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  • 特開-副振動板、およびスピーカ 図1
  • 特開-副振動板、およびスピーカ 図2
  • 特開-副振動板、およびスピーカ 図3
  • 特開-副振動板、およびスピーカ 図4
  • 特開-副振動板、およびスピーカ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161699
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】副振動板、およびスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/12 20060101AFI20231031BHJP
   H04R 1/24 20060101ALI20231031BHJP
   H04R 9/06 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H04R7/12 K
H04R1/24 B
H04R9/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072190
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 義孝
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】和泉 勇毅
【テーマコード(参考)】
5D012
5D016
【Fターム(参考)】
5D012BA09
5D012BB01
5D012BB03
5D012BB04
5D012CA04
5D012CA14
5D012DA02
5D012FA02
5D012GA01
5D016AA09
5D016EC01
5D016EC22
5D016FA02
5D016GA01
(57)【要約】
【課題】スピーカの高音特性を向上させる。
【解決手段】スピーカ100に用いられる副振動板150であって、スピーカ100の音の放出方向に向かって開口面積が大きくなる傾斜部152と、傾斜部152の先端縁から放出方向に直交する方向に沿って外側に向かって直線的に延在する環状の縁部153と、を備える副振動板150。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカに用いられる副振動板であって、
前記スピーカの音の放出方向に向かって開口面積が大きくなる傾斜部と、
前記傾斜部の先端縁から放出方向に直交する方向に沿って外側に向かって直線的に延在する環状の縁部と、
を備える副振動板。
【請求項2】
前記傾斜部と前記縁部とは屈曲部を介して屈曲しており、屈曲部から前記縁部の先端までの長さは1mm以上、8mm以下、または前記傾斜部の最大口径の1%以上、20%以下の範囲内である
請求項1に記載の副振動板。
【請求項3】
前記縁部は、前記傾斜部よりも高密度である
請求項1または2に記載の副振動板。
【請求項4】
前記縁部は、前記傾斜部よりも厚さが薄い
請求項3に記載の副振動板。
【請求項5】
前記縁部は、硬化剤が付着している
請求項3に記載の副振動板。
【請求項6】
放出方向において、前記傾斜部の先端部の曲率半径は、基端部の曲率半径より長い
請求項1または2に記載の副振動板。
【請求項7】
主振動板と、
磁気回路と、
前記磁気回路、および前記主振動板を保持するフレームと、
前記主振動板に一端部が結合されるとともに、他端部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されるボイスコイル体と、
音の放出方向において、前記主振動板の前方に配置される副振動板と、を備え、
前記副振動板は、
放出方向に向かって開口面積が大きくなる傾斜部と、
前記傾斜部の先端縁から放出方向に交差する方向の外側に向かって直線的に延在する環状の縁部と、を備える
スピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種音響機器や映像機器等に使用される副振動板、これを用いたスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、振動板の中央に副振動板が配置されたスピーカが存在している。この副振動板は、高域再生を補助することができ、スピーカの高域の周波数特性を伸ばす役割をする部品である。また、副振動板は、ボイスコイル体を封止するダストキャップとしても機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1-057885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の副振動板を備えたスピーカでは可聴領域の上限に至るまでに、高域特性が徐々に落ちるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、音圧周波数特性の高域特性の低下を抑制しうる副振動板、および副振動板を備えたスピーカの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の1つである副振動板は、スピーカに用いられる副振動板であって、前記スピーカの音の放出方向に向かって開口面積が大きくなる傾斜部と、前記傾斜部の先端縁から放出方向に直交する方向に沿って外側に向かって直線的に延在する環状の縁部と、を備える。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本開示にかかるスピーカは、主振動板と、磁気回路と、前記磁気回路、および前記主振動板を保持するフレームと、前記スピーカ用主振動板に一端部が結合されるとともに、他端部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されるボイスコイル体と、音の放出方向において、前記主振動板の前方に配置される副振動板と、を備え、前記副振動板は、放出方向に向かって開口面積が大きくなる傾斜部と、前記傾斜部の先端縁から放出方向に交差する方向の外側に向かって直線的に延在する環状の縁部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の構成により、スピーカの音圧周波数特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施の形態に係るスピーカの断面を示した断面図である。
