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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161602
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】積層コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20231031BHJP
   H01R 13/514 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R13/514
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072022
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷村 俊輔
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087FF08
5E087GG15
5E087GG22
5E087GG26
5E087GG31
5E087GG32
5E087HH04
5E087JJ05
5E087MM05
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】ランスの撓み変形を抑制し、端子保持力を高める
【解決手段】互いに積層されるハウジング10,40は、端子30,60を挿入可能なキャビティ13,43と、キャビティ13,43内に突出して端子30,60を係止するランス20,50とを有し、ランス20,50は背合わせに配置されており、各ランス20,50は、相手側のランスに向けて突出する撓み規制突部21,53を有し、各撓み規制突部21,53は、ランス20,50の延び方向に並んで互いに近接して配置されており、各撓み規制突部21,53の互いに対向する突部対向面26,56は、それぞれ、各ランス20,50の背面から鋭角に立ち上がる傾斜状とされて、ハウジング10,40の積層方向に重畳した状態で噛み合うように配置されている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された第1ハウジングおよび第2ハウジングを備え、
前記第1ハウジングは、第1端子を挿入可能な第1キャビティと、片持ち状に延びるとともに前記第1キャビティ内に突出して前記第1端子を係止する撓み変形可能な第1ランスとを有し、
前記第2ハウジングは、第2端子を挿入可能な第2キャビティと、片持ち状に延びるとともに前記第2キャビティ内に突出して前記第2端子を係止する撓み変形可能な第2ランスとを有し、
前記第1ランスおよび前記第2ランスは、それぞれ、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの互いに対向するハウジング対向面に露出して背合わせに配置されており、
前記第1ランスは、前記第2ランスに向けて突出する第1撓み規制突部を有し、
前記第2ランスは、前記第1ランスに向けて突出する第2撓み規制突部を有し、
前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部は、前記第1ランスおよび前記第2ランスの延び方向に並んで互いに近接して配置されており、
前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部の互いに対向する第1突部対向面および第2突部対向面は、それぞれ、前記第1ランスおよび前記第2ランスの背面から鋭角に立ち上がる傾斜状とされて、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの積層方向に重畳した状態で噛み合うように配置されている積層コネクタ。
【請求項2】
前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部は、それぞれ、前記第1ランスおよび前記第2ランスの幅方向の片側に設けられ、
前記第1ランスは、前記幅方向の他の片側に、前記第2ランスに向けて突出する第1ずれ規制突部を有し、
前記第2ランスは、前記幅方向の他の片側に、前記第1ランスに向けて突出する第2ずれ規制突部を有し、
前記第1ずれ規制突部および前記第2ずれ規制突部は、前記第1ランスおよび前記第2ランスの延び方向において、前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部の並び順と逆の順に並んで互いに近接して配置されている請求項1に記載の積層コネクタ。
