(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161608
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】油水分離器
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20231031BHJP
B01D 17/05 20060101ALI20231031BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20231031BHJP
B01D 17/00 20060101ALI20231031BHJP
B01D 17/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C02F1/28 D
C02F1/28 E
B01D17/05 501J
C02F1/40 E
B01D17/00 503D
B01D17/04 501D
C02F1/28 H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072029
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 まり子
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 康介
(72)【発明者】
【氏名】高牟禮 英治
【テーマコード(参考)】
4D051
4D624
【Fターム(参考)】
4D051AA01
4D051EA03
4D051EB01
4D051EB06
4D051EB07
4D624AA10
4D624AB06
4D624BA02
4D624BA06
4D624BA17
4D624BA19
4D624BB01
4D624BB03
4D624BB08
4D624BC02
4D624CA02
4D624DA02
4D624DB21
(57)【要約】
【課題】油分離性能を初期性能から格段に向上させ、被処理水を高度に浄化することができる油水分離器を提供する。
【解決手段】乳化された油が含まれる被処理水の油を吸着除去して該被処理水を浄化するように、該被処理水が通過される複数の被処理水通過層が配されている油水分離器であって、前記被処理水が通過される順で、乳化破壊材層31と、該乳化破壊材層31の下流側に配された層であって繊維材が集合された層によって油を吸着する油吸着繊維材層32とが配されて構成された繊維による油吸着部層30を備え、該繊維による油吸着部層30の下流側に配された活性炭層50と、該活性炭層50の下流側に配された層であってゼータ電位を利用して乳化された油を吸着除去するゼータ電位吸着材層60を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化された油が含まれる被処理水の油を吸着除去して該被処理水を浄化するように、該被処理水が通過される複数の被処理水通過層が配されている油水分離器であって、
前記被処理水が通過される順で、乳化破壊材層と、該乳化破壊材層の下流側に配された層であって繊維材が集合された層によって油を吸着する油吸着繊維材層とが配されて構成された繊維による油吸着部層を備え、
該繊維による油吸着部層の下流側に配された活性炭層と、
該活性炭層の下流側に配された層であってゼータ電位を利用して乳化された油を吸着除去するゼータ電位吸着材層を備えることを特徴とする油水分離器。
【請求項2】
前記被処理水が下から上へ通過するように形成された処理槽容器内に、前記複数の被処理水通過層が配され、該被処理水通過層として、前記繊維による油吸着部層、前記活性炭層及びゼータ電位吸着材層を含むことを特徴とする請求項1記載の油水分離器。
【請求項3】
前記繊維による油吸着部層が複数段設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の油水分離器。
【請求項4】
前記複数段の繊維による油吸着部層の間に、吸着材が存在しない空間である空スペースが設けられていることを特徴とする請求項3記載の油水分離器。
【請求項5】
前記ゼータ電位吸着材層を構成するゼータ電位吸着材が、繊維材にゼータ電位材が担持されたものであることを特徴とする請求項4記載の油水分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化された油が含まれる被処理水の油を吸着除去して該被処理水を浄化するように、該被処理水が通過される複数の被処理水通過層が配されている油水分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油水分離器(方法)としては、微小の油と水が結合してエマルジョン化したドレン水の油水分離方法に於いて、水と油の結合を解き放つエマルジョン破壊をおこさせ油を除去するために、ドレン水を先ずエマルジョン破壊をおこさせるフィルターエレメントを通過させた後、更にエマルジョン破壊と油吸着をさせるエマルジョン破壊粒子付吸着材と油吸着材を通過させる(特許文献1参照)ものが、提案されている。
