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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161630
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】弦楽器及びピックアップ
(51)【国際特許分類】
   G10H 3/18 20060101AFI20231031BHJP
   G10D 3/04 20200101ALI20231031BHJP
【FI】
G10H3/18 C
G10D3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072078
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】植屋 夕輝
(72)【発明者】
【氏名】谷高 幸司
(72)【発明者】
【氏名】太箸 一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨松 清行
【テーマコード(参考)】
5D002
5D478
【Fターム(参考)】
5D002CC18
5D478NN03
(57)【要約】
【課題】サドルや溝に対する座繰りの形成や圧電素子の接着を不要としながら、サドルの動きに応じた検出信号を正しく出力することが可能な弦楽器を提供する。
【解決手段】弦楽器は、楽器本体2と、弦と、楽器本体2に形成された溝9に挿入されて弦を支持するサドル5と、厚さ方向に伸縮変形可能な多孔質層を有し、多孔質層の伸縮変形に応じて検出信号を出力する圧電素子20を含むピックアップ6と、を備える。圧電素子20は、溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に配置される。溝9の第一内側面9aから第二内側面9bに至る溝9の幅W9は、第一内側面9a及び第二内側面9bの配列方向におけるサドル5の幅W5よりも大きい。前記配列方向における圧電素子20の無負荷時の厚さT20は、溝9の幅W9とサドル5の幅W5との差分以上である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器本体と、
弦と、
前記楽器本体に形成された溝に挿入されて前記弦を支持するサドルと、
厚さ方向に伸縮変形可能な多孔質層を有し、前記多孔質層の伸縮変形に応じて検出信号を出力する圧電素子を含むピックアップと、を備え、
前記圧電素子には、少なくとも前記溝の第一内側面と前記サドルの第一側面との間に配置される第一圧電素子があり、
前記溝の第一内側面から当該第一内側面に対向する前記溝の第二内側面に至る前記溝の幅は、前記第一内側面及び前記第二内側面の配列方向における前記サドルの幅よりも大きく、
前記配列方向における前記第一圧電素子の無負荷時の厚さは、前記溝の幅と前記サドルの幅との差分以上である弦楽器。
【請求項2】
楽器本体と、
弦と、
前記楽器本体に形成された溝に挿入されて前記弦を支持するサドルと、
厚さ方向に伸縮変形可能な多孔質層を有し、前記多孔質層の伸縮変形に応じて検出信号を出力する圧電素子を含むピックアップと、を備え、
前記圧電素子には、少なくとも前記溝の第一内側面と前記サドルの第一側面との間に配置される第一圧電素子があり、
前記溝の第一内側面から当該第一内側面に対向する前記溝の第二内側面に至る前記溝の幅は、前記第一内側面及び前記第二内側面の配列方向における前記サドルの幅よりも大きく、
前記配列方向における前記第一圧電素子の無負荷時の厚さは、前記溝の幅と前記サドルの幅との差分よりも小さい弦楽器。
【請求項3】
厚さ方向に伸縮変形可能な多孔質層を有し、前記多孔質層の伸縮変形に応じて検出信号を出力する圧電素子を備え、
前記圧電素子には、少なくとも弦楽器の楽器本体に形成された溝の第一内側面と、前記溝に挿入された弦楽器のサドルの第一側面との間に配置された第一圧電素子があり、
前記溝の第一内側面から当該第一内側面に対向する前記溝の第二内側面に至る前記溝の幅は、前記第一内側面及び前記第二内側面の配列方向における前記サドルの幅よりも大きく、
前記配列方向における前記第一圧電素子の無負荷時の厚さは、前記溝の幅と前記サドルの幅との差分以上であるピックアップ。
【請求項4】
厚さ方向に伸縮変形可能な多孔質層を有し、前記多孔質層の伸縮変形に応じて検出信号を出力する圧電素子を備え、
前記圧電素子には、少なくとも弦楽器の楽器本体に形成された溝の第一内側面と、前記溝に挿入された弦楽器のサドルの第一側面との間に配置された第一圧電素子があり、
前記溝の第一内側面から当該第一内側面に対向する前記溝の第二内側面に至る前記溝の幅は、前記第一内側面及び前記第二内側面の配列方向における前記サドルの幅よりも大きく、
前記配列方向における前記第一圧電素子の無負荷時の厚さは、前記溝の幅と前記サドルの幅との差分よりも小さいピックアップ。
【請求項5】
