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特開2023-16163ダブルディスクリファイナーおよび古紙パルプの製造方法
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  • 特開-ダブルディスクリファイナーおよび古紙パルプの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016163
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ダブルディスクリファイナーおよび古紙パルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21D 1/30 20060101AFI20230126BHJP
   D21B 1/32 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
D21D1/30
D21B1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120294
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】石川 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康之
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA11
4L055AC09
4L055CA10
4L055CA35
4L055CB15
4L055CB21
4L055EA15
4L055FA04
(57)【要約】
【課題】 品質の良い古紙パルプを安価に製造することができるダブルディスクリファイナーを提供する。
【解決手段】 ステーター側刃の外周に形成された外周リング部に所定の幅のステーター側スリットを有し、ローター側刃の外周に形成された外周リング部に前記ステーター側スリットの幅と、同一または異なる幅のローター側スリットを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーター側刃及びローター側刃を用いて古紙を叩解するダブルディスクリファイナーにおいて、
前記ステーター側刃の外周に形成された外周リング部に所定の幅のステーター側スリットを有し、
前記ローター側刃の外周に形成された外周リング部に前記ステーター側スリットの幅と、同一または異なる幅のローター側スリットを有するダブルディスクリファイナー。
【請求項2】
前記ステーター側スリットの幅は、0.5mm以上1.5mm以下である請求項1記載のダブルディスクリファイナー。
【請求項3】
前記ローター側スリットの幅は、1.0mm以上4.0mm以下である請求項1または2記載のダブルディスクリファイナー。
【請求項4】
古紙を供給する工程と、
請求項1~3の何れか一項に記載のダブルディスクリファイナーを用いて前記古紙を叩解する工程を含む古紙パルプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルディスクリファイナーおよびこのダブルディスクリファイナーを用いて処理する工程を含む古紙パルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、古紙パルプが洋紙、板紙に広く使用されるようになり、古紙の入手が困難となってきている。そのため、雑誌古紙のような下級古紙を原料として古紙パルプを調製し、資源として再利用することが行われている。
【0003】
例えば、ラベル・シール、梱包テープ等に含まれる接着剤や雑誌背糊のホットメルトなど粘着性を有しているものが数多く含まれる雑誌古紙を古紙パルプ原料として使用可能とするような提案がなされている(特許文献1)。また、感熱発泡カプセルや昇華性インクを含む雑誌古紙を含む古紙原料から古紙パルプを製造する方法についても提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-159865号公報
【特許文献2】特開2018-009263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
雑誌古紙としては上記種類の古紙に加え、UV印刷された印刷物が増加するようになってきたが、UV印刷された印刷物を古紙原料として使用する場合には、UV印刷に用いられるUVインキに起因して、得られる古紙パルプに色チリが発生する場合があった。また、古紙パルプに色チリが発生した場合には、損紙となり処理に費用がかかっていた。また、損紙を避けるため、古紙原料として安価な雑誌古紙の配合比率を下げる必要があった。
【0006】
本発明は、品質の良い古紙パルプを安価に製造することができるダブルディスクリファイナーを提供すること、及びこのダブルディスクリファイナーを用いた古紙パルプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、ダブルディスクリファイナーに用いるステーター側刃及びローター側刃として、特定の形状を有する刃を用いることにより上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、以下を提供する。
