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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161591
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】O/W型UVクリーム化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20231030BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20231030BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/49
A61K8/368
A61K8/35
A61K8/31
A61K8/89
A61K8/06
A61Q17/04
A61K8/86
A61K8/894
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023138444
(22)【出願日】2023-08-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示会名 第11回化粧品産業技術展 開催日時 令和5年5月17日 開催場所 パシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)
(71)【出願人】
【識別番号】391066319
【氏名又は名称】高級アルコール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】苔口 由貴
(72)【発明者】
【氏名】工藤 彩夢
(72)【発明者】
【氏名】池田 彩乃
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC031
4C083AC062
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC311
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC552
4C083AC831
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD161
4C083BB04
4C083BB12
4C083BB13
4C083BB46
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】
O/W型UVクリーム化粧料に固形状エステルを配合することで、高いSPF値およびUVAPF値を有し、且つべたつきがなく、のびに優れ、塗りムラが生じない、保存安定性に優れる、といった特性を達成することができるものとする。
【解決手段】
下記成分(A)~(D)を含有することを特徴としたO/W型UVクリーム化粧料。
(A)25℃で固形状のエステル油
(B)25℃で液状のエステル油
(C)紫外線吸収剤
(D)非イオン界面活性剤
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含有するO/W型UVクリーム化粧料。
(A)25℃で固形状のエステル
(B)25℃で液状のエステル
(C)紫外線吸収剤
(D)非イオン界面活性剤
【請求項2】
前記成分(A)の25℃で固形状のエステルの総炭素数が30~44であり、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪族アルコールからなるモノエステルである、請求項1に記載のO/W型UVクリーム化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)の25℃で固形状のエステルの融点が45℃~80℃である、請求項1~2に記載のO/W型UVクリーム化粧料。
【請求項4】
前記成分(A)の25℃で固形状のエステルが、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸セテアリル、ミリスチン酸ステアリル、ミリスチン酸ベヘニル、パルミチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸セテアリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸アラキル、パルミチン酸ベヘニル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸セテアリル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸アラキル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸ミリスチル、ベヘン酸セチル、ベヘン酸セテアリル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸アラキル、ベヘン酸ベヘニルから選ばれる1種または2種以上である、請求項1~3に記載のO/W型UVクリーム化粧料。
【請求項5】
前記成分(B)の25℃で液状のエステルが、25℃において比誘電率2.3~8.5で、かつ25℃における粘度が4~1,500mPa・sである液状のエステルから選ばれる1種または2種以上である、請求項1~4に記載のO/W型UVクリーム化粧料。
【請求項6】
前記成分(C)の紫外線吸収剤が、トリアジン系、安息香酸系、ジベンゾイルメタン系、サリチル酸系、ケイ皮酸系、ジフェニル化合物、複素環式化合物、シリコーン系、ベンゾトリアゾール系、およびベンゾフェノン系から選ばれる、請求項1~5に記載のO/W型UVクリーム化粧料。
【請求項7】
前記成分(D)の非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル変性ポリエーテル変性シリコーン、アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる1種または2種以上である、請求項1~6に記載のO/W型UVクリーム化粧料。