図2】本開示の一実施の形態に係る副振動板を示した断面図である。
図3】実施の形態に係る主振動板、および副振動板を示した平面図である。
図4】実施の形態に係るスピーカを備えた電子機器の外観を示した図である。
図5】実施の形態に係るスピーカを備えた移動体を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示に係る副振動板、およびスピーカの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示に係る副振動板、およびスピーカの一例を示したものに過ぎない。従って本開示は、以下の実施の形態を参考に請求の範囲の文言によって範囲が画定されるものであり、以下の実施の形態のみに限定されるものではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本開示の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0011】
また、図面は、本開示を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本開示の一実施の形態に係るスピーカの断面を示した断面図である。図2は、本開示の一実施の形態に係る副振動板を示した断面図である。図3は、実施の形態に係る主振動板、および副振動板を示した平面図である。スピーカ100は、入力された電気信号を音響に変換する電気音響変換器であって、主振動板110と、磁気回路120と、フレーム130と、ボイスコイル体140と、副振動板150と、を備えている。本実施の形態の場合、スピーカ100は、ダンパー160を備えている。
【0013】
主振動板110は、ボイスコイル体140の往復動(図中Z軸方向)に伴って振動し、音を発生させる板状、または膜状の部材である。主振動板110の形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、円錐台形状、いわゆるコーン形状である。主振動板110は、音の放出方向(図中Z+方向)に向かって口径が広がるように配置され、口径の大きい側の端部は、エッジ111を介してフレーム130に連結され、口径の小さい側の端部は、ボイスコイル体140の外周面に連結されている。
【0014】
磁気回路120は、着磁された永久磁石である円柱状のマグネット121と、マグネット121の上部に取り付けられた円板状のプレート122と、マグネット121とプレート122とを収容する有底円筒状のヨーク123とを備えており、プレート122とヨーク123との間に円環状の磁気ギャップ102を形成している。
【0015】
フレーム130は、磁気回路120、および主振動板110を保持する構造部材である。フレーム130の形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、全体視漏斗形状となっている。フレーム130の上端周縁部に囲まれる位置に、主振動板110の外周縁が配置されており、フレーム130と主振動板110とは円環状のエッジ111を介してそれぞれ接着されている。
【0016】
ボイスコイル体140は、円筒状のボビン141と、ボビン141の外周に巻き付けられたコイル142と、を備えている。主振動板110の中心部に一端が結合されるとともに、他端を磁気回路120の磁気ギャップ102にはまり込むように配置されている。また、ボイスコイル体140は、フレーム130とボイスコイル体140とを架橋状に接続するダンパー160によって支えられている。
【0017】
副振動板150は、音の放出方向(図中Z+方向)において、主振動板110の前方に配置され、主振動板110の中央部分に配置されるコーン状の部材であり、スピーカ100の高域特性を向上させるために、ボイスコイル体140の先端に取り付けられる。本実施の形態の場合、副振動板150は、ボイスコイル体140を封止する封止部151を備えている。封止部151は、放出方向に膨出するドーム状であり、封止部151の一部には放出方向の反対側(図中Z-方向)に向かってドーム状に窪んだ陥没部154が設けられている。陥没部154は、スピーカ100を製造する際に積み重ねられた副振動板150を1枚ずつ取り外しやすくするために設けられている。副振動板150は、ボイスコイル体140の先端の内周面に接着剤などで接続されている。
【0018】
副振動板150は、図2に示すように、スピーカ100の音の放出方向(図中Z+方向)に向かって開口面積が大きくなる傾斜部152と、傾斜部152の先端縁から放出方向に直交する方向(図中XY平面内)に沿って外側に向かって直線的に延在する環状の縁部153と、を備えている。直線的に延在するとは、放出方向を含む面で切断した場合、縁部153の断面が直線となる状態である。副振動板150が平面上に広がる縁部153を備えることにより、副振動板150の構造的剛性を向上させることができ、副振動板150の全体の軽量化を図ることができる。これにより、副振動板150の微小振幅を増加させることができ、従来の副振動板を備えたスピーカが有していた可聴領域の20kHzに到達するまでに徐々に特性が落ちる傾向を抑制することが可能となる。つまり、副振動板150によりスピーカ100の高域特性を伸ばす事を可能としている。
【0019】
副振動板150の封止部151、傾斜部152、および縁部153は、一体に形成されている。副振動板150の傾斜部152と縁部153との間は、明確に稜線が判別できる程度に屈曲した屈曲部155が形成される。屈曲部155から先に配置される縁部153は、平面、またはほぼ平面の環状である。コイル142の巻軸を中心とする放射方向において、屈曲部155から縁部153先端までの長さLは、1mm以上、8mm以下の範囲内、または傾斜部152の最大口径Dの1%以上、20%以下であることが好ましい。縁部153の長さLが1mm未満、または最大口径Dの1%未満の場合、副振動板150の構造的剛性を効果的に向上させることができず、スピーカ100の高音特性の向上が望めない。また、縁部153の長さLが8mmより大、または最大口径Dの20%より大の場合、副振動板150の重量増となり、不要な共振が発生してスピーカ100の特性に悪影響を与えると考えられる。
