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特開2023-161655においセンサモジュールおよびにおいセンサ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161655
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】においセンサモジュールおよびにおいセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072116
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】恩田 陽介
(57)【要約】
【課題】小型化に適し、におい物質検出の高効率化及び高精度化を実現することが可能なにおいセンサモジュールおよびにおいセンサ装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係るセンサモジュールは、対向する一方の辺側に形成された第1回路と、他方の辺側に形成された第2回路とを有し、プリント基板に実装された半導体集積回路と、前記プリント基板に実装され、前記半導体集積回路の一方の辺に近接して配置され、前記第1回路により発振される第1におい検出素子と、前記プリント基板に実装され、前記半導体集積回路の他方の辺に近接して配置され、前記第2回路により発振される第2におい検出素子と、を有し、前記半導体集積回路、前記第1におい検出素子および前記第2におい検出素子は、気体が通過する流路に配置され、前記気体の流れの方向に沿って並ぶ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一方の辺側に形成された第1回路と、他方の辺側に形成された第2回路とを有し、プリント基板に実装された半導体集積回路と、
前記プリント基板に実装され、前記半導体集積回路の一方の辺に近接して配置され、前記第1回路により発振される第1におい検出素子と、
前記プリント基板に実装され、前記半導体集積回路の他方の辺に近接して配置され、前記第2回路により発振される第2におい検出素子と、
を有し、前記半導体集積回路、前記第1におい検出素子および前記第2におい検出素子は、気体が通過する流路に配置され、前記気体の流れの方向に沿って並ぶ
においセンサモジュール。
【請求項2】
前記半導体集積回路、前記第1におい検出素子および第2におい検出素子の厚みは同一である請求項1に記載のにおいセンサモジュール。
【請求項3】
前記半導体集積回路は平面視で長方形であり、
前記一方の辺と前記他方の辺は前記半導体集積回路の短辺であり、前記半導体集積回路の長辺は前記気体の流れの方向に平行である請求項1または2に記載のにおいセンサモジュール。
【請求項4】
前記半導体集積回路は、前記第1回路と前記第2回路の間に設けられ、前記第1回路及び前記第2回路の周波数をカウントするカウンタ回路を有する請求項1または2に記載のにおいセンサモジュール。
【請求項5】
前記半導体集積回路と前記第1におい検出素子を電気的に接続する第1金属細線と、
前記半導体集積回路と前記第2におい検出素子を電気的に接続する第2金属細線と、
を有する請求項1または2に記載のにおいセンサモジュール。
【請求項6】
前記第1金属細線と前記第2金属細線は前記気体の流れの方向に沿って設けられる請求項5に記載のにおいセンサモジュール。
【請求項7】
実装部品が、前記プリント基板の表面上において前記長辺の外側の領域にのみ実装されている請求項3に記載のにおいセンサモジュール。
【請求項8】
請求項1に記載の前記においセンサモジュールが、前記流路を構成するセンサ室内に設けられ、前記流路には導入口と排出口が設けられ、
前記導入口または前記排出口には気体移送機が設けられる
においセンサ装置。
【請求項9】
前記気体移送機はポンプであり、前記センサ室は、陽圧または陰圧へと変動する請求項8に記載のにおいセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、におい測定用のにおいセンサモジュールおよびにおいセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