【請求項8】
化粧料全体に対し、前記成分(A)が0.2~4.0重量%、成分(B)が6.0~20.0重量%、成分(C)が1.0~20.0重量%、成分(D)が1.0~6.0重量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1~7に記載のO/W型UVクリーム化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状のエステルを配合した、O/W型UVクリーム化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線が皮膚に与える種々の悪影響(具体的には、紅斑やシミ、皮膚の黒化、シワなど)から皮膚を守ることは、スキンケア/ボディケアにおいて重要であることは、よく知られた事実である。近年、海水浴やスキーなどの屋外での強い紫外線からの防御に限らず、日常生活においても、紫外線から皮膚を守ることが重要であると考えられており、例えば、在宅ワークが普及した昨今、室内で過ごす場合においても、窓からの入射光により肌は日やけするため、通常のスキンケア化粧品でも紫外線防御効果を有するものが望まれている。
【0003】
こうした日やけ止め化粧料について、例えば特許文献1では、所定量の固形油や半固形油を配合するとともに、油相の総量を一定以下とすることにより、みずみずしさや伸びの良さの使用感を保持しながら、べたつきを抑え、さらに高いSPF値を達成することが可能な水中油型乳化化粧料が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、自己適応ポリマーおよび水と接触した際により、疎水性になる自己適応ポリマーが塗膜形成剤として機能することにより、SPFをブーストすることが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3では、おだやかな条件で製造でき、適用時にてかりが無く、白化せず、べたつかず、けば立たず、優れた遮蔽効果を提供する組成物が記され、少なくとも1種の無極性ワックスを、少なくとも1つの水性相とUV線フィルター剤とを含むキャリア中に使用することによって、上述した様々な欠点を改善することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7015643号
【特許文献2】特許第5814265号
【特許文献3】特開2016-033143
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紫外線防御剤として多用されている紫外線吸収剤は、高い紫外線防御効果が得られ、肌とのなじみが良いことから、多くの日やけ止め化粧料に配合されている。しかしながら、紫外線吸収剤の多用は、刺激性への懸念が拭えず、少量で効果的に紫外線防御効果が発揮できることが切望される。
【0008】
さらに、紫外線吸収剤の多くは、常温で固体の性状である成分が多いので、これらを析出させることなく化粧料に安定に溶解するためには、油剤の選定が重要なポイントとなる。また、SPF(Sun Protection Factor)値およびUVAPF値(UVA防御効果を示す指標、Ultraviolet A Protection Factor)を高めるために固形の紫外線吸収剤を高配合する場合は、他の油剤もまた多く配合する必要があり、それに伴って油剤由来のべたつきが生じやすくなる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上記の既存技術のように特殊なポリマーやワックスを配合せずにして、日やけ止め化粧料に要求されるSPF値やUVAPF値を実現しつつも、紫外線吸収剤を配合した化粧料を塗布する際の、べたつき、のび、塗りムラといった、種々の特性を改善するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記成分(A)~(D)を含有するO/W(水中油型、Oil in Water)型UVクリーム化粧料である。以下、特に断りのない限り、O/W型UVクリーム化粧料と記載する。
(A)25℃で固形状のエステル
(B)25℃で液状のエステル
(C)紫外線吸収剤
(D)非イオン界面活性剤
【0011】
前記成分(A)の25℃で固形状のエステルは総炭素数が30~44であり、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪族アルコールからなるモノエステルであることが好ましい。また、前記成分(A)の25℃で固形状のエステルの融点は、45℃~80℃であることが好ましい。
【0012】
前記成分(A)の25℃で固形状のエステルは、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸セテアリル、ミリスチン酸ステアリル、ミリスチン酸ベヘニル、パルミチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸セテアリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸アラキル、パルミチン酸ベヘニル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸セテアリル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸アラキル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸ミリスチル、ベヘン酸セチル、ベヘン酸セテアリル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸アラキル、ベヘン酸ベヘニルから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0013】
前記成分(B)の25℃で液状のエステルは、25℃において比誘電率2.3~8.5で、かつ25℃における粘度が4~1,500mPa・sである液状のエステルから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0014】
