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  • 特開-固体撮像素子の製造方法 図1
  • 特開-固体撮像素子の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161649
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】固体撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072104
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】高倉 稜平
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA09
4M118CA02
4M118EA20
4M118GA02
4M118GA09
(57)【要約】
【課題】光線角の入射角にかかわらずに導波路の効果を得られる固体撮像素子の製造方法を提供する
【解決手段】入射光を画像信号へ光電変換するセンサ部を複数有し、半導体基板表面に絶縁膜が形成される固体撮像素子の製造方法であって、前記センサ部上部の前記絶縁膜をテーパー状にエッチングして光導波路を形成する工程と、前記光導波路内部に金属膜を形成する工程と、前記金属膜上にハードマスクを形成する工程と、前記ハードマスクの底部を選択的に除去する工程と、前記ハードマスク開口部より前記金属膜を除去する工程とを有することを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を画像信号へ光電変換するセンサ部を複数有し、半導体基板表面に絶縁膜が形成される固体撮像素子の製造方法であって、
前記センサ部上部の前記絶縁膜をテーパー状にエッチングして光導波路を形成する工程と、
前記光導波路内部に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜上にハードマスクを形成する工程と、
前記ハードマスクの底部を選択的に除去する工程と、
前記ハードマスク開口部より前記金属膜を除去する工程と
を有することを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【請求項2】
前記ハードマスク開口部より前記金属膜を除去する工程は、
異方性エッチングにより半導体基板に対して略垂直に前記金属膜をエッチングした後、等方性エッチングにより水平方向に前記金属膜をエッチングすることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項3】
前記異方性エッチングは、フッ素化合物又は塩素化合物を含むガスを用いたエッチングであることを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項4】
前記ハードマスク開口部より前記金属膜を除去する工程は、
等方性エッチングであることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項5】
前記等方性エッチングは、ウェットエッチングであることを特徴とする請求項4に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項6】
前記等方性エッチングは、プラズマエッチングにおいてバイアス高周波電力を停止又は低下させることを特徴とする請求項4に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項7】
前記異方性エッチングは、エッチングガスと炭素(C)及び水素(H)元素を含む保護材料ガスとを用いることを特徴とする請求項3に記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項8】
前記等方性エッチングは、前記保護材料ガスの供給を停止することを特徴とする請求項7に記載の固体撮像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路を有する固体撮像素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、写真用カメラでは、一眼レフカメラから小型で軽量でありながら画質や性能においても高性能を実現したミラーレスカメラが主流となりつつある。このミラーレスカメラは、一眼レフカメラと比べてフランジバックが短いことが特徴であり、固体撮像素子へ入射する光線角が一眼レフカメラと比べて大きくなる傾向にある。
【0003】
そこで、フォトダイオードを配線層の反対側のシリコン表面に配置することで光線角の制限を緩和する裏面照射型固体撮像素子が挙げられる。しかし、裏面照射型固体撮像素子は、表面型固体撮像素子と比較すると製造の難易度が高くコスト高となる。
【0004】
特許文献1は、光導波路側壁部に金属反射膜を形成することで高い反射特性を有する反射膜を光導波路内に形成した固体撮像素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-268575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にて開示されている固体撮像素子は、導波路側面に選択的にアルミニウム(Al)を成膜する方法が開示されている。しかし、導波路側面にシード層・下地膜を成膜・RIE(反応性イオンエッチング)が必要となるので工程数が増加するという課題を有する。
【0007】
さらには、複数回のRIEにより導波路直下のフォトダイオードにプラズマによるダメージが発生することが懸念されるという課題を有する。
【0008】
