(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161692
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】流体搬送装置のダスト除去装置およびダスト除去方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/70 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
F04D29/70 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072175
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 碧人
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 智勇
(72)【発明者】
【氏名】高木 貞治
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB26
3H130AB27
3H130AB46
3H130AC01
3H130BA48C
3H130CB01
3H130CB05
3H130DF09X
(57)【要約】
【課題】ダストを含む流体を搬送する装置の操業を停止することなく、ダストを除去できると共にダストの付着を抑制することのできる流体搬送装置のダスト除去装置およびダスト除去方法を提供すること。
【解決手段】所定箇所にダストを含む流体を搬送する流体搬送装置2に付着したダストを除去する流体搬送装置2のダスト除去装置1であって、洗浄流体をダストとは反対の電荷に帯電させる帯電装置14と、流体搬送装置2にダストとは反対の電荷に帯電された洗浄流体を供給する供給部17とを備え、ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を流体搬送装置2に供給することによって、流体搬送装置2をダストと同じ電荷に帯電させて流体搬送装置2とダストとの間に電気的な斥力を生じさせ、斥力によって流体搬送装置2からダストを除去するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定箇所にダストを含む流体を搬送する流体搬送装置に付着した前記ダストを除去する流体搬送装置のダスト除去装置であって、
洗浄流体を前記ダストとは反対の電荷に帯電させる帯電装置と、
前記流体搬送装置に前記ダストとは反対の電荷に帯電された洗浄流体を供給する供給部とを備え、
前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を前記流体搬送装置に供給することによって、前記流体搬送装置を前記ダストと同じ電荷に帯電させて前記流体搬送装置と前記ダストとの間に電気的な斥力を生じさせ、前記斥力によって前記流体搬送装置から前記ダストを除去するように構成されている流体搬送装置のダスト除去装置。
【請求項2】
前記流体搬送装置は、圧縮室内に収容された回転体の回転によって前記圧縮室内に前記流体を吸引し、かつ、前記回転体の回転によって前記流体に生じる遠心力によって前記流体の圧力を増大させて前記圧縮室から前記所定箇所に向けて前記流体を搬送するように構成されており、
前記回転体に前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を供給することによって、前記回転体を前記ダストと同じ電荷に帯電させて前記回転体と前記ダストとの間に電気的な斥力を生じさせ、前記斥力によって前記回転体から前記ダストを除去するように構成されている、請求項1に記載の流体搬送装置のダスト除去装置。
【請求項3】
前記供給部は、前記洗浄流体の供給源から前記流体搬送装置に向けて前記洗浄流体を流動させる洗浄配管と、前記洗浄配管の先端部に設けられていて前記流体搬送装置に対して前記洗浄流体を噴射するノズルとを有し、
前記洗浄配管に前記帯電装置が設けられており、
前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を前記ノズルから前記流体搬送装置に噴射するように構成されている、請求項1に記載の流体搬送装置のダスト除去装置。
【請求項4】