【請求項3】
前記第1撓み規制突部および前記第1ずれ規制突部は、それぞれの少なくとも一部が前記第1ランスの幅方向において一体に連なっている請求項2に記載の積層コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のハウジングを積層して構成され、各ハウジング内に端子を備えるコネクタとして、例えば特許文献1のものが知られている。このコネクタは、互いに積層状態に組み付けられる第1ハウジングおよび第2ハウジングと、両ハウジングにそれぞれ収容される端子と、を備えている。両ハウジングは、それぞれ、端子を挿入可能なキャビティを有している。両ハウジングは、それぞれ、組み付け時に対向する対向面に、端子を係止する撓み変形可能なランスを露出させている。両ハウジングの組み付け時には、両ランスは互いに背合わせで配置される。これにより、それぞれのランスのめくり上がり方向への撓み空間を小さくする、或いは無くすことが可能となり、もって、コネクタを小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-4736公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記構成において端子に引き抜き方向への外力が作用すると、めくり上がり方向への変形が規制されたランスがキャビティの内側に撓み変形し、せん断される場合がある。特に、コネクタの小型化を目的としてランスを小型化した場合にはせん断面積が小さくなるため、想定よりも端子保持力が低下する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の積層コネクタは、互いに積層された第1ハウジングおよび第2ハウジングを備え、前記第1ハウジングは、第1端子を挿入可能な第1キャビティと、片持ち状に延びるとともに前記第1キャビティ内に突出して前記第1端子を係止する撓み変形可能な第1ランスとを有し、前記第2ハウジングは、第2端子を挿入可能な第2キャビティと、片持ち状に延びるとともに前記第2キャビティ内に突出して前記第2端子を係止する撓み変形可能な第2ランスとを有し、前記第1ランスおよび前記第2ランスは、それぞれ、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの互いに対向するハウジング対向面に露出して背合わせに配置されており、前記第1ランスは、前記第2ランスに向けて突出する第1撓み規制突部を有し、前記第2ランスは、前記第1ランスに向けて突出する第2撓み規制突部を有し、前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部は、前記第1ランスおよび前記第2ランスの延び方向に並んで互いに近接して配置されており、前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部の互いに対向する第1突部対向面および第2突部対向面は、それぞれ、前記第1ランスおよび前記第2ランスの背面から鋭角に立ち上がる傾斜状とされて、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの積層方向に重畳した状態で噛み合うように配置されている、積層コネクタである。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ランスの撓み変形を抑制し、せん断面積を増やして端子保持力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態にかかる積層コネクタの斜視図である。
図2図2は、積層コネクタの分解斜視図である。
図3図3は、第1ハウジングの一部拡大斜視図である。
図4図4は、第2ハウジングの一部拡大斜視図である。
図5図5は、第1ハウジングの正面図である。
図6図6は、第2ハウジングの正面図である。
図7図7は、組付け前の積層コネクタの幅方向の分解縦断面図である。
図8図8は、組付け後の積層コネクタの幅方向の縦断面図である。
図9図9は、第1ハウジングの平面図である。
図10図10は、第2ハウジングの底面図である。
図11図11は、組付け前の積層コネクタの前後方向の分解縦断面図である。
図12図12は、組付け後の積層コネクタの前後方向の縦断面図である。
