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特開2023-161636照射制御装置、放射線治療システム、照射制御方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161636
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】照射制御装置、放射線治療システム、照射制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20231031BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20231031BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61B6/03 360G
A61B6/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072085
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】591001765
【氏名又は名称】安西メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】新井 博文
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 猛
【テーマコード(参考)】
4C082
4C093
【Fターム(参考)】
4C082AE03
4C082AG52
4C082AJ08
4C082AN05
4C082AP08
4C082AR02
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA25
4C093FD03
4C093FD09
4C093FD11
4C093FF12
4C093FF16
4C093FF22
4C093FF28
4C093FF37
4C093FF42
4C093FG01
4C093FG13
4C093FG16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射をより正確に制御する。
【解決手段】照射制御装置20及び照射制御方法では、透視画像について、頭尾方向の所定範囲内で所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成する。次に、複数のシフト画像の各々について、DRR画像との正規化相関係数を計算する。次に、複数の正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像のシフト量を、位置ずれ量に決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対する治療計画と前記被検体の透視画像とに基づいて、放射線ビーム源から前記被検体への放射線ビームの照射を制御する照射制御装置であって、
前記治療計画は、前記被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、前記被検体の前記呼吸位相における前記放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とを含み、
前記放射線ビーム源は、ガントリに設けられ、前記被検体が前記ガントリの回転軸上に位置しているときに、前記被検体に前記放射線ビームを照射可能であり、
前記透視画像は、前記回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置によって生成され、
前記照射制御装置は、
前記治療計画を取得する治療計画取得部と、
取得された前記治療計画に含まれる前記CT画像及び前記アイソセンタ座標に基づいて、前記被検体のDRR画像を前記ガントリの所定角度毎に生成するDRR画像生成部と、
前記透視画像と、前記透視画像が生成されたときの前記ガントリの回転角度とを取得する透視画像取得部と、
同一の前記回転角度について、生成された前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置と、取得された前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する位置ずれ量計算部と、
前記位置ずれ量が所定値以内であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する照射許可判定部と、
を備え、
前記位置ずれ量計算部は、
前記透視画像について、前記被検体の頭尾方向の所定範囲内で、前記頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成し、
生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、
計算した複数の前記正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像の前記透視画像に対する前記頭尾方向へのシフト量を、前記位置ずれ量に決定する、照射制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記DRR画像の中から、前記横隔膜を含む単一の第1部分画像領域を選択し、
前記透視画像の中から、前記第1部分画像領域と同じ座標位置の第2部分画像領域を選択し、
選択した前記第2部分画像領域を前記所定範囲内且つ前記刻み幅でシフトさせることにより、複数の前記シフト画像を生成し、
生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記第1部分画像領域との正規化相関係数を計算する、照射制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、前記DRR画像内で探索画像領域を設定し、設定した前記探索画像領域の中から前記横隔膜を含む画像領域を探索し、探索した前記画像領域を前記第1部分画像領域として選択する、照射制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、前記探索画像領域内の複数の画像領域の各々と所定の参照画像との第1正規化相関係数を算出し、前記第1正規化相関係数が最大となる画像領域を前記第1部分画像領域として選択する、照射制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の照射制御装置において、
前記参照画像は、矩形状の画像領域であり、前記頭尾方向に沿った一方の部分の画素値は、他方の部分の画素値よりも低い、照射制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
複数の前記シフト画像の各々について、前記シフト画像を構成する複数の画素の画素値を一定値でそれぞれ減算し、複数の前記画素において、負の画素値の画素が存在するときには、前記負の画素値を0に置き換え、さらに、複数の前記画素の画素値をそれぞれべき乗することで、第1シフト画像を生成し、
前記第1シフト画像を構成する複数の画素の画素値の第1平均値を算出し、
前記DRR画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗することで、第1DRR画像を生成し、
前記第1DRR画像を構成する複数の画素の画素値の第2平均値を算出し、
複数の前記第1シフト画像の各々について、前記第1シフト画像を構成する複数の画素の画素値の各々と前記第1平均値との偏差と、前記第1DRR画像を構成する複数の画素の画素値の各々と前記第2平均値との偏差とを用いて、前記正規化相関係数を計算する、照射制御装置。
【請求項7】
請求項6記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、前記透視画像、前記シフト画像又は前記第1シフト画像に対してメディアンフィルタ処理を施す、照射制御装置。
【請求項8】
請求項6記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記一定値を0に設定し、
複数の前記シフト画像の各々について、前記シフト画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗するための指数として、1~70のうち、いずれかの数を選択し、
前記DRR画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗するための指数として、1~4のうち、いずれかの数を選択する、照射制御装置。
【請求項9】
請求項6記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
40000~55000のうち、いずれかの数を前記一定値として選択し、
複数の前記シフト画像の各々について、前記シフト画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗するための指数として、1~30のうち、いずれかの数を選択し、
前記DRR画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗するための指数として、1~4のうち、いずれかの数を選択する、照射制御装置。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記所定範囲は、前記透視画像に対して、前記被検体の解剖形状上、前記頭尾方向に沿った±2mm~±10mmの範囲であり、
前記刻み幅は、0.5mm~1.5mmの範囲内である、照射制御装置。
【請求項11】
請求項10記載の照射制御装置において、
前記所定範囲は、±2mm~±10mmのうち、整数又は半整数の値であり、
前記刻み幅は、0.5mm~1.5mmの範囲内のうち、整数又は半整数の値である、照射制御装置。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記治療計画取得部は、前記透視画像取得部が前記透視画像及び前記回転角度を取得する前に、前記CT画像及び前記アイソセンタ座標を取得する、照射制御装置。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記透視画像取得部は、前記透視画像生成装置からギガビットイーサネットの回線を介して、前記透視画像及び前記回転角度を取得する、照射制御装置。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記治療計画取得部は、前記治療計画を作成する治療計画装置からDICOM-RT規格の前記CT画像及び前記アイソセンタ座標のデータを取得する、照射制御装置。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記DRR画像生成部は、0.5°~5°の前記所定角度毎に、前記DRR画像を生成する、照射制御装置。