前記第一圧電素子は、前記多孔質層を前記厚さ方向に圧縮した状態で、前記溝の第一内側面と前記サドルの第一側面との間に配置される請求項3又は請求項4に記載のピックアップ。
【請求項6】
前記圧電素子には、
前記溝の第一内側面と前記サドルの第一側面との間に配置される前記第一圧電素子と、
前記溝の底面と前記サドルの下面との間に配置される第二圧電素子と、
前記溝の第二内側面と前記サドルの第二側面との間に配置される第三圧電素子と、
がある請求項3又は請求項4に記載のピックアップ。
【請求項7】
前記第三圧電素子における前記多孔質層の分極方向が、前記第一圧電素子における前記多孔質層の分極方向と逆向きである請求項6に記載のピックアップ。
【請求項8】
前記サドルの第一側面が、弦楽器のネック側に位置する面であり、
前記サドルの第二側面が、前記ネックと反対側に位置して弦楽器の弦の第一端部を固定する前記楽器本体の弦固定部側に位置する面であり、
前記第二圧電素子における前記多孔質層の分極方向が、前記第一圧電素子における前記多孔質層の分極方向と同じである請求項7に記載のピックアップ。
【請求項9】
前記第一圧電素子、前記第二圧電素子及び前記第三圧電素子が一体に形成されている請求項6に記載のピックアップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器及びピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、胴部に形成された溝に、弦を支持するサドルを嵌め込んだ弦楽器において、サドルの側面と溝の内側面との間に圧電素子としてのピエゾ素子を配置したものが開示されている。この弦楽器では、弦振動に伴ってピエゾ素子に作用する押圧力の変化に基づいて、ピエゾ素子が電気信号(検出信号)を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-33806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のピエゾ素子は固く、伸縮量が小さい。このため、サドルの側面と溝の内側面との間に配置するピエゾ素子の厚さを、サドルの側面と溝の内側面との間隔に対して高い精度で設定する必要がある。すなわち、ピエゾ素子をサドルの側面と溝の内側面との間に隙間なく設置することは難しい。
また、ピエゾ素子の伸縮量が小さいことで、弦振動や弦のテンションの変化に伴ってサドルの側面と溝の内側面との間隔が大きくなった際には、ピエゾ素子がサドルの側面や溝の内側面から離れやすく、検出信号を正しく出力することができない可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、サドルの側面と溝の内側面との間に圧電素子を容易に設置でき、かつ、サドルの動きに応じた検出信号を正しく出力することが可能なピックアップ及び弦楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、楽器本体と、弦と、前記楽器本体に形成された溝に挿入されて前記弦を支持するサドルと、厚さ方向に伸縮変形可能な多孔質層を有し、前記多孔質層の伸縮変形に応じて検出信号を出力する圧電素子を含むピックアップと、を備え、前記圧電素子には、少なくとも前記溝の第一内側面と前記サドルの第一側面との間に配置される第一圧電素子があり、前記溝の第一内側面から当該第一内側面に対向する前記溝の第二内側面に至る前記溝の幅は、前記第一内側面及び前記第二内側面の配列方向における前記サドルの幅よりも大きく、前記配列方向における前記第一圧電素子の無負荷時の厚さは、前記溝の幅と前記サドルの幅との差分以上である弦楽器である。
【0007】
本発明の第二の態様は、楽器本体と、弦と、前記楽器本体に形成された溝に挿入されて前記弦を支持するサドルと、厚さ方向に伸縮変形可能な多孔質層を有し、前記多孔質層の伸縮変形に応じて検出信号を出力する圧電素子を含むピックアップと、を備え、前記圧電素子には、少なくとも前記溝の第一内側面と前記サドルの第一側面との間に配置される第一圧電素子があり、前記溝の第一内側面から当該第一内側面に対向する前記溝の第二内側面に至る前記溝の幅は、前記第一内側面及び前記第二内側面の配列方向における前記サドルの幅よりも大きく、前記配列方向における前記第一圧電素子の無負荷時の厚さは、前記溝の幅と前記サドルの幅との差分よりも小さい弦楽器である。
【0008】
本発明の第三の態様は、厚さ方向に伸縮変形可能な多孔質層を有し、前記多孔質層の伸縮変形に応じて検出信号を出力する圧電素子を備え、前記圧電素子には、少なくとも弦楽器の楽器本体に形成された溝の第一内側面と、前記溝に挿入された弦楽器のサドルの第一側面との間に配置された第一圧電素子があり、前記溝の第一内側面から当該第一内側面に対向する前記溝の第二内側面に至る前記溝の幅は、前記第一内側面及び前記第二内側面の配列方向における前記サドルの幅よりも大きく、前記配列方向における前記第一圧電素子の無負荷時の厚さは、前記溝の幅と前記サドルの幅との差分以上であるピックアップである。