図13図13は、図12の一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0009】
(1)本開示の積層コネクタは、互いに積層された第1ハウジングおよび第2ハウジングを備え、前記第1ハウジングは、第1端子を挿入可能な第1キャビティと、片持ち状に延びるとともに前記第1キャビティ内に突出して前記第1端子を係止する撓み変形可能な第1ランスとを有し、前記第2ハウジングは、第2端子を挿入可能な第2キャビティと、片持ち状に延びるとともに前記第2キャビティ内に突出して前記第2端子を係止する撓み変形可能な第2ランスとを有し、前記第1ランスおよび前記第2ランスは、それぞれ、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの互いに対向するハウジング対向面に露出して背合わせに配置されており、前記第1ランスは、前記第2ランスに向けて突出する第1撓み規制突部を有し、前記第2ランスは、前記第1ランスに向けて突出する第2撓み規制突部を有し、前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部は、前記第1ランスおよび前記第2ランスの延び方向に並んで互いに近接して配置されており、前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部の互いに対向する第1突部対向面および第2突部対向面は、それぞれ、前記第1ランスおよび前記第2ランスの背面から鋭角に立ち上がる傾斜状とされて、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの積層方向に重畳した状態で噛み合うように配置されている。
【0010】
上記構成によれば、端子に対してハウジングから引き抜く方向に外力が作用した場合でも、背合わせに配置された第1ランスおよび第2ランスは、第1撓み規制突部および第2撓み規制突部が両ハウジングの積層方向に重畳した状態で噛み合っているから、互いに引き合う力が作用し、ランスが単独で配置された場合と比較して、各ランスが積層方向に撓むことを抑制してせん断面積を増やすことができる。つまり、各ランスが撓んでせん断されることが抑制可能となり、もって、端子の保持力を向上させることができる。
【0011】
(2)前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部は、それぞれ、前記第1ランスおよび前記第2ランスの幅方向の片側に設けられ、前記第1ランスは、前記幅方向の他の片側に、前記第2ランスに向けて突出する第1ずれ規制突部を有し、前記第2ランスは、前記幅方向の他の片側に、前記第1ランスに向けて突出する第2ずれ規制突部を有し、前記第1ずれ規制突部および前記第2ずれ規制突部は、前記第1ランスおよび前記第2ランスの延び方向において、前記第1撓み規制突部および前記第2撓み規制突部の並び順と逆の順に並んで互いに近接して配置されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、第1ランスおよび第2ランスの延び方向の相対的な位置ずれ、ひいては、第1ハウジングおよび第2ハウジングの位置ずれを抑制することができる。詳細には、各ハウジングに挿入された一の端子に対し、端子を引き抜く方向に外力が作用した場合でも、第1撓み規制突部と第2撓み規制突部との当接、あるいは、第1ずれ規制突部と第2ずれ規制突部の当接のいずれかにより、延び方向に位置ずれすることを抑制することができる。
【0013】
(3)前記第1撓み規制突部および前記第1ずれ規制突部は、それぞれの少なくとも一部が前記第1ランスの幅方向において一体に連なっていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1撓み規制突部と第1ずれ規制突部とが個別に設けられる構成と比較して、第1ランスの強度を高めることができる。また、第1ランスが撓み難くなることが、ひいては、第1ランスと引き合った状態の第2ランスの強度を高めることになる。つまり、両ハウジングの端子保持力を向上させることができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態を図1図13を参照して説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0016】
