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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161615
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】美容装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072040
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】504322390
【氏名又は名称】有限会社ガイナック
(71)【出願人】
【識別番号】598113586
【氏名又は名称】株式会社ハスラック
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成川 利明
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA01
4C082PA02
4C082PC09
4C082PE09
4C082PG15
4C082PG16
4C082PJ03
4C082PJ21
(57)【要約】
【課題】被処理肌の状況に応じて肌処理効果を高めることができる美容装置を提供する。
【解決手段】美容装置10は、それぞれ身体の被処理肌に光を照射する複数の発光ダイオードが分散配置された照射パネル13と、照射パネル13に設けられ、被処理肌と照射パネル13との間の距離を測定する距離センサ31、32と、距離センサにより検出される被処理肌からの反射光のレベルに応じて照射パネルと被処理肌との間の距離を演算し、演算結果に基づいて発光ダイオードの照射強度を調整する制御部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ身体の被処理肌に光を照射する複数の発光ダイオードが分散配置された照射パネルと、
前記照射パネルに設けられ、前記被処理肌と前記照射パネルとの間の距離を測定する距離センサと、
前記距離センサにより検出される被処理肌からの反射光のレベルに応じて前記照射パネルと前記被処理肌との間の距離を演算し、演算結果に基づいて前記発光ダイオードの照射強度を調整する制御部と、を有する美容装置。
【請求項2】
それぞれ身体の被処理肌に光を照射する複数の発光ダイオードが分散配置された照射パネルと、
前記照射パネルに設けられ、前記被処理肌の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサにより検出される前記被処理肌からの検出信号に応じて前記被処理肌の温度を演算し、演算結果に基づいて前記発光ダイオードの照射強度を調整する制御部と、を有する美容装置。
【請求項3】
請求項1記載の美容装置において、
前記照射パネルに設けられ、前記被処理肌の温度を測定する温度センサと、
操作表示部に設けられ、前記距離センサを作動させる距離測定モードスイッチと、
前記操作表示部に設けられ、前記温度センサを作動させる温度測定モードスイッチと、を有し、
前記制御部は、前記距離測定モードスイッチがオンされたときには前記距離センサにより検出される反射光のレベルに応じて前記照射パネルと前記被処理肌との間の距離を演算し、演算結果に基づいて前記発光ダイオードの照射強度を調整する一方、前記温度測定モードスイッチがオンされたときには前記温度センサにより検出される前記被処理肌からの反射信号に応じて前記被処理肌の温度を演算し、演算結果に基づいて前記発光ダイオードの照射強度を調整する、美容装置。
【請求項4】
請求項3に記載の美容装置において、
複数の前記距離センサを、相互に距離を離して前記照射パネルに設け、
前記制御部は、それぞれの前記距離センサにより測定される反射光のレベルが読み取り閾値の範囲となったときに、前記被処理肌の温度を演算する、美容装置。
【請求項5】
請求項3に記載の美容装置において、
前記温度センサにより得られた被処理肌についての複数の検出値を記憶するメモリを有し、
前記制御部は、前記メモリに記憶された複数の検出値に基づいて演算された肌温度推移または平均肌温度と、前記温度センサがオンされたときに測定された被処理肌の肌温度とを比較して前記発光ダイオードの照射量を調整する、美容装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の美容装置において、
複数の前記発光ダイオードは少なくとも赤外線を照射する赤外線発光ダイオードを有する、美容装置。
【請求項7】
請求項6に記載の美容装置において、