前記成分(C)の紫外線吸収剤は、トリアジン系、安息香酸系、ジベンゾイルメタン系、サリチル酸系、ケイ皮酸系、ジフェニル化合物、複素環式化合物、シリコーン系、ベンゾトリアゾール系、およびベンゾフェノン系から選ばれるものであることが好ましい。
【0015】
前記成分(D)の非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル変性ポリエーテル変性シリコーン、アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の化粧料全体に対し、前記成分(A)が0.2~4.0重量%、成分(B)が6.0~20.0重量%、成分(C)が1.0~20.0重量%、成分(D)が1.0~6.0重量%の割合で含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記のような(A)~(D)を含むO/W型UVクリーム化粧料であるので、日やけ止め化粧料に求められるような保存安定性に優れ、べたつきがなく、のびに優れ、塗りムラが生じず、高いSPF値およびUVAPF値を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のO/W型UVクリーム化粧料について詳細に説明する。
本発明のO/W型UVクリーム化粧料は、(A)25℃で固形状のエステル、(B)25℃で液状のエステル、(C)紫外線吸収剤、(D)非イオン界面活性剤で構成される。
【0019】
ここで、成分(A)固形状のエステルは、総炭素数30~44の、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪族アルコールとのモノエステルであることが好ましく、さらにその固形状のエステルの融点が、45℃~80℃であることが特に好ましい。
【0020】
本発明において用いられる総炭素数30~44のモノエステルは、一価直鎖飽和脂肪酸としてカプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸(ペンタデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(エイコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラコサン酸)、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、又はトリアコンタン酸と、一価直鎖飽和脂肪族アルコールとしてデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール(オクタデカノール)、ノナデシルアルコール(ノナデカノール)、アラキジルアルコール(エイコサニルアルコール)、ヘニコシルアルコール、ヘンエイコシルアルコール、ベヘニルアルコール(ドコサニルアルコール)、トリコサニルアルコール、リグノセリルアルコール(テトラコサニルアルコール)、ペンタコサニルアルコール、ヘキサコサニルアルコール、ヘプタコサニルアルコール、オクタコサニルアルコール、ノナコサニルアルコール、トリアコンタニルアルコール、ヘントリアコンタニルアルコール、又はドトリアコンタニルアルコールとのエステル化により得られるものが好ましい。
【0021】
本エステルを構成する一価脂肪酸や一価アルコールは、化学合成品であってもよく、植物や微生物等の天然物から採取された油分から精製されたものであってもよいが、サステナビリティの観点から、植物由来成分であることがより好ましい。本モノエステルを工業的に製造するにあたり、これらの原料は高純度品である必要はないものの、効果的に塗布膜を形成させるためには、より純度の高い原料から合成されるモノエステルを用いる事が好ましい。
【0022】
成分(A)固形状のエステルで特に好ましく使える成分として、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸セテアリル、ミリスチン酸ステアリル、ミリスチン酸ベヘニル、パルミチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸セテアリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸アラキル、パルミチン酸ベヘニル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸セテアリル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸アラキル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸ミリスチル、ベヘン酸セチル、ベヘン酸セテアリル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸アラキル、ベヘン酸ベヘニルが挙げられる。これら総炭素数と融点の条件を満足する固形状のエステルを含ませると、肌に塗布した際には、25℃で固形になる性質に基づいて、適度な厚みと平滑性のある脂質の膜を肌上に形成するため、SPF値、およびUVAPF値が増強すると考えられる。その一方で、総炭素数28であり、融点が約42℃であるミリスチン酸ミリスチルの場合、肌上で形成される塗膜が十分な強度を有さないため、SPF値およびUVAPF値が向上しない。
【0023】
本発明における成分(A)の含有量は、0.2~5.0重量%であり、好ましくは0.3~4.0重量%、さらに好ましくは0.4~3.0重量%含有することで、使用感に優れ、かつ高いSPF値およびUVAPF値を有するO/W型UVクリーム化粧料を提供することができる。
【0024】
誘電性の高い物質は分子内に極性基を持つため、極性基を持つ他の物質との親和性が高くなる。こうした液状のエステルの誘電率や粘度は、紫外線吸収剤の溶解性や使用感に影響を及ぼすため、これら粘度や誘電率の値を基準として、併用する各種液状のエステルを選択することが好ましい。このため、成分(B)25℃で液状のエステルとしては、25℃における比誘電率2.3~8.5、かつ25℃における粘度が4~1,500mPa・sの範囲で液状のエステルを選択することができる。
