(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161611
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】微生物担持体
(51)【国際特許分類】
C02F 3/10 20230101AFI20231031BHJP
C02F 3/04 20230101ALI20231031BHJP
【FI】
C02F3/10 Z
C02F3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072036
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】矢嶌 健史
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 厚文
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆司
(72)【発明者】
【氏名】幡本 将史
(72)【発明者】
【氏名】渡利 高大
(72)【発明者】
【氏名】ヌルアデリンビンティ アブバカル
(72)【発明者】
【氏名】三輪 徹
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA02
4D003AB06
4D003AB08
4D003EA03
4D003EA18
4D003EA21
(57)【要約】
【課題】有機性排水の処理に使用した後に産業廃棄物として処理する必要がなく、産業廃棄物の削減ひいては環境負荷を軽減することが可能な微生物担持体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる微生物担持体(担持体300)の構成は、散水ろ床法において有機性排水である流体を循環させる処理タンク110内に充填され好気性微生物を担持する微生物担持体であって、生分解性繊維からなることを特徴する。また上記生分解性繊維はヤシガラであるとよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散水ろ床法において有機性排水である流体を循環させる処理タンク内に充填され好気性微生物を担持する微生物担持体であって、
生分解性繊維からなることを特徴とする微生物担持体。
【請求項2】
前記生分解性繊維はヤシガラであることを特徴とする請求項1に記載の微生物担持体。
【請求項3】
当該微生物担持体は、表面に前記生分解性繊維の毛先が向いたブラシ状であることを特徴とする請求項1または2に記載の微生物担持体。
【請求項4】
当該微生物担持体は、前記生分解性繊維からなるマットを円柱形に打ち抜いて形成されていることを特徴とする請求項3に記載の微生物担持体。
【請求項5】
当該微生物担持体は、前記生分解性繊維からなるマットを円板型に打ち抜いて、生分解性の留め具で円柱形に複数連結して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の微生物担持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水ろ床法において有機性排水である流体を循環させる処理タンク内に充填され好気性微生物を担持する微生物担持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から有機性排水の処理に好気性微生物が用いられている(生物学的処理)。かかる好気性微生物を活性化させるためには酸素を供給する必要がある。好気性微生物への酸素の供給方法の1つとして散水ろ床法がある。散水ろ床法では、処理槽内に被処理水を散水し、処理槽内に充填された充填材(砕石等)の表面に形成された生物膜と被処理水との接触反応によって被処理水内の対象物質を分解処理している。
【0003】
散水ろ床法では、被処理水が処理槽内を流下する際に空気に接触することで、被処理水に酸素が溶け込む。このため、曝気を不要とすることができ、曝気に要する装置コスト等の削減を図ることが可能であった。しかしながら散水ろ床法では、被処理水が処理槽内を流下する時間が短いため、充填材の生物膜と被処理水とが接触反応する時間を十分に取れず、処理効率の向上が課題となっていた。
【0004】