中央部に配置される前記赤外線発光ダイオード、それぞれ前記赤外線発光ダイオードの周囲に配置される2つの赤色発光ダイオード、および2つの黄色発光ダイオードからなる第1の発光ダイオードユニットと、
中央部に配置される青色発光ダイオード、それぞれ前記青色発光ダイオードの周囲に配置される2つの赤色発光ダイオード、および2つの黄色発光ダイオードからなる第2の発光ダイオードユニットと、を有する美容装置。
【請求項8】
請求項7に記載の美容装置において、
前記第1の発光ダイオードユニットと前記第2の発光ダイオードユニットとを交互に横方向に複数配置するとともに、前記第1の発光ダイオードユニットと前記第2の発光ダイオードユニットとを交互に縦方向に複数配置して、複数の前記発光ダイオードユニットを碁盤目状に分散配置した、美容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に光を照射することによって肌を処置する美容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の波長の光を顔面や頭皮等の肌つまり皮膚に照射すると、シミやシワの改善等の美容効果があることが知られている。特許文献1は、把持部が設けられたベース筐体部と、ベース筐体部の端部に設けられた光源設置部とを有し、使用者が把持部を手に持って使用するハンディタイプの美肌装置を開示している。光源設置部には相互に異なる色の光を照射する複数の光源領域が設けられており、それぞれの光源領域には、発光ダイオード(LED)が設けられている。特許文献2は、複数の発光ダイオードが4列7行に分散配置されて組み込まれた箱状本体を有する皮膚の処理装置を開示している。
【0003】
特許文献1、2には、発光ダイオードにより赤色のビームを皮膚に照射すると、皮膚のコラーゲンの生成を刺激し、コラーゲンにより傷ついた組織を修復し、新陳代謝を促進できることが記載されている。また、赤外線のビームを皮膚に照射すると、皮膚のエラスチンの生成を刺激し、しわの改善やコラーゲンを増加できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-125075号公報
【特許文献2】特開2012-16438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光ダイオード(LED)からなる複数の光源が設けられた照射部を有する皮膚処理装置つまり美容装置においては、皮膚処理効果つまり美容効果を高めるためには、顔面等の被処理肌に向けて所定の照射レベルつまり照射量で光を照射する必要がある。しかしながら、従来の皮膚処理装置においては、発光ダイオードから一定の照射レベルの光を照射するようにしているので、処理効果を高めるには、被処理肌と照射部とが所定の距離を保つようにする必要があり、さらに、被処理肌の全体が照射部からずれないように被処理肌を照射部に対向させる必要がある。
【0006】
特許文献2に記載のように、複数の発光ダイオードが設けられた層状部材つまりシート状部材を照射部とする皮膚処理装置においては、照射部を身体に装着するので、被処理肌と照射部との距離を一定に保つことができるとともに、照射部を被処理肌に対向させることができるが、このタイプの皮膚処理装置は、被処理肌の個所に応じて複数の部位に照射部を装着することができない。
【0007】
それぞれの発光ダイオードから一定の照射レベルの光を照射するようにした皮膚処理装置や美容装置を複数の被処理肌に対向させて処理を行う場合には、照射部に対する被処理肌の距離や対向する位置等の被処理肌に対する装置の配置状況に応じて最適な処理効果を得ることができないという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、被処理肌の状況に応じて肌処理効果を高めることができる美容装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の美容装置は、それぞれ身体の被処理肌に光を照射する複数の発光ダイオードが分散配置された照射パネルと、前記照射パネルに設けられ、前記被処理肌と前記照射パネルとの間の距離を測定する距離センサと、前記距離センサにより検出される被処理肌からの反射光のレベルに応じて前記照射パネルと前記被処理肌との間の距離を演算し、演算結果に基づいて前記発光ダイオードの照射強度を調整する制御部と、を有する。
【0010】
本発明の美容装置は、それぞれ身体の被処理肌に光を照射する複数の発光ダイオードが分散配置された照射パネルと、前記照射パネルに設けられ、前記被処理肌の温度を測定する温度センサと、前記温度センサにより検出される前記被処理肌からの検出信号ルに応じて前記被処理肌の温度を演算し、演算結果に基づいて前記発光ダイオードの照射強度を調整する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