QCM(Quartz Crystal Microbalance)やSAW(Surface acoustic wave)共振器、FBAR(Film bulk acoustic resonator)といった圧電振動子の質量付加による共振周波数変動を利用した、におい物質の検出方法が知られている。共振周波数を検出する方法として、ベクトルネットワークアナライザ等の測定機器で測定する方法や、発振回路とカウンタ回路を組み合わせた検出回路で測定する方法、フェーズシフタおよびミキサにより周波数を電圧に変換する測定方法(例えば、特許文献1)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-115927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電振動子式においセンサをモジュール化するためには、回路基板上での周波数測定が必要となり、発振回路とカウンタ回路による測定が最も有効である。圧電振動子式においセンサの感度は共振周波数の二乗に比例するため、圧電振動子には共振周波数が高いものが適している。発振回路とカウンタ回路はプリント基板とディスクリート部品により実現可能であるが、複数の部品を用いるため大型化しやすく、また高周波回路になるため、高い検出精度を実現するためにはプリント基板の配線パターンのインダクタンス低減などの配慮が必要で、配線や金属細線の引き回しが重要となる。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、小型化に適し、におい物質検出の高効率化及び高精度化を実現することが可能なにおいセンサモジュールおよびにおいセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされ、
第1に、
対向する一方の辺側に形成された第1回路と、他方の辺側に形成された第2回路とを有し、プリント基板に実装された半導体集積回路と、
前記プリント基板に実装され、前記半導体集積回路の一方の辺に近接して配置され、前記第1回路により発振される第1におい検出素子と、
前記プリント基板に実装され、前記半導体集積回路の他方の辺に近接して配置され、前記第2回路により発振される第2におい検出素子と、
を有し、前記半導体集積回路、前記第1におい検出素子および前記第2におい検出素子は、気体が通過する流路に配置され、前記気体の流れの方向に沿って並ぶ
においセンサモジュールで解決するものである。
第2に、
前記半導体集積回路、前記第1におい検出素子および第2におい検出素子の厚みは同一であることで解決するものである。
第3に、
前記半導体集積回路は平面視で長方形であり、
前記一方の辺と前記他方の辺は前記半導体集積回路の短辺であり、前記半導体集積回路の長辺は前記気体の流れの方向に平行であることで解決するものである。
第4に、
前記半導体集積回路は、前記第1回路と前記第2回路の間に設けられ、前記第1回路及び前記第2回路の周波数をカウントするカウンタ回路を有することで解決するものである。
第5に、
前記半導体集積回路と前記第1におい検出素子を電気的に接続する第1金属細線と、
前記半導体集積回路と前記第2におい検出素子を電気的に接続する第2金属細線と、
を有することで解決するものである。
第6に、
前記第1金属細線と前記第2金属細線は前記気体の流れの方向に沿って設けられることで解決するものである。
第7に、
実装部品が、前記プリント基板の表面上において前記長辺の外側の領域にのみ実装されていることで解決するものである。
第8に、
前記においセンサモジュールが、前記流路を構成するセンサ室内に設けられ、前記流路には導入口と排出口が設けられ、
前記導入口または前記排出口には気体移送機が設けられる
においセンサ装置で解決するものである。
第9に、
前記気体移送機はポンプであり、前記センサ室は、陽圧または陰圧へと変動することで解決するものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明によれば、小型化に適し、におい物質検出の高効率化及び高精度化を実現することが可能なにおいセンサモジュールおよびにおいセンサ装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るにおいセンサ装置の斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3】流路およびチップの厚みを説明する図である。
図4】においセンサ装置の斜視図である。
図5】においセンサ装置の分解図である。
図6】半導体集積回路とにおい検出素子の接続を説明する図である。
図7】においセンサ装置の断面図である。
図8】センサ基板を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、においセンサモジュールまたはおよびこれを用いたにおいセンサ装置であり、以下図1図3を用いて、その特徴と概略構造を述べ、その後に、センサ装置の一実施例を述べる。