前記帯電装置は、前記洗浄流体に交流電流を印加して前記ダストとは反対の電荷に帯電させるように構成されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の流体搬送装置のダスト除去装置。
【請求項5】
前記洗浄配管は、前記流体搬送装置における発熱する発熱部に対して冷却用の流体を供給する冷却配管から分岐して構成されており、
前記冷却用の流体を前記洗浄流体として前記流体搬送装置に供給するように構成されている、請求項3に記載の流体搬送装置のダスト除去装置。
【請求項6】
所定箇所にダストを含む流体を搬送する流体搬送装置に付着した前記ダストを除去する流体搬送装置のダスト除去方法であって、
前記流体搬送装置の操業時に、前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を前記流体搬送装置に供給することによって、前記流体搬送装置を前記ダストと同じ電荷に帯電させて、前記流体搬送装置と前記ダストとの間に電気的な斥力を生じさせ、前記斥力によって前記流体搬送装置から前記ダストを除去する、流体搬送装置のダスト除去方法。
【請求項7】
前記洗浄流体をノズルから噴射させ、前記流体搬送装置に付着した前記ダストに前記ノズルから噴射された前記洗浄流体を衝突させることによる衝撃力と、前記斥力と、によって前記流体搬送装置から前記ダストを除去する、請求項6に記載の流体搬送装置のダスト除去方法。
【請求項8】
前記洗浄流体に交流電流を印加して前記洗浄流体を前記ダストとは反対の電荷に帯電させる、請求項6または7に記載の流体搬送装置のダスト除去方法。
【請求項9】
流体搬送装置は、圧縮室内に収容された回転体の回転によって前記圧縮室内に前記流体を吸引し、かつ、前記回転体の回転によって前記流体に生じる遠心力によって前記流体の圧力を増大させて前記圧縮室から前記所定箇所に向けて前記流体を搬送するように構成されており、
前記回転体に前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を供給することによって、前記回転体を前記ダストと同じ電荷に帯電させて前記回転体と前記ダストとの間に電気的な斥力を生じさせ、前記斥力によって前記回転体から前記ダストを除去する、請求項6に記載の流体搬送装置のダスト除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の箇所にダストを含む流体を搬送する流体搬送装置に付着あるいは堆積したダストを除去する装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガスなどの副生ガスや都市ガスなどを製鉄所内にある加熱炉や発電所のボイラ等に搬送して気体燃料として使用している。また、製鋼工程の脱炭に酸素を、その他の設備の駆動源等で空気を使用している。そのため、製鉄所内においては、上述した気体燃料や酸素、空気などの供給源と、加熱炉や発電所のボイラ等の被供給部とがパイプラインを介して接続されており、そのパイプラインの途中には、上述した供給源から被供給部に各種のガスを搬送する流体搬送装置が設けられている。
【0003】
上述した副生ガスは製銑・製鋼工程や石炭の乾留工程などで生じるため、精製された都市ガスと比較して多量のダストを含んでいる場合がある。そのダストは、副生ガスの種類つまり副生ガスの発生する工程に応じて異なっており、例えば、石炭粉、鉄鉱石粉、鉄粉などを挙げることができる。これらのダストは、副生ガスの搬送の過程で流体搬送装置に付着し、また、堆積してしまう可能性がある。
【0004】
流体搬送装置としては、一例として、ファンやブロワーなどの送風機、あるいは、遠心式や軸流式などのターボ式と称される圧縮機を挙げることができ、この種の流体搬送装置では、インペラ等の回転体の回転によって副生ガスを被供給部に向けて搬送するように構成されている。上記の回転体にダストが付着して堆積すると、回転体の回転中心軸線に対して回転体の重心が偏心して異常振動が生じたり、それが要因となって流体搬送装置が故障あるいは破損したりする可能性がある。また、ダストに腐食性物質が含まれている場合には、腐食性物質によって流体搬送装置が腐食してしまう可能性がある。このように、副生ガスに含まれるダストは、流体搬送装置や製鉄所全体の安定操業の阻害要因となる可能性がある。