット方式で導電パターンを印刷する工程である、請求項5記載の導電回路布帛の製造方法。
【請求項7】
前記印刷工程が、平均粒子径1~200μmの金属粒子を含むインク組成物を用いて印刷する工程である、請求項5記載の導電回路布帛の製造方法。
【請求項8】
前記印刷工程ののち、金属めっき処理を行うめっき処理工程を含む、請求項5記載の導電回路布帛の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電回路布帛に関する。より詳しくは、滲みがなくシャープな輪郭を有する導電性の回路が表面に形成された導電回路布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有する回路基板として、従来ポリイミド樹脂などからなるフィルム上に銅箔などの導電性材料を貼り合わせた所謂FPCが多く利用されてきた。このようなFPCは薄く、柔軟性があるため屈曲部や可動部での配線として用いられている。しかしながら、その柔軟性や屈曲耐久性はウェアラブルデバイスなどで利用できるレベルには達していない。
【0003】
より柔軟であり、屈曲耐久性の高い導電回路材料として、繊維からなる布帛上に導電回路を形成した、導電回路布帛が検討されている。しかし布帛上に導電性回路を形成するにあたっては、金属箔を貼りつける方法では剥離の問題や変形による破断の問題を解消できない。そのため導電性材料を含有したインクを用いて印刷手段により導電回路を形成したり、無電解めっき用触媒を含有したインクで導電回路となるパターンを印刷した後、無電解めっきを実施して布帛上に導電回路を形成したりする方法が検討されている。
【0004】
インクによる印刷手段を利用した場合は、インクの滲みによって回路形状の精度が低下する点が大きな課題であった。回路形状に滲みがある場合、微細な回路パターンを形成することが困難になる。滲みによって短絡などの不具合が生じてしまうためである。
【0005】
そこで特許文献1には、絶縁性の布地における電極又は配線を形成しない領域をマスキングした後、この布地に導電性材料を含む塗料を塗布し、その後マスキングを除去することにより布帛上に電極又は配線を形成する、導電性布帛の製造方法が開示されている。しかし、マスキングによる方法では滲みを解消することは困難であり、製造工程も増えてしまう。
【0006】
布帛に樹脂による印刷下地層を形成してインクの滲みを防止する方法も考えられるが、この方法では布帛の柔軟性を低下させてしまう。本出願人は特許文献2において、特定の生地表面粗さを有する布帛に平均粒子径が200nm以下である金属ナノ粒子の分散液を塗布し、その後これを焼成して金属導電パターンを形成する、導電性布帛の製造方法を開示している。ここにおいて、金属ナノ粒子の分散液を塗布するに際し、その滲みを防止するために、予め布帛にカチオン系界面活性剤等を付与する方法を提案している。しかし、カチオン系界面活性剤の使用は、排水処理の負荷が高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-151018号公報
【特許文献2】特開2019-26946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、より簡易な方法で製造可能な、回路形状に滲みのない導電回路布帛を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意研究の結果、回路を形成している導電パターンの中心から輪郭方向へだらだらと金属量が減少する滲みの原因となるような構造を回避し、中心から輪郭方向へ階段状に金属量が減少する(金属量に階段状に勾配を持たせる)といった新たな金属濃度構造とすることにより、滲みのない回路形成が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の導電回路布帛は、繊維材料からなる布帛の表面に、金属を含有する導電パターンからなる導電回路が形成されており、前記導電パターンの輪郭領域の金属量MO(μg/mm2)が、前記導電パターンの内側領域の金属量MI(μg/mm2)よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
前記輪郭領域の金属量MOと前記内側領域の金属量MIとの比(MO/MI)が0.3~0.9であることが好ましい。
【0012】
前記輪郭領域と前記内側領域の間に、金属量MMがMO<MM<MIを満たす中間領域が設けられていてもよい。
【0013】