照射パネルに距離センサを設けると、照射パネルに設けられた発光ダイオードの照射レベルを、照射パネルと被処理肌との間の距離に応じて調整することができるので、距離が変化したとしても、照射開始から照射終了まで、常に最適な照射レベルで被処理肌に光を照射して肌処理効果を高めることができる。
【0012】
照射パネルに温度センサを設けると、照射パネルに設けられた発光ダイオードの照射レベルを、被処理肌の温度に応じて調整することができるので、最適な照射レベルで被処理肌に光を照射して肌処理効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施の形態である美容装置を示す正面図である。
図2】美容装置の使用状態を示す斜視図である。
図3】(A)は図1および図2に示された赤外線LEDユニットを示す拡大正面図であり、(B)は青色LEDユニットを示す拡大正面図である。
図4】温度センサの内部構造を示す拡大断面図である。
図5】美容装置の制御回路を示すブロック図である。
図6】距離センサの出力信号と、発光ダイオードへの発光パルスのタイミングとを示す制御線図である。
図7】(A)~(F)は、顔面を被処理肌としてその肌温度を検出するタイミングを、2つの距離センサの出力信号により設定する場合における制御パターンを示す制御線図である。
図8】照射パネルの下端部に設けられた操作表示部の変形例を示す正面図であり、(A)は電源スイッチがオン操作された状態を示し、(B)は電源スイッチがオフされた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1および図2に示される美容装置10は、ほぼ長方形の機器本体11を有しており、機器本体11はケース部材12とその表面側に設けられる照射パネル13とを備えている。この美容装置10つまり皮膚処理装置が図2に示されるように顔面の美容効果を高めるために使用されるときには、照射パネル13の長辺が顔面の縦方向に沿うように、照射パネル13が身体の顔面に対向して配置される。テーブル等の上に美容装置10を配置したり、壁面に配置したりして美容装置10を使用するために、機器本体11にはスタンド等が装着される。
【0015】
照射パネル13の上下方向の長辺は295mmであり、横方向の短辺は195mmである。照射パネル13には複数の凹部14が形成されており、横方向8行、縦方向に7列となって合計56個の凹部14が碁盤目状に行列配置されている。それぞれの凹部14には、第1の発光ダイオードユニット(LEDユニット)21と第2の発光ダイオードユニット(LEDユニット)22のいずれかが配置されている。ただし、照射パネル13の大きさは、上述した寸法に限られることなく、使用者の手のひらに入り込む程度の小型サイズとしても良い。また、それぞれのLEDユニット21、22の数は上述した数に限られることなく、任意の数を複数配置することができるとともに、LEDユニット21、22は照射パネル13に分散配置されていれば、行列配置に限られない。なお、この明細書においては、発光ダイオードとこれと同義のLEDとを混在して記載されている。
【0016】
第1の発光ダイオードユニット21は、赤外線LEDユニットであり、図3(A)に示されるように、赤外線を照射する1つの赤外線発光ダイオードIRと、赤色光を放射する2つの赤色発光ダイオードRと、黄色光を放射する2つの黄色発光ダイオードYとを有している。赤外線発光ダイオードIRは、第1のLEDユニット21の中央部に配置され、赤外線発光ダイオードIRを中心として、これに対して同一の半径距離の位置に円周方向に、赤色発光ダイオードRと、黄色発光ダイオードYとが交互となって配置されている。
【0017】
第2の発光ダイオードユニット22は、青色LEDユニットであり、図3(B)に示されるように、青色を放射する1つの青色発光ダイオードBと、赤色光を放射する2つの赤色発光ダイオードRと、黄色光を放射する2つの黄色発光ダイオードYとを有している。青色発光ダイオードBは、第2のLEDユニット22の中央部に配置され、青色発光ダイオードBを中心として、これに対して同一の半径距離の位置に円周方向に、赤色発光ダイオードRと、黄色発光ダイオードYとが交互となって配置されている。
【0018】
このように、第1のLEDユニット21は、中心部に赤外線発光ダイオードIRが配置され、その周囲に赤色発光ダイオードRと黄色発光ダイオードYとが配置されている。一方、第2のLEDユニット22は、中心部に青色発光ダイオードBが配置され、その周囲に赤色発光ダイオードRと黄色発光ダイオードYとが配置されている。図1および図2に示されるように、第1と第2の両方のLEDユニット21、22は、行方向つまり横方向に交互に配置されるとともに、縦方向つまり列方向にも交互となって照射パネル13に配置され、全体的に碁盤目状に行列配置されている。