【請求項16】
被検体に対する放射線治療の治療計画を立案する治療計画装置と、
ガントリと、該ガントリに設けられた放射線ビーム源とを備え、前記被検体が前記ガントリの回転軸上に位置しているときに、前記放射線ビーム源から前記被検体に放射線ビームを照射可能な放射線治療装置と、
前記回転軸と略同軸に配置され、前記被検体の透視画像を生成する透視画像生成装置と、
前記治療計画と前記透視画像とに基づいて、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を制御する照射制御装置と、
を有する放射線治療システムであって、
前記治療計画は、前記被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、前記被検体の前記呼吸位相における前記放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とを含み、
前記照射制御装置は、
前記治療計画装置から前記治療計画を取得する治療計画取得部と、
取得された前記治療計画に含まれる前記CT画像及び前記アイソセンタ座標に基づいて、前記被検体のDRR画像を前記ガントリの所定角度毎に生成するDRR画像生成部と、
前記透視画像生成装置から、前記透視画像と、前記透視画像が生成されたときの前記ガントリの回転角度とを取得する透視画像取得部と、
同一の前記回転角度について、生成された前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置と、取得された前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する位置ずれ量計算部と、
前記位置ずれ量が所定値以内であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する照射許可判定部と、
を備え、
前記位置ずれ量計算部は、
前記透視画像について、前記被検体の頭尾方向の所定範囲内で、前記頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成し、
生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、
計算した複数の前記正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像の前記透視画像に対する前記頭尾方向へのシフト量を、前記位置ずれ量に決定する、放射線治療システム。
【請求項17】
被検体に対する治療計画と前記被検体の透視画像とに基づいて、放射線ビーム源から前記被検体への放射線ビームの照射を制御する照射制御方法であって、
前記治療計画は、前記被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、前記被検体の前記呼吸位相における前記放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とを含み、
前記放射線ビーム源は、ガントリに設けられ、前記被検体が前記ガントリの回転軸上に位置しているときに、前記被検体に前記放射線ビームを照射可能であり、
前記透視画像は、前記回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置によって生成され、
前記照射制御方法は、
前記治療計画を取得する第1ステップと、
取得された前記治療計画に含まれる前記CT画像及び前記アイソセンタ座標に基づいて、前記被検体のDRR画像を前記ガントリの所定角度毎に生成する第2ステップと、
前記透視画像と、前記透視画像が生成されたときの前記ガントリの回転角度とを取得する第3ステップと、
同一の前記回転角度について、生成された前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置と、取得された前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する第4ステップと、
前記位置ずれ量が所定値以内であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する第5ステップと、
を有し、
前記第4ステップでは、
前記透視画像について、前記被検体の頭尾方向の所定範囲内で、前記頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成し、
生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、
計算した複数の前記正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像の前記透視画像に対する前記頭尾方向へのシフト量を、前記位置ずれ量に決定する、照射制御方法。
【請求項18】
請求項17記載の照射制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項19】
請求項18記載のプログラムを記憶する記憶媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射制御装置、放射線治療システム、照射制御方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放射線治療システムが開示されている。放射線治療システムは、治療計画装置と、放射線治療装置と、透視画像生成装置と、照射制御装置とを備える。
【0003】
治療計画装置は、被検体に対する治療計画を立案する。放射線治療装置は、ガントリと、放射線ビーム源とを有する。放射線ビーム源は、ガントリに設けられている。放射線治療では、被検体は、ガントリの回転軸上に配置される。放射線ビーム源は、回転軸回りにガントリが回転しているときに、被検体内の腫瘍等の治療対象部位に放射線ビームを照射する。これにより、腫瘍に対する放射線治療が行われる。透視画像生成装置は、回転軸と略同軸に配置されている。透視画像生成装置は、回転軸上に位置する被検体の透視画像を生成する。
【0004】
治療計画には、被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、被検体の当該呼吸位相における放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とが含まれる。また、放射線治療を行う場合、腫瘍の位置は、被検体の呼吸に伴って、周期的に変動することが多い。
【0005】
そこで、照射制御装置は、治療計画及び透視画像に基づいて、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を制御する。具体的には、照射制御装置は、CT画像及びアイソセンタ座標に基づき、被検体のDRR(Digitally Reconstructed Radiography)画像をガントリの所定角度毎に生成する。また、照射制御装置は、ガントリの同一の回転角度について、DRR画像中の被検体の横隔膜の位置と、透視画像中の被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する。より詳しくは、照射制御装置は、DRR画像を被検体の頭方向と足方向とにそれぞれシフトさせることにより、2つの新たなDRR画像を生成する。次に、照射制御装置は、元のDRR画像と、シフト後の2つの新たなDRR画像とについて、透視画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。照射制御装置は、元のDRR画像と透視画像との正規化相関係数が、2つの新たなDRR画像と透視画像との各正規化相関係数よりも大きければ、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を許可する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-24401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射をより正確に制御するためには、DRR画像中の被検体の横隔膜の位置と、透視画像中の被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を、より高精度に計算できることが望ましい。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、被検体に対する治療計画と前記被検体の透視画像とに基づいて、放射線ビーム源から前記被検体への放射線ビームの照射を制御する照射制御装置であって、前記治療計画は、前記被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、前記被検体の前記呼吸位相における前記放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とを含み、前記放射線ビーム源は、ガントリに設けられ、前記被検体が前記ガントリの回転軸上に位置しているときに、前記被検体に前記放射線ビームを照射可能であり、前記透視画像は、前記回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置によって生成され、前記照射制御装置は、前記治療計画を取得する治療計画取得部と、取得された前記治療計画に含まれる前記CT画像及び前記アイソセンタ座標に基づいて、前記被検体のDRR画像を前記ガントリの所定角度毎に生成するDRR画像生成部と、前記透視画像と、前記透視画像が生成されたときの前記ガントリの回転角度とを取得する透視画像取得部と、同一の前記回転角度について、生成された前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置と、取得された前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する位置ずれ量計算部と、前記位置ずれ量が所定値以内であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する照射許可判定部と、を備え、前記位置ずれ量計算部は、前記透視画像について、前記被検体の頭尾方向の所定範囲内で、前記頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成し、生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、計算した複数の前記正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像の前記透視画像に対する前記頭尾方向へのシフト量を、前記位置ずれ量に決定する。
【0010】