前記導電パターンは、長手方向と幅方向とを有するライン状であって、かつ幅方向の両端における輪郭領域と該輪郭領域に挟まれた内側領域とを有する、幅100μm以上のライン状パターンを含むものが好ましい。
【0014】
上記導電回路布帛を製造する方法としては、印刷方式を用いて導電パターンを印刷する印刷工程を含む方法が好ましい。
前記印刷工程は、インクジェット印刷装置を用いてインクジェット方式で導電パターンを印刷する工程であることが好ましい。
【0015】
前記印刷工程は、平均粒子径1~200μmの金属粒子を含むインク組成物を用いて印刷する工程であることが好ましい。
前記印刷工程ののち、金属めっき処理を行うめっき処理工程を含む方法により導電回路布帛を製造するのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、布帛の柔軟性を損なうことなく、滲みがなく高精細な導電パターンを有する導電回路布帛を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の導電回路布帛における導電パターンの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の導電回路布帛における導電パターンの別の例を示す概略図である。
【
図3】本発明の導電回路布帛における導電パターンの更に別の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の導電回路布帛は、基材として繊維材料からなる布帛が用いられる。具体的な繊維材料としては、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、ポリアクリル、アラミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール等の合成繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、炭素繊維等の無機繊維が挙げられ、これらに限定されない。繊維材料としては、汎用性や柔軟性、強度の観点から合成繊維であることが好ましい。なかでもポリアミド、ポリエステルが特に好ましい。
【0019】
布帛の厚みは特に制限されないが、好ましくは10~5000μm、より好ましくは50~1000μmである。
【0020】
前記繊維材料からなる布帛としては特に限定されず、織物、編物、不織布等とすることができる。布帛を構成する糸条についても特に限定されない。前記布帛は、必要に応じて染色や各種仕上げ加工が施されていてもよい。
【0021】
本発明の導電回路布帛においては、前記布帛の表面に導電パターンが形成されている。前記表面とは、前記布帛のオモテ面又はウラ面、或いはその両方であることができる。導電パターンは単独で、あるいは複数の導電パターンが連結して導電回路を形成している。
【0022】
前記導電パターンは金属を含有する。前記導電パターンは前記布帛の表面のみならず、前記布帛の厚み方向に浸透するように形成されていてもよい。前記導電パターンは前記布帛のオモテ面からウラ面まで貫通するように浸透した状態とすることもできる。
【0023】
導電パターンの形状は特に限定されず、長手方向と短手方向(幅方向)とを有するライン状(線状、帯状、リボン状など)、ラインが円形等に曲がり両端が閉じて中央などに開口部を有するリング状(ドーナツ状など)、開口部を有さず中央部分も閉じた円状などの形状を含むものが挙げられる。
本発明の導電パターンは、上記のライン状、リング状などさまざまな形状のパターンをそれぞれ単独又は複数種組み合わせたものであってもよい。
【0024】
ライン状パターンの一例を
図1に示す。
図1に示すライン状導電パターンでは、長手方向と該長手方向に対しほぼ直角方向(短手方向あるいは幅方向)に幅Wを有する。ラインは長手方向に直線状に伸びていても、適宜湾曲していてもよい。また、ラインの幅が均一であっても均一でなくてもよい。好ましくはほぼ均一のものである。
リング状パターンの一例を
図2に示す。リングは円形に限らず、ラインの長手方向の両端が閉じていれば形状は問われない。
【0025】
本発明における導電パターンの形状としては、ライン状又はリング状が好ましく、特に好ましくはライン状である。また、ライン状又はリング状の形状において、ラインの幅は特に制限されず当該技術分野における通常の導電パターンで採用しうるライン幅であればよいが、本発明特有の効果を発揮しうる適切な幅として好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上である。ライン幅の上限は特に限定されず、当該技術分野における通常の導電パターンで採用しうるライン幅の上限であればよい。