【0019】
LEDユニット21、22におけるそれぞれの発光ダイオードは、ダイオードである半導体チップと反射鏡とレンズとを備えてランプを構成しており、発光ダイオードランプとも言われる。
【0020】
それぞれの発光ダイオードつまり発光ダイオードランプからの光を皮膚に照射したときの皮膚に与えられる美容効果つまり皮膚処理効果は、以下の通りである。
【0021】
赤色光を人の顔等の皮膚に照射すると、真皮の深層まで光が到達して繊維芽細胞を活性化し、コラーゲン生成促進効果があり、乾燥肌やシワの改善に有効である。
【0022】
黄色光を皮膚に照射すると、一般的な紫外線により老化現象を起こした皮膚の治療に効果があり、色素沈着・紅斑・シワの減少といった効果がある。
【0023】
青色光を皮膚に照射すると、炎症性および非炎症性ニキビの改善・治療効果があり、赤色光との複合照射によりメラノサイトの黒化を抑制する効果がある。
【0024】
さらに、赤外線を皮膚に照射すると、皮膚や筋肉の深いところまで到達し、血管を拡張させて血流の改善や筋肉の弛緩効果、新陳代謝の改善効果があり、真皮層の繊維芽細胞を刺激しコラーゲン生成効果や皮膚の保湿・弾力改善効果がある。
【0025】
赤色発光ダイオードRは625nmの波長の光を放射するが、625~780nmの範囲の赤色光の波長であれば、625nmに限られない。黄色発光ダイオードYは590nmの波長の光を放射するが、565~590nmの範囲の黄色光の波長であれば、590nmに限られない。青色発光ダイオードBは470nmの波長の光を放射するが、450~485nmの範囲の波長であれば、470nmに限られない。同様に、赤外線発光ダイオードIRは940nmの波長の近赤外線を放射するが、700nm~1mmの範囲の赤外線であれば、940nmに限られない。
【0026】
照射パネル13の下端部は操作表示部15となっており、5つの施術選択スイッチ23~27が設けられている。
【0027】
選択スイッチ23はキメハリスイッチである。肌のキメ(肌理)とは皮膚表面の凹凸のことであり、キメが細かく見える肌は透明感のある美肌であり、肌のきめ、はりを低下させる主な原因は、老化や紫外線刺激である。この選択スイッチ23が操作されると、老化した皮膚の治療に適した効果のある590nmの波長の黄色光を黄色発光ダイオードYから最大出力で皮膚に照射する。さらに、真皮層のコラーゲン生成を増進させてMMP-1(コラーゲンを破壊する酵素)を減少させる効果のある625nmの波長の赤色光を赤色発光ダイオードRから照射することにより、コラーゲンの生成を促進させることができる。さらに、新陳代謝促進の効果がある近赤外線を赤外線発光ダイオードIRからも皮膚に照射する。
【0028】
選択スイッチ24は思春期肌スイッチである。思春期に多いニキビは主に肌表面に存在するアクネ菌が毛穴などで炎症を起こすことで発生する肌トラブルであり、アクネ菌はポルフィリンを発生させながら炎症を起こす。この選択スイッチ24が操作されると、470nmの波長の青色光を青色発光ダイオードBから皮膚に照射する。これにより、ポルフィリンと反応し活性酸素が発生することでアクネ菌を殺菌し、ニキビ肌やニキビに関連した赤ら顔を改善させることができる。また、同時に浸透率の高い625nmの波長の赤色光を照射することによりコラーゲン生成を促進させ、速やかな肌の修復効果を得ることができる。
【0029】
選択スイッチ25は肌荒れ・乾燥肌スイッチである。肌荒れは肌の乾燥と密接な関係があり、この選択スイッチ25が操作されると、近赤外線を赤外線発光ダイオードIRから最大出力で照射する。これにより、肌の新陳代謝を促進させることができる。近赤外線と同時に、肌の浸透率の高い625nmの赤色光を照射すると、コラーゲン生成を促進させ、荒れた肌の速やかな修復効果を得ることができる。
【0030】
選択スイッチ26は輝き肌スイッチである。肌のくすみやシミの原因は、加齢による肌表面の凹凸が光の明暗(微細な影)として見えたり、血行が悪くなった部分が黒ずんで見えたり、紫外線によるメラノサイトの黒化が原因である。そこで、選択スイッチ26が操作されると、紫外線により老化現象を起こした皮膚の治療に効果的な590nmの黄色光を最大出力で皮膚に照射し、さらに470nmの青色光と625nmの赤色光を中レベルつまり中強度で照射することでメラノサイトの黒化を抑制することができる。
【0031】