本発明の第2の態様は、被検体に対する放射線治療の治療計画を立案する治療計画装置と、ガントリと、該ガントリに設けられた放射線ビーム源とを備え、前記被検体が前記ガントリの回転軸上に位置しているときに、前記放射線ビーム源から前記被検体に放射線ビームを照射可能な放射線治療装置と、前記回転軸と略同軸に配置され、前記被検体の透視画像を生成する透視画像生成装置と、前記治療計画と前記透視画像とに基づいて、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を制御する照射制御装置と、を有する放射線治療システムであって、前記治療計画は、前記被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、前記被検体の前記呼吸位相における前記放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とを含み、前記照射制御装置は、前記治療計画装置から前記治療計画を取得する治療計画取得部と、取得された前記治療計画に含まれる前記CT画像及び前記アイソセンタ座標に基づいて、前記被検体のDRR画像を前記ガントリの所定角度毎に生成するDRR画像生成部と、前記透視画像生成装置から、前記透視画像と、前記透視画像が生成されたときの前記ガントリの回転角度とを取得する透視画像取得部と、同一の前記回転角度について、生成された前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置と、取得された前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する位置ずれ量計算部と、前記位置ずれ量が所定値以内であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する照射許可判定部と、を備え、前記位置ずれ量計算部は、前記透視画像について、前記被検体の頭尾方向の所定範囲内で、前記頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成し、生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、計算した複数の前記正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像の前記透視画像に対する前記頭尾方向へのシフト量を、前記位置ずれ量に決定する。
【0011】
本発明の第3の態様は、被検体に対する治療計画と前記被検体の透視画像とに基づいて、放射線ビーム源から前記被検体への放射線ビームの照射を制御する照射制御方法であって、前記治療計画は、前記被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、前記被検体の前記呼吸位相における前記放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とを含み、前記放射線ビーム源は、ガントリに設けられ、前記被検体が前記ガントリの回転軸上に位置しているときに、前記被検体に前記放射線ビームを照射可能であり、前記透視画像は、前記回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置によって生成され、前記照射制御方法は、前記治療計画を取得する第1ステップと、取得された前記治療計画に含まれる前記CT画像及び前記アイソセンタ座標に基づいて、前記被検体のDRR画像を前記ガントリの所定角度毎に生成する第2ステップと、前記透視画像と、前記透視画像が生成されたときの前記ガントリの回転角度とを取得する第3ステップと、同一の前記回転角度について、生成された前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置と、取得された前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する第4ステップと、前記位置ずれ量が所定値以内であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する第5ステップと、を有し、前記第4ステップでは、前記透視画像について、前記被検体の頭尾方向の所定範囲内で、前記頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成し、生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、計算した複数の前記正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像の前記透視画像に対する前記頭尾方向へのシフト量を、前記位置ずれ量に決定する。
【0012】
本発明の第4の態様は、第3の態様の照射制御方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0013】
本発明の第5の態様は、第4の態様のプログラムを記憶する記憶媒体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、最大の正規化相関係数に応じたシフト量を位置ずれ量として決定するので、該位置ずれ量をより高精度に計算することができる。これにより、決定した位置ずれ量に基づき、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射の許可又は不許可を精度よく判定することができる。この結果、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射をより正確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係る放射線治療システムの概略構成図である。
図2図2は、照射制御装置の動作(照射制御方法)のフローチャートである。
図3図3は、図2のステップS5の具体的処理を示すフローチャートである。
図4図4は、DRR画像の一例を示す図である。
図5図5は、透視画像の一例を示す図である。
図6図6は、DRR画像の部分画像領域の一例を示す図である。
図7図7は、透視画像の部分画像領域の一例を示す図である。
図8図8は、透視画像の一例を示す図である。
図9図9は、図8の透視画像を構成する各画素の画素値を60乗して得られた画像の一例を示す図である。
図10図10は、DRR画像の一例を示す図である。
図11図11は、図10のDRR画像を構成する各画素の画素値を2乗して得られた画像の一例を示す図である。
図12図12は、図8の透視画像を構成する各画素の画素値を52000減算した後に、負の画素値を0に置き換え、さらに、各画素の画素値を16乗して得られた画像の一例を示す図である。
図13図13は、図8の透視画像を構成する各画素の画素値を55000減算した後に、負の画素値を0に置き換え、さらに、各画素の画素値を16乗して得られた画像の一例を示す図である。
図14図14は、画面表示の一例を示す図である。
図15図15は、画面表示の一例を示す図である。
図16図16は、参照画像の一例を示す図である。
図17図17は、DRR画像の探索画像領域について、最適な部分画像領域の位置を探索するときの説明図である。
図18図18は、最適な部分画像領域の位置を示す説明図である。
図19図19は、異なるガントリ角での最適な部分画像領域の位置を示す説明図である。
図20図20は、帯状の雑音を含む透視画像の部分画像領域を示す説明図である。
図21図21は、図20の透視画像について、メディアンフィルタを用いて帯状の雑音を除去した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態に係る放射線治療システム10の概略構成図である。放射線治療システム10は、例えば、医療機関(不図示)に設けられる。放射線治療システム10は、被検体(不図示)に対する放射線治療を行う。被検体は、患者の人体等である。すなわち、放射線治療システム10は、被検体内の治療対象部位に対して放射線治療を行う。より詳しくは、放射線治療システム10は、治療対象部位である腫瘍に治療用放射線ビーム(放射線ビーム)を照射することにより、該腫瘍に対する放射線治療を行う。
【0017】
放射線治療システム10は、CT装置12と、治療計画装置14と、放射線治療用リニアック16(放射線治療装置)と、透視画像生成装置18と、照射制御装置20とを有する。照射制御装置20と、治療計画装置14及び放射線治療用リニアック16(透視画像生成装置18)とは、双方向に通信可能に構成されている。
【0018】
CT装置12は、被検体である患者毎に、患者内部の特定の呼吸位相におけるCT画像を生成する。CT装置12は、生成したCT画像を治療計画装置14に転送する。なお、CT装置12は、例えば、呼吸センサを備えた治療計画用のCT装置12であればよい。これにより、CT装置12は、特定の呼吸位相(例えば、被検体の息止め下)での被検体のCT画像を撮影することができる。
【0019】
治療計画装置14は、被検体に対する放射線治療の治療計画を立案する。具体的には、治療計画装置14は、CT装置12から転送されたCT画像を用いて、被検体の特定の呼吸動作での腫瘍の位置を特定する。治療計画装置14は、CT画像と、治療用放射線ビームの照射対象部位を特定するためのアイソセンタ座標とを含む治療計画を立案する。なお、照射対象部位は、治療対象部位としての腫瘍である。
【0020】
特定の呼吸位相は、被検体の深呼気又は深吸気であってもよい。深呼気には、被検体の最大呼気が含まれる。深吸気には、被検体の最大吸気が含まれる。深呼気及び深吸気では、治療対象部位が一時的に停止するため、深呼気又は深吸気の状態で被検体を息止めさせることが好ましい。このような呼吸位相において、治療対象部位に治療用放射線ビームを照射すれば、放射線治療を精度よく行うことが可能である。但し、本実施形態に係る放射線治療システム10では、深呼気と深吸気との間の特定の位相で、被検体の息止め状態を反復的に維持することも可能である。
【0021】
治療計画装置14は、立案した治療計画(CT画像、アイソセンタ座標)を、DICOM-RT規格のデータとして、照射制御装置20に送信する。
【0022】
放射線治療用リニアック16は、ガントリ(不図示)と、放射線治療ビーム源(不図示)とを有する。以下の説明では、放射線治療ビーム源を放射線ビーム源と呼称する。放射線ビーム源は、ガントリに設けられている。
【0023】
被検体は、放射線治療のときには、ガントリの回転軸(不図示)上に位置する。具体的には、放射線治療用リニアック16には、寝台(不図示)が回転軸に沿って配置されている。被検体は、寝台の上に横臥する。寝台は、回転軸に沿って移動可能である。寝台は、放射線治療のときには、被検体が放射線ビーム源と向かい合う位置にまで移動する。放射線ビーム源は、該放射線ビーム源が被検体と向かい合い、且つ、ガントリが回転軸回りに回転している状態で、ガントリの任意の回転角度から被検体に向けて治療用放射線ビームを照射する。
【0024】
透視画像生成装置18は、回転軸と略同軸に配置されるように、放射線治療用リニアック16に併設されている。透視画像生成装置18は、放射線撮影装置である。透視画像生成装置18は、放射線源(不図示)と、放射線検出器(不図示)とを備える。放射線源と放射線検出器とは、回転軸を挟んで配置されている。