【0026】
本発明においては、前記導電パターンは、少なくとも輪郭領域と内側領域とを有する。本発明で輪郭領域及び内側領域における「領域」とは、「その領域内では金属濃度がほぼ一定である領域」をいう。例えば、輪郭領域とは、導電パターンの輪郭に沿い且つパターンの中心に向かって略一定幅を有するエリアであって該エリア内では金属濃度(単位面積当たりの金属量)がほぼ一定である領域をいう。また、内側領域とは、導電パターンの中心を該領域の中心としてそこから輪郭方向へ向かって略一定幅を有するエリアであって該エリア内では金属濃度がほぼ一定である領域をいう。
【0027】
なお、「金属濃度がほぼ一定」とは、社会通念上一定程度とみなされる範囲であれば特に制限はないが、例えば変化率がプラスマイナス8%以内が好ましく、プラスマイナス4%以内がより好ましい。「略一定幅」とは、社会通念上一定程度とみなされる幅範囲であれば特に制限はないが、例えば変化率がプラスマイナス15%以内が好ましく、プラスマイナス8%以内がより好ましい。ただし、領域の幅は導電パターンの形状や用途に応じて適宜変化率が調整される場合がある。
【0028】
例えば、前記導電パターンがライン状である場合、輪郭領域はライン状導電パターンの長手方向の輪郭に沿い、且つ同パターンの幅方向の中心に向かって略一定幅を有するように形成されるエリアである。ライン状導電パターンの場合、通常、輪郭領域は幅方向の両側にそれぞれ形成される。
【0029】
内側領域は、前記ライン状導電パターンの幅方向における中心を該領域の幅方向における中心として、そこから輪郭方向へ向かって略一定幅を有するように、長手方向に沿って形成されるエリアである。
【0030】
本発明の導電パターンにおいては、前記輪郭領域における金属量MOが、前記内側領域における金属量MIよりも小さいことが肝要である。前記導電パターンを形成する際、そのように金属量MOと金属量MIとを制御することによって、滲みのない導電パターンを形成することができる。なお、ここでいう「金属量」は、単位面積当たりの金属量(金属濃度)である。
【0031】
ここで前記ライン状導電パターンにおける前記輪郭領域と前記内側領域の一例について、
図1を参照して説明する。
図1は導電回路上の配線などに用いられる長いライン状の導電パターン11の例である。この例では、ライン状の導電パターン11は均一な幅Wを有する。長さについては適宜設計されるため、この例では長さ方向の端部については省略している。
【0032】
ライン状の導電パターン11の幅方向について、この例では3つの領域に分けられている。輪郭領域21と内側領域31と輪郭領域22である。輪郭領域21は図中の導電パターン11の上側外縁部に相当する。長さ方向の端部については省略しているため、
図1の場合、導電パターン11の外縁部は図中の上側と下側の2つであり、それぞれを輪郭領域21、輪郭領域22として画定している。
【0033】
この例では便宜上、輪郭領域21と輪郭領域22とはそれぞれ同一の幅W
Oを有するものとして描かれているが、輪郭領域21と22はそれぞれ異なる幅を有していてもよい。
図1では2つの輪郭領域21、22に挟まれた領域を内側領域31としている。
図1の例では内側領域31の幅は(W-2W
O)となる。輪郭領域21と22がそれぞれ異なる幅Wo1とWo2を有している場合、内側領域31の幅はW-(W
O1+W
O2)となる。
【0034】
導電パターンがライン状の場合、ライン幅(
図1中、W)は特に制限されないが、上述したように本発明特有の効果を発揮しうる適切な幅として好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上である。また、ラインの片側の輪郭領域(
図1中、21又は22)の幅は好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上である。内側領域(
図1中、31)の幅は好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。
【0035】
導電パターンにおいて輪郭領域が占める範囲は特に限定されないが、
図1のようなライン状導電パターンを例に挙げれば、少なくとも片側の輪郭領域の幅(
図1中、輪郭領域21の幅;幅W
O)がライン幅(
図1中、幅W)の5~30%となるように設定することができる。幅Wに対する幅W
Oの割合がこの範囲内であれば、高精細な導電パターンを形成することができるうえ、導電パターンの導通性を損なうことがない。