尚、以下においセンサを省略しセンサモジュールとも呼ぶ。またにおい検出素子とにおいセンサは、等価である。
においを検知するにおいセンサは、その原理から、感応膜の抵抗値変化を検知する抵抗型、水晶振動子や圧電素子などの共振部に感応膜を付け、振動の周波数変化から検知する振動子型がある。
特に振動子型の場合、発振回路と周波数カウンタを用いて、発振周波数の変化を検知するものが一般的である。本発明は、この発振回路をIC内部に持ち、このICを用いてにおいセンサモジュールとしたものである。
その際に工夫の点があり、その説明をしていく。
【0009】
[におい検出素子について]
図1および図2で示す様に、
においの測定には、においが吸脱着する感応膜が必要で、この膜を有する第1のにおい検出素子10Aとリファレンス用の第2のにおい検出素子10Bが用いられる。このため、二つのにおい検出素子10A、10Bは、略同一形状で同等の特性であると好ましい。この略同一形状で同等の特性の二つのにおい検出素子10A、10Bは、半導体技術で量産化されたものである。
半導体ウェハに、このにおい検出素子が、マトリックス状に配置され、最後にはダイシングされ、ダイス状(直方体状)に加工される。このウェハで量産化された個々のにおい検出素子がここで言う「略同一形状で同等の特性」である。尚、ウェハ内で隣り合わせのものが好ましい。
第2のにおい検出素子10Bは、感応膜を有し、におい検知用であってもよい。におい検知用のとき、第1のにおい検出素子10Aの感応膜の材料とは、異なる感応膜の材料を用いることで、異なるにおいを吸脱着しやすいにおいセンサとすることもできる。このとき、二つのにおい検出素子10A、10Bは、略同一形状で同等の特性であると好ましい。
この二つのにおい検出素子10A、10Bが発振回路に接続される。なお、におい検出素子10A、10Bは、フェイスアップ実装で、表面の共振部11に感応膜が設けられ、その周囲には、振動子を構成する配線L、ボンディングパッドEが設けられる。
【0010】
尚、図1のにおい検出素子10A、10Bは、FBAR(Film bulk acoustic resonator)で、共振部となる圧電材を挟む電極が配線Lを介して周囲のボンディングパッドEに到る。水晶振動子も同様である。またSAWは、一対の櫛歯電極から延在してボンディングパッドEが設けられる。水晶振動子もFBARも共振部に感応膜が設けられる。尚、におい検出素子10A、10Bは後述する半導体集積回路20と同様にプリント基板30に実装される。におい検出素子10A、10Bの二つの取込み用のボンディングパッドEは、チップの周囲に設けられたボンディングパッドE、または配線Lが代用できる。配線Lは、半導体集積回路20のパターンから比べるとそのサイズが大きいからである。
好ましくは、半導体集積回路20の短辺と対向する側辺にボンディングパッドEが配置され、ここをボンディングパッドとすることが良い。しかし実施例では、配線の太い部分にボンディングされている。
半導体集積回路20、におい検出素子10A、10Bは、気体が通過する流路に配置される。図1において、気体の流れの方向を矢印で示す。半導体集積回路20、におい検出素子10A、10Bはこの気体の流れの方向に沿って並んでいる。
【0011】
[半導体集積回路と相互干渉]
二つの発振回路A、Bは、同一特性のにおい検出素子10A、10Bと接続されて発振するため、その振動周波数帯域は、実質同じである。ただし、においを検知する際には、2つのにおい検出素子10A、10Bは異なった周波数で発振する。これは、それぞれのにおい検出素子10A、10Bの、一方にのみにおいが吸脱着するか、または、両方ににおいが吸脱着するが、その吸脱着特性が異なるためである。こうして、異なる質量負荷による共振周波数変化が生じる。このとき、二つの発振回路A、B、と、二つのにおい検出素子10A、10Bそれぞれの配置によっては、二つの発振回路A、Bに、周波数の相互干渉が起き、同じ周波数で発振する問題がある。よってその為の対策が必要と成る。
その対策の一つは、
二つの発振回路A、Bを集積回路に内蔵する上で、チップを細長くした。つまり平面視で、長方形とした。この長方形の一方の短辺21(ここでは左側)側に第1の発振回路Aが主に形成される。また他方の短辺側22(右側)に第2の発振回路Bが主に構成される。そして発振回路Aと発振回路Bの間には、この二つの発振回路A、Bと電気的に接続される周波数カウンタCが主に設けられる。この3つの回路は、回路ブロックのパターンとして構成されるのが一般的である。回路が、あるブロックのエリアに形成される場合、機能・回路が完結せず、他の場所に必要な回路が存在する場合がある。そのため、文章では、「短辺側に発振回路が主に形成される。」と「主に」を使った。