(1) ステーター側刃及びローター側刃を用いて古紙を叩解するダブルディスクリファイナーにおいて、前記ステーター側刃の外周に形成された外周リング部に所定の幅のステーター側スリットを有し、前記ローター側刃の外周に形成された外周リング部に前記ステーター側スリットの幅と、同一または異なる幅のローター側スリットを有するダブルディスクリファイナー。
(2) 前記ステーター側スリットの幅は、0.5mm以上1.5mm以下である(1)記載のダブルディスクリファイナー。
(3) 前記ローター側スリットの幅は、1.0mm以上4.0mm以下である(1)または(2)記載のダブルディスクリファイナー。
(4) 古紙を供給する工程と、(1)~(3)の何れかに記載のダブルディスクリファイナーを用いて前記古紙を叩解する工程を含む古紙パルプの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、品質の良い古紙パルプを安価に製造することができるダブルディスクリファイナー、及びこのダブルディスクリファイナーを用いた古紙パルプの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のダブルディスクリファイナーのステーター側刃の模式図である。
図2】本発明のダブルディスクリファイナーのローター側刃の模式図である。
図3】本発明のダブルディスクリファイナー内における原料の通過方向を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明のダブルディスクリファイナーについて説明する。なお、本発明のダブルディスクリファイナーのステーター側刃は図1に示すものに限られるものではなく、ローター側刃は図2に示すものに限られるものではない。また、本発明において「~」は端値を含む。すなわち「X~Y」はその両端の値XおよびYを含む。
【0012】
本発明のダブルディスクリファイナー(DDR)は、図1に示すステーター側刃2および図2に示すローター側刃6を備えている。原料を叩解する叩解室の内壁に固定されているステーター側刃2は、外周にリング部(外周リング部4)を有し、この外周リング部4に所定の幅のステーター側スリットが形成されている。ステーター側刃に対向して設置され、回転するローター側刃6は、外周にリング部(外周リング部8)を有し、この外周リング部8に所定の幅のローター側スリットが形成されている。
【0013】
ここで、ステーター側スリットの幅としては、スラリー通過時の流体力学的衝撃波発生の観点からは狭い方が望ましいが、狭すぎると原料詰りが発生するため0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.2mm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
また、ローター側スリットの幅としては、スラリー通過時の流体力学的衝撃波発生の観点からは狭い方が望ましいが、狭すぎると原料詰りが発生するため1.0mm以上4.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以上3.5mm以下であることがさらに好ましい。なお、本発明においては、刃と刃の間に形成された間隙の幅のことをスリット幅という。
【0015】
(古紙パルプの製造方法)
本発明の古紙パルプ(「脱墨パルプ(DIP)」ということがある。)の製造方法は、上記のダブルディスクリファイナーを用いて古紙を叩解する工程を含む。
【0016】
本発明の古紙原料としては、印刷物を使用する。印刷物としては、紙を含む基材に印刷が施されたものであれば特に制限なく使用でき、例えば、紙にフィルムなどを付したものに印刷を施した印刷物、塗工紙に印刷を施した印刷物、非塗工紙に印刷を施した印刷物などに、本発明を適用することができる。具体的には、例えば、新聞用紙、中質紙、上質紙、塗工紙、微塗工紙、感熱記録紙、ノーカーボン紙、色上質紙、PPC用紙(トナー印刷用紙)、紙器、シール・ラベル、帳票、段ボール、白板紙などに印刷した古紙に本発明を適用でき、光沢のある印刷物やOPニスやUVクリアコート等の表面加工処理した印刷物にも本発明を適用することが可能である。
【0017】
本発明を適用する印刷物としては、あらゆる印刷方式で印刷した古紙(印刷古紙ともいう)を用いることができる。
【0018】
印刷物に施された印刷の方式としては、例えば、UVインキやハイブリッドUVインキ、高感度UVインキを用いたUV印刷、フレキソ印刷などの凸版印刷、グラビア印刷などの凹版印刷、オフセット印刷などの平版印刷、スクリーン印刷(シルク印刷)などの孔版印刷、静電気を利用した静電印刷(トナー印刷)、パソコン用プリンターなどに広く用いられるインクジェット印刷やレーザー印刷などを挙げることができる。また、印刷されたインキ(インク)についても特に制限はなく、各種印刷方式で用いられる色材が印刷された印刷物を用いることができる。例えば、UV印刷は、UV光によってインキを硬化・定着される印刷方式であるところ、UV印刷物は脱墨し難い印刷として知られており、場合によっては、禁忌品として古紙パルプの製造工程への混入が避けられている印刷物である。このようなUV印刷物であっても、本発明によれば、古紙パルプを製造することができる。なお、近年はUV印刷物のリサイクル性を改善させるため、および/または、UV印刷にかかるエネルギー削減のため、ハイブリッドUVインキや通常のUVインキよりもリサイクルしやすい高感度UVインキが開発され、使用されているが、このような高感度UVインキで印刷された印刷物についても、本発明によって脱墨することができる。なおここで高感度UVインキとは、いわゆる省エネUVシステム、ハイブリッドUVシステム、LED-UVシステム等の印刷方式に対応可能なUVインキのことを言う。
