(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161657
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】情報通知システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20231031BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20231031BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/24 B
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072118
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】522077948
【氏名又は名称】株式会社Hemisphere Japan
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】江夏 偉鵬
(72)【発明者】
【氏名】ブリセニョ 穂世
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和久
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA03
2D003BA06
2D003BA07
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB04
2D015GA03
2D015GB03
2D015HA03
2D015HB03
2D015HB04
(57)【要約】
【課題】 移動体の傾転度合いに基づいて、精度良く、且つ、簡易に異常判定でき、警告を促すための情報を通知できるシステムを提供する。
【解決手段】 この情報通知システムは、移動体としてのバックホー10と、バックホー10の情報を送受信可能に構成されたサーバ20と、サーバ20の情報を送受信可能に構成された端末装置30とを備える。バックホー10は、ロール角AR、及び、ピッチ角APを検出する傾転検出部17cと、ロール角AR、及び、ピッチ角APをサーバ20に送信する情報送信部17dと、を備える。サーバ20は、送信されたロール角AR、及び、ピッチ角APと、予め構築された傾転度合いの情報群ARa,APaとに基づいて、警告を促すための情報を端末装置30へ通知する情報通知部23bと、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、
前記移動体と情報通信ネットワークを介し接続され、前記移動体の情報を送受信可能に構成されたサーバと、
前記サーバと情報通信ネットワークを介し接続され、前記サーバの情報を送受信可能に構成された端末装置と、
を備えた、前記サーバから前記端末装置へ情報を通知するための情報通知システムにおいて、
前記移動体は、
前記移動体の傾転度合いを検出する傾転検出部と、
前記検出された前記移動体の傾転度合いを、前記サーバに送信する情報送信部と、
を備え、
前記サーバは、
前記送信された前記移動体の傾転度合いと、予め構築された前記移動体の傾転度合いの情報群と、に基づいて、警告を促すための情報を前記端末装置へ通知する情報通知部と、
を備えた
情報通知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報通知システムにおいて、
前記移動体の前記情報送信部は、
前記サーバに送信する前記移動体の傾転度合いとして、第1傾転度合い、及び、前記第1傾転度合いよりも後に検出された第2傾転度合いを送信するよう構成され、
前記サーバは、更に、
前記送信された前記移動体の前記第1傾転度合いに基づいて、前記傾転度合いの情報群を構築する情報群構築部を備え、
前記サーバの前記情報通知部は、
前記送信された前記移動体の前記第2傾転度合いと、前記第1傾転度合いに基づき構築された前記情報群と、に基づいて、警告を促すための情報を前記端末装置へ通知するよう構成された
情報通知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報通知システムにおいて、
前記サーバの前記情報通知部は、
前記第2傾転度合いと、前記情報群における前記第1傾転度合いの平均値と、の違いが、所定値以上である場合に、警告を促すための情報を前記走行車両へ通知するよう構成された
情報通知システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の情報通知システムにおいて、
前記移動体は、更に、
前記移動体の位置を測定する位置測定部と、
前記測定された前記移動体の位置に基づいて、前記移動体の自動運転を制御する自動運転制御部と、
を備え、
前記端末装置は、
前記移動体から離間した場所に位置する
情報通知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の傾転度合いに基づいて、警告を促すための情報を端末装置に情報通知するためのシステムである情報通知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体である作業機械において、転倒警告を発する技術が知られている。一般に、自走式の作業機械では、安全のため、作業機械の転倒を抑制することが要求される。特許文献1に開示の装置では、位置情報、加速度情報等に基づいて、作業機械のZMP(Zero Moment Point)の座標が算出される。また、作業機械における地面との複数の接地点
が形成する支持多角形も、算出される。支持多角形の周縁内側における警告領域に、ZMPが含まれるときに、転倒警告を発するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5491627号公報(請求項1、明細書段落0038等)
【発明の概要】
【0004】
上記特許文献1における装置によれば、支持多角形上にZMPが存在する場合に、転倒が開始することを利用し、ZMPと、作業機械と地表面が形成する支持多角形と、が比較される。これにより、安定性を判定することができる。しかしながら、この種の作業機械は、通常、ZMPに影響を及ぼす可動部位が多く、ZMPを精度良く算出するためには、多数のセンサが必要となる。このため、安定性を判定するための装置構成が複雑化する。
【0005】
従って、この装置では、簡易な安定性の判定、即ち、簡易な異常検知が困難である。以上のことから、移動体において、精度良く、且つ、簡易に異常判定でき、警告を促すための情報を通知できる技術が、要望されている。