【0036】
輪郭領域22についても同様であり、輪郭領域21と同じ幅でもよく、異なる幅であってもよい。その場合、輪郭領域21と22のそれぞれ異なる幅Wo1とWo2の少なくとも一方が幅Wの5~30%となるように設定することができる。より好ましくは、幅Wo1とWo2の両方がそれぞれ幅Wの5~30%となるように設定する。
【0037】
図1において輪郭領域21(又は22)の金属量M
Oは、内側領域31の金属量M
Iよりも小さいことが肝要である。金属量M
Oや金属量M
Iは、単位面積当たりの金属量(μg/mm
2)として定義される。ここで「面積」というのは、導電回路布帛の厚さや空隙、表面凹凸を考慮せず、前記導電回路布帛を平面視した際の面積を意味する。金属量M
Oや金属量M
Iの測定方法は後述する。輪郭領域21と輪郭領域22の金属量は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
好ましい態様では、輪郭領域(
図1の例では21又は22)の金属量M
Oは1.0~90.0μg/mm
2であることが好ましく、3.0~30.0μg/mm
2であることがより好ましい。内側領域(
図1の例では31)の金属量M
Iは3.0~100.0μg/mm
2であることが好ましく、5.0~50.0μg/mm
2であることがより好ましい。また、金属量M
Oと金属量M
Iの比(M
O/M
I)が0.3~0.9であることが好ましく、0.4~0.7であることがより好ましい。このような条件を満たす金属量であれば、高精細であり導通性に優れた導電パターンを得ることができる。
【0039】
前記導電パターンの各領域(輪郭領域、内側領域)の金属量は以下の方法によって測定される。前記導電パターン中の測定する領域を、基材である布帛とともに切り出して試料とし、その面積を測定する。前述のとおり、面積とは厚さや空隙、表面凹凸を考慮しない、平面視した際の面積とする。次に切り出した試料を濃度50質量%に希釈した硝酸に浸漬させ金属層を完全に溶解させる。このようにして得られた、金属が溶解した水溶液を所定の濃度に希釈し、原子吸光分析によって水溶液中の金属濃度を測定する。切り出した試料の面積と原子吸光分析で得られた金属濃度から単位面積あたりの金属量(μg/mm2)を算出する。
【0040】
図2はリング状の導電パターン12の例である。この例で導電パターン12は幅Wを有している。導電パターン12の外側外縁部には幅W
Oのリング状の輪郭領域23が画定されている。また、導電パターン12の内側外縁部には同じく幅W
Oのリング状の輪郭領域24が画定されている。2つの輪郭領域23、24で挟まれた領域を内側領域32としている。導電パターンの幅Wに対する輪郭領域23、24の幅W
Oの範囲に関しては
図1の例と同様である。また輪郭領域23、24における金属量M
Oと内側領域32における金属量M
Iに関しても
図1での説明と同様である。
【0041】
以上述べたように、本発明の導電回路布帛における導電パターンにおいては、それぞれの領域内でほぼ一定の金属量を有する輪郭領域と内側領域とが少なくとも設けられており、輪郭領域の金属量は内側領域の金属量より少なく設定される。例えばライン状パターンの場合、幅方向の中心から輪郭方向に向けて金属量を減少させるが、その減少の仕方を階段状に変化させること、その手段としてパターンの輪郭に沿って内側領域より少ない一定金属量の輪郭領域を設けることによって、新たな金属濃度構造を有する導電パターンが得られる。パターンの中心から輪郭方向へだらだらと金属量が減少する(滲みの原因となるような)構造を回避し、中心から輪郭方向へ階段状に金属量が減少する新たな金属濃度構造とする。このような従来とは異なる金属濃度構造を採用することによって、滲みのないシャープな輪郭を有する導電パターンを形成することができる。
【0042】
本発明の導電回路布帛における導電パターンでは、輪郭領域と内側領域との間に中間領域を設けてもよい。
中間領域の幅WMは特に限定されないが、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上である。中間領域の金属量MMは輪郭領域の金属量MO、内側領域の金属量MIとの間で、MO<MM<MIの関係を満たすことが好ましい。
【0043】
中間領域においては、MO<MM<MIの関係を満たす限りにおいて、内側領域に接している部分から輪郭領域に接している部分へと徐々に金属量MMが減少するように、金属量に勾配を設けて形成されていてもよい。また、中間領域として、輪郭領域と内側領域の間で複数領域を設け、内側領域に接している部分から輪郭領域に接している部分へと段階的に金属量MMが減少するように当該複数の中間領域の金属量を調整することもできる。