【0019】
本発明において古紙パルプ(DIP)とは、印刷物から印刷インキなどを除去して再生されたパルプを意味し、一般に、印刷物を離解してスラリーとしつつ、機械的応力、脱墨剤などの薬品を用いてインキを除去することによって得られる。原料となる印刷物としては、例えば、新聞紙、チラシ、雑誌、書籍、事務用紙、封書、感熱紙、ノーカーボン紙、段ボール、白板紙、その他複写機、OA機器から生ずる印刷紙などが含まれる。粘着剤、接着剤、粘着テープ、雑誌の背糊などの粘着物、樹脂などのコーティングやラミネートを含む印刷物も本発明の印刷物として用いることができる。また、印刷物は、灰分と呼ばれる無機粒子を含有してもよい。灰分は無機粒子全般を指し、紙の製造時に内添された、もしくは、塗工された填料、顔料など紙を灰化した際に残存する物質である。例えば、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、二酸化チタン等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0020】
本発明においては、印刷物を含む古紙原料を用いて古紙パルプを製造することができる。古紙パルプを製造するための方法は特に制限されず、一般に公知の方法を採用することができる。本発明において印刷物を脱墨する際には、公知の脱墨装置や脱墨剤を使用することができる。脱墨工程で用いる装置の例としては、例えば、ニーダーやディスパーザー、フローテーターなどを挙げることができる。脱墨剤の例としては、公知の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、および、有機溶剤、タンパク質、酵素、天然高分子、合成高分子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。単一成分からなるものであっても2種以上の成分の混合物であっても脱墨剤として使用できることは当然である。例えば、古紙パルプを製造する一つの態様において、アルカリ性薬品や界面活性剤などを添加して古紙の離解を行う離解処理、機械的シェアとアルカリ条件下でインキをパルプから剥離するインキ剥離処理、パルプから分離されたインキを除去するフローテーション処理および/または洗浄処理、などを実施することができる。また、例えば、パルプを脱水して10~35質量%のパルプ濃度に調整した後、アルカリ性薬品や界面活性剤などを添加してパルプからインキをさらに剥離させたり(アルカリ浸漬処理や熟成処理)、再度のフローテーション処理や洗浄処理によってパルプからインキを除去したりすることをしてもよい。また、除塵工程(異物除去工程)を設けて異物を除去してもよい。
【0021】
(ダブルディスクリファイナーを用いて古紙を叩解する工程)
本発明の古紙パルプの製造方法においては、古紙パルプスラリー(単に古紙スラリーともいう)を、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解する工程を含む。
【0022】
本発明のダブルディスクリファイナーを用いて、古紙パルプスラリーを叩解する場合について図3を用いて説明する。原料の古紙パルプスラリーがダブルディスクリファイナーの原料入口10から投入され、叩解室に送られ、ステーター側刃2とローター側刃6の間に形成される叩解間隙で叩解され、ローター側の外周リング部8およびステーター側の外周リング部4のスリットを通過する際に、色チリ等の異物が微細化・分散し、原料出口12から古紙パルプとして排出される。ローター側刃が高速回転する叩解室内に投入された原料の古紙パルプスラリーは、ローター側の外周リング部8およびステーター側の外周リング部4を通過する際に、流体力学的衝撃波による機械的処理により異物が微細化・分散する効果が得られる。
本発明のダブルディスクリファイナーを用いると、原料入口10から投入された原料は、高速回転する細かなスリットを持つローター側刃6が発生させる流体力学的衝撃波により、繊維の損傷を抑えつつ原料の脱墨を促進することができる。
【0023】
古紙パルプスラリーには、印刷古紙をパルパー等の機械的解繊を伴う離解装置で離解して古紙パルプスラリーとしたものだけでなく、古紙パルプスラリーに除塵処理、漂白処理を行ったものも含まれる。さらに、浮選処理などをする際に生じる脱墨フロス(froth)などのスラリーも含まれる。
【0024】
本発明において、ダブルディスクリファイナーを用いて古紙パルプスラリーを叩解処理する際の処理の速度(1時間あたりの処理量)は、好ましくは1~450m/h、より好ましくは200~350m/h、さらに好ましくは220~320m/hである。
【0025】
古紙パルプスラリーの固形分濃度としては、パルプスラリーに対してDDRの機械的な負荷を安定に与えるという観点から好ましくは0.1~10.0質量%であり、より好ましくは0.5~5.0質量%であり、さらに好ましくは3.0~4.0質量%である。固形分濃度が上記範囲内であると、濃度が低すぎるために原料がスリットなどをすり抜けてしまう、すなわち、叩解の効果が低くなってしまうという現象を抑制することができ、濃度が高すぎるために原料が物理的に詰まってしまうという現象を抑制することができる。