【0006】
そこで、本発明は、上記要望に鑑み、移動体において、精度良く、且つ、簡易に異常判定でき、警告を促すための情報を通知できるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。本発明の情報通知システムは、移動体と、前記移動体と情報通信ネットワークを介し接続され、前記移動体の情報を送受信可能に構成されたサーバと、前記サーバと情報通信ネットワークを介し接続され、前記サーバの情報を送受信可能に構成された端末装置と、を備えた、前記サーバから前記端末装置へ情報を通知するためのものである。本発明の情報通知システムにおいて、前記移動体は、前記移動体の傾転度合いを検出する傾転検出部と、前記検出された前記移動体の傾転度合いを、前記サーバに送信する情報送信部と、を備え、前記サーバは、前記送信された前記移動体の傾転度合いと、予め構築された前記移動体の傾転度合いの情報群と、に基づいて、警告を促すための情報を前記端末装置へ通知する情報通知部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、移動体が圃場等の起伏有る地面を走行する際、移動体の傾転度合いが検出され、サーバへ逐次送信される。サーバにて、予め構築された傾転度合いの情報群を、例えば、「安全な範囲内の」傾転度合いの情報群とすることで、比較用の値とすることができる。ここにおいて、圃場等の起伏が大きいと、起伏に乗り上げた移動体の傾転度合いも、通常時から大きく変化する場合が多い。この場合、送信された傾転度合いと、情
報群とに基づいて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができる。そして、情報通知部にて、異常判定された場合に、サーバから端末装置に警告を促すための情報が通知される。従って、上記構成によれば、移動体の傾転度合いの情報が利活用されて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができ、端末装置に警告を促すための情報を通知できる。
【0009】
本発明の情報通知システムにおいて、前記移動体の前記情報送信部は、前記サーバに送信する前記移動体の傾転度合いとして、第1傾転度合い、及び、前記第1傾転度合いよりも後に検出された第2傾転度合いを送信するよう構成され、前記サーバは、更に、前記送信された前記移動体の前記第1傾転度合いに基づいて、前記傾転度合いの情報群を構築する情報群構築部を備え、前記サーバの前記情報通知部は、前記送信された前記移動体の前記第2傾転度合いと、前記第1傾転度合いに基づき構築された前記情報群と、に基づいて、警告を促すための情報を前記端末装置へ通知するよう構成される。
【0010】
本発明の情報通知システムにおいて、前記サーバの前記情報通知部は、前記第2傾転度合いと、前記情報群における前記第1傾転度合いの平均値と、の違いが、所定値以上である場合に、警告を促すための情報を前記走行車両へ通知するよう構成される。
【0011】
本発明の情報通知システムにおいて、前記移動体は、更に、前記移動体の位置を測定する位置測定部と、前記測定された前記移動体の位置に基づいて、前記移動体の自動運転を制御する自動運転制御部と、を備え、前記端末装置は、前記移動体から離間した場所に位置する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体の傾転度合いの情報が利活用されて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができ、警告を促すための情報を通知できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報通知システムの全体概略図である。
【
図3】
図1に示す移動体の正面図であって、移動体の前後方向に沿った軸回りに傾転する状態を説明するための図である。
【
図4】
図1に示す移動体の側面図であって、移動体の左右方向に沿った軸回りに傾転する状態を説明するための図である。
【
図6】
図1に示す移動体における、第1傾転度合い、及び、第2傾転度合いの検出・送信タイミングを説明するためのタイムチャートである。
【
図8】
図1に示す端末装置の機能ブロック図である。
【
図9】
図1に示す移動体が圃場を走行する場合における、走行及び位置測定の態様の一例を示す図である。
【
図10】
図1に示すサーバにて生成されるデータベースの一例を示す図である。
【
図11】
図1に示すサーバにて構築された第1傾転度合いの情報群と、移動体から送信された第2傾転度合いと、を比較するプロセスを説明するための図である。
【
図12】
図1に示す情報通知システムの実際の作動を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態の変形例における移動体の側視図である。
【
図14】本発明の実施形態の変形例における移動体の側視図であって、移動体の接地部の前端を支点として傾斜する状態を説明するための図である。
【
図15】クレーンのモーメントと、傾斜角と、の関係を示すグラフ、及び、傾斜角の閾値と、重量物の質量と、可動操作具の水平面とのなす角と、の関係を規定するテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
<情報通知システム>
図1に示すように、本発明の実施形態に係る情報通知システム100は、端末装置30へ警告を促すための情報を通知するためのシステムである。情報通知システム100は、移動体10、サーバ20、及び、端末装置30を備えている。サーバ20は、移動体10、及び、端末装置30と、情報通信ネットワークNを介し接続されている。移動体10で取得される情報は、無線通信にてサーバ20に送信可能となっている。サーバ20にて演算により得られた情報は、無線通信にて移動体10、及び、端末装置30に送信可能となっている。
【0016】
サーバ20は、クラウドサーバ等であり、移動体10からの送信情報を受信し記憶していく。サーバ20は、移動体10、及び、端末装置30とは異なる場所に位置している。また、サーバ20では、当該記憶された情報、及び、移動体10からの送信情報等に基づいて、端末装置30へ警告を促すための情報を通知するようになっている。端末装置30は、スマートフォン、ノートパソコン等の移動通信端末であり、サーバ20からの送信情報を受信する。また、端末装置30は、サーバ20を介して移動体10の運転指示を与えることが可能となっている。
【0017】
<移動体>
図2、
図3、及び、
