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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161660
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】攪拌装置及び蒸着装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20231031BHJP
   B01F 27/118 20220101ALI20231031BHJP
   B01F 27/60 20220101ALI20231031BHJP
   B01F 27/808 20220101ALI20231031BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20231031BHJP
   B01F 23/60 20220101ALI20231031BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20231031BHJP
   B01F 27/232 20220101ALI20231031BHJP
【FI】
C23C14/24
B01F27/118
B01F27/60
B01F27/808
B01F27/90
B01F23/60
B01F27/112
B01F27/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072132
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】520373648
【氏名又は名称】有限会社湘南技研
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 博之
(72)【発明者】
【氏名】伊沢 頼昭
(72)【発明者】
【氏名】佐田谷 真治
(72)【発明者】
【氏名】福原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 晴邦
【テーマコード(参考)】
4G035
4G078
4K029
【Fターム(参考)】
4G035AB48
4G035AE19
4G078AA02
4G078AB01
4G078BA01
4G078BA05
4G078BA09
4G078BA11
4G078CA13
4G078DA01
4G078DA30
4G078EA01
4G078EA08
4K029AA22
4K029CA01
4K029DB05
(57)【要約】
【課題】減圧雰囲気で粉体粒子の凝集物を効果的に解砕させることができる攪拌装置と、そのような攪拌装置を備えた蒸着装置を提供する。
【解決手段】攪拌装置1は、粉体を収容する容器10と、容器10の内側に設けられ、鉛直方向を向いた第1回転軸AX1のまわりを回転する回転羽根20と、容器10の内側において回転羽根20が回転する範囲より上方の範囲において回転する1つ以上の回転体30とを有する。回転羽根20が回転する範囲は、容器10の内面10aに近接した範囲を含んでいる。回転体30の回転に伴って、容器10内の粉体に含まれた粉体粒子の凝集物が解砕される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧雰囲気で粉体を攪拌する攪拌装置であって、
前記粉体を収容する容器と、
前記容器の内側に設けられ、鉛直方向を向いた第1回転軸のまわりを回転する回転羽根と、
前記容器の内側において前記回転羽根が回転する範囲より上方の範囲において回転する1つ以上の回転体とを有し、
前記回転体が回転する範囲は、前記容器の内面に近接した範囲を含んでおり、
前記回転体の回転に伴って前記粉体に含まれた粉体粒子の凝集物が解砕される、
攪拌装置。
【請求項2】
前記回転体は、
前記内面から前記容器の内部に向かって伸びた棒状体と、
前記棒状体の表面に設けられた複数のブラシ毛と
を含み、
前記棒状体は、棒状の形状の長手方向に沿った第2回転軸のまわりを回転する、
請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記棒状体は、水平方向に伸びているとともに、鉛直方向から見て前記第1回転軸に向かって伸びている、
請求項2に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記棒状体には、1つ以上のブラシ部が設けられており、