選択スイッチ27は頭皮ケアスイッチである。抜け毛や白髪は、ストレスや加齢による毛細血管の血液循環の低下および新陳代謝の低下が要因の一つである。そこで、この選択スイッチ27が操作されると、頭皮環境を改善する目的で940nmの近赤外線を最大出力で照射し、さらに625nmの赤色光を最大出力で照射することにより、毛母細胞を刺激し毛乳頭細胞を活性化させ育毛を促進させる。また、頭皮の殺菌効果を目的として弱い青色光を頭皮に照射させる。
【0032】
このように、施術選択スイッチ23~27のいずれかが操作されると、選択された施術モードに応じて、いずれかの発光ダイオードが照射されるとともに照射強度が設定される。
【0033】
施術選択スイッチの下側には、タイマー操作スイッチ28とタイマー表示部29とが設けられており、タイマー操作スイッチ28の操作により設定された時間がタイマー表示部29に点灯表示される。例えば、最小時間を5分とし最長時間を30分としてタイマー操作スイッチ28が1度操作される毎に5分単位で施術時間を設定することができる。符号30は、施術のスタート・ストップスイッチであり、施術選択スイッチ23~27により選択された施術プログラムを実行するときに操作され、実行中に操作されると施術が停止される。
【0034】
タイマー操作スイッチ28およびスタート・ストップスイッチ30は、図1に示されるように、枠線の中にそれぞれのスイッチ機能を示す絵柄が示されている。施術選択スイッチ23~27は枠線のみで示されており、絵柄は省略されているが、スイッチ機能を示す絵柄が標記される。
【0035】
図1に示されるように、照射パネル13の上下方向の中央部には、左右に距離を離して第1と第2の2つの距離センサ31、32が設けられている。それぞれの距離センサ31、32は、光検出器として作動するフォトダイオードであり、顔等の被処理皮肌に照射された光の反射光を受光する窓を有し、反射光のレベルに基づいて、被処理肌と距離センサ31、32との間の距離を測定することができる。被処理肌と距離センサ31との間の距離は、被処理肌と照射パネル13との間の距離にほぼ等しい。それぞれの距離センサ31、32としては、フォトトランジスタを使用するようにしてもよい。フォトトランジスタとしては、例えば、バイポーラトランジスタをケース内に封入し、そのベース・コレクタのpn接合に光が到達するようにしたタイプのものを使用することができる。
【0036】
距離センサ31、32により照射パネル13と被処理肌との間の距離を検出することにより、赤外線および赤色の照射強度つまり照射レベルを自動的に調整することができる。つまり、距離が設定距離よりも遠い場合には、照射強度を高め、近い場合には照射強度を低下させることにより、被処理肌に対して最適な照射量を照射することができる。ただし、距離に応じて全ての発光ダイオードの照射レベルを調整するようにしてもよい。
【0037】
照射パネル13と被処理肌との間の距離を測定するためには、1つの距離センサを設ければよい。図1および図2に示されるように、2つの距離センサ31、32を相互に左右に離して設けると、例えば、顔面を被処理肌とする場合には、2つの距離センサ31、32が受光する反射光レベルに応じて左右のバランスを検出することにより、後述のように、顔面が照射パネル13の中央部に対向しているか否かを判定することができる。顔面が照射パネル13の中央部に対向していることが検出されたときに、被処理肌である顔面の温度を検出することができる。
【0038】
2つの距離センサ31、32の間には、被処理肌の温度を測定する温度センサ33が配置されている。温度センサ33は、サーモパイル型の赤外線センサが使用されている。人の肌は温度が高くなればなる程、強い赤外線を放出しており、赤外線センサは肌からの赤外線を検出することにより肌温度を測定することができる。温度センサ33としては、赤外線センサつまり放射温度センサに限られず、非接触式の温度センサであれば、他のタイプのセンサを使用することができる。温度検出のタイミングは、後述のように、2つの距離センサ31、32の反射レベルとバランスにより決定することができる。
【0039】
図4は温度センサ33の内部構造を示す拡大断面図であり、ケース部材12の内部に組み込まれたプリント基板34にはスペーサ35により赤外線センサからなる温度センサ33が取り付けられており、照射パネル13には、フレネルレンズ構成の高密度ポリエチレンレンズ36が装着されている。図1および図2においては、レンズ36の部分を温度センサ33として示している。
【0040】