図4に示すように、移動体10は、地面を移動可能に構成されるものである。移動体10としては、例えば、移動に伴って、地面の起伏に応じた傾転が生じやすいものが挙げられる。移動体10は、例えば、建設機械、農業機械、オフロードトラック、災害救助用の移動ロボット等であってもよい。また、移動体10は、例えば、自動運転可能に構成されていてもよい。本実施形態では、移動体10は、バックホー10であるものとして説明する。
【0018】
バックホー10は、車体11、走行装置12、可動操作具13、測位装置15、傾転検出装置16、制御装置17、及び、通信装置18を備えている。本実施形態では、バックホー10は、圃場F等を無軌道で走行しつつ、可動操作具13により圃場整備等の作業を実施するものであり、走行及び作業は、自動運転により制御されるようになっている。また、1つの圃場Fに対し1つ又は複数のバックホー10が、走行・作業するようになっており、1つのサーバ20と連携するようになっていてもよい。
【0019】
車体11は、走行装置12の上部に配置されており、走行装置12に対し、上下方向の軸を中心として、旋回可能に搭載されている。車体11には、キャビン11a、可動操作具13、測位装置15、傾転検出装置16、制御装置17、及び、通信装置18が備えられている。キャビン11aには、操作具(例えば、レバー、スイッチ、ペダル、ハンドル等)、運転席等が設けられている。運転者が、キャビン11a内に着座した状態において、運転者の前・後、運転者の左・右、運転者の上・下に対応する方向を、それぞれ前方・後方、左方・右方、上方・下方とする。車体11において、左側に寄るようにキャビン11aが配置され、可動操作具13はキャビン11aの右隣に配置されている。キャビン11aの下部には、傾転検出装置16、制御装置17、及び、通信装置18が、設けられている。測位装置15は、本実施形態では、キャビン11aの後方に設けられているが、これに代えて、キャビン11aのルーフ上に、設けられていてもよい。
【0020】
走行装置12は、クローラ式の走行装置であり、クローラの前方にドーザが設けられて
いる。走行装置12は、図示しない原動機、変速機、操舵装置等を介して、前後進や、転回が可能となっている。走行装置12は、キャビン11a内の操作具の操作、又は、自動運転制御によって駆動される。可動操作具13は、ブーム、アーム、及び、バケットで構成されており、一端が車体11に軸支されている。可動操作具13のブーム、アーム、及び、バケットは、シリンダの駆動により、左右方向の軸を中心に、それぞれ回転可能となっている。可動操作具13は、キャビン11a内の操作具の操作、又は、自動運転制御によって駆動される。走行装置12、及び、可動操作具13は、自動運転制御される場合には、端末装置30から遠隔的に制御指示がなされる。
【0021】
測位装置15は、GNSS等の衛星測位システムにより、緯度、経度を含む測位情報を、検出可能となっている。測位装置15は、測位衛星から送信された測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等を含む衛星信号を受信するようになっている。測位装置15では、当該衛星信号に基づいて、圃場Fを走行しているバックホー10の緯度、経度が測位される。傾転検出装置16は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサなどで構成されるIMU(Inertial Measurement Unit)等である。
【0022】
図3、及び、
図4に示すように、傾転検出装置16は、本実施形態では、バックホー10の傾転度合いとして、ロール角AR、及び、ピッチ角APが、それぞれ検出されるようになっている。なお、傾転度合いとしては、ロール角AR、及び、ピッチ角APの全てが検出される構成に代えて、これらのうちから、1つが検出されるようにしてもよい。また、傾転検出装置16は、ロール角AR、及び、ピッチ角APに加え、ヨー角も検出されるようになっていてもよい。ロール角AR、及び、ピッチ角APに対応して、軸KR、及び、軸KPが、それぞれ規定される。軸KRは、バックホー10の前後方向に沿っており、ロール角ARは、軸KRを中心とした回転角である。軸KPは、バックホー10の左右方向に沿っており、ピッチ角APは、軸KPを中心とした回転角である。軸KR、及び、軸KPは、互いにそれぞれ直交している。また、軸KRおよび軸KPの両方に直交する軸KYも、規定される。
【0023】
正面図である
図3の破線にて示す状態は、基準となる水平面にて、バックホー10が走行している状態である。この状態にて、軸KYと可動操作具13の上端との交点P1が規定される。この状態から、
図3の実線にて示すように、軸KR回りにバックホー10が傾転した場合、交点P1は、回転に従って交点P2に移動する。ロール角ARは、交点P1、軸KR、交点P2を結んで得られる屈曲線の成す角となる。ロール角ARは、軸KR回りの傾転度合いが大きいほど、より大きくなる。このロール角ARは、傾転検出装置16により検出される。
【0024】
側面図である
図4の破線にて示す状態は、基準となる水平面にて、バックホー10が走行している状態である。この状態にて、軸KRと車体11の前面端との交点P3が規定される。この状態から、
図4の実線にて示すように、軸KP回りに走行車両が傾転した場合、交点P3は、回転に従って交点P4に移動する。ピッチ角APは、交点P3、軸KP、交点P4を結んで得られる屈曲線の成す角となる。ピッチ角APは、軸KP回りの傾転度合いが大きいほど、より大きくなる。このピッチ角APは、傾転検出装置16により検出される。
【0025】
図5に示すように、制御装置17は、CPU、電気回路等で構成されており、各種装置と電気的に接続されている。制御装置17は、自動運転制御部17a、位置測定部17b、傾転検出部17c、及び、情報送信部17dを備えている。自動運転制御部17aは、位置測定部17bにて測定されたバックホー10の位置に応じて、バックホー10の走行及び作業を制御する。具体的には、予め設定された圃場Fにおける走行ルートを走行しつつ、予め設定された態様での圃場Fの作業がなされるよう、自動運転制御部17aは、走
行装置12、及び、可動操作具13を制御する。走行装置12の自動運転制御では、測定されたバックホー10の位置が走行ルートに沿うよう、原動機、変速機、操舵装置等に駆動指示がなされる。可動操作具13の自動運転制御では、ブーム、アーム、バケットのそれぞれのシリンダ等に駆動指示がなされる。本実施形態では、走行ルート、及び、作業態様は、端末装置30にて設定され、サーバ20を介してバックホー10に自動運転の指示がなされるようになっている。
【0026】