【0012】
図1の様に、半導体集積回路20は、プリント基板30に実装される。チップを平面視で長方形とし、真ん中に周波数カウンタCを配置し、両側に発振回路A、Bを配置すれば、カウンタCの配置領域を使って、二つの発振回路A、Bを離間できる。二つの発振回路A、Bの間にカウンタCが存在するので、一方の発振回路から半導体に流れるリーク電流が、もう一方の発振回路に到達し、ノイズとなることを抑制できる。また、二つの発振回路A、Bに距離を設けることができるので、相互干渉によるノイズを低減できる。
半導体集積回路20は、化合物半導体またはSiチップで、表面の活性領域に、拡散領域が作り込まれ、この領域が表面に形成された導電パターンは、表面に作り込まれたトランジスタなどと接続され、回路が組み込まれる。
更に半導体集積回路20の短辺21、22、長辺23、24の近傍は、前記導電パターンと接続されたボンディングパッドが設けられる。短辺側のボンディングパッド25、26は、におい検出素子と接続される端子である。長辺側のボンディングパッド27、28は、周波数カウンタCの電源、GNDまたはカウンタCの制御信号が入力される部分である。におい検出素子のボンディングパッドEと短辺側のボンディングパッド25、26は、金属細線W1で接続される。長辺23、24側のボンディングパッド27、28は、金属細線W2で接続される。
【0013】
尚、一般には半導体集積回路20の短辺21、22または長辺23、24と回路ブロックとの間にボンディングパッドが位置する。また別の表現では、半導体集積回路20の周囲に沿ってボンディングパッドは、点在する。
図2に示すように半導体集積回路20は、長辺23、24が矢印で示す気体の流れの方向に平行となるように配置されている。半導体集積回路20の一方の短辺21、他方の短辺22に近接して、プリント基板30に、におい検出素子10A、10Bが実装され、半導体集積回路20の短辺側にはボンディングパッド25、26が設けられている。
この配置であれば、半導体集積回路20の一方の短辺21側に第1の発振回路Aがあるため、第1のにおい検出素子10Aは第1の発振回路Aと近接配置が可能と成る。また半導体集積回路20の他方の短辺22側の第2の発振回路Bと、第2のにおい検出素子10Bも近接配置が可能と成る。よって相互を繋ぐ4本の金属細線W1の距離は、短くできる。この金属細線W1が短い事で、金属細線のインダクタンスを小さくでき、発振回路A、Bは、安定した発振が可能である。しかも二つの発振回路A、Bを内蔵した半導体集積回路20を採用するため、プリント基板30に実装した場合、実装サイズも小さくできる。
【0014】
[プリント基板]
実装基板であるプリント基板30は、少なくとも表面に導電パターンが形成され、3つの半導体チップの実装エリアを有する。この導電パターンは、金属細線が接続されるパッド電極、半導体チップ裏面と接続されるアイランド電極、更にはパッド電極またはアイランド電極と一体で延在される配線がある。
このプリント基板30の中央に位置するアイランド電極の配置部分は、半導体集積回路20の実装領域で、半導体集積回路20がハンダ実装される。半導体集積回路20の短辺21、22側に設けられたアイランド電極の配置部分は、におい検出素子10A、10Bの配置領域で、におい検出素子10A、10Bがハンダで固着される。
そして電源端子、接地端子、制御端子などが、半導体集積回路20の長辺の近傍に対応したプリント基板30に設けられている。半導体集積回路20と接続される電源ICやコンデンサ等の実装部品、実装部品間の導通をとる配線は、プリント基板30の表面上に設けられてよい。このとき、におい検出素子10A、10Bと半導体集積回路20が揃って一直線に並んでいる方向に気体が流れる場合、実装部品は、プリント基板30上で、半導体集積回路20の長辺の外側の領域のみに設けられてよい。このとき、におい検出素子10A、10Bに向かって流れる気体は、実装部品に邪魔されないので直接当てることができ、検知精度の低下を防ぐことができる。また、半導体集積回路20の長辺の外側の領域のみに配線を設ければ、さらに邪魔される気体を減らすことができる。半導体集積回路20と接続される電源ICは、におい検出素子10A、10Bへの熱の影響を低減するため、プリント基板30とは別の回路基板に設けて、その回路基板とプリント基板30を配線し導通することで、半導体集積回路20を制御してもよい。
【0015】