【0003】
また、従来の油水分離器としては、圧縮空気より発生したドレン水から油を中心とする異物を分離するために、エマルジョン破壊粒子を付着させたエマルジョン破壊粒子付吸着材と油を吸着する油吸着材とを交互に積層させた状態の中に少なくとも一層の色素や異臭を除去する活性炭を収納したエマルジョン破壊油吸着槽を配設し、前記エマルジョン破壊油吸着槽の入口側の第一番目の層には前記油吸着材を収納し、入口側の第二番目の層には前記活性炭を収納したことを特徴とする圧縮空気より発生したドレン水の油水分離装置(特許文献2参照)が、提案されている。
【0004】
さらに、水処理用吸着材として、キトサン粉末、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、表面キトサン化キチンナノファイバー、繊維状酸化アルミニウムのいずれかを吸着剤として、これをセルロース等の基質に保持させた(特許文献3参照)ものが、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3541886号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第3651423号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2018-192468号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油水分離器に関して解決しようとする問題点は、従来から、ドレン水などの被処理水において、繊維材が集合された層によって油を吸着するように設けられた油吸着繊維材層が、油吸着材として常用されているが、この油吸着繊維材層による油吸着材の前段に乳化破壊材を使用しても、エマルジョン化(乳化)された油を高効率に吸着除去し、その被処理水を高度に浄化することは難しいことにある。例えば、圧縮空気より発生した油の濃度が低いドレン水について、乳化破壊材と油吸着繊維材層や、活性炭層を用いた従来の吸着による油除去の場合、特に使用の初期の段階については、吸着効率を所望の高い水準に高めることが難しく、白濁した乳化状態を解消して浄化することができない場合があった。これに対して、使用の初期の段階にも、吸着処理後の被処理水(ドレン水など)について白濁させないためには、十分な高さの吸着槽(油吸着材が配されて構成される被処理水通過層の厚さが十分に厚いこと)が必要であり、初期から安定的な吸着効果を得て高い吸着効率を得るために呼び水を用いることも必須であった。
【0007】
そこで本発明の目的は、油分離性能を初期性能から格段に向上させ、被処理水を高度に浄化することができる油水分離器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る油水分離器の一形態によれば、乳化された油が含まれる被処理水の油を吸着除去して該被処理水を浄化するように、該被処理水が通過される複数の被処理水通過層が配されている油水分離器であって、 前記被処理水が通過される順で、乳化破壊材層と、該乳化破壊材層の下流側に配された層であって繊維材が集合された層によって油を吸着する油吸着繊維材層とが配されて構成された繊維による油吸着部層を備え、該繊維による油吸着部層の下流側に配された活性炭層と、該活性炭層の下流側に配された層であってゼータ電位を利用して乳化された油を吸着除去するゼータ電位吸着材層を備える。
【0009】
また、本発明に係る油水分離器の一形態によれば、前記被処理水が下から上へ通過するように形成された処理槽容器内に、前記複数の被処理水通過層が配され、該被処理水通過層として、前記繊維による油吸着部層、前記活性炭層及びゼータ電位吸着材層を含むことを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る油水分離器の一形態によれば、前記繊維による油吸着部層が複数段設けられていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る油水分離器の一形態によれば、前記複数段の繊維による油吸着部層の間に、吸着材が存在しない空間である空スペースが設けられていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る油水分離器の一形態によれば、前記ゼータ電位吸着材層を構成するゼータ電位吸着材が、繊維材にゼータ電位材が担持されたものであることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る油水分離器によれば、油分離性能を初期性能から格段に向上させ、被処理水を高度に浄化することができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る油水分離器の形態例を模式的に示す中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る油水分離器の形態例を添付図面(
図1)に基づいて詳細に説明する。なお、
図1に示す形態例は、一つの処理槽容器20に、乳化された油が含まれる被処理水の油を吸着除去して該被処理水を浄化するように、該被処理水が通過される複数の被処理水通過層が配されている油水分離器になっている。
【0016】
本発明に係る油水分離器では、
図1に示すように、前記被処理水が通過される順で、乳化破壊材層31と、その乳化破壊材層31の下流側に配された層であって繊維材が集合された層によって油を吸着する油吸着繊維材層32とが配されて構成された繊維による油吸着部層30を備え、その繊維による油吸着部層30の下流側(後段側)に配された活性炭層50と、その活性炭層50の下流側に配された層であってゼータ電位を利用して乳化された油を吸着除去するゼータ電位吸着材層60を備える。なお、本形態例では、被処理水が、処理槽容器20の下(上流側)から上(下流側)へ通過するように、配管が接続される油水分離器になっている。ここで、「上」と「下」とは、重力が作用する方向(鉛直方向)の関係についての上下を意味している。また、ここで、被処理水が通過される「上流側」とは、油の吸着がなされる部位において相対的に前段側の位置であることを示し、被処理水が通過される「下流側」とは、油の吸着がなされる部位において相対的に後段側の位置であることを示す。
【0017】
また、本発明に係る油水分離器では、その適切な各吸着材の組成比(充填体積比)の目安として、例えば、油吸着繊維材層が70~90%、活性炭層が5~15%、ゼータ電位吸着材層が5~15%とすることができる。これによれば、その三つの吸着層でバランスの良く油を吸着できて同時期に寿命を迎えるように可及的に調整できることになり、油水分離器の寿命を最大化できる。
また、本発明に係る油水分離器では、被処理液が処理槽容器20の内周面に沿ってリークした状態になって通過しやすい。このため、繊維による油吸着部層30の乳化破壊材層31や油吸着繊維材層32は、従来技術においても要求されていることであるが、所定の密度で充填されていることを要する。すなわち、その乳化破壊材層31や油吸着繊維材層32の密度を上げることで、乳化破壊材層31や油吸着繊維材層32の周囲(外周)が処理槽容器20内周面へ強く圧接できるため、前述したような被処理液がリークした状態になって通過する現象を抑えることができる。
【0018】
本形態例の繊維による油吸着部層30の前記被処理水が通過される順で上流側の一部を構成する乳化破壊材層31としては、アミン系の乳化破壊材を用いることができる。このアミン系の乳化破壊材としては、例えば、繊維材によってシート状に設けられることで、透水性などの通液性のあるシート状の処理水通過層に、プラスの電荷(正電荷)を帯びさせるアミン系の正電荷材料が担持されたものを利用することができる。このような正電荷を帯びた乳化破壊材層31によれば、乳化されることでマイナスの電荷(負電荷)を帯びたコロイド状の微細な油粒子を、引き寄せて凝集させて凝集油とし、乳化を破壊することができる。これによって、コロイド状の油粒子に比較してサイズが大きくなった凝集油を、下流側の層である油吸着繊維材層32で、高効率に吸着除去することができる。
【0019】
本形態例の繊維による油吸着部層30の前記被処理水が通過される順で下流側の一部を構成する油吸着繊維材層32は、オイルフェンスなどの油吸着材として常用されている素材を利用したものであり、ポリプロピレンなどの化学繊維によるものとセルロースが主成分の天然繊維によるものがあるが、化学繊維の方が油の浸透にムラがなく望ましい。
【0020】