本実施形態の積層コネクタ1は、互いに積層される第1ハウジング10および第2ハウジング40と、第1ハウジング10および第2ハウジング40にそれぞれ収容される複数の第1端子30および第2端子60と、を備えている。なお、以下の説明において、前後方向については、図1の右下を前方とし、左上を後方とする。幅方向は、図5から図10の左右方向とする。また上下方向については、図1の上下方向を基準とする。
【0017】
[第1ハウジング]
第1ハウジング10は、図1の下側に位置するロアハウジングであって、図2に示すように、概ね扁平な箱型形状をなし、その上面に積層される第2ハウジング40と対向する第1対向面11を有している。第1ハウジング10は、幅方向の両端部に、前後方向に沿った板片状の第1ハウジングロック部12を有している。
【0018】
第1ハウジング10は、前後方向に延びて第1端子30を挿入可能な複数の第1キャビティ13を有している(図11参照)。各第1キャビティ13は、第1隔壁14で仕切られた状態で幅方向に一列に並んで配置されている(図7参照)。
【0019】
第1ハウジング10は、前壁部分に、各第1キャビティ13と連通する複数の第1挿通口15を有している。積層コネクタが図示しない相手コネクタと嵌合すると、相手コネクタに装着された図示しない相手第1端子のタブが各第1挿通口15を通して対応する第1キャビティ13内に進入するようになっている。
【0020】
第1ハウジング10の第1対向面11には、前後方向における略中央部において、幅方向に1つ置きに配置された各第1隔壁14の上端に連結される複数の第1検知部16が突設されている。図2に示すように、各第1検知部16は角ブロック状をなし、その上面は、前後方向に沿った第1検知面16Aとされ、前面は、上下方向に沿った第1抜止面16Bとされている。後述するように、第1検知部16は、積層相手の第2ハウジング40に収容された第2端子60の半挿入状態を検知するとともに、第2端子60を抜け止めする機能を有する。
【0021】
図7に示すように、各第1隔壁14のうち、第1検知部16が連結されない、他の一つ置きに配置される第1隔壁14は、隣接する第1検知部16間における上方に、前後の隣接部分から一段落ちた第1凹所17を有している。第1凹所17には、後述する第2検知部46が進入可能とされている。
【0022】
図9に示すように、第1ハウジング10は、各第1検知部16の前端において幅方向に一体に連なる第1付け根部18を有し、第1付け根部18から、各第1キャビティ13と対応する位置において前方に向けて片持ち状に突出する複数の第1ランス20を有している。第1付け根部18および各第1ランス20は、全体が第1対向面11に露出している。
【0023】
[第1ランス]
図3に示すように、第1ランス20は、その基端側における幅方向の一側(図3の左下)に、相対的に上方へ突出する第1基端側突部21を有している。第1基端側突部21は、前後方向に延びる断面略矩形のリブ状とされている。また第1ランス20は、基端側における幅方向の他側(図3の右上)に、第1基端側突部21の上面に対して一段下がった第1基端側凹部22を有している。第1基端側突部21の上面および第1基端側凹部22の上面は、それぞれ水平方向に延びている。
【0024】
なお、上述した第1付け根部18のうち第1基端側凹部22に連なる部分は、第1基端側凹部22の上面と面一に連なって相対的に窪んだ第1付け根部側凹部18Aとされている。また、第1付け根部18のうち第1付け根部側凹部18A以外の部分は、第1基端側突部21と面一に連なって第1付け根部側凹部18Aに対して一段上がった第1付け根部側突部18Bとされている。
【0025】
また、図3に示すように、第1ランス20は、先端側における幅方向の他側(図3の右上)に、相対的に上方へ突出する第1先端側突部23を有している。第1先端側突部23は、前後方向に延びる断面略矩形のリブ状とされている。第1ランス20は、先端側における幅方向の一側(図3左下)に、第1先端側突部23の上面に対して一段下がった第1先端側凹部24を有している。第1先端側突部23の上面および第2先端側凹部の上面は、それぞれ水平方向に延びている。
【0026】
上述した第1基端側突部21の先端側と、第1先端側突部23の基端側は、一部が幅方向において連なっている。つまり、第1基端側突部21と第1先端側突部23とは、全体としてクランク形状に連なっている。つまり、第1ランス20の幅方向において互い違いに上方に突出している。
【0027】