前記ブラシ部は、前記棒状体の表面において前記第2回転軸のまわりを旋回する螺旋状の経路に沿って設けられた複数の前記ブラシ毛を含む、
請求項3に記載の攪拌装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記ブラシ部における前記螺旋状の経路は、前記棒状体と同じ向きで回転するように前記螺旋状の経路に沿って進んだ場合、前記第1回転軸側から前記容器の前記内面側へ進むように前記第2回転軸のまわりを旋回する経路である、
請求項4に記載の攪拌装置。
【請求項6】
1つの前記ブラシ部である第1ブラシ部の下を通過するときの前記回転羽根の移動方向と、前記回転羽根に面した前記第1ブラシ部の下側における前記ブラシ毛の移動方向とが逆であり、
前記第1ブラシ部における前記螺旋状の経路は、前記棒状体と同じ向きで回転するように前記螺旋状の経路に沿って進んだ場合、前記第1回転軸側から前記容器の前記内面側へ進むように前記第2回転軸のまわりを旋回する経路である、
請求項4に記載の攪拌装置。
【請求項7】
前記棒状体には、1つの前記ブラシ部である第2ブラシ部と前記第1ブラシ部とが設けられており、
鉛直方向から見て前記第1ブラシ部と前記第2ブラシ部との間に前記第1回転軸が位置している、
請求項6に記載の攪拌装置。
【請求項8】
前記第2ブラシ部の下を通過するときの前記回転羽根の移動方向と、前記回転羽根に面した前記第2ブラシ部の下側における前記ブラシ毛の移動方向とが同じであり、
前記第2ブラシ部における前記螺旋状の経路は、前記棒状体と同じ向きで回転するように前記螺旋状の経路に沿って進んだ場合、前記容器の前記内面側から前記第1回転軸側へ進むように前記第2回転軸のまわりを旋回する経路である、
請求項7に記載の攪拌装置。
【請求項9】
前記容器の前記内面は、
水平方向に広がり、鉛直方向から見て前記第1回転軸を中心とする円形の底面部と、
鉛直方向から見て前記底面部を囲み、鉛直方向へ筒状に伸びた側面部と、
前記底面部と前記側面部との間に介在し、すり鉢状に湾曲した中間部と
を含む、
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の攪拌装置。
【請求項10】
前記回転羽根は、複数の翼部を含み、
水平方向における各前記翼部の端縁の少なくとも一部は、水平方向及び垂直方向のそれぞれから見て、前記中間部が位置する範囲に含まれる、
請求項9に記載の攪拌装置。
【請求項11】
真空室と、
前記真空室内に設けられた蒸着源と、
前記真空室内に設けられた請求項1に記載の攪拌装置と
を備える蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧雰囲気で粉体を攪拌する攪拌装置および粉体を攪拌しながら蒸着を行う蒸着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体を攪拌しながら粉体表面に蒸着を行う装置では、粉体を収容した容器内で攪拌羽根を回転させながら粉体に対して蒸着を行う。下記の特許文献には、粉体を収容する容器内に設けられた回転羽根の軸部と、軸部が貫通する容器底部の孔との隙間から漏出した粉体を粉体捕獲部によって捕獲するように構成された攪拌装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6910671号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に真空中では大気中よりも粉体粒子が凝集を起こし易くなる傾向がある。また、真空中では粉体粒子の摩擦係数が大きくなるため、特許文献1に記載されるような回転羽根で粉体を攪拌しただけでは、凝集した粉体粒子を分散させ難い。すなわち、容器の中で回転羽根を回転させて容器内の粉体を攪拌すると、粉体粒子の凝集物が回転羽根の届かない容器の内面に集積してしまい、多くの凝集物が解砕されずに残存してしまう。しかも、真空中で粉体粒子の表面に金属のナノ粒子を担持させた場合、この金属のナノ粒子同士が接合することによって、粉体粒子の凝集が更に起こり易くなる。凝集物を多く含んだ状態で真空蒸着を行うと、凝集物の内部の粉体粒子に蒸着物質のプラズマ等が届かないため、粉体粒子の表面に蒸着物質を効率よく付着させることができなくなる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、減圧雰囲気で粉体粒子の凝集物を効果的に解砕させることができる攪拌装置と、そのような攪拌装置を備えた蒸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る攪拌装置は、減圧雰囲気で粉体を攪拌する攪拌装置であって、前記粉体を収容する容器と、前記容器の内側に設けられ、鉛直方向を向いた第1回転軸のまわりを回転する回転羽根と、前記容器の内側において前記回転羽根が回転する範囲より上方の範囲において回転する1つ以上の回転体とを有し、前記回転体が回転する範囲は、前記容器の内面に近接した範囲を含んでおり、前記回転体の回転に伴って前記粉体に含まれた粉体粒子の凝集物が解砕される。