【0009】
本発明の第四の態様は、厚さ方向に伸縮変形可能な多孔質層を有し、前記多孔質層の伸縮変形に応じて検出信号を出力する圧電素子を備え、前記圧電素子には、少なくとも弦楽器の楽器本体に形成された溝の第一内側面と、前記溝に挿入された弦楽器のサドルの第一側面との間に配置された第一圧電素子があり、前記溝の第一内側面から当該第一内側面に対向する前記溝の第二内側面に至る前記溝の幅は、前記第一内側面及び前記第二内側面の配列方向における前記サドルの幅よりも大きく、前記配列方向における前記第一圧電素子の無負荷時の厚さは、前記溝の幅と前記サドルの幅との差分よりも小さいピックアップである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サドルの側面と溝の内側面との間に圧電素子を容易に設置でき、かつ、ピックアップによってサドルの動きに応じた検出信号を正しく出力することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一実施形態に係る弦楽器を示す斜視図である。
図2図1の弦楽器の要部を模式的に示す拡大断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るピックアップを模式的に示す断面図である。
図4】本発明の第一実施形態において、弦の張力がサドルに作用していない状態を示す拡大断面図である。
図5】本発明の第一実施形態において、弦の張力がサドルに作用した状態を示す拡大断面図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る弦楽器の要部を示す拡大断面図である。
図7】本発明の第二実施形態に係るピックアップを模式的に示す断面図である。
図8図6に示す状態から弦の張力がサドルに作用した状態を示す拡大断面図である。
図9】本発明の第三実施形態に係る弦楽器の要部であって、弦の張力がサドルに作用していない状態を示す拡大断面図である。
図10】本発明の第三実施形態に係る弦楽器の要部であって、弦の張力がサドルに作用した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一実施形態)
以下、図1~5を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、第一実施形態の弦楽器1は、ギターであり、楽器本体2と、ネック3と、弦4と、サドル5と、ピックアップ6と、を備える。
【0013】
図1に示すように、楽器本体2は、胴部7と、胴部7の表面に設けられたブリッジ8と、を有する。ネック3は、楽器本体2の胴部7から一方向に延びている。弦4は、楽器本体2とネック3とにわたって張られている。具体的に、弦4の第一端部は、ブリッジ8に設けられた弦固定部11に固定されている。弦4の第二端部は、ネック3の先端に設けられた巻き取り器12によって巻き取られている。
【0014】
図2に示すように、サドル5は、楽器本体2のブリッジ8に形成された溝9に挿入される。サドル5は、溝9に挿入された状態で、楽器本体2とネック3とにわたって張られた弦4を支持する。具体的に、溝9は、ブリッジ8の表面8aから窪んで形成される。溝9に挿入されたサドル5の一部はブリッジ8の表面8aから突出する。ブリッジ8の表面8aから突出したサドル5の先端部分5Tが、弦4を支持する。ブリッジ8の溝9、及び、溝9に挿入されたサドル5は、弦4の長手方向(図2において左右方向)においてネック3と弦固定部11との間に位置する。
【0015】
ピックアップ6は、楽器本体2とネック3とにわたって張られた弦4の振動を検出し、弦4の振動に対応する検出信号を出力する。検出信号は電気信号であり、スピーカにおいて音を出力するために用いられる。ピックアップ6は、楽器本体2の溝9とサドル5との間に設けられる圧電素子20を備える。
図3に示すように、圧電素子20は、板状に形成され、多孔質層21と、電極層22,23と、を有する。圧電素子20は、多孔質層21の厚さ方向への伸縮変形に応じて電圧を生じさせて電気信号(検出信号)を出力する。
【0016】
多孔質層21は、板状に形成され、厚さ方向に弾性的に伸縮可能である。多孔質層21は、その内部に複数の空孔24を有する。これにより、多孔質層21を含む圧電素子20は、ピエゾ素子と比較して伸縮に富む。
多孔質層21を形成する主成分としては、帯電できるものが好ましく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン系、フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を示す。
【0017】
多孔質層21は、一般的にはこれらの合成樹脂を主成分とする板状体に分極処理を施して形成される。分極処理方法としては、例えば直流又はパルス状の高電圧を付加して電荷を注入する方法、γ線や電子線等の電離性放射線を照射して電荷を注入する方法、コロナ放電処理によって電荷を注入する方法等が挙げられる。