【0025】
誘電率の比較に利用される値の比誘電率(εr)は、サンプルの誘電率(ε)を真空の誘電率(ε0)で除した値で示される無単位の値である。真空の誘電率と空気の誘電率はほとんど等しいため、実際の測定時には、サンプルの誘電率(ε)を、空の容器の誘電率すなわち空気の誘電率(εair)で除した値で与えられる。油剤の比誘電率の測定方法としては、例えば日本ルフト社製の液体用誘電率計Model871で測定することができる。
【0026】
紫外線吸収剤の溶解性、および使用感を好適なバランスで満たす成分(B)の液状のエステルは、例えば25℃における比誘電率2.3~8.5、かつ25℃における粘度が4~1,500mPa・sである、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(比誘電率2.7、粘度311mPa・s)、ミリスチン酸オクチルドデシル(比誘電率2.8、粘度25mPa・s)、ステアリン酸イソセチル(比誘電率2.8、粘度26mPa・s)イソステアリン酸ヘキシルデシル(比誘電率2.8、粘度32mPa・s)、イソステアリン酸イソステアリル(比誘電率2.8、粘度36mPa・s)、ミリスチン酸イソセチル(比誘電率2.9、粘度19mPa・s)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(比誘電率2.9、粘度203mPa・s)、パルミチン酸エチルヘキシル(比誘電率3.0、粘度11mPa・s)、エチルヘキサン酸セチル(比誘電率3.0、粘度11mPa・s)、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル(比誘電率3.0、粘度97mPa・s)、トリイソステアリン(比誘電率3.0、粘度162mPa・s)、パルミチン酸イソプロピル(比誘電率3.1、粘度6mPa・s)、イソステアリン酸エチル(比誘電率3.1、粘度8mPa・s)、イソステアリン酸イソプロピル(比誘電率3.1、粘度9mPa・s)、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル(比誘電率3.1、粘度10mPa・s)、イソノナン酸イソトリデシル(比誘電率3.1、粘度11mPa・s)、ネオペンタン酸イソステアリル(比誘電率3.1、粘度14mPa・s)、ミリスチン酸イソプロピル(比誘電率3.2、粘度5mPa・s)、イソノナン酸イソノニル(比誘電率3.2、粘度6mPa・s)、イソノナン酸イソデシル(比誘電率3.2、粘度7mPa・s)、イソステアリン酸イソブチル(比誘電率3.2、粘度11mPa・s)、ジリノール酸ジイソプロピル(比誘電率3.2、粘度111mPa・s)、ラウリン酸イソアミル(比誘電率3.3、粘度5mPa・s)、ラウリン酸ヘキシル(比誘電率3.3、粘度5mPa・s)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(比誘電率3.3、粘度16mPa・s)、イソノナン酸エチルヘキシル(比誘電率3.4、粘度4mPa・s)、ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール(比誘電率3.4、粘度21mPa・s)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(比誘電率3.5、粘度11mPa・s)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(比誘電率3.5、粘度47mPa・s)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル―2(比誘電率3.6、粘度350mPa・s)、イソノナン酸トリシクロデカンメチル(比誘電率3.8、粘度24mPa・s)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(比誘電率3.7、粘度41mPa・s)、安息香酸アルキル(C12-15)(比誘電率3.8、粘度12mPa・s)、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル(比誘電率3.9、粘度60mPa・s)、コハク酸ジエチルヘキシル(比誘電率4.0、粘度10mPa・s)、トリエチルヘキサノイン(比誘電率4.1、粘度31mPa・s)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル―2(比誘電率4.2、粘度611mPa・s)、ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチル(比誘電率4.2、粘度1212mPa・s)、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール(比誘電率4.5、粘度17mPa・s)、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール(比誘電率4.6、粘度9mPa・s)、セバシン酸ジイソピロピル(比誘電率4.7、粘度6mPa・s)、セバシン酸ジエチル(比誘電率5.1、粘度5mPa・s)、アジピン酸ジイソブチル(比誘電率5.2、粘度5mPa・s)、コハク酸ビスエトキシジグリコール(比誘電率8.1、粘度18mPa・s)などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
本発明における成分(B)の含有量は、6.0~20.0重量%であり、好ましくは6.5~18.0重量%、さらに好ましくは7.0~15.0重量%含有することで、紫外線吸収剤の溶解性、使用感、および保存安定性に優れたO/W型UVクリーム化粧料を提供することができる。
【0028】