また、導波路底面に意図せず金属膜が発生してしまった場合、除去する手段がないため、このような固体撮像素子は廃棄することになるので歩留まりに影響を与えるという課題を有する。
【0009】
導波路上の金属膜を確実に除去するにはエッチングプロセスが必要である。エッチングの際、側面の金属膜を保護するマスクが必要となる。従って、マスクの厚み分の開口が縮小されるという課題を有する。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、光線角の入射角にかかわらずに導波路の効果を得られる固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段は、固体撮像素子の製造方法であって、入射光を画像信号へ光電変換するセンサ部を複数有し、半導体基板表面に絶縁膜が形成される固体撮像素子の製造方法であって、前記センサ部上部の前記絶縁膜をテーパー状にエッチングして光導波路を形成する工程と、前記光導波路内部に金属膜を形成する工程と、前記金属膜上にハードマスクを形成する工程と、前記ハードマスクの底部を選択的に除去する工程と、前記ハードマスク開口部より前記金属膜を除去する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光線角の入射角にかかわらずに導波路の効果を得られる固体撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る金属膜・ハードマスクの成膜工程を示す固体撮像素子の断面図
図2】本発明の実施例に係る導波路内部の開口形成の工程を示す固体撮像素子の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
本発明の固体撮像素子の製造方法を適用した実施例である。図1図2は、製造工程での固体撮像素子の断面図である。
【0016】
本実施例において、1は半導体基板であり、本願実施例で用いる半導体基板はシリコン:Siの単結晶基板(以下、Si基板)とする、2は配線層、3は金属膜、11はフォトダイオード、31はハードマスクとする。
【0017】
図1は、本実施例の金属膜・ハードマスクの成膜工程を示す固体撮像素子の断面図である。また、図1の(a)は、Si基板1に配線層2まで製造が完了し、フォトダイオード11上部の配線層2を導波路形成のためにテーパー上にエッチングした固体撮像素子の断面図である。さらに、Si基板1には複数のフォトダイオード11が形成されており、フォトダイオード11はSi基板1への入射光を画像信号へ光電変換する。尚、配線層2は層間に絶縁膜を有する構成となっているので、配線層2は絶縁膜に該当する。
【0018】
図1(b)は図1(a)に金属膜3を成膜した後の断面図である。金属膜3の成膜方法は、導波路側面への均一な金属膜3の形成が要求されることから、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)が適している。具体的には、金属膜3としてAl膜を成膜する場合、トリメチルアルミニウム(TMA)を原料とした熱CVDなどが利用可能である。この時のAlの膜厚は90nm~120nmが望ましい。
【0019】
他にも、Al―Cuを物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)で配線層2上に金属膜3として成膜することで、熱CVDと比較してより低温のプロセスを用いることにより、ダメージの低減が期待できる。具体的には、熱CVDプロセスを用いる場合、300~500℃近くまで基板が加熱されるため、配線層2などに熱応力が発生することが考えられる。さらには、シリコンにドーピングした不純物の拡散が進み、拡散層の形状がターゲットから変化してしまうということも考えられる。これらのダメージを低減するためにも、半導体プロセス中の加熱は少なく抑えることが望ましい。但し、PVDを用いる場合、導波路内部のカバレッジに注意が必要であり、導波路上端において約240nmのスパッタ厚が必要である。
【0020】
また、配線層2の上に金属膜3を成膜する前に、金属イオンが拡散することを防ぐためのバリア層を成膜してもよい。バリア層を成膜することで、金属イオンの拡散による配線のショートやシリコン内の欠陥準位の形成を軽減することができる。バリア層の材質は窒化チタン(TiN)が挙げられる。
【0021】
さらに、図1(c)は、ハードマスク31を前述した図1(b)の金属膜3の成膜後に成膜したものである。ハードマスク31は、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、酸化アルミニウム、窒化チタン(TiN)、ポリシリコン(Poly-Si)のいずれかで形成される。導波路側面にも均一な厚さで成膜する必要がある。従って、成膜方法は、CVD法もしくは原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)が適している。ハードマスク31の膜厚は50nm~200nmである。尚、ハードマスク31は後工程のプラズマエッチングで除去するので膜厚は薄いことが望ましいが、導波路の金属膜3をエッチングガスから保護する必要があるため一定程度の膜厚を確保する必要がある。
【0022】
次に、図2は、導波路内部の開口形成の工程を示す固体撮像素子の断面図である。
【0023】
図2(a)に示すように、図1(c)にて成膜したハードマスク31の底部に開口を形成し、金属膜3を露出させる。具体的には、異方性エッチングであるプラズマエッチングを行うことでハードマスク31を除去する。ハードマスク31がシリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜で構成される場合、フッ素化合物を含むエッチングガスを使用し、ハードマスク31が酸化アルミニウム、TiN、Poly―Siで構成される場合、塩素化合物を含むエッチングガスを使用する。