【0025】
放射線源は、例えば、寝台が回転軸に沿って移動し、被検体を挟んで放射線源と放射線検出器とが向かい合っている状態で、被検体にX線等の放射線を照射する。放射線検出器は、被検体を透過した放射線を電気信号(画像信号)に変換することにより、被検体の透視画像を生成する。
【0026】
透視画像生成装置18は、透視画像と、透視画像を生成したときのガントリの回転角度と、撓み補正量とをストリーミング出力する。撓み補正量は、重力による放射線検出器の撓みに起因する透視画像の歪みを補正するための補正量である。ストリーミング出力された透視画像、回転角度及び撓み補正量は、ギガビットイーサネットの回線を介して、照射制御装置20に送信される。なお、ストリーミング出力は、100ms~200ms程度の遅延時間を有する略実時間での出力である。また、撓み補正量は、照射制御装置20のメモリ22(記憶媒体)内に予め保存されてもよい。この場合、メモリ22には、ガントリの所定角度毎の撓み補正量が保存される。この場合、所定角度は、例えば、0.5°~5°の範囲内の任意の角度であればよい。所定角度は、1°であることがより好ましい。
【0027】
透視画像生成装置18がガントリに設けられる場合、放射線源及び放射線検出器は、ガントリ内において、放射線ビーム源に対して±90°の回転位置に配置される。放射線源及び放射線検出器は、ガントリが回転したときに、放射線ビーム源と共に、回転軸回りに回転する。この場合、撓み補正量は、ガントリの回転角度に依存した補正量となる。また、撓み補正量は、放射線検出器の重力による撓みに起因した補正量となる。以下の説明では、撓み補正量は、ガントリの回転角度に依存する補正量として説明する。
【0028】
照射制御装置20は、コンピュータである。照射制御装置20は、メモリ22と、制御処理部24と、表示部26と、操作部28とを有する。制御処理部24は、メモリ22に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、治療計画取得部30、DRR画像生成部32、透視画像取得部34、位置ずれ量計算部36、照射許可判定部38、照射許可信号出力部40及び表示処理部42の機能を実現する。すなわち、照射制御装置20は、放射線ビーム源から被検体への治療用放射線ビームの照射を制御するための制御装置として機能する。
【0029】
治療計画取得部30は、治療計画装置14から送信された治療計画(CT画像、アイソセンタ座標)を取得(受信)する。透視画像取得部34は、透視画像生成装置18からストリーミング出力された透視画像、回転角度及び撓み補正量を取得(受信)する。
【0030】
DRR画像生成部32は、治療計画に含まれるCT画像及びアイソセンタ座標から、回転軸回りの所定角度毎の被検体のDRR画像を生成する。具体的には、DRR画像生成部32は、0.5°~5°の範囲内の任意の角度(所定角度)毎に、DRR画像を生成する。所定角度は、1°であることがより好ましい。なお、DRR画像は、治療計画用のCT画像からシミュレーション計算した被検体内部の透視画像である。すなわち、DRR画像生成部32は、放射線治療に用いる特定の呼吸位相に対する息止め下のCT画像を用いてDRR画像を生成する。
【0031】
なお、透視画像取得部34による透視画像、回転角度及び撓み補正量の受信は、被検体に対する放射線治療中、略実時間で反復して実行される。そのため、治療計画取得部30は、被検体に対する放射線治療の開始前に、CT画像とアイソセンタ情報とを受信しておく必要がある。また、DRR画像生成部32は、被検体に対する放射線治療の開始前に、DRR画像を生成しておく必要がある。
【0032】
ところで、被検体内の腫瘍の位置は、該被検体の呼吸動作によって、被検体の頭尾方向に数cm程度動くことがある。また、透視画像は、被検体を透過した放射線の強度分布として与えられる2次元画像である。そのため、透視画像では、相対的に小さい腫瘍を確認することが難しい場合が多い。また、横隔膜は、被検体の呼吸動作によって変位する。但し、横隔膜は、腫瘍と比較して、相対的に大きい。また、横隔膜は、低密度の肺と高密度の肝臓との間に存在する。そのため、横隔膜は、透視画像上、視認しやすい。
【0033】
そこで、位置ずれ量計算部36は、ガントリの同一の回転角度における透視画像とDRR画像とを用いて、DRR画像中の被検体の横隔膜の位置と、透視画像中の被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する。すなわち、位置ずれ量計算部36は、DRR画像中の被検体の横隔膜の位置を基準としたときに、該基準となる横隔膜の位置に対する透視画像中の被検体の横隔膜の呼吸起源の位置ずれ量を計算する。つまり、位置ずれ量計算部36は、同一の回転角度の透視画像とDRR画像とについて、横隔膜の位置を比べることにより、横隔膜の位置ずれ量を計算する。これにより、治療計画で予め決めた治療用放射線ビームの照射位置に腫瘍が実際に存在するか否かを判定することが可能となる。
【0034】
また、放射線検出器には、ガントリの回転角度に依存する重力による撓みが発生している。そのため、透視画像は、該撓みの影響を受けている場合がある。そこで、位置ずれ量計算部36は、撓み補正量を用いて、透視画像中の被検体の横隔膜の位置を補正する。そのため、位置ずれ量計算部36は、補正後の透視画像とDRR画像とを用いて、呼吸起源の位置ずれ量を計算する。
【0035】
位置ずれ量計算部36は、同一の回転角度において、透視画像を、被検体の解剖形状上、頭尾方向に、例えば、±6.5mmの範囲内で、1mmの間隔(刻み幅)でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成する。
【0036】
透視画像をシフトさせるための所定範囲は、元となる透視画像に対して、被検体の解剖形状上、頭尾方向に沿った±2mm~±10mmの範囲であればよい。具体的には、所定範囲は、±2mm~±10mmのうち、整数又は半整数の値であればよい。また、透視画像をシフトさせるための刻み幅は、0.5mm~1.5mmの範囲内であればよい。具体的には、刻み幅は、0.5mm~1.5mmの範囲内のうち、整数又は半整数の値(0.5mm、1.0mm、1.5mm)であればよい。なお、所定範囲のうち、正方向は、元となる透視画像に対する被検体の頭方向である。また、負方向は、元となる透視画像に対する被検体の足方向である。
【0037】
位置ずれ量計算部36は、複数のシフト画像の各々について、DRR画像との正規化相関係数を計算する。位置ずれ量計算部36は、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像について、元の透視画像に対する頭尾方向へのシフト量を、上記の位置ずれ量に決定する。例えば、透視画像とDRR画像との間で、横隔膜の位置ずれがなければ、0mmのシフト量で正規化相関係数が最大になる。正規化相関係数の具体的な算出手法については、後述する。
【0038】
照射許可判定部38は、位置ずれ量が所定値以内であるとき、放射線ビーム源から被検体への治療用放射線ビームの照射を許可する。位置ずれ量が所定値以内であれば、DRR画像中の腫瘍の位置と、透視画像中の腫瘍の位置とが概ね一致する。このような状態で、放射線ビーム源から被検体に向けて治療用放射線ビームを照射すれば、該腫瘍に対する放射線治療を精度よく行うことが可能となる。
【0039】
照射許可信号出力部40は、照射許可判定部38が治療用放射線ビームの照射の許可を判定したときに、治療用放射線ビームの照射の許可を指示する照射許可信号を放射線治療用リニアック16に送信する。照射許可信号出力部40は、例えば、USB端子を用いて、ソフトウェアで通信すればよい。これにより、照射許可信号が放射線治療用リニアック16に確実に送信される。放射線治療用リニアック16は、照射許可信号を受信した場合のみ、放射線ビーム源から被検体に向けて治療用放射線ビームを照射することができる。
【0040】
表示処理部42は、DRR画像、透視画像等の各種の画像を表示部26に表示するための表示処理を行う。表示処理部42は、上記の所定範囲、刻み幅、所定値を設定するための画像を表示部26に表示させるための表示処理を行う。表示部26は、ディスプレイである。表示部26は、表示処理部42が作成した画像を画面に表示する。
【0041】
操作部28は、タッチパネル、キーボード、マウス等の各種の操作部である。放射線治療システム10の操作者は、表示部26の表示内容を確認し、操作部28を操作することにより、所定範囲、刻み幅及び所定値のうち、少なくとも1つの値を設定又は変更することができる。
【0042】
次に、照射制御装置20を含む放射線治療システム10の動作(照射制御方法)について、図2図21を参照しながら説明する。この動作説明では、必要に応じて、図1も参照しながら説明する。ここでは、放射線治療システム10を採用している医療機関において、被検体の腫瘍に対して放射線治療を行う場合について説明する。
【0043】
放射線治療の実行に先立ち、CT装置12(図1参照)は、特定の呼吸位相(例えば、被検体の深呼気又は深吸気)における被検体のCT画像を生成する。なお、透視画像生成装置18が被検体のCT画像を生成してもよい。
【0044】
次に、治療計画装置14は、CT装置12又は透視画像生成装置18から被検体のCT画像を取得する。治療計画装置14は、取得したCT画像を用いて、被検体に対する治療計画を立案する。具体的には、治療計画装置14は、CT画像中の腫瘍の位置を、治療用放射線ビームの照射対象部位に決定する。次に、治療計画装置14は、腫瘍の位置(照射対象部位)の座標であるアイソセンタ座標を特定する。これにより、CT画像及びアイソセンタ座標を含む治療計画が立案される。
【0045】
次に、放射線治療を実行するため、ガントリの回転軸上に被検体を位置させる。具体的には、ガントリの回転軸と平行に配置された寝台上に、被検体を回転軸に沿って横臥させる。次に、放射線ビーム源、放射線源及び放射線検出器と被検体とが向かい合う位置にまで、寝台を回転軸に沿って移動させる。
【0046】
寝台の移動完了後、透視画像生成装置18の放射線源から被検体に放射線を照射する。放射線検出器は、照射された放射線を画像信号に変換する。これにより、被検体を透過した放射線は、放射線強度に応じた画像信号に変換される。この結果、透視画像が生成される。
【0047】
透視画像生成装置18は、被検体の透視画像、ガントリの回転角度、及び、撓み補正量をストリーミング出力する。なお、回転角度に応じた撓み補正量は、長期間変化しない。そのため、撓み補正量は、照射制御装置20のメモリ22に保存しておくことも可能である。
【0048】
そして、図2のステップS1(第1ステップ)において、治療計画取得部30(図1参照)は、治療計画装置14から転送された被検体の治療計画を受信する。上記のように、治療計画には、特定の呼吸位相における被検体のCT画像及びアイソセンタ座標が含まれる。