そのため、従来では、流体搬送装置の操業を一旦停止した状態で、流体搬送装置におけるダストの堆積部分を開放してダストを除去していた。しかしながら、このようなダストの除去方法では、流体搬送装置の操業を一旦停止せざるを得ないため、製鉄所の全体として稼働率や操業率が低下するなど、製鉄所の全体への悪影響が大きくなってしまう。そこで、流体搬送装置の操業を停止することなく、流体搬送装置に付着堆積したダストを除去する方法が、従来、種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、副生ガスを搬送するガス管内に堆積したダストに蒸気を吹き付けて前記ダストを除去する堆積物の除去方法が記載されている。具体的には、ガス管の内部に蒸気を流動させる蒸気配管を配置し、蒸気配管の先端部に取り付けたノズルからガス配管内のダストに蒸気を吹き付けるように構成されている。こうすることによって、蒸気の熱によってダストを柔らかくし、また、ダストに蒸気が衝突することによる衝撃力によってダストを細かくして吹き飛ばすようになっている。特許文献2には、ガス圧縮機(以下、圧縮機と記す。)の吐出圧でタンク内の洗浄液を加圧し、その加圧された洗浄液を圧縮機の吸込側に設けられたノズルから圧縮機の羽根車に吹き付けてダストを除去する方法が記載されている。さらに、特許文献3には、タービンの動翼の表面を平滑化処理することによって、動翼の表面に対するダストの付着の低減を図る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-190356号公報
【特許文献2】特開平4-334775号公報
【特許文献3】特開2018-193998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したダストは正に帯電する傾向があり、当該ダストが付着する部分は、静電誘導によってダストとは反対の負に帯電することが知られている。つまり、ダストは上述したダストが付着する部分に対してクーロン力によって付着し、また堆積する。したがって、特許文献1に記載の方法では、ダストに蒸気が衝突した際の衝撃力がクーロン力に満たない場合には、ダストの除去が困難になる可能性がある。また、クーロン力以上に衝撃力を増大させるためには、蒸気を圧送する装置を大型化せざるを得ず、その結果、蒸気を圧送する装置の設置スペースや設備コストが増大してしまう。
【0008】
特許文献2に記載されている方法では、圧縮機の周辺に洗浄水の昇圧設備である加圧タンクを設置する必要があり、圧縮機の周辺に加圧タンクの設置スペースを確保できない場合には、加圧タンクの設置が困難になる可能性がある。付言すれば、上述した圧縮機の吐出圧が洗浄水の加圧に必要な圧力に満たない場合は、吐出圧を増大する加圧設備を追加で設置しなければならず、設置スペースや設備コストが増大して、加圧タンクおよび加圧設備の設置が更に困難になる可能性がある。また、圧縮機から吐出されたガスによってタンク内の洗浄水を昇圧している為、前記ガスにダストが含まれていると、洗浄水が汚染されてしまい、当該汚染された洗浄水の使用によって圧縮機のダスト付着を悪化させてしまう可能性がある。
【0009】
特許文献3に記載された方法では、動翼にダストが繰り返し衝突することによって動翼の表面が粗くなると、動翼の表面にダストが付着し、また、堆積してしまう可能性がある。動翼にダストが付着し、また、堆積すると、動翼の回転中心軸線に対して重心が偏心して異常振動が生じる可能性がある。したがって、動翼にダストが付着して異常振動が生じる前に、設備の操業を一旦停止してダストを除去する必要がある。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ダストを含む流体を搬送する装置の操業を停止することなく、ダストを除去できると共にダストの付着を抑制することのできる流体搬送装置のダスト除去装置およびダスト除去方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために、