【0007】
本発明の第2の態様に係る蒸着装置は、真空室と、前記真空室内に設けられた蒸着源と、前記真空室内に設けられた上記第1の態様に係る攪拌装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、減圧雰囲気で粉体粒子の凝集物を効果的に解砕させることができる攪拌装置と、そのような攪拌装置を備えた蒸着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る攪拌装置を備えた蒸着装置の構成を例示する断面図である。
図2図2は、図1に示す攪拌装置の要部を拡大した断面図である。
図3図3は、図1に示す攪拌装置の要部を鉛直方向から見た平面図である。
図4図4Aは、第1ブラシ部に対する翼部の移動方向と、第1ブラシ部の回転方向と、第1ブラシ部におけるブラシ毛の螺旋状の経路との関係を説明するための図である。図4Bは、第1ブラシ部の下を翼部が通過するときの粉体の動きを説明するための図である。
図5図5Aは、第2ブラシ部に対する翼部の移動方向と、第2ブラシ部の回転方向と、第2ブラシ部におけるブラシ毛の螺旋状の経路との関係を説明するための図である。図5Bは、第2ブラシ部の下を翼部が通過するときの粉体の動きを説明するための図である。
図6図6Aは、本実施形態に係る攪拌装置によって攪拌された粉体のサンプルの採取場所を示す図である。図6Bは、各サンプルに含まれるアルミニウムの濃度の測定結果を示す図である。
図7図7は、回転体の一変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る攪拌装置1を備えた蒸着装置100の構成を例示する断面図である。図1に示す蒸着装置100は、真空室2と、真空室2内に設けられた蒸着源3と、真空室2内に設けられた攪拌装置1とを備える。真空室2の内部は、図示しない真空ポンプによって減圧雰囲気となる。攪拌装置1は、真空室2の減圧雰囲気の中で粉体を攪拌する。蒸着源3には、蒸着装置100の蒸着方式に対応したものが用いられる。蒸着装置100の蒸着方式としては、例えば真空蒸着方式(抵抗加熱方式、電子ビーム加熱方式、アークプラズマ方式など)、スパッタリング、イオンプレーティングなどが挙げられる。蒸着装置100は、攪拌装置1によって粉体を均一に攪拌しながら蒸着源3より蒸着物質を放出させて、粉体粒子の表面に蒸着物質の薄膜やナノ粒子等を形成させる。蒸着装置100により、例えば触媒(燃料電池触媒, 排ガス触媒, 光触媒,水電解触媒等)の調製や製造を行うことができる。
【0012】
攪拌装置1は、図1に示すように、粉体を収容する容器10と、容器10の内側に設けられた回転羽根20と、容器10の内側において回転羽根20が回転する範囲よりも上方の範囲で回転する回転体30とを有する。回転羽根20は、鉛直方向(図1の縦方向)を向いた第1回転軸AX1のまわりを回転する。回転体30の回転に伴って、粉体に含まれた粉体粒子の凝集物(以下、単に「凝集物」と記す場合がある。)が解砕される。回転体30が回転する範囲は、図1に示すように、容器10の内面10aに近接した範囲を含んでいる。そのため、回転羽根20の回転により容器10の内面10a側へ集まってきた粉体中の凝集物は、回転体30に当たって解砕される。
【0013】
図1に示すように、真空室2の内部の底面には、複数本の支柱8aを介して板状の基台8が固定される。容器10は、基台8に設けられた支持部9によって下側から支持される。容器10の底部には孔が形成されており、回転羽根20に結合された回転駆動用のシャフト6がこの孔を貫通する。シャフト6は、図1の例において、第1回転軸AX1に沿って鉛直方向に伸びている。シャフト6は、軸の中心を調節するための軸接手6bを介して駆動部4の駆動軸に連結される。駆動部4は、例えばモータであり、真空室2の外側に設置される。駆動部4の駆動軸は、磁性流体シールなどの回転シール部6aを介して、真空室2の外側から内側に導入される。
【0014】