【0018】
電極層22,23は、多孔質層21の厚さ方向の両面に積層される。これら二つの電極層22,23は、それぞれ不図示のリード線に接続される。電極層22,23の形成材料は、少なくとも導電性材料であればよく、例えばアルミニウム、銀等の各種金属やこれらの金属の合金、カーボン等であってよい。
電極層22,23を多孔質層21に積層する方法としては、特に限定されず、例えばアルミニウムの蒸着、カーボン導電インクによる印刷、銀ペーストの塗布乾燥等が挙げられる。
【0019】
圧電素子20(第一圧電素子)は、図2に示すように、溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に配置される。
【0020】
溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとは、サドル5が溝9に挿入された状態で、サドル5によって支持される弦4の長手方向において互いに対向する。また、溝9の第一内側面9a及びサドル5の第一側面5aは、弦4の長手方向においてネック3側に位置する。一方、弦4の長手方向において溝9の第一内側面9aに対向する溝9の第二内側面9bは、弦4の長手方向において弦固定部11側に位置する。溝9の第二内側面9bには、溝9に挿入されたサドル5のうち第一側面5aと反対側に向く第二側面5bが対向する。
【0021】
図4に示すように、第一内側面9aから第二内側面9bに至る溝9の幅W9は、第一側面5aから第二側面5bに至るサドル5の幅W5よりも大きい。このため、サドル5の第二側面5bが溝9の第二内側面9bに接触するようにサドル5を溝9に挿入した状態では、溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に隙間が形成される。
【0022】
圧電素子20は、その厚さ方向が溝9の第一内側面9a及びサドル5の第一側面5aの配列方向に向くように、第一内側面9aと第一側面5aとの間に配置される。本実施形態において、圧電素子20の無負荷時の厚さT20は、溝9の幅W9とサドル5の幅W5との差分と等しい。圧電素子20の無負荷時とは、圧電素子20に外力が作用せず、弾性的に伸縮していない状態を意味する。このため、圧電素子20が溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に配置されただけの状態において、圧電素子20は厚さ方向に圧縮されないが、第一内側面9aと第一側面5aとに接触する。この状態において、サドル5は、溝9の第一内側面9aに近づく方向にのみ動くことができ、溝9の第一内側面9aから離れる方向に動くことはできない。このため、圧電素子20と溝9の第一内側面9a及びサドル5の第一側面5aとの接触は維持される。
【0023】
上記のようにサドル5及び圧電素子20が溝9内に配置された状態において、図5に示すように、楽器本体2の弦固定部11とネック3とにわたって張られた弦4がサドル5の先端部分5Tに支持されると、サドル5には、弦4の張力に基づく外力が作用する。具体的には、楽器本体2の弦固定部11とネック3とにわたって張られた弦4が、サドル5の先端部分5Tをネック3側に向けて押す。これにより、サドル5は溝9の第一内側面9a側に傾くように移動し、その結果として圧電素子20がその厚さ方向に圧縮される。この状態においては、溝9の第二内側面9bとサドル5の第二側面5bとの間に隙間が生じる。
上記のように圧縮された圧電素子20の厚さは、例えば、圧電素子20の無負荷時の厚さT20の50%以上であってよいが、例えば70%以上であることがより好ましい。すなわち、外力による圧電素子20の圧縮量は小さい方が好ましい。これは、圧電素子20の圧縮量が小さい程、圧電素子20の感度が高くなるためである。
【0024】
以上のように構成される本実施形態の弦楽器1では、弦4の振動がサドル5を介して圧電素子20に伝わり、圧電素子20の多孔質層21がその厚さ方向に伸縮変形する。これにより、圧電素子20が当該多孔質層21の伸縮変形に応じた検出信号(電気信号)を出力する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のピックアップ6及び弦楽器1では、圧電素子20が多孔質層21を有する。当該圧電素子20は、多孔質層21が無い圧電素子(例えば従来のピエゾ素子)と比較して伸縮に富む。このため、圧電素子20の無負荷時の厚さT20を、従来のようにサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aとの間隔に対して高い精度で設定しなくても、圧電素子20をその厚さ方向に伸縮させることで、圧電素子20をサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aとの間に隙間なく設置することができる。すなわち、圧電素子20の寸法精度が低くても、サドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aとの間に容易に設置することができる。