[1]所定箇所にダストを含む流体を搬送する流体搬送装置に付着した前記ダストを除去する流体搬送装置のダスト除去装置であって、洗浄流体を前記ダストとは反対の電荷に帯電させる帯電装置と、前記流体搬送装置に前記ダストとは反対の電荷に帯電された洗浄流体を供給する供給部とを備え、前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を前記流体搬送装置に供給することによって、前記流体搬送装置を前記ダストと同じ電荷に帯電させて前記流体搬送装置と前記ダストとの間に電気的な斥力を生じさせ、前記斥力によって前記流体搬送装置から前記ダストを除去するように構成されている流体搬送装置のダスト除去装置である。
[2]前記流体搬送装置は、圧縮室内に収容された回転体の回転によって前記圧縮室内に前記流体を吸引し、かつ、前記回転体の回転によって前記流体に生じる遠心力によって前記流体の圧力を増大させて前記圧縮室から前記所定箇所に向けて前記流体を搬送するように構成されており、前記回転体に前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を供給することによって、前記回転体を前記ダストと同じ電荷に帯電させて前記回転体と前記ダストとの間に電気的な斥力を生じさせ、前記斥力によって前記回転体から前記ダストを除去するように構成されている、上記の[1]に記載の流体搬送装置のダスト除去装置である。
[3]前記供給部は、前記洗浄流体の供給源から前記流体搬送装置に向けて前記洗浄流体を流動させる洗浄配管と、前記洗浄配管の先端部に設けられていて前記流体搬送装置に対して前記洗浄流体を噴射するノズルとを有し、前記洗浄配管に前記帯電装置が設けられており、前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を前記ノズルから前記流体搬送装置に噴射するように構成されている、上記の[1]に記載の流体搬送装置のダスト除去装置である。
[4]前記帯電装置は、前記洗浄流体に交流電流を印加して前記ダストとは反対の電荷に帯電させるように構成されている、上記の[1]ないし[3]のいずれか一項に記載の流体搬送装置のダスト除去装置である。
[5]前記洗浄配管は、前記流体搬送装置における発熱する発熱部に対して冷却用の流体を供給する冷却配管から分岐して構成されており、前記冷却用の流体を前記洗浄流体として前記流体搬送装置に供給するように構成されている、上記の[3]に記載の流体搬送装置のダスト除去装置である。
[6]所定箇所にダストを含む流体を搬送する流体搬送装置に付着した前記ダストを除去する流体搬送装置のダスト除去方法であって、前記流体搬送装置の操業時に、前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を前記流体搬送装置に供給することによって、前記流体搬送装置を前記ダストと同じ電荷に帯電させて、前記流体搬送装置と前記ダストとの間に電気的な斥力を生じさせ、前記斥力によって前記流体搬送装置から前記ダストを除去する、流体搬送装置のダスト除去方法である。
[7]前記洗浄流体をノズルから噴射させ、前記流体搬送装置に付着した前記ダストに前記ノズルから噴射された前記洗浄流体を衝突させることによる衝撃力と、前記斥力と、によって前記流体搬送装置から前記ダストを除去する、上記の[6]に記載の流体搬送装置のダスト除去方法である。
[8]前記洗浄流体に交流電流を印加して前記洗浄流体を前記ダストとは反対の電荷に帯電させる、上記の[6]または[7]に記載の流体搬送装置のダスト除去方法である。
[9]流体搬送装置は、圧縮室内に収容された回転体の回転によって前記圧縮室内に前記流体を吸引し、かつ、前記回転体の回転によって前記流体に生じる遠心力によって前記流体の圧力を増大させて前記圧縮室から前記所定箇所に向けて前記流体を搬送するように構成されており、前記回転体に前記ダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を供給することによって、前記回転体を前記ダストと同じ電荷に帯電させて前記回転体と前記ダストとの間に電気的な斥力を生じさせ、前記斥力によって前記回転体から前記ダストを除去する、上記の[6]に記載の流体搬送装置のダスト除去方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、帯電装置においてダストとは反対の電荷に洗浄流体を帯電させ、その洗浄流体は供給部によって流体搬送装置に供給されるように構成されている。こうすることにより、流体搬送装置はダストとは反対の電荷に帯電された洗浄流体に曝されることになり、静電誘導によってダストと同じ電荷に帯電させられる。その結果、流体搬送装置とダストとの間には、電気的な斥力が生じ、その斥力によって流体搬送装置にダストが付着しにくくなり、また、斥力によって流体搬送装置からダストを除去することができる。このように、本願発明によれば、流体搬送装置の操業を停止することがなく、ダストを除去することができ、また、ダストの付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体搬送装置のダスト除去装置の一例を示す図である。