成分(C)の紫外線吸収剤は、特に限定されず、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明において用いられる紫外線吸収剤は、UV-A吸収剤であっても、UV-B吸収剤であってもよく、その性状は、液状であっても、固体状であってもよい。例えば、トリアジン系、安息香酸系、ジベンゾイルメタン系、サリチル酸系、ケイ皮酸系、ジフェニル化合物、複素環式化合物、シリコーン系、ベンゾトリアゾール系、およびベンゾフェノン系が挙げられる。具体的な成分としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ポリシリコーン―15、ドロメトリゾールトリシロキサン、オキシベンゾン―3などが挙げられる。
【0029】
本発明における成分(C)の含有量は、紫外線吸収剤の配合規制の範囲内で適宜選択することができるが、典型的には、1.0~20.0重量%、好ましくは2.0~18.0重量%、より好ましくは2.5~15.0重量%含有することで、安全性、および紫外線防御効果に優れたO/W型UVクリーム化粧料を提供することができる。
【0030】
成分(D)の非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル変性ポリエーテル変性シリコーン、アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
成分(D)の非イオン界面活性剤は、特に制限はないが、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール等のグリコール脂肪酸エステル類、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ラウリン酸ポリオキシエチレングリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル類、ステアリン酸グリセリル、ヤシ油脂肪酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体などのポリエーテル変性シリコーン類、ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル変性ポリエーテル変性シリコーン、アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーンなどのシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、使用感や保存安定性の観点から、非イオン界面活性剤を2種または3種以上を併用することが好ましい。
【0032】
本発明における成分(D)の含有量は、1.0~6.0重量%であり、好ましくは1.5~5.5重量%、さらに好ましくは2.0~5.0重量%含有することで、使用感および保存安定性に優れるO/W型UVクリーム化粧料を提供することができる。
【0033】
さらに、本発明のO/W型UVクリーム化粧料には、上記成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で慣用の添加剤を加えることができる。例えば、水、その他のエステル、動植物油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油などの油剤、紫外線阻害剤、その他の界面活性剤、増粘・ゲル化剤、固形化剤(ワックス類)、ロウ類、高分子、アルコール類、保湿剤(多価アルコール類など)、酸化防止剤、防腐・抗菌・殺菌剤、キレート剤、pH調整剤、薬効成分(ビタミン類など)、香料、色素、無機粉体(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄など)などを含んでもよい。
【0034】
本発明のO/W型UVクリーム化粧料は、この他にも、紫外線吸収剤を配合したあらゆる用途に応用することができるが、典型的には、医薬品、医薬部外品、化粧品などの外用剤に用いることができる。さらには、薬剤を含む皮膚外用剤などの医薬品、薬用化粧品などの医薬部外品、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め、日中用保湿剤などのスキンケア化粧品、ファンデーション、メーキャップ下地、チーク、アイシャドウ、マスカラ、などのメイクアップ化粧品、ヘアトリートメントなどのヘアケア化粧品などの様々な形態の製品にも使用することが可能である。
【実施例0035】
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各成分の配合量は、特記しない限り「重量%」を表す。
【0036】
本発明の図1図4に記載のO/W型UVクリーム化粧料の製剤は、全て下記の方法で調製した。
<O/W型UVクリーム化粧料の調製方法>
(1)油相を混合させ、80℃に加熱し均一に溶解する。
(2)水相を混合させ、80℃に加熱し均一に溶解する。
(3)油相を撹拌しながら水相にゆっくりと投入し、ホモミキサーを用いて乳化させる。(4)撹拌しながら室温まで徐冷する。
【0037】
得られたO/W型UVクリーム化粧料について、SPF値、UVAPF値、使用感(べたつきのなさ、のびのよさ、塗りムラのなさ)、および保存安定性を評価した。
<SPF値、UVAPF値の評価>
1.規定量(0.0385g、誤差≦±0.0005g)のサンプルをサンドブラストタイプのプレート(HELIOPLATE SB6)に計量し、指サックを付けた指で10秒程度掛けて均一に塗り広げる。その後、15分間暗所(室温)で放置した。
2.SPFアナライザー(UV-2000S、Labsphere社製)を用い、SPF値、UVAPF値を各々につき5回測定した際の平均値を測定値とした。
【0038】
図1図3の実施例、および比較例については、成分(A)の固形状のエステルを配合していない比較例1を基準として、SPF値あるいはUVAPF値の増加率を計算し、SPF値およびUVAPF値についてのブースト効果として判定した。SPF値やUVAPF値は各々の増加率の区分に応じて、以下の○から×までの3段階の基準で評価した。
<SPF値・UVAPF値の増加率の計算方法>
SPF値増加率=(評価対象のSPF値/比較例1のSPF値)×100
UVAPF値増加率=(評価対象のUVAPF値/比較例1のUVAPF値)×100
<評価基準>
○:SPF値およびUVAPF値の増加率が110以上