【0024】
プラズマエッチング には、一対の平行平板にRFパワーを印加してプラズマを発生させる容量結合型プラズマ(Capacity Coupled Plasma)エッチャー(以下、CCPプラズマエッチャー)を使用してもよい。
【0025】
プラズマエッチングには、エッチングチャンバーにマイクロ波を導入することでプラズマを発生させる電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance)プラズマエッチャー(以下、ECRプラズマエッチャー)を使用してもよい。
【0026】
CCPプラズマエッチャーおよびECRプラズマエッチャーは、加工対象のウエハを装着する電極(以下、下部電極)に印加される高周波電力(以下、バイアス高周波電力)を制御することにより、ウエハに入射するイオンエネルギーを制御することが可能である。
【0027】
また、エッチングガスには、エッチング中に導波路側面を保護するポリマー生成の為、C2H4など炭素(C)、水素(H)の供給源となるガス(以下、側壁保護材料ガス)を含み得る 。具体的には、フッ素化合物+C2H4や塩素化合物+C2H4といったガスを用いる。エッチング後は、図2(a)に示すように、導波路側面にのみハードマスク31が残る。
【0028】
ここで、図2(a)に示すように導波路側面はテーパー形状であるため、異方性エッチングであるプラズマエッチングとしてイオンが図2(a)の上から下へ略垂直入射の際、導波路側面のハードマスク31も完全に垂直な面と比べると一部エッチングされる。ハードマスクの上にさらに保護膜を形成する場合は、導波路側面の保護膜も同様に一部エッチングされる。
【0029】
尚、導波路底面は図1(c)にてハードマスク31をエッチング済みであるので、図2(a)でのプラズマエッチングで金属膜3がエッチングされる。この時、エッチングガスに側壁保護材料ガスが含まれる場合は底部にも保護膜が堆積される。しかし、エッチング速度が保護膜の堆積速度を上回る条件では金属膜3はエッチングされることとなる。同時に、導波路側面に位置するハードマスク31の延長線上の金属膜3の表面には保護膜が堆積される。導波路側面に位置する金属膜3を保護膜で保護しない場合、図2(b)に記載されるように導波路底部とハードマスク31の間に位置する金属膜3は、ハードマスク底部のエッチング終了後、直ちに等方性エッチングが始まる。その結果、次の工程である図2(c)にて導波路底部とハードマスク31の間に位置する金属膜3の水平方向のエッチングの開始タイミングの制御が困難となる。
(実施例1)
【0030】
次に、図2(b)は、ハードマスク開口形成後、開口部に露出した金属膜3を異方性エッチングにて除去したものである。金属膜3がアルミニウムで構成される場合、塩素化合物を含むエッチングガスを使用する。エッチングガスには、側壁保護材料ガスを含み得る。また、ハードマスク31のエッチングと金属膜3のエッチングは、一度のエッチング工程中に連続して実施してもよい。この場合、工程数を削減することが出来る。
【0031】
金属膜3を異方性エッチング後、図2(c)に示すように、図2(b)において等方性エッチングによってハードマスク31の下に残った金属膜3の水平方向の面を除去する。
【0032】
等方性エッチングは、プラズマエッチングにおいて下部電極側のバイアス高周波電力を停止あるいは低下させることで実施しても良い。その場合、プラズマエッチングと連続して実施できるため工程数を削減することができる。
【0033】
等方性エッチングは、側壁保護材料ガスの供給を停止することで実施しても良い。前述したように導波路側壁はテーパー形状であるため、イオンが略垂直入射する場合も側壁の保護膜がエッチングされる。そのため側壁保護材料ガスの供給を停止すると側壁の保護膜が消失し、等方性エッチングが実現される。この場合も、プラズマエッチングと連続して実施できるため工程数を削減することができる。
【0034】
その後、導波路孔内部に透明材料を埋め込む。透明材料はハードマスク31と同じ材質や屈折率の高い透明有機樹脂を使用できる。
(実施例2)
【0035】
また、図2(b)に示したようにハードマスク31の開口形成後、等方性エッチングによって開口部の金属膜3及びハードマスク31下の金属膜3の内、水平方向の面を除去する。金属膜3のエッチングにプラズマエッチングを使用すると導波路下の半導体層にプラズマダメージを与える可能性があるが、ウェットエッチングを使用することでプラズマエッチングを使用することによるプラズマダメージを抑えることができる。
【0036】
その後、導波路孔内部に透明材料を埋め込む。透明材料はハードマスクと同じ材質や屈折率の高い透明有機樹脂を使用できる。
【0037】
また、いずれのエッチング方法においても導波路内部に透明材料を埋め込む前にウェットエッチング等によってハードマスクを除去しても良い。尚、ハードマスクが透明材料であれば除去せずその後の工程を進めることで金属膜3の保護膜として機能する。透明な材料でなければ除去することが望ましい。
【0038】
以上のことから、本願の固体撮像素子は、ハードマスク31形成後に金属膜3をエッチングすることで光導波路上の障害物を確実に除去し、さらには開口の縮小を抑えることで光線角の入射角にかかわらずに導波路の効果を得られる。
【0039】
尚、本願実施例の固体撮像素子は、表面照射型固体撮像素子を基に説明してきたが、裏面照射型固体撮像素子にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 半導体基板(Si基板)
2 配線層
3 金属膜
11 フォトダイオード
31 ハードマスク
図1
図2