上記課題の解決方法として、DHS法(Downflow Hanging Sponge)が近年開発された。DHS法では、スポンジ担体を充填した反応槽の上部から被処理水を散水し、被処理水がスポンジ担体上に増殖している微生物と接触しながら流下することで対象物の分解処理を行っている。充填材であるスポンジ担体と被処理水とが接触反応する時間を十分に得ることができる。また散水ろ床法で用いられる充填材の表面のみに薄い生物膜が形成されているのに対して、DHS法で用いられるスポンジ担体では内部にも微生物が生息している。これらにより、DHS法は被処理水の処理効率の向上を図ることが可能となっている。
【0005】
例えば特許文献1には、DHS法を用いた散水式浄化装置が開示されている。特許文献1では、中空のタンク内に形成された処理空間に充填材としての保水体を充填している。かかる保水体は、処理空間内に充填配置された状態で内側に通気路を形成可能な保形性を有する筒状芯材を有し、筒状芯材の内外表面に微生物を付着育成可能な繊維材料または多孔質材料からなる被覆担体層が形成されている。筒状芯材の通気路は、被覆担体層に微生物が付着育成された状態で通気自在に開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
散水式浄化装置の保水体(微生物担持体)は、長期使用によって担体のスポンジの詰まり等によって処理効率が低下したら交換する必要がある。このとき、特許文献1の保水体は、筒状芯材としてポリエチレンを用い、被覆担体層としてポリエステルを用いているため、使用後の保水体は産業廃棄物として処分することとなる。すると特許文献1の保水体は、有機性排水の処理には寄与できるものの、産業廃棄物の削減ひいては環境保全の観点においては更なる改善の余地がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、有機性排水の処理に使用した後に産業廃棄物として処理する必要がなく、産業廃棄物の削減ひいては環境負荷を軽減することが可能な微生物担持体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる微生物担持体の代表的な構成は、散水ろ床法において有機性排水である流体を循環させる処理タンク内に充填され好気性微生物を担持する微生物担持体であって、生分解性繊維からなることを特徴とする。また上記生分解性繊維はヤシガラであるとよい。
【0010】
当該微生物担持体は、表面に生分解性繊維の毛先が向いたブラシ状であるとよい。また当該微生物担持体は、生分解性繊維からなるマットを円柱形に打ち抜いて形成されているとよい。または当該微生物担持体は、生分解性繊維からなるマットを円板型に打ち抜いて、生分解性の留め具で円柱形に複数連結して形成されているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機性排水の処理に使用した後に産業廃棄物として処理する必要がなく、産業廃棄物の削減ひいては環境負荷を軽減することが可能な微生物担持体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】有機性排水処理システムを備える排水処理設備を例示する図である。
【
図2】
図1の有機性排水処理システムの概略図である。
【
図3】本実施形態にかかる担持体の実施例および比較例を例示する図である。
【
図4】生分解性繊維のマットであるヤシガラ繊維マットを例示する図である。
【
図5】本実施形態の担持体および比較例の排水処理性能について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(排水処理設備200)
図1は、有機性排水処理システム(以下、処理システム100と称する)を備える排水処理設備200を例示する図である。
図1に例示する排水処理設備200は、沈殿タンク210、処理タンク110、砂ろ過タンク220および貯留タンク230を含んで構成される。
【0015】
排水処理設備200では、河川等からの水(有機性排水)がポンプ202によって沈殿タンク210に送られる。沈殿タンク210では、砂等の固形物の沈殿物除去処理が行われる。沈殿物除去処理が行われた処理水はポンプ212によって本実施形態の処理タンク110に送られる。処理タンク110では、後述する好気性微生物を用いた生物学的処理による処理水中の有機物の分解処理、および硝化菌によるアンモニア態窒素の硝化処理が行われる。
【0016】
有機物の分解処理等が行われた処理水は、処理システム100の浄水ポンプ140によって砂ろ過タンク220に送られる。砂ろ過タンク220では、細かな固形物の除去処理が行われる。固形物の除去処理が行われた処理水は貯留タンク230に送られる。貯留タンク230は、砂ろ過タンク220から送られた処理水を貯留し、活性炭を用いた有害物質の吸着処理や消毒処理等の仕上げ処理を行う。仕上げ処理を行われた処理水は、ポンプ232によって外部の水使用設備に供給される。