【0049】
次のステップS2(第2ステップ)において、DRR画像生成部32は、治療計画に含まれるCT画像及びアイソセンタ座標から、ガントリの所定角度毎のDRR画像を生成する。DRR画像生成部32は、生成した複数のDRR画像を位置ずれ量計算部36に出力する。ステップS1、S2の処理は、被検体への治療用放射線ビームの照射前に実行しておくことが望ましい。
【0050】
DRR画像生成部32は、例えば、1°毎にDRR画像を計算する。図4は、DRR画像の一例を示す。図4は、被検体の胸部のDRR画像を示す。図4において、上下方向は、被検体の頭尾方向である。すなわち、図4の上方向が被検体の頭方向である。図4の下方向が被検体の足方向である。図4のDRR画像には、横隔膜50も写り込んでいる。なお、図4は、後述する図5の透視画像と同一の回転角度におけるDRR画像である。また、図4及び図5の各画像は、肺癌に対する放射線治療に用いられる画像である。
【0051】
ストリーミング出力された回転角度は、小数点以下の値を含む。そのため、実際には、回転角度の小数点第1位を四捨五入し、整数化した回転角度に対するDRR画像を用いる。
【0052】
図2のステップS2について、より詳しく説明すると、DRR画像生成部32(図1参照)は、透視画像生成装置18の機械パラメータを用いて、CT画像からDRR画像をシミュレーション計算する。機械パラメータには、放射線源の焦点からアイソセンタまでの距離と、該焦点から放射線検出器までの距離と、放射線検出器の大きさ及びピクセルサイズとが含まれる。DRR画像生成部32は、放射線源の焦点から発散する放射線(X線)の束に対して、1本ずつレイトレーシングし、その直線上のCT値を加算することで、透視画像に相当するDRR画像をシミュレーション計算する。
【0053】
次に、ステップS3(第3ステップ)において、透視画像取得部34は、透視画像生成装置18からストリーミング出力された透視画像、ガントリの回転角度及び撓み補正量を受信する。透視画像取得部34は、受信した透視画像、ガントリの回転角度及び撓み補正量を、位置ずれ量計算部36に出力する。
【0054】
図5は、透視画像取得部34(図1参照)が受信した透視画像の一例を示す。図5は、被検体の胸部の透視画像を示す。図5でも、上下方向は、被検体の頭尾方向である。図5の透視画像には、横隔膜52も写り込んでいる。
【0055】
図2のステップS4において、位置ずれ量計算部36(図1参照)は、撓み補正量を用いて、透視画像の座標を補正する。具体的には、撓み補正量は、透視画像上、頭尾方向の成分と左右方向の成分とに分けることができる。位置ずれ量計算部36は、ストリーミング出力された透視画像を、頭尾方向の成分だけ、頭尾方向に平行移動させる。また、位置ずれ量計算部36は、透視画像を、左右方向の成分だけ、左右方向に平行移動させる。上記のように、撓み補正量は、ガントリの回転角度に依存している。そのため、位置ずれ量計算部36は、複数の透視画像について回転角度を参照し、回転角度に応じて透視画像を補正する。
【0056】
次のステップS5(第4ステップ)において、位置ずれ量計算部36は、ガントリの同一の回転角度の透視画像とDRR画像とを用いて、DRR画像中の被検体の横隔膜50と、透視画像中の被検体の横隔膜52との位置ずれ量を計算する。より詳しくは、位置ずれ量計算部36は、例えば、図4のDRR画像中の横隔膜50の位置を基準として、該基準とした横隔膜50の位置に対する図5の透視画像中の横隔膜52の呼吸起源の位置ずれ量を計算する。
【0057】
すなわち、DRR画像と透視画像とは、同一の回転角度で撮像した場合には、略同一の画像となるはずである。しかしながら、被検体の呼吸動作に起因して、基準となるDRR画像中の横隔膜50の位置(特定の呼吸位相での位置)に対して、透視画像中の実際の横隔膜52の位置(実際の呼吸位相での位置)が、被検体の解剖形状上、頭尾方向に数cm程度ずれる場合がある。そこで、位置ずれ量計算部36は、上記のように、同一の回転角度におけるDRR画像と透視画像との間での横隔膜50、52の位置ずれ量を計算する。位置ずれ量の具体的な算出方法については、後述する。
【0058】
次のステップS6において、照射許可判定部38は、位置ずれ量計算部36が算出した位置ずれ量が所定値以内であるかどうかを判定する。位置ずれ量が所定値以内である場合(ステップS6:YES)、照射許可判定部38は、腫瘍に治療用放射線ビームを精度よく照射することが可能と判定する。次に、照射許可判定部38は、治療用放射線ビームの照射を許可し、照射の許可を示す判定結果を照射許可信号出力部40に出力する。
【0059】
次のステップS7(第5ステップ)において、照射許可信号出力部40は、照射許可判定部38からの照射許可の判定結果に基づき、照射許可信号を放射線治療用リニアック16に送信する。これにより、放射線治療用リニアック16は、受信した照射許可信号に基づき、放射線ビーム源から被検体に向けて治療用放射線ビームを照射する。
【0060】
ステップS6において、位置ずれ量が所定値を超える場合(ステップS6:NO)、照射許可判定部38は、腫瘍に対して治療用放射線ビームを精度よく照射することができないと判定する。次に、照射許可判定部38は、照射の不許可の判定結果を照射許可信号出力部40に出力する。照射許可信号出力部40は、入力された判定結果に基づき、照射許可信号の出力を行わない。従って、放射線治療用リニアック16は、放射線ビーム源からの治療用放射線ビームの照射を停止する。
【0061】
本実施形態の動作の概要は、以上の通りである。次に、図2のステップS5の処理の具体例について、図3及び図6図21を参照しながら説明する。この具体例では、下記の(1)~(5)の手法を用いて、位置ずれ量を計算する。
【0062】
(1)位置ずれ量計算部36は、同一の回転角度の透視画像(図5参照)とDRR画像(図4参照)とについて、正規化相関係数を計算する。
【0063】
(2)位置ずれ量計算部36は、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像について、DRR画像中、横隔膜50を含む単一の部分画像領域を選択する。位置ずれ量計算部36は、透視画像中、DRR画像の部分画像領域と同一の座標の部分画像領域を選択する。位置ずれ量計算部36は、DRR画像の部分画像領域と、透視画像の部分画像領域との正規化相関係数を計算する。
【0064】
(3)位置ずれ量計算部36は、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像のうち、少なくとも、透視画像を構成する複数の画素の画素値をべき乗する。これにより、位置ずれ量計算部36は、透視画像のコントラストを改善した新たな画像を生成する。位置ずれ量計算部36は、生成した新たな画像等を用いて、正規化相関係数を計算する。
【0065】
(4)位置ずれ量計算部36は、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像の各々について、画像を構成する複数の画素の画素値の平均値を計算する。位置ずれ量計算部36は、当該画像を構成する複数の画素の画素値から、計算した平均値を減算することで、新たな画像を生成する。位置ずれ量計算部36は、生成した新たな画像等を用いて、正規化相関係数を計算する。
【0066】
(5)位置ずれ量計算部36は、透視画像について、頭尾方向の所定範囲内で、頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成する。位置ずれ量計算部36は、生成した複数のシフト画像の各々について、DRR画像との正規化相関係数を計算する。位置ずれ量計算部36は、計算した複数の正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像について、透視画像に対する頭尾方向へのシフト量を、位置ずれ量に決定する。
【0067】
図3は、図2のステップS5の具体的処理を示すフローチャートである。図3のフローチャートにおいて、位置ずれ量計算部36は、上記(1)~(5)の手法を組み合わせて、位置ずれ量を算出する。以下に、図3の具体的な処理動作について説明する。
【0068】
図3のステップS10において、位置ずれ量計算部36(図1参照)は、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像について、正規化相関係数を計算する。但し、ステップS5では、横隔膜50、52の位置ずれ量を計算することを目的としている。被検体全体の位置ずれ量は、空間的に異なることが予想される。そのため、位置ずれ量計算部36は、横隔膜50、52を含む小さい領域に着目して、位置ずれ量を計算する必要がある。
【0069】
このため、位置ずれ量計算部36は、図4のDRR画像と、図5の透視画像との代わりに、図6及び図7の部分画像領域54、56の画像を用いて、位置ずれ量を計算することが望ましい。図6は、図4のDRR画像から選択された部分画像領域54を示す。図6の部分画像領域54(第1部分画像領域)は、DRR画像から選択された、横隔膜50を含む単一の部分画像領域である。図7の部分画像領域56(第2部分画像領域)は、図5の透視画像から選択された部分画像領域を示す。図7の部分画像領域56は、透視画像から選択された、横隔膜52を含む単一の部分画像領域である。図6及び図7の各部分画像領域54、56は、同一の座標で切り出される必要がある。なお、透視画像とDRR画像との間に位置ずれがない場合、位置ずれ量計算部36は、位置ずれ量を0と計算することができる。
【0070】
透視画像取得部34(図1参照)で受信された透視画像は、図8に示すように、散乱線の混入によって、コントラストが良好でない場合がある。この透視画像は、肝臓癌に対する放射線治療に用いられる画像である。この透視画像では、図5の透視画像と比べて、内臓領域における透視用X線の照射体積が増大している。従って、図8の透視画像は、図5の透視画像と比較して、散乱線の影響が著しく大きい。
【0071】
図9は、図8の透視画像のコントラストを改善した新たな透視画像である。図9の透視画像は、図8の透視画像を構成する複数の画素の画素値を60乗して得られた画像である。すなわち、複数の画素の画素値をべき乗することで、画素値が相対的に小さな画素は、信号レベルが一層小さくなる。また、画素値が相対的に大きな画素は、信号レベルが一層大きくなる。従って、図9の透視画像は、図8の透視画像よりもコントラストが改善されている。
【0072】
治療計画取得部30(図1参照)で受信されたDRR画像についても、DRR画像を構成する複数の画素の画素値をべき乗することにより、コントラストを改善することができる。但し、DRR画像には、計算上、散乱線は含まれない。そのため、DRR画像に対するべき乗の指数(べき数)は、2~4程度で十分である。
【0073】
図10は、DRR画像の一例を示す。図11は、図10のDRR画像に対して、例えば、該DRR画像を構成する複数の画素の画素値を2乗して得られた新たなDRR画像を示す。図11のDRR画像は、図10のDRR画像と比較して、コントラストが改善されている。