図11に示すように、第1ランス20の第1基端側突部21および第1先端側突部23の上面は、全体にわたってほぼ真直ぐ(前後方向に沿ったフラット形状)延びている。一方、第1ランス20の下面は、先端側が下り勾配となるように下方へ向けて傾斜して配置されている。これにより、第1ランス20の先端部は、第1キャビティ13内に進入する形態とされている。また、第1ランス20の先端面は、下端側がわずかに前方に配された傾斜面とされている。
【0028】
本実施形態において、上述した第1ランス20の第1基端側突部21の先端側(前端)と、第1先端側凹部24の基端側(後端)との境界部分に形成される第1段差部26は、第1ランス20の上面の延び方向に対して傾斜した配置とされている。詳細には、図11に示すように、第1段差部26は、第1基端側突部21の前端から下方かつ後方に向けて傾く傾斜状とされ、第1先端側凹部24に連なっている。換言すると、第1段差部26は、第1先端側凹部24の上面から鋭角に立ち上がった形態とされている。具体的には、直角よりやや小さい角度で立ち上がった形態とされている。
【0029】
[第1端子]
第1端子30は、導電性の金属板を曲げ加工等して成形され、図11および図12に示すように、前部に角筒状の第1本体部31を有し、第1本体部31よりも後方に、電線W1の端部に電気的および機械的に接続される第1バレル部32を有している。第1本体部31は、第1対向面11側に配される上壁に、第1ランス20の先端部の進入を許容する第1係止孔33を備えている。
【0030】
[第2ハウジング]
第2ハウジング40は、図1の上側に位置するアッパハウジングであって、概ね扁平な箱型形状をなし、下面が積層相手の第1ハウジング10と対向する第2対向面41とされている。以下の説明において、上下方向とは、第2ハウジング40を組付けた状態における上下方向を指すものとする。つまり、図2に示す第2ハウジング40は、上下を反転させた状態を示しているため、図2に示す第2ハウジング40については図2の上を下方、図2の下を上方として説明する。
【0031】
図1に示すように、第2ハウジング40は、上面の幅方向の中央部に、片持ち状に突出する撓み可能なロックアーム49を有している。第2ハウジング40は、幅方向の両端部に、前後に間隔をあけた複数の第2ハウジングロック部42を有している。これらの各第2ハウジングロック部42が上述した第1ハウジングロック部12に弾性的に係止されることにより、第1ハウジング10および第2ハウジング40が組付け状態に保持される。また、組付け状態にある第1ハウジング10および第2ハウジング40が相手コネクタと嵌合することでロックアーム49が相手コネクタを弾性的に係止し、相手コネクタと離脱規制状態に保持される。
【0032】
第2ハウジング40は、図7に示すように、第1キャビティ13と同様の形態の第2キャビティ43、第1隔壁14と同様の形態の第2隔壁44、第1挿通口15と同様の形態の第2挿通口45、第1検知部16と同様の形態の第2検知部46、第1凹所17と同様の形態の第2凹所47と、第1付け根部18とは異なる形態の第2付け根部48、および、第1ランス20とは異なる形態の第2ランス50とを有している。
【0033】
上述した第2キャビティ43は、第1ハウジング10および第2ハウジング40を組付けた状態において、第1キャビティ13に対して上方に重畳配置される位置に形成されている(図8参照)。また、第2検知部46は、第1ハウジング10および第2ハウジング40を組付けた状態において、第1ハウジング10の第1凹所17に対応する位置に配置されている(図7参照)。
【0034】
図10に示すように、第2ハウジング40は、各第2検知部46の前端において幅方向に一体に連なる第2付け根部48を有し、第2付け根部48から、各第2キャビティ43と対応する位置において前方に向けて片持ち状に突出する複数の第2ランス50を有している。第2付け根部48および各第2ランス50は、全体が第2対向面41に露出している。
【0035】
[第2ランス]
図4に示すように、第2ランス50は、その基端側における幅方向の一側(図4の右上)に、相対的に上方へ窪む第2基端側凹部52を有している。また第2ランス50は、基端側における幅方向の他側(図4の左下)に、第2基端側凹部52の下面に対して一段下がった(下方に突出した)第2基端側突部51を有している。第2基端側突部51は、前後方向に延びる断面略矩形のリブ状の形態とされている。第2基端側凹部52の下面(図4の上面)および第2基端側突部51の下面(図4の上面)は、それぞれ水平方向に延びている。なお、第2ランス50は、第1ハウジング10および第2ハウジング40が積層された状態において、第1ランス20の延び方向と同方向に延びている。