位置測定部17bは、バックホー10の位置を測定するよう、測位装置15に指示する。傾転検出部17cは、バックホー10のロール角AR、及び、ピッチ角APを検出するよう、傾転検出装置16に指示する。本実施形態では、傾転検出装置16での検出は、バックホー10の走行中に所定時間毎に実行される。即ち、傾転検出装置16により、複数の傾転度合い(ロール角AR、及び、ピッチ角AP)が検出される。
【0027】
情報送信部17dは、検出されたバックホー10のロール角AR、及び、ピッチ角APの情報を、サーバ20に送信するよう、通信装置18に指示する。バックホー10のロール角AR、及び、ピッチ角APは、上述のように検出されるたびに、サーバ20に逐次送信されていく。
【0028】
図6に示すように、本実施形態では、所定の期間dt毎に検出されて送信される傾転度合い(ロール角AR、及び、ピッチ角AP)を、第1傾転度合いT1とする。当該第1傾転度合いT1の検出よりも後に検出されて送信される位置を、第2傾転度合いT2とする。より具体的には、
図6(a)に示すように、時刻tにおいて検出された最新の車体11の傾転度合いが第2傾転度合いT2となる。時刻tよりも前の時刻t-dt,t-2d・・・において検出された傾転度合いは、それぞれ第1傾転度合いT1となる。時刻tから期間dtだけ時間が進むと、
図6(b)に示すように、時刻t+dtにおいて、最新の車体11の傾転度合いが第2傾転度合いT2として検出される。時刻t+dtよりも前の時刻t,t-d,t-2d・・・において検出された傾転度合いが、それぞれ第1傾転度合いT1となる。
【0029】
即ち、本実施形態では、最新の1つの車体11の傾転度合いが、第2傾転度合いT2となる。一方、過去の複数の車体11の傾転度合いが、第1傾転度合いT1となる。このように検出される第1傾転度合いT1は、後述するように、サーバ20に逐次送信されて蓄積されていく。一方、第2傾転度合いT2は、後述するように、サーバ20に送信されて、上記蓄積されている第1傾転度合いT1と比較される。そして、第1傾転度合いT1、及び、第2傾転度合いT2の比較に基づいて、端末装置30に警告情報を通知するか否かの判定がなされるようになっている。
【0030】
通信装置18は、サーバ20の通信装置21と、情報通信を行う通信モジュールである。通信装置18は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズの無線通信システム、第5世代通信システム、所定の携帯電話通信網又はデータ通信網などにより、無線通信を行うものであってもよい。通信装置18は、情報送信部17dの指示に応じて、上述のように第1傾転度合いT1、及び、第2傾転度合いT2の情報を、サーバ20に送信する。また、通信装置18は、サーバ20からバックホー10に向けて送信される情報を受信する。本実施形態では、自動運転制御のための走行ルート、及び、作業態様に対応する情報が、サーバ20からバックホー10に向けて送信される。これにより、バックホー10に自動運転の指示がなされるようになっている。
【0031】
<サーバ>
図7に示すように、サーバ20は、通信装置21、記憶装置22、及び、演算装置23を備えている。通信装置21、記憶装置22、及び、演算装置23は、バス、インターフ
ェイス等を介して、それぞれ電気的に接続されている。通信装置21は、バックホー10の通信装置18と、端末装置30の通信装置31と、情報通信を行う通信モジュールである。当該情報通信のための通信規格は、通信装置18及び通信装置31のものと同一である。通信装置21は、バックホー10から送信される第1傾転度合いT1、及び、第2傾転度合いT2を受信する。また、通信装置21は、端末装置30から送信される自動運転制御のための走行ルート、及び、作業態様に対応する情報を受信する。一方、通信装置21は、バックホー10に向けて、自動運転制御のための走行ルート、及び、作業態様に対応する情報を送信する。また、通信装置21は、端末装置30に向けて警告を促すための情報を、端末装置30に通知するよう送信する。
【0032】
記憶装置22は、ストレージであり、例えば、SSD等のフラッシュメモリ、HDD等の磁気ディスクなどである。記憶装置22は、通信装置21を介して受信した、バックホー10及び端末装置30からの各種情報を、記憶し格納可能となっている。また、記憶装置22には、演算装置23にて演算処理に用いられるプログラム、パラメータ等も、格納されている。格納された各種情報等は、演算装置23にて、演算に応じて更新可能かつ読み出し可能となっている。
【0033】
演算装置23は、CPU、電気回路等で構成されており、通信装置21での情報の送受信、傾転度合いT1の情報群の構築、記憶装置22への記憶、及び、各種演算を行う。演算装置23は、情報群構築部23a、情報通知部23b、及び、自動運転指示部23cを備えている。
【0034】
情報群構築部23aは、バックホー10の情報送信部17dから送信され、通信装置21で受信されたバックホー10の傾転度合いの情報を、記憶装置22へ記憶する。記憶される情報は、後述するデータベースDBとして整理される(
図10を参照)。バックホー10から新たな情報が送信されるたびに、当該情報は、データベースDBに逐次追加されていく。データベースDBでは、複数の第1傾転度合いT1(ロール角AR、及び、ピッチ角AP)と、対応する検出時刻とが、互いに紐づけられるようになっている。
【0035】
情報通知部23bは、送信されたバックホー10の第2傾転度合いT2と、データベースDBの第1傾転度合いT1との比較に基づいて、警告を促すための情報を端末装置30へ通知する。端末装置30への情報通知は、通信装置21を介して実行される。例えば、「警告を促すための情報」としては、「異常発生」等、端末装置30にて表示された際に、操作者が視認して異常を検知可能なメッセージでもよいし、同時に警告音が発せられるようにしてもよい。
【0036】
自動運転指示部23cは、端末装置30にて設定された走行ルート、及び、作業態様に対応する情報をバックホー10に送信し、自動運転制御するよう指示する。バックホー10への情報送信は、通信装置21を介して実行される。
【0037】
<端末装置>
図8に示すように、端末装置30は、通信装置31、表示装置32、入力装置33、及び、演算装置34を備えている。端末装置30は、本実施形態では、バックホー10から離間した場所に位置する。通信装置31、表示装置32、入力装置33、及び、演算装置34は、バス、インターフェイス等を介して、それぞれ電気的に接続されている。通信装置31は、サーバ20の通信装置21と、情報通信を行う通信モジュールである。当該情報通信のための通信規格は、通信装置21のものと同一である。表示装置32は、液晶パネル、タッチパネル、その他のパネル等で構成されていて、様々な情報を表示する。入力装置33は、表示装置32がタッチパネルである場合には、画面上に表示されるソフトウェアキーボード等であってもよい。例えば、端末装置30のアプリケーションプログラム