【0017】
(処理システム100)
図2は、
図1の有機性排水処理システム(処理システム100)の概略図である。
図2に例示するように本実施形態の処理システム100は、有機性排水である流体を貯留する処理タンク110を備える。処理タンク110には、沈殿タンク210のポンプ212が供給管102を介して接続されていて、沈殿タンク210における沈殿物除去処理後の流体が供給管102を介して供給される。供給管102は処理タンク110の上部に配置されたノズル120と接続されていて、処理タンク110に供給された流体はノズル120によって処理タンク110内に散水される。
【0018】
図2に示す処理タンク110の内部には、好気性微生物を担持する本実施形態の微生物担持体(以下、担持体300と称する)が収容されている。上述したようにノズル120から散水された流体は、処理タンク110内を流下する際に担持体300と接触する。これにより、担持体300が担持している好気性微生物(不図示)との接触反応が生じ、流体に含まれている有機物が分解処理される。なお、本実施形態の担持体300については後に詳述する。
【0019】
担持体300を通過した流体は、処理水として処理タンク110の下部に貯留され、所定のタイミングにおいて浄水ポンプ140によって浄水経路142を通じて汲み上げられる。汲み上げられた処理水は、所定量が送出経路144を通じて外部設備(不図示)に送出され、それ以外は循環経路146を通じて処理タンク110に循環する。
【0020】
図2に示す処理システム100には、浄水ポンプ140の経路すなわち浄水経路142に、空気を吸引し且つ微細気泡化するエジェクタ150が配置されている。これにより、浄水ポンプ140によって処理タンク110の下部から汲み上げられた処理水には、エジェクタ150を通過することで空気の微細気泡(マイクロバブル)が供給される。そしてエジェクタ150を通過した処理水は、エジェクタ150の下流側と連通しているノズル120によって処理タンク110内に散水される。
【0021】
微細気泡は表面積が大きくなるため酸素が水に溶けやすく、水の酸素濃度を高めることができ、微細気泡を供給された水は溶存酸素の量が増加する。したがって、溶存酸素を多く含んだ処理水を処理タンク110内に散水することで、処理タンク110全体に効率的に酸素を供給することができる。その結果、処理タンク110全体において担持体300に担持されている好気性微生物を活性化することができ、有機性排水の処理効率の更なる向上を図ることが可能となる。
【0022】
また上述したようにエジェクタ150を用いることにより、強制通風を行うことなく、すなわち処理タンク110への空気供給量を最小化しながら空気ひいては酸素を処理水に供給することができる。したがって、強制通風を行った際に生じる周囲への臭気の拡散を回避することが可能である。
【0023】
図2に示す処理システム100には更に、処理タンク110と浄水ポンプ140とを連結する連結経路148には、処理タンク110の下部に貯留された処理水の水位を検知する水位センサ160と、浄水ポンプ140の動作を制御する制御部190とが設けられている。
【0024】
制御部190は、浄水ポンプ140が検知した処理水の水位が所定値以上になったら浄水ポンプ140を動作させる。かかる構成によれば、処理タンク110の下部に処理水がある程度貯まったら、浄水ポンプ140によって汲み上げられた処理水の一部が外部に送出される。したがって、処理タンク110が満量になって処理水が処理タンク110から溢れ出てしまうことを好適に防ぐことができる。
【0025】
またぬめり(バイオフィルム)や固形物を多く含んだ排水が流れ込む等によって担持体300が目詰まりすると、ノズル120から散水された流体(処理水)は、担持体300に捕捉されることなく処理タンク110の下部に流下する。このため、流体と担持体300との接触反応の効率が低下するとともに、水位の上昇速度が上がる。このような場合に水位センサ160が水位に応じて浄水ポンプ140を動作させることで、浄水ポンプ140の起動回数が増え、担持体300への酸素供給量を増加させることができる。したがって、流体と担持体300との接触反応の効率を上昇させることが可能となる。
【0026】