【
図2】インペラの構成、および、インペラに対して工水を噴射する箇所の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るダスト除去装置によるダストの除去を説明するための図である。
【
図4】流体搬送装置に本発明の実施形態に係るダスト除去装置を適用していない場合における流体搬送装置の状態を示す図面代用写真である。
【
図5】流体搬送装置に本発明の実施形態に係るダスト除去装置を適用していない場合における流体搬送装置の状態を示す他の図面代用写真である。
【
図6】流体搬送装置に本発明の実施形態に係るダスト除去装置を適用し、その後の半年間に亘って流体搬送装置を連続的に運転した場合における流体搬送装置の状態を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る流体搬送装置のダスト除去装置の一例を示す図である。
図1に示すダスト除去装置1は、所定箇所にダストを含む流体を搬送する流体搬送装置2に付着し、また、堆積したダストを除去すると共に、流体搬送装置2にダストを付着しにくくするものである。具体的に説明すると、上述した流体は、一例として、製鉄所内の製銑・製鋼工程や石炭の乾留工程などで生じるコークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガスなどの副生ガスを挙げることができる。それらの副生ガスは、製銑・製鋼工程や石炭の乾留工程などで生じるため、副生ガスの発生する工程に応じて石炭粉、鉄鉱石粉、鉄粉などをダストとして不可避的に含んでいる。副生ガスは当該副生ガスの発生源からパイプラインを介して製鉄所内の加熱炉や発電所のボイラ(それぞれ図示せず)に搬送されて気体燃料として使用される。なお、加熱炉や発電所のボイラなどが、上述した目標とする箇所、および、本発明の実施形態における所定箇所に相当している。
【0015】
流体搬送装置2はパイプラインの途中に設けられていて、加熱炉や発電所のボイラなどに向けて副生ガスを搬送するように構成されている。流体搬送装置2は一例として、ファンやブロワーなどの送風機、あるいは圧縮機などであってよい。
図1に示す例では、流体搬送装置2は、モータ3と、モータ3の図示しないロータに連結された回転軸4と、当該回転軸4を介してモータ3に連結された回転体と、回転体を収容し、回転体の回転によって副生ガスを吸引しかつ副生ガスの圧力を増大する圧縮室5とを有している。回転体はインペラ6であって、インペラ6の半径方向で中心部分に設けられたハブから半径方向で外側に向かって延びる複数のブレードを有している。なお、インペラ6の具体的な構成については後述する。
【0016】
圧縮室5にインペラ6の回転によって当該圧縮室5内に未圧縮の副生ガスを吸い込む吸気口7と、圧縮した副生ガスを外部に吐出する吐出口8とが設けられている。すなわち、ここに示す流体搬送装置2はモータ3で発生させたトルクによってインペラ6を回転させ、インペラ6の回転によって吸気口7から圧縮室5内に未圧縮の副生ガスを吸い込み、その吸い込んだ未圧縮の副生ガスをインペラ6の回転に伴う遠心力によって圧縮し、圧縮した副生ガスを吐出口8から加熱炉や発電所のボイラなどに向けて吐出するようになっている。また、詳細は図示しないが、ダスト除去装置1と流体搬送装置2とは、製鉄所内の設備あるいは支柱などの構造体に固定されており、回転軸4は当該構造体に軸受9を介して支持されている。
【0017】
流体搬送装置2の圧縮室5は図示しないディフューザーを備えていてもよい。ディフューザーは遠心力によってインペラ6から流出した副生ガスの速度を低減して圧力に変換するように構成されたものであり、このようなディフューザーが設けられている場合には、副生ガスの圧力を更に増大させることができる。