このプリント基板30は、前述した様に、半導体集積回路20と二つのにおい検出素子10A、10Bが配置される。この場合、このプリント基板30が1ユニットとなりアルコールなどのガス測定が可能である。しかし、においは、複数の成分が混ざっているため、このプリント基板30が複数枚で並べられる。それぞれのプリント基板30のにおい検出素子は、異なる感応膜が設けられ、その周波数変化を調べることで、色々なにおいを判断できる。(詳細は図5で説明する。)
このプリント基板30は、流路であるセンサ室40内に設けられる。また本実施例では、プリント基板30の表面がセンサ室40の内壁を構成し、それ以外の内部空間の側面や上面は、筐体41を構成する内部側壁または蓋体の内壁から構成される。図3は、プリント基板30の表面も含めて実線の四角形50が図示されている。つまりこの部分がセンサ室40の内壁である事を示している。
後述する図7に於いて、符号102のセンサ基板102の表面だけがセンサ室40に露出している事が判る。
【0016】
[金属細線の方向とにおいを含む流路の関係]
前述した様に、半導体集積回路20、両端の二つのにおい検出素子10A、10Bが実装されたプリント基板30は、センサ室40に内蔵される。別の表現では、プリント基板30は、流路内に設置される。図1に於いて実線で示す直方体があるが、一番外側の直方体がセンサ室40で、流路でもある。このセンサ室40の外側は、筐体41となる。
センサ室40は、図面では広く見えるが、プリント基板30の表面またはにおい検出素子10A、10Bの表面から天井まで、上下の高さが数mmで、その断面積も少ないものであり、センサ室40に流れる気体は、ポンプを介して、狭い空間の中を流れる。そのため、ポンプによって移送される気体の流れる速度は大きくなる。図1の右斜め上が導入口60で、左斜め下が排出口61である。気体の流れの上流側に導入口60、下流側に排出口61が設けられる。また導入口60または排出口61と外側に連通する流路にはポンプなどの気体移送機がつながっている。
図5の実施例では、ポンプ109を使ってセンサ室40に気体が供給される。この場合、ポンプ109は、流路151から吸引してセンサ室40から流路153へと排気する場合は、センサ室40は、陽圧と成る。一方、流路153から吸引してセンサ室40に気体を供給し、流路151を介して排気する場合は、センサ室40は、陰圧と成る。どちらにしても、ポンプを介して圧力の変動が生じる。
【0017】
一方、半導体集積回路20と第1のにおい検出素子10Aを電気的に接続する金属細線W1と、半導体集積回路20と第2のにおい検出素子10Bを電気的に接続する金属細線W1は、高周波信号を扱うため、金属細線の微動でも防止する必要がある。ワイヤの変動はインダクタンスの変動へとつながる。
におい検出素子であるFBARにつながるワイヤは高周波信号が流れており、半導体集積回路20側からFBARを見ると、共振器両端にインダクタンスがついているように見える。このインダクタンスは、ワイヤの長さと径だけなく、たわみ具合でも変化するため、気流の影響をうけて、結果発振特性に影響し、ノイズの原因となる。
つまり金属細線W1は、気流や圧力の影響を避けるため、この流路の流れの方向(矢印で示す)に沿ってこの金属細線W1は設けられる。
一方、半導体集積回路20の二つの長辺23、24に沿ってボンディングパッドが複数設けられている。このボンディングパッドと対応してプリント基板30にも複数のボンディングパッドが設けられ、これらの間を結ぶ金属細線W2は、長辺と交差する方向、つまり流れの方向と交差する方向に設けられている。ここは、IC駆動用の信号や電源で、金属細線W1で扱う超高周波信号の如きものではなく、精度を要しないものである。
【0018】
[半導体集積回路のチップ厚みと、におい検出素子のチップ厚み]
半導体チップは、半導体メーカーのプロセスや製造条件により、ウェハサイズ、そしてウェハの厚みが異なり、完成されたチップの厚みもバラバラである。
半導体集積回路20とにおい検出素子10A、10Bは、チップ裏面を削り込む事で、全てのチップの厚みを、同等にすることができる。その結果、両者をつなぐ金属細線は、短くすることが可能である。
図3は、第1、第2のにおい検出素子10A、10Bと半導体集積回路20のチップ厚みを同じにしたものが図示されている。符号30は、プリント基板である。例えば、半導体集積回路20の厚みが薄く、におい検出素子10A、10Bが厚いと、金属細線W1は、余分な長さの立ち下がりが必要となり、金属細線W1の長さは長くなる。しかし3つのチップの厚みが実質同じになれば、それぞれの金属細線W1は、短くできる。
よって金属細線W1が短い事で、そのインダクタンスを小さくでき、また金属細線W1の外力の耐性も向上する事ができる。
【0019】
[サイズ]