一方、水位センサ160は、処理水の水位が所定値未満となったら浄水ポンプ140を停止させる。かかる構成によれば、処理タンク110の内部の処理水が極めて少なくなったら、外部設備(不図示)への処理水の送出が停止され、処理水が処理タンク110に貯留される。これにより、担持体300の乾燥を抑制し、担持体300に担持された好気性微生物の死滅を防ぐことが可能となる。
【0027】
また本実施形態の処理システム100は、処理タンク110の天面となる蓋170を備え、ノズル120は蓋170の下面に向かって処理水を散水する。これにより、ノズル120によって処理水を単に(下方に向かって)散水する場合に比して、処理水をより広い範囲に均等且つ効率的に散水することができる。したがって、好気性微生物の活性化を促進し、有機性排水の処理効率をより高めることが可能となる。
【0028】
(担持体300)
本実施形態の担持体300は、上述したように散水ろ床法において有機性排水である流体を循環させる処理タンク内に充填され好気性微生物を担持する。本実施形態の特徴として担持体300には生分解性繊維が用いられる。かかる構成によれば、担持体300そのものもゆっくりと生分解されるため、廃棄物の量を削減することができる。分解速度は、一例として、処理水に含まれる有機物質が数日のサイクルで分解されるのに対し、担持体300は一年程度で分解される。また使用後の担持体300を肥料として用いることができるため再利用が可能である。
【0029】
したがって本実施形態の担持体300によれば、有機性排水の処理に使用した後に産業廃棄物として処理する必要がなく、産業廃棄物の削減ひいては環境負荷を軽減することが可能である。なお、担持体300が処理タンク110内において生分解されて減量した際には担持体300を追加で補充すればよい。
【0030】
また従来のDHS法において保水体に用いられる発泡材では、微細孔の径(例えば0.3~2.0mm)を超える固形物が表面に堆積したりぬめりが増えたりして目詰まりが生じ、表層流れが発生しやすい傾向があった。これに対し、発泡材に替えて繊維材を用いることにより、固形物を内部に取り込み、微生物を接触させることができるため、表層流れの発生を抑制することが可能である。加えて繊維材を用いることにより、担持体300の内部への酸素供給が促進され、好気性微生物による有機性排水中の有機物の分解処理効率を向上させることが可能である。
【0031】
上記の生分解性繊維としてはヤシガラを好適に用いることができる。ヤシガラは流通量が多いため、安価であり、且つ入手が容易である。またヤシガラはある程度の剛性を有するため、縦方向に積み上げても(例えば1m)、変形が生じにくいという利点がある。
【0032】
更にヤシガラを用いた担持体300は、従来のように担持した微生物によって有機性排水に含まれる有機物を分解する機能に加え、透水性が高いため有機性排水中の浮遊物質をろ過して捕捉することが可能である。なお生分解性繊維は、ヤシガラに限定されず、木材やサトウキビ、もみ殻等の他の材料を用いることも可能である。
【0033】
また担持体300は、表面に生分解性繊維の毛先が向いたブラシ状であるとよい。「表面に毛先が向いている」とは、担持体300の表面に毛先の切断面があることを意味している。これにより、担持体300の表面にぬめりが生じても生分解性繊維の毛先(先端)がぬめりから突出した状態となる。したがって、有機性排水と好気性微生物との接触面積を十分に確保することができ、処理効率を好適に維持することが可能となる。
【0034】
図3は、本実施形態にかかる担持体300の実施例および比較例を例示する図である。
図3(a)は、実施例1の担持体300aの斜視図である。
図3(b)は、実施例2の担持体300bの斜視図である。
図3(c)は、実施例3の担持体300cの斜視図である。
図3(d)は、比較例の担持体30の斜視図である。
【0035】
図3(a)に示す実施例1の担持体300aは、生分解性繊維からなる円柱である。
図3(b)に示す実施例2の担持体300bは、生分解性繊維からなる複数の円板310を円柱状に積層し、複数の円板310を生分解性の留め具320によって連結して構成されている。
【0036】
実施例1の担持体300aおよび実施例2の担持体300bの円板310は、カッタ等の工具(不図示)によって生分解性繊維のマットを打ち抜いて形成するとよい。これにより、担持体300aおよび担持体300b(厳密には円板310)の表面が切りっぱなしになるため、生分解性繊維の毛先が表面に向いたブラシ状となり、特段の表面加工処理を行うことなく上述した効果を得ることができる。
【0037】