【0074】
上記のように、位置ずれ量計算部36(図1参照)は、透視画像の全体と、DRR画像の全体との間で、横隔膜50、52(図4及び図5参照)の位置ずれ量を計算するのではない。位置ずれ量計算部36は、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像の各々について、横隔膜50、52を含む単一の部分画像領域54、56(図6及び図7参照)を抽出(選択)する。位置ずれ量計算部36は、抽出した透視画像の部分画像領域56とDRR画像の部分画像領域54とについて、横隔膜50、52の位置ずれ量を計算する。
【0075】
これにより、横隔膜50、52の位置ずれ量を正確に計算することができる。また、正規化相関係数を計算するときの画素数を大幅に低減することができる。この結果、正規化相関係数の計算を高速化することができる。
【0076】
ここで、透視画像の部分画像領域56を構成する複数の画素の画素値をA(i、j)とする。各画素値A(i、j)の平均値をAmとする。DRR画像の部分画像領域54を構成する複数の画素の画素値をB(i、j)とする。各画素値B(i、j)の平均値をBmとする。この場合、透視画像の部分画像領域56とDRR画像の部分画像領域54との正規化相関係数R1、R2は、下記の(1)式、(2)式でそれぞれ表わされる。
【数1】
【数2】
【0077】
(1)式は、各画素値A(i、j)、B(i、j)から平均値Am、Bmを減算した値を用いた正規化相関係数の数式を示す。(2)式は、各画素値A(i、j)、B(i、j)から平均値Am、Bmを減算しない正規化相関係数の数式を示す。なお、iは、各部分画像領域54、56の横方向(左右方向)の座標値を示す。jは、各部分画像領域54、56の縦方向(頭尾方向)の座標値を示す。また、Σは、(i、j)の座標の各画素について、画素値等の総和を示す数学記号である。
【0078】
2つの正規化相関係数R1、R2について、数値シミュレーションで比較した結果、正規化相関係数R1は、正規化相関係数R2よりも、呼吸起源の位置ずれ量に対する変化率が大きいことが分かった。すなわち、正規化相関係数R1は、正規化相関係数R2よりも位置ずれ量の検出感度が高く、有用である。
【0079】
各画素値A(i、j)は、透視画像取得部34が受信した透視画像を構成する複数の画素の画素値、又は、各画素値をべき乗した画素値のいずれでもよい。また、各画素値B(i、j)は、治療計画取得部30が受信したDRR画像を構成する複数の画素の画素値、又は、各画素値をべき乗した画素値のいずれでもよい。
【0080】
また、透視画像のコントラストを改善する方法として、透視画像の表示範囲を限定することも可能である。例えば、透視画像を構成する複数の画素の画素値は、散乱線によってオフセットされる。そこで、位置ずれ量計算部36は、適切なカットオフ値を設定すればよい。これにより、カットオフ値以上の画素値のみを表示部26の画面上に表示することで、透視画像のコントラストを改善することができる。
【0081】
また、透視画像は、通常、16ビットの非負の整数型の画像として表示される。この場合、透視画像の画素値の最大値は、65535となる。そこで、位置ずれ量計算部36は、各画素値から52000を減算し、負数となった画素値を0に置き換えてもよい。図12は、このような置き換えを行った透視画像を構成する複数の画素の画素値を16乗して得られた新たな透視画像を示す。上記の置き換えを行い、画素値をべき乗することで、透視画像のコントラストを改善することができる。
【0082】
図12の透視画像は、図9の透視画像(べき乗の指数:60)と比べて、べき乗の指数が大幅に小さい。そのため、位置ずれ量計算部36(図1参照)は、通常の倍精度計算でオーバーフローすることなく、図12の透視画像を生成するための計算を行うことができる。しかも、べき乗の指数を大幅に小さくすることで、計算を高速化することができる。図13は、各画素値から減算する値を、55000に変更した場合の新たな透視画像を示す。減算する整数を変更しても、透視画像のコントラストを改善することができる。
【0083】
すなわち、従来は、透視画像のコントラストを上げるために、透視画像を構成する複数の画素の画素値を40乗する等、べき乗の指数を非常に大きくする必要があった。この場合、透視画像の計算がオーバーフローし、計算がエラーになる場合があった。これに対して、本実施形態では、透視画像を構成する複数の画素の画素値から、例えば、50000等の数値を差し引き、負になった画素値については0に置き換える。これにより、透視画像を構成する複数の画素の画素値を、例えば、8乗程度でべき乗した場合でも、従来と同等のコントラストを得ることができる。つまり、本実施形態では、オーバーフローのリスクを回避しながら、透視画像のコントラストを高めることができる。これにより、位置ずれ量を正確に計算することが可能となる。
【0084】
以上のように、透視画像を構成する複数の画素の画素値を40000~55000程度の整数で減算し、各画素値を1乗~16乗程度にべき乗した後に、部分画像領域56を切り出すことが好ましい。また、DRR画像を構成する複数の画素の画素値を1乗~4乗程度にべき乗した後に、部分画像領域54を切り出すことが好ましい。
【0085】
そして、ステップS10では、位置ずれ量計算部36は、同一の回転角度において、透視画像を、被検体の解剖形状上、頭尾方向に所定範囲内で所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成する。この場合、複数のシフト画像の各々について、上記の画素値のべき乗の計算、負数となった画素値の0への置き換えを行うことで、新たなシフト画像(第1シフト画像)を生成してもよい。また、複数のシフト画像又は複数の第1シフト画像の各々について、部分画像領域56を切り出すことが好ましい。
【0086】
さらに、ステップS10では、位置ずれ量計算部36は、上記(1)式又は(2)式を用いて、複数のシフト画像、複数の第1シフト画像、又は、複数の部分画像領域56の各々について、DRR画像又は部分画像領域54との正規化相関係数を計算する。
【0087】
図3のステップS11において、位置ずれ量計算部36(図1参照)は、ステップS10での正規化相関係数の計算結果を用いて、位置ずれ量を決定する。ステップS11では、位置ずれ量計算部36は、複数の正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像のシフト量を、位置ずれ量に決定する。
【0088】
図14は、ステップS10、S11での表示部26(図1参照)の画面表示を示す。表示部26の画面において、左側に表示された画像は、DRR画像である。右側に表示された画像は、DRR画像と同一の回転角度の透視画像である。透視画像及びDRR画像の各々には、部分画像領域54、56が表示されている。
【0089】
正規化相関係数は、上記のように、例えば、各部分画像領域54、56について計算される。なお、透視画像に対して撓み補正が行われているため、透視画像の部分画像領域56の座標は、撓み量だけ補正されている。なお、図14の例では、撓み補正量は、数mm程度である。
【0090】
表示部26の画面において、中央には、所定範囲と正規化相関係数の計算結果との画像58が表示されている。画像58には、-6.5mmから+6.5mmまでの所定範囲と、1mmの刻み幅で透視画像を頭尾方向にシフトさせたときの正規化相関係数の計算結果とが、上下方向に表示されている。
【0091】
図14の例では、最大の正規化相関係数は、0.951である。また、最大の正規化相関係数に対応するシフト量は、-0.5mmである。すなわち、透視画像を足方向に-0.5mmだけシフトさせると、透視画像とDRR画像とが最もよく一致することを意味する。つまり、位置ずれ量は、-0.5mmであると結論付けることができる。
【0092】
この場合、表示部26は、画像58について、最大の正規化相関係数と、最大の正規化相関係数に対応するシフト量とを、強調表示させている。例えば、最大の正規化相関係数と、最大の正規化相関係数に対応するシフト量とが、赤字でハイライト表示される。図14では、最大の正規化相関係数と、最大の正規化相関係数に対応するシフト量とが、太線の枠で囲われている。このように強調表示することで、放射線治療システム10の操作者は、治療用放射線ビームの照射完了まで、位置ずれ量を肉眼で監視することができる。
【0093】
また、表示部26は、所定値を強調表示してもよい。図14では、所定値が、例えば、±5mmに設定されている。この場合、例えば、所定値の位置は、赤線で表示される。図14では、所定値である±5mmの位置が破線で強調表示されている。従って、位置ずれ量が-5mm~+5mmの範囲内であるときには、治療用放射線ビームの照射が許可される。
【0094】
図15は、照射制御装置20を適用したアプリケーションソフトウェアのGUI(グラフィックユーザインターフェース)の一例を示す画像図である。この画像図は、タッチパネルディスプレイの画像図である。
【0095】
図15において、画面には、複数のウィジェットが表示されている。このうち、画面の左側には、所定値を設定するためのウィジェット60が表示されている。このウィジェット60は、図14の中央の画像58に対応している。このウィジェット60は、所定値を示す破線の位置を設定するためのウィジェットである。画面の下側には、OKボタン62と、キャンセルボタン64とが表示されている。
【0096】
放射線治療システム10の操作者は、このウィジェット60を操作して所定値を設定した後、OKボタン62を押すことで、所定値を設定又は変更することができる。所定値を設定又は変更した場合、設定又は変更した所定値の範囲が画面の右側に表示される。また、操作者は、所定値を選択した後、キャンセルボタン64を押すことで、選択した所定値をキャンセルすることができる。
【0097】
例えば、所定値を±3mmに設定すれば、位置ずれ量が3mm以下のときに、治療用放射線ビームの照射が許可される。また、横隔膜50、52(図4及び図5参照)の頭尾方向への移動に鑑み、所定値を頭方向と足方向とで異なる値に設定することも可能である。図15では、所定値を-3mm~+5mmの範囲に設定した場合を図示している。図15において、画面の左側には、-6.5mm~6.5mmの所定範囲内で、1mmの刻み幅で透視画像をシフトさせる場合を表示している。画面の左側には、所定値の上限及び下限である+5mm、-3mmの位置を、破線で図示している。
【0098】
なお、位置ずれ量計算部36が位置ずれ量を3mmと判断した場合、2.5mmのシフト量と、3.5mmのシフト量とにおいて、正規化相関係数が同一且つ最大となる。つまり、シフト量を半整数(整数+0.5)とすることで、治療用放射線ビームの照射の許可の判定処理を容易に行うことが可能となる。
【0099】