【0036】
上述した第2基端側凹部52は、第1ハウジング10および第2ハウジング40を組付けた状態において、第1基端側突部21に対応する位置に配置されている。また、第2基端側突部51は、第1ハウジング10および第2ハウジング40を組付けた状態において、第1基端側凹部22に対応する位置に配置されている。
【0037】
なお、上述した第2付け根部48のうち第2基端側突部51に連なる部分は、第2基端側突部51の上面からやや下方に突出した状態で第2基端側突部51と連なる第2付け根部側突部48Bとされている。また、第2付け根部48のうち第2付け根部側突部48B以外の部分は、第2基端側凹部52と面一に連なって第2付け根部側突部48Bから一段上がった(上方に窪んだ)第2付け根部側凹部48Aとされている。
【0038】
また、図4に示すように、第2ランス50は、先端側における幅方向の他側(図4の左下)に、相対的に上方に窪む第2先端側凹部54を有している。第2ランス50は、先端側における幅方向の一側(図4の右上)に、第2先端側凹部54の下面に対して一段下がった(下方に突出した)第2先端側突部53を有している。第2先端側突部53は、前後方向に延びる断面略矩形のリブ状の形態とされている。第2先端側凹部54の下面および第2先端側突部53の下面は、それぞれ水平方向に延びている。
【0039】
上述した第2先端側凹部54は、第1ハウジング10および第2ハウジング40を組付けた状態において、第1先端側突部23に対応する位置に配置されている。また、第2先端側突部53は、第1ハウジング10および第2ハウジング40を組付けた状態において、第1先端側凹部24に対応する位置に配置されている。
【0040】
上述した第2基端側凹部52の先端側と、第2先端側凹部54の基端側は、一部が幅方向において連なっている。つまり、第2基端側凹部52と第2先端側凹部54とは、全体としてクランク形状に連なっている。つまり、第2ランス50の幅方向において互い違いに上方に窪んでいる。
【0041】
図11に示すように、第2ランス50の第2基端側突部51および第2先端側突部53の下面は、それぞれほぼ真直ぐ(前後方向に沿ったフラット形状)延びている。一方、第2ランス50の上面は、先端側が上り勾配となるように上方へ向けて傾斜して配置されている。これにより、第2ランス50の先端部は、第2キャビティ43内に進入する形態とされている。また、第2ランス50の先端面は、上端側がわずかに前方に配された傾斜面とされている。
【0042】
上述した第2ランス50の第2基端側凹部52の先端側(前端)と、第2先端側突部53の基端側(後端)との境界部分に形成される第2段差部56は、第2ランス50の下面の延び方向に対して傾斜した配置とされている。詳細には、図11に示すように、第2段差部56は、第2基端側凹部52の前端から下方かつ後方に向けて傾く傾斜状とされ、第2先端側突部53に連なっている。換言すると、第2段差部56は、第2基端側凹部52の下面から鋭角に立ち上がった形態とされている。具体的には、直角よりやや小さい角度で立ち上がった形態とされている。
【0043】
[第2端子]
第2端子60は、第1端子30と同一の形状であって、図11および図12に示すように、電線W2の端部に接続され、第1端子30とは上下逆向きの姿勢で第2キャビティ43に挿入され、第2ランス50に係止される。第2端子60は、第1本体部31と同様の形態の第2本体部61と、第1バレル部32と同様の形態の第2バレル部62と、第1係止孔33と同様の形態の第2係止突部63と、を有している。
【0044】
[積層コネクタ]
第1ハウジング10および第2ハウジング40は、それぞれのキャビティ13,43内で各端子30,60がランス20,50により係止された状態で、対向面11,41が対向する形で組付けられている。
【0045】
この組付け状態において、第1検知部16は対応する第2凹所47に位置しており、その第1抜止面16Bは、第2凹所47を挟んで隣接する第2キャビティ43に配置された2つの第2端子60の第2本体部61に後方から当接可能とされている(図11および図12参照)。同様に、第2検知部46は対応する第1凹所17に位置しており、その第2抜止面46Bは、第1凹所17を挟んで隣接する第1キャビティ13に配置された2つ毎の第1端子30の第1本体部31に後方から当接可能とされている。
【0046】