また、この油吸着繊維材層32の形態は、例えば、綿(わた)状、シート状、又はそのシート状のものを短冊状などにカットして形成されたチップ状のものがある。なお、この油吸着繊維材層32に係るシート状とは、繊維材がバインドされることによって不織布状に形成されてシート状に設けられたもの(不織布状のシート)や、その不織布状のシートが両面に配されて且つその両面の間に挟まれて綿状の繊維が所要の厚さに配されたものなど、織布状を含めて、繊維材が集合されて所望の厚さがあって平面状に広がる層状の形態に構成されたものの全てが含まれる。ところで、チップ状にカットされて形成されたものにあっては、その断面積の大きさや形態(例えば短冊状の形態の大きさ)を適宜に変えることで、求められる吸着仕様に合わせて、その吸着効率を変化・調整させることができる。
【0021】
本形態例の活性炭層50とは、例えば、粒状の活性炭が所要の厚さの層となるように、層状に堆積した状態に設けられたものや、繊維状に形成されたものが集合されて所要の厚さに形成されたものなど、通液性があるように層状に設けられたものであればよい。なお、本形態例に係る吸着容量を含む油の吸着作用としては、石炭系のロッド状の活性炭の方が、植物系の活性炭など他の活性炭に比べて、その性能が高い傾向にある。
【0022】
本形態例のゼータ電位吸着材層60とは、正電荷に帯電されて微細素材の集合体を層状に堆積させたものであり、例えば、基材となる繊維径がマイクロサイズのファイバー(微細繊維)であって、そのファイバーに特殊な加工によってプラスの電荷を持たせたもので、水中でマイナスに帯電している物質(本発明ではコロイド状の油粒子)を、ゼータ電位を利用して強力に吸着するものを用いることができる。
【0023】
本形態例の油水分離器では、そのゼータ電位吸着材層60の一例として、特許文献3に記載された水処理用吸着材(電荷吸着ファイバー)を利用することができる。このゼータ電位吸着材層60を構成するゼータ電位吸着材は、繊維径が30~50μmオーダーの繊維材(セルロース等の基質)にゼータ電位材が担持されたものになっている。
また、本発明に係るゼータ電位吸着材層60を構成する他のゼータ電位吸着材としては、セルロースの基材に、パーライトやケイソウ土の微粒子がレジンを介して担持されたものを利用することができる。
【0024】
以上に説明した複数の被処理水通過層を構成する吸着材の特徴について、以下に簡単に説明する。
油吸着繊維材層32を構成する油吸着繊維材(化学繊維)は、浮上油、凝集油を吸着でき、油の浸透にムラがないが、乳化油に対しては初期に性能を発揮しにくい。また、油吸着繊維材層32を構成する油吸着繊維材(天然繊維)は、浮上油、凝集油を吸着できるが、乳化油に対しては初期に性能を発揮しにくく、油の浸透にムラがある。また、活性炭層50を構成する活性炭は、乳化油に対しては最も吸着量が多く、COD(有機物質)も除去できるが、浮上油、凝集油はほとんど吸着できない。そして、ゼータ電位吸着材層60を構成するゼータ電位吸着材は、乳化油に対しても初期から高性能を発揮でき、細菌も除去できるが、浮上油、凝集油はほとんど吸着できない。
【0025】
また、活性炭やゼータ電位吸着材は浮上油や凝集油をほとんど吸着できないため、その活性炭やゼータ電位吸着材の前に油吸着繊維材を配置することが効果的である。乳化破壊材と油吸着繊維材は、適宜に交互に配置しても良い。また、活性炭とゼータ電位吸着材は、凝集した油を吸着できる量は油吸着材に比べて少ないため、十分な量の油吸着繊維材を使用する。なお、活性炭とゼータ電位吸着材は初期の白濁防止と以降の低油分濃度維持のために必要な量のみ使用すればよい。
【0026】
本発明に係る油水分離器によれば、油分離性能を初期性能から格段に向上させ、被処理水を高度に浄化することができるという特別有利な効果を奏する。例えば、圧縮空気より発生した油の濃度が低いドレン水を、極めて適切に浄化処理できる。すなわち、初期から高性能(例えば、油分濃度1mg/L以下)を発揮し、呼び水も不要とすることができ、凝集した油から乳化した油まで様々なドレンを処理できる。また、活性炭を配置していることにより、化学的酸素要求量COD(有機物質)の低減も望め、ゼータ電位吸着材を配置していることにより、細菌の低減も望め、処理水のスライム発生を抑制できる。なお、ゼータ電位吸着材は他の油吸着材に比べて高価であるが、必要な量は限られるため、大幅にはコストアップしない。
【0027】
また、本形態例の油水分離器では、
図1の矢印で示すように、前記被処理水が下から上へ通過するように形成された処理槽容器20内に、前記複数の被処理水通過層が配され、その被処理水通過層として、繊維による油吸着部層30(乳化破壊材層31と油吸着繊維材層32とを含む被処理水通過層)、活性炭層50及びゼータ電位吸着材層60を含むように設けられている。すなわち、本形態例では、