【0044】
輪郭領域と内側領域との間に中間領域を設ける態様として、
図3を例にして説明する。
図3は本発明の導電回路布帛における任意の導電パターンについて、その外縁部近傍を拡大して示している。
図3に示すように輪郭領域25と内側領域33との間に、中間領域41を設けてもよい。
【0045】
中間領域の金属量MMは1.0~95.0μg/mm2であることが好ましく、4.0~40.0μg/mm2であることがより好ましい。
また、金属量MOと金属量MMの比(MO/MM)は0.3~0.9であることが好ましく、0.4~0.7であることがより好ましい。金属量MMと金属量MIの比(MM/MI)は0.3~0.9であることが好ましく、0.4~0.7であることがより好ましい。このような条件を満たす金属量であれば、高精細であり導通性に優れた導電パターンを得ることができる。
【0046】
前記導電パターンに含有される金属は、銅、銀、金、ニッケル、鉄、スズ、アルミニウム、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、インジウム、ルビジウム、コバルトから選択される一種、或いは複数種からなる混合物や合金とすることができる。中でも導電性が高いこと、コスト面で優れることから銅であることが好ましい。
【0047】
前記導電パターンに含有される金属の形態としては、特に限定されない。より高精細な導電パターンを形成するために、前記金属が平均粒子径1~200nmの金属粒子を含有していることが好ましい。この金属粒子を核とするめっき処理を実施して、同種のまたは異種の金属を析出させるようにしてもよい。これによれば、より金属量を増大して導電性を高めつつ、導電パターンの外縁部分をシャープに形成することができる。
【0048】
金属粒子の平均粒子径とは、凝集を加味しない一次粒子径のことであり、本技術分野で公知の任意の手法、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて実測した100個以上の粒子の球換算粒子径(各粒子を同体積の球に換算した時の直径)の算術平均値によって表すことができる。具体的には、本明細書における「金属粒子の平均粒子径」とは、透過型電子顕微鏡によって実測した100個の金属粒子の球換算粒子径の算術平均値を意味する。
【0049】
前記導電パターンは上記説明で用いた形状に限定されず、自由な形状とすることができる。導電パターン単独で、或いは複数の導電パターンを組み合わせて自由な導電回路を形成することができる。また、導電パターンの外縁部分に滲みがなく、シャープな形状とすることができるため、隣接する導電パターン同士の間隔を小さくすることができる。これにより、高精細で複雑な導電回路を高密度に、コンパクトに製造することができる。
【0050】
本発明の金属を含有する導電パターンからなる導電回路布帛は、好ましくは布帛上に、上述した金属濃度構造となるように導電材料を含有するインクを用いて導電パターンを形成することにより、製造される。
【0051】
前記導電パターンの形成には印刷方法を採用するのが好ましい。印刷方法としてはスクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ゼログラフィー、スタンピング、フレキソ印刷、オフセット印刷、塗装、エアブラッシング等などが挙げられ、いずれの方法においても金属を含有するインク組成物が用いられる。これらの方法のうち、特に好ましくはインクジェット方式による印刷方法が採用される。
【0052】
インクジェット方式による印刷方法の場合、例えば内側領域用ノズルと輪郭領域用ノズルなど複数ノズルを備えたライン型印刷装置などを用い、各ノズルでインクの塗布量や濃度に差を設けることにより本発明の導電パターンを形成する方法、あるいは縦横方向に移動可能な1つのノズルを用いて金属量を調整しながら印刷する走査型の印刷方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
スクリーン印刷であれば、例えば輪郭領域パターンと該輪郭領域パターンより版の開口率が高い内側領域パターンの2つの版を用意し、2回印刷することで本発明の導電パターンを形成することができるが、これらに限定されない。
【0054】