が起動されると、表示装置32は、所定の枠内に文字、数値等を入力可能な入力画面を表示し、当該入力画面には、入力装置33を介した文字、数値等の入力が、操作者により実行されるようになっている。演算装置34は、CPU、電気回路等で構成されており、通信装置31での情報の送受信、表示装置32での情報表示、入力装置33からの入力情報の受付等の各種演算を行う。
【0038】
端末装置30では、バックホー10の走行ルート、及び、作業態様に関する情報が入力されて、走行ルート及び作業態様を設定可能となっている。例えば、
図9に示すように、略矩形状の圃場Fにおいて、バックホー10を蛇行状の走行ルートLにて自動運転させるよう、端末装置30に情報入力されてもよい。この場合、走行ルートLは、始点K1、終点K2、直進ルート長L1、転回位置L2、及び、ルート幅W1を有していてもよい。始点K1及び終点K2は、圃場Fの異なる隅部にそれぞれ位置する。直進ルート長L1は、圃場Fの稜線と略並行に延びる部位であり、転回位置L2は、直進ルート長L1の突き当りであって、折り返す際の端部に相当する。ルート幅W1は、各直進ルート長L1の間における幅として規定される。
【0039】
表示装置32の上記入力画面にて、操作者により、始点K1、終点K2、及び、転回位置L2の位置(緯度、経度等)や、直進ルート長L1、及び、ルート幅W1の数値が入力されることで、走行ルートLが設定される。更に、バックホー10の始動/停止の指示、車速の設定、作業態様の設定等も、表示装置32及び入力装置33を介して実行される。
【0040】
端末装置30にて入力される走行ルートL等の各種情報は、通信装置31により一旦サーバ20に送信されて、サーバ20からバックホー10に到達するようになっている。これにより、バックホー10は、設定された走行ルートLにて走行するよう、自動運転制御されるようになっている。また、始動/停止の指示、車速の設定、作業態様の設定等も、端末装置30からサーバ20を介して、バックホー10になされる。
【0041】
また、サーバ20から端末装置30に、上記「警告を促すための情報」が通知された場合、当該情報は、通信装置31により受信される。そして、表示装置32にて、「異常発生」等、操作者が視認して異常を検知可能なメッセージが、表示されるようになっている。
【0042】
<傾転度合いの情報群を用いた警告の通知>
サーバ20では、バックホー10の第1傾転度合いT1の情報群が構築される。本実施形態では、構築された第1傾転度合いT1の情報群、及び、バックホー10の第2傾転度合いT2を用いて、警告を促すための情報が、端末装置30に向けて通知されるようになっている。以下、情報群の構築、及び、情報群を用いた警告の通知について、詳述する。
【0043】
図9に示すように、バックホー10は、走行ルートLを走行するものとする。バックホー10が始点K1から終点K2に向けて走行していく際、所定の期間dt毎に、バックホー10の傾転度合いT1が測定されていく(
図6を参照)。このため、走行ルートLの始点K1から終点K2に向けて、第1傾転度合いT1(ロール角AR、及び、ピッチ角AP)が多数検出されて、各時刻に対応するロール角AR、及び、ピッチ角APは、バックホー10からサーバ20へ多数送信されていく。これらの情報は、膨大なビッグデータとして、サーバ20に集約されることになる。
【0044】
図10に示すように、サーバ20に集約された情報は、情報群構築部23aによりデータベースDBとして整理され、記憶装置22に格納される。データベースDBは、検出時刻と、第1傾転度合いT1(ロール角AR、及び、ピッチ角AP)と、で構成される。即ち、複数のロール角AR、及び、ピッチ角APが対応する検出時刻にそれぞれ紐づけられ
た状態で、データベースDBが構成される。第1傾転度合いT1が、サーバ20に送信されるたびに、データベースDBの情報が蓄積されていき、全体として更新される。
【0045】
図11に示すように、本実施形態では、情報群構築部23aにより、データベースDBに基づいて、時間に対するロール角ARの情報群ARa、及び、時間に対するピッチ角APの情報群APaがそれぞれ生成される。情報群ARaは、情報群ARas,ARa1,ARa2・・・を有している。情報群ARasは、起伏が既知の圃場Fにて検出されたロール角ARで、構成されている。一方、情報群ARa1,ARa2・・・は、起伏が未知の圃場Fにて検出されたロール角ARで、構成されている。情報群APaは、情報群APas,APa1,APa2・・・を有している。情報群APasは、起伏が既知の圃場Fにて検出されたピッチ角APで、構成されている。一方、情報群APa1,APa2・・・は、起伏が未知の圃場Fにて検出されたピッチ角APで、構成されている。
【0046】
本実施形態では、情報群ARas,APasは、情報群ARa1,ARa2・・・、情報群APa1,APa2・・・、の構築前に、基準となる圃場Fを利用して、予め構築される。例えば、圃場Fが非常に小さい起伏のみを有する場合において、バックホー10を走行させると、バックホー10は殆ど傾転しない。当該圃場Fでは、起伏によるバックホー10の傾転があったとしても、例えば、バックホー10の転倒等、走行上又は作業上の危険や異常が生じ得ないことが既知であるものとする。
【0047】
この場合、
図11(a)に示すように、ロール角ARの情報群ARasにおいては、時間に対しての変化が微小となる。
図11(b)に示すように、ピッチ角APの情報群APasにおいては、時間に対しての変化が微小となる。また、情報群ARasにおける平均値ARavs、及び、情報群APasにおける平均値APavsも算出される。ここにおいて、平均値ARavs,APavsは、例えば、始点K1から終点K2までの走行時に検出された、複数のロール角AR、及び、複数のピッチ角APのそれぞれの平均値である。平均値ARavs,APavsにおいても、時間に対しての変化は微小となる。
【0048】
このように、基準として上述の圃場Fを選定することで、ロール角ARの情報群ARas、及び、ピッチ角APの情報群APasを、予め構築できる。算出される平均値ARavs,APavsは、「安全な範囲内の」ロール角AR、ピッチ角APに相当するため、「比較用の」ロール角AR、ピッチ角APとして用いられる。
【0049】