図1に示すように、一つの処理槽容器20内に、被処理水通過層の各層が配され、被処理水が、各油吸着層に対して下側から浸透して透過されることで通過され、油を吸着作用によって分離して浄化されるように形成されている。このように形成されることで、一つの処理槽容器20による一つの油水分離器として簡易に構成でき、配管接続や保守管理を集中して行うことができる形態になっている。また、油は水より軽く浮き易く、凝集した油は水平に広がり易いため、本形態例のように水平に置かれた層が積層された形態の各被処理水通過層によれば、油を均一に効率良く吸着できる利点がある。
【0028】
また、本形態例の油水分離器では、
図1に示すように、繊維による油吸着部層30が複数段設けられている。なお、本形態例では、二段の繊維による油吸着部層30が配された構成になっている。また、本形態例によれば、処理槽容器20は、円筒状の槽が、鉛直方向に二段に重ね合わせた形状となっており、下側の槽が(A)前処理槽となっており、上側の槽が(B)後処理槽となっている。なお、本形態例の(A)前処理槽と(B)後処理槽の各容器(二つの容器)は、それぞれ上下の端部にフランジ部21を備え、その重ね合わせたフランジ部21においてパッキン23を介して締結部材22によって水密シール状態に連結されている。なお、本形態例の締結部材22は、ボルト、ナット、ワッシャーによって構成されているが、これに限定されるものではなく、既知の他の締結手段を用いてもよい。
【0029】
このように一つの処理槽容器20を二段の円筒状の槽によって構成することで、製造し易い形態とすることができる。なお、本形態例の処理槽容器20は、具体例として、直径が約30cm、高さが約100cmであり、製造中には高さ方向に二分割された形態になっている。このため、被処理水通過層の各層を、各円筒状の槽内に配し易く、製造し易い形態になっている。
【0030】
本形態例の(A)前処理槽では、
図1に示すように、下側(底側)から上側へ順に、(1)押え板(板金)、(2)破壊材(乳化破壊材層31を構成)、(3)油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層32を構成)、(4)破壊材(乳化破壊材層を構成)・(3)油吸着材の流出防止(後述の油吸着材(15)と同じでもよい)、(5)押え板(板金)が配されている。
【0031】
本形態例の(B)後処理槽では、
図1に示すように、下側(底側)から上側へ順に、(6)押え板(板金)、(7)破壊材(乳化破壊材層31を構成)・後述の(8)油吸着材の流出防止(後述の油吸着材(15)と同じでもよい)、(8)油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層32を構成)、(9)油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)・異なる吸着材の混合防止、(10)活性炭(活性炭層50を構成)、(11)油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)・異なる吸着材の混合防止、(12)ゼータ電位吸着材(ゼータ電位吸着材層60を構成)、(13)油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)・異なる吸着材の混合防止、(14)油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層を構成)・(12)ゼータ電位吸着材の流出を防止、(15)油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)・(14)油吸着材の流出防止、(16)押え板(板金)が配されている。また、(A)前処理槽と(B)後処理槽との間、即ち、両方の(5)(6)押え板の間には、空スペース40が設けられている。
【0032】
なお、本形態例の押え板(板金)としては、透液性を有するように多数の孔が形成された金属製の円形平板状の有孔板が用いられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、吸着材を処理槽容器20内に適切に保持できるように剛性を備える形態であって耐油性などの他の仕様を満足できればよく、例えば樹脂製であってよいのは勿論である。また、乳化破壊材層31やシート状の油吸着繊維材層は、単層のシートで構成されてもよいが、複数枚のシートを重ね合わせた形態によって構成されてもよいのは勿論である。さらに、本形態例のチップ状の油吸着繊維材層32は、シート状の油吸着繊維材が短冊状にカットされたものを処理槽容器20内にランダムに詰め込んだ形態に構成されているが、これに限定されず、油吸着の効果がある繊維の集合体を綿状に詰め込んだ形態として構成されてもよい。また、積層される(6)押え板や各吸着材層などの周囲(外周)と、処理槽容器20の内周面とを、例えばシリコン接着剤などのシール手段で固定・接合状態とすることで、被処理水がリークして吸着効率が低下することを抑制・防止することができる。