前記インク組成物は金属粒子を含有したインク組成物であることが好ましい。特に、平均粒子径が1~200nmの金属粒子を含有していることが好ましい。このような平均粒子径の金属粒子を含有しているインク組成物が布帛の表面に塗布されると、布帛組織の間隙のみならず、布帛を構成している糸条の間隙、つまり単繊維と単繊維との隙間にまで金属粒子が入り込む。その結果、形成される導電パターンの均一性が向上し、金属の脱落が発生し難くなる。
【0055】
前記インク組成物は金属粒子の分散液であり、金属粒子が溶媒中に適切に分散されている溶液を意味する。溶媒中の金属粒子は凝集し易いため、分散剤が添加され金属粒子の表面を被覆することにより凝集が抑制され、金属粒子の分散を安定化させている。
【0056】
前記溶媒としては特に限定されないが、水、アルコール系溶媒(モノアルコール系溶媒、ジオール系溶媒、多価アルコール系溶媒等)、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、グライム系溶媒、ハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
前記分散剤としては、公知の任意のものを適宜選択して用いればよい。例えばアミン化合物、チオール化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アミン化合物は、好ましくは脂肪族アミン化合物であり、より好ましくはアルキル部分の炭素原子数が4~10の脂肪族アミン化合物である。脂肪族アミン化合物の例としては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアルキルアミン、オレイルアミン等のアルケニルアミン等が挙げられる。チオール化合物は、好ましくは脂肪族チオール化合物である。脂肪族チオール化合物の例としては、ヘキサンチオール、ペンタンジチオール、デカンチオール、ドデカンチオール等のアルキルチオールが挙げられる。分散剤は、単独または2種以上を混合して用いてもよい。炭素原子数の小さい分散剤を使用することにより、容易な条件で脱離または分解させることができる。
【0058】
前記インク組成物における金属粒子の配合割合は、インク組成物の全質量に対して0.1~70質量%が好ましく、1~60質量%であることがより好ましく、更に好ましくは10~50質量%である。
【0059】
前記インク組成物には金属粒子、溶媒、分散剤の他、印刷適性を調整する目的で公知の添加剤が添加されていてもよい。添加剤の例としては、増粘剤、安定剤などが挙げられる。
【0060】
ピエゾ方式のインクジェット印刷装置を用いて、基材となる布帛の表面に金属粒子を含有する前記インク組成物を塗布して導電パターンを形成する方法を例にして具体的に説明する。例えば複数ノズルを備えたインクジェットヘッドを有するインクジェット印刷装置においては、インクタンクからインク供給路を介し、ノズル毎に圧電素子が配列されているインクジェットヘッドにインクが供給される。
【0061】
次に、形成する導電パターンに相当する画像データを作成し、輪郭領域と内側領域を画定する。
図1の導電パターンの場合を例にすれば、前記画像データはライン状の導電パターンの幅Wと、二つの輪郭領域の幅W
Oとを保持する。また前記画像データは輪郭領域と内側領域の目標金属付与量をそれぞれ保持する。
【0062】
前記画像データをもとに導電パターンの各領域とインクジェットヘッドの各ノズルとを対応させ、電気信号を各ノズルに設けられた圧電素子に送る。電気信号を受信した圧電素子が駆動することでインクがノズル液滴として吐出される。
【0063】
複数ノズルにおける各ノズルは、それぞれインク吐出圧力などを調整することによりノズル毎に異なる吐出量(塗布量)とすることが可能である。かかる機能を用いて、各ノズル毎に前記画像データに基づいて設定した目標金属付与量になるようインク吐出量を調整することができる。あるいは、各ノズル毎に異なる組成(異なる金属濃度)のインクを用いることもできる。これにより、印刷後の導電パターンの各領域における金属量に、所望の階段状勾配をつけることができる。
【0064】
単一ノズルを使用したインクジェット印刷装置(例えば走査型印刷装置)を用いる場合、当該単一ノズルを縦横に走査しながら制御された吐出量(あるいは制御された液滴サイズ)で吐出を行うことで、内側領域と輪郭領域の金属量勾配を制御することができる。
【0065】
中間領域を設ける場合も、同様に複数ノズルを備えたライン型インクジェット印刷装置又は単一ノズルの走査型インクジェット印刷装置などを用いることができる。そして、内側領域から輪郭領域に向かって単位面積あたりの金属量が段階的に減少するようにインク吐出量などを設定することができる。