【0018】
流体搬送装置2には、相互に摩擦接触する箇所や、軸受9などの発熱部が多数存在し、それらの発熱部に対して冷却用の流体を供給して冷却するように構成されている。また、発熱部に対しては、冷却のために必要とする量の冷却用の流体が供給されればよい。そのため、冷却用の流体は一例として、スケールと称される微粒子を不可避的に含んでいる工業用水(以下、工水と記す。)であってよい。
【0019】
発熱部を冷却する構成について説明すると、
図1に示す例では、工水の供給源と軸受9とが冷却配管10を介して互いに連通されており、冷却配管10の途中に送水ポンプPが設けられている。軸受9に対して送水ポンプPから吐出した工水を供給するように構成されている。また、冷却配管10における工水の流動方向で流体搬送装置2の上流側と下流側とのそれぞれに冷却用開閉弁11が設けられている。それらの冷却用開閉弁11を開閉することによって軸受9に対して工水を供給し、また、工水の供給を停止するようになっている。さらに、冷却用開閉弁11の開度を変更することによって工水の供給量を変更できるようになっている。
【0020】
副生ガスは、上述したように、ダストを含んでいる場合があり、その場合には、インペラ6はダストに曝され、クーロン力によってインペラ6にダストが付着したり、堆積したりする可能性がある。そこで、本発明の実施形態では、インペラ6に対するダストの付着を抑制し、また、付着したダストを除去するため、インペラ6に対してダストとは反対の電荷に帯電させた洗浄流体を供給するように構成されている。具体的には、冷却配管10から分岐して洗浄配管12が設けられており、洗浄配管12の先端部はインペラ6に向かって延びている。つまり、本発明の実施形態では、インペラ6に対して工水を供給するように構成されている。
【0021】
洗浄配管12における工水の流動方向で洗浄配管12の最も上流側に、具体的には、冷却配管10からの分岐部分に隣接して洗浄用開閉弁13が設けられている。洗浄用開閉弁13を開閉することによってインペラ6に対して工水を供給し、また、工水の供給を停止できるようになっている。さらに、洗浄用開閉弁13の開度を変更することによって、インペラ6に対する工水の供給量を変更できるようになっている。
【0022】
洗浄配管12における工水の流動方向で洗浄用開閉弁13の下流側に、インペラ6に対して供給する工水をダストとは反対の電荷に帯電させる帯電装置14が設けられている。帯電装置14は工水中のスケールをダストとは反対の電荷に帯電させるように構成されている。具体的には、洗浄配管12の外周面に巻き付けられたコイル部15と、コイル部15に対して印加する交流電流の電流値、電圧値、周波数を変更可能に構成された電源部16とを有している。つまり、コイル部15に対して印加する交流電流の電流値、電圧値、周波数を変更することによって工水中のスケールの帯電量を変更するようになっている。
【0023】
また、インペラ6におけるダストの付着箇所のそれぞれに対して工水を供給するために、洗浄配管12における工水の流動方向で帯電装置14の下流側において、
図1に示す例では、洗浄配管12は3つに分岐されている。各分岐管12A,12B,12Cの先端部のそれぞれにノズル17が設けられており、インペラ6に対して各ノズル17から工水を噴射するようになっている。なお、上述したノズル17、および、当該ノズル17に対して工水を供給する洗浄配管12や冷却配管10、送水ポンプP、工水の供給源などが本発明の実施形態における供給部に相当している。
【0024】
図2は、インペラ6の構成、および、インペラ6に対して工水を噴射する箇所の一例を示す図である。先ず、インペラ6の構成について説明すると、
図2に示すインペラ6はクローズタイプのインペラ6であって、回転軸4にトルク伝達可能に連結されるハブ18と、半径方向でハブ18の外側に配置された複数のブレード19と、半径方向でブレード19の外側部分を覆うリング状の第1シュラウド20とを備えている。第1シュラウド20における内側の縁部分は、外側の縁部分よりも軸線方向でハブ18から離隔しており、かつ、第1シュラウド20の外径は前記外側の縁部分から前記内側の縁部分に向けて滑らかに湾曲するように次第に低減している。つまり、第1シュラウド20の外周面21は、滑らかに湾曲したテーパー状を成している。軸線方向でハブ18を挟んで第1シュラウド20の反対側に、円盤状の第2シュラウド22が配置されており、それら2つのシュラウド20,22同士の間に複数のブレード19が配置されている。副生ガスは上述した2つのシュラウド20,22とブレード19とによって区画された空間(以下、インペラ室と称する。)を遠心力によって半径方向で外側に向かって流動する。なお、インペラ6は耐久性の点で金属材料によって構成されていることが好ましい。