照射パネル13の下端部に設けられた表示部には、温度測定モードスイッチ41と距離測定モードスイッチ42とゴーグルモードスイッチ43の3つの照射モードスイッチが設けられている。温度測定モードスイッチ41は温度センサ33を作動させるか否かを設定するスイッチであり、温度測定モードスイッチ41がオンされたときに、肌温度を検出して発光ダイオードの発光出力を調整する。さらに、この温度測定モードスイッチ41がオンされたときには、温度センサ33により皮膚処理時に測定された肌温度と、温度センサ33により得られた所定の回数の検出値の履歴、例えば過去10回から100回程度の検出値の温度の平均肌温度とを比較したり、肌温度推移とを比較したりすることにより、照射量を自動的に調整する。所定の回数の肌温度の検出値は、メモリに記憶される。例えば、平均肌温度の値よりも一定の閾値を超える肌温度が検出された場合には、照射量を低下させ、閾値よりも低い場合には照射量を高めるように制御する。
【0041】
距離測定モードスイッチ42は被処理肌と照射パネル13との距離を検出し、距離に応じて照射量を自動的に調整するか、距離を測定することなく、一定量の照射量で被処理肌を照射するか否かを設定するスイッチであり、使用者は距離に応じて照射量を調整するか、一定量の照射量で照射するかを選択することができる。また、温度測定モードスイッチ41と距離測定モードスイッチ42の両方がオン操作されたときには、肌温度と距離との両方に応じて照射レベルつまり照射強度が調整される。
【0042】
ゴーグルモードスイッチ43はゴーグルを装着して顔面に照射するか、ゴーグルを装着しないで照射するかを選択するスイッチであり、このゴーグルモードスイッチ43が操作されてゴーグルを装着しないで顔面に光を照射する場合には、照射レベルをゴーグル装着時よりも低下させるように照射量が自動調整される。
【0043】
3つのモードスイッチの下側には電源スイッチ44が設けられており、この電源スイッチ44をオンすると、他の全てのスイッチを操作することができる。電源がオフされると、表示が全て消灯され、施術中にオフ操作された場合には強制的に照射が停止される。電源スイッチとしては、枠で示される範囲内にロゴマークや標章を表示して、ロゴマークや標章が電源スイッチを兼ねるようにしてもよい。
【0044】
図5は美容装置10の制御回路を示すブロック図である。上述した距離センサ31、32および温度センサ33の検出信号は、制御部45に送られる。さらに制御部45には、施術選択スイッチ23~27とタイマー操作スイッチ28の操作信号、温度測定モードスイッチ41、距離測定モードスイッチ42、およびゴーグルモードスイッチ43の操作信号が送られる。制御部45は、制御プログラムやデータ等が格納されるメモリと、制御信号を演算するマイクロプロセッサ(MPU)等を備えている。制御部45からの制御信号により、それぞれのLEDユニット21、22を構成する発行ダイオードの発光レベルつまり発光出力が制御され、操作表示部15およびタイマー表示部29が点灯制御される。図2に示されるように、DCジャック46が機器本体11の側面に設けられており、外部から制御回路に供給される電力により、美容装置10が駆動され制御される。なお、所定の回数の肌温度の検出履歴は、制御部45のメモリに記憶される。
【0045】
図6は、距離センサの出力信号と、それぞれのLEDユニットにおける発光ダイオードへの発光パルスのタイミングとを示す制御線図である。使用者が距離測定モードスイッチ42を操作して被処理肌と照射パネル13との距離に応じてそれぞれの発光ダイオードの照射量を自動調整するモードを選択した場合には、距離センサ31、32の検出信号が制御部45により読み込まれる。検出信号が制御部45により読み込まれると、読込タイミングPに同期して発光ダイオードが点灯される。点灯される発光ダイオードおよび照射強度は、施術選択スイッチ23~27により設定された施術プログラムに応じて設定される。
【0046】
照射量を自動調整するモードが選択された場合には、制御部45においては、距離センサが受光した被処理肌からの反射光の反射レベルに応じて照射パネル13と被処理肌との間の距離を演算し、演算結果に基づいて発光ダイオードの発光出力を調整する。例えば、照射パネル13と被処理肌との間の距離Lが100~250mmの範囲で使用することが標準的使用とする場合には、この範囲の中間値に一定の許容値を加えた距離を適正距離とし、その時の発光ダイオードの照射量は基準値に設定される。距離Lが適正距離よりも近い場合には、距離センサの検出信号のレベルが高くなり、それに応じて発光ダイオードの照射量は低く設定される。一方、距離Lが適正距離よりも遠い場合には、距離センサの検出信号のレベルが低くなるので、それに応じて発光ダイオードの照射量は高く設定される。これにより、施術中に顔面等の肌に照射される発光ダイオードの照射強度を一定の範囲に保つことができる。使用者がタイマー操作スイッチ28を操作することにより設定された照射時間が経過すると、発光ダイオードは消灯される。