図1に於いて、本実施例の寸法を説明し、本発明のサイズがどの程度なのか、説明しておく。センサ室40の内部空間のサイズは、平面視で短辺が10~15mm程度、長辺は、10~20mm程度の中で選択される。
図5では、プリント基板30が2列であるため、センサ室40の内部空間のサイズは図1の倍程度、短辺が35mm、長辺が40mm程度である。
尚、図5に示す様に、プリント基板30を何枚使うか、その列の数によりそのサイズは変化する。
センサ室40の高さは、センサ基板102またはにおい検出素子の表面から天井までで、2mm~4mm程度である。
また両チップの厚み:210μm、ワイヤ長さ:300μm程度、チップの間隔:200μm、ICチップ平面サイズ:1000μm×500μm、においセンサ平面サイズ:800μm×600μmである。
更に、以下に述べるポンプは、印加電圧で流量を0.3リットル/分~1リットル/分で、制御でき、通常は、0.5リットル/分~1リットル/分を採用している。
以下、図4図8を参照しながら、具体的な実施例、つまり筐体への実装について説明する。
【0020】
[におい測定装置の構成]
センサ装置100は、筐体101を有し、筐体101内ににおいセンサモジュール103が設けられる。においセンサモジュール103は、センサ基板102、センサ基板102に実装された半導体集積回路201、二つのにおい検出素子203および温湿度センサ104などから成る。
図1では、一つのにおいセンサモジュール103が示されているが、ここでは4つのにおいセンサモジュール103で構成されている。これは、においの検出を目的とし、4種類の感応膜が別々に設けられている。センサ基板102は、ここでは、温湿度センサを実装する基板もあり、全部で5枚の基板から成る。
センサ基板102の下方には、マザーボードである実装基板105がある。実装基板に実装されたセンサ制御回路106および電源回路107、センサ基板102と実装基板105を接続するリードピン108が設けられる。更には第1ポンプ109、第2ポンプ110、筐体101の上方に位置するポンプ制御回路111を備える。
【0021】
筐体101は、気体を流入させ、においセンサモジュール103の表面を通過した後に、外部に排出するため、二つの流路が形成される。この流路の外側は、導入口および排気口となる。
筐体101は図5に示すように、複数の部材で構成され、ここでは第1筐体131、第2筐体132および第3筐体133の3つの部分によって構成される。これらはネジ134によって互いに接合(嵌合)されている。
第1筐体131は、センサ室である内部空間の上壁となる蓋体である。第2筐体132は、前述したセンサ基板102を取り付け、センサ基板102と第1筐体131の内壁で内部空間141を構成する。更に第3筐体133は、第1ポンプ109の収納空間を構成する。
第1筐体131および第2筐体132によって内部空間141が形成されている。各筐体の間には図示しないパッキンが配置されている。
なお、図5は、第1筐体131および第3筐体133を取り外し、第2筐体132を上から見たもので、実装されたセンサ基板102が見えている。
【0022】
図5に示すように筐体101には、第1流路151、第2流路152および第3流路153が設けられている。
第1流路151は、第1筐体131および第3筐体133に上から下に渡り設けられ、内部空間141と外部を連通させる。第1流路151の途中には第1ポンプ109が配置されている。
第2流路152は、第1筐体131および第3筐体133に設けられ、内部空間141と外部を連通させる。第2流路152の途中には第2ポンプ110が配置されている。
図4で見える符号151、152の部分が二つの導入口である。
第3流路153は、第1筐体131の側壁に設けられ、内部空間141と筐体101の外部を連通させる。第3流路153の外側が排出口である。
【0023】
センサ基板102は、配線などの導電パターンを有する樹脂材からなるプリント基板であり、においセンサモジュール103および温湿度センサ104が実装される。なお、センサ基板102は、いわゆるプリント基板で、セラミック基板などでもよい。
【0024】
センサ基板102は、図7示すようにリードピン108によって実装基板105に設けられる。センサ制御回路106はにおいセンサモジュール103の出力信号の処理や外部との通信を実行する。電源回路107は、第1ポンプ109および第2ポンプ110に駆動電力を供給する。
【0025】
リードピン108は実装基板105とセンサ基板102の間に配置され、センサ基板102と実装基板105を離間させ、実装基板105に対してセンサ基板102を支持する。第2筐体132に実装基板105が接合されると、蓋として成る第1筐体131、第2筐体132および実装基板105によって内部空間141が密閉される。