容器10に接する支持部9の上側の面には凹部が形成されており、シャフト6を回転可能に支持する軸受6cがこの凹部の中に配置される。軸受6cは、容器10の下側の外面と支持部9の凹部とによって囲まれた空間Sの内部に収容される。軸受6cは、シャフト6が貫通する孔を有した押さえ板9cによって上側から押さえられて、支持部9に固定される。容器10の孔からこぼれた粉体が軸受6cへ侵入し難くなるように、押さえ板9cの上側にはフェルト材や不織布など粉体捕獲部材9aが配置される。粉体捕獲部材9aは、シャフト6が貫通する孔を有した板状の形状を持つ。空間Sの空いた場所には、グラスウールなどの粉体捕獲部材9bが充填される。
【0015】
基台8には、回転体30を回転駆動するためのシャフト7を回転可能に支持する軸受7cが固定される。図1の例において、シャフト7は鉛直方向に伸びている。シャフト7は、軸の中心を調節するための軸接手7bを介して駆動部5の駆動軸に連結される。駆動部5は、例えばモータであり、真空室2の外側に設置される。駆動部5の駆動軸は、磁性流体シールなどの回転シール部7aを介して真空室2の外側から内側に導入される。
【0016】
図2は、図1に示す攪拌装置1の要部(容器10、回転羽根20、回転体30)を拡大した断面図である。図3は、図1に示す攪拌装置1の要部を鉛直方向から見た平面図である。
【0017】
容器10の内面10aは、図2及び図3に示すように、底面部11と側面部12と中間部13を含む。底面部11は、水平方向に広がった平面であり、鉛直方向から見て第1回転軸AX1を中心とする円形の形状を持つ。側面部12は、鉛直方向から見て底面部11を囲み、鉛直方向へ筒状に伸びている。中間部13は、底面部11と側面部12との間に介在し、すり鉢状に湾曲している。中間部13がすり鉢状に湾曲していることから、回転羽根20の回転に伴って容器10の側面部12側に集まった粉体が、中間部13の上を滑って容器10の中央側(第1回転軸AX1側)に移動し易くなる。これにより、容器10の内面10a(側面部12)における粉体の集積が抑制され易くなる。
【0018】
容器10の材質は、特に限定されないが、適度な硬度を持つステンレス鋼などの金属でもよいし、テフロン(登録商標)などの樹脂でもよい。摩擦係数の小さい粉体(例えばカーボン)の場合、粉体との摩擦による容器10の材料の混入が生じ難いため、容器10の材料は金属でもよい。また、摩擦係数の大きい粉体(例えばアルミナ、チタニア、セリアなどの酸化物)の場合は、容器10の材料の混入による粉体の特性への影響を抑えるため、容器10の材料はテフロン(登録商標)などの樹脂でもよい。
容器10の上側の開口部は、上側に向かって拡径するフード15によって囲われている。フード15によって、容器10の開口部から粉体が飛び出して周囲に散らばることを防止している。
【0019】
回転羽根20は、第1回転軸AX1から水平方向に伸びた複数の翼部21(図3の例では3つの翼部21)を含む。水平方向における翼部21の端縁21aは、水平方向から見て、中間部13と略一定の距離を隔てて対向するように湾曲している。
【0020】
図2及び図3に示すように、水平方向における翼部21の端縁21aの少なくとも一部が、水平方向及び垂直方向のそれぞれから見て、中間部13が位置する範囲に含まれている。これにより、容器10の側面部12から中間部13へ滑り落ちてきた粉体に対して翼部21の端縁21aが届くため、回転羽根20の回転に伴って側面部12側に集まった粉体が効率的に攪拌される。
【0021】
回転体30は、図2に示すように、容器10の内面10aから容器10の内部に向かって伸びた棒状体31と、棒状体31の表面に設けられた複数のブラシ毛32とを含む。棒状体31は、棒状の形状の長手方向に沿った第2回転軸AX2のまわりを回転する。これにより、容器10の内面10aに近接した範囲で複数のブラシ毛32が回転するため、容器10の内面10a側(側面部12側)へ集まってきた粉体が複数のブラシ毛32に衝突し、粉体中の凝集物が細かく解砕される。ブラシ毛32の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼などの金属でもよく、耐久性の高い樹脂などでもよい。
【0022】
棒状体31は、図2に示すように水平方向(図2の横方向)へ伸びている。また棒状体31は、図3に示すように、鉛直方向から見て、容器10の内面10a側から第1回転軸AX1に向かって伸びている。すなわち棒状体31は、鉛直方向から見て、第1回転軸AX1を中心とする円の径方向に伸びている。これにより、回転羽根20の回転に伴って上記の径方向に移動する粉体が、棒状体31の表面に設けられた複数のブラシ毛32に衝突し、凝集物が解砕され易くなる。
【0023】