なお、第1ハウジング10および第2ハウジング40を組み付ける際に、仮に、第1端子30が第1キャビティ13に正規挿入されず半挿入状態で留め置かされていると、第2検知部46の第2検知面46Aが第1本体部31の上面に当接し、第1対向面11と第2対向面41との間に隙間が形成されて、第2検知部46の第1凹所17への進入が規制される。同様に、第2端子60が第2キャビティ43に正規挿入されず半挿入状態で留め置かれていると、第1検知部16の第1検知面16Aが第2本体部61の下面に当接し、第1対向面11と第2対向面41との間に隙間が形成されて、第1検知部16の第2凹所47への進入が規制される。これにより、第1端子30または第2端子60が半挿入状態にあることを検知可能とされている。
【0047】
こうして第1検知部16および第2検知部46が幅方向で噛み合うことにより、組付け状態にある第1ハウジング10および第2ハウジング40が第1対向面11および第2対向面41に沿って幅方向(図5から図10の左右方向)に位置ずれすることが規制される。
【0048】
また、第1ハウジング10および第2ハウジング40の組付け状態において、第1付け根部18の第1付け根部側突部18Bは、第2付け根部側凹部48Aに嵌り、第2付け根部側突部48Bは、第1付け根部側凹部18Aに嵌る形で、互い嵌り合っている。
【0049】
また、第1ハウジング10および第2ハウジング40の組付け状態において、第1ランス20の第1基端側突部21および第1先端側突部23は、第2ランス50の第2基端側凹部52および第2先端側凹部54に嵌り、第2ランス50の第2基端側突部51および第2先端側突部53は、第1ランス20の第1基端側凹部22および第1先端側凹部24に嵌る形で互いに嵌り合って、背合わせに配置されている。この状態において、第1ランス20の背面と第2ランス50の背面との間には、隙間がほぼ形成されないように設定されている。これにより、第1ランス20および第2ランス50は、第1対向面11および第2対向面41に沿う幅方向から視て交互に噛み合うように配置される(図8参照)。
【0050】
さらに、本実施形態においては、上述したように、第1ランス20の第1段差部26および第2ランス50の第2段差部56は、それぞれ、第1ランス20の窪んだ部分(第1先端側凹部24)の上面および第2ランス50の窪んだ部分(第2基端側凹部52)の下面から鋭角に立ち上がった形態とされている。したがって、第1ハウジング10および第2ハウジング40の組付け状態においては、図13に示すように、第1ハウジング10および前記第2ハウジング40の積層方向(上下方向)に重畳した状態で噛み合うように配置されている。このような構成により、第1ランス20および第2ランス50は、互いに引き合った状態とされている。
【0051】
[作用効果]
本実施形態の積層コネクタ1は、互いに積層された第1ハウジング10および第2ハウジング40を備え、第1ハウジング10は、第1端子30を挿入可能な第1キャビティ13と、片持ち状に延びるとともに第1キャビティ13内に突出して第1端子30を係止する撓み変形可能な第1ランス20とを有し、第2ハウジング40は、第2端子60を挿入可能な第2キャビティ43と、片持ち状に延びるとともに第2キャビティ43内に突出して第2端子60を係止する撓み変形可能な第2ランス50とを有し、第1ランス20および第2ランス50は、それぞれ、第1ハウジング10および第2ハウジング40の互いに対向する第1対向面11および第2対向面41に露出して背合わせに配置されており、第1ランス20は、第2ランス50に向けて突出する第1基端側突部21を有し、第2ランス50は、第1ランス20に向けて突出する第2先端側突部53を有し、第1基端側突部21および第2先端側突部53は、第1ランス20および第2ランス50の延び方向に並んで互いに近接して配置されており、第1基端側突部21および第2先端側突部53の互いに対向する第1段差部26および第2段差部56は、それぞれ、第1ランス20および第2ランス50の背面の窪んだ部分(第1基端側凹部22および第2先端側凹部54)から鋭角に立ち上がる傾斜状とされて、第1ハウジング10および第2ハウジング40の積層方向(上下方向)に重畳した状態で噛み合うように配置されている。
【0052】
上記構成によれば、端子30,60に対してハウジング10,40から引き抜く方向に外力が作用した場合でも、背合わせに配置された第1ランス20および第2ランス50は、第1基端側突部21および第2先端側突部53が両ハウジング10,40の積層方向に重畳した状態で噛み合っているから、互いに引き合う力が作用し、ランス20,50が単独で配置された場合と比較して、各ランス20,50が積層方向(上下方向)に撓むことを抑制してせん断面積を増やすことができる。つまり、各ランス20,50が撓んでせん断されることが抑制可能となり、もって、端子30,60の保持力を向上させることができる。