具体的には、実施例1の担持体300aであれば、厚いマットを用いることにより1回の打ち抜き(工程)で製造可能である。実施例2の担持体300bの円板310であれば、薄いマットを用いることにより打ち抜きを容易に行うことができる。
【0038】
図3(c)に示す実施例3の担持体300cは、生分解性繊維のマットを渦巻状に巻いて円柱330を作成し、円柱330の外面を生分解性のバンド340で締結して構成されている。かかる構成によっても、上記と同様の効果を得ることができる。ただし実施例3の担持体300cは、繊維の毛先が担持体の表面に向いている割合が少ない。
【0039】
図4は、生分解性繊維のマットであるヤシガラ繊維マットを例示する図である。
図4に示すヤシガラ繊維マットは、ロープ状のヤシ繊維をニードルパンチによってシート状に成型されて形成されている。上述した実施例1の担持体300a、実施例2の担持体300bおよび実施例3の担持体300cとしては、
図4に示すヤシガラ繊維マットを好適に用いることができる。
【0040】
図3(d)に示す比較例の担持体30は、好気性微生物を担持し且つ水を吸収する多孔質体32、および多孔質体32の形状を保持する枠体34を含んで構成される。多孔質体32としては、無数の微小な孔を有する高分子材料、例えばスポンジ等が用いられていて、枠体34としては、剛性の高い合成樹脂材料が用いられている。
【0041】
図5は、本実施形態の担持体300および比較例の排水処理性能について説明する図である。
図5(a)は、流入水および処理水のBOD(生物化学的酸素要求量)の変化を説明する図である。
図5(b)は、流入水および処理水のSS(浮遊物質量)の変化を説明する図である。
図5(c)は、流入水および処理水のCOD-solube(溶解性化学酸素要求度)の変化を説明する図である。
【0042】
図5(a)-(c)では、本実施形態の300として実施例Cの担持体を用いている。流入水は下水であり、処理水は実施例Cの担持体または比較例の担持体30が充填された処理タンク110を通過した水である。
【0043】
図5(a)を参照すると、例えば流入水BODが3000mg/Lのとき、処理水BODは、実施例Cの担持体を用いた場合が400mg/Lであり、比較例の担持体30を用いた場合が800mg/Lである。このことから、本実施形態のように生分解性繊維であるヤシガラを用いることにより、従来のスポンジを用いた担持体30に比してBODすなわち処理水に含有される汚染物質の量を半減できることがわかる。
【0044】
図5(b)を参照すると、例えば流入水SSが4000mg/Lのとき、処理水SSは、実施例Cの担持体を用いた場合が350mg/Lであり、比較例の担持体30を用いた場合が500mg/Lである。このことから、従来のスポンジに替えて本実施形態のように生分解性繊維(ヤシガラ)を用いることにより、処理水に含まれる固形物を好適に補足することができ、処理水の濁度を従来に比して30%低下させられることが理解できる。またこのことは、従来DHSに用いられる担持体が一般的に200mg/L以下の低濃度で使用されるのに対し、実施例Cの担持体はショックロード(異常高濃度の固形分または溶解物質を含む排水が流入した場合)に十分対応できることも意味する。
【0045】
図5(c)を参照すると、流入水COD-solubeが同じ濃度であった場合、比較例の担持体30を通過した処理水のCOD-solubeよりも、実施例Cの担持体を通過した処理水のCOD-solubeの方が低くなる傾向があることがわかる。このことから、本実施形態のように生分解性繊維であるヤシガラを用いた担持体300は、従来のスポンジ製の担持体30よりも流入水に溶解している汚染物質をより効率的に処理可能であることがわかる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、散水ろ床法において有機性排水である流体を循環させる処理タンク内に充填され好気性微生物を担持する微生物担持体として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
30…担持体、100…処理システム、102…供給管、110…処理タンク、120…ノズル、140…浄水ポンプ、142…浄水経路、144…送出経路、146…循環経路、148…連結経路、150…エジェクタ、160…水位センサ、190…制御部、200…排水処理設備、202…ポンプ、210…沈殿タンク、212…ポンプ、220…過タンク、230…貯留タンク、232…ポンプ、300…担持体、300a…担持体、300b…担持体、300c…担持体、310…円板、320…留め具、330…円柱、340…バンド