図2に示すように、棒状体31の両側の端部は、容器10の側部に開けられた孔を貫通して容器10の外側にそれぞれ突き出ており、容器10の外面に設けられた2つの軸受(31a、31b)によってそれぞれ回転可能に支持される。棒状体31の一方の端部には、ギヤ7d及び7eを介してシャフト7の回転駆動力が伝達される。図1及び図2の例において、ギヤ7d及び7eは傘歯車であり、シャフト7の回転軸の方向(鉛直方向)を回転体30の回転軸の方向(水平方向)へ変換する。
【0024】
図2及び図3に示すように、棒状体31には、第1ブラシ部33a及び第2ブラシ部33bが設けられている。鉛直方向から見て、第1ブラシ部33aと第2ブラシ部33bとの間に第1回転軸AX1が位置している。第1回転軸AX1を挟んだ棒状体31の両側に第1ブラシ部33aと第2ブラシ部33bが設けられているため、容器10の内面10a側(側面部12側)へ集まってきた粉体中の凝集物が効率的に解砕される。以下、第1ブラシ部33a及び第2ブラシ部33bの各々を区別せずに「ブラシ部33」と記す場合がある。
【0025】
ブラシ部33は、複数のブラシ毛32を含む。ブラシ部33の複数のブラシ毛32は、図2及び図3に示すように、棒状体31の表面において第2回転軸AX2のまわりを旋回する螺旋状の経路に沿って設けられている。棒状体31は、例えば複数本の金属棒(ステンレス鋼の金属棒など)により形成される。複数本の金属棒の間に多数のブラシ毛32を並べて挟んだ状態で、これらの金属棒を束ねて捩ることにより、ブラシ毛32が螺旋状の経路に沿って並んだ状態となる。
【0026】
図4Aは、第1ブラシ部33aに対する翼部21の移動方向と、第1ブラシ部33aの回転方向と、第1ブラシ部33aにおけるブラシ毛32の螺旋状の経路との関係を説明するための図である。図4Bは、第1ブラシ部33aの下を翼部21が通過するときの粉体の動きを説明するための図である。
【0027】
図4Aに示す第1ブラシ部33aにおけるブラシ毛32の螺旋状の経路は、棒状体31と同じ向き(D2)で回転するように螺旋状の経路に沿って進んだ場合(図4Aにおいて模式的に表した螺旋状の経路を矢印の向きに進んだ場合)、第1回転軸AX1側から容器10の内面10a側へ(図4Aの右から左へ)進むように第2回転軸AX2のまわりを旋回する経路である。図4Aに示すような螺旋状の経路に沿ってブラシ毛32が設けられていることにより、棒状体31が方向D2へ回転したとき、第1ブラシ部33aの中に巻き込まれた粉体が容器10の内面10a側から第1回転軸AX1側へ(図4Aの左から右へ)運ばれ易くなる。これにより、容器10の内面10a側(側面部12側)へ集まってきた粉体が、容器10の中央側(第1回転軸AX1側)へ戻り易くなるため、容器10の内面10a(側面部12)における粉体の集積が抑制され易くなる。
【0028】
また図4Bに示すように、第1ブラシ部33aの下を通過するときの回転羽根20の翼部21の移動方向(D1)と、回転羽根20の翼部21に面した第1ブラシ部33aの下側におけるブラシ毛32の移動方向(D2)とが逆になっている。これにより、翼部21に押されて移動する粉体は、第1ブラシ部33aの下を翼部21が通過するとき、図4Bにおいて点線の矢印で示すように、第1ブラシ部33aのブラシ毛32に掬い上げられて第1ブラシ部33aの中に巻き込まれ易くなる。そのため、粉体中の凝集物が第1ブラシ部33aのブラシ毛32によって細かく解砕され易くなる。
【0029】
図5Aは、第2ブラシ部33bに対する翼部21の移動方向と、第2ブラシ部33bの回転方向と、第2ブラシ部33bにおけるブラシ毛32の螺旋状の経路との関係を説明するための図である。図5Bは、第2ブラシ部33bの下を翼部21が通過するときの粉体の動きを説明するための図である。
【0030】
図5Aに示す第2ブラシ部33bにおけるブラシ毛32の螺旋状の経路は、棒状体31と同じ向き(D2)で回転するように螺旋状の経路に沿って進んだ場合(図5Aにおいて模式的に表した螺旋状の経路を矢印の向きに進んだ場合)、容器10の内面10a側から第1回転軸AX1側へ(図5Aの右から左へ)進むように第2回転軸AX2のまわりを旋回する経路である。図5Aに示すような螺旋状の経路に沿ってブラシ毛32が設けられていることにより、棒状体31が方向D2へ回転したとき、第2ブラシ部33bの中に巻き込まれた粉体が第1回転軸AX1側から容器10の内面10a側へ(図5Aの左から右へ)運ばれ易くなる。