【0066】
輪郭領域と内側領域の目標金属付与量は、基材としての布帛の状態や、得られる導電パターンの目標抵抗値などを基にして適宜決定される。インクジェット印刷装置では、前記電気信号によって圧電素子の駆動を制御できるので、インクの吐出量や吐出する液滴数を変化させることができる。更にインクジェットヘッド或いは被印刷物である布帛の走査の制御と圧電素子の駆動の制御とを組み合わせることにより、輪郭領域と内側領域の金属付与量に差を設けることができる。
【0067】
本発明の導電回路布帛における導電パターンは、上記インクジェット印刷によって金属粒子を付与して形成された後、更に金属めっき処理が施されていてもよい。これによれば輪郭領域、内側領域ともに金属量が増加し、より導電性が高められた導電回路布帛を製造することができる。また、導電パターンの布帛に対する固着強度が高まり、脱落し難いものとすることができる。この場合、各領域における金属量は、インクジェット印刷によって付与された金属粒子の量と、金属めっき処理によって析出した金属の量との合算となる。
【0068】
金属めっき処理としては、電気めっき処理及び無電解めっき処理が挙げられ、いずれでもよい。好ましくは、無電解めっき処理が用いられる。めっき処理で用いられる金属は、前記インク組成物に含まれる金属粒子と同種であっても異種であってもよい。好ましくは、インク組成物に含まれる金属粒子とめっき処理で用いる金属とを同種とする。さらに好ましくは、インク組成物に含まれる金属粒子とめっき処理の金属はいずれも銅が用られる。
【0069】
金属めっき処理は従来公知の手法を採用することができ、使用する薬剤や装置、条件など特に限定されるものではない。析出させる金属種や金属の量などにより、最適な条件を選択して実施することができる。
【0070】
例えば、無電解めっき処理を行う場合、布帛上に導電パターンをインク組成物で印刷したのち、インク組成物の溶媒を加熱や乾燥などによって除去する。次いで、前記布帛を無電解めっき処理液に浸漬して無電解めっき処理を行う。
【0071】
本発明の導電回路布帛に形成される導電パターンは、その表面抵抗値が、好ましくは10MΩ/□未満、より好ましくは10KΩ/□未満という良好な導電性を備える。
【0072】
本発明の導電回路布帛は、最終的な使用目的に応じて、形成された導電パターン上にカバーコート(保護膜)を更に形成してもよい。カバーコートは、例えば少なくとも金属導電パターンを覆うように形成すればよく、布帛片面全体等を覆うように形成してもよい。カバーコートは主に、布帛上に形成された金属導電パターンの絶縁、防水及び/又は断裂防止等を目的として形成される。カバーコートに用いられる樹脂材料としては、特に制限されないが、好ましくはウレタン系樹脂又はシリコーン系樹脂等である。より具体的には、ポリウレタン樹脂又はシリコーン樹脂等が挙げられる。更に具体的には、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。カバーコートの厚みは特に制限されないが、5~20μm程度である。
【実施例0073】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0074】
[滲みの評価方法]
基材となる布帛に対して、ライン状の導電パターンを形成する。形成された導電パターンについて、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製)を用い、透過照明にて実際の幅(透過光を遮光している領域)の測定を行った。得られた実際の幅が、各実施例において設定した幅(W)よりも増加している割合(%)を増加率とし、次のとおり評価した。
〇:増加率が30%未満
×:増加率が30%以上
【0075】
[実施例1]
基材となる布帛として、ポリエステル平織物(経糸:ポリエステル加工糸33dtex/36f、緯糸:ポリエステル加工糸69dtex/150f、織密度:経189本/25.4mm、緯120本/25.4mm、厚み90μm)を用いた。
金属粒子を含有するインク組成物として「IJ-02」(石原ケミカル株式会社製)を用いた。このインク組成物は、平均粒径70nmの銅粒子35~45質量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル50~60質量%、及び活性剤(5%質量未満)を含有する。
【0076】
前記布帛に対してインクジェット印刷装置(セーレン株会社製、商品名「SIT-M10」、ノズル数;3個以上)を用いて前記インク組成物を塗布して、