【0033】
また、本形態例のゼータ電位吸着材層60を構成する電荷吸着ファイバー(ゼータ電位吸着材)については、本形態例のシート状の油吸着繊維材層によって構成された油吸着材(14)などの代わりに、不織布袋などに入れることで、そのゼータ電位吸着材の流出を防止するようにしてもよい。
【0034】
さらに、本形態例では、処理槽容器20が、円筒状の槽容器を二段に重ね合わせることで構成されているが、これに限定されるものではなく、三段以上に重ねてもよいし、反対に一つ槽容器内に全ての被処理水通過層を配してもよく、さらに、槽容器を複数に分割して配管によって接続し、各被処理水通過層を上述したような順で配置することも可能である。また、本発明では、少なくとも、被処理水が通過される上流側から下流側への順で、繊維による油吸着部層30、活性炭層50、ゼータ電位吸着材層60という三つの構成要素が配置された位置関係が存在すればよく、その三つの構成要素の間や前後に、他の吸着材層や他の空スペースなどの他の層状の構成要素が付加されることを排除するものではない。
【0035】
また、本形態例の油水分離器では、
図1に示すように、複数段の繊維による油吸着部層30の間に、吸着材が存在しない空間である空スペース40が設けられている。このように、吸着材が存在しない空間(空スペース40)を設けると、その空スペース40が被処理水だけによって満たされた状態になり、一旦、浸透のムラが解消される。これによれば、被処理水をより均一に浄化処理できる。なお、本形態例では、処理槽容器20(A)と処理槽容器20(B)との間である両者の合せ部のみに、空スペース40が設けられた構成となっている。これによれば、各処理槽容器20(A)、(B)の限られたスペース内に各吸着層を構成するそれぞれの吸着材を効率良く充填できると共に、合せ部であって稠密に充填した形態とすることが難しい部分を逆に利用して空スペース40の構成部位にすることで、その空スペース40を合理的且つ容易に設けることができる。
【0036】
以上に説明した
図1の実施例(本形態例)によれば、乳化された油が含まれる被処理水の油の吸着除去に関し、ゼータ電位吸着材層60を配さなかった以外は同等の構成と条件のものと比較して、初期性能(油の浄化効率)を、約10倍程度向上させることができた。また、本形態例によれば、乳化された油が含まれる被処理水の油の吸着除去に関し、その被処理水の総処理量についても、十分に高い性能を得ることができた。
【0037】
なお、活性炭層50とゼータ電位吸着材層60との配置を反対にした場合(ゼータ電位吸着材層60を活性炭層50に対して被処理水の流れの上流側に配置した場合であって他の条件は同じ)に比べ、本形態例の方が、被処理水の総処理量を約15%程度多く処理することができた。これによれば、ゼータ電位吸着材層60を構成するゼータ電位吸着材に比較して吸着容量の大きな活性炭の性質を適切に利用することができ、油水分離器の寿命を長期化できる利点がある。
【0038】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0039】
(A) 前処理槽
(B) 後処理槽
(1) 押え板(板金)
(2) 破壊材(乳化破壊材層31を構成)
(3) 油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層32を構成)
(4) 破壊材(乳化破壊材層を構成)
(5) 押え板(板金)
(6) 押え板(板金)
(7) 破壊材(乳化破壊材層31を構成)
(8) 油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層32を構成)
(9) 油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)
(10) 活性炭(活性炭層50を構成)
(11) 油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)
(12) ゼータ電位吸着材(ゼータ電位吸着材層60を構成)
(13) 油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)
(14) 油吸着材(チップ状の油吸着繊維材層を構成)
(15) 油吸着材(シート状の油吸着繊維材層を構成)
(16) 押え板(板金)
20 処理槽容器
21 フランジ部
22 締結部材
23 パッキン
30 繊維による油吸着部層
31 乳化破壊材層
32 油吸着繊維材層
40 空スペース
50 活性炭層
60 ゼータ電位吸着材層