また、センサ基板102はリードピン108によって実装基板105から離間されており、内部空間141を流路空間144と非流路空間145に区画する。
【0026】
第1ポンプ109は、第1流路151中に配置され、測定対象である気体を流路空間144に送出する。また、第1ポンプ109は第1流路151の外部に配置されてもよい。気体は第1流路151を介して外部から流路空間144に流入し、第3流路153から排出される。また、第1ポンプ109の気体送出方向は反対であってもよい。
【0027】
第2ポンプ110は、第2流路152中に配置され、クリーニングガスを流路空間144に送出する。また、第2ポンプ110は第2流路152の外部に配置されてもよい。クリーニングガスは第2流路152を介して外部から流路空間144に流入し、第3流路153から排出される。
【0028】
このように、においセンサ装置100はクリーニング機構を別に備えているが、第2ポンプ110および第2流路152を省略し、第1ポンプ109と第1流路151をクリーニングと測定に兼用してもよい。つまり、におい物質の測定後、クリーニングガスを第1ポンプ109で吸引させることによりクリーニングが可能である。
【0029】
ポンプ制御回路111は、回路基板191、回路基板191に実装された制御素子192を含み、第1ポンプ109および第2ポンプ110を制御する。ポンプ制御回路111の構成は特に限定されない。
【0030】
[におい測定装置の動作]
におい測定が開始されると、第1ポンプ109が駆動され、気体に含まれるにおい物質は、各においセンサモジュール103の表面に供給され、各においセンサモジュール103において検出される。このにおい測定の前または後には、流路空間144のクリーニングが実行される。クリーニングでは第2ポンプ110が駆動され、クリーニングガスが流路空間144を流れる。クリーニングガスは、吸着膜に吸着していたにおい物質および水分を取り込み、外部へと放出するだけでなく、流路空間144の内壁などに吸着していたにおい物質もクリーニングする。
【0031】
[においセンサモジュールの構成]
においセンサモジュール103は、図1図3で説明したとおりで、半導体集積回路201、第1のにおい検出素子202、第2のにおい検出素子203、第1の金属細線204および第2の金属細線205を備える。
図6に示す様に、半導体集積回路201は、平面視で長方形であり、その短辺211、212側には、FBARとの接続パッド215、216が設けられている。またこの半導体集積回路201の二つの短辺側には、発振回路がそれぞれ内蔵され、間にカウンタ回路が設けられるため、お互いの発振回路の離間距離を長く設定している。これは相互干渉を防止し、ノイズの侵入により発振の停止を抑制している。しかもFBARの金属細線による接続により発生するインダクタンスも影響を受ける。
【0032】
前述したように、半導体集積回路201内の発振回路は、FBARも含めて発振する。そのため、電気的に接続する金属細線204、205のインダクタンスが影響する。よって二つの発振回路の発振特性を同じとし、発振停止を抑制するには、金属細線の長さをできるだけ短く、更には実質同じ長さにすることが好ましい。
そのため、におい検出素子202、203のチップ厚みと、半導体集積回路201のチップ厚みを同じにすることが重要と成る。同じ厚みにすることで、金属細線のループ長を最短にできる。半導体チップは、IC、ディスクリートなどで、そのチップの厚みは、各社様々である。よって、少なくともどちらかのチップを削って、3つのチップの厚みを揃えることが重要である。またこの金属細線は、流路に晒されるため、できるだけ短い事で、その強度が増し、腐食や機械的損傷を少なくできるメリットもある。
また金属細線204、205は、図1の金属細線W1と同様に、気体の流れに沿った方向に延在させる事で、気流の影響を抑止でき、計測精度を向上できる。
【符号の説明】
【0033】
10A、10B:におい検出素子
20:半導体集積回路
21,22:短辺
30:プリント基板
40:センサ室
60:導入口
61:排出口
W1:金属細線
100:においセンサ装置
101:筐体
102:センサ基板
103:においセンサモジュール
104:温湿度センサ
105:実装基板
106:センサ制御回路
107:電源回路
108:リードピン
109:第1ポンプ
110:第2ポンプ
111:ポンプ制御回路
201:半導体集積回路
202、203:におい検出素子
204、205:金属細線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8