情報群ARas,APasの構築後に、起伏が未知である1つの圃場Fにて、バックホー10を始点K1から終点K2まで走行させていくと、情報群ARa1,APa1が、それぞれ構築されていく。本実施形態では、情報通知部23bにより、最新の第2傾転度合いT2(ロール角AR、及び、ピッチ角AP)が検出・送信されて、比較用の傾転度合いである平均値ARavs,APavsと、比較されていく。実際に検出された第2傾転度合いT2と、比較用の傾転度合いと、の違いが、所定値以上である場合に、警告を促すための情報が端末装置30へ通知される。
【0050】
より具体的には、例えば、下記2つの条件のうち何れか1つが成立したときに、異常があるとして、警告を促すための情報が端末装置30へ通知されてもよい。このように、ロール角AR、及び、ピッチ角APと、2つの角度における傾転に対し、個々に判定がなされる。このため、精度良い異常判定が可能となる。
【0051】
1.比較用の平均値ARavsと、実際に検出されたロール角ARと、の差の絶対値が、所定値dAR以上である場合
2.比較用の平均値APavsと、実際に検出されたピッチ角APと、の差の絶対値が、所定値dAP以上である場合
【0052】
そして、情報群ARa1,APa1の構築後に、起伏が未知である他の圃場Fでも、バックホー10を始点K1から終点K2までそれぞれ走行させていくと、情報群ARa2,APa2が、構築されていく。これらが構築される際にも、上述と同様に、実際に検出された第2傾転度合いT2と、比較用の傾転度合いである平均値ARavs,APavsとの違いが、所定値以上である場合に、警告を促すための情報が端末装置30へ通知される。
【0053】
なお、平均値ARavs,APavsは、情報群ARa1,ARa2・・・、情報群APa1,APa2・・・の構築とともに、逐次更新されていくようにしてもよい。例えば、上記2つの条件が何れも成立しない場合、検出された第2傾転度合いT2は、「安全な範囲内の」ロール角AR、及び、ピッチ角APであると言える。従って、当該第2傾転度合いT2は、第1傾転度合いT1としてデータベースDBに格納された後、平均値ARavs,APavsの算出に逐次用いられてもよい。これにより、様々な走行場面にて、多くの傾転度合いの情報を収集し、比較用の傾転度合いを生成できる。従って、より精度良い異常判定が可能となる。
【0054】
ここにおいて、所定値dAR、及び、dAPは、安全を担保できる各角度の最大変位等である。所定値dAR、及び、dAPは、それぞれ一定値であってもよいし、バックホー10の走行状態や、作動態様に応じて、異なるように設定されてもよい。例えば、走行ルートLを走行するバックホー10の車速が大きいほど、所定値dAR,dAPをより小さい値に設定してもよい。これは、圃場Fの起伏が小さい場合であっても、車速が大きい状態では、安全率を高めることが好適であることに基づく。また、ロール角AR、及び、ピッチ角APそれぞれの「差の絶対値」が、判定に用いられているが、これに代えて、それぞれの比率が用いられてもよい。
【0055】
<実際の作動>
上述のように構成されたバックホー10、サーバ20、及び、端末装置30を備える情報通知システム100の実際の作動を、
図12に示す一連のフローチャートを参照しながら説明する。ここにおいて、基準となる圃場Fでのバックホー10の走行を利用して、情報群ARas,APasがサーバ20にて予め構築されているものとする。バックホー10は、起伏が未知である圃場Fにて走行及び作業を自動運転にて行うものとする。なお、「起伏が未知である圃場F」は、「基準となる圃場F」とは異なる圃場である。
【0056】
先ず、ステップST1において、端末装置30の操作者は、表示装置32及び入力装置33を介して、バックホー10の走行ルート、及び、作業態様に関する情報を入力する。これにより、バックホー10が自動運転する際の走行ルートL、作業態様、車速等が設定される。また、バックホー10を始動させる場合には始動指示を実行し、停止させる場合には停止指示を実行する。現時点では、バックホー10を始動させるために、始動指示が実行される。
【0057】
次に、ステップST2において、通信装置31は、ステップST1にて設定された情報、及び、始動指示又は停止指示を、端末装置30からサーバ20に送信する。
【0058】
次に、ステップST3において、自動運転指示部23cは、ステップST2にて送信された情報、及び、指示に基づいて、サーバ20からバックホー10に向けて自動運転指示する。これにより、バックホー10が、設定された自動運転する際の走行ルートL、作業態様、車速等にて自動運転するよう指示される。
【0059】
次に、ステップST4において、自動運転制御部17aは、ステップST3にて送信さ
れた自動運転指示と、位置測定部17bにて測定されたバックホー10の位置とに応じて、バックホー10の走行及び作業を自動運転制御する。これにより、バックホー10は、端末装置30にて設定された走行ルートL、作業態様、及び、車速等にて、始点K1から終点K2まで自動運転していく(
図9を参照)。
【0060】
次に、ステップST5において、傾転検出部17cは、バックホー10の傾転度合いを検出する。傾転度合いは、バックホー10のロール角AR、及び、ピッチ角APである。傾転度合いの検出は、前回の測定・検出のタイミングから、期間dt後に実行される。ここにおいて、検出される傾転度合い(ロール角AR、及び、ピッチ角AP)は、最新の第2傾転度合いT2である(
図6を参照)。
【0061】
次に、ステップST6において、情報送信部17dは、ステップST5にて検出された第2傾転度合いT2(ロール角AR、及び、ピッチ角AP)を、バックホー10からサーバ20に送信する。
【0062】
次に、ステップST7において、情報通知部23bは、平均値ARavsと、ステップST6にて送信されたロール角ARとの差の絶対値が、所定値dAR以上であるか否かを判定する。平均値ARavsは、情報群構築部23aにより、予め構築されている第1傾転度合いT1(ロール角AR)の情報群ARaの平均値である(
図11(a)を参照)。現時点において、当該差の絶対値が所定値dAR未満である場合、ステップST7では「No」と判定される。
【0063】
次に、ステップST8において、情報通知部23bは、平均値APavsと、ステップST6にて送信されたピッチ角APとの差の絶対値が、所定値dAP以上であるか否かを判定する。平均値APavsは、情報群構築部23aにより、予め構築されている第1傾転度合いT1(ピッチ角AP)の情報群APaの平均値である(
図11(b)を参照)。所定値dAPは、バックホー10の車速が大きいほど、より小さい値となるよう設定されてもよい。現時点において、当該差の絶対値が所定値dAP未満である場合、ステップST8では「No」と判定される。