【0026】
また、古紙パルプスラリーの灰分濃度は好ましくは2.0~16.0質量%であり、より好ましくは4.0~16.0質量%であり、さらに好ましくは6.0~12.0質量%である。
【0027】
古紙パルプスラリーのpHは、古紙パルプを配合する抄紙機にて中性抄紙する観点から、好ましくは7.0~10.0、より好ましくは8.0~9.0である。
【0028】
本発明の古紙パルプの製造方法においては、必要なエネルギーを低減することができる観点から、界面活性剤を添加する工程を有するものであってもよい。界面活性剤としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの単一成分からなるものでも2種以上の成分の混合物でも良い。
【0029】
本発明の、ステーター側刃及びローター側刃を用いて古紙を叩解するダブルディスクリファイナーであって、ステーター側刃の外周に形成された外周リング部に所定の幅のステーター側スリットを有し、ローター側刃の外周に形成された外周リング部にステーター側スリットの幅と、同一または異なる幅のローター側スリットを有するダブルディスクリファイナーを用いると、得られる古紙パルプは、UVインキ由来の微小な色チリが微細化・分散される。したがって、このダブルディスクリファイナーを用いた古紙パルプの製造方法によれば、UVインキが使用された単価の低い雑誌古紙を増配した場合であっても色チリ由来の損紙を抑制することができるため、原料費用および損紙処理費用を抑制することができ、品質の良い古紙パルプを安価に製造することができる。
【実施例0030】
次に実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は、本発明の好適な例を具体的に説明したものであり、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
古紙材料(新聞古紙およびUV印刷物を含む印刷古紙)をパルパーで離解し、古紙スラリーを得た(固形分濃度:約15%)。この古紙スラリーについて、クリーナーおよび粗選スクリーンの順で処理して異物を除去し(固形分濃度:約3%)、フローテーター(ハイパーセルHYP-50型、相川鉄工製)を用いて浮選処理に供した(固形分濃度:約1%)。その後、ウォッシャーで洗浄し、調成送り前のパルプスラリー(固形分濃度:約3~4%、灰分10%)を、以下のダブルディスクリファイナーを用いた叩解処理に供した。
【0032】
ダブルディスクリファイナー(相川鉄工製、AWN34)を用いて、パルプスラリーを叩解処理し、脱墨パルプを回収した(流量220m/h、負荷105kWh、電力原単位12.3kWh/t)。このダブルディスクリファイナーには、ステーター側刃の外周リング部の刃のスリット幅が0.8mm、ローター側刃の外周リング部の刃のスリット幅が2.0mmのものを用いた。
【0033】
上記で得られた脱墨パルプを用いてJIS P 8222に準じてパルプシートを作成した(坪量:約60g/m)。
【0034】
得られたパルプシートについて、画像解析装置(Easy Scan、日本製紙ユニテック)を用いてダート個数および面積を計測した。ダートは2つの大きさに分けて計測し(直径が100μm以上、直径が250μm以上)、ダートの個数とは1mあたりのダートの個数を意味する。ダートの面積とは、1mあたりのダートの面積を意味する。
【0035】
(比較例1)
ダブルディスクリファイナーとして、ステーター側刃およびローター側刃として外周にリング部を有しない従来の刃(AWN34型プレート)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてパルプスラリーを叩解処理し、脱墨パルプを回収した(流量190m/h、負荷170kWh、電力原単位23kWh/t)。また、得られた脱墨パルプから実施例1と同様にしてパルプシートを製造し、ダート個数およびダート面積を分析した。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示す通り、ステーター側刃の外周に形成された外周リング部に所定の幅のステーター側スリットを有し、ローター側刃の外周に形成された外周リング部にステーター側スリットの幅と、同一または異なる幅のローター側スリットを有するダブルディスクリファイナーを用いて古紙パルプスラリーを処理した実施例1では、直径250μm以上、及び直径100μm以上のダートについては、どちらも、個数および面積カット率が上昇した。このことから、実施例1では、直径250μm以上のダートについては、直径100μm未満まで微細化できたことがわかった。一方、外周リング部が無い従来のプレートを有するダブルディスクリファイナーを用いて古紙パルプスラリーを処理した比較例1では、実施例1と比べて直径250μm以上のダートについて、個数および面積カット率に劣るものであった。また、比較例1では、直径100μm以上のダートについて、個数が増加しており、面積について変化が無いことから、直径250μm以上のダートの減少分が、直径100μm以上250μmの画分に存在すると考えられる。すなわち、比較例1では、微細化が十分では無いことがわかった。
【符号の説明】
【0038】
2…ステーター側刃、4…ステーター側の外周リング部、6…ローター側刃、8…ローター側の外周リング部、10…原料入口、12…原料出口
図1
図2
図3