【0047】
2つの距離センサ31、32が設けられているので、距離Lの検出は2つの距離センサ31、32の中間値としてもよく、いずれか一方の値としてもよい。また、1つの距離センサのみを備えた形態の美容装置10としてもよい。
【0048】
それぞれの発光ダイオードの発光出力は、パルス発光であり、発光出力強度はPWM(パルス幅変調)制御またはPFM(パルス周波数変調)制御により調整される。PFM制御は、オン時間またはオフ時間を固定した状態でスイッチング周波数を変化させてデューティ比を変化させることにより、発光ダイオードへの出力電圧値を制御する方式である。これに対して、PWM制御は、オン時間を固定しておき、デューティ比を大きくするときには周波数を上げ、小さくするときには周波数を下げるように制御する方式である。
【0049】
図7(A)~図7(F)は、顔面を被処理肌としてその肌温度を検出するタイミングを、2つの距離センサ31、32の出力信号により設定する場合における制御パターンを示す制御線図である。2つの距離センサ31、32の左右は、図1に示される照射パネル13の位置を基準としており、第1の距離センサ31は図1の左側に配置され、第2の距離センサ32は右側に配置されている。
【0050】
図7(A)は、照射パネル13と顔面との距離が近すぎる場合を示しており、この場合には、2つの距離センサ31、32が受光した反射レベル信号は温度読み取り閾値Sを超えている。図7(B)は、顔面が照射パネル13の右側に寄り過ぎている場合を示しており、この場合には、左側の距離センサ31の反射レベル信号は温度読み取り閾値Sの範囲となっているのに対して、右側の距離センサ32は閾値Sを超えている。逆に、図7(C)は、顔面が照射パネル13の左側に寄り過ぎている場合を示しており、この場合には、右側の距離センサ32の反射レベル信号は温度読み取り閾値Sの範囲となっているのに対して、左側の距離センサ31は閾値Sを超えている。
【0051】
一方、図7(D)は、顔面が照射パネル13に対してやや遠く右に寄っている場合を示しており、この場合には、右側の距離センサ32の反射レベル信号は温度読み取り閾値Sの範囲となっているのに対して、左側の距離センサ31は閾値Sを下回っている。逆に、図7(E)は、顔面が照射パネル13に対してやや遠く左に寄っている場合を示しており、この場合には、左側の距離センサ31の反射レベル信号は温度読み取り閾値Sの範囲となっているのに対して、右側の距離センサ32は閾値Sを下回っている。
【0052】
図7(F)は、顔面の照射パネルに対する位置と距離が適切な場合を示しており、両方の反射信号レベルが閾値Sの範囲となっており、顔面の肌温度が測定される。照射パネル13を被処理肌に向けて施術を行うときには、被処理肌を照射パネル13に向けて、常に一定の距離であって左右方向に一定の位置とすることは容易ではないが、複数の距離センサを設けることにより、常に一定の条件で顔面等の被処理肌を照射することができる。
【0053】
図8は照射パネル13の下端部に設けられた操作表示部15の変形例を示す正面図であり、図8(A)は電源スイッチ44がオン操作された状態を示し、図8(B)は電源スイッチ44がオフされた状態を示す。電源スイッチ44がオン操作されると、図1に示した施術選択スイッチ23~27、温度測定モードスイッチ41、距離測定モードスイッチ42およびゴーグルモードスイッチ43等が点灯表示される。一方、電源スイッチ44がオフ操作されて美容装置10が使用されないときには、図8(B)に示されるように、電源スイッチ44の部分を除いて、表示が消灯される。
【0054】
図8に示す操作表示部15は、図1に示すものと同様に、照射パネル13の下端部に設けられているが、照射パネル13とは分離させて操作パネルを設けることにより、照射パネル13にはLEDユニット21、22のみを設け、操作パネルに操作表示部15を設けるようにしてもよい。
【0055】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 美容装置
11 機器本体
12 ケース部材
13 照射パネル
14 凹部
15 操作表示部
21、22 発光ダイオードユニット(LEDユニット)
23~27 施術選択スイッチ
28 タイマー操作スイッチ
29 タイマー表示部
30 スタート・ストップスイッチ
31、32 距離センサ
33 温度センサ
41 温度測定モードスイッチ
42 距離測定モードスイッチ
43 ゴーグルモードスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8