また、圧電素子20の伸縮量が大きいことで、弦振動などによってサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aとの間隔が大きくなっても、圧電素子20がサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aから離れにくくすることができる。これにより、サドル5と溝9との間に設置された圧電素子20をサドル5の動きに追従させて伸縮させることができ、その結果として圧電素子20から検出信号を正しく出力することができる。
【0026】
さらに、本実施形態のピックアップ6及び弦楽器1では、第一内側面9aから第二内側面9bに至る溝9の幅W9が、第一側面5aから第二側面5bに至るサドル5の幅W5よりも大きい。また、溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に配置される圧電素子20の無負荷時の厚さT20が、溝9の幅W9とサドル5の幅W5との差分と等しい。このため、サドル5の第一側面5a及び溝9の第一内側面9aの配列方向にサドル5が動いたとしても、圧電素子20がサドル5の第一側面5a及び溝9の第一内側面9aから離れることはない。これにより、圧電素子20をサドル5や溝9に接着しなくても、圧電素子20をサドル5の動きに追従させて伸縮させることができ、その結果として圧電素子20から検出信号を正しく出力することができる。すなわち、サドル5や溝9への圧電素子20の接着を不要としながら、サドル5の動きに応じてピックアップ6から検出信号を正しく出力することができる。
また、サドル5や溝9への圧電素子20の接着が不要となることで、サドル5の交換や調整を容易に行うことができる。
【0027】
また、本実施形態のピックアップ6及び弦楽器1では、図5に示すように、弦4の張力により、多孔質層21を厚さ方向に圧縮した状態で、圧電素子20が溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に配置される。この状態では、弦4の振動に伴ってサドル5が溝9の第一内側面9aに近づく方向に変位したときに圧電素子20の多孔質層21がさらに圧縮される。また、サドル5が溝9の第一内側面9aから離れる方向に変位したときに圧電素子20の多孔質層21が伸長する。これにより、圧電素子20は、サドル5が溝9の第一内側面9aに対して近づく方向及び離れる方向への変位を検出することができる。
【0028】
第一実施形態において、圧電素子20の無負荷時の厚さT20は、例えば溝9の幅W9とサドル5の幅W5との差分よりも大きくてもよい。この場合、圧電素子20は、多孔質層21をその厚さ方向に圧縮した状態で、第一内側面9aと第一側面5aとの間に配置される。このような構成であっても、圧電素子20は、上記した第一実施形態と同様に、サドル5が溝9の第一内側面9aに対して近づく方向及び離れる方向への変位を検出することができる。
【0029】
第一実施形態において、圧電素子20は、例えばサドル5の第一側面5a、溝9の第一内側面9aに接着されてもよい。この場合、弦振動に応じてサドル5が溝9の第一内側面9aに対して離れる方向に変位する際に、圧電素子20が無負荷時の状態に対して伸長しても、圧電素子20は当該サドル5の変位を検出することができる。
【0030】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図6~8を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0031】
図6に示すように、第二実施形態の弦楽器では、第一実施形態と同様に、ブリッジ8の溝9に挿入されたサドル5が、楽器本体2の弦固定部11とネック3とにわたって張られた弦4を支持する。溝9の幅W9とサドル5の幅W5との関係は、第一実施形態と同じである(図4参照)。
【0032】
第二実施形態のピックアップ6Fは、三つの圧電素子20A,20B,20Cを有する。三つの圧電素子20A,20B,20Cには、第一圧電素子20Aと、第二圧電素子20Bと、第三圧電素子20Cと、がある。図7に示すように、各圧電素子20A,20B,20Cは、第一実施形態と同様の多孔質層21と電極層22,23とを有する。
図6に示すように、第一圧電素子20Aは、第一実施形態の圧電素子20と同様に、溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に配置される。第一圧電素子20Aの厚さ方向は、溝9の第一内側面9a及びサドル5の第一側面5aの配列方向に向いている。
【0033】
第二圧電素子20Bは、溝9の底面9cとサドル5の下面5cとの間に配置される。第二圧電素子20Bの厚さ方向は、溝9の底面9c及びサドル5の下面5cの配列方向に向いている。溝9の底面9cとサドル5の下面5cとは、溝9に対するサドル5の挿抜方向(図6において上下方向)に並ぶ。