△:SPF値およびUVAPF値の増加率が100以上110未満
×:SPF値およびUVAPF値の増加率が100未満、もしくは安定した化粧料とならないため、SPF値やUVAPF値が算出できなかったもの
【0039】
<使用感の評価>
30~40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な専門パネル3名によって、O/W型UVクリーム化粧料を前腕に塗布した際のべたつきのなさ、のびのよさ、および塗りムラのなさの3項目について、総合的に以下の3段階で使用感として評価した。
<評価基準>
○:べたつかず、のびに優れ、塗りムラがない
△:べたつき、のび、塗りムラのいずれかの点でやや劣る
×:べたつき、のびに劣る、塗りムラがある
【0040】
<保存安定性の評価>
本発明のO/W型UVクリーム化粧料は、固形状(固体状)の成分を多く含むため、低温下で成分が結晶化しやすい。そこで、汎用的に実施されている高温下での保存安定性(以下、(1))に加え、低温下での保存安定性(以下、(2))の両試験について評価した。
<評価方法>
(1)45℃に1か月間保管した際、分離の有無(油の染み出しの有無)を目視観察にて評価した。
(2)5℃に3日間保存し、システム生物顕微鏡(オリンパス(株)社製)を用いて、結晶の有無を確認することで評価した。
<評価基準>
○:高温下、および低温下にて分離せず、結晶も析出しない
△:高温下、あるいは低温下でわずかに油の染み出しがあり、または結晶がわずかに析出する
×:高温下、あるいは低温下で分離し、または多くの結晶が析出する
【0041】
図1の比較例1と実施例1~9から示されるように、成分(A)の25℃で固形状のエステル(実施例1~3:パルミチン酸セチル(総炭素数32)、実施例4~6:ステアリン酸ステアリル(総炭素数36)、実施例7~9:ベヘン酸ベヘニル(総炭素数44))を含む化粧料と、これらの固形状のエステルを含まない例において、25℃で固形状のエステルを含む化粧料では、化粧料の保存安定性は同等でありながらも、使用感を改善させて、さらにはSPF値やUVAPF値がそれぞれ向上する。
【0042】
図2の比較例1~7に示されるように、成分(A)の25℃で固形状のエステルを0.1重量%加えた場合(比較例2~4)では、使用感や保存安定性、またはSPF値やUVAPF値について、固形状エステルを加えない例との差が見られない。固形状のエステルが多すぎる場合(比較例5~7)ではSPF値やUVAPF値は向上せず、しかも使用感に劣り、保存安定性も悪い。そこで、成分(A)の25℃で固形状のエステルは0.2~4重量%の範囲で用いることにより、好適なO/W型UVクリーム化粧料とすることができる。
【0043】
成分(A)の25℃で固形状のエステルのラウリン酸ミリスチル(総炭素数26、比較例8)やミリスチン酸ミリスチル(総炭素数28、比較例9)を含むと、化粧料の使用感や保存安定性に問題はなかったものの、SPF値やUVAPF値が低下する。固形状のエステルとして、代わりに分岐をもつ一価飽和脂肪族アルコールに置き換えたエステル(ベヘン酸イソステアリル、比較例10)においても同様に、使用感や保存安定性に問題はないが、SPF値やUVAPF値を向上させることができない。
【0044】
以上のことから、使用感や保存安定性に優れ、しかもSPF値やUVAPF値を向上させるためには、成分(A)の25℃で固形状のエステルは総炭素数を30以上とする必要があり、さらには、分岐のない直鎖状の炭化水素鎖をもつことが好ましい。直鎖状の炭化水素鎖をもち室温でワックス状のエステルは、皮膚上で固化することで十分な強度を有する塗布膜を形成することができるので、固形状のエステルの融点が45℃以上を目安として本技術が実現する。固形状のエステルの融点が80℃を上回ると、O/W型クリームの調製が困難になる。
【0045】
本発明においては、比較例11のように、化粧料全量に対して(B)の液状のエステルが少ない場合に乳化破壊が起こる。なお、比較例11は安定な化粧料とならないので、SPF値やUVAPF値の測定は行わなかった。
【0046】
図4では、種々の紫外線吸収剤や界面活性剤、その他油剤や色素を適宜併用した場合において、(A)の固形状のエステルを追加した際のSPF値やUVAPF値の比較を行ったものである。それぞれ以下のように対照を設定した。ブースト効果の評価基準は、先に示したものと同様である。
<対照となる比較例および実施例>
比較例12:実施例10
比較例13:実施例11
比較例14:実施例12
<SPF値・UVAPF値の増加率の計算方法>
SPF値増加率=(実施例10~12の何れかのSPF値/対照となる比較例12~14の何れかのSPF値)×100
UVAPF値増加率=(実施例10~12の何れかのUVAPF値/対照となる比較例12~14の何れかのUVAPF値)×100
【0047】
化粧料の処方に応じて、紫外線吸収剤の種類や配合量を適宜調節したいずれの場合においても、成分(A)の25℃で固形状のエステルを配合することでSPF値およびUVAPF値が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、固形状エステルを配合することで、高いSPF値およびUVAPF値を有し、かつべたつきがなく、のびに優れ、塗りムラが生じないO/W型UVクリーム化粧料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
図1】 SPF値、UVAPF値、使用感、および保存安定性の各々について、固形状エステルの添加により、良好な化粧料の特性が実現されることを示した図である。
図2】 SPF値、UVAPF値、使用感、および保存安定性の各々について、固形状エステルを添加した際に、特に化粧料の性能が低下する例を示した図である。
図3】 SPF値、UVAPF値、使用感、および保存安定性の各々について、固形状、もしくは液状エステルを添加した際の効果を示した図である。
図4】 種々の紫外線吸収剤や界面活性剤を使い分けた場合において、固形状エステルを添加した際のSPF値、UVAPF値、使用感、および保存安定性の各々について、特性が改善される例を示した図である。
図1
図2
図3
図4