【0025】
第1シュラウド20の内側部分は副生ガスを吸い込む開口部23となっており、半径方向で複数のブレード19の内側部分が開口部23から臨んでいる。その開口部23から臨む複数のブレード19に対して第1分岐管12Aの先端部に取り付けられたノズル17から工水を噴射するようになっている。また、第1シュラウド20における湾曲した外周面21に対して第2分岐管12Bの先端部に取り付けられたノズル17から工水を噴射するようになっている。さらに、半径方向でインペラ6の外周部分に対して、つまり、上述したインペラ室に対して、半径方向で外側から第3分岐管12Cの先端部に取り付けられたノズル17によって工水を噴射するようになっている。
【0026】
また、圧縮室5内に工水が滞留することを抑制するために、
図1に示すように、圧縮室5の下部に排水管24が連通されており、排水管24を介してドレーンに工水を排出するように構成されている。排水管24に排水用開閉弁25が設けられており、排水用開閉弁25を開閉することによって工水の排出および停止、また、工水の排出量をコントロールできるようになっている。
【0027】
上述した本発明の実施形態に係る流体搬送装置2のダスト除去装置1の作用について説明する。モータ3で発生させたトルクによって流体搬送装置2のインペラ6が回転すると、それに伴ってインペラ室が回転する。これによりインペラ室の内部に滞留している空気を含む副生ガスに遠心力が生じ、当該遠心力によってインペラ室内の空気を含む副生ガスが半径方向で外側に流動し、また、吐出口8から流体搬送装置2の外部に吐出される。これに伴って、インペラ室内に吸気口7およびインペラ6の開口部23を介して副生ガスが吸引され、その副生ガスはインペラ6の回転に伴う遠心力によって半径方向で外側に向かってインペラ室内を流動し、吐出口8から流体搬送装置2の外部に吐出される。流体搬送装置2では、このような副生ガスの流入、および、流出が連続的に生じ、遠心力によって副生ガスの流速および圧力が増大させられ、加熱炉や発電所のボイラなどにパイプラインを介して圧送される。
【0028】
流体搬送装置2の上述した操業と同時に、あるいは、流体搬送装置2の操業よりも前の時点で帯電装置14が起動され、洗浄配管12内を流動する工水中のスケールがダストとは反対の電荷に帯電させられる。ここで、ダスト、および、スケールが帯びる電荷について説明すると、ダスト、および、スケールは主として正に帯電することが従来知られている。そのため、帯電装置14は、工水中のスケールをダストとは反対の負に帯電させるように、コイル部15に対して予め設定した電流値、電圧値、周波数の交流電流を印加するようになっている。そのコイル部15に対して印加する交流電流の電流値、電圧値、周波数は、実験あるいは文献などにより予め求めることができる。
【0029】
こうして負に帯電されたスケールを含む工水は、洗浄配管12から各分岐管12A,12B,12Cを流動して各ノズル17からインペラ6に向かって噴射される。インペラ6は上記の工水に曝されると、静電誘導によってスケールが帯びる負電荷とは反対の電荷である正に帯電させられる。これに対して、副生ガスに含まれるダストは正電荷を帯びているため、インペラ6とダストとの間に電気的な斥力が生じ、その斥力によってインペラ6に対するダストの付着を防止もしくは抑制できる。また、インペラ6にある程度のダストが既に付着しているとしても、インペラ6におけるダストの付着していない箇所が上記の工水に曝されると、静電誘導によって当該箇所は正に帯電する。また、インペラ6は金属材料によって構成されるから、全体として正に帯電し、インペラ6とダストとの間に電気的な斥力が生じる。さらに、本発明の実施形態では、噴流の状態でインペラ6に対して工水を供給するから、インペラ6に工水が衝突する際の衝撃力と上記の電気的な斥力とによってインペラ6からダストを除去することができる。