第三圧電素子20Cは、溝9の第二内側面9bとサドル5の第二側面5bとの間に配置される。第三圧電素子20Cの厚さ方向は、溝9の第二内側面9b及びサドル5の第二側面5bの配列方向に向いている。第三圧電素子20Cの厚さ方向は、第一圧電素子20Aの厚さ方向と完全に一致してもよいし、第一圧電素子20Aの厚さ方向に対して微小にずれていてもよい。
【0034】
これら三つの圧電素子20A,20B,20Cが溝9とサドル5との間に配置された状態において、第一圧電素子20A及び第三圧電素子20Cの多孔質層21(図7参照)は、それぞれ厚さ方向に圧縮されているとよい。第一圧電素子20A及び第三圧電素子20Cが圧縮される度合いは、以下の三つの条件を満たすように設定されることが好ましい。第一の条件は、サドル5に弦4の張力などの外力が作用していない状態において、第一圧電素子20A及び第三圧電素子20Cが最大限に圧縮されていないことである。第二の条件は、サドル5を溝9の第一内側面9aに近づけて第一圧電素子20Aを最大限に圧縮した状態であっても第三圧電素子20Cと溝9の第二内側面9b及びサドル5の第二側面5bとの接触が維持されることである。第三の条件は、サドル5を溝9の第二内側面9bに近づけて第二圧電素子20Bを最大限に圧縮した状態であっても第一圧電素子20Aと溝9の第一内側面9a及びサドル5の第一側面5aとの接触が維持されることである。
【0035】
溝9とサドル5との間に配置された第二圧電素子20Bの多孔質層21は、少なくとも楽器本体2の弦固定部11とネック3とにわたって張られた弦4がサドル5の先端部分5Tに支持された状態で、サドル5が弦4から受ける力によって当該多孔質層21の厚さ方向に圧縮されていればよい。すなわち、サドル5に外力が作用していない状態では、第二圧電素子20Bの多孔質層21が圧縮されなくてもよい。
【0036】
図6,7に示すように、本実施形態のピックアップ6Fでは、第三圧電素子20Cにおける多孔質層21の分極方向が、第一圧電素子20Aにおける多孔質層21の分極方向と逆向きである。また、第二圧電素子20Bにおける多孔質層21の分極方向が、第一圧電素子20Aにおける多孔質の分極方向と同じである。本実施形態において、第一圧電素子20A及び第三圧電素子20Cの多孔質層21では、溝9側が正極となっており、サドル5側が負極となっている。一方、第二圧電素子20Bの多孔質層21では、溝9側が負極となっており、サドル5側が正極となっている。
なお、多孔質層21がその厚さ方向に圧縮されたときには、多孔質層21には正極から負極に向かう電流が流れる。また、多孔質層21がその厚さ方向に伸長したときには、負極から正極に向けて電流が流れる。
【0037】
図7に示すように、本実施形態では、第一圧電素子20A、第二圧電素子20B及び第三圧電素子20Cが、一体に形成されている。具体的には、分極方向が同じである第一圧電素子20A及び第二圧電素子20Bの多孔質層21が一体に形成されている。一方、分極方向が第一、第二圧電素子20A,20Bと異なる第三圧電素子20Cの多孔質層21は、第一、第二圧電素子20A,20Bの多孔質層21と別個の形成されている。
そして、第一、第二圧電素子20A,20Bと第三圧電素子20Cとは、多孔質層21の両面に積層される二つの電極層22,23によって一体に形成されている。二つの電極層22,23のうち第一電極層22は、第一、第二圧電素子20A,20Bの多孔質層21の負極及び第三圧電素子20Cの正極に接続されている。二つの電極層22,23のうち第二電極層23は、第一、第二圧電素子20A,20Bの多孔質層21の正極及び第三圧電素子20Cの負極に接続されている。
【0038】
第二実施形態のピックアップ6F及び弦楽器によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態のピックアップ6F及び弦楽器では、第三圧電素子20Cにおける多孔質層21の分極方向が、第一圧電素子20Aの多孔質層21の分極方向と逆向きである。このため、第一圧電素子20Aの多孔質層21の両面に設けられる電極層22,23と、第三圧電素子20Cの多孔質層21の両面に設けられる電極層22,23とを一体に形成しても、サドル5の動きに応じて、第一圧電素子20Aから出力される検出信号と、第三圧電素子20Cから出力される検出信号とが互いに打ち消し合うことを防ぐことができる。また、サドル5の動きに応じて、第一圧電素子20A及び第三圧電素子20Cから出力される検出信号が足し合わされる。以下、この点について説明する。
【0039】
弦4の振動がサドル5に伝わると、サドル5は弦4の長手方向(溝9の第一内側面9a及び第二内側面9bの配列方向)に振動する。このようにサドル5が振動すると、図8に示すように、第一圧電素子20Aが圧縮するときには第三圧電素子20Cが伸長する。また、第一圧電素子20Aが伸長するときには第三圧電素子20Cが圧縮する。