【0064】
次に、ステップST9において、情報群構築部23aは、ステップST6にて送信された第2傾転度合いT2を、新たな第1傾転度合いT1(ロール角AR、及び、ピッチ角AP)として、データベースDBに追加する(
図10を参照)。これにより、データベースDBは、新たに情報が追加された状態に更新される。
【0065】
次に、ステップST10において、情報群構築部23aは、ステップST9にて更新されたデータベースDBから情報群ARa,APaを生成する(
図11を参照)。当該情報群ARa,APaは、予め構築されていた情報群ARas,APasと、情報群ARa1,APa1とで構成される。当該情報群ARa1,APa1は、ステップST9にて新たに追加されたロール角AR、及び、ピッチ角APを含む。
【0066】
次に、ステップST11において、情報群構築部23aは、ステップST10にて生成された情報群ARa,APaの平均値ARavs,APavsを算出する。当該平均値ARavs,APavsは、ステップST9にて新たに追加されたロール角AR、及び、ピッチ角APも考慮されて更新される。このように更新された平均値ARavs,APavsは、次回の第2傾転度合いT2の送信時における、ステップST7,ST8の処理に用いられる。
【0067】
そして、ステップST4に戻り、ステップST7,ST8の全てにおいて「No」と判定される限り、ステップST4~ST11の処理が繰り返し実行されていく。この場合、
情報通知部23bは、異常無しとして、バックホー10への警告情報の通知を実行しない。また、データベースDBには、第1傾転度合いT1が蓄積されていき、その都度情報群ARa,APa、及び、平均値ARavs,APavsも更新されていく。
【0068】
一方、ステップST4~ST11の処理が繰り返し実行されている際に、ステップST7,ST8の何れか1つにおいて「Yes」と判定されると、ステップST12に進み、情報通知部23bは、警告を促すための情報を端末装置30に通知する。
【0069】
次に、ステップST13において、表示装置32は、ステップST12にて通知された情報に応じて、端末装置30の操作者に視認可能なよう警告を表示する。表示される警告は、「異常発生」等、操作者が視認して異常を検知可能なメッセージ等である。
【0070】
そして、ステップST1に戻り、ステップST14にて警告表示を視認した操作者は、表示装置32及び入力装置33を介して、停止指示の実行や、走行ルートL、作業態様、車速の再設定を実行する。ここにおいて、車速は、減速方向に設定されると好適である。
【0071】
次に、ステップST2において、通信装置31は、ステップST1にて再設定された情報、又は、停止指示を、端末装置30からサーバ20に送信する。
【0072】
次に、ステップST3において、自動運転指示部23cは、ステップST2にて送信された情報、及び、指示に基づいて、サーバ20からバックホー10に向けて自動運転指示する。これにより、バックホー10が自動的に停止、又は、減速し、転倒することを抑制できる。次のステップST4以降、上述と同様の処理が、繰り返し実行されていく。
【0073】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の実施形態に係る情報通知システム100によれば、移動体としてバックホー10が圃場F等を走行する際、バックホー10の傾転度合いが検出され、サーバ20へ逐次送信される。サーバ20にて、多数の傾転度合いの情報が集約され、当該情報は、例えば、データベースDBとして整理される。情報群構築部にて、データベースDBに基づいて、時間に対する傾転度合いT1の情報群ARa,APaを構築できる。情報通知部にて、情報群ARa,APaの平均値ARavs,APavsを、「安全な範囲内の」ロール角AR、ピッチ角APとすることができ、当該平均値ARavs,APavsを比較用の値とし、バックホー10から送信されてくる傾転度合いT2と比較される。
【0074】
ここにおいて、圃場Fの起伏が大きいと、起伏に乗り上げたバックホー10の傾転度合いも、通常時から大きく変化する場合が多い。この場合、上述した比較が実行されて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができる。そして、情報通知部にて、異常判定された場合に、サーバ20から端末装置30に警告を促すための情報が通知される。従って、情報通知システム100によれば、バックホー10の傾転度合いの情報が利活用されて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができ、端末装置30に警告を促すための情報を通知できる。
【0075】
また、上記実施形態では特に、情報送信部にて、第1傾転度合いT1、及び、第2傾転度合いT2が、それぞれ送信される。第2傾転度合いT2は、第1傾転度合いT1の検出よりも後に検出された値である。このため、走行上又は作業上の危険や異常が生じない状態の情報として、過去に取得された多数の第1傾転度合いT1を、有効に活用できる。また、異常判定には、過去に取得された多数の傾転度合いと、最新の第2傾転度合いT2と、を用いることができる。従って、比較に必要な多数の情報を効率的に集約できるため、異常判定のための情報群ARa,APaを早期に構築できる。
【0076】
また、上記実施形態では特に、情報通知部にて、第2傾転度合いT2と、比較用の第1傾転度合いT1の平均値との違いが、所定値以上である場合に、警告を促すための情報が端末装置30へ通知される。これによれば、所定値を、安全を担保できる傾転度合いの最大変位等に設定できる。また、所定値は、一定値であってもよいし、バックホー10の車速の違い等に応じて、異なるように設定されてもよい。従って、判定基準となる所定値を、バックホー10の走行態様に応じて、簡単かつ適切に設定できる。
【0077】
また、上記実施形態では特に、端末装置30は、バックホー10から離間した場所に位置する。バックホー10では、位置測定部によりバックホー10の位置が測定され、自動運転制御部により、測定された位置と、端末装置30からの自動運転指示とに応じて、走行及び作業が自動運転制御される。これによれば、端末装置30にて、移動体を遠隔的に自動運転制御する場合であっても、警告を促す情報が端末装置30に送信されるため、操作者により警告を確実に確認できる。また、警告を視認した操作者により、安全を担保するために、端末装置30からバックホー10への停止指示や減速方向への車速設定を実行できる。
【0078】
[変形例]