他方、図5Bに示すように、第2ブラシ部33bの下を通過するときの回転羽根20の翼部21の移動方向(D1)と、回転羽根20の翼部21に面した第2ブラシ部33bの下側におけるブラシ毛32の移動方向(D2)とが同じになっている。これにより、翼部21に押されて移動する粉体は、第2ブラシ部33bの下を翼部21が通過するとき、図5Bにおいて点線の矢印で示すように、翼部21の移動方向(D1)の先(図5Bの翼部21の右側)へ運ばれ易くなり、第2ブラシ部33bの中に巻き込まれる粉体が少なくなる。従って、第2ブラシ部33bの中に巻き込まれた粉体が第1回転軸AX1側から容器10の内面10a側へ(図5Aの左から右へ)運ばれ易くなっていても、第2ブラシ部33bの中に巻き込まれる粉体が少ないため、容器10の内面10a(側面部12)における粉体の集積が生じ難くなっている。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、容器10の内側において回転羽根20が回転する範囲よりも上方の範囲であって、容器10の内面10aに近接した範囲において回転体30が回転する。これにより、回転羽根20の回転に伴って容器10の内面10a側に集まってきた粉体の凝集物が、回転体30に当たって解砕される。従って、容器10の内面10aにおいて粉体が集積することを抑制しつつ、粉体中の凝集物を効果的に解砕することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、底面部11と側面部12との間にすり鉢状に湾曲した中間部13が設けられているため、回転羽根20の回転に伴って容器10の側面部12側に集まった粉体が、中間部13の上を滑って容器10の中央側(第1回転軸AX1側)に移動し易くなる。従って、容器10の内面10a(側面部12)における粉体の集積を抑制して、回転羽根20と回転体30による粉体の攪拌及び凝集物の解砕を効果的に行うことができる。
【0033】
<攪拌性能の確認>
攪拌装置1による攪拌性能を確認するため、50cc(13g)のチタニア粉末(エアロゾル社製、P25)と、3cc(0.7g)のアルミナ粉末(京セラ、A471)とを混ぜた混合粉体を作り、これを以下の条件で攪拌した。
回転羽根20の回転速度:100rpm
回転体30の回転速度 :150rpm
攪拌時間 :30秒
そして、この攪拌を行った後、図6Aに示す容器10内の6つの場所(上側中心部、上側中間部、上側周縁部、下側中心部、下側中間部、下側周縁部)から6つの混合粉体のサンプルSA1~SA6を採集し、各サンプルに含まれるアルミニウムの濃度をICP質量分析装置(アジレント社製、8800)によって分析した。図6Bは、各サンプル(SA1~SA6)の1mgあたりに含まれるアルミニウムの質量(μg)を示す。図6Bに示すように、6つの場所で得られたサンプルのアルミニウム濃度の平均値は15.72[μg/mg]、標準偏差は1.58[μg/mg]であった。この測定結果から、容器10の内部のほぼ全体でチタニア粉末とアルミナ粉末とが均一に混ぜ合わされていることが確認された。
【0034】
なお、上述した実施形態は一例であり、本発明はこの例に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、第2ブラシ部33b(図5A)におけるブラシ毛32の螺旋状の経路が、棒状体31の回転に伴って、第2ブラシ部33bの中に巻き込まれた粉体が第1回転軸AX1側から容器10の内面10a側へ(図5Aの左から右へ)運ばれ易くなる経路となっている。このような第2ブラシ部33bにおけるブラシ毛32の螺旋状の経路は、図7に示すように逆方向へ旋回する経路へ変更してもよい。これにより、第2ブラシ部33bにおいても、第2ブラシ部33bの中に巻き込まれた粉体が容器10の内面10a側から第1回転軸AX1側へ運ばれ易くなるため、容器10の内面10aにおける粉体の集積をより効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0036】
1…攪拌装置、2…真空室、3…蒸着源、4…駆動部、5…駆動部、6…シャフト、6a…回転シール部、6b…軸接手、6c…軸受、7…シャフト、7a…回転シール部、7b…軸接手、7c…軸受、7d,7e…ギヤ、8…基台、9…支持部、9c…押さえ板、10…容器、10a…内面、10h…孔、11…底面部、12…側面部、13…中間部、15…フード、20…回転羽根、21…翼部、21a…端縁、30…回転体、31…棒状体、31a…軸受、31b…軸受、32…ブラシ毛、33a…第1ブラシ部、33b…第2ブラシ部、100…蒸着装置、AX1…第1回転軸、AX2…第2回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7