これに対し、図7に示すように、第一電極層22は、第一圧電素子20Aの多孔質層21の負極及び第三圧電素子20Cの正極に接続されている。一方、第二電極層23は、第一圧電素子20Aの多孔質層21の正極及び第三圧電素子20Cの負極に接続されている。このため、第一圧電素子20Aが圧縮し第三圧電素子20Cが伸長するときには、第一、第三圧電素子20A,20Cの両方において第二電極層23から第一電極層22に向けて電流が流れる。また、第一圧電素子20Aが伸長し第三圧電素子20Cが圧縮するときには、第一、第三圧電素子20A,20Cの両方において第一電極層22から第二電極層23に向けて電流が流れる。これにより、第一圧電素子20A及び第三圧電素子20Cから出力される検出信号が足し合わされる。
第一、第三圧電素子20A,20Cから出力される検出信号が足し合わされることで、サドル5の動きに伴って圧電素子20から出力される検出信号のS/N比をさらに高めることができる。
【0040】
また、第二実施形態のピックアップ6F及び弦楽器では、第二圧電素子20Bにおける多孔質層21の分極方向が、第一圧電素子20Aにおける多孔質層21の分極方向と同じである。このため、第一、第二圧電素子20A,20Bの圧縮に伴って第一、第二圧電素子20A,20Bから出力される検出信号を足し合わせることができる。以下、この点について説明する。
【0041】
弦楽器の演奏に際して、例えば手指で弦4をネック3に押し付ける等すると、弦4はネック3側に引っ張られる。この際には、図8に示すように、サドル5が弦4からの力を受けて溝9の第一内側面9a及び底面9cに向けて動く。これにより、サドル5の第一側面5a及び下面5cと溝9との間に位置する第一、第二圧電素子20A,20Bが共に圧縮する。ここで、第一、第二圧電素子20A,20Bの多孔質層21の分極方向が同じであることで、第一、第二圧電素子20A,20Bの圧縮に伴って第一、第二圧電素子20A,20Bから出力される検出信号を足し合わせることができる。
第一、第二圧電素子20A,20Bから出力される検出信号が足し合わされることで、サドル5の動きに伴って圧電素子20から出力される検出信号のS/N比をさらに高めることができる。
【0042】
また、第二実施形態のピックアップ6Fでは、第一圧電素子20A、第二圧電素子20B及び第三圧電素子20Cが一体に形成されている。このため、これら三つの圧電素子20A,20B,20Cが別個に形成されている場合と比較して、これら三つの圧電素子20を含むピックアップ6Fを簡単に溝9とサドル5との間に設置することができる。
【0043】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について、図9,10を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0044】
図9,10に示すように、第三実施形態の弦楽器では、第一実施形態と同様に、ブリッジ8の溝9にサドル5が挿入される。当該サドル5は、楽器本体2の弦固定部11とネック3とにわたって張られた弦4を支持する。溝9の幅W9とサドル5の幅W5との関係は、第一実施形態と同じである。
【0045】
第三実施形態のピックアップ6Gは、第一実施形態と同様の圧電素子20(第一圧電素子)を備える。また、圧電素子20は、その厚さ方向が溝9の第一内側面9a及びサドル5の第一側面5aの配列方向に向くように、溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に配置される。
ただし、第三実施形態において、溝9の第一内側面9a及びサドル5の第一側面5aは、弦4の長手方向において弦固定部11側に位置する。一方、溝9の第二内側面9b及びサドル5の第二側面5bは、弦4の長手方向においてネック3側に位置する。
【0046】
また、圧電素子20の無負荷時の厚さT20は、溝9の幅W9とサドル5の幅W5との差分よりも小さい。そして、圧電素子20は、溝9の第一内側面9a及びサドル5の第一側面5aに接着される。このため、図9に示すように、圧電素子20が溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に配置されただけの状態において、サドル5は、溝9の第一内側面9aに近づく方向及び第一内側面9aから離れる方向に動くことができる。このようにサドル5が動くことで、圧電素子20がその厚さ方向に伸縮する。
【0047】
上記のようにサドル5及び圧電素子20が溝9内に配置された状態において、図10に示すように、楽器本体2の弦固定部11とネック3とにわたって張られた弦4がサドル5の先端部分5Tに支持されると、弦4の張力によって、サドル5の先端部分5Tがネック3側に向けて押される。これにより、サドル5は溝9の第二内側面9b側に傾くように移動し、サドル5の第一側面5aが溝9の第一内側面9aから離れる。その結果として、圧電素子20がその厚さ方向に伸長される。