図1と同様のライン状導電パターンを形成した。導電パターンの幅Wは600μm、輪郭領域の幅W
Oは160μmに設定をした。また、輪郭領域のインク塗布量は18pl/dot、内側領域のインク塗布量は30pl/dotに設定し、解像度300dpiにて2回印刷した。印刷後、65℃のオーブンにて5分間乾燥を行い、溶剤を揮発させた。
【0077】
導電パターンが印刷された布帛を、塩化銅二水和物8.75g/L、ウレタン樹脂「EDP-300」(株式会社ADEKA製)20g/L、32質量%水酸化ナトリウム水溶液40mL/L、37質量%ホルムアルデヒド水溶液8.75mL/Lを含む40℃の無電解銅めっき液に20分間浸漬して無電解めっき処理を実施した。その後水洗し、65℃のオーブンにて10分間乾燥を行った。得られた導電回路布帛の導電パターンにおける各領域の金属量は、輪郭領域で37.6μg/mm2、内側領域で42.7μg/mm2であり、MO/MI=0.9であった。滲みの評価は○判定であった。
【0078】
[実施例2]
導電パターンの幅Wは1000μm、輪郭領域の幅WOは240μmに設定して、輪郭領域のインク塗布量は6pl/dot、内側領域のインク塗布量は24pl/dotに設定し、解像度300dpiにて2回印刷した。それ以外は実施例1と同様にして導電布帛を得た。得られた導電回路布帛の導電パターンにおける各領域の金属量は、輪郭領域で11.8μg/mm2、内側領域で38.6μg/mm2であり、MO/MI=0.3であった。滲みの評価は○判定であった。
【0079】
[実施例3]
導電パターンの幅Wは5000μm、輪郭領域の幅WOは320μmに設定して、輪郭領域のインク塗布量は12pl/dot、内側領域のインク塗布量は30pl/dotに設定し、解像度300dpiにて2回印刷した。それ以外は実施例1と同様にして導電布帛を得た。得られた導電回路布帛の導電パターンにおける各領域の金属量は、輪郭領域で20.4μg/mm2、内側領域で42.7μg/mm2であり、MO/MI=0.5であった。滲みの評価は○判定であった。
【0080】
[実施例4]
導電パターンの幅Wは1000μm、輪郭領域の幅WOは160μmに設定して、輪郭領域のインク塗布量は12pl/dot、内側領域のインク塗布量は42pl/dotに設定し、解像度300dpiにて2回印刷した。その後、無電解銅めっき液への浸漬を46分間にしたこと以外は実施例1と同様にして導電布帛を得た。得られた導電回路布帛の導電パターンにおける各領域の金属量は、輪郭領域で45.3μg/mm2、内側領域で66.8μg/mm2であり、MO/MI=0.7であった。滲みの評価は○判定であった。
【0081】
[実施例5]
導電パターンの幅Wは1000μm、輪郭領域の幅WOは160μmに設定して、輪郭領域のインク塗布量は12pl/dot、内側領域のインク塗布量は18pl/dotに設定し、解像度300dpiにて2回印刷した。その後、無電解銅めっき液への浸漬を4分間にしたこと以外は実施例1と同様にして導電布帛を得た。得られた導電回路布帛の導電パターンにおける各領域の金属量は、輪郭領域で1.9μg/mm2、内側領域で4.8μg/mm2であり、MO/MI=0.4であった。滲みの評価は○判定であった。
【0082】
[実施例6]
導電パターンの幅Wは2000μm、輪郭領域の幅WOは160μm、中間領域の幅WMは160μmに設定して、輪郭領域のインク塗布量は12pl/dot、中間領域24pl/dot、内側領域のインク塗布量は42pl/dotに設定し、解像度300dpiにて2回印刷したこと以外は実施例1と同様にして導電布帛を得た。得られた導電回路布帛の導電パターンにおける各領域の金属量は、輪郭領域で20.4μg/mm2、中間領域38.6μg/mm2、内側領域で47.6μg/mm2であり、MO/MI=0.4であった。滲みの評価は○判定であった。
【0083】
[比較例1]
インク塗布量を、輪郭領域と内側領域の区別なく、幅W(600μm)の導電パターン全体に対して42pl/dotとした以外は実施例1と同様にして導電回路布帛を得た。得られた導電回路布帛の導電パターンにおける金属量は、輪郭領域と内側領域の区別なく、49.1μg/mm2であった。滲みの評価は×判定であり精度として不十分であった。
【0084】
実施例1~6、比較例1によって得られた導電回路布帛の評価結果を表1に示す。比較例1に対し、実施例1~6では内側領域に対して輪郭領域の金属量を少なくしていることによって、滲みが少なく精度の高い導電パターンを形成できている。実施例6は、内側領域と外側領域の間に中間領域を設けた例である。
【0085】