図3はその状態を示している。
【0030】
したがって、本発明の実施形態によれば、流体搬送装置2の操業を停止することなく、インペラ6に付着あるいは堆積したダストを除去できると共に、インペラ6に対するダストの付着を防止もしくは抑制することができる。そのため、インペラ6にダストが付着あるいは堆積してインペラ6の回転中心軸線に対して、ダストを含むインペラ6の重心が偏心してしまうことや、それによって、インペラ6の回転に異常振動が生じて流体搬送装置2が故障あるいは損傷するなどの不具合の発生を防止もしくは抑制することができる。ひいては、製鉄所の全体として安定操業に資することができる。また、ダストは工水と共に排水管24を介してドレーンに排出されるから、流体搬送装置2内に留まることはない。さらに、本発明の実施形態では、冷却配管10から洗浄配管12を分岐させて、インペラ6に工水を送水するため、工水の送水圧を有効に利用することができ、つまり、インペラ6を洗浄する洗浄圧(衝撃力)を確保することができる。また、冷却配管10を有効に利用するから、洗浄配管12の設置長さを可及的に短くすることができ、洗浄配管12の設置に係るコストを低減することができる。
【0031】
(実施例)
次に、本発明の実施形態に係る流体搬送装置2のダスト除去装置1の効果を確認するために行った実施例について説明する。ここに記す実施例は、転炉ガスを圧送する遠心式の流体搬送装置に対して、本発明の実施形態に係るダスト除去装置1を適用した例である。その流体搬送装置は上述した
図1に示す流体搬送装置2とほぼ同様の構成を有している。具体的には、実施例で使用した流体搬送装置は、流量51,000Nm
3/hの転炉ガスを吐出圧15.8kPaにまで昇圧することのできる流体搬送装置である。
【0032】
上記の流体搬送装置のインペラに対して、
図2に示す例と同様に、負に帯電させた工水をノズルから噴射した。すなわち、インペラに対して工水を噴射する箇所は、
図2に示す例と同様に3箇所であり、その3箇所はインペラの開閉部から臨む半径方向でブレードの内側部分と、シュラウドのテーパー状の外面面と、ブレードの外側部分とであって、当該ブレードの外側部分に対しては半径方向で外側から工水を噴射した。また、上述した実施形態と同様に構成された帯電装置によって工水に含まれるスケールを負に帯電させた。
【0033】
転炉ガスを圧送する流体搬送装置に対して、本発明の実施形態に係るダスト除去装置1を適用していない場合における流体搬送装置の状態を、
図4および
図5に図面代用写真で示してある。転炉ガスは多量のダストを含んでいるため、流体搬送装置に対してダストの付着を抑制する対策を何ら施さないで流体搬送装置の運転を継続すると、
図4および
図5に示すように、インペラに多量のダストが付着することが確認された。このような状態で、流体搬送装置の運転を継続すると、流体搬送装置の操業振動数が悪化してしまうため、つまり異常振動が生じるため、従来では、流体搬送装置の操業を開始してから約20日ごとに流体搬送装置を一旦停止し、ダストを除去する洗浄作業を実施していた。
【0034】
上記の流体搬送装置に本発明の実施形態に係るダスト除去装置1を適用した後、前記流体搬送装置を約半年間に亘って連続的に運転した。約半年間に亘って流体搬送装置の振動数に異常は特には見当たらなかった。そこで、流体搬送装置の内部を確認した。
図6は、上記の流体搬送装置に本発明の実施形態に係るダスト除去装置1を適用し、その後の半年間に亘って流体搬送装置を連続的に運転した場合における流体搬送装置の状態を示す図面代用写真である。
図6に示すように、インペラに対してダスト付着は確認されなかった。この結果から、本発明の実施形態に係るダスト除去装置1が十分に機能しており、流体搬送装置におけるダストの除去、および、ダストの付着を防止もしくは抑制する対策として、流体搬送装置に対する本発明の実施形態に係るダスト除去装置1の設置の有効性が確認できた。
【符号の説明】
【0035】
1 ダスト除去装置
2 流体搬送装置
3 モータ
4 回転軸
5 圧縮室
6 インペラ
7 吸気口
8 吐出口
9 軸受
10 冷却配管
11,13,25 開閉弁
12 洗浄配管
12A,12B,12C 洗浄配管の分岐管
14 帯電装置
15 コイル部
16 電源部
17 ノズル
24 排水管
P 送水ポンプ