上記のように伸長された圧電素子20の厚さは、例えば、圧電素子20の無負荷時の厚さT20の150%以下であってよいが、例えば130%以下であることがより好ましい。すなわち、外力による圧電素子20の伸長量は小さい方が好ましい。これは、圧電素子20の伸長量が小さい程、圧電素子20の感度が高くなるためである。
【0048】
以上のように構成される第三実施形態の弦楽器では、弦4の振動がサドル5を介して圧電素子20に伝わり、圧電素子20の多孔質層21がその厚さ方向に伸縮変形する。これにより、圧電素子20が当該多孔質層21の伸縮変形に応じた検出信号(電気信号)を出力する。弦振動に伴って伸長した状態の圧電素子20が伸縮する際、圧電素子20は無負荷時の状態に対して伸長してもよいし、圧縮してもよい。
【0049】
第三実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
すなわち、第三実施形態のピックアップ6G及び弦楽器においても圧電素子20は、多孔質層21が無い圧電素子(例えば従来のピエゾ素子)と比較して伸縮に富む。このため、圧電素子20の無負荷時の厚さT20を、従来のようにサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aとの間隔に対して高い精度で設定しなくても、圧電素子20をその厚さ方向に伸縮させることで、圧電素子20をサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aとの間に隙間なく設置することができる。第三実施形態では、圧電素子20をサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aとに接着することで、容易に、圧電素子20をサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aとの間に隙間なく設置することができる。
また、圧電素子20の伸縮量が大きいことで、弦振動などによってサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aとの間隔が大きくなっても、圧電素子20がサドル5の第一側面5aと溝9の第一内側面9aから離れることを抑制又は防止することができる。これにより、サドル5と溝9との間に設置された圧電素子20をサドル5の動きに追従させて伸縮させることができ、その結果として圧電素子20から検出信号を正しく出力することができる。
【0050】
また、第三実施形態のピックアップ6G及び弦楽器では、図10に示すように、弦4の張力により、多孔質層21を厚さ方向に伸長した状態で、圧電素子20が溝9の第一内側面9aとサドル5の第一側面5aとの間に配置される。この状態では、弦4の振動に伴ってサドル5が溝9の第一内側面9aに近づく方向に変位したときに圧電素子20の多孔質層21が圧縮される。また、サドル5が溝9の第一内側面9aから離れる方向に変位したときに圧電素子20の多孔質層21がさらに伸長する。これにより、圧電素子20は、サドル5が溝9の第一内側面9aに対して近づく方向及び離れる方向への変位を検出することができる。
【0051】
第三実施形態において、無負荷時の厚さT20が溝9の幅W9とサドル5の幅W5との差分よりも小さい圧電素子20は、例えば、弦4の長手方向においてネック3側に位置する溝9の第二内側面9bとサドル5の第二側面5bとの間に配置されてもよい。この場合、楽器本体2の弦固定部11とネック3とにわたって弦4を張り、当該弦4をサドル5の先端部分5Tに支持させることで、サドル5の先端部分5Tが、弦4の張力によってネック3側に向けて押される。これにより、圧電素子20が溝9とサドル5との間において圧縮される。したがって、圧電素子20を溝9やサドル5に接着しなくても、圧電素子20を溝9の第二内側面9bとサドル5の第二側面5bとの間に挟むことができる。
【0052】
無負荷時の厚さT20が溝9の幅W9とサドル5の幅W5との差分よりも小さい第三実施形態の圧電素子20は、例えば、第二実施形態の三つの圧電素子20A,20B,20C(特に、第一、第三圧電素子20A,20C)に適用されてもよい。
【0053】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
本発明のピックアップは、ギターに適用されることに限らず、少なくとも楽器本体に形成された溝に挿入されたサドルによって弦を支持する弦楽器に適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…弦楽器、2…楽器本体、4…弦、5…サドル、5a…第一側面、5b…第二側面、5c…下面、6,6F…ピックアップ、9…溝、9a…第一内側面、9b…第二内側面、9c…底面、20…圧電素子(第一圧電素子)、20A…第一圧電素子、20B…第二圧電素子、20C…第三圧電素子、21…多孔質層、T20…圧電素子20の厚さ、W5…サドル5の幅、W9…溝9の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10