【0053】
また、第1基端側突部21および第2先端側突部53は、それぞれ、第1ランス20および第2ランス50の幅方向の片側に設けられ、第1ランス20は、幅方向の他の片側に、第2ランス50に向けて突出する第1先端側突部23を有し、第2ランス50は、幅方向の他の片側に、第1ランス20に向けて突出する第2基端側突部51を有し、第1先端側突部23および第2基端側突部51は、第1ランス20および第2ランス50の延び方向において、第1基端側突部21および第2先端側突部53の並び順と逆の順に並んで互いに近接して配置されている。つまり、第1基端側突部21および第2先端側突部53は、第1基端側突部21が基端側、第2先端側突部53が先端側になるように並んでいるのに対し、第1先端側突部23および第2基端側突部51は、第1先端側突部23が先端側、第2基端側突部51が基端側になるように並んでいる。
【0054】
上記構成によれば、第1ランス20および第2ランス50の延び方向の相対的な位置ずれ、ひいては、第1ハウジング10および第2ハウジング40の位置ずれを抑制することができる。詳細には、各ハウジング10,40に挿入された一の端子30,60に対し、端子30,60を引き抜く方向に外力が作用した場合でも、第1基端側突部21と第2先端側突部53との当接、あるいは、第1先端側突部23と第2基端側突部51との当接のいずれかにより、延び方向に位置ずれすることを抑制することができる。
【0055】
また、第1基端側突部21および第1先端側突部23は、それぞれの一部が第1ランス20の幅方向において一体に連なって、前方に向けてクランク状に延びている。
【0056】
上記構成によれば、第1基端側突部21と第1先端側突部23とが個別に設けられる構成と比較して、第1ランス20の強度を高めることができる。また、第1ランス20が撓み難くなることが、ひいては、第1ランス20と引き合った状態の第2ランス50の強度を高めることになる。つまり、両ハウジング10,40の端子保持力を向上させることができる。
【0057】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0058】
(1)積層コネクタは、一対のハウジング(第1ハウジングおよび第2ハウジング)を含み、3つ以上のハウジングを積層して構成されるものであってもよい。
【0059】
(2)第1ランスおよび第2ランスの撓み規制突部(第1基端側突部および第2先端側突部)は、各ランスの幅方向の全体にわたって設けられるものとしてもよい。
【0060】
(3)第1基端側突部と第1先端側突部とは、離れて個別に配されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1: 積層コネクタ
10: 第1ハウジング
11: 第1対向面(ハウジング対向面)
12: 第1ハウジングロック部
13: 第1キャビティ
14: 第1隔壁
15: 第1挿通口
16: 第1検知部
16A: 第1検知面
16B: 第1抜止面
17: 第1凹所
18: 第1付け根部
18A: 第1付け根部側凹部
18B: 第1付け根部側突部
20: 第1ランス
21: 第1基端側突部(第1撓み規制突部)
22: 第1基端側凹部
23: 第1先端側突部(第1ずれ規制突部)
24: 第1先端側凹部
26: 第1段差部(第1突部対向面)
30: 第1端子
31: 第1本体部
32: 第1バレル部
33: 第1係止孔
40: 第2ハウジング
41: 第2対向面(ハウジング対向面)
42: 第2ハウジングロック部
43: 第2キャビティ
44: 第2隔壁
45: 第2挿通口
46: 第2検知部
46A: 第2検知面
46B: 第2抜止面
47: 第2凹所
48: 第2付け根部
48A: 第2付け根部側凹部
48B: 第2付け根部側突部
49: ロックアーム
50: 第2ランス
51: 第2基端側突部(第2ずれ規制突部)
52: 第2基端側凹部
53: 第2先端側突部(第2撓み規制突部)
54: 第2先端側凹部
56: 第2段差部(第2突部対向面)
60: 第2端子
61: 第2本体部
62: 第2バレル部
63: 第2係止突部
W1、W2: 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13