また、DRR画像と透視画像とは、いずれも、アイソセンタ面への投影画像として、その画像寸法が決められている。そのため、呼吸起源の位置ずれ量についても、アイソセンタ面上での位置ずれ量として議論される。
【0100】
なお、上記の各部分画像領域54、56(図6及び図7参照)は、ガントリの回転角度に依らず、固定座標であった。通常の治療計画では、腫瘍の重心位置は、画像の中心位置に一致する。そのため、部分画像領域54、56を画像の中心位置に近づけながら、横隔膜50、52を部分画像領域54、56に含めることが望ましい。しかしながら、ガントリの回転角度によっては、部分画像領域54、56が心臓の画像領域と重なり、横隔膜50、52のコントラストが著しく低下する場合がある。そこで、回転角度に応じて、部分画像領域54、56を最適に配置することが望ましい。
【0101】
図16は、参照画像66を示す。参照画像66は、DRR画像の部分画像領域54と同じサイズに設定されている。位置ずれ量計算部36は、参照画像66とDRR画像との正規化相関係数(第1正規化相関係数)を計算し、正規化相関係数が最も大きな位置に部分画像領域54を設定する。
【0102】
図16の参照画像66は、矩形状の画像領域である。参照画像66は、頭尾方向に沿った一方の部分の画素値を、他方の部分の画素値よりも低く設定している。具体的には、参照画像66では、頭方向の上部68の画素値が0に設定されている。また、参照画像66では、足方向の下部70の画素値が1に設定されている。すなわち、横隔膜50の頭方向は、画素値が相対的に小さい。また、横隔膜50の足方向は、画素値が相対的に大きい。従って、参照画像66の画素値は、上記のように、上下で異なる画素値に設定されている。
【0103】
位置ずれ量計算部36は、参照画像66をテンプレートとして、DRR画像中、参照画像66に最も類似する画像領域を部分画像領域54として設定する。具体的には、図17に示すように、位置ずれ量計算部36は、DRR画像中、部分画像領域54を探索するための探索画像領域72を設定する。位置ずれ量計算部36は、探索画像領域72内において、探索用の画像領域を頭尾方向及び左右方向に移動させながら、当該画像領域と参照画像66との正規化相関係数を計算する。位置ずれ量計算部36は、探索画像領域72内の複数の画像領域のうち、参照画像66との正規化相関係数が最大となる画像領域を、部分画像領域54として選択する。つまり、最大の画像領域の位置が、部分画像領域54の最適な配置位置となる。
【0104】
図18は、任意の回転角度のDRR画像について、最適化された部分画像領域54を示す。図19は、他の回転角度のDRR画像について、最適化された部分画像領域54を示す。図18及び図19に示すように、部分画像領域54の最適位置は、ガントリの回転角度によって異なっている。
【0105】
治療用放射線ビームの照射中に生成される透視画像には、図20に示すように、帯状のノイズが混入する場合がある。このノイズが大きい場合、DRR画像と透視画像との間の正規化相関係数の計算精度が低下することがある。
【0106】
そこで、位置ずれ量計算部36(図1参照)は、図20の透視画像に対して、左右方向(横方向)に1次元メディアンフィルタ処理を施す。図21は、1次元メディアンフィルタ処理後の透視画像を示す。図21の透視画像は、図20の透視画像と比較して、帯状のノイズが軽減されていることが分かる。
【0107】
メディアンフィルタ処理では、所定の長さの画素列(画素値を並べたリスト)に対して、画素列の中央値を選ぶことで、大きな変動成分(ノイズ)を除去する。信号処理分野ではよく利用されているフィルタ処理方法である。従って、1次元メディアンフィルタ処理を施すことで、透視画像に含まれる帯状のノイズを抑制することができ、有用である。
【0108】
位置ずれ量計算部36は、1次元メディアンフィルタ処理後の透視画像を用いて正規化相関係数の計算を行う。あるいは、位置ずれ量計算部36は、シフト画像、第1シフト画像又は部分画像領域56に対して、1次元メディアンフィルタ処理を施してもよい。
【0109】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0110】
上記の実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。
【0111】
本発明の第1の態様は、被検体に対する治療計画と前記被検体の透視画像とに基づいて、放射線ビーム源から前記被検体への放射線ビームの照射を制御する照射制御装置(20)であって、前記治療計画は、前記被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、前記被検体の前記呼吸位相における前記放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とを含み、前記放射線ビーム源は、ガントリに設けられ、前記被検体が前記ガントリの回転軸上に位置しているときに、前記被検体に前記放射線ビームを照射可能であり、前記透視画像は、前記回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置(18)によって生成され、前記照射制御装置は、前記治療計画を取得する治療計画取得部(30)と、取得された前記治療計画に含まれる前記CT画像及び前記アイソセンタ座標に基づいて、前記被検体のDRR画像を前記ガントリの所定角度毎に生成するDRR画像生成部(32)と、前記透視画像と、前記透視画像が生成されたときの前記ガントリの回転角度とを取得する透視画像取得部(34)と、同一の前記回転角度について、生成された前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜(50)の位置と、取得された前記透視画像中の前記被検体の横隔膜(52)の位置との位置ずれ量を計算する位置ずれ量計算部(36)と、前記位置ずれ量が所定値以内であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する照射許可判定部(38)と、を備え、前記位置ずれ量計算部は、前記透視画像について、前記被検体の頭尾方向の所定範囲内で、前記頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成し、生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、計算した複数の前記正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像の前記透視画像に対する前記頭尾方向へのシフト量を、前記位置ずれ量に決定する。
【0112】
本発明によれば、最大の正規化相関係数に応じたシフト量を位置ずれ量として決定するので、該位置ずれ量をより高精度に計算することができる。これにより、決定した位置ずれ量に基づき、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射の許可又は不許可を精度よく判定することができる。この結果、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射をより正確に制御することができる。
【0113】
本発明の効果について、より詳しく説明する。
【0114】
透視画像では、肝臓と、肝臓の上方の肺領域との面積比が呼吸により変動する。この面積比が近似的に1:1の状態で透視画像とDRR画像との画像相関が最大になるように正規化相関係数を計算すると、最大の正規化相関係数に応じた位置ずれ量を高精度に計算できることが、数値シミュレーションの結果、分かった。つまり、透視画像を頭尾方向にシフトさせたときに、肝臓と肺領域との面積比が1:1において、最大の正規化相関係数が得られる。この結果、位置ずれ量の計算精度が向上する。
【0115】
これに対して、DRR画像では、画像相関を計算するための画像領域について、肝臓と肺領域との面積比を近似的に1:1に予め設定している。DRR画像を頭尾方向にシフトさせ、最大の正規化相関係数に応じた位置ずれ量を計算した場合、面積比が1:1ではない状態で最大の正規化相関係数が得られる。これにより、位置ずれ量の計算精度が却って低下する。
【0116】
また、本発明では、所定範囲内において所定の刻み幅で透視画像をシフトさせることで、複数のシフト画像を生成し、複数のシフト画像の各々と、DRR画像との正規化相関係数を計算している。これにより、最大の正規化相関係数に応じたシフト量を直接求めることができる。しかも、求めたシフト量を位置ずれ量に決定するので、位置ずれ量を正確に計算することができる。さらに、位置ずれ量と所定値とを直接比較することで、放射線ビームの照射の許可の判定処理を精度よく行うことができる。
【0117】
本発明の第1の態様において、前記位置ずれ量計算部は、前記DRR画像の中から、前記横隔膜を含む単一の第1部分画像領域(54)を選択し、前記透視画像の中から、前記第1部分画像領域と同じ座標位置の第2部分画像領域(56)を選択し、選択した前記第2部分画像領域を前記所定範囲内且つ前記刻み幅でシフトさせることにより、複数の前記シフト画像を生成し、生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記第1部分画像領域との正規化相関係数を計算する。
【0118】
これにより、横隔膜の位置ずれ量を正確に計算することができる。また、正規化相関係数を計算するときの画素数が大幅に低減するので、正規化相関係数の計算を高速化することができる。
【0119】
本発明の第1の態様において、前記位置ずれ量計算部は、前記DRR画像内で探索画像領域(72)を設定し、設定した前記探索画像領域の中から前記横隔膜を含む画像領域を探索し、探索した前記画像領域を前記第1部分画像領域として選択する。
【0120】
これにより、横隔膜を含む第1部分画像領域を短時間で抽出することができる。
【0121】
本発明の第1の態様において、前記位置ずれ量計算部は、前記探索画像領域内の複数の画像領域の各々と所定の参照画像(66)との第1正規化相関係数を算出し、前記第1正規化相関係数が最大となる画像領域を前記第1部分画像領域として選択する。
【0122】
これにより、第1部分画像領域を効率よく且つ短時間で抽出することができる。
【0123】
本発明の第1の態様において、前記参照画像は、矩形状の画像領域であり、前記頭尾方向に沿った一方の部分の画素値(68)は、他方の部分(70)の画素値よりも低い。
【0124】
画像相関の計算領域が固定されている場合、ガントリの回転角度によっては、透視画像上、肝臓と、肝臓の上方に位置する心臓とが重なり合い、肝臓の上部のエッジのコントラストが消滅することがある。そこで、参照画像との画像相関(第1正規化相関係数)が最大になる位置を第1部分画像領域とすることで、回転角度に応じて部分画像領域を設定することができる。この結果、透視画像上、肝臓の上部のエッジのコントラストが消滅することを回避することができる。
【0125】