【0020】
縁部153は、傾斜部152よりも高密度であってもよい。縁部153を他の部分よりも高密度にすることにより、縁部153の剛性を高め、副振動板150の重量をあまり増加させることなく副振動板150全体の構造的剛性を向上させることが可能となる。縁部153を高密度化する方法は、限定されるものではないが、縁部153を傾斜部152などの他の部分よりも強く圧縮することで厚さを薄くし、高密度化を図ってもよい。また、副振動板150が紙製の場合、縁部153に硬化剤を含浸や塗布することにより高密度化、強度増加を図っても構わない。
【0021】
傾斜部152の形状は、限定されるものではなく、主振動板110から離れるに従って開口面積が大きくなる円錐台形状でもかまわない。本実施の形態の場合、傾斜部152は、内側に向かって膨出するように湾曲しており、放出方向において、傾斜部152の先端部の曲率半径は、基端部の曲率半径より長くなっている。つまり傾斜部152は、複数の曲率で湾曲している。具体的には、傾斜部152の先端部の曲率半径は、基端部の曲率半径の10倍以上となっている。
【0022】
主振動板110、および副振動板150を構成する材質は、特に限定されるものではなく、紙、樹脂、金属などを例示することができる。また、主振動板110、および副振動板150を構成する材質は、同じでもよく、異なっていてもかまわない。
【0023】
次に、スピーカ100の適用例1を説明する。図4は、スピーカの適用例1である電子機器の外観を示した図である。スピーカ100を備える電子機器200としてオーディオ用のミニコンポシステムを例示し説明する。
【0024】
電子機器200は、エンクロージャー201にスピーカ100と、ウーファー202と、が組込まれたスピーカシステム203を左右にそれぞれ備えている。
【0025】
また、電子機器200は、スピーカシステム203に入力する電気信号の増幅回路を含むアンプ204と、アンプ204に入力されるソースを出力するチューナー205や、CDプレーヤ206を備えている。
【0026】
オーディオ用のミニコンポシステムである電子機器200は、チューナー205やCDプレーヤ206から入力される音楽信号などをアンプ204により増幅し、スピーカシステム203に備えられたスピーカ100、ウーファー202から音が放出される。具体的にはスピーカ100は、ボイスコイル体140に入力された電気信号により発生した動的な磁力と磁気回路120の磁気ギャップ102に発生する静的な磁力との相互作用により、フレーム130に対してボイスコイル体140が振動し、当該振動が伝えられることにより主振動板110、および副振動板150が振動して音を発する。
【0027】
この構成により、上述したように従来では実現できなかった良好な音質、とくに高音域において高い特性を維持した電子機器200を実現することが可能となる。
【0028】
なおスピーカ100の電子機器200への応用として、オーディオ用のミニコンポシステムについて説明したが、これに限定されない。例えば自動車用のオーディオシステムや持ち運び可能なポータブル用のオーディオ機器等への応用も可能である。さらに、液晶テレビや有機ELディスプレイテレビ等の映像機器、携帯電話等の情報通信機器、コンピュータ関連機器等の電子機器に広く応用、展開が可能である。
【0029】
次に、スピーカ100の適用例2を説明する。図5は、スピーカの適用例2である移動体を示した断面図である。本実施の形態の場合、移動体300として自動車を例示し説明する。
【0030】
同図に示すように、本開示の副振動板150を備えたスピーカ100は、移動体300のリアトレイやフロントパネルに組込まれている。スピーカ100からは、別途移動体に取り付けられているカーナビゲーションやカーオーディオから送信される音声信号に基づき移動体内に音を発するものとなっている。
【0031】
このように移動体300に取り付けられたスピーカ100の副振動板150によれば、スピーカ100全体の音域特性における高音域の特性を向上させることができ、高い性能を発揮することができる。
【0032】
以上で説明した副振動板150は、平面に広がる環状の縁部153を備えているため、副振動板150の重量増加を抑制しながら副振動板150の構造的強度を向上させることができる。この効果は、比較的構造的強度の高い金属製の副振動板150よりも構造的強度の低い紙製の副振動板150において顕著に現れる。また、副振動板150を備えたスピーカ100によれば、高域限界周波数の物性値が20kHzまでに高域特性が徐々に落ちる傾向を抑制し、高域周波数の特性を伸ばすことができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0034】
例えば、主振動板110の形状は、特に限定されるものではない。主振動板110の形状としては、本実施の形態の場合のような円錐形状ばかりではなく、楕円錐形状などの立体的な形状でもよい。また、立体的な形状ばかりではなく円板形状や矩形の板形状など平面的な形状であってもよい。
【0035】
また、スピーカ100は、内磁型の磁気回路120に限定されず、外磁型の磁気回路を有するスピーカ100であってもよい。また、スピーカ100は、ダンパー160を備えなくてもかまわない。
【0036】
また、ボイスコイル体140は、ボビンを備えず、コイル142を備えるものでも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本開示にかかる副振動板、および副振動板を備えたスピーカによれば映像音響機器や情報通信機器等の電子機器、自動車等の移動体に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
100 スピーカ
102 磁気ギャップ
110 主振動板
111 エッジ
120 磁気回路
121 マグネット
122 プレート
123 ヨーク
130 フレーム
140 ボイスコイル体
141 ボビン
142 コイル
150 副振動板
151 封止部
152 傾斜部
153 縁部
154 陥没部
155 屈曲部
160 ダンパー
200 電子機器
201 エンクロージャー
202 ウーファー
203 スピーカシステム
204 アンプ
205 チューナー
206 プレーヤ
300 移動体
図1
図2
図3
図4
図5