上記実施形態の情報通知システム100は、1つの圃場Fを走行する移動体(バックホー10)に対して適用されていたが、これに代えて、複数の異なる圃場等を走行する複数の移動体に対して、適用されてもよい。この場合、複数の圃場等を走行する各移動体から、傾転度合いを1つのサーバ20に送信するようにしてもよい。この場合、サーバ20にて、複数の移動体ごとに傾転度合いの情報群を構築し、複数の移動体ごとに異常判定が実行されるようにすると、好適である。
【0079】
また、上記実施形態の情報通知システム100では、バックホー10の傾転度合いとして、ロール角AR、及び、ピッチ角APの2つ回転角が用いられているが、これに代えて、この2つのうちから1つが用いられてもよい。即ち、サーバ20にて、警告を促すための情報を通知するか否かの判定において、上記2つの回転角のうち、1つが用いられてもよい。
【0080】
また、上記実施形態の情報通知システム100では、移動体10としてバックホーが用いられているが、これに代えて、例えば、建設用のクレーン10が用いられてもよい。この場合、
図13に示すように、クレーン10は、重量物14を吊り上げ可能に構成される。なお、クレーン10において、上記実施形態の構成部位と同一・等価なものについては、同じ符号を付している。クレーン10の可動操作具13は、先端部が前側に突出するようになっている。クレーン10のワイヤ13aは、可動操作具13の先端部から、鉛直下方に延出している。ワイヤ13aの下端には、連結具13bが設けられている。連結具13bには、重量物14が連結される。
【0081】
図13に示す状態は、クレーン10が、水平面にて接地されている状態である。車体11、可動操作具13、重量物14において、重心G1,G2,G3がそれぞれ規定される。クレーン10の下部において、接地部であって前端に対応する点Kが、規定される。重心G1,G2,G3と、点Kと、をそれぞれ結ぶ線分G1-K,G2-K,G3-Kは、水平面となす角A1,A2,A3を、それぞれ形成している。また、
図13に示す状態において、線分G1-K,G2-K,G3-Kのそれぞれの長さは、距離D1,D2,D3であるものとする。可動操作具13の先端部から、重量物14の重心G3までの長さは、距離D4であるものとする。
【0082】
この場合、点Kを支点として、点Kより後側におけるモーメントm1、及び、点Kより
前側におけるモーメントm2が、それぞれ規定される。ここにおいて、車体11、可動操作具13、重量物14それぞれの質量M1,M2,M3、及び、重力加速度gを用いて、モーメントm1,m2は、下記(1)式、(2)式にてそれぞれ示される。水平面に接地するクレーン10において、m1>m2の関係となるよう、それぞれの値が設定される。これにより、クレーン10の前方にて、重量物14が吊り上げられる場合に、前側に転倒することが抑制される。
【0083】
m1=(M1)g(D1)(cos(A1)) …(1)
m2=(M2)g(D2)(cos(A2))+(M3)g(D3)(cos(A3)) …(2)
【0084】
図14に示すように、例えば、クレーン10が、前方に若干傾斜するように接地されるものとする。
図13に示す状態から、点Kを中心として、傾斜角Aだけ前方に傾転しているものとする。この場合の傾転度合いは、点Kを中心とする傾斜角Aに対応している。この場合、モーメントm1,m2は、上記(1)式、(2)式に傾斜角Aを反映させ、下記(3)式、(4)式にてそれぞれ示される。
【0085】
m1=(M1)g(D1)(cos(A1+A)) …(3)
m2=(M2)g(D2)(cos(A2-A))+(M3)g((D3)+2(D4)(sin(A/2)))(cos(A3-A)) …(4)
【0086】
図15(a)に示すように、上記(3)式によれば、モーメントm1は、傾斜角Aが大きいほど、より小さい値となる(実線を参照)。上記(4)式によれば、モーメントm2は、傾斜角Aが大きいほど、より大きい値となる(破線を参照)。モーメントm1,m2の交点に対応する傾斜角Aを、閾値Athとする。傾斜角Aが、閾値Athよりも小さい場合、m1>m2の関係となり、クレーン10が前側に転倒することが抑制される。一方、傾斜角Aが、閾値Ath以上である場合、m1≦m2の関係となり、クレーン10が前側に転倒する可能性が高くなる。即ち、閾値Athを、危険や異常の判定のための基準とすることができる。
【0087】
図15(a)に示すように、上記(4)式によれば、モーメントm2は、重量物14の質量M3が大きいほど、より大きい値となる。また、モーメントm2は、角A2が小さいほど(即ち、可動操作具13の先端部が水平に近づくほど)、より大きい値となる。従って、質量M3が大きいほど、又は、角A2が小さいほど、閾値Athがより小さい値となる。これに基づいて、
図15(b)に示すように、閾値Athと、質量M3及び角A2との関係を規定するテーブルが作成されてもよい。当該テーブルでは、質量M3が大きいほど、又は、角A2が小さいほど、閾値Athがより小さい値となるよう決定される。
【0088】
例えば、予め構築された傾転度合いの情報群として、上述のテーブルを作成しておき、クレーン10の可動操作具13の角A2、及び、重量物14の質量M3に応じて、閾値Athが決定されてもよい。傾斜角Aを、クレーン10の傾転検出装置16により検出し、決定された閾値Athと、検出された傾斜角Aとが比較されるようにしてもよい。そして、Ath>Aの関係となる場合には、警告を促すための情報を通知せず、Ath≦Aの関係となる場合には、警告を促すための情報を通知するようにしてもよい。この変形例によっても、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができ、端末装置30に警告を促すための情報を通知できる。
【0089】
今回開示された上記各実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが
、意図される。
【符号の説明】
【0090】
10…バックホー、10…クレーン、13…可動操作具、14…重量物、15…測位装置、16…傾転検出装置、17…制御装置、17a…自動運転制御部、17b…位置測定部、17c…傾転検出部、17d…情報送信部、20…サーバ、22…記憶装置、23…演算装置、23a…情報群構築部、23b…情報通知部、23c…自動運転指示部、30…端末装置、32…表示装置、100…情報通知システム、A…傾斜角、AR…ロール角、AP…ピッチ角、ARa,APa…情報群、ARas,APas…情報群、ARa1,APa1…情報群、ARa2,APa2…情報群、ARavs,APavs…平均値、Ath…閾値、DB…データベース、F…圃場、L…走行ルート、N…情報通信ネットワーク、T1…第1傾転度合い、T2…第2傾転度合い