本発明の第1の態様において、前記位置ずれ量計算部は、複数の前記シフト画像の各々について、前記シフト画像を構成する複数の画素の画素値を一定値でそれぞれ減算し、複数の前記画素において、負の画素値の画素が存在するときには、前記負の画素値を0に置き換え、さらに、複数の前記画素の画素値をそれぞれべき乗することで、第1シフト画像を生成し、前記第1シフト画像を構成する複数の画素の画素値の第1平均値を算出し、前記DRR画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗することで、第1DRR画像を生成し、前記第1DRR画像を構成する複数の画素の画素値の第2平均値を算出し、複数の前記第1シフト画像の各々について、前記第1シフト画像を構成する複数の画素の画素値の各々と前記第1平均値との偏差と、前記第1DRR画像を構成する複数の画素の画素値の各々と前記第2平均値との偏差とを用いて、前記正規化相関係数を計算する。
【0126】
これにより、オーバーフローさせることなく、正規化相関係数を計算することができる。また、正規化相関係数の計算を高速化することができる。さらに、透視画像のコントラストを改善することができる。
【0127】
本発明の第1の態様において、前記位置ずれ量計算部は、前記透視画像、前記シフト画像又は前記第1シフト画像に対してメディアンフィルタ処理を施す。
【0128】
放射線治療中に透視画像を生成する場合、放射線ビームの照射野が大きいと、被検体内で発生した過大な散乱線が、直線状のノイズとして透視画像に混入する。この結果、透視画像とDRR画像との正規化相関係数の計算結果が不正確になる可能性がある。そこで、正規化相関係数の計算に先立ち、透視画像、シフト画像又は第1シフト画像に対してメディアンフィルタ処理を施すことで、ノイズを低減し、正規化相関係数の計算精度を向上することができる。
【0129】
本発明の第1の態様において、前記位置ずれ量計算部は、前記一定値を0に設定し、複数の前記シフト画像の各々について、前記シフト画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗するための指数として、1~70のうち、いずれかの数を選択し、前記DRR画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗するための指数として、1~4のうち、いずれかの数を選択する。
【0130】
これにより、透視画像のコントラストを改善することができる。
【0131】
本発明の第1の態様において、前記位置ずれ量計算部は、40000~55000のうち、いずれかの数を前記一定値として選択し、複数の前記シフト画像の各々について、前記シフト画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗するための指数として、1~30のうち、いずれかの数を選択し、前記DRR画像を構成する複数の画素の画素値をそれぞれべき乗するための指数として、1~4のうち、いずれかの数を選択する。
【0132】
この場合、正規化相関係数の計算がオーバーフローすることを回避しつつ、正規化相関係数の計算を高速化することができると共に、透視画像のコントラストを改善することができる。
【0133】
本発明の第1の態様において、前記所定範囲は、前記透視画像に対して、前記被検体の解剖形状上、前記頭尾方向に沿った±2mm~±10mmの範囲であり、前記刻み幅は、0.5mm~1.5mmの範囲内である。
【0134】
これにより、位置ずれ量を一層正確に計算することができる。
【0135】
本発明の第1の態様において、前記所定範囲は、±2mm~±10mmのうち、整数又は半整数の値であり、前記刻み幅は、0.5mm~1.5mmの範囲内のうち、整数又は半整数の値である。
【0136】
これにより、位置ずれ量をより正確に計算することができる。
【0137】
本発明の第1の態様において、前記治療計画取得部は、前記透視画像取得部が前記透視画像及び前記回転角度を取得する前に、前記CT画像及び前記アイソセンタ座標を取得する。
【0138】
これにより、CT画像及びアイソセンタ座標を用いて、DRR画像を予め計算できるため、被検体に対する放射線治療の実行中、正規化相関係数を計算することが可能となる。
【0139】
本発明の第1の態様において、前記透視画像取得部は、前記透視画像生成装置からギガビットイーサネットの回線を介して、前記透視画像及び前記回転角度を取得する。
【0140】
これにより、ストリーミング出力される各情報を略リアルタイムで受信することができる。
【0141】
本発明の第1の態様において、前記治療計画取得部は、前記治療計画を作成する治療計画装置(14)からDICOM-RT規格の前記CT画像及び前記アイソセンタ座標のデータを取得する。
【0142】
これにより、既存の設備を利用して、CT画像及びアイソセンタ座標を受信することができる。
【0143】
本発明の第1の態様において、前記DRR画像生成部は、0.5°~5°の前記所定角度毎に、前記DRR画像を生成する。
【0144】
これにより、ガントリの全ての回転角度に対して、例えば、1°間隔でDRR画像を生成し、これらのDRR画像を透視画像に対する参照画像として利用することができる。この結果、強度変調回転照射(VMAT)に適用した場合、反復息止め下であっても、放射線治療を精度よく実行することができる。
【0145】
本発明の第2の態様は、被検体に対する放射線治療の治療計画を立案する治療計画装置と、ガントリと、該ガントリに設けられた放射線ビーム源とを備え、前記被検体が前記ガントリの回転軸上に位置しているときに、前記放射線ビーム源から前記被検体に放射線ビームを照射可能な放射線治療装置(16)と、前記回転軸と略同軸に配置され、前記被検体の透視画像を生成する透視画像生成装置と、前記治療計画と前記透視画像とに基づいて、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を制御する照射制御装置と、を有する放射線治療システム(10)であって、前記治療計画は、前記被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、前記被検体の前記呼吸位相における前記放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とを含み、前記照射制御装置は、前記治療計画装置から前記治療計画を取得する治療計画取得部と、取得された前記治療計画に含まれる前記CT画像及び前記アイソセンタ座標に基づいて、前記被検体のDRR画像を前記ガントリの所定角度毎に生成するDRR画像生成部と、前記透視画像生成装置から、前記透視画像と、前記透視画像が生成されたときの前記ガントリの回転角度とを取得する透視画像取得部と、同一の前記回転角度について、生成された前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置と、取得された前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する位置ずれ量計算部と、前記位置ずれ量が所定値以内であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する照射許可判定部と、を備え、前記位置ずれ量計算部は、前記透視画像について、前記被検体の頭尾方向の所定範囲内で、前記頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成し、生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、計算した複数の前記正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像の前記透視画像に対する前記頭尾方向へのシフト量を、前記位置ずれ量に決定する。
【0146】
本発明でも、第1の態様と同様の効果が得られる。
【0147】
本発明の第3の態様は、被検体に対する治療計画と前記被検体の透視画像とに基づいて、放射線ビーム源から前記被検体への放射線ビームの照射を制御する照射制御方法であって、前記治療計画は、前記被検体の特定の呼吸位相におけるCT画像と、前記被検体の前記呼吸位相における前記放射線ビームの照射位置を特定するためのアイソセンタ座標とを含み、前記放射線ビーム源は、ガントリに設けられ、前記被検体が前記ガントリの回転軸上に位置しているときに、前記被検体に前記放射線ビームを照射可能であり、前記透視画像は、前記回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置によって生成され、前記照射制御方法は、前記治療計画を取得する第1ステップと、取得された前記治療計画に含まれる前記CT画像及び前記アイソセンタ座標に基づいて、前記被検体のDRR画像を前記ガントリの所定角度毎に生成する第2ステップと、前記透視画像と、前記透視画像が生成されたときの前記ガントリの回転角度とを取得する第3ステップと、同一の前記回転角度について、生成された前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置と、取得された前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の位置との位置ずれ量を計算する第4ステップと、前記位置ずれ量が所定値以内であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する第5ステップと、を有し、前記第4ステップでは、前記透視画像について、前記被検体の頭尾方向の所定範囲内で、前記頭尾方向に沿った所定の刻み幅でシフトさせることにより、複数のシフト画像を生成し、生成した複数の前記シフト画像の各々について、前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、計算した複数の前記正規化相関係数のうち、最大の正規化相関係数に対応するシフト画像の前記透視画像に対する前記頭尾方向へのシフト量を、前記位置ずれ量に決定する。
【0148】
本発明でも、第1の態様と同様の効果が得られる。
【0149】
本発明の第4の態様は、第3の態様の照射制御方法をコンピュータ(20)に実行させるプログラムである。
【0150】
本発明でも、第1の態様と同様の効果が得られる。
【0151】
本発明の第5の態様は、第4の態様のプログラムを記憶する記憶媒体(22)である。
【0152】
本発明でも、第1の態様と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0153】
10…放射線治療システム 14…治療計画装置
16…放射線治療用リニアック(放射線治療装置)
18…透視画像生成装置 20…照射制御装置(コンピュータ)
22…メモリ(記憶媒体) 30…治療計画取得部
32…DRR画像生成部 34…透視画像取得部
36…位置ずれ量計算部 38…照射許可判